全3件 (3件中 1-3件目)
1

共同相続人間において相続財産である可分債権につき遺産分割の対象でないことの確認を求める訴えの適否X1~X4及びY1・Y2はいずれもAの子であったところ、被相続人Aは、平成7年1月1日死亡し、X1~X4及びY1・Y2がそれぞれ6分の1の割合で亡Aを相続した。亡Aは預貯金を有していたところ、X1~X4は、この預貯金につき、各金融機関を被告として、法定相続分各6分の1の割合による金額の支払請求をし、その支払いを受けている。X1~X4及びY1・Y2の間においては、家裁でAの遺産分割審判事件が継続しており、ここでY1・Y2が、本件預貯金を遺産分割の対象として分割してほしいと主張し、X1~X4はこれを争ったため、X1~X4において、預貯金債権が「遺産分割の対象にならないこと」の確認を求めて本件訴えを提起した。原審は、訴えの適法性に関する特段の判断を示さないまま、訴えが適法であることを前提に実体審理をし、X1~X4の請求を認容した。高松高裁平成18年6月16日判決は、要旨以下のとおりの判断により原判決を取り消し、本件訴えを却下した。相続財産中に可分債権があるときは、その債権は相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各相続人に承継され、共有関係に立つものではない。家裁の実務は、可分債権も相続人間の合意を要件に遺産分割の対象となるとしている。1 遺産分割審判手続における前記合意は、当該可分債権を当該審判手続において遺産分割の 対象とするための要件であり、これが充足されているか否かの判断は事実認定の問題で ある。これは、家庭裁判所が審判手続中において遺産分割の前提問題として審理判断す るべきである。2 遺産分割手続とは独立して、可分債権の遺産分割対象性の消極的確認を求めることは、 共同相続人間での上記合意が存在しないという事実の確認を求めるものであり、そのよ うな確認が紛争の抜本的解決に資するものということはできない。3 共同相続人は、各自が単独で承継した分割債権に基づいて、金融機関に対し、個別かつ 独立にその払い戻しを請求することができるのであるから、預貯金に関する帰属の確認を 求める訴えは、その預金をめぐる紛争の解決にとって有効適切なものとは言えない。よって、本件訴えには確認の利益は認められない。遺産分割手続において、適切な解決を図るためには預貯金を分割の対象とする必要が高い一方で、被相続人間で預貯金の取り扱いにつき意見を異にする例も少なからず存在する。本件は実務の取り扱いの参考になると評されている。 判例タイムズ1277号401頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2009.01.27

破産管財人が破産債権の配当に係る源泉所得税の徴収納付をしなかったことにつき国税通則法67条1項ただし書きにいう「正当な理由」があるとされ、破産管財人個人に対する報酬の支払いに係る源泉所得税の徴収納付をしなかったことにつき同項ただし書きにいう「正当な理由」がないとされた事例本件は、破産管財人である原告が、個人としての破産管財人に対してその報酬を支払うとともに、破産者の元従業員らに対して退職金等を配当したものの、これらについて源泉所得税の徴収納付をしなかったところ、住吉税務署長が、破産者に対し、源泉所得税の納付告知処分及び不納付加算税賦課決定処分をしたことから、原告が、上記不納付加算税賦課決定処分の取消しを求めた取消訴訟である。大阪地裁平成20年3月14日第2民事部判決は、退職金等の配当に係る源泉所得税については、破産管財業務に携わってきた弁護士等によって破産管財人の源泉徴収義務を否定する見解をとるべきとする論稿が複数発表されるとともに、平成5年9月頃以降、この見解をとる旨が東京等の各地裁の破産事件担当部から公表され、破産実務において、これに従った取扱いが長期にわたりされてきており、破産債権の配当に係る破産管財人の源泉徴収義務について判示した裁判例も存在しなかったといった事情がある上、民事執行手続等における配当については源泉徴収義務がないと解する余地があること等を根拠に、原告が退職金等の配当に係る源泉所得税を法定納期限までに納付しなかったことについては、国税通則法67条1項ただし書きにいう「正当な理由」があると判示した。他方、破産管財人報酬に係る源泉所得税については、破産実務上、これを破産管財人において徴収し納付する例はほとんどないことがうかがえるなどとしつつも、上記源泉徴収義務はないとする見解が述べられた論稿等は見当たらないこと、上記各地裁の破産事件担当部においてもこれを否定する取扱いとする旨公表したことはなく、むしろ、いずれの担当部においても、管財業務のために従業員の雇用を継続したとき等の給与等、管財業務のために補助を受けた税理士に対する報酬等については、源泉所得税の徴収納付をする必要がある旨明らかにしていたといった事情が認められるほか、財団債権に対する弁済については、特に手続上の特殊性があるといった事情はないこと等を根拠に、原告が、破産管財人報酬に係る源泉所得税を法定納期限までに納付しなかったことについては、上記「正当な理由」がないと判示した。本判決のうち上記「正当な理由」に関する部分は、事例判断ではあるが、その有無の分水嶺を示したものと評することができ、今後の実務の参考になるものと考えられている。 判例タイムズ1276号109頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2009.01.14

幼稚園の園児が同幼稚園の敷地脇の用水路に転落して溺死した事故について、園長、教頭、教諭に過失があったとして、その園長らと設置者の不法行為責任が認められた事例本件は、Y5の設置する幼稚園に在籍していたAが、同幼稚園の敷地脇の用水路に転落して溺死する事故にあったことから、その両親であるXらが、園長Y1、教頭兼教諭Y2、教諭Y3、Y4に対し、不法行為に基づき、損害賠償を請求した事案である。千葉地裁平成20年3月27日判決は、Aの転落溺死事故は、Y1、Y2は、園内施設を管理し、園児が一人で園外に出られないような安全対策を十分講ずべき義務を怠った過失、Y2、Y3、Y4は、園児らの動静を注視して、その安全に配慮すべき注意義務があったのにこれを怠った過失によって生じたものと認められるとし、Y1からY4は民法709条、719条により、Y5は、民法715条により損害賠償責任を負うと判断した。本判決は、逸失利益については、男子労働者学歴計の全年齢平均賃金を基礎として算定し、Aの慰謝料を2200万円、Xらの固有の慰謝料を各400万円などと算定した。本判決は、今後の同種事案の処理上参考になるものと評されている。 判例タイムズ1274号180頁ブログランキング参加してます。↓ クリック、よろしく!
2009.01.05
全3件 (3件中 1-3件目)
1