ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン& オペラとクラシックコンサート通いのblog
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新国立劇場 14:00〜 3階左脇 ロッシーニ:ウィリアム・テル キャスト等は1回目に同じ というわけで観てきました。2回目。 まぁ、1週間前とそう変わらず。外題役が前回よりは頑張ってる気もしましたが、全体的にみなさんお疲れでしょうか、という感じか。今日もFではないよなぁ、あれは........ 今日聞いていて思ったことなのですが、結局、ウィリアム・テルも、ロッシーニなんですよね。最後、幕切れ前には、テノールのアリアがあって、嵐になって、大団円。これ、アリアと嵐の順序を変えれば、セヴィリアとかチェネレントラとかと同じパターンじゃないですか。いや、まぁ外面的な話で、だからどうというわけではないんですけどね。でも、そう考えれば、このオペラだって、ロッシーニの作品であることに変わりはないのかなと。 そう考えると、あのロッシーニの躍動するような、メリハリのある音楽が、ここでも身上なんじゃないかと思ったんですけれどね。そういう意味でのフレッシュさというのが、今回のこの上演にはないのかなぁと。 フレッシュというのは、別に演奏者が若くなけりゃ、みたいなことではないのです。ただ、音楽としてフレッシュでなければ、という。以前ブロムシュテットのシューベルトが若い、というような話を書いたと思うのですが、ああいうフレッシュな音楽でなければ、と思うのです。御年94歳だかの指揮者の振る音楽が若々しい。それはやはりそういう音楽だと思うのですが、シューベルトと同じような意味で、ロッシーニもフレッシュであって欲しいと思うのですね。いい悪いではなく、そういう音楽なのではないかなと。 そういう意味では、ロッシーニらしくないんです、今回の上演は。それは上手い下手とかではなくてですね。ロッシーニクレッシェンドじゃないけれど、なんというか、躍動感に欠けるような.....悪くない演奏だとは思ったけれど、なんか全体に物足りないと思うのは、そういうところなのかなと。 ここまであまり書かなかった演出について。どういう評価なんでしょうかね。一般的には。 まず、前回も書きましたが、この公演、服装について見れば、ト書き通りの13世紀のスイスではありません。その意味で、現代演出だ、と言われるのでしょうか。ただ、読み替えもない。 それはいいのですが、それもあって、結構舞台上では権力による暴力があからさまに出ている。そもそもこれはハプスブルク家に支配されたスイス人が自由を求めて戦う話。であれば、そういうものが出てくるのも当然なのではありますが、しかし、それが妙に生々しく見えてしまうのは、世情がそうさせるのでしょう。 私はこのオペラは以前ペーザロでの2013年の公演を観ています。その時の演出は、現代的かつ過激な演出で名の知れたグラハム・ヴィック。その際の演出は、方向性は今回と似たようなベクトルですが、なんというかもっと暴力が露悪的に直接的に描かれていた。例えて言えば、今回の新国が12歳以下お断りだとすれば、ヴィックのはR指定か18禁か、と言った具合。でも、暴力描写の生々しさでは2013年のペーザロの方が上だとして、舞台として提示されたものがより生々しく感じられるのは2024年の新国立劇場かも知れない。それは、今の方が、この話がより現代性を以て感じられる環境だからではないかと思うのです。 ヴィックの舞台を見ていた時、なるほど暴力とはこういうものだよなぁ、と、やはり何処か非現実的な感じで見ていたのですね。第三者的であることは変わらないのだけれど、2013年というのは、クリミア侵攻と香港雨傘運動の年、2014年の前年なんですね。パレスチナはずっとイスラエルの支配下にあるけれど、まだ香港は自由の砦であろうとしていたし、ウクライナはまだ戦禍に落ちてはいなかった。抑圧する暴力、というのを、未だ第三者ではあるにせよ、もっと生々しい形で目にしてしまっている今の方が、より凡庸であっても、より生々しい迫力を持って迫ってくるのですね。 ウィリアム・テルって、息子の頭の上のリンゴを矢で射抜くんでしょ、くらいのつもりで観ていると、そりゃ全然重い話になるわけですが、それ以上にとんでもない現代性を持った話になってしまうわけです。しかも、これ、見掛けがト書き通りではないね、というだけで、読み替えはほぼ無いし、プロットもほぼオリジナル通り。この話自体が十分現代性を持っている。しかも、もっと言えば、11年前よりよほど現代性がある話になってしまっている。そういう舞台になってしまっていたと思うのですが、さて、どう受け取られたものなのでしょうね。
2024年12月01日
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