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えー、Canonが歴史に名を残しているレンズ、50ミリのF0.95についての覚え書きを少々。
何度も書いている通り、F0.95の発表は1960年のフォトキナ。発売は翌年1961年、昭和36年8月である。
価格は57000円。キヤノン7のボディと一緒だと86000円、F1.4のセットだと47500円。昭和32年に発売になった50mmF1.4の1型が25000円、34年の2型が18500円、31年発売の50mmF1.2が60000円。ちなみに昭和34年の14インチ白黒テレビが給料6ヶ月分の65000円、散髪が120円、100円銀貨は登場していたが100円札の方が利用されていたという時代なので、36年であれば恐らく公務員給料が12000円前後ではないかと思う。レンズだけで給料の約5ヶ月分。当時にマウント改造があったとは思い難いので、F0.95を使うためにはキヤノン7が必要となり、明るさがドリームであるならば価格もドリームであると言えたのだろう。故に「写真趣味はお大尽遊び」みたいに揶揄された時代の象徴なのかもしれない。
質量は605グラム。最大径と長さは79×47.8ミリ。フィルター径は72ミリ。最小絞りはF16。絞り羽は10枚。最短撮影距離1メートル。
レンズ構成は5群7枚の変形ガウスタイプ。設計は向井二郎。
見る者を吸い込んでしまうような大きい前玉の大きさは60mm。F0.95が得られるための入射ひとみの直径、つまり有効口径を計算すると、50/0.95で約52.6mmとなる。
構成図からレンズのサイズを計算すると、2枚目のレンズの大きさが約52mmである。光学が得意なわけではないので、以下は想像である。理論上の口径比から考えれば前玉は52.6mmあればF0.95が得られるわけだが、集光力あるレンズを使おうとすれば周辺の曲面がきつくなり収差補正が難しくなり、周辺光量低下の原因となる口径食が大きくなってしまう。そこで収差と口径食を補正して豊富な光を得るために、1枚目に有効口径より大きな凸レンズを持ってきて、2枚の凸レンズによる有効口径を52.6mmにしたのではないかと考える。
撮影してみると多少の周辺減光があり、周囲には樽型の湾曲収差が発生するので、この2枚がレンズと鏡筒のサイズから導かれた妥協点なのではないだろうか。
ガラスはオハラ製。硝材は前から順にLaSK(重ランタンクラウン)02、BaF(バリウムフリント)10、LaK(ランタンクラウン)13、SF(重フリント)4、F(フリント)16、LaSF(重ランタンフリント)01、LaSF01、となっている。この中でLAK13は良質の材料を得やすいが、それ以外は全て製造困難であり、耐酸性や耐候性不良、屈折率のバラツキ、着色などの問題点に結びつきやすいガラスである。設計を7枚構成にしたために、ガラスに負担がかかってきたのだという。ただでさえ高額になる要素を持っている大口径レンズなため、できるだけレンズの枚数を減らし、かつ実用的な範囲の重さに抑えることが重要なポイントであったので、当時の技術では硝材品質の均一性が取り難くい高屈折ガラスをリスク承知で惜しげもなく投入したのであろう。
したがって、レンズ品質のばらつきが結構あるとされているようで、いわゆる「当たり玉」と「はずれ玉」があると言われている。単純に区別することはできないだろうが、「当たり玉」は多少シャープで見た目の被写界深度が深く見えるらしい。実際光学計算上はF値と焦点距離で深度変化なぞ無いはずでだろうが、コントラストがあるので分離が良くてそのように感じるのではないか、いわゆるアンシャープマスクのような状態かと推測できる。自分のレンズが「当たり玉」であって欲しいが、比べる術はないので、気にしないようにしようと思う。
さて、気になるところはいわゆる「F0.95の写り」という噂話ではないだろうか。ネットに多少ある「使用感」をまとめてみたい。
1.無理な設計のために全面ボケ玉に思われがちだが、以外としっかりした描写をする
2.開放では周辺に比べるて中心部はきちんとピントが来た上におちついたハロがでる
3.周辺減光はそれほど落ち込まない
4.少し絞ると普通の描写になってしまう
5.湾曲収差は樽型が結構強い
6.F0.95とうたっているが許容誤差があり、実際はF1.0以上ある
7.想像している以上にフレアが出やすい
8.レンジファインダーの有効基線長を考慮すると、ピント合わせは至難の技
9.フローティング機構がないため、2メートル未満の撮影は急激に収差が増大する
とまぁ、誉れ高いノクチルックスと比べるとあまりにかわいそうな感想が多い。実際使い始めて日が浅いが、樽型湾曲収差は確かに強く感じるし、特徴あるフレアが出やすいのは確かだ。
F0.95をプアマンズノクチとは言えないかもしれないが、以外に見かける機会が多いと思われるレンズなので、これから存分に使いまくって噂の検証をして行きたいと切に思う。
できうることならひとりでも多くの人がF0.95を使ってみたいと思うように、感染活動に尽力したいと考えている。
以上。
↓の自分なりの感想。
基本的に前ボケがある写真を好んで撮らない。しかしこの吹き流しのような被写体を見たときに、「これは!」と思った。前ボケのチェックができること、レンズの能力が高い中央部にピントを持ってくる構図が取れること(いわゆる日の丸構図が面白い被写体)、元々光量が少ない吹き流しの下部なので周辺減光が強調できること、夕暮れなのでライトアップされており口径食の形や滲み具合がチェックできそうだ。ということを考えた。
F0.95も面白いレンズなのだ。
CANON LENS XI 50mm 1:0.75 II 2010.12.29 コメント(6)
コシナさーん!やってくれるじゃないです… 2010.08.26 コメント(12)
M9の拡大鑑賞 その2 2009.12.18 コメント(3)