偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2009.11.30
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カテゴリ: 若草読書会

(承前)明日香小旅行2日目です。
 朝9時少し前に祝戸荘を出発。智麻呂さんの車椅子は小生が押すことに。持参の折りたたみ自転車・トレンクルは謙麻呂さんに預ける。飛鳥川沿いに下って行くグループと稲渕宮跡の方を回って石舞台公園の最上部から入るコースを行くグループに別れて、石舞台の下での待ち合わせとする。遠回りとなるが、車椅子で行くには最上部から入る方が楽だし、眺望もその方が良かろうという偐家持の判断。車椅子を押しながら、トレンクルの謙麻呂さんと恒郎女さん、小万知さんらと行く。凡鬼さんは車で先回り。
 空は青く晴れ渡り、朝日のさやけき光がススキの白き穂と木々の黄葉を照らし、吹き来る朝の明日香風も澄んだ気に満ちて、冷んやりと頬に心地良い。智麻呂氏が明日香のこの風景を心から楽しんで居られる気配が伝わって来て、こちらも楽しくなる。公園に入ると更に紅葉・黄葉が間近くなり、あれやこれやと指さしながら行く。風舞台・夢の市茶屋の辺りで皆と合流。ここで、香代女さんが所用で帰途につかれ、他の12名で犬養万葉記念館に向う。
023犬養万葉記念館.JPG
犬養万葉記念館
022犬養万葉記念館.JPG

 犬養万葉記念館では、犬養先生と歩く大和路などのビデオをたっぷり見せて戴き、館内の展示などを見学、暫し、犬養万葉ワールドに心遊ばせる楽しさを味わうことを得ました。
 記念館を出て、板葺宮跡遺跡から飛鳥寺を経て飛鳥坐神社まで散策することに。
021万葉歌碑.JPG
 (万葉歌碑・平山郁夫氏揮毫)

 犬養万葉歌碑第1号がこれと同じ歌で、それは、向いの甘樫丘にあるのだが、車椅子では行くことが出来ぬ (前ページ参照) 。そこで、この歌碑を代用にすることとし (おっと失礼、平山画伯様。) 、この前で全員の記念撮影。
(注)昨日12月2日平山画伯がご逝去されました。(享年79歳)
     衷心よりご冥福をお祈り申し上げます。(12月3日追記)
  020明日香.JPG
(板葺宮跡遺跡から飛鳥寺への周遊道)
 遠くに見える人影は読書会の面々である。この辺りは万葉で「(大口の)真神の原」と呼ばれた原野にて、「いたくな降りそ家もあらなくに」という寂しい場所であったようだが・・。

大口 ( おほくち ) の  真神 ( まかみ ) の原に 降る雪は 
        いたくな降りそ 
( いへ ) もあらなくに (巻8ー1636舎人娘子)

  大口能 眞神之原尓 零雪者 甚莫零 家母不有國

(<大口の>真神の原に降る雪は、ひどくは降らないで欲しい。その辺りには家も無いので。)
019甘樫丘.JPG
 (甘樫丘)

 甘樫丘を左に見つつ、蘇我入鹿殿の首塚にお参り(墓には花が飾られ、草餅が2個お供えしてありました)。付近にはピンクのコスモスの花が咲いて、蝶(ツマグロヒョウモン?)が1頭舞い遊んでいる。恵郎女様が携帯でそれを写真に撮ろうとなさるが、写そうとすると、飛び立ち、不首尾でありました。
飛鳥寺 を過ぎ、 飛鳥坐神社 に到着したら、丁度正午。石階段を上って境内を見学する人の帰って来るのを待ちつつ、待機組は神社脇の運河遺構「狂心 (たぶれごころ) の渠 (みぞ) <説明板の英訳ではwildheart canalとなっていましたな。> や小さな実を沢山付けた柚子の木やらを眺めながらの四方山話。
 全員戻って来たので、引き返すこととし、サイクリング組が自転車を楽しんでいる間、智麻呂氏ご夫妻と凡鬼さんが過ごされた県立奈良
万葉文化館 の前まで戻って来て、隣にあるレストラン「酒船亭」で昼食に。槇麻呂殿と祥麻呂殿は亀型石造物遺跡の見学に行かれたが、後方を歩いていた、謙麻呂殿、恵郎女様、恒郎女様の姿が見えない。和郎女様が探しに行って下さったが、見当たらない。槇麻呂・祥麻呂ご両人の姿を見て、彼らも亀さんの方へ入場されたもののようでした。ユー・アー・ウェル亀でした。
 昼食後、凡鬼さんの車が停めたままの犬養万葉記念館駐車場に戻り、ここで解散。凡鬼さん・景郎女さんご夫妻と智麻呂さん・恒郎女さんご夫妻の4人は凡鬼さんの車で一足早い帰途に。残った謙麻呂、恵郎女、小万知、祥麻呂、和麻呂、槇麻呂、和郎女、偐家持の8人は飛鳥駅まで歩くつもりでいた処、バス停があり、時刻表を見ると午後1時58分発橿原神宮前駅行きバスがすぐに来ることが分り、皆、バスに乗ることとなる。
 かくて、偐家持もお役ご免となったので、そこで皆と別れて、自転車で帰ることにする。自宅までとも思ったが、途中で気が変り、奈良までにする。
013鍵・唐古遺跡.JPG 016鍵・唐古遺跡.JPG
 ( 唐古・鍵遺跡
011鍵・唐古遺跡.JPG
 (唐古池の東側から復元高楼を望む。)
012鍵・唐古遺跡.JPG

 近鉄八木駅付近まで飛鳥川辺を走り、そこからは、国道24号やこれにに平行する道を北上する。
 唐古・鍵遺跡が目に入ったので、立ち寄ってみた。この遺跡はかつて高楼の描かれた土器片(1世紀頃のもの)が出土して注目を浴びたものだが、今は訪れる人も余りなくて、復元された高楼の建物も寂しそうである。
009鍵・唐古遺跡から東方を望む.JPG
 (唐古・鍵遺跡から東方の山を望む。後方の山並の麓に、
  山辺の道が続いている。右手に形のいい三輪山が見え
  ている。)

006唐古八坂神社JPG
 (唐古八坂神社)

 この神社の脇に「田中荘」の説明看板がある。それによると唐古池の東に小字田中という地があり、その辺り一帯が田中荘と考えられるとのこと。田中荘は、紫式部の夫となった藤原宣孝が所有していた荘園である。彼と式部との結婚生活は2年に過ぎないから、式部がこの地に立った可能性は低いように思うが、この地に紫式部の姿を重ね合わせて眺めると、その風景も何やらゆかしいものに見えて来るから面白い。
田中荘付近のススキ原
 (田中荘付近のススキ原)
004大和川・帰仁橋上から下流を望む。.JPG
 (帰仁橋から大和川下流を望む。)

 大和川もこの辺りまで上流になると、小川である。更に上流に行くと、万葉では、三輪川とか初瀬(泊瀬)川と呼ばれる川となる。
003佐保川.JPG
 (佐保川)

 天理市、大和郡山市を経て奈良市となる。佐保川の近くまで来たので、もみぢや如何にと佐保川の川辺の道を走ることに。桜並木の紅葉が、もう盛りが過ぎている気もするが、実に美しい。
002佐保川.JPG
 (佐保川畔の道)

 近鉄奈良線の新大宮駅に4時半頃に到着。約2時間半のオマケ銀輪散歩でありました。距離としては20数キロ。脇道に入ったりの寄り道もしているが、30キロは走っていないだろう。自転車を折りたたんでバッグに入れて、電車で帰途に。帰宅したら、もう暗くなっていました。

001佐保川.JPG
 (佐保の桜の秋もよかりき)






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最終更新日  2016.05.02 19:54:07
コメント(18) | コメントを書く


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Re:(続)明日香小旅行・読書会の仲間と(11/30)  
いいコースですね~。
?0年振りに見る景色です。
のどかさも変わりなく、無性にまた訪れたくなりました。
明日路は犬養先生の引率で初めて触れた万葉の世界でした。 (2009.12.01 11:06:29)

こと、偽山頭火  
河内温泉大学教授 さん
素晴らしい行程でしたね。智麻呂さんも充分楽しめたことでしょう。
私も、跡を追って明日香に行きたくなりました。 (2009.12.01 11:40:05)

Re:(続)明日香小旅行・読書会の仲間と(11/30)  
nanasugu  さん
遠くから復元高楼が見えたら絶対に側まで行って見たくなる吸引力がありませんか?
惹かれます。
良い小旅行ですね^^ (2009.12.01 18:33:50)

カコちゃん08さんへ  
けん家持  さん
 明日香は、まあ多少観光地化してしまっているのは止むを得ないこととして、昔とほぼ変わらない景色で僕らを迎えてくれるのが有難いです。
 犬養先生の引率で明日香に行かれましたか。それなら、「采女の袖吹き返す・・」を犬養先生の朗唱されるのをお聴きになっていらっしゃることでしょう。
 是非またお訪ね下さい。犬養先生もお喜びになることでしょう(笑)。
(2009.12.01 22:04:57)

Re:こと、偽山頭火(11/30)  
けん家持  さん
河内温泉大学教授さんへ
 当日、参加出来なくなってしまわれ、残念なことでしたね。ブログは、参加の叶わなかった貴兄やリチ女さんへの報告も兼ねて作成しました(笑)。
(2009.12.01 22:09:33)

Re:(続)明日香小旅行・読書会の仲間と(11/30)  
小万知 さん
犬養万葉記念館で、犬養先生とゆかりの方々が寄せられた文集の中にけん家持様の一文も入っていましたね。
先生の晩年にご使用になられた車椅子が置かれていて、かって先生の移乗をお助けになられたエピソードを伺い、ぬくもりを覚えました。
智麻呂様との朝陽に照らされたススキの白穂の前のツーショット、200万ドルの笑顔(100万ドル×2)でした(笑)
入鹿の首塚の前に草餅のお供え、「そんなものいるか~!」なんてダジャレがどこからか聞こえてきたりして、笑えました♪
おまけ銀輪も素晴らしい景色に出会われたようですね。 (2009.12.01 22:30:09)

nanasuguさんへ  
けん家持  さん
 多分そういう吸引力があるでしょうね。小生は何回目かの訪問ですから、ちょっと感覚的なことは想像するしかないのですが、事情を知らず、この建物が目に入ったら、近付いてみたくなるのは間違いないでしょうね。
 先日も箸墓古墳の近くの纏向遺跡で、整然と配置された大型建物群遺構が発掘されて話題を呼びましたが、邪馬台国大和説には、この処、ずっと追い風が吹いています。孝霊天皇(神話上の第7代天皇)皇女ヤマトトトヒモモソヒメの墓と宮内庁が指定している箸墓古墳を卑弥呼の墓だと言う人もあるようですが、邪馬台国が大和なら、あり得ないことではありません。まあ、古代天皇陵など、被葬者については、日本書紀などの記述から比定したものに過ぎませんから、多くが眉つばものです。
 「そこにわたしは居ません。眠ってなんかいません。」と歌っているのは、古代天皇たちでしょうね(笑)。勿論、我々はお墓の前で泣くことはなく、首をかしげるだけなのですが・・死者に対する礼としてもこんなことでいいのかな、とは思います。
(2009.12.01 22:42:43)

こんばんは  
カマトポチ  さん
佐保川の紅葉は、桜並木なのですか、見事に赤い色をしていますね。
桜の花の季節も素敵ですか、紅葉も味わい深いです。
自転車で走るには素敵な並木道ですね。
(2009.12.01 22:52:34)

小万知さんへ  
けん家持  さん
 ブログでは紹介できない色々と愉快なことのあった、楽しい旅行でした。
 オマケの銀輪散歩も快適でした。立田越えで自宅までと思って走り出したのですが、北の空を見ると雲が張り出していて、ひょっとすると雨になるかもという不安もあって、行く先を奈良に変更しましたが、お陰で佐保川の桜並木の紅葉を楽しめました。
 「秋なのに、春の佐保姫の方に行くなんて、許しませんよ。」と、立田姫がヤキモチを焼いていたかも知れませんな(笑)。
(2009.12.01 23:19:52)

Re:こんばんは(11/30)  
けん家持  さん
カマトポチさんへ
 立田(龍田)は秋、佐保は春、というのが、平安時代以降の歌世界の定番となっている所為かどうかは存じませぬが、佐保川はずっと桜の並木です。春も見事ですが、秋も美しい紅葉を見せてくれます。北からは佐保川、秋篠川、富雄川、竜田川が。南からは飛鳥川、寺川、曽我川などが大和川に流れ込みます。
 歩いても、自転車で走っても、素敵な並木道です。
(2009.12.01 23:39:07)

Re:(続)明日香小旅行・読書会の仲間と(11/30)  
ひろろdec  さん
智麻呂画伯の明日香郷のスケッチも追々見せていただけるのかなとちょっとワクワクぎみです♪
ひとり。。足を延ばされた唐古の高楼は、面白い建築様式ですね。@@ノ
20~30キロの取材しながらの走破?には頭が下がります。お疲れさまでした~。^^ (2009.12.02 17:21:17)

ひろろdecさんへ  
けん家持  さん
 智麻呂画伯は滅多に風景画は描かれないのですが、明日香の絵は何とか描いて欲しいですね(笑)。
 自転車ですから20~30キロは散歩の範囲みたいなものです。大した取材にもなっていませんが、快適なサイクリングでした。
(2009.12.02 17:35:15)

平山郁夫画伯揮毫の万葉歌碑  
茨田童子 さん
お久しぶりです。
明日香にこの万葉歌碑があるとは知りませんでした。
折りしも、ご逝去されご冥福を祈りばかりです。
(田村泰秀氏の「万葉二千碑」にも掲載されていないのでは?)
なお、貴兄のブログで各地の紅葉めぐりを楽しんでいます。
(野中寺にもお染・久松の墓があるのですね・・・) (2009.12.03 10:48:03)

Re:平山郁夫画伯揮毫の万葉歌碑(11/30)  
けん家持  さん
茨田童子さんへ
 こちらこそご無沙汰です。コメント有難うございます。ブログはもう永眠ですか?
 平山画伯のご逝去は残念なことです。この歌碑は最近のものでしょうね。いつ建立されたのかは確認しませんでしたが、以前は無かったので、小生も「あれっ?」と思って、よく見たら、平山郁夫画伯の揮毫であった、という次第です。田村氏の「万葉二千碑」は小生持っていないので未確認ですが、掲載されていないですかね。
 当ブログ、その後もご覧戴いて居りましたか。有難うございます。野中寺の「お染・久松の墓」は、墓石の裏に「大阪東堀天王寺屋権右衛門」とあって、天王寺屋(油屋の豪商)が建てたもののようです。
(2009.12.03 13:41:26)

Re:(続)明日香小旅行・読書会の仲間と(11/30)  
いい写真ばかりですね。
特別の場所より懐かしいような
何か秘められたものがあるような
近畿地方独特の景色です。 (2009.12.03 17:39:45)

松風6923さんへ  
けん家持  さん
 僕らは飛鳥時代・天平時代などの歴史や万葉世界の醸す心象風景と重ね、その二重写しに景色を眺めているのでしょうね。だからこそ風景に懐かしさや温かさや優しさをも感じるのでしょうね。人は明日香に来て自分の心の中にある明日香を見るのでしょう。絵画もきっとそのような営みなんだろうと思いますが・・。
 今日の貴兄の絵は特に小生の心に感応するものがありました。
(2009.12.03 23:08:40)

Re:(続)明日香小旅行・読書会の仲間と(11/30)  
るるら.  さん
智麻呂氏もご一緒だったのですね。
お仲間方との楽しい会話も弾んだことでしょうね^^

唐古、鍵遺跡ですか、屋根に付いている唐草模様の飾りが面白いですね。田園風景も見事ですね^^ (2009.12.04 14:22:24)

るるら.さんへ  
けん家持  さん
 若草読書会は智麻呂氏を囲む会と言ってもいいようなものですから、当然に智麻呂氏も一緒です(笑)。
 今回は「万葉篇」にて万葉歌の勉強と共に、歌会などもして楽しくやりました。
 唐古、鍵遺跡の建物は、出土した土器片に描かれていた建物の絵からの復元です。一つの土器片には2層の屋根、大きな渦巻き状の棟飾り、3羽の鳥と思われる波線が描かれてあり、もう一つの土器片には、2本の柱と刻み梯子が描かれていました。描かれている建物は宗教的な性格の建物と考えられています。魏志倭人伝の記述する卑弥呼の宮室は「楼観、城柵を設け・・」とあるのですが、邪馬台国にはこのような建物が聳えていたのだろうと考えられましたが、最近、纏向遺跡から発掘されたのは、はるかに立派な建物でしたから、驚きです。邪馬台国かどうかは別にして、この大和の地に強力な国が当時、既に存在したことは間違いなさそうです。
(2009.12.04 22:37:15)

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