窓辺でお茶を

窓辺でお茶を

August 15, 2008
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カテゴリ: 舞台
 歌舞伎座にて一幕見で「愛陀姫」を見てまいりました。チケット売り出しの30分以上前に行きましたが、「紅葉狩り」から引き続きご覧になるかたが多かったので、立ち見でした。



 「愛陀姫」とは、オペラ「アイーダ」を野田秀樹氏が歌舞伎に書き換えた作品で、いつもの歌舞伎とは一風変わった趣向になっています。舞台装置も回り舞台を利用しながらも歌舞伎とは違う工夫がしてありました。音楽も、「清きアイーダ」や「凱旋の歌』が邦楽器や洋楽器で演奏されたり、最後の場面にはマーラーの5番が流れたり。

 木村駄目助左衛門なんていうと、ヒーローらしからぬ名のようですが、よく見るとキム ラダメス ケザエモン、と「ラダメス」がはいっています。

 身分のつりあわない家臣の駄目助左衛門に思いを寄せる濃姫は、霊を降ろしてお告げをするふりをして壷を売りさばいているインチキ占い師に、戦いの神が駄目助左衛門を総大将にするよう告げている、と言わせ、勝って凱旋した駄目助左衛門に当主斎藤道三は褒美に娘と結婚させると言いますが、実は駄目助左衛門は敵国から来て濃姫の侍女になっている愛陀姫と相思相愛の仲なのです…と、「アイーダ」とほぼ同じストーリーです。

 ユーモアあり、泣かせる純愛あり、面白くて一見の価値ありですが、宝塚判アイーダ「王家に捧ぐ歌」のような高揚感やすっきり感はありません。愛陀姫は、宝塚版アイーダのように、暴力の連鎖は自分の側から止めようというしっかりした信念を持った女性ではないので、後の世の人に何かを残すわけではありません。愛陀姫と駄目助左衛門のふたつの魂は一緒に空に上ってゆきますが、地上では、敵国の織田信長と政略結婚することになった濃姫が平和など来ないようにと呪い、最初濃姫を恐れていた壷売りは増長して権力の中枢にはいりこんで濃姫の運命までも左右できるようになってしまっているのです。(統一教会系の大会に祝電を送った安倍前首相が、祝電は秘書が勝手に送ったと弁明したのを思い出してしまいました。)

 それにしても、文楽も新しい風を入れる、というのなら、「狐と笛吹き」みたいな半端に新しいような古めかしいようなものではなく、このくらいやってほしいなあ。





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最終更新日  August 15, 2008 11:48:19 PM
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