096.コンセプトワーク



 何か新しい切り口、別の視点、発想の転換、今のニーズに合った作り直し。
 我々はそれをオリジナリティと呼びます。



 さて、このアイデア出しですがなかなかの曲者です。しかし同時にとても楽しい時間でもあります。
 今日は、考えたアイデアを効率良くまとめておくための方法、「コンセプトワーク」について紹介します。

 コンセプトワークとは、なんてことはない、ごく短い文章でまとめたコンセプトを量産する作業のことです。基本的には5W1H(どこで誰が何をどのようにどうした)を基準に、二三行でまとめますが、私は日頃物語の全体的な概要をまとめています。ルールなどないし、自分がやりやすいやり方、後で見返したときにしっくりくる仕方で続けるのが理想です。

 コンセプトワークの原則としては、「短くまとめること」「たくさん作ること」の二点です。
 たとえば、以下の三つのコンセプトを考えたとしましょう。


=====
・現代。主人公が転校した都会の学校でクラスの美少女に一目惚れし、なんとか告白しようとするが、恋敵はたくさんいた。そこで主人公はクラス中の誰も持ち得ない、地方に対する愛や知識、地域コミュニケーションを駆使してライバルを出し抜こうと画策する。

・モンスターたちが跋扈する中世ファンタジー世界。その国の王子と王女の兄妹は、世界に平和をもたらすため、城に20年繋がれていた世紀の大罪人を解放し共に旅をする。どこまでも自己中な罪人と高潔な兄妹の物語。

・ゲーム、ヒットマンLOVEの二次創作。エージェント47の知られざるもう一つの暗殺劇。ストーリーはまだ考えてない。
=====


 どれも、その時(というか今)適当に考えて書いたものです。これらを実際に物語として書き起こすつもりもありません。「今」役に立たなくても「後」で役に立つかもしれない。そんな理念のもと、どんな些細なアイデアだろうと書き留めておくこと、毎日少量でも作っておき、豊富な在庫を揃えておくことが肝要です。
 後になって、さあ物語を創ろう、となった時にこの大量のコンセプトワークがあなたの(私の)頭を刺激し、あるいはいつか遊びで作ったしょうもないアイデアが、今この時斬新なアイデアのきっかけになるかもしれません。すなわち財産です。

 短くと言いつつもいつも文章量が膨大になってしまう、とか、たった一言「カスタネット」とか「ハサミ」だけでも良いかも知れません。
 ただ、前者だとコンセプトワークではなくプロットですよね。プロットまで出来てしまったなら執筆してしまった方が良いです。努力を形にしましょう(面白い、面白くないは関係ありません)。しかし、大抵は納得のいく作品、および他人から評価される作品にはなり辛いです。
 後者の方は、あとで見返したときに意味が把握できなくなると思いますが、短い期間ならばその言葉から、その時連想したイメージがまだ残っているので短期間で作る人には有効かもしれません。

 しかし、コンセプトワークの真価はその時思いついた素敵なアイデアをコンパクトにまとめて収納しておくことではありません。
 毎日一つでも小説を書くためにしまっておく在庫でもありません。

 絶対とは言い切れないのが現実世界なので、言い出すのに勇気がいるのですが、思い切って言ってしまうと、集まったコンセプトワークの一つひとつをそれぞれ一つの物語に書き起こしたとしても、十中八九面白い作品にはなりません。

 その段階になってようやく、何故コンセプトワークは短くまとめる必要があるのか、何故たくさん作り置きしておく必要があるのか、という意味に繋がってきます。

 すなわちコンセプトワークの真価は、「組み合わせ」にあります。コンセプトワークの一つひとつは、いわゆるアイデアの塊です。アイデア同士を掛け合わせれば更にすごいアイデアが生まれる、というのは言われなくたってわかっているはずです。

 もう一度、上記三つの(三番目だって立派なアイデアです)コンセプトワークを見つめ直し、組み合わせてみました。


=====
・様々な種族が存在する異世界。その学校に転校した主人公は、クラスの美少女に一目惚れする。しかし大勢の恋敵がおり、ただの人間である主人公は最弱だった。そこで主人公は暗殺、不意打ちなど人間らしい卑怯な手を使い、一人一人恋敵を消していく。
=====


 いや、まあ。正直に言っても良いですよ? つまんなそう、って(笑)。ただ、最初にあげたコンセプトワークよりも、より広く、より深い世界観が出来上がったのではないでしょうか。最初のコンセプトをベースに、世界観を二つ目から、美少女のハートを射止める手段として三番目のコンセプトからヒントを得た、という思考の流れです。

 不満があれば、拾いあげる箇所を変えればまったく違うものができますし、新しく出来たコンセプトワークは、また一つの新しいコンセプトワークとして使いまわすことが出来ます。
 このようにどこからアイデアを拾い上げるかはわからないので、さっきの「カスタネット」も、どうしてカスタネットが面白いと感じたのかをメモしておくほうが望ましいと思うわけです。

 コンセプトワークを作る時は、深く考える必要はありませんし、ぶっちゃけ物語の最初から最後まで考えなくてもオーケーです。「うん、面白そうだな」と思った要素を、文にして記録しておくのが目的です。むしろ後で様々な付け替えを楽しめるよう、芯の部分以外は取っ払ってしまった方がいいかもしれません。

 自由度が高すぎて逆に毎日書くのが辛い、とか、急に言われてもアイデアなんか出て来ないよ、という方は週毎や月毎にテーマを決めて書いてみるのも面白いです。
 今週は「恋愛」、来月は「魔王の一人勝ち」とかね。
 興味のないジャンルでも、二三行程度のコンセプトワークなら気軽に書けるんじゃないでしょうか。将来こんな話は絶対に書かないとしても(笑)。

 どうでしょう。コンセプトワーク、ちょっとやってみたくありませんか?
 この方法は詰まるところアイデアの書置きですので、何も小説だけでなく、様々な創作活動に活用出来ると思います。
 そうした中で、自分の知らない分野の話というのはネタの宝庫ですよね。

 もしあなたが、この記事を読んでコンセプトワークって面白そうと思ったのなら。
 試しにこのコメント欄に書いてみませんか?

 適当でいいです。自由に書いてください。
 そしてこの際、この記事にある4つのコンセプトと、コメントに書かれたコンセプトは著作権フリーにしましょう。
 何が誰の素敵なアイデアのきっかけになるかわかりません。

 偶然立ち寄った何人かの人が、適当にコメントを残していく。その後やってきた別の人が、それらのコンセプトを組み合わせて素敵なコンセプトを作る。
 またその後にやってきた悩んでいる作家(笑)が、それを見て衝撃を受ける……。そして創られた作品がベストセラーに……なんて夢の見すぎでしょうか、見すぎですよね(汗)。

 ともかく、たくさんのコメントお待ちしております。
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2015年07月13日

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