2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
全2件 (2件中 1-2件目)
1
![]()
本日は、七沢またり著、チョモラン画『死神を食べた少女(上)』(エンターブレイン、2012年12月)について、思いついたことを書き綴っていきたいと思います。 この本のモトは、WEB小説らしいのですが、私はWEB小説は基本、読まない人間なので、元のお話は知りません。ただ、他の方のレビューやブログでは「WEBから加筆があり、はっきりしていなかった部分が書かれていたり」と書いてあるので、書籍化に際して作者や編集がある程度手を加えて読みやすくした作品なのかな、と思います。それではこの小説の中身に入っていきますが、この小説の「発想」秀逸なのです。それは本の主題にある通り、「死神」を「食べた」という少女が主人公という点です。これまで、死神と契約するとか魂を売るとか、または死神に憑かれた人を救うとか、退治するという展開のお話はありましたが、死神を「食べる」という発想は、私の頭の中で考え付かなかった斜め上を行くものでありまして、この本の主題を見た時から、面白い物語が読めそうだと期待しました。で、この物語の主人公なのですが、主題の通り「死神を食べた少女」です。この少女は、荒廃して内乱が勃発しているとある王国の貧村に住んでいる、人より少しだけ食欲が強い子です。その少女がある日、王国兵の偽装をした反乱軍の傭兵で構成された略奪部隊に村を襲撃され、少女、名をシェラというのですが、も傭兵に捕まってしまいます。この時、シェラは自分の最後の食糧を奪った傭兵を、自らが犯され殺されそうな状況下なのに、殺意を抱きます。そしてその殺意とともに、発狂しそうな空腹感に襲われます。そして何か食べるものがないかと血走った目で探したところ、目に入ったのがパンより美味しそうな獲物・・・。大きな鎌を持って黒い装束を身に着け、骸骨の仮面をつけた死神を見つけたのです。そして、自分を犯し殺そうとした傭兵と重なった死神の「美味しそうな」首筋めがけ、死神が振り下す鎌より早く、シェラは傭兵の喉を噛み切り、噛み千切った人肉を吐き出して死神に深く喰らいついたのです。そして、暴れ狂う死神の身体を押さえつけ、何度も何度も喉へ歯を突き立てます。生贄の予期せぬ反撃に死神は大鎌を手放し体制を崩します。そして、シェラは死神に喰らいついたまま決して離さず、ついに死神は力尽きてその場に崩れ落ちます。しかし、骸骨の仮面が外れると、そこには何もなかったのです!「死に行く者の野心や欲望を刈り取る死神が、食欲に突き動かされた少女に敗北した。」のです。これがこの物語の導入部分です。という次第で、始まりはかなりシュールな展開で始まるのですが、内容はかなり戦記モノ的な雰囲気の作品です。表紙や主題からは想像できませんが。でも、その内容は戦記モノといっても戦術戦略を競い合うような話ではありません。基本的にシェラが戦場で死神の大鎌を振り回して超人的な活躍をするところが、見せ場の一つです。そのシェラは、村を反乱軍に襲われたという理由から、王国の兵士として戦うことになり、個人的な武勲を重ね、部下の狂信的信頼を得て反乱軍相手に奮戦をします。しかし、出てくる味方は極々一部の例外を除いて無能で出世欲が強い俗物ばかりで、シェラとその隷下の王国部隊は戦闘では勝っているのに、全体的、戦略・戦術ともに次々と反乱軍に負けてしまいます。この辺が、腐敗して末期的症状の王国の姿を映し出していて、物語にリアリティを添えています。この物語の世界観ですが、基本ファンタジー世界ですが派手な魔法は出てきません。せいぜい魔法で爆発する地雷とか、医療目的の程度の魔法のみです。戦闘でも、火器はでこないので、冷兵器(剣とか槍)や弓矢や弩が出てくる程度です。そして主人公のシェラは死神を食べたことで無双の力を手に入れていますので、愛用の死神の大鎌をふるって、敵味方から文字通り「死神」のあだ名をつけられ恐れられます。そのようなところでは、主人公無双なお話が好きな人にもおススメな作品だと思います。ただ無敵というか、不死身な人間にはなってないので、その方面の話を嫌いな人でも読めると思います。そして、上下巻でしっかりと完結していますので最後まで安心して読めます。では、物語の中でシェラはどのような活躍をするかというと、大鎌で首を刈り取ったり、体を真っ二つにするなど基本的に敵、反乱軍は惨殺です。そして戦闘以外の時は基本なにか食べてます。行軍中でも戦闘前なら何か食べてます。もしくは飢えてます。この物語の中で、シェラは反乱軍を殺すことと、食べること、美味しいものを一杯食べることや、隷下の部下たちと食事を共にすることを楽しみに生きています。こういう意味では主人公のシェラは、自由奔放、気ままに戦争という舞台を駆け抜けていきます。そのような状況を、上下巻を通してシェラが能力を経て戦いに加わる所から、王国と反乱軍の戦いの後日談までストレートに一気に読めるように書かれたお話です。所々、ストーリーにほつれというか、突っ込みどころがありますが、そんなことを気にしないほど、この物語を読んでいると、ハラハラ感といいますか程よい緊張感があり、登場人物も先にも書きましたが一癖も二癖もある人物ばかり。そして読了後の爽快感は、何とも言えません。勝者の歴史の中で、不合理な犠牲として切り捨てられた者たちの思いを背中に背負い最後まで戦い抜く、敵から死神と呼ばれる少女、シェラ。負けゆく中で泥臭く、豪放磊落に生き抜く英雄の姿は読んでいて清々しくワクワクさせられます。見開きのイラストも素晴らしく、作品の世界観を堪能できます。上下巻で、2,100円とは安いと思う満足感あふれる作品です。
2013年02月21日
コメント(2)
![]()
みなさま、お久しぶりです。今日は樫木祐人さんの『ハクメイとミコチ(1)』(エンターブレイン、2013年1月)を紹介したいと思います。(左奥がミコチ、右手前がハクメイです。)この漫画は、私が珍しく毎号購入している雑誌(書籍扱いですが)『fellows!(volume 26(2012) 』(エンターブレイン、2012年12月)に連載されている作品です。『fellows!』は森薫さんの『乙嫁語り』や笠井スイさんの『ジゼル・アラン』など、質の高いマンガを連載している雑誌です。これまでは隔月発行でしたが、今年から、年10回の発行となり雑誌名も『ハルタ(1)』に新しく変わって、心機一転して発売されます。このため、私は月刊アニメ雑誌の購読を1つやめることになりました(>0<)話がずれてしまったので、元に戻します。この漫画の主人公は、ハクメイとミコチという2人の女の子の小人です。彼らの身長はわずか9cm。とても小さいですね。そんな2人は、森の奥の木の洞を利用して作った家に住んでいます。そして時々、仕事や買い物のため、街に出かけたりします。で、主人公の紹介ですが、まずはハクメイから。最初見た時は、一瞬男の子?と思ったほど活動的な子です。ミコチと暮らす前は、宿無し生活をしてたと言っていて、第4話の『星空とポンカン』で収れん火災(水を入れたガラスの容器や、ビー玉などが、レンズとなっておこる火災)で家が粉みじん(ハクメイが知り合いからもらった黒色火薬に引火したため)に吹き飛んだ時、修理のために外泊することになった際、手際よくポンカンの木の下に柿の葉で作ったテントを作り、食事のためのかまどを作ったりするなど野宿の手際の良い、アウトドア派です。仕事は修理屋さんで、第5話『仕事の日』では、風車の修理をしています。その他にも、刃物研ぎなどもしているそうです。体を使う肉体派さんでもあります。次に、ミコチの紹介をしますね。これはどこにでもいる普通の女の子です。家では料理などの家事を担当しているようです。街に住んでいたことがあるようで、第6話の『舟歌の市場』では、港町アラビで手際よく買い物をしていますし、荷物を預かってくれる常連の喫茶店兼呑み屋さんを知っているなど、本当の街娘みたいです。この第6話では、ミコチが買い物の途中に財布を落として、街の中を探すことになるのですが、街の住人、小人さんだけではなくて、タヌキや猫、トカゲにスズメ、カエルに猿などから「ミコっちゃん」と呼ばれたり、財布を落としたことを知った市場の人たちから干物や佃煮、漬け物等々をプレゼントされるような人気者のようです。また昔、洋裁のアルバイトをしていたので布に詳しく、とくに貴重な「ヒロムタ綿」で作った生地には目がなく、触っただけで綿と麻の配合がわかるぐらいの目利きでもあります。また、市場の飲食店から漬け用の醤油の味や粕汁の出汁、なめろうの味見を頼まれるぐらいに味覚が鋭いようです。ちょっとミコチの紹介が長くなりそうなので、段落を変えます。そのミコチの普段の仕事は、味覚の鋭さと料理の腕などを生かして保存食や日用品を作ることです。第7話の「仕事の日2」では、そのエピソードが綴られています。第2話「ふたりの歌姫」で山間の街マキナタの収穫祭で、歌姫として一緒に歌を歌った吟遊詩人のコンジェが、新築祝いにミコチの家にやって来ます。そこで、ミコチがジャガ谷の麓にある夢品(むじな)商店に先ほど述べた保存食や日用品を卸していることをコンジェに告げます。コンジェはそのお店のリピーターであると言って、ミコチが出す黒豆クッキー(コンジェの大好物)や、自分が新築祝いに持ってきたお茶がミコチの作ったものだと知って驚きます。そして、コンジェはなぜか安心します。なぜかというと、ハクメイとミコチが大食らいのくせに、働いているように見えなかったからです。このことを言うと、ミコチはコンジェの頬を思いっきりつかんで引っ張っています。そんな小人の2人が織り成す普通の日々を、2人以外の様々な登場人物、吟遊詩人のコンジェや研究者のセン、イタチの鰯谷(いわしだに)親方、喫茶店兼呑み屋のマスター、呑み屋・吞戸屋の姉妹が出てきてにぎやかにお話が進みます。あと、この漫画で面白いのは、先に述べた鳥や動物の他に昆虫も小人や動物たちと混ざって一緒になって働いている点です。例えば、ゴライアスオオツノハナムグリ(体長100mmを超える世界一思い昆虫)は個人輸送業をやっていたり、その同業者には小型輸送ひとり旅用のカブトムシなどがいたり、バッタが新聞配達をしていたりと、中々面白い世界観で描かれています。そのような世界観と登場人物の細かな設定が魅力的なこの漫画。とくにミコチの説明が長くなった原因の、出てくる食べ物が美味しそうに描かれている点も見どころの一つ。また、先にも出てきた動物や虫が意外とリアルに描かれていることも評価が高くなるところです。まあ説明しようとすると、書いてきたようにいろいろ書けますが、読まないとこの漫画の何とも言えない良さは、分からないと思います。また、これは『fellowes!』の作家さんの一部に言えることですが、絵が程よく細かく描き込まれ、これがお話に厚みを持たせています。絵の描き方も、びっしり描き込まれた背景なのですが、適度に空間があって息苦しくないのも良いです。日常系やほのぼの系、癒し系等のマンガが好きなら、間違い無く購入して大丈夫な作品だと思います。某ネット系本屋さんのレビューを見ると森薫さんの『乙嫁語り(5)』に挟んであった試し読みチラシを読んで購入した方が多いようですが先にも色々書いた通り、購入して損をしない1冊です。ぜひ樫木さんの描く、この世界観にどっぷりはまって楽しんでみてください。
2013年02月08日
コメント(0)
全2件 (2件中 1-2件目)
1