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仕事しながらユーディ・メニューインのヴァイオリン演奏を聴いていた。彼のバッハのソナタ第4番 ( Violin Sonata No. 4 in C minor, BWV 1017) はことのほか素晴らしい(ピアノをグレン・グールドが演奏している)。
ところで昨日掲載したメニューインが実際に使用した楽譜を詳しく見て行くと、じつに興味深い。
バッハはこの曲想をGrave(グラーベ;ゆっくりと荘重に)と指定している。そこにメニューインは Adagio (アダージョ;おだやかに)と書き込んでいる。おそらく「荘重さ」が重苦しくならないようと言う程の意だろうが、4分音譜で始まる第1音を バッハの指示する f espr
さらに、第2小節に入り、ファミレドシと下降して、そのドシの運指を第3指をレガートでずらすと書き込み、次の同じシの8分音符にアクセントを付けている。
つまりこの下降部分のリズムは複雑で、付点16、32、16、32、32、8、32、32、16と移っているのである。したがってこのリズムで32分音符のドシを第3指をずらして弦を押さえ、そのまま8分音符のシを弾けば、おそらく8分音符になったメリハリがなくなってしまうだろうことは、音楽にまったく素人の私にも想像できる。
付点16はすなわち16分音符+32分音符。つまりここの基本リズムはタン・タ・タン・タ・タ・ターン・タ・タ・タンであるが、入りに微妙な味付けをしているわけだ。
この部分の音列のわずかな変形が5段目にも出てくるが、ここにメニューインはmeno(メノ;遅く)と書き込んでいる。たぶんテンポを少し遅くして変化を印象づけるためではないだろうか。
それにしても1音1音についてのメニューインの分析は大変なものだ。まったく恐れ入ってしまう。バッハの指定は完璧に再現しようという、彼の強い意志も読み取れる。表情記号にいちいち印しをつけているのだ。たとえば、 più f (ピウ フォルテ;今までよりも強く)とか、 sf (スフォルツァンド;アクセントより強く)とか、 molto espr .(モルト エスレッシヴォ;きわめて表情豊かに)など。
美術の歴史的巨匠たちの遺したデッサンもおもしろいが、このユーディ・メニューインの使用した楽譜もまことにおもしろい。というより、私は身が引き締まるような感動をおぼえたのである。
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