再出発日記

再出発日記

PR

フリーページ

お気に入りブログ

徘徊日記 2024年12… New! シマクマ君さん

ウォーターシップダ… New! 天地 はるなさん

江戸川橋周辺を歩く New! 七詩さん

源氏物語〔12帖 須磨… New! USM1さん

美容院探し New! はんらさん

カレンダー

2021年06月22日
XML


「萩尾望都対談集2000年代編 愛するあなた・恋するわたし」萩尾望都  河出書房新社

河出書房新社は70年代、80年代、90年代と対談集を出しているのだけど、70年代の手塚や石ノ森等レジェンドとの対談は、内容が予想つき、その間は興味ある対談相手が居なかったので省略。本書は奇跡とも言える相手に恵まれた。

【目次】
◆第1章 吾妻ひでお 「SF妄想世界の旅」 (2007)
◆第2章 よしながふみ 「やおいと純愛」 (2006)
◆第3章 恩田 陸 「萩尾作品は私の原点」 (2006)
◆第4章 庵野秀明+佐藤嗣麻子 「エヴァンゲリオンのその後」 (2000)
◆第5章 大和和紀 「少女マンガの黄金時代」 (2004)
◆第6章 清水玲子 「マンガ的美少年」 (2004)
◆第7章 ヤマザキマリ 「始まりは萩尾マンガだった」 (2014語りおろし)

特に、吾妻、よしなが、庵野、ヤマザキはとても興味深い対談になった。
以下私的メモ。

⚫︎吾妻ひでおと萩尾が、ほぼ同年代、同時期レビューというのは新たな発見。仲が良い。さすがに吾妻もまだまだ元気で、対談後書きとして「バルバラ異聞」を描いている。この時は萩尾「バルバラ異界」がSF大賞を獲った直後で対談がメジロ押し。特に此処ではSF談義に花が咲いた。好きなSF映画は「ブレードランナー」だよと、萩尾は他の対談相手にも言っている。
⚫︎「(萩尾望都は)一コマで3時間は妄想できる」と吾妻が驚いている。萩尾は、基本は結末決めて長編に取り組むタイプであると言ってはいるが、妄想が暴走すると、とんでもない処に行く。「バルバラ」はそのタイプで、成功したようだ(「スター・レッド」もこの対談集でそうだと告白しているので、しょっちゅうあるようだ。今度の「ポーの一族」続編もその可能性はある)。「バルバラ」は、まだ未読なので是非読みたい。

⚫︎よしながふみの「きのう何食べた?」を、「一度きりの」で萩尾はかなり褒めていたが、この時は未だその連載は始まっていない。それでも初期の「愛すべき娘たち」から注目していたようだ。
⚫︎「トーマの心臓」について「私、自分でも、いまは絶対に描けないと思いますね。いまは、『愛のために14で死ぬ』なんて考えただけで却下、です」との言葉は重要。少年愛への強烈な拒否反応がある。それでもよしながのBLは認めている。よしながは、「本当は同志的な話を(BLで)描きたかった」という。「女の子は、男の子との恋愛でも、本当は、男の子と同志的な関係になったうえで性的な関係になれたらいいと考えているけれど、男の子は女の子を基本的に性的な対象としか見ていないので成り立たない。だからボーイズ・ラブでは男性同士に変換しているんだと思います」。そう言えば、「何食べた?」も、そういう関係かも。

⚫︎庵野秀明登場。。「お前ひとりじゃ対談に出られないのかよ!」というくらい、隣に2人共通の知人である佐藤嗣麻子(映画監督)が付いているのが異様です。新劇場版が始まる(まだ構想にない?)遥か前で、テレビ版の劇場版が終わって3年ぐらいした後の対談。萩尾はテレビ放映後にエヴァにハマっていて、オタクの庵野は当然萩尾のファン、であるのにも関わらず、2人の会話が噛み合わないことったらない(笑)。おゝ庵野って、凄い。

⚫︎佐藤 庵野さんは、自分は大人だと思いますか。
庵野 子供じゃないですかね。(←その通り)
佐藤 私は、自分の親のことも大人だと思っていないんです。
萩尾 私は、親が大人でないことがすごく不満なんです。
庵野 僕は不満じゃないです。
‥‥エヴァの内容から言っても、「不満だ」と続くのかと思いきや、丸切り順調な家庭関係を強調する庵野。うぅ佐藤の混乱が目に見えるようだ(笑)。

⚫︎萩尾の長期連載「王妃マルゴ」が佳境に入りかけた頃のヤマザキマリ対談。歴史の話が主になっている。天然痘もペストも出てくるらしい。そういう視点から読んでみようかしら。(デュマ「王妃マルゴ」からイザベル・アジャーニ主演「王妃マルゴ」へ、そして萩尾望都「王妃マルゴ」へ)
⚫︎ヤマザキがとり・みきと合作している「プリニウス」の第3話で、ハチの死体をクローズアップした1コマに対して、とり・みきはまる2日かけてハチを描いたらしい。ルネサンス時代のブリューゲルは超サブカルで、そこから連想してこの話になった。対談集にはちゃんとその漫画のカットが載っていて、それを見ると「これがまる2日かけて描いたヤツか!」超細密で感動した。こういう絵こそが漫画の醍醐味である、と私は思う。決して芸術作品ではない。作品としては縮刷されて出回る。それでも、博物家プリニウスの漫画に「あって欲しい」絵なのである。漫画家は、現代の浮世絵師であると、改めて思う。
⚫︎萩尾望都は、この時点では高圧的な父親と何事も禁止する母親との関係を、客観的に整理して語れるようになっている。正にこの30年間の彼女の作品は、両親からいかに離れてゆくか、が大きなテーマだったようだ。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2021年06月22日 05時30分13秒
コメントを書く
[読書(ノンフィクション12~)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな@ 自然数の本性1・2・3・4次元で計算できる) ≪…三角野郎…≫は、自然数を創る・・・  …
永田誠@ Re:アーカイブス加藤周一の映像 1(02/13) いまはデイリーモーションに移りました。 …
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
生まれる前@ Re:バージンブルース(11/04) いい風景です。 万引きで逃げ回るなんて…
aki@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
北村隆志@ Re:書評 加藤周一の「雑種文化」(01/18) 初めまして。加藤周一HPのリンクからお邪…
ななし@ Re:「消されたマンガ」表現の自由とは(04/30) 2012年に発表された『未病』は?
ポンボ @ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) お元気ですか? 心配致しております。 お…
むちゃばあ@ Re:そのとき 小森香子詩選集(08/11) はじめまして むちゃばあと申します 昨日…

バックナンバー

・2024年12月
・2024年11月
・2024年10月
・2024年09月
・2024年08月
・2024年07月
・2024年06月
・2024年05月

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: