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ワインの寄託を受けた受寄者に定温・定湿義務の違反があったとして、損害賠償責任が認められた事例(札幌地裁 平成24年6月7日判決) 「事案の概要」Xは、平成11年4月、ワインセラーを所有するYとの間で、収集しているワインを、寄託料月額2000円、ワインセラー内を温度14度前後、湿度を75パーセント前後に保ち、光量はワイン保管に適したものに設定し、不要な振動・臭いの防止をも図ることを保管方法として、Yに寄託する契約を締結した。しかし、Xは、Yは、ワインを定温・定湿性能を保持して保管することが義務づけられているのに、この義務を怠ったとし、Yに対し、債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償を請求した。 「判旨」本件ワインセラー内の湿度については、低くなければ、カビは生えるものの、コルク栓がされた瓶の中のワイン自体にはそれほど影響を与えるとは考え難いものの、それでも、保管している段ボールが水気を含んで変形している状況は、湿度75パーセント前後での湿度管理を表明していることと整合するとはいえず、また、湿度については、高すぎても低すぎてもワインの熟成に影響を与え、味わいは風味が変化する可能性があると考えられることからすると、10度位まで下がった可能性がある本件では、14度前後で管理すると表明していることと整合しないのであって、上記のような本件ワインセラー内の温度や湿度、その状況が被告から原告に明示されていたとすれば、原告は、わざわざ料金を支払って本件ワインセラーの利用をすることはないといえるから、原告が本件寄託契約を途中解約等した可能性は否定できず、被告には、定温・定湿義務違反があったというべきである。花子は、年数回本件ワインセラーを訪れていると認められるところ、平成18年6月に異常を感じた時点では、温度や湿度に異常があったと認められるところ、それ以前には、花子も異常を感じていないこと、段ボール箱の状況やカビの発生状況を総合すると、少なくとも平成18年1月以降は、本件ワインセラー内の温湿度の管理が、きちんと行われていなかったというべきである。原告は、平成18年1月から9月までの間、本件寄託契約の保管料として平成18年6月までに20万円、同年7月から9月まで、毎月3万1500円ずつの合計30万2400円を支払ったと認められるところ、被告の上記義務違反を知っていれば、本件寄託契約を解約するなどして、原告は保管料を支払う必要はなかったと認められるから、上記額は損害と認められる。 判例タイムズ1382号200頁
2013.01.23
破産者が財産を隠匿等したことにつき免責不許可事由が認められた事例(東京地裁 平成24年8月8日決定) 「事案の概要」Xは、平成20年9月、Xが代表者を務めていたA社とともに破産手続の申立をして破産手続開始決定を受け、その後、平成24年7月に開催された債権者集会で廃止決定がなされた。<1>Xは、B農協の支店に預金等を有していたが、破産手続開始申立書の資産目録に記載せず、破産管財人が差押通知を受けてBに連絡をとった時点で、Xはその資産を解約・払戻手続中であった。<2>Xは、その所有するアパートは資産目録に記載していたものの、振込先の預金口座は記載しておらず、また、破産手続開始決定後、前記口座の名義を管理会社名義とすることを要請した。<3>Xは、駐車場土地、資材置き場については資産目録に記載していたものの、いずれも使用料収入があることを破産管財人に告げておらず、後者については、破産手続開始決定後、前記口座の名義を管理会社名義とすることを要請した。<4>Xは、破産手続開始申立の前日に、所有土地について売買を原因とする所有権移転登記手続を行っていたが、その旨を申立書に記載していなかった。<5>Xは自宅から退去するように破産管財人から要請され、引渡命令まで受けながら、任意の明渡を拒否したほか、敷地内の未登記建物について破産手続開始決定後に保存登記をした上、第三者に移転登記し、当該建物に転居するなどした。 「判旨」<1>から<4>の事実は、破産者が債権者を害する目的でした破産財団に属し又は属すべき財産の隠匿等破産財団の価値を不当に減少させる行為であることは明らかであり、破産者には、破産法252条1項1号の免責不許可事由がある。<5>の事実が、不正の手段により破産管財人の職務を妨害する行為であることも明らかであり、破産者には、破産王252条1項9号の免責不許可事由がある。裁量免責の可否について検討するに、破産管財人の意見は免責不相当というものである。そして、<1>破産者の前記隠匿等及び妨害行為に対して、破産管財人が訴訟や引渡命令等の法的手段に訴えることを余儀なくされ、そのことも原因となって、破産手続開始から廃止決定まで4年弱もの期間を要するに至っていること、<2>届け出破産債権総額は10億7482万8288円と巨額であり、にもかかわらず、破産債権者への配当はなされていないことなどからしても、免責不許可事由の態様は極めて悪質である。破産者の隠匿行為や妨害行為があったにもかかわらず、破産管財人の尽力により、相当額の財団形成が図られているが、破産者は発覚後も財団回復に協力するどころかこれを妨害までしているのであって、結果的な財団形成の事実により破産者の隠匿や妨害行為の悪質性が減ぜられることとはならない。判例時報2164号112頁
2013.01.15
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