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2014年02月03日
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「大宛列伝 史記列伝第63」(司馬遷「史記列伝3」平凡社ライブラリーより)

最後の「まとめ」で司馬遷は、おおよそこう書いた。 「古書の禹本紀に黄河の源は崑崙山にあると書いているが、実際は誰も行ったことがなかった。張騫が大宛と交易を始めて初めてその源がそこの于テンに発していたと分かったのである。これにより中国の地理は「尚書」が真実に近い。私は「禹本紀」や「山海経」を信じない」 つまり、張騫によって世界地図は確かになり、かつ広がった。不遇のままに死んだ張騫を高く評価したのである。おそらくこれにより張騫の名は広く知られたのだと思う。

この「大宛列伝」には人の名前は冠されていないが、前半で心を打つのは張騫の一生である。

簡潔にしか書かれていないが、その一生は波乱万丈だった。西方に使者として出されて途中匈奴に捕まり十余年、隙を見つけて逃亡し大宛に至る。帰りにまたもや匈奴に捕まり、王の死後の混乱に乗じて漢に帰る。出発時には百余人、帰漢時には二人、13年が過ぎていた。その後、張騫は外交官になることなく、将軍として匈奴と戦う。張騫が水・草のある処を知っていたので功を得て侯に封じられる。しかしやがて大敗を喫し罪を償って庶民になる。やがて西域の使者として、交易の端緒を作る。張騫の報告書によって、西域に汗血馬(サラブレッド)がいる事が知れ、その後の李広利の遠征に繋がる。また、西域の詳しい地理や風俗、インドやペルシャの存在が知られるのである。

後半の主人公は李広利将軍の西域遠征である。公の報告書だけで歴史を綴っているので、武帝のお気に入りだった李広利の無能さは明確になっていないが、きちんと読めば大きな出費をかけて利は少なかった。よって李広利の大将軍としての能力は非常に低いことが分かるようになっている。
「玉門関に帰入した軍兵は一万余人、軍馬は千余頭しかなかった。第二回の遠征では、軍は食糧が乏しかったわけでもなく、戦死者がはなはだしく多かったわけでもなかった。ところが、将・吏が貪欲で、その多数のものが士卒を愛さずいじめたので、死者が多かったのである。しかし帝は、万里の彼方に遠征して大宛を伐ったことを嘉して、あえて過失を詮議しなかったのである」
報告書をそのままなぞっているわけだから、司馬遷に落ち度はないかもしれないが、読む人が読めば武帝批判である。

武帝に読解能力がなかったわけではないだろう。司馬遷を誹謗中傷する臣もいただろう。しかし、司馬遷は生き延びた。思うに、武帝は司馬遷の能力を愛していたのだろう。
2014年1月21日読了





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最終更新日  2014年02月03日 13時42分05秒
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