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今日は演劇部と合同打ち合わせだ。ここにきて演劇部の花形をさしおいて、異彩を放つ、ま ねきさんと紀香先輩。何なんだろう、この2人って。 「まねきのアイディアを取ると、『運命』をジャズ風にアレンジしたのを使うんでしょ う?」 演劇部の3年のお姉さまが言う。 「そう。今回は全部ジャズでアレンジしていこうと思うんだ」 「よろしかったら『007』でも演る?結構サスペンス仕立てにしてあげてよ?」 紀香先輩、挑発的!! 「だめよ。紀香はすぐ火種を起こそうとするんだから。そんなんじゃいいシスターにはなれ なくてよ」 にっこり笑って紀香先輩の挑発をさらりと流した演劇部の部長、池波いちづ先輩が言った。 うわ、後ろで背景に花が咲いたような笑顔だ。この人が演劇部の最終兵器。 「とりあえず、こちらからの希望の曲は先程伝えた通り。流す順序もその通りでお願いしま すわ。それから見せていただいたそれぞれの衣装ですが、異論はありません。オブジェかと 思わせといて、いきなり動いて演奏するというアイディアが気に入りました。早速、衣装の 製作の方にかかってくださいませ。」 さすが、生徒会長。特待生だけあるわ。「何か、異論はありまして?」 そういいながら、いちづ先輩の視線はまねきさんに注がれていた。 「ありませんよ。そうさせていただきます」まねきさんのアルカイックスマイル。 わたし達下っ端は、なんかものすごいものを見せてもらった気がした。 わたし達はぞろぞろと演劇部から出て、下校の準備をしていた。今日は皆で衣装製作のた めの生地を買いに手芸やさんへ行くのだ。 こういうのって、女の子らしい楽しみで、なんだか好きだな。そんな事を思って、皆を校 門で待っていた。にほんブログ村
2010年06月29日
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家に帰ってから気がついた。紀香先輩のラフ画、持って帰ってきちゃったんだ。 はああとタメ息がでる。厳格なじいさまが見たら卒倒ものの衣装だ。学校でも許される露出 を超えている気がする。わたし、お裁縫は苦手なんだよね…。そうだ。 わたしは携帯でさよりに連絡を入れた。 「どうしたのお?」「さより、お裁縫得意だったよね。」「得意ってほどじゃないけど」 「今度の衣装、一緒に作ってくれないかな」「いいよ。あたしのは演劇部の借りられそうだ し。その分手伝ってあげる」「さんきゅー、さよりあいしてるよー」「そんな愛いらん」 つれなく切られてしまったが、助かった。 わたしはラフ画をクリアファイルにはさんで、カバンにいれた。 宿題をして、明日の朝の行に備えて早く寝た。 朝早く5時には起きて、本堂を掃除し、じいさまと鐘をつき、今日は水行もやった。 最近周囲が騒がしいので、落ち着こうと敷地内のちょっとした滝に打たれてみた。 さっぱりしたところで、さっぱりした朝食。今日は玄米に漬物少々。こりゃ修行か? 昼まで持つかなと思いつつ、阿吽号で学校へ向かう。あ、力が足りなーい。 やっぱ、朝ご飯は大切ね。 学校前で見覚えのある3人の顔が、チラシを配っていた。 「お、もなか、おはよう」「きやすくよぶな。なんだ、これは」「お前に断られたからさ、 人員募集の広告だよ」 ハンドボール男女混合大会 出場者希望募る ほほう。「で、集まりそうなのか?」聞くだけ無駄かな? 「まだわからん」「もなか、興味あるのか」「ない」あんまり話しているとまた、シスター におとがめを喰らう。「じゃね」わたしはさっさと阿吽号と学校の敷地内に入って行った。 にほんブログ村
2010年06月19日
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放課後になり、視聴覚室へ行く。皆もう集まっていた。 「よ、きたね」なにごともなかったかのように、まねきさんは笑顔で迎える。 「昨日は失礼しました」一礼すると「あーもーいいのっつ」と紀香先輩が言う。 「もなかの衣装は、コレよ」じゃーんと紀香先輩が渡してくれたデザイン画を見て固まった。 「先輩、なに、これぇ」「かーいーでしょ。もなか、あんがい胸あるから、似合うと思うの」 それは胸からのポップボンデージ調のフリルスカートミニ。「誰が作るんですか?」 「各自、自分ですな」「大丈夫、メイクもするからわかんないって」 「実は今度の出し物って、アレンジピグマリオンにするんだって。衣装はあるものを着まわ しして、時代考証をわからなくするから、うちらの出番も紛れますぞ、と。」 ちなみにまねきさんは赤と黒の宇宙服見たいなデザインで、紀香先輩はボディラインをばっ ちり見せたピタスーツみたいな感じ。サキ先輩は猫をイメージしたもので、美幸はアニメア イドルのなんとかみたい。さよりは宝塚の男役のカッコだった。 とりあえず、曲と音合わせで時間を過ごし、帰宅となる。 駐輪場から阿吽号をひっぱりだしててれてれ歩きだしたら「もなか」と声をかけられた。 「きのうの・・・」「ちゃんと謝ろうと待ってたら、お前元気なくかえっちまうからさ」。 「そりゃ、わるかった。」「いや、すまない。本当に申し訳なかった」 3人の真ん中がそう言って一礼する。「もういいよ。あたしも、ヒットさせたんだし」。 「それ。それなんだよ」「は?」「今度男女混合戦で、ハンドボール大会があるんだよ。 一緒に出てもらえないかなあ」「なんで、あたし?」「俺達、お前しか知らないもん」 「話にならん。帰る。じゃ、ね」あたしはダッシュで阿吽号をこぎだした。 「おしいなあ・・・あの、腕力。あの、脚力・・・」にほんブログ村
2010年06月10日
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学校へ行くと、まず美星を探した。演劇部の出し物の『ピグマリオン』をどう演じるのかを 聞いた。女しかいないこの学校で男役は宝塚ばりだ。彫り物師が仕上げた女性の彫刻に恋を して、神に頼んで彫刻を人にしてもらい、ハッピーエンドの物語のはずだ。 「今ね、先輩達でもめてんのよ。ヘップバーンの方をするか、正統派をやるか」 「ああ・・下地にした映画もあったよね」「そう。それによって、衣装が違うからねえ」 「あと。おたくの先輩も絡んでんのよ?」「まねきさん?」「と、紀香先輩。あの人綺麗よ ねえ。うちの部で欲しいわ」 とりあえず授業が始まるので、朝の会話はそこまでとなった。 お昼はもそもそとお弁当を食べた。さよりと美幸と机を合わせて。 「もなかのお弁当はヘルシーだよね。まさかダイエットしているの?」「うちの食事はこん なもんです。」家が相撲部屋だったらなと、時々思う事がある。肉・魚、うちでは喰えん。 いいとこ卵だもんなー。じいさまが昔ながらの教えの人なので、他の寺のように、食事が自 由ではないのだ。うちにきてる保護観察の連中よくやってるよ。 『そこまでおのれを律しないといかんと思うとる連中ばかりここに引きとった』 じいさまはそう言っていた。 そんなことを考えながら、宗教学のキリストの章を学んでいるあたしって・・・。 汝の敵を愛せよ。汝姦淫することなかれ。左の頬を叩かれたら、右の頬をさしだせ。 うちのほうじゃ、ひっくるめて仏縁であらわす。定められた仏縁がなければ人殺しをしたく てもできないし、したくなくてもしてしまう。定めじゃあ~。 とりあえず授業を聞いて、ノートとって、放課後を待つ。にほんブログ村
2010年06月06日
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なんか気分が沈んでしまった。ベルナデッタ様はああいう言い方で釘をさされたのだ。 一応良家の子女が多く通う学校だもんね、ここ。おかげで音にも集中できない。 「もなかー、さっきから、音が悪いよ」「すみません、紀香先輩」ため息しかでてこない。 「もなか。きょうはかえんな」「まねきさん」「皆の足をひっぱる音はいらない。それも、 一生懸命ならともかく、アンタのは違うでしょ。今日は帰りなさい」 思いがけないまねきさんの言葉にまたもや心は落ち込んで、「すみません。お先します」。 まねきさんが持ってきてくれた制服を持って、あたしは一礼して視聴覚室をあとにした。 誰もいない教室で着替えて、バックを持って、駐輪場へ行く。 阿吽号の鍵をはずしてからからとうつむいて歩く。しっかり気分は落ち込んでいる。 うなだれて校門をぬけると、「もなか」と男の声で呼ばれた。 知らない声にうなだれていた顔をあげると、男の子が3人立っていた。 その制服は、隣の男子校の詰襟。通り過ぎようとして、ぴくっ。 「昼間の!?」「そう。昼間は悪かった。ごめんなさい!」な、なんだ素直じゃないか。 「あ、あたしこそ、ごめんなさい。大丈夫でした?」 「お前、いい腕してるよな。男だったら部活にスカウトしているところだ」 「おれ、春日周平(かすがしゅうへい)」「俺は伴野内岳弥(とものうちたけや)」 「オレは篠崎稜(しのざきりょう)」「あたしは相柳萌菜果です」 「やっぱりウケるよな。その名前」今日はひっぱたく元気もない。 「そう、じゃあごきげんよう・・」「お、おい。調子狂うなあ」「そのうち叩くから」 だめだ、今日は。あっけにとられる、3人をしり目にとぼとぼとあたしは阿吽号を引っ張っ て歩いた。 寺について、制服のまま本堂で禅を組んだ。やっぱりあたしも寺の子なんだなあと思う。 礼拝堂で懺悔するより、こっちのほうが落ち着くもの。 今日は大人しくしていよう。皆やじいさまが気持悪がるほど大人しく、もそもそとごはんや お風呂を済ませ、部屋へこもった。 今日は早く寝よう。明日の準備も済ませ、布団にもぐりこむ。 ちかちかちか。マナーモードにしていた携帯がメールが届いていたことを知らせている。 【やあ、もなか。元気ある? さっきはきついこと言ってごめんよ。もなかの衣装を皆で きめちゃったよ。きっと似合うと思うよ。明日楽しみにしておいて。まねき】 【もなか、元気?もなかの衣装、勝手にきめちゃったよ。でも似合うと思うから。楽しみに して、あしたは元気でおいで 紀香】 【もなか~明日は元気で来いよ~ 美幸】【もなか、今日の事は気にしないで。明日元気 で会おうね さより】 今日のあたしはくじけてる。なんだか涙が出てきて、携帯の画面がにじんでみえた。にほんブログ村
2010年06月01日
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「はぁ~い、くっさなぎぃ♪」 蝶子が事務所のドアを開けたのは、そろそろ閉めて帰ろうと思っていた時だった。 「なんで、蝶子でくるんだよ。摩利さんはどうした」 「摩利は仕事で疲れているから、代わりにアタシが誘いに来たわけぇ。ねー、飲みに行こー」 「ヤダ。昨日遅かったから、今日は帰って早く寝るの」 「あーヤダヤダ。こっから、おっさん道まっしぐらになるわよお」 自分もストレス抱えて摩利さんは寝ちゃったのだろう。で、無意識に蝶子が出てきて、おれ とこんにちわってことか。1人で街に放したら何するかわからねぇもんなあ。 「仕方ない、つきあうか」「やっりぃ」 蝶子は椅子から立ちあがったおれの腕を取り、組むと「さあ、しゅっぱあーつ!」。 そうしておれと蝶子はちょっとでこぼこコンビで(ヒールのせいもあるが、アイツの背の方 が高い)夜の街へ繰り出した。 「アッタシ、ここがいいー」店名【パープルレイン】なにか嫌な予感がする。 「最初は居酒屋でいいじゃないか」「やぁーよ、いっくぞー」蝶子はおれの首の服を掴んで ひきずっていった。「いやじゃーああぁあああぁああ」 思った通り、ハードマッチョな店だった。かかっている曲もなつかしのプリンスの【パープ ルレイン】そのもの。蝶子のすごいところはどこでも馴染んでしまうところだ。 5分後にはゴリマッチョも細マッチョもみんな蝶子の周りに集まってワイワイ騒いで楽しそ うに飲んでいる。「すごいヒトだね、あのひと」おれの側にきた細マッチョが言った。 「女なんだけど、なんだか仲間ってカンジがして。でも体は女の人なんだけどね。」 何が言いたいんだ、コイツ。「あれで、男の人だったら、ボク惚れちゃうんだけどなあ」 うっ。ここは、ただのハードマッチョな店じゃなかったのか。 「ボク、結構アナタみたいな方もタイプなんだ。」「そ、そお?」 少し離れようかなと思ったときだった。「抱きしめていいですか?」え”。 言うなり細マッチョくんはおれをぎゅうと抱きしめていた。ちょ、ちょうこ、たすけて~。 「おもったとおり、あなた、ここちいいですね」細マッチョくんはうっとりしている。 っちょ、ちょうこぉ~!!! HELP ME~!!!!! 言葉が出なくて、心と体全体で蝶子にオーラを送った。「ん?」とマッチョ群に囲まれてい た蝶子がちらりとこちらを見た。 「あっら~、くさなっぎ~、よかったじゃなぁい」言うに事欠いて、なんだとう。 そういって蝶子は空になったグラスをマッチョに渡し、次のお代りを要求している。 もうあごで使っているのか、この女王様は。 「可愛い子でよかったじゃない。お店のNO1?すご~い。なっぎ~、もてもてじゃん」 そこへおかわりが来て、受け取り、喉が渇いていたのか、蝶子はグイッと一気に飲み干す。 おおっと声と拍手が上がり、マッチョ達は蝶子を女王様上げした。しっかし、そういうのが 本当に似合う女だな。 「なぎさん、って呼んでいいですか。ぼくも、していいですか?」「へ?」 ぬおおおおおおお。細マッチョくんは笑顔でおれを(このおれを)お姫様抱っこした。 「き、君。大丈夫?おれ、かなり重いんだよ。このまま倒れないでおくれよ」 「大丈夫ですよ。鍛えてますから。」 にっこりとする笑顔はさわやかなスポーツ美青年だ。そのままおれの耳元に唇を寄せて言 う。「どうです、このままお店ハネたらホテルいきませんか?ぼくあなたみたいな方によく 誘われちゃうんですけど、あなたちっとも誘ってくださらないから」 「お、お、おろしてくれる?」「いいと言うまで、おろしませんよ」にこにこと笑顔で言わ れる。「お、おれ、のーまるなんだ」「じゃあ、ぼくと初めてしましょ」 しない、しない、しない、しない!断じてしない!蝶子~、うらむぞ~、よくもこんな店に つれこんだなあ~・・・。 どよぉ~んとした怨念が届いたのか、作り笑いのとりなした蝶子がこっちにきた。 「おもりしてくれてたの、ありがとね。楽しみは次にしておいて。その方がいいでショ」 そういうなり、すっと細マッチョからお姫様抱っこを解いてくれた。ちょおこぉ~。 おれは、元凶も忘れて泣きつきたくなった。 「じゃ、またきてね、蝶子ちゃん」「ン、また来るわ、ママ」「なぎちゃんもきてね」 「あはははははい」扉のところで店全員がずらりと並んで見送ってくれた。 おれの財布のカードも今月も危ないかもしれない。 「居酒屋いこうよ、くさなぎ」「おっつ、めずらしいな」「なんだか行きたくなっちゃっ た」「はいはい」「安い所でいいよ」「それは歓迎だな」 夜風に吹かれて、蝶子の長い髪が少しそよぐ。おれの髪はまだ大丈夫かな。わかってる、こ の組み合わせは美女とさえないおっさんだ。だがいいじゃないか。そんな2人で飲みにでか けても。たまには仕事を忘れて酒を楽しみたい。そんな日があったっていいじゃないか。 おれたちは、冗談をいいながら明るい灯火のあちこち灯る方へと惹かれていった。 それこそ灯りを求めて飛んでいく虫のように。にほんブログ村
2010年05月31日
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まねきさんが演劇部へ聞きに行ってる間に、校内放送があった。 『相柳 萌菜果さん、相柳 萌菜果さん。校長室まできてください。』 「わ、なんだろ」同好会の連中は早く行けとわらわらと言う。 「ちょ、ちょっといってきます」まだ体操服のまま校長室へ向かう。 途中まねきさんにあったらあたしの制服を肩に後ろ手をかけて持っていた。 「もなか、これ乾いたから持ってきた」「あ、すみません。まねきさんに持ってきてもらっ ちゃって。」「はやくおゆき。シスターベルナデッタ待たせると怖いから」「はい」 あたしは廊下を走りたかったが、シスターが結構出ているので、早足で向かった。 とんとん。ノックする。「1年、相柳 萌菜果参りました」「おはいり」 声がしてあたしは緊張しながら「失礼します」とドアを開けて一礼し、ドアを閉めた。 「相柳さん、制服はどうしました?」「汚してしまったので、洗って乾かしました」 「今日、現代国語の勿来先生があなたの血を見て貧血で倒れたそうだけど?」 「はい・・・」「左側の鼻の所が青くなってますよ」あたしは慌ててその場所を触った。 い、痛い。「おんなのこが顔に青タンつくって。なにをしたんですか?」 「シスターに怒られることは・・・なにも・・」 シスターベルナデッタは溜息をついて黙ったまま首を左右に振った。 「お昼に外で食べるのは心地よいし、わたくしも止めはしません。でも。その後、大声をあ げてお隣の学生にボールをぶつけるのはいかがでしょうか?ここは神の教えを伝える学校で す。手渡しでもよいのではないかと、わたくしは思うのですが、あなたはどうですか?」 げえッ、全部見られてた。あごがカクンと下へはずれそうだった。 「まあ、元気があってよろしいともいいますがね」 シスターは口元をおさえ、くすくすと笑った。 「ナイスヒットでしたね」 あたしは顔から火がでそうだった。頭が上げられなかった。 「今後はこの学校の品位を落とさないように、行動をつつしんでくださいね。」 「はい」 あたしは蚊の鳴くような声で返事をするのがやっとだった。 「行ってよろしいですよ?」「ありがとうございました」 あたしは再度お辞儀をして、部屋を出た。はずかしい、はずかしい、はずかしいぃ! よりによって、校長先生シスターベルナデッタ様に全部見られていたなんて! 思えば中学の学校案内の時、鐘の音に聴き惚れていたあたしは鐘を鳴らすベルナデッタ様の 美しさにぼ~っとしてしまったのが、この学校を決めた決定打だった。それはまるで絵のよ うだった。それはあたしだけではなく、加倉井 美星もそうで、彼女は違った方向性でベル ナデッタ様を目標としている。だから彼女は演劇部に入ったのだ。 早く、エレキかきならそ。あたしは視聴覚教室へと急いだ。にほんブログ村
2010年05月30日
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鼻が痛くて、午後の授業は散々だった。左側が特に痛くて、鼻の中で血が固まったらしく、 息がしにくいし、鼻をかむとかさぶたが取れてまた出血をして・・エンドレス。 「今日は体育でもあったのか?1人すごくなっているのがいるが」 それこそ体育教師のようなマッチョな体格で、仇名がバイオレンスフラワーと呼ばれる男性 教師が言った。担当科目は現代国語、趣味・華道の彼はフラワーアレンジ部の顧問だ。 「なこそ先生、気にしないで授業を進めて下さい」「そうはいわれてもなあ」 ずび、ずば、だらあ・・・。鼻に詰め物グイグイ。すぐ赤くなるから交換交換。 おかげで、教室のゴミ箱はいまやあたしの所有物のようなもの。 赤い血、赤い血、まっかっかー。 「ダメだ、先生は血に弱いんだ。保健委員、はやくその子を保健室へ連れて行って。でない と先生が・・・」言いながら、先生がくらくらしだした。そしてくたっと腰が抜けたように 座りこんでしまった。 「先生、しっかりして!」「きゃーだれか保健委員!」逆だっつーの。 「へえ、そんなことあったの」まねきさんはくすくすと笑いながら聞いていた。 「1年生も面白い事してるのね」紀香先輩も笑っている。 「3年になると、見習いシスターコースか神学コースか、他大学コースに分かれるからね」 「そんな面白い事できないものね」紀香先輩は言いながら、バックから数枚の紙を出した。 「はあい、みんな、集まって」紀香先輩が声をかけた。視聴覚教室にいるメンバーがわらわ らと集まった。 「今度のハナミズキ祭に揃いで着る衣装のデザインなんだけど。どれがいい?」 うっわー。ヘビィメタからゴスロリ、それこそシスター風とか姫ロリ、ゴシック、スペース 風といろいろある。 「あえて、女子高生らしい制服は作成しなかったの」 「紀香先輩。演劇部と共演なんですよね。舞台にも同じ立ち位置で立つんですか?」 「サキの言う通りなのよ。でも同じ立ち位置でエレキかき鳴らすのって、快感そうじゃな い?」 「わかった、紀香先輩、これ全部使いましょう!」「サキ?」「1人1人違うのにしてそれ ぞれ目立つんです。演劇部の連中に紛れて」 「へ?」1年のあたし達はびびったけど、まねきさんは笑いだした。 「あははは、紀香、1本とられたね。すごいよ、サキ。それでいこう」 「まねきぃ」紀香先輩はちょっとひねた表情をした。 「演劇部の出し物、何やるか、知ってる?」けだるげにまねきさんが聞いた。 「はーい、ミュージカルピグマリオン」美幸が答えた。 「あれって、ミュージカルだっけ。ってか、それだれにきいたの?」あたしの問いに、美幸 は「スター」と答える。 「オペラって言ってなかったけ?」まねきさんの言葉に「確かにそうは言ってたんですけど ね」。「じゃ、演劇部の部長に直接聞いてみるわ」まねきさんが言った。にほんブログ村
2010年05月29日
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お昼の購買部の荒波を超えて、焼きそばパンとコーヒー牛乳をGETし、さよりと美幸と 校庭の日当たりのいい所を陣取って、食べ始める。 「よく買えたねー」「人気ナンバー1の焼きそばパンとコーヒー牛乳」2人とも感心してい る。「仏さまのお導きです」あたしはナムナムと拝んでみせた。 「絶対違うよね」2りのこそこそに、「喝ーッ」。 「やぁだぁ、そのあと『ぺっ』なんてしないでよ」美幸が身体を横に反らして言う。 「あたしゃ、痰だしのじーさまかっ」きゃあきゃあしてると、垣根を越えてフェンスの向こ うに男子達が健全に遊んだり笑ったり過ごしたりしている。 実は隣はカトリックの男子校で、末は神父かというおのこたちがひしめいているのだ。 こっそり付き合っている子もいるが、隣とだけは男女交際するなというのがお互いの暗黙の 学校の掟で気分はロミオとジュリエットなのだろう。寺の子としては、どーでもいいことな んだけどね。 もそもそとやきそばパンを食べて、コーヒー牛乳を飲んで、ひっくりかえって、空を眺め る。あーいい気持ち。風がやわらかいなあ。さよりと美幸は樹によりかかっている。 こっちも気持ちよさげだ。 「ぶ!」痛みと暗闇と線香花火がいっぺんにきた。 「やだ、もなか!」「大丈夫!?」「うー・・・」ポン、ポン…とボールは止まって側にあ った。「やっべ!、フェンス超えちまったよ」「あ、誰か倒れてる」「おい、アンタ、大丈 夫か?」3人の男子がフェンス越しにこっちに顔を出し、声をかけてきた。 「ヤダー、もなか、鼻血、鼻血」さよりがポケットからティッシュを出してきた。 「”もなか”だって、」「おもしれー名前」3人がウケテいる中、あたしはがばっと跳ね起 きて、鼻血を右手でグイ!とこすると、転がっていたボールを持った。 「誰が蹴ったか投げたかしたの?!」勢いに押されたのか、真ん中の男子を2人が指さす。 「ばっきゃろー、痛かったんだよー!」あたしは力任せに思いっきりその男子にボールを投 げた。ヒット!顔にばふっと当たってその男子は後ろへ倒れた。 「わー周平!」 ふん、ざまあみ。あたしの鼻からはまだ鼻血がだらだらと流れていた。 「服に血がついちゃっているよー、もなか」さよりがおろおろと言う。 「いったん顔洗ったほうがいいみたいよ。ボールの泥模様がついてるから」 美幸が冷静に言う。そのまま外の手洗い場で顔を洗い、汚れを落とした。 制服についた血を脱いでつまみ洗いし、体育着にきがえた。 「どこに干そう」「この葉を隠すなら森の中、スターに頼もう。演劇部の部室」にほんブログ村
2010年05月28日
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いいといったくせに、いざ音を出したら「この罰当たり」とじいさまにスリッパで叩かれ た。亡者が起きるって、あたしも言ったけど、実際起きたところで、あたしは視えやしない のだ。そういえば、土葬の墓もあったけど、あれは年代物だし、もう土に帰っていることだ ろうなあ。あとは、火葬だし。実際亡者が起きて踊っていたら笑ってやる。スリラーって。 まいったなあ、これじゃ、あたしも練習できない。どこかいい場所ないかな。 あたしはまねきさんにメールを打った。 【ノリとも話したんだけど、どこかスタジオ借りようかって言ってたんだ】 【スタジオ?皆からお金集めて借りるんですか?】 【そう。うちらの衣装も作らないといけないし】【衣装!?】 【ノリがデザインしてる。楽しみにしていて。明日、臨時に集合しよう。他の子に連絡、回 して】【わかりました】【じゃ、よろしく。お休み】【お休みなさい】 まねきさんに連絡したら、ほっとした。昨日の睡眠不足がくらりとくる。さよりと美幸に連 絡入れた。今日はもう寝ようっと。 朝、相撲部屋みたいに、早朝からご飯作りに厨房に入っていた。圭吾と代わったのだ。 「お嬢、いいんですかい?」「ヤスはほんとにその口調ぬけないねえ」 かぶの皮剥きをしていたヤスはへへへと照れて笑った。まだ若いのだ、なのにその言葉遣い。 「おれ、”極妻”が好きでもうのめりこんじゃって・・・岩下志摩さんや、高島礼子さん、 もうさいっこー!」「世界に浸るのはいいけど、手元きをつけてね」「あ、はいはい」 今日の朝食は、豆腐の味噌汁にかぶの浅漬け、ほうれん草の胡麻和え、雑穀ご飯、青汁。 ある材料でメニューを決めたらこうなった。あたしのお昼は学校の購買部で買おう。 人数がいるから、量をつくるのが大変なのだ。 更生者達は、迷っている。このまま寺に残って、仏門に入るか、それとも世俗へ戻るか。 更生施設はいっぱいで入れない。かといって、職もみつからない。普通のアパートにもはい れない。ないないづくしの彼らは明るく振る舞いながらも、悩んでいるのだ。 ヤスと2人で朝食の用意をしていく。食事の間にそれぞれの用意を置いて行く。 他のメンバーは、読經に掃除にと動いている。これが彼らが決めたルールだ。 じいさまが朝の鐘をつき、戻って来て皆で朝ご飯となった。 「じいさま、今日ちょっと帰り遅くなるかもしれない」「なんじゃ、あいびきか」 「肉じゃないんだからさ。クラブだよ。練習なの」「ふん。夕の鐘までは戻れるんじゃろ な」「んー、ちょっと、わかんない」「若い女子が男勝りに」「イマドキよ」 時計を見て「あ、遅刻しそう。じゃ、ごちそうさま。いってきます!」 そしてまた阿吽号をかっとばして学校へ向かった。にほんブログ村
2010年05月27日
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学校修了の鐘が鳴る。この時ばかりは静かに音を聞く。ああ、なんて良い音色だろう。 「じゃあ、次の印つけたところまで各自練習してくること」まねきさんが言う。 「ねー、うちじゃできないんだけど、もなかンとこ行って練習していい?」 楽器を片付けながら、さよりと美幸が言ってくる。 「なに?もなかンとこ練習できんの?」皆興味をもったらしい。 「あ、この子ンちお寺で広いんですよ」「わあいいなあ、、あたしも一緒に練習したいな あ」わらわらと声がする。 「亡者が起きるわ!だめじゃい!」一喝。 くすくす。まねきさんが笑ってる。「おうちがお寺なのに、教会のがっこに来てるの?」 「おかしいですか?」「んー、個人のシュミだからねー」今度はスナフキンのように、ポロ ンと鳴らした。 「まねきさんはどうしてこの学校を?」「あたしはシスターになりたかったさ」 ポロポロと音を奏でながら答える。「いまは?」「歌って楽器を弾くシスター」 「あたしは映画。”天使にラブソングを”。すごく好きで自分でもなりたくなった」 紀香先輩が言う。「でも、まねきとあったら、2人でなにかしたくなった」 ふうん、なんかいいなあ。 「ほらほら、もう退校時間は過ぎてますよ。早くおかえりなさい」 見回りのシスターが声をかける。 「はあーい」皆ばらばらと部屋から出て行った。 阿吽号をこいで自転車を走らす。ごぉ~ん。あ、うちの寺の鐘だ。じいさまがついているの だろうな。ごぉ~ん。あー…いい音だにゃああ。 鐘がつき終わった頃、寺についた。「じいさま、ただいま」「おお、萌菜果、おかえり」 「今日から学校祭にむけてクラブの練習、したいんだけど・・・」「ああいいよ。」 みんなには、ああいったけど、ここは檀家からも離れているし・・・。 食事をそそくさと済ませ片づけようとすると、「お嬢、いつもより少ねぇですね」「ダイエ ットですか?」「今日は少なすぎですぜ」。 外野がうるさい。あたしの怒りのオーラが背中全体から漂っているのに気付いたのか、もと 受刑者達はしーんとなってもそもそ食べ続けている。「おい、ヤス。しょうゆとってくれ」 「はい、みなみさん」「圭吾、おかわりくれ」「はい。大盛りでいいですか?」「少し減ら して。おれ、最近腹出てきてさあ・・・」ピキーン。再び凍りつく食堂。 「な、なあ。3杯目なんだから少しどころかもっと減らしたれ」あ、あはあはははははは。 男達は笑う。この、野郎どもめえええええ。あたしは、さっさと片付けて部屋に戻った。 それからギターを持って本堂へ向かった。電源を入れて・・・・ぎゃギャーん! 響き渡る音。しまった。音を出ないようにする器具を用意しなきゃ。とりあえず今日 は・・・。 どたどたどたどたどた。ドナルドダックが走ってくるような音がした。 「こんの、たわけーッ!亡者が起きるわーッツ!」ぱこっつ。「あてっつ」 じいさまがもんのすごい勢いで走って来て、来客用のスリッパであたしの頭をはたいた。 「墓ン中は骨か粉だからいいじゃん」「寺の者がそういうかー、このばちあたりが!」 「じゃあ、音消しの器具買ってよ、じいさま」「ふんふーんだ。檀家からの寄付も減って来 ているきょう日、学費以外出せますかーて」「あー、あたしの両親の遺産、学資くらいはあ るわよね、じいさま」「そんなもん、しらんもんねー」「使い込んだか、じいさま!」 込み合った話っぽくなってきていたら、皆がわらわらと壁に張り付くように心配そうに見て いた。今次(こんじ)さんは3杯目のどんぶりをかきこみながらあたしとじいさまを観戦し ているのが見えた。にほんブログ村
2010年05月26日
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根性で解いた宿題を提出したのが今日最終授業。それまで張っていた気がぷつーんと切れた。 「萌菜果、同好会の日だよ。行くよー」「らりほ?(なにを?)」「おら、行くんじゃああ」 両脇をがしっと掴まれT人形のようにあたしは移動された。 「さよりと美幸は力持ちらねー」しゃべる気力も足りない。 「あ、もなかが糸ひいた」「よだれたらすなっつ」「ぐーっつ」 「腐ってるのか」「まだぴちぴちらろ」「だって糸引いたもん」 「わかった、納豆もなかだ!」「糸引いたるわっつ」「起きた起きた」 眠いまま何とか廊下を歩いて、シスターと通りすがりには立ち止まって軽く会釈を。 そして、同好会に使われている視聴覚室に辿りつく。他の学生達は色々な部活にいそしんで いた。いい例がスターだ。演劇部に入っている。悔しいけど、役にのめり込んで堂々として いるのは、本当にスターみたいだ。きらきらしている。 「よう、遅刻だよ」3年の先輩、通称まねきさんがわらって言う。ショートカットで、どこ か少年めいたこの先輩は宝塚のようにもてる。本人はそれが悩みの1つらしい。 「なんだ、もなか、ねむそうだな」「まねきさん、ねむいです」「ま、この音でも聞いて起 きなはれ」言うなりまねきさんは、エレキをギャギャギャギャーンと鳴らした。 かーっつ、まねきさんがやると、【神降臨】ってカンジでかっこいいんだなー。 「起きた?」「はい、起きさせていただきました」はははとわらう、まねきさん。 まねきさんが男だったらなーと思う女子はたくさんいる。でも、あたしはすごく女の子のま ねきさんも知っている。ダカラナンダというわけではないが・・・。 「ところで、こんどのハナミズキ祭、演劇部から正式に申し込みがあったんだけど、うちと 共同で参加したいんだって」 3年の紀香先輩がいう。名前も同じだけど、芸能人の藤原紀香に似ている。まねきさんと仲 がいい。 「いつもは合奏部とのコラボでオぺラ風にしていたじゃないですか。」 2年のサキ先輩が座りこんで言う。 「今年はファンキーで行くんだって」「ファンキーオペラ・・・」「すげー・・・」 「曲も指定されている。受けてはみたいんだよね。皆の力の範囲が拡がると思うんだ。」 「まねきさん、うけるんですか?」「正直、もう受けちゃった」 まねきさんは、ペロッと舌を出してみせた。 「-というわけで、みんなよろしくね。」紀香先輩がにっこり笑った。 「指定された曲って、どんなのですか?」2年のリンダ先輩が言う。 「もちろん、アレンジクラッシック」「うおおおおお」「な。なんですか?」 1年のわたし達はわからずきょとん。 「むっちゃくちゃ、めんどいんだよお」サキ先輩が言う。 「でもそのぶん、やりがいがある。」まねきさんは不敵な笑顔で言う。 「さあ、しごくよお!」まねきさんの掛け声でわたし達は「ひいい」とそれぞれの楽器を手 に、紀香先輩のリードで練習を始めた。にほんブログ村
2010年05月25日
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うちは寺なので、朝は早い。のんびり寝ているあたしは、結局毎日野太い男達の読經で1回 眼をさまさせられあとはうとうとする羽目になる。 読經までさせられてたまるかい。結局、宿題3時までかかって、夜食までさしいれてもらっ ちゃったんだから・・・・。夜中にドアの外に人の気配がしたと思って開けたら、おにぎり と味噌汁が置いてあった。なんてありがたい。そうなりゃがんばるしかないじゃないか。 ちなみに人相の悪い男達は寺男や修行僧ではナイ。刑を終えて行き場のない元受刑者を じいさまが更生と宿泊所を兼ねて置いているのである。郷に入っては郷に従えという訳で、 彼らは寺の生活を受け入れているわけである。 で、じいさまを『老師』、あたしを『お嬢』と呼んでいる。当初「お嬢様」と呼ばれておも わず、おーほほほほほほほと笑いたくなったので、「様を抜いて欲しい」と頼んだ。 連中もその方が呼びやすいらしい。 「お嬢、時間です!」ドアの外で声がする。眠い目で目ざまし時計を見ると、NOOO! 遅刻するぅ!慌ててベットから跳ね起きて、もそもそと着替えていると、聞こえなかったか と思ったのか、再度また「お嬢、時間です!!」と声がする。 よし、着替え完了!カバンの中身もOK。「おじょ・・」がこん!「う”っつ」 「じゃかーしぃ、きこえとらーな、何度も呼ぶんじゃねいやい!」 ドアを勢いよく開けた所にまるはげのヤスがいて、顔にヒットした。 「お嬢、しどい」「ヤス、ごめんよ。遅刻しそうなんだ、許して」拝む真似して踵を返し、 2階から飛び降りそうな勢いで降りて行く。 「こりゃ、萌菜果。静かにせんか、朝もたべんとばてれんの学校へ行くのか」 イマドキばてれんなんて、かえって新鮮だよ。「お嬢、これを」圭吾が包んだおにぎりを渡 してくれる。「サンキュー、圭吾。じゃ、じいさま、行ってくるよー」 「おお、しっかり学べよ」 あたしは愛車の阿吽号(自転車)に乗って、学校へ向かってかっ飛んで行った。 「いっけー、阿吽GO!」言いながらも脚はこぎこぎ、風はうけうけ、ああ青春ってか。 裏道を通って信号に引っかからないように、学校に到着。自転車を駐輪場へ置いて、さて、 どこから入ろうか。朝の御ミサが始まっていて皆講堂にいる。 垣根の隙間から入り込み、とりあえず誰もいない教室に入り込む。皆と同じにバックを置い て、圭吾が渡してくれたおにぎりをほおばる。あ。これ夜食と同じ味。圭吾だったんだ。 帰ったら、お礼を言おう。おにぎりを食べ終わり、ぺろりと舌で指を舐める。 洗面所へ行って手を洗っていたら、ミサが終わる鐘の音がした。んー、今日もいい音。 あたしは恍惚とした。それからミサから戻ってくる連中にこっそりと混ざった。 「あれ、もなか。あんたいたっけ?」「んー?やだなあ、いたよ?」 そして今日も、一日が始まる。にほんブログ村
2010年05月24日
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あたしの名前は、相柳 萌菜果(そうりゅう もなか)。変わった名前だけど仕方ない。 「もなかー!」「街中で大声で呼ぶなー!」 こんな時、名前にあきらめがつかない。「ナニ、大声で呼ぶ理由は?」つい卑屈に小声で 言ってしまう。友達の加倉井 美星(かくらい みせい)は豪快に笑って背中をばしばし叩く。 「やーね。呼んでみただけ」くぉんのー。ヒトが気にしていることを・・・。 「あったし、なにせスターだからさ」へえへえ。確かにあんたの名前にゃ星の字が入ってい るよ。 アンタはにしきのあきらかっ。スターの一言の時、髪をふぁさっと振るの止めてくれないか な。 花形 満を思い出すよ。 「あたしらふつーのじょしこーせー、なんだからさ。」「花の女子高生、目立ってナンボ よ、もなか」「時代は女子中だよ」「ふーんだ。青ケツのがきんちょに負けてたまるか」 どーゆー性格よ、コイツ・・・。 「とりあえずさあ、なんの用?」ため息交じりに聞いてみる。 「合コンセットしたからさー、頭数にはいってよ。スターのお願い」 「あけすけだな。断る。あたしゃ、用があるんだ」「えー、なんの?」「鐘つき」 「・・・・ なんじゃそれ」 「うち、寺なの。じゃね。またガッコであいましょ、スター」 あたしは呆然とする美星を残してさっさと家路を急いだ。 家に帰ると、じいさまが出かける用意をしていた。「法事?」「うむ。酒井さんとこ、亡 くなられてな。行ってくるわ。鐘つき、頼むわ」「わかった」 あたしは丁度に戻れたので、すぐ鐘突きに入った。うーん、この澄んだ音はいいものだな。 鐘をつき終わって家へ入ると、人相の悪そうな男達が「お嬢、おけぇりなせりやし」と声を かけてくる。「うん、ただいま。今日の食事当番、だれ?」「お嬢と、平太です」 「あー、悪いけどさー、宿題ちょっとあるから、誰か代わってくれないかな」 「あ、じゃあ圭吾がひきうけやす」「ごめんね、たのむね」 そう言って2階の自室に戻る。今日の宿題はしんどいんだわー。 あたしが通っているのは、敬虔なカトリックの女子校である。寺の娘が教会の学校って、矛 盾してると思うけど、ある理由であたしは今の学校を選んだのであった。 それは、鐘の音。鐘フェチといわれてもいい。うちの寺の鐘も澄んだいい音を出すが、学校 の知らせを告げる鐘の音も澄んだいい音なのである。澄んだ鐘の音に包まれていると、なん だか昇天しそうなくらい幸せな気分になる。 「はあ、やるかあ」 あたしは宿題を出してはじめた。窓の外には氷菓子のようなお月さま が樹にかかっていた。にほんブログ村
2010年05月23日
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ゆふみはすぐに乾いた自分の服に着替えた。借りた服は最初と同じように戻してしまった。 「どうもありがとうございます」お辞儀をしたゆふみを、史朗は抱きしめた。 「あ・・あたし・・穢れているから、あなたにこうしてもらう権利ない・・・」 「何言ってんの」史朗は少し腕に力を入れた。あたたかい、ここちいい、この人とはなれた くない・・・。ゆふみは泣きそうになった。 「行くぞ」見て見ぬふりした一矢が声をかけ、ゆふみと男5人は夜中に出かけた。 公園についた一矢達は結界と器具の準備をした。ゆふみには、翅隼がすでに人ではなく退 治せざる魔物になってしまったので、これから退治することを一矢が伝えた。 それから1コールして、翅隼をよびだした。 あまり待つことなく翅隼が来る。野球ができるくらいの公園なので人家は少し離れている。 「ゆ姉さん、帰るよ」翅隼はごく普通に言ってのけた。ゆふみは史朗の陰に隠れるようにし て立っている。「ゆ姉さん」今度は眼が紅く光った。男達は頭の芯がなにやらくらくらと し、ゆふみはふらふらと翅隼の方へ歩いていく。 「だめだ、行くな!」 史朗の叫びにゆふみの動きは止まった。そこへ達彦が銀の弾丸を込 めた銃で翅隼を撃った。翅隼は右頬に大きなかすり傷をつくった。そこから血が出て止まらない。 翅隼は達彦に向かって腕を伸ばし、エネルギー波を打った。それが腹部に当たり、達彦は後 ろへ吹っ飛んだ。今度は匡が聖水を入れた割れやすい球体を、スリングショットで撃った。 翅隼の胸に当たり、煙がでている。怒った翅隼が数歩動いた時、その動きは制止させられた。 結界に誘導されたのだ。聖水を入れたくさびで結界を張り、その中へ翅隼を閉じ込める計画だった。今度は一角魚の剣に気を入れていた一矢が動こうとした時だった。 「待って、一矢さん」ゆふみは走って一矢のもとへ行き、剣を奪い取った。 「くっ・・・」ゆふみの手から煙が上がる。 それから彼女は弟の所へ向かった。もとはといえば、あたしのせいだ。あたしに、エネルギ ーを与えようとして翅隼は魔物になってしまった。翅隼を魔物にしたのは、あたしだ。 あたしが、終わらせなければ・・・。 「きゃっ」 結界の中にはいってゆふみはさらに翅隼に近づいた。 「ゆ姉さん」「ごめんね、翅隼。翅隼はあたしを・・・護ろうとしてくれたんだよね」 翅隼はゆふみを抱きしめた。そのとき、ゆふみは出来るだけの丈で翅隼の背後から一矢から 奪った剣で自分をも刺し込んだ。 翅隼がゆふみにキスをする。それは最期のエネルギーを彼女に与えるためだった。 翅隼は刺された剣の両側からさらさらと黒い砂になっていく。そして砂の彫刻のようなすが たになり、ぱっと風に舞った。 「ごめんね、翅隼。マルタの業をあんただけに背負わせない。だってあたし達双子だもん。 翅隼はあたしの片われだもの。一緒に堕ちるからね」 腹部に刺さった剣を、もっと深くさしこもうとするゆふみに史朗が名前を呼んだ。 はっとして振り向く。だがゆふみは結界から出られない。史朗が駆けよってお互いが抱き合 える、そんな距離でゆふみは黒い砂の彫刻となり風に舞った。 からん。 剣が大地に落ちる。男達は器具の回収をした。車にそれらをしまう。 「ふみさん」紘一が声をかける。「彼女がいるよ。話したいって」 「おれ、視えないもの」「大丈夫。手をかして」差し出した手を紘一は握った。 「彼女はそこだよ」 言われた通りの方を見ると、透明で透き通ったゆふみと翅隼が立って いた。 『史朗さん、ごめんね、でも、ずっと一緒にいたかったよ。また一緒に山桜見に、お弁当持 って行きたかったよ』 「おれもいきたかったよ」涙声になりそうになる。 『史朗さん、だーい好き』 「うん、おれ・・も・・」ダメだ、泣くな! 『ありがとう、その言葉、大事にするね』 そういうと2人の姿は大気に消えて逝った。 史朗は黙って、袖で眼を拭った。これから、桜の花が満開の夜には思い出すだろう。山桜の 頃には頃には思い出すだろう。柔らかな声と笑顔、『史朗さん、だーい好き』。 時には独りであの公園をその時期に歩いて、思い出に浸ろうか? でも今は、そんな気分にもなれない。空虚な気持ちが心を支配する。 「おー、夜明けだ」一矢が空を見上げて言う。 「もう夏の空色ですねー」匡も見上げて言う。 今はまだ受け入れがたいけれど。いつしか時もすぎれば、おだやかな記憶にかわるだろう。 そして、いつしか空も夏の色になっていた。 『史朗さん、だーい好き』・・・。風がそう言って史朗の周りをまわっていった・・・。 桜 月 終にほんブログ村
2010年05月22日
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空間の先が妙な気がした。なんだろう。ぼくは不安な気持ちで部屋へ戻った。 「ゆふみ?」逃げることのないと思っていたゆふみがいなかった。生理だからあんまり動け ないはずだが・・・どこへ行った?エネルギーを早く供給してやらないと・・・。 お気に入りの白いワンピースがない。靴も1足足りない。どこへ行った? 「ん・・・」気がつくと何か様子が違っている。部屋のにおいも違う。 「気がついた?」史朗さんが襖を開けて声をかけた。「史朗さん?」私は思わず布団を顔の 半分まで隠した。あ、この布団、史朗さんのやわらかな安心できるにおいがする。 「わたし・・・」「倒れたからつれてきた。何か口にする?」「い、いらない」 夢じゃない?こうして話ができるなんて。もうあきらめていたことなのに。 あ、わたし、生理なんだ…大丈夫かな。おそるおそる布団を見ると…ダメ、遅かった。 「あ、あのね、史朗さん」「ん?」「布団、汚しちゃった・・・」 恥ずかしさで真っ赤になる。「あ」と史朗さんも気づいたようで顔を赤らめた。 「ちょっとまってて」 史朗さんはごそごそと、引き出しから何やら風呂敷に包んだ一式を出してきた。 「うちの姉が泊った時のセット。多分使えると思う」 お姉さんのスエット上下と生理用品、使わせてもらうことにした。汚れた服はつまみ洗いで 汚れが落ちたし、下着の汚れもなんとか落ちた。 「干すとこ・・・」「あ、うちは風呂場が干し場になってるんだ」 1時間もしないうちに、史朗の部屋に一矢と匡、達彦が集まり、チーム全員がそろった。 「今回の武器は、これだ」一矢は机の上に並べた。 「おなじみの聖水の瓶と、銀の弾丸の銃、それから、我が海江家の秘蔵の剣だ」 その剣は樹で出来ているようで違うような感じの見かけだった。持ち手はあとからとってつ けたと言うのがわかるが、ゆふみはみているとこの剣が一番怖さを感じていた。 「これは、なんの剣ですか?」 おそるおそるゆふみは一矢に聞いてみる。 「ずいぶん昔。うちの先祖が、一対の魚が打ち上げられたのを拾ったんだ。その魚には頭か ら1本のツノが生えていてね。深海にすむ一角魚で、うちの村では神様としてあがめていた んだ。神様が何百年に1度上がって来て、新旧交代で代わるんだ。元の神は上がって来てツ ノを切られて退魔の武器となるか、薬になるか、ま、そういうことになるわけ。」 (わたし、このツノの剣が一番怖い・・。という事は、翅隼にはこれが効くということ?) その時、ゆふみの携帯が鳴った。表示を見ると翅隼だった。 「出た方がいいよ」 紘一が静かに言った。ゆふみは史朗の顔を見てから、携帯を取った。 「はい」『ゆ姉さん、どこにいるの?』「ばらをくれたひとのところよ」 『今からそっちへ行って暴れるよ』「そんなことさせない」 一矢が代わってと手を差し出した。ゆふみはおとなしく携帯を渡した。 「海江一矢といいます。君が彼女の保護者?」『まあ、そう思っているよ』 「彼女を送っていく。近くの公園でいいかな。」『わかった。着いたらゆ姉さんの携帯から 1コールして』「了解」 一矢が携帯をゆふみに返した。「あの、翅隼は、弟は・・どうなっちゃうの?」 「君が一番わかっているはずだよ。退治されるのさ、彼はもう人間じゃない、魔性の者にな っているからね。」紘一がつぶやくように言った。 「行くぞ。夜の間にかたをつけるぞ」一矢が立ちあがる。皆がそれぞれ立ち上がった。にほんブログ村
2010年05月21日
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今夜は新月だった。ひどい腹痛にトイレへ行くのさえ動きがつらい。 翅隼はどこかへ出かけていなかった。ゆふみは白いワンピースを着たくなり、身につけた。 雨の音がする。今が外へ出るチャンスかもしれない。ゆふみは携帯を持って透明の安い傘を さして、部屋を出た。 少し歩いて公園へ行く。ここで、初めて史朗とキスをした。嬉しかった。想っている相手と 初めてキスしたのだ。 「あ・・・」 雨なのに、透明の傘の外に、満天の星が見える。どうして見えるの? それより。その美しさに目を奪われた。時間を忘れて魅入った。なぜだか涙がでてきた。 「ゆふみーさん?」 どきんとした。懐かしいとさえ思えてしまう、とても聞きたかった声。振り返るのが怖い。 心臓が高鳴り、飛びだしそうだった。動けないでいると、史朗の方から向いてきた。 「具合大丈夫なの?」身体全体が震えてくる。涙が自然と出てきた。 「あい・・・あいたかった・・・」言葉が自然にでてくる。 「おれもあいたかったよ」 抱きしめようとする史朗の動きに、ふらふらとゆふみは後ろへ下がった。 「だめ・・・。あたし・・・穢れているの・・・」 「ゆふみ・・・さん?」 ああ、桜の花びらの月があれば。あたしはそこを踏んで堕ちていくのに。あれはこういうこ とだったの?愛しいこの人の前から消えてしまいたい。 「ふみさん」紘一が走ってきた。「この辺りの雰囲気が変です。奴が来るのかもしれない」 「しはや、くる」傘を落として、両手で耳を押さえてゆふみはしゃがみこんだ。 「ええい、とにかくここから離れよう」 史朗はゆふみを抱き上げると紘一と一緒にその場から駆けて離れた。そして車でさらに離れた。 運転は紘一がしていた。後ろのシートで史朗はゆふみを抱きかかえていた。彼女は気を失っていた。 史朗の携帯が鳴り、出ると一矢だった。 「はい、今被害に会うかも知れないから女性1人保護してます」『被害者はその近くですで に出た。模様は完成したんだ』「そんな」「ふみさん、代わって」 紘一は路肩に寄せて車を停止させ、携帯を後ろから受け取った。 「一矢さん。鍵となる女性を保護したんです」『武器の調達は出来ている』 「よろしくどーぞ」 携帯を切って、返す時紘一が何気なく史朗に言った。 「ふみさん、今日ふみさんチに泊めてください」 「えー」紘一にはさっきの気になる言葉も聞きたい。「いいよ」。 紘一はそのまま史朗のアパートへ車をまわした。にほんブログ村
2010年05月20日
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「一矢さん、わかりました。これ、普通の家紋じゃありません。裏家紋です」 匡が新しい資料を持って席に戻ってきた。「裏家紋って、なに?」匡はきょとんとする達彦 と史朗ににっと笑ってみせた。「見つけたのは紘一なんだけどね」「あー、やっぱり」。 「で?」一矢は表情を変えずに聞いた。 「家紋って裏に返してもその形じゃなかったけ?」「裏家紋っていうのは、特殊な分家筋の ある家紋で、照合したところ、遡る所天草四郎の頃の時代なんだな」 「それで、このあいだ時期じゃないのに1人犠牲者が出たでしょ。あと1人で完成するん だ。桜と蝶の模様が」 「予想は?」「位置を照らし合わせると、史朗の住んでいる地域になりそう」 「え」思わず声が出てしまった。 「なんだ、史朗。」一矢が声をはさむ。 「ふみさん、近くに彼女いるから」ぼそっと達彦が茶化す。 「ほほう、彼女だと」一矢の言葉に「かっ、かっ、彼女だなんて」ひきつった表情の史朗に 「顔が真っ赤になってるぞ、おまえ」と一矢がとどめをさす。 「許可する。今電話しろ。」「はあ?」「注意するように言ってやれ」達彦と匡がニヤリとする。 「かけて、かけて♪」2人のコールに「やだ」と一言残して事務所から走って史朗は逃げ出した。 「一矢さん」紘一が声をかける。「時間がない気がするんです。次はなんだか武器がないと 危ない。そんな気がするんです」「お前の感は当たるからな。史朗が嫌がっても今日から張 り込みだ。それに武器は、とくべつな武器を二成に用意させている。」 一方逃げ出した史朗は屋上にいた。電話をかけてみるが、出ないので、メールにしてみる。 【ここのところ会っていないけど、元気?今忙しいから仕事が一段落したらまた、花を見に行く?】 あてにしてないメールだったが、思いがけなくすぐ返事が来た。 【史朗さん、会いたい。でも、もう会えない・・・】 【なにかあった?】【会えない…さよなら】 心の中はがらんどうだった。史朗に会いたくてたまらなかった。あの暖かい胸に飛び込みた かった。柔らかな空間に包まれたかった。でも、もう自分は穢れている。あの清らかな聖域 みたいなあの人に近寄れない。いくら泣いてももうどうしようもないことだ。 「電話してきたのか」一矢の言葉に、席に戻った史朗はびくう!とした。ゆっくり振り向 くとてへへと笑って見せた。 「なんか具合悪いみたいで・・・」「お見舞いに行ったらどうですか?一緒に行ってあげますよ。」 紘一がにっこりと笑って言う。「ありがと」 紘一の案でちょっとした花を買って行くことになった。 「ありがと、紘一っちゃん。おれ1人だったら花屋なんて恥ずかしくて行けなかった」 「そですか?割合平気ですけどね」「わーるかったね」 選んだのは白いかすみそうに3本の淡い色合いのピンクのバラ。その花束を持って、史朗は 紘一とゆふみのへやのドアをノックした。 「はい、どなた」 出たのは結構イケメンな男だった。「あ、あのここ加羅見ゆふみさんの 部屋じゃないですか?」「そうですよ。ゆふみ、いま具合悪いから」 男は前髪をかきあげて「なに?ゆふみに何の用?」。 「君は、ゆふみさんのなに?」紘一がさらりと聞いた。 「双子の弟の翅隼」「ふたご?」部屋の奥でゆふみがうごく気配がした。 「史朗、具合悪いならかえろ。」「そうだね。すみません、これ、彼女に渡してください」 「ああ、悪い。名前聞いてなかった。」「史朗でいいです」「そ」 花束を受け取ると翅隼はすぐにドアを閉めた。 「ゆ姉さん、いつの間にあんな男つくったの」寝室に裸で座っているゆふみに、花束を持っ て翅隼は近づいた。ばしっ!その花束でゆふみの胸から顔を斜めに打った。 はなびらがこぼれおちる。「あ・・あ・・・」「ゆ姉さんはもうぼくのものなんだから。」 自分の身体をむさぼる弟に抵抗する力はもう彼女にはなかった。史朗への想いだけが募り、 穢されていく自分を呪い、闇へ堕ちていく気がした。 【一矢さんへ。多分に犯人を見つけました。武器を用意してください】 紘一から、一矢へメールが送信された。にほんブログ村
2010年05月19日
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「ただいまあ」ゆふみが家へ帰ると部屋は真っ暗だった。 「あれ?翅隼帰ってないのかな?」電気をつけると玄関に彼のシューズがある。 「?」居間を抜けて、寝室の扉を開ける。「翅隼?具合悪いの?」 何かくぐもった声がした。「風邪でもひいたかな?」言いながらゆふみは翅隼のベット側に 膝をついた。 「翅隼」布団に潜り込んでいる弟に声をかける。「どうしたの、ほら、顔見せて」 もそっ・・・片手が布団の端をひいて、翅隼の顔が少し見えた。電気のつけない部屋で、し かも布団の中から垣間見えた翅隼の顔は、知らない人の顔に思えた。 「熱あるのかな?」おでこに手を伸ばしたゆふみの手首を、翅隼は掴んだ。 「翅隼?」自分の手首を掴んでいる翅隼の手がどことなく熱く、強いのが気になった。 「いたいよ、翅隼、離して」翅隼の眼が、紅く光ったようにみえた。 その瞬間頭が白くしびれて何も考えられなくなった。 ぐいっ。布団の中にゆふみは吸い込まれる。 (あ、あたまが・・・はたらかない・・・からだが・・・しびれる・・・これは、なに?) 混乱するゆふみはいつの間にか、自分がなにも身に着けておらず翅隼とつながっていること に驚愕した。 「しは・・・やめ・・・」声を出しかけたら唇で塞がれた。 お互いの体内でのエネルギーが大きな渦となって交換されていくのがわかる。 (史朗さん、たすけて!) (史朗さん、助けて!)ゆふみの声が聞こえた気がした。 「史朗、どうした?」「ん?ああ・・・助けを呼ばれたような気がした」「ふうん」 一矢は史朗を一瞥するとプリントアウトされた地図を確認している。 史朗はゆふみが気になり、席でこっそりメールを打った。 ブラームスが鳴っている中、ゆふみは翅隼のベットの中ではだかのまま虚脱していた。 携帯を取りに行く力すら身体の中に残っていなかった・・・。にほんブログ村
2010年05月18日
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2人して同じ夢を見た日。胡蝶の夢。ぼくの身体に変化が起きた。ゆふみの生理と関係なく。 専門学校へ行くのに電車へ乗る。混んでいる。いつものことだ。 ふと、視線を感じた。何気なくそちらをみると、女の子がぼくを見ていた。視線が合うとは っとしたように、そらす。・・・・なんだろう?身体の奥底で火種がついた。 ガクン。電車が揺れた。おやじが揺れたはずみでぶつかったぼくを睨む。ちらりと一瞥する と紅い瞳に驚いたのか、ばつの悪そうな様子を見せた。 降りる駅手前で降りると、その子も降りてついてきた。なんだろう。何かに惹かれて着い てくるような感じだ。いままでこんなことなかった。新しい力がでてきている? 「あ、あの」 声をかけられる。「なに?」立ち止まって振り向く。 「学校行くの、もう1つ先の駅ですよね。なんで、おりたんですか?」 「なんで知ってんの?」「あたしも、同じ専門学校だから・・・」 急に食欲がわいた。この子のエネルギーが欲しい。おもわず、唾液が喉をごくりと流れた。 どうして?ゆふみのときは、そんな感情もなく、ただエネルギーを補充しなきゃとしかおも ってないのに。どうして今は、そんな感情が動くんだ! これは・・・信仰にも背いた末裔への罰なのか? ぼくに、なにもさせないでくれ、ゆふみはぼくが守るからあの行為だけは仕方ないと思って してきたけど。ぼく自身には、なにも・・・。 そう思ってはっとした時には、次元の谷間で彼女の首にあさましく喰らいついていた。 体液を吸い取っていた。涙が流れた。ぼくはなにをしているんだろう。 いつものように異界の通路を通って彼女の遺骸を置き、その場から姿を消した。 今日は授業を受ける気力がもう、ない。ぼくは、もう人間(ひと)じゃないんだ・・・。にほんブログ村
2010年05月17日
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ベットの中で眼を覚ます。また、あの夢だ。あの夢の後は頭が重い。ゆふみは溜息をついて 頭の角度を変えた。隣のベットで寝ている翅隼の顔が見える。翅隼は天井を見つめていた。 「しはや」呼んで見ると、翅隼はゆふみの方を向いた。 「おはよう、ゆ姉さん」「おはよう。またあの夢、みたの?」「ん。ゆ姉さんもでしょ」 「そう。だから、頭重くて・・・」 改めてみると、ゆふみは夢の中の胡蝶に似てなくはない。先祖なのだから似ていてもおかし くはないのだが・・・。自分も少しは似ているってことなのか? 地獄へ堕ちただろう胡蝶が自分に転生したようにしたかにしか思えない翅隼だ。でもなけれ ば、ゆふみの生理の度に足りなくなる血を求めて吸血行為をするわけがない。 そして、ゆふみもそれを受け入れる器であることが、忌まわしい先祖の置き土産であるとし か思えなかった。 ”自分達はもうすでに人間(ひと)ではなくなっている” 翅隼はそう自覚しているが、ゆふみはそれを知らない。自覚以前の問題だ。自分からエネル ギーを与えられていることを知らないでいる。でも。ゆふみには知らないでいてほしい。 知ってしまったら、明るさがなくなってしまうだろう。それは耐えられないことだった。 「あれ?」 2人で上体を起こしてベットに座っていた時だった。 「翅隼。八重歯…生えてたっけ?」「え?」ゆふみの生理にあわせて、器用に出たり引っ込 んだりするようになった歯だった。「それに・・・昨日遅かった?眼、ちょっと紅いよ?」 身体が勝手に変化するようになってきているのに、翅隼は恐怖した。今まではその時でない と変化は起こらなかったからだ。 「しはや?」「あ、ああ、これ、カラコン。つけたまま寝ちゃったみたい」 「へえ、知らなかった。眼痛めるから、気ぃつけて…って、あんた、伊達カラコン?」 「別にいいだろ」翅隼はベットから降りて隣の部屋へ行った。 「なぁに怒っちゃってんだろーな、もお」 ゆふみはベットから降りると着替え出した。 翅隼は洗面所で鏡を見ていた。ゆふみの生理に関わらず、変化するサイクルが短くなって きている気がする。顔つきもちょっとずつ違ってきているようだ。 体液を必要とするのが、ゆふみのためだけではなく、自分のためにも必要になるようになっ たら? 今まではゆふみの為だったから出来た。でも、自分のためには使いたくない。 このままぼくは・・・どうなってしまうのだろう・・・? 夢の中で首を刀で掻き切った胡蝶の姿が脳裏をよぎった。 ”自分のコントロールがきくうちに。自分もそれに習おう”にほんブログ村 今日はとあるテストを受けてきました。いつもはノミの心臓ながら毛が生えている私です が、今日は緊張しまくりで、全脱毛。もうエステに行ったみたいにきれいにつるんつるん。 結果は3週間後に郵送されてくるそうですが、先生曰く「合格だったら、おっきい封筒、ハ ズレだったらちっさい封筒」でくるそうです。願わくば、おっきい封筒できますように☆
2010年05月16日
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「四郎さまが、討たれたそうだ」 洞窟の中にいたわずかな民は動揺した。天草四郎時貞。彼をよりどころに皆で支え合って、 デウスを信じ戦ってきた。洞窟の中にいたのは子供や女、怪我して動けない者だった。 「殉死(マルチリ)を遂げましょう」マルタ胡蝶(こちょう)が言いだした。 「敵の手に落ちて死するより、殉死をするのです」「マルタさま、自決は教えに反するのでは?」 その言葉を言い終わらないうちに男は、マルタに一太刀で切り下げられ倒れた。 「マルタさま!」「たきち爺!」「わたくしが皆をヘヴン(天国)へ送ってさしあげる。ヘ ル(地獄)へ行くのは、わたくしだけでいい。」 マルタは手あたり次第に手近にいる老若男女を切りつけて殺していった。 「あ・・・・あ・・・」 最後に岩壁に男の子が1人腰を抜かしてはりついていた。その子は伝令に使われていた子 で、片目を失っている。 「すまぬな、長吉。お前も皆と共へヘヴンへおゆき」その言葉の後、焼けつくような痛みが 肩から脚へと走った。ぐったりと倒れ込んだ長吉を見て、マルタは洞窟で皆で真摯に拝んだ この国では異国の神の像を見つめた。膝まづいて、十字を切り、手を合せて拝む。 「デウスさま。わたくしはヘルへ参ります。マルチリを遂げられず残念でございます。で も、皆の魂はヘヴンへ受け入れて下さいまし。」 そういうと、マルタは刀を自らの細い首に当て、力をこめてひいた。鮮血が飛ぶ。 焼けつく痛みに死にきれずにいると、長吉も同じらしく、うぞうぞとうめきながらうごめいている。 声はもう出ない。ひゅーと言う音が出た。それでも長吉は気付いたのか、ゆっくりとうごめ いて、マルタの方へ向かってきた。マルタも手を伸ばし、長吉の方へいざよる。 まるで、母子のようだった。だが、マルタが長吉の手を掴んだ時、彼はもうこと切れていた。 目の前が暗くなる。寒い。四郎さま・・・。戦うためとはいえ、共に過ごせて、胡蝶は幸せでした・・・。 その死に顔は、どこか穏やかなものだった。 にほんブログ村
2010年05月15日
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休みの日、史朗は近くの駅でゆふみをバイクに乗せた。ゆふみが翅隼にばれるのが嫌で、わ ざと少し遠めにしたのだ。駅から二人乗りで自然公園へ向かった。入園料を払って、中を2 人で歩く。 「史朗さん、バラが咲いてる!」「あ、あっちの花もきれい!」「ねーねー、あっちの花も きれいだね!」嬉しはずかしで、ゆふみははしゃいでいた。 「おーい、目的は山桜だろう」「はーい」たたたと史朗の所へゆふみは照れ臭そうに「え へ」と笑い、史朗の手をとった。「やっまざっくら~」歌うように声を出しながら、史朗と 手をつないで歩くゆふみは幸せそうにみえた。史朗もなんだか心がほかほかしてくる。 「あった!」 桜のコーナーで散ったソメイヨシノの他に、八重桜や緑の桜、淡い山桜が咲いていた。 山桜はまだ少ししか咲いていない。それでもゆふみは喜んだ。 樹の間を楽しそうにゆふみは練り歩いた。樹に抱きついた。寄り掛かって「ここでお昼にし よ」とにっこり笑った。 「山桜ってね、昔はソメイヨシノがなかった頃の花見の花なんだって。のどかなお花見にな ったと思わない?」「ふうん。これ、なに味?」「あ、みそ。へん?」「いや?いける」 「よかったあー」ゆふみはシャケの焚き込みごはんのおにぎりと、みそづけの鳥の唐揚げを 作って来ていた。 それでも、『足りなくない?』『味、大丈夫?』と不安げに聞いてくる。 史朗はそのたびに「大丈夫だが」といい、食べている。 「はい、お茶」「お、さんきゅ」「ほうじ茶です」「はーくったくった」「いっぱい?」 「おう」「よかった」にっこりゆふみは笑った。 お茶のカップを手にして、ゆふみは山桜を見上げた。「こんなに幸せなの、初めて」。 ふいっと顔をあげて史朗の顔を見ると、その腕にもたれかかった。 「こうしていると、怖い事もみーんな忘れちゃえる・・・」「こわいこと?」 「ん。夢の中でね、暗い闇に追われているの。そこに綺麗な月がかかっててね、あたしの足 元の水たまりにその月が映っているんだけど、その月は桜の花びらで覆われてしまっている の。でも逃げるためにそこを踏んで行かなくちゃならなくて・・・だけど、踏むとそのまま あたしその中へ落ちていくの・・・それが、すごく、こわい・・・」 史朗はよりかかっていたゆふみを肩腕で囲った。ゆふみの頭は史朗の胸にあたる。 とくんとくんと心臓の音がする。その暖かさと穏やかな音に、ゆふみは至福の思いで眼を閉 じて浸っていた。にほんブログ村 母が防虫剤を出して来ました。わたしはこの匂い好きなんです。 「じゃあ、いつももちあるけば?」と言われ「加齢臭もきえるか?」と言ったところ、 「混じり合ってすごい臭いになったりして」とトドメを刺されました☆
2010年05月14日
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一矢が印をつけていった被害者がどの地域に集中しているかを、残りの4人は見ていた。 匡がPCに入力して日付をつけていくと、被害地域は一定にしぼれないが、日にち的には しぼれた。 「月の周期と一緒だ」達彦が口にした。「ぴったりじゃないけど、28日だね」 「踏み込んで言うと、女性もそうだな」一矢が言う。 「じゃ、犯人は女性?」「どうだろね」史朗も口にする。 「地域が一定に定まらないのが気に入らないなあ。法則がみつからない」匡が髪をくしゃっ と手でかきむしった。 「犯罪の陰に女あり、といわれるけど、やっぱりこの犯人男だと思うな」紘一が言う。 「げえ、月の周期で男が吸血鬼になるの?」匡の言葉に、「狼男の例もあるだろ」とけろり と紘一は言葉を返した。 「はいはい、現実に考えましょ。イマドキ狼男や吸血鬼がいますかねえ」達彦が現実的に言う。 「だが、事実は吸血鬼だ。血液ばかりではない。体液まで吸いつくされているから、遺体は 骨のみだ。」 一矢が言葉を挟む。頭のなかには、先日会ったゆふみが気になる。 ”あの子が鍵のような気がするが・・・”心配なのは史朗のことだった。 「とりあえず、線でつないでみますか」 匡が点で表示していた日付と地域を、画面上でつなげてみる。 「あれえ・・・」 皆で思わず見入ってしまう。「これ・・・家紋みたい・・・」 誰かがつぶやいた。「検索してみろ」「かけてます」 一矢の言葉に、別のPCの前に座り達彦が答えた。 「リーダー、現存する家紋には存在しません」「つぶされた家紋か。探せるか?」 「やってみます」達彦は作業を続けた。 しばらくして達彦はプリントアウトした家紋を何枚か持っていた。 「うずもれた日本史ってところだね。完全なのがまだ分からないから、近いものをリストア ップしてみました。」にほんブログ村
2010年05月13日
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「二成、ちょっと見て欲しいものがあるんだが」 一矢が別チームにいる弟の二成に一声かけた。「ああ、ちょっと待って。この書類で終わり だから。」最後の文章を打ち終わるとプリンターから打ち出す。枚数を数えて、「山里」と 呼んだ。「これ、室長へ持って行って。」「はい」山里が行くと「お待たせ」と兄に向き合う。 「なに?」「これ見て欲しいんだ」一矢は携帯を取り出した。 「なに、彼女?」「視ればわかる」二成は携帯を開くと、先日のボーリングでのメンバーが 写っていた。しかし、二成の眼をひいたのは真ん中の娘だ。全体的に輪郭がぼやけてる。 白い靄がかかっていて、輪郭が透けて見えている。 「なに、これ」「お前にもそうみえるか」一矢は溜息をついた。 「これは俺たちにしか視えない。他の者にはただの愉しい集合写真だ。黙ってろよ」 「モチロン。それにしても、・・・この娘、生きているの?」「生きている。会ったよ。動 いていた。本人は自分がそんな状態だって知らないみたいだけどな」 「兄さん達の今回の仕事に関わってるね、この子。」「視えるのか」「絡んでいるのがちょ っと見えただけ。何かあったら言ってよ。これはうちの血筋の関連でかたをつけなきゃなら ない気がする。」「そうか」 「いざという時に備えて、用意をしておくから。兄さんは犯人の方を追ってよ」 「ありがたいね」「どういたしまして」 それからお互いの席へと戻っていった。にほんブログ村
2010年05月12日
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『今日は楽しかったよ。連れてってくれてどうもありがとう。』 ゆふみはベットの上で座ってメールを打っていた。少し薄暗い灯りにして、送信する。 思いのたけを全部綴りたい衝動に駆られるが、あえて押さえた。 「え」 史朗からメールが来た。専用の曲はブラームスの交響曲第1番。信じられない思いで鳴って いる携帯を見る。 『おつかれ。今部屋に戻ったとこ』 ・・・・それだけ?らしいといえば、らしいけど。ちょっと寂しい。 『今度、花見に行こうよ』誘いをかける。 『花見?終わりだが?』速攻返事がくる。なんだかくすくす笑えてきた。 『ソメイヨシノじゃなくて、山桜。淡い感じが好きなの。お弁当持って行こうよ』 『行くか』『わーい』 『じゃ、お休み』『お休みなさい』 電話でも済む事だが、ゆふみは翅隼の気配を感じていた。だからメールにしたのだが、これ はこれで意外で楽しかった。 心がふわりとする。ゆふみはそのままベットに潜り込んで眠りこんだ。頭をなでられた感触 を思い出しながら。 ゆふみが完全に眠った頃、翅隼が寝室に来た。ゆふみの枕元にある携帯に手を伸ばし、中 をみる。今日皆で行ったボーリングのメンバーで撮った写メが表示されている。 (さっきのブラームスは・・・?) それを調べようとした時ゆふみが寝がえりをうった。そ…と翅隼は携帯を元の場所へ戻す。 翅隼は溜息をついて、隣のベットに潜り込んで眠りについた。にほんブログ村
2010年05月11日
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夜、バイトを終えたゆふみは駅で史朗達と合流した。「わ、なんか人数多いね。」 ちょっとびっくりしているゆふみに、山里が「加羅見さんが可愛いからって人増えちゃった」 「え、え・・・」なんだか照れて頬が赤くなる。「かわいー、からかいがいがあるよなー」 「もう、ひどいな」からかったのかと思う中、ひそかに眼は無意識に史朗を探す。仲間達の 間に埋もれるようにいて誰かと話していた。 「史朗さん」自分から声をかけてかけていく。「おっ、きたな」史朗は笑顔で彼女に接した。 あ。史朗の側の男がなんだか怖くて、自然に史朗の陰に隠れた。 「どした?」「あ、うん。」 「初めまして。自分は海江一矢(かいえ いちや)と言います」そう言って相手はにっこり と笑って見せる。ゆふみの中の怖さが氷解する。史朗の袖を握って「初めまして。加羅見 (からみ)ゆふみです。」と挨拶した。 「じゃ、史朗。また明日」「あれ、おまえさん、ボーリングやらないの?」「ん。今日は止 めとく」 後ろ手に手を振って一矢は、帰って行った。史朗は自分を見上げているゆふみに気がついた。 「ん?」「やっと、あえた」にっこりと笑ってみせるゆふみについ、抱きしめたくなる衝動 を抑える。 「史朗さーん、海江さんは?」「帰った」「あっらー、そうなんだ。そろそろ行きません か?」「そだね」 みんなはそれぞれのバイクに乗る。ゆふみは史朗のバイクの後ろだ。彼女は思い切り抱きつ いた。(あったかい・・・・)しあわせな気持だった。 ボーリングは楽しかった。3グループに分かれて競ったのだが、女の子はゆふみだけだっ たので、ハンデをもらって点数を稼いだ。 帰りはそれぞれで、別れて帰った。ゆふみは史朗の住まいに近いとのことでそのまま後ろへ のせてもらっていた。帰りもしっかり抱きついて、暖かさを感じていた。 それはとても幸せで、このままずっとこうしていたいと思えた。でも、終わりは来る。 「ついたぞ」 ゆふみのアパートの前でバイクを止め、史朗はゆふみを降りるように促した。 「行っちゃうんだ」「今日はね。レンタル返さないといけないし」 「メール、ほしいな」ようやく振り絞った言葉も「そのうちね」。 「史朗さん、好きだよ」 バイクの手袋をしたままの手が伸びて頭をなでられた。 これはこれで・・・・きもちいいんだよね。とろりとしたところで、なでるのが≪ポンポン ≫と軽く叩かれるのに変わった。ふっと顔をあげると、「じゃ、行くね」手をあげてバイク はいってしまう。ゆふみはその後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。 それから、アパートに向かってぷらぷらと歩いた。 階段を上ると、翅隼が扉を開けて待っていた。「ただいま」「おかえり」 ゆふみが中へ入ると、ドアを閉めて鍵をかけた。 「ゆ姉さん、今の人、誰?」ゆふみ・じゃなくて、ゆ姉さんの時は何か危険な兆候だ。 「暗いから送ってもらったの」もうそれ以上ゆふみも言うつもりはない。 かたくなな表情になったゆふみに翅隼はそれ以上なにも言わなかった。 その表情のとき、何を言ってもゆふみには届かないことを彼は知っていたからだ。にほんブログ村
2010年05月10日
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今回は1.5人分の体液で、【ゆふみ】は助かった。移動はして行っているから、アシが つくことはあんまりないと思う。この能力に目覚めてから異界の通路を通って移動すること も覚えた。今、【ゆふみ】は隣のベットですーすーと眠っている。 これから先、ぼくらはどうなるんだろう。【ゆふみ】はどれほどの血を体液を必要とするの だろう。ゆふみはぼくがエネルギーを彼女に供給していることを知らない。ぼくが想いをこ めて、エネルギーを注いでいることを知らない。それでもいいと、思っていた。 動きがとれるようになって来てからゆふみがふと言う。 「あ、翅隼。今日ね、バイトの後ちょっと遊んでくるから」「へえ、どこ?」 「ボーリング。みんなとするの」ふうんとうなづいてはみせた。 ”どこのみんな”? ゆふみの交友関係はよくわからない。 「翅隼もさ、遊びに行っていいんだよ。彼女とかいないの?」 「いないよ」いたらそれはゆふみのためのストックだ。 「こんなに男前なのにね」ゆふみはぼくの顔を両手でかるくはさんだ。自分の顔が少し赤ら んでいくのがわかる。 「バイト、遅刻するよ」「あ、やだ。行ってくるね」「うん、いってらっしゃい」 ゆふみがバタバタと出かけた後、深いため息が漏れた。にほんブログ村
2010年05月09日
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洗濯をしながら、翅隼は考える。最近ゆふみのエネルギーの消費が早い気がする。生理の時に与えるエネル ギーは、以前は相手に貧血を与えるだけにとどまっていた。だが最近はどうだろう。相手が骸骨になるま で。体液を吸いつくさないともたなくなってきている。それも、1人分では不足気味で下手をすれば2人の 体液を要するかもしれない。 これは、いにしえからの罰か?先人からの罪が、ぼく達にでたのだろうか?もとは天草軍を裏切り、滅ぼす 方にまわった一族だときいた。ときどき、血に飢えた異端者が出るとも聞いた。昔は座敷牢に閉じ込めて餓 死させたときいた。デウスを裏切った一族として烙印を押され、闇の神と契約を交わしたとも伝わっている。 この、混沌とした世界でゆふみだけは絶対無二の存在だから。ぼくは、なんだってやる。 「ゆふみ」寝室をのぞいて声をかける。「コインランドリーに行ってくる」うん、とゆふみはうなづいた。 この分なら、貧血分くらいでずみそうだ。翅隼はペーパーバックに乾燥させる一式を入れて車ででかけた。 にほんブログ村
2010年05月08日
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会いたいな、でも今会えないな。電話をかける余力がない。寝ているだけで精一杯。 どうしてあたしの生理はこんなに重いのだろう?病院で診てもらうのは怖い。「うっ・・・」。 また血が大きな塊になって体外にでた。かえなくちゃ。でも、めまいがしてきた。貧血だ。寝てるだけなのに。 あたしは枕元においてある携帯で、隣の部屋の翅隼を呼んだ。「ゆふみ大丈夫か?」「トイレ、行くの。肩 貸して」翅隼はすぐきてくれて、布団をめくった。「シーツも代えた方がいいね」看護師みたいな翅隼に少 し顔を赤らめてあたしはうなづいた。「よっと」「やっ」翅隼はあたしを抱きかかえた。 あこがれのお姫様だっこ。史朗さんにして欲しいひそかな夢。弟で叶えられてしまうとは・・・。 翅隼はトイレまで行くとあたしを入れ、「シーツ交換するから、少し入っていて」という。そうでなくても くらくらで出れらそうにない。---ぐしゃ。背中に貼りつく違和感。「着替えのパジャマ、おいとくね」 トイレの外から翅隼の声がする。ご丁寧に、ほかほかの湯しぼりタオルと下着一式もある。 ・・・・出来すぎた弟である。あたしは血にまみれたパジャマ一式を脱ぎ、タオルで身体を拭き、用意され た着替えに身を包んだ。貧血で、翅隼がトイレの前で呼ぶまで眼を閉じて後ろへもたれていた。 「もう、いい?」 翅隼は用意が済んだあたしをまたお姫様だっこでベットへ運び、シーツを好感したベッ トへ寝かしつけた。「あと、洗ってくるから」「ありがとう」翅隼はちょっと笑って見せ、洗濯ものをかき 集めると洗濯機へ向かった。 史朗さん、今仕事中かな?電話かけちゃだめかな? 声が聞きたいな?何より会いたいな。 あたしはくらくらするなか、メールを打つことにした。 【お仕事おつかれさまです。声が聞きたくて電話したかったんだけど、お仕事だと悪いので、メールにしち ゃいました。とても会いたいです。】 それだけ打つのが精一杯だった。≪好きです≫とは恥ずかしくて打てなかった。こないだ言えたのにね。 そして、送信。届け、想い。 ******* 紘一が送り届けた頃、ゆふみに会いたいと思っていた史朗にメールの着信があった。「ナニ、宇多田ヒカ ル?」「いーだろ、別に」匡に茶化されていいかえす。名前を見て、ひやかされないようにさっと仲間に見 られないよう中を確認する。 素知らぬふりして急ぎで返事を打ち、送信する。 ******* 【会いたいね】すぐ返事が来るとは思わなかったので、あたしは驚いた。同時にとびっきりに嬉しかった。 にほんブログ村
2010年05月07日
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「なんか…また犠牲者がでたかも」紘一が夜も8時に事務所で言った。 「どの辺で?」一矢が地図を開いて聞いた。「んーと、華蓉区の一角のこの辺」紘一は迷いもせず答える。 そこで、帰りがてらチームで紘一の言う場所へ行ってみる。紘一はお寺の息子でカンがよく、こういった ことがわかるので檀家からは気味悪がられて、寺を継ぐのをやめたと言う。 行ってみると、女の子の一群れが「かほー」と名前を呼んで探しているのに行き会う。 「どうしたの?」こういうときは、ものやわらかな達彦が声をかける。ナンパ師のようだが、本人はあくま でも硬派だ。「ねえ、この娘見なかった?さっきまで一緒にいたのに急にいなくなって心配なんだ」 プリクラを見せられて、指をさされる。髪を肩までそろえた女の子が皆と一緒にピースしてる。 「ここんとこさあ、あぶないじゃん。だから固まってうごいていたんだよね、うちら」 「一緒に探してあげるよ、おれたち」達彦が言うと女の子達はほっとした表情をみせた。 「じゃ、俺らこっちの方探すから、きみたちはそっちの公園のほうさがして」「うん、ありがと、にいさん」 その頃には紘一は魂の光をみつけていたらしい。「こっち」紘一を先頭に歩いて行くと、繁華街の一角の隙 間といえる路地に、その子はいた。さっきの子達と同じ制服を着て、バックかけて、髪を肩までにして。 でも体の体液はなくなっているから、眼窩はくぼみ、骸骨となり崩れ果てていた。 一矢は首を確認する。確かに、2つの傷。「匡、警察に連絡」「はい」匡はすぐ携帯から警察に通報した。 紘一はその場を離れがたくいるその子の魂から聴きだしている。夢のようなキスの後、永遠の数分で命をす いつくされてしまったこと、やりたかったこと、相手の様子など、取りとめもなく話されることを聞いていた。 「それでも君は上へ上がらなきゃだめだよ。いつまでもここにいてはいけない。」 『しばらく一緒にいていい?自分でも見つけたいの』「君の想いの映像を俺の頭の中に叩き込んでくれたら、 おれが代わりに探すから。きみは上へあがるべきだ。」『みんなにお別れが言いたい』 「いってやれ」紘一が何も言わないうちに一矢が言った。紘一は達彦をつれて、女子高生達がいる公園の方 へ走っていった。 そんな頃警察が着いた。見事に疑われたが、人間離れした手口だし、連続殺人のつながりがあるとのこと からケロケロと笑えるくらい早く解放された。顔見知りの警部がいたのも幸いだった。 それから女の子達がいる公園へ行く。皆泣いていた。すぐ近くにいたのに、いなくなったことにきがつかな かったことへの後悔。もう会えないわかった事への悲しみ。 死んだ娘はこれを見て、どう思っているのだろう? 史朗はそんな事をふと思った。 友達が自分のために泣いてくれた事に娘は満足したのだろうか。紘一の頭に証言を残して、紘一に導かれ るように上へと上がって行った。 星が降るような夜だった。史朗はぼんやりと欠けていく月を見て、ゆふみにあいたいと思った。にほんブログ村
2010年05月06日
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「ゆふみ、帰ったよ」ぼくはドアを閉めて声をかける。返事はない。寝ているのか? 寝室を見ると青白い顔をしたゆうみが穏やかな寝息をたてていた。ぼくは近寄って顔を覗き込む。 眼を閉じて、ゆふみにキスをした。いま吸収してきたばかりの新鮮なエネルギー。それをゆふみに与える。 眠っているゆふみの頬が赤みをさしてきた。エネルギーを与え終えたところで、ゆふみがふ・・・と眼をひ らいた。「おかえり、翅隼。」「ただいま、ゆふみ。食欲、ある?プリンくらい食べられそう?」「うん」 手を貸して上半身を起こす。「こっちに持ってくる?」「んー・・・そっちにいく。」「なにかはおってお いで」「うん」双子だからどっちが上っていうのもおかしいんだけど、ゆふみの方が下に見られる。 劣勢遺伝なのかゆふみは背が低いし。ぼくは175だけど、、ゆふみは152。ここまで差があるのはめず らしい。親はもうなく、遺産で生計している。ぼくがゆふみに対してこの力に目覚めたのは、中学の時だ。 初潮を迎えたゆふみに恋をした。聖なる恋だ。報われない恋だ。どうしてぼくはゆふみにしか想いをよせな いのだろう。こんなに苦しいのに。ゆふみはぼくにとって、姉であり、報われない恋人であり、唯一無二の 愛しきものなのだ・・・。わが身を変えるほどに。にほんブログ村 靴づれしました☆おおっきです。皮もむけてます。左右共にですが、右の方がかなりおっきいです、歩き方が余計ヘンになってしまいました。バンソーコーも効きません☆
2010年05月05日
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人ごみに視線を感じる。あたしを、あたしだけをみている視線。視線の先を辿ってみる。いた。あの人だ。 黒髪がさらさらとしている。肩までのその長さは段が入っていて、色が白い。まるでアイドルみたいだ。 その人が近づいてくる。あたしは、それとなく皆からの輪から外れた。 「友達から離れてもいいの?」アイドルのJMみたいな声。どきどきしてきた。 「ん、ん。すぐ、追いつくからいいの」そう答えるのもまるで自分じゃないみたいに少し震えてた。 「一緒に行った方がいいよ。ぼく、怖い人だから」「えーうそぉ」「うそじゃないよ」 言ってすぐ、そのひとは素早くあたしにキスをした。とろりととけそう・・・。力がぬける。 あたしは心地よく彼の胸にもたれかかった。 「ほら、ね。逢ったばかりの君にキスをする、怖い人でしょう」どこか歌うようなその声に、あたしはまる で酔っていた。まだ高校生だけどお酒を飲んだ事はある。好奇心からだったけど、それも皆といたから。 わいわい楽しかったから。でも、こんなの初めて。制服のままあたし、なにやっているんだろう。 「怖くない」遠くから自分の声がした。とろりとして、心地いい・・・。 「そう」彼があたしの腰に片手をまわし、左側の髪を後ろへなでた。 「ん・・・」なにかが柔らかく触れた。頭の中が真っ白になった。そしてとろけるような痺れが全身を伝う。 「ん・・・!」あたしの中で赤と透明の渦が巻いた。それはすでに熱く感じている首筋に流れ放出されていた。 「んん・・!!」身体を離そうとしても、もう離れる力があたしに残ってなかった。 「んー!んー!」一番の灼熱が済んだ時、あたしの身体はからからからんと音を立てて崩れた。 「だから怖い人だっていったろ」 あたしが最期にきいた言葉だった。 そうして彼はあたしをそのままにして闇に消えて行った。現れた時とおなじように。にほんブログ村
2010年05月04日
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天城史朗のチームリーダー海江一矢はどちらかと言えば、クールだ。史朗と対照的だが相性はいいらしい。 「うちは辺境地のような田舎でね、俺は長男で後に3人の兄妹がいる男所帯だ」そのせいか面倒見がいい。 「とりあえす、今までの被害者の分布図を作ってみた」おーさすがリーダーとメンバーは小さく拍手をする。 「これ、リーダーの仕事か?」そう言いながら手際よく資料を出し、「で、これをインプットしてこーする と・・・」 パソコンがピと鳴って、画面に映し出す。 「全然わからん」自分のチームの言葉に、一矢は一同をぱきぱきと殴りたい衝動をおさえた。 「去年からなんだ。しかも、被害者の位置はばらばらといえる。年齢は大体高校生から25まで」 「時刻はこう」「大して遅くもないのか・・・」史朗がつぶやく。 「でも、なんでしょうね。現代の吸血鬼と言われて面白おかしく週刊誌に書かれているけど、首筋に2つの 傷穴。実際抜かれている血液。と言うか、体液。」須見の言葉に一同が黙る。 「それなりに誰も見ていないんだ。人がたくさんいていい時間だぞ」一矢はパソコンから皆に向き直って言う。にほんブログ村 意外にがんこな話です。のりのりでいきたいのですが、かたいかたい☆ 、
2010年05月03日
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抱きしめられた時、史朗が言った。「なんで、おれのどこがいいの?」「ぜんぶ」 そんなのわからない。史朗さんだから好きになった。史朗さん全部が好き。だから”ぜんぶ”。 抱きしめられて、心地よかった。いつまでもそうしていたかった。 「帰らなきゃな。だって、アパートすぐそこに見えてるし」「離れたくない」「うん、おれも。でも今日は 帰りなさい。」アパートのすぐ近くの公園をよこぎっていたから、まっすぐ見える、借りてるアパート。 史朗さんは少し身体を離すとにっこり笑って、頭をなでてくれた。子供じゃない。猫じゃない。でも、心地 よさに思わず眼を閉じてしまう。そうして送られたあの夜。 思い出すと顔が火照る。生理の痛みすら遠のいて行く。こんなの初めて。でも、痛みは全身にまわっている。 おなかだけじゃない。全身に針が刺されているみたい。お腹の中で何かが暴れているみたい。気が遠くなる。 どうして生理なんてあるんだろう。双子の弟の翅隼にはないのに。ずるい。 痛みの大きな波がゆふみをのみ込む。イタイヨ・・・助けて・・・史朗さん・・・あいたい・・・。 にほんブログ村 ゆふみにせかされてかきました。
2010年05月02日
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天城史朗が所属しているのは、湊区の『三友事務所』である。大学を卒業した3人の友達が始めた事務所は やがて大きくなり、それぞれの所長に納まった。湊区のレインボータワーに入っているのが、史朗のいる事 務所である。史朗のチームは海江一矢、江田紘一、須見匡、橘内達彦の5人で、リーダーは一矢だ。 「君達の所が一番面倒な依頼なんだがな。進み具合はどうかね?所長が気にかけておられたしね」 「まだ、仮定の域をでません。対策も練れません」 「君がそういうのならそうなのだろう。いいだろう。所長には私から伝えておく」「お願いします」 一矢が室長にそう伝えている。メンバーはやるせない気持ちだった。進まない捜査、わからない事件、読め ない先、どうしてこんなことがおこるのかわからない不安。 室長が部屋を出て行くと、各チームはそれぞれ集まった。 「一矢の所は大変だな。」「一番面倒な件を当たったからな」他のチームのリーダーが声をかけてくる。 なぐさめてくれているのだろう。「なんとかなるさ。人がやってることなら、必ずあしをだすからな」 一矢は笑って、答えた。それから、メンバーの方を向いて椅子に座り、「さ、じゃあ始めようか」。にほんブログ村 なんか淡々と続いてますが、今までとはちょっとテイストが違う?この淡々さから早く抜け出たい私に ポチの愛を!
2010年05月02日
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最近のゆふみはどこか変だ。時々ぼうっと赤い顔をしているかと思えば、タメ息をついたりしている。 「ゆふみ、なんかあったの?」「ううん、翅隼気にしないで」 ぼくはますます勘ぐる。双子だからわかるんだ。なにかあったんだ。いままではぼくだけの、ゆふみだった。 それが離れて行っていく気がしてならない。心のつながりの糸が細くなってきているようだ。 「ゆふみ、大丈夫?つらい?」「ん、しはや、ありがと・・・」 ゆふみが寝込んだ時こそ感じる、ぼくの必要性。 「ごはん、たべられる?何かたべられる?」「ううん、いらない」 ベットから弱々しく何とか笑ってみせるゆふみ。ぼくがどんなにゆふみのことを大事に思っているのか、ゆ ふみはわかっていない。 「あ、しはや」「なに?」「買い物のとき、その・・・生理用品おねがいできるかな?」「いいよ」 「ありがと」ゆふみの生理は重いんだ。そんなことさえ知っているのに。 ”どうしてぼくたちは姉弟なんだろう・・・”にほんブログ村 どこぞのキーを触ってしまったのかわからないのですが、とても小さいもじになってしまいました。 見えにくいです。どうやったらもどるのかしら(おろおろ)
2010年05月01日
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朝、出勤すると昨日一緒に飲んで騒いだメンバーが半分二日酔いでつぶれていた。 「天城さん、元気ですねー」 なかば嫌味で言われる。そんな連中に、史朗は『ベーっつ』 と舌を出して見せた。 ばこ。後頭部を軽く叩かれる。「ってーな、もお。」「いいトシして何やってんだ、お前」 相棒の海江一矢だった。昨日のメンバーには入っていない。どちらかと言えば、クールな奴だ。 「天城さん、昨日加羅見さんとこ送って行ったケド、天城さんのことだから、なーんにもな かったんでしょう。」「わーるかったな」 口ではそういうものの、内心(ところがそうじゃなかったんだよね)と切ないような甘さが 胸をしめつける。 「史朗」一矢が声をかける。「あ?」「お前なんかあったな」他のメンバーに聞こえないよ うに小声で言ってきた。「あう?」「そんな顔してんぜ、お前」「てめ・・・いちやーッ」 室内をかける2人を見て、「あー、また天城さんが海江さんに遊ばれている」と皆が見ていた。 「しっかしタフだよなー。おれたち、二日酔いだってぇのに、あの人1番呑んでてあれだぞー」 「はいはい、君達。騒ぐのはそこまでー」ぱんぱんと手を打って白髪の男が声をかけた。 「室長」皆はガタガタと自席についた。 「今入っている仕事での報告と、打ち合わせを始めよう。各チームで発表して行ってくれたまえ」 各チームはそれぞれ抱えている自分達の件を発表した。幼児失踪事件、大学生麻薬ルート、 そして史朗のチームが抱えているのは、連続女性殺害。 彼らは警察ではない。湊区にある『三友事務所』、通称”何でも屋”である。 にほんブログ村 マウスはPC教室で発注してきました。電気屋さんの方が安いのかもしれないけれど、いろいろあると、しっかりしたわかる人が付いていていただけないと、パニックになっちゃうんですね…。速くてGW開けてすぐ、らしいです。
2010年04月30日
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加羅見ゆふみは歌がうまい。と言うより、ノリがいい。周りを巻き込み楽しくさせるのは 天才じゃないかと天城史朗は感心してその中にいた。 「はあ~、酔っちゃったよぉ~」 皆で騒いだ帰り道、ゆふみは気持ちよさそうに少し千鳥足で歩いていた。「ふあっつ」 靴を滑らせ、体勢を崩したゆふみを少し後ろを歩いていた史朗は慌てて支えた。 「あーびっくりした。ふみろーさん、ありあとー」 舌も少しまわらないらしい。 「おい、大丈夫か」 ちゃんと立たせて声をかける。 「すごい、桜のはなびら。これで、すべったんらね」 夜の街道のような、桜の小道。ソメイヨシノが夜風にはらはらと散る。 そして空は星のない月だけのもの。はなびらがやけに美しい。 「きれい・・・・」「そうだな・・・」 2人して立ちつくし、空を見上げて、見惚れる。そしてなんとはなし、申し合わせたように お互いの顔を見つめた。少なかった2人の距離が縮まって、互いの唇に触れた。 「史朗さん、好き」 ゆふみは史朗の胸に抱きついた。せつない気持ちで史朗も彼女を包み返した。にほんブログ村 結局マウスは中で線が切れたのだと、PCの先生に見てもらった結果です。新しいマウスを 買う事になりました☆
2010年04月29日
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耳に芙蓉ママの呪文が遠く聞こえる。意識がぼうっとしている。アタシはそのまま上半身を 起こした。くらくらした。部屋中にアロマの香りが煮詰まりそうになるくらい漂っていた。 「蝶子ちゃん。」芙蓉ママが声をかける。「うう・・」ひばりと御前がうめいて身体を起 こした。「ママ、氷見子はー?」ひばりがだるい声で言った。 そうだ、氷見子。ママもアタシ達も氷見子のベットの側に集まった。 最初に瞼がぴくぴくした。顔の筋肉を動かすのがどことなくつらそうな後、ゆっくりとその 瞼が開かれた。紫がかった鳶色の瞳はあきらかに、生きた人形のようだった。 そして首がゆっくりと動かされ、掠れた声で「まま・・・」と呼んだ。芙蓉ママは口を手で 押さえて涙を流していた。甘ったるい声だった。 母娘の涙の対面から半月が経つ。御前とひばりは、自然と氷見子を護るために自分達がい ることを自覚しているようだ。肝心のお姫様はリハビリに努めている。なんせ、3歳から1 0年寝ていたのだ。普通だったら入院ものをママは独りで看ていた。 ママについては相変わらず謎が多い。そして、気になることがある。何故、呪いを受けなけ ればならなかったのか? 「ちょーこ」 氷見子が呼んだ。「なに?」呼ばれていくと御前とひばりもいる。 氷見子はママの占いの小部屋の大きな水晶玉の前にいた。「覗いてみて」 水晶玉の中で、花が舞っていた。散っていた。それは、カレイドスコープのように形を変 え、アタシ達の心に暖かな癒しを残した。水晶球は金木犀と銀木犀を映した。そしてその小 花はキラキラと舞いながら、いつまでも散っていった。これはこの子の原風景。 これからこの子達はなにをしてくれるのだろう。ママは何をさせる気だろう。 アタシはそんな事を考えながら、穏やかな気持ちで彼女達をみていた。 ≪ 花散る里 完 ≫にほんブログ村 実はもとは氷見子・ひばり・御前だけの話があったのです。でもまとまりがないので、蝶 子さんに出張ってもらったら、あら出来ちゃった☆ でも、長く書いてましたね、この話。 ブログ初めてそろそろ1年になります。年内に終わってよかったです。 次は『桜月』といいます。短めになる・とは思います。時期はちょっと外しましたが☆ こちらもよろしくおねがいいたします。
2010年04月28日
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「お前を氷見子に埋めたのは誰?」「わしは幼虫じゃったよ。わからぬ。他の仲間と一緒に 埋められた。」蠱毒・・・生きた人形。やがてこの異形の生物は氷見子の中を喰いつくし、 生誕するだろう。そして呪いは完結する。芙蓉ママはなんて言った? ”この子はわたしの身代り ”その引き換えはなんだ?[いつか話してくれるわ]摩利の言 葉に無理やり納得する。 バリバリと放電を続けるその手の力を、蝶子は次第に強めて行った。「げぶっつ」口から何 らかの液を吐いた醜悪な顔。 「お前を生かす気はないのよ」 「ごぶっつ」と言う水音みたいな叫びと、ぐしゃっという 蝶子の指が内側に食い込んだのは、同時だった。 しゅうと音をたてて蝶子の手から煙があがっていく。それをびっと振って祓った。 「御前、ひばり。もういいわよ。終わったの」 2人とも押さえている肌が白くなるまでぎっちり氷見子に抱きついていた。 「風が止んだわね」 嵐が去った後のような残骸さで、城もなにもなかった。ただあるのは、花ばかり。 「な。氷見子、穴あいてんで」 ひばりが言った。 「そうだ。お花、埋めましょう」御前が白いバラの花びらを拾いだして、ある程度貯めると 氷見子の穴に入れて行く。ひばりと御前がバラの花を(白に限らず)拾って氷見子の穴にい れていくのをみて、蝶子は『禁じられた遊び』と言う映画音楽をなんとはなし思い出していた。 「ちょーこ、きてぇ」御前が呼んだ。呼ばれてみると、白いエプロンドレスの所まであふれ たはなびらが奇妙な美しさを添えた氷見子が横たわっていた。 「あちき達、知り合いが亡くなると、お花でこうしてかざってたの」 それは妖弧との暮らしの中での埋葬。でも、2人は優しい心で埋めている。これを忘れて欲 しくない。「ランド(固定)」蝶子は印を踏んだ。 「あ・・れ・・?」 はなびらが風で宙に浮いた。「かざはな・・・?」思わず御前がそう口にしてしまうくらい ゆっくりと風とはなびらは戯れるように柔らかに4人を取り囲み降り注いだり離れたりした。 「あ・・・・・」 はなびらがすべて落ちると、そこはいろいろな花の咲く場所だった。下がり藤、桜、梅、 桃、金木犀、銀木犀、ライラック…まだまだ花が咲いている。 「なに、ここ・・・」思わず声がでてしまう。暖かい気持ちが3人の中へ拡がっていった。 「気持ちいい・・・」「いいかおり・・・」 「私のお礼ですの」不意に声がして、3人は声のする方を向いた。 並んで咲いている金木犀と銀木犀の木の間に氷見子が立っていた。「ここは私の大事な場 所。助けてもらったお礼のご招待」氷見子は少し上を向き両手を開くとはらはらと花が降ってきた。 それをしゃがんで大事そうに手で拾って行く。 「小さい頃、ママとこの花を集めて数珠つなぎにして首飾りをつくったわ」 それは最後の記憶のはず。この子はそれ以降眠りについている。 そして拾った花を、今度は頭の上へと放り投げた。花が、彼女の髪を飾る。 「助けてくれて、呪いから解き放ってくれてありがとう」 そういって、氷見子は花のように笑顔を見せた。 にほんブログ村 無線使用のマウスが今日急に使えなくなってました。昨日までは平気だったのに・・・。電池も残ってるし、再起動してもダメ。タッチパネルで今回は挑戦でしたがてがやっぱりさがすんですよね、マウスを。慣れってコワイですね・・・。
2010年04月27日
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渦は次第に大きくなり、3人を引き離そうとした。[離れちゃダメよ!]蝶子は自分達をも巻 き込もうとする空気に抗いながら、ひばりと御前の頭に直接言葉を叩きこんだ。 ひばりも御前も必死で氷見子の身体にしがみついている。 やがて渦は、いくつかに分かれ、部屋中を駆け巡り、そして大きくなっていった。 城がみしみしと音をたててきしみはじめる。そのうち床や壁が壊れて4人に向けて落ちだした。 ばん! 余裕のない2人に対して、蝶子が手をかざしてエネルギー波で巨大なコンクリート 片を粉々にした。シールドを張る余裕もない。 渦はますます暴れ出し、四方に散りだし、4人を囲む大渦だけが残った。 「おおおお・・・」 野太い声で氷見子がうめいた。身体がのけぞった。 [氷見子の身体から抜ける気よ] 思わず摩利が声をかけた。 蝶子は氷見子の身体を抑えつつ、右手にエネルギーを集中させた。 バリバリとその手から紫がかった青い放電が出ている。[摩利、タイミングを計って] 蝶子の言葉に摩利が反応する。氷見子の体内で変化が起こる。彼女の子宮から角を生やした 竜の眼を持つ頭でっかちの両手を縮めた存在が少しずつ体内から抜けようと浮上してきてい る。脚はナイ。まだそこまで育ってなかったのだ。この異形の者にとって、氷見子の身体は 盾であり自分を育てる養分であり媒体である。蝶子はわざと氷見子の身体に密着させていた。 自分の方がエサとして最適だとアピールしていたのだ。今回異形の者は気付かずにその手に 乗ってきた。 ゆっくりと、ゆっくりと氷見子の身体から浮き上がってきて、ついに皮一枚になったときだった。 [今よ、蝶子!] 摩利の言葉と同時に右手を放電させたまま、氷見子の身体に手を入れ て、蝶子は中の存在を掴んだ。そしてそのまま外へ掴みだす。 「はなせ」蝶子はぎっしりとその姿を掴んでいた。 「お前の他に、中へいるものはいるの?」「わしが喰ろうたわ。わしの他に何匹ものコアが いたが、皆わしが喰ろうてわしの天下じゃ」「お前は何をこの子にしようとしたの?」 「悪しき世界への案内人よ。この娘には力がある。闇に変えてやるのさ。番人の眼をかすめ てこちらへ呼び寄せて、人の肉は・・・・仲間の肉より、さぞうまかろうなあ・・」 けけけと笑ったその異形の者に、蝶子はうすら笑いを浮かべた。 にほんブログ村 昨日は書き込もうとしたら、アクセス拒否されてしまいました。混線するほど、みなさん使 用していたようです。そんなわけで、今回のは昨日の分は今日の分になってしまいました。 多分、次で終わりになると思います。すごく長くなっちゃったけど、もう次の話が降りて きているので、急ぎたいと思います。(次は短いかなあ)
2010年04月25日
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押さえつけられた氷見子は、身をよじり、もがき、あがいて、抵抗した。 ひばりも御前も蝶子に言われた通り力いっぱい押さえつけていた。それはさながら、白黒映 画の「エクソシスト」のようだった。口には出ない驚きがひばりと御前から漏れそうになる。 氷見子の姿が変わって来ているのだ。肌に模様が浮き、それの流れに沿って鱗が細かく生え きている。その鱗は全身に生え、自分の肌と当たるとすれて切り傷となったが、それでも彼 女達は氷見子を離さなかった。 次に氷見子の身体は鱗を炎と変えた。目の輝きは金色となり、紅蓮の炎を身にまとった。 「あつい、ちょーこ、あついよ、御前も燃えちゃう」ひばりが悲鳴をあげた。自分の髪を焦 がす臭いもして、肌もちりちりと感じていた。 「熱くない。これは現実ではないのよ、ひばり。深呼吸をして落ち着いて御前を見てごらん」 ひばりは言われた通り、深呼吸して蝶子の先の御前を見た。さっきは火がついてもえている ようにみえた御前が、何事もなく脚を持って押さえてる。 炎ではダメだと思ったのだろう、氷見子は身体の色を徐々に変えていった。 ---ぴちょん。水滴の感触がした。 「あっ、水妖」おもわず御前が声を出す。 氷見子の身体はアクアブルーの色に変わり、自分を水に還元しようとしていた。 「させないわよ」 蝶子がさっと印をかけた。水への還元はそれ以上進まなく、氷見子は悔 しそうに顔を歪めた。それからの氷見子の身体は、いろいろなものに変化をしては失敗した。 3人がしっかりと彼女を手放さなかったからだ。 「おんしら、いいかげんにこの娘から手をひけぇい!」野太い声で氷見子は叫んだ。 「引くのは、お前よ」 蝶子の言葉にごおうっつと風が起こった。その風は強く、4人を囲んで渦を巻いた。にほんブログ村 「トップをねらえ」と言うアニメを全6話というので、ネット配信で見ました。 なんか、がちで描いているようなアニメだったけど、「エヴァンゲリヲン」の監督が作ったということで・・・。「お姉さま」の名前がずっと「お姉さま」で通されてるのがすごいとおもいました。あは。
2010年04月24日
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紫の炎の中、それに縁取られたかのような氷見子の身体はその影を映し、美しかった。 やがてその白蝋のような頬にほんのりと淡い桜色が宿り、くちびるも桜色に染まった。 杭はもう肉体の中まで燃えてきている。その時、かっと氷見子の瞳が見開いた。 その瞳は紅色に染まって視えた。 杭の炎を身につけ、焼けない白い衣類に紫の炎が燃え移るが、彼女は全く燃えていない。 すっ。氷見子は素早く宙に移動した。紫の炎と青い炎はまだ消えない。 「あつくないんか、氷見子」一応銃を出せる体勢でひばりが見上げて言った。 「火傷もないみたいですけど、大丈夫なんですか?」御前も心配そうな表情で見上げている。 「今、焼いているのは彼女を支配している邪気。攻撃して来たら、ひばり、撃つのよ」 「ちょーこ、あちきは?」「御前はさっき吸い込んだモノを小出しに攻撃にまわして」 「やってみます」 蝶子はエネルギーでまた日本刀を出した。どうも今回この形が相性がいいらしい。 背中まである氷見子の髪が風もないのにふわりと拡がった。すっと右手を伸ばすと、人さし 指を3人にさし向け、紅蓮の小さい炎を弾きだしてきた。 それをひばりが撃ち、御前が手をかざしてマイナスの風で吹き消し、蝶子が叩き斬る。 それはとても永く感じた。ひばりも御前も初陣だけに力が尽きそうだった。 でも、ここで負けるわけにはいかない。2人はその一心で戦っていた。 その終わりはふいに来た。氷見子の杭が燃え尽きると、宙に浮いていた身体が力なく落下 してきた。「ナーイスキャッチ」蝶子が駆けよって抱きとめた。 「これで終わりではないぞ。我はこの娘から抜けるのに抵抗してやる。おんしら、耐えられ るか?」「耐えて見せる」蝶子が答える。「ひばり、肩を抱いて。御前は脚を」 2人はすぐに蝶子に言われたポジションについて、氷見子の身体を抱きしめた。 「ケェエエエエェェエエッェェエェェ!」 氷見子が反り返って叫んだ。すごい力で動こうと始めた。 「おさえるのよッ」蝶子が叫んだ。「ここが正念場なんだからねッ。」にほんブログ村 あと少しで、この話も終わりになります。ただ長いだけの話と言われないよう頑張りたい と思います。ちょうど「アリス」のはなしが映画で上映されある意味タイムリーかなと。 毎回がちで書いているので、登場人物の動きで思いがけないこともあります。 迫力が毎回足りないなあと思うんですが、気力不足ですね。でも、こんなに長くなるとは思 ってもみませんでした(笑)。
2010年04月23日
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杭を打たれて横たわっている氷見子は、不思議な事にその衣類に1点の血の痕がない。 蝋人形のように生きている実感がない。杭までもが彼女の一部のように違和感なく存在している。 吸い込まれるような美しさをもった、人形。実際、氷見子の胸は呼吸で上下しない。 ここでまた蝶子は思うのだ。”白系ロシア”。あきらかに遺伝還りかなにかのような血筋を 引いている。 「生きているん?」 少し離れ気味にひばりが聞いた。 「生気が感じられないわ」 御前が首をかしげていった。 「この木を抜かなきゃいかんのやろ?」ひばりの問いに、蝶子はうなづいた。 「どうやって抜くの?」 御前がひばりを見て言った。 「ちょーこ、抱き上げてよ」子供達は軽くそういうけれど。 「そうね」 返事はしたものの。 [覚悟が要りそうよ] [そうね、摩利] それでも蝶子は氷見子の身体を抱き起そうと、背中と太腿の後ろへ手をまわした。 やっぱり蝋人形のように固まって動かない。杭を外さなければならない・ふとそんな考えが 頭の中を駆け巡った。 「ちょーこ?」「ひばり、御前。少し離れなさい」 蝶子は左手を半分上げると、何故か召喚の呪文を唱え出した。バチバチと蝶子の左手のすべ ての指先から綺麗な紫電が放たれだした。 「エルフェィスト!」 叫ぶと同時に左手を氷見子の杭に紫電を当てた。ものすごい音がし て、杭は透き通った青い炎を灯し、棺桶が綺麗な紫の炎を飾るように燃えだした。 にほんブログ村 PC教室でした。行く時は小雨くらいでした。授業中先生がお天気をPC画面で検索して「10koさん来る時、雪でした?」「いえ?雨ですが…」 ところがです。終わって立体駐車場から出そうとしたら、大雪! 思わず先生に報告へ行っちゃいました。で、そのあとすぐ病院だったので、そのまま車を走 らせていたら、みぞれになって・・・・家に着く頃には雨でした。 4月の雪もここまでくるとめずらしいけど、タイヤ交換してないんだよね。てへへへ。 実はたすかりました(笑)
2010年04月22日
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蝶子がワンフロアを抜けるたびに、ひゅんひゅんと音がする。蝶子は3人全体にシールドを 張っているが、後ろにまわっているひばりにとっては、耳がちぎれそうな気がするくらい痛い。 「ちょーこ、まだー」思わず悲鳴に近い声でひばりは聞いた。 [思っているより深いのよ] 蝶子はひばりの頭の中へ直接声を叩きこんだ。 どのくらい降りてきただろう。だが、フロアはまだ続く。 「あちきが視たのは・・・青と白のダイヤ柄の模様の部屋・・・」 微かな声で御前が告げる。御前も耳が痛いのだろう。白く細い手が耳を押さえている。 しかもフロアごとに邪気や妖気、御前が最初のフロアで呑み込んだ異風が3人に絡んでくる。 壊さないで下へ降りていこうと思っていたが、流れを作るのに壊しながら進んだ方がよかったのか? そんな時視界がふ…っと暗くなった。スタンと床につくと御前の言う青と白のダイヤ柄の壁 が薄暗いささやかないくつかのランプで灯りをとり、部屋の中央に言われた通りの黒い棺桶 が置いてあった。 「マジであるゼ」ひばりが棺桶を見つめて言う。 「視たとおりだわ」御前がひばりに寄り添って言う。 「じゃ、あけよっか」「ええっ」「ほんまか」 頭の方を蝶子が、脚元の方をひばりと御前2人が持ってあけることにした。 「そーれっつ」 「うっ」ひばりが言葉に詰まった。御前は息を詰まらせ、手で口元を押さえた。 「クラシックだなあ」 蝶子がため息交じりに言葉にした。 手をおなかで組んで眠っているように横たわっている氷見子の胸には木の杭が打ち込まれていた。にほんブログ村 桜の花が今満開です。風にはなびらが、散りゆくさまはやはり美しい光景であるとおもいます。椿館は、あいかわらず椿も咲いています。 夜、お花見会場の公園にあるブランコがいつまでも鳴ってます。花見客が乗っているんでしょう。夜中のブランコの音は、どこか怖い気持ちを思わせます。
2010年04月21日
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吸い込まれるような風が城から流れてきた。それは妖気と邪気と悪意を孕んでいた。 半透明の氷見子が咆哮をあげた。蝶子は左右にひばりと御前を抱え込んでその口の中へ飛び 込んで行った。3人が近づくと、城の扉は開いて迎え入れた。その代わり3人が入るとバタ ンと自動で閉ざされた。中も外と大して変わらなかった。 [これが、あの子の心の中?] 思わず摩利が周囲を感じ取った。 [呪詛憑きのね。まいったなー。ここまでたまっていると素がわかりにくい] 大きなフロアに吹き荒れる異の風は、3人を取り巻いてその髪をなぶっていく。 「ちょーこ、なんや、くるしい」 まずひばりが音をあげた。 「そうね。しっかり気を持つのよ」 蝶子は言いながら周囲に目を配る。 「あちきが、吸い取ります」「御前、無理しないで。これはアンタには大きすぎる」 「ばばさまと一緒だから」 言うなり御前はその細い身体をしっかりと踏みとどまり、両手 を開いた。すうーーーー。 空気の流れが徐々に変わって行った。細い筋ができて御前の身体に吸い込まれて行くのを 最初に次々と筋が太くなり、それが御前の腹部へ吸い込まれていく。そして最後にはその身 体全体で風を受け止めていた。[御前の能力が上がって来ている]蝶子はまざまざと思った。 ついに部屋中の空気が浄化され、「あれ、息がしやすい」とひばりが言った時、御前の身 体がぐらりと前のめりに倒れた。「御前!」「御前!」蝶子は御前を抱きかかえる。 「視えました。氷見子は丁度この下、地下の棺桶の中にいます」 御前は掠れた声で伝える。「棺桶ェ?ドラキュラかいな」ひばりがポロリと言う。 ”呪いをこの子が受けて・・・” 芙蓉ママの言葉が思い出されると、それもあながちあり そうである。 「とりあえず、下へ降りるわよ。ひばり、またアタシの腰につかまって」 「えー。だってちょーこの腰って、細いしおヒップでかいし」「腰が細いから、おヒップが 少し大きめに感じるのよ!大体、滅多に男にも触らせないんだから感謝してつかまりなさー い!」「へーい」 ひばりがしっかりと腰に手をまわすと、御前を抱きかかえて蝶子はフロアの下へ移動して行った。にほんブログ村 オリーブオイルダイエットを友達から聞いてはじめてます。もう1本飲み切りました。2本目は友達が送ってくれたオイルを使おうと思って1口飲んだら、あれ・なんか辛さが感じられるぞ?と不思議に思っております。いろいろあるのね。 でも、ここで母の心配横やりが・・・。「1日1口ならともかく、のみすぎ」。食前に小さいスプーン1杯飲んでいるから、1日3杯なんです。多いですかね?
2010年04月20日
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ハァ~イ、猪ノ鹿蝶子です。10koのあほに言って、休息日をもらったんだけど、急にデー トが今日も入っちゃったんだな。なんてね。ちょっと違う用が急にきちゃったんだな。 緊急度合いがそっち優先なので、悪いけど、きょうも氷見子の話はお休みさせてねん♪ それじゃあ、グッナイ(chu ← 投げキス) アタシからアナタへ愛をこめて… なーんちゃって、キザだねこりゃ☆ (蝶子、きししと笑って退場)
2010年04月19日
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バラのとげでかぎざきをつくりながら、衝撃で飛ばされたひばりと御前はそれぞれようやく 起き上がった。「いたた」「バラのトゲが刺さっちゃったよ」ひばりは手の平のとげを抜い て、もりあがってきた血をぺろりと舐めた。 なんとかたちあがると、城の入り口で赤の女王と蝶子が戦っているのが見える。 女王はかなりの大刀をふりまわし、蝶子はその刃の上にのったと思ったらすぐさま飛び上が り、エネルギー波で出した日本刀で、女王の頭から地面まで、勢いをつけて切り落とした。 女王は、一瞬動きを止めた。ずっーーーー。わずかに左右がずれた。 ずさあっつ。女王の身体は、左右に分かれて倒れた。倒れてもなお、女王の顔は笑顔のまま だった。 「ちょーこ!」「芙蓉ママ!」ひばりと御前がそれぞれ叫んだ。そして2人同時に蝶子のもと へ駆けだした。 「壊れた人形よ。気にすることないわ。現実ではないんだから」 青空だった世界が一変した。暗い雲が立ち込め、つよい風が吹いてくる。 白い花弁が風にさらわれる。花々が風になびく。 ぐわぁ! 背後で邪悪な気配がした。3人同時に見ると、半透明の氷見子が城いっぱいのサ イズで獣の顔をして牙をむいていた。にほんブログ村 ワンピース、着るとにせ妊婦に早変わりの私。いっそこのままほんまものにと、ぐれたこともあったけど、いまじゃすっかり馴染んでしまって・・・このままにせ妊婦もわるくないかなと思う半分のわたし。半分は痩せようっていう私。女心は複雑怪奇です。
2010年04月17日
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「そこな者、ひかえい!女王様のおでましだぞ!」 トランプのキングにどやされる。反抗心むき出しの3人、そのままのやさぐれた立ち姿で迎える。 「よいよい、構わぬ。異国のものじゃ。礼儀を知らぬのであろう」 各トランプがわん曲にお辞儀をしている中、ずいっずいっと巨大なスカートを動かして女王 様が歩いてくる。赤を基調に衣装はきれいだ。髪はかつらだろうが、綺麗な赤毛がふっくら された見事な縦ロール。そしてその顔は・・・やっぱり、芙蓉ママだった。 覚悟はしていたものの、子供達はショックを受けたらしい。 「芙蓉ママ相手にできひんよ」「あちきたちにとっても、芙蓉ママはママだもの」 「それでもやるのよ」 蝶子の声は硬かった。 蝶子は膝まづき、赤の女王に声をかけた。 「おお、これは麗しき旅人じゃ。なんぞわらわに用か?」 「はい、お命頂戴いたします」「ほほほほ、笑わせてくれるの。斬首ものじゃ」 「冗談ではございませぬ」 言うなり蝶子はその場から跳躍し、エネルギー波で出した剣で女王の頭上から落下した。 「ちょーこ!」ひばりと御前が思わず叫ぶ。 ----ザスッ! 剣は女王の頭から串刺しにし、ひばりと御前はわれ知らず悲鳴を上げていた。 -とん。きれいな着地をすると蝶子は女王の方を見た。 女王は笑いながら、階段を降りてくる。その額から鼻の横を一筋の血が流れていく。 階段を降り終えた女王は両手を一定の幅に開くと何やら念をこめた。そしてそれを解放した。 「きゃああああ」ひばりと御前が巻き込まれてとばされた。その威風は味方のトランプをも 巻き込んで白いバラの海の中へ蝶子以外を飛ばし沈めた。 「仮の人形の割には、能力持ちだな」「ほほほほほ、斬首!」 言うなり、凄まじい速さのエネルギー波が蝶子の首を狙って飛ばされた。 「斬首、斬首、斬首!」 「壊れた人形か、アンタは」バック転をしながらそれをよけている蝶子は、一度体勢を整えた。 「ああ、壊したのはアタシか」 くすっと蝶子は思わず笑った。にほんブログ村 あいたいと おもう けど 、もっと やせて かわいく なれたら そう おもって いる うちに どんどん あえなく なって いく
2010年04月16日
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