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2024年08月30日

572.ドラゴンプラナ

ドラゴンプラナ-2024_06_07-04-21-23.png

 おはようございます。あるへです。
 本日はこちら「Dragon Prana」のレビューです。

 いつものExe-Create製KemcoRPGで、前回べた褒めしたドラゴンラピスの後継作です。
 昔懐かしい目の粗いドットとピコピコFCチック音源がコンセプトの王道RPGですね……。

 今作は駄作でした。
 ドラゴンシンカーやドラゴンラピスから明らかに変わり良くなった点も多いのですが、私の求めていたラピスの続編ではなかったですね。非常に残念であるとともに、非常に退屈でした。主人公が巨悪と戦っている間、私は画面右下に常に見えているスキップボタンを押したくなる衝動とずっと戦っていました(笑)

 良い所。
 いっぱいあるんですよ。まずゲーム全体の滑らかさや色味が増えました。Xbox上のKemco史でいうと、彩色のカルテットあたりからグレードアップしたエンジンを使うようになり、キャラ移動が滑らかになったり、松明の明かりがふわっと広がっているように見えたり、マップにレイヤーの概念が増えて、下を潜ったり、階層を意識したマップが作れるようになりました(本作に階層構造はないけど)
 アスデバシリーズなどの古い作品と比べればその差は歴然で、目で見る以上に様々な技術的な問題が改善されており、遊び心地は非常に快適でシームレスです。
 とっても遊びやすいんですが……これではいつものKemcoゲーと何も変わんないんですよね。昔懐かしいFCチックなゲームってなんだっけ? 見た目がドットで、文字もドットで、ピコピコ音源だったらノスタルジー感じるの? いや、確か前回か前々回で逆のこと言った気がするので(こんなとこまであえて不便にする必要あるか、ってやつ)いやーワガママですね、私。
 そんな感じでこのドラゴンシリーズのコンセプト自体破壊してないかってくらい、実はゲームプレイは快適でした。

 またBGMは良かったですね。前作以前と比べ、「圧」が減り、柔らかく聞き心地がありながらも電子音源チックなBGMで、種類は少ないながらも、それでも前作に比べればイベント用BGMなどが増え、悪くはなかったと思います。
 が、ですよ。それは楽器の種類が増えて表現力が増したからだと思っていて、つまりそれって制限がないってことじゃないですか。
 我々がレトロゲームに求めるノスタルジーって、少ない容量をどうやりくりするかっていう職人芸に係るところも大きいので、これもまたこのシリーズの醍醐味ってなんだっけと考えてしまうのでした(前作はさんざん耳が壊れるとか気が狂うとか言ってたのにね)

 文字数という点でも同じことが言えます。FCは当然、SFCでも、イベント中のセリフの掛け合いや街中のNPCとの会話など、セリフや個性が少なく素っ気なく思えるものもあったかと思います。それらの主な要因はやはり容量制限で、無駄な表現をなくし、少ない情報で必要なものだけ伝え、足りないものはプレイヤーに想起させることで補っていたこの時代のゲーム独特の表現技法がありました。主人公が喋らないのだってそういう理由でしょ。
 このゲームはべらべらべらべらよー喋ります。
 前作ラピスでもよく喋り、その時はべた褒めしてたのに、なんで今作はこんな言い方をするのかってーと、やっぱり面白くねーからですよ。キャラ同士の会話がとにかくつまんない。
「俺はこう思う、なぁお前もそう思うだろ?」みたいな意見の押しつけが頻発したのも悪印象。こんな奴と友達にはなりたくないと思いました。
 ま、そんなんでパーティーメンバーに思い入れや共感が発生せず、従って儀式のような展開が苦痛になっていったんですね。
 推測で物事を決める→結果的にその通りになる っていうのはまさにご都合主義ですよね。

 まだありますよ。
 ドラゴンシリーズといえば無口な主人公の毒舌選択肢が一つの名物でもあるんですが、風化しておざなりになってしまいました。本作の主人公は喋ります。べらべら喋ります。途中の選択肢も、シリーズ恒例だから仕方なく付けた程度の投げやりっぷりでうんざりしました。けっして喋らないから良かったんだというわけではありませんが、人間味もなく共感を感じ得ないキャラクターたちなんで、だったらもうセリフを増やすなって意味です。

 実はメインストーリーの構想、柱、流れ自体は悪くないんですよ。それこそノスタルジーを感じさせる見飽きた英雄譚で、味方サイドが結束できないなら実は敵サイドも瓦解して、ちゃんと王道ストーリーだと思いました。
 でもね、さっきもいったように、そうした大きな本筋のストーリーを辿るために起こる一つ一つのイベントで、容量制限を無視した無駄な会話がてんこもりで展開されるわけですよ。
 ストーリーは骨太ではあるけど見飽きたって言ってんじゃん(笑) 特に意表を突くでもなく予定調和で進んでいく陳腐なストーリーに、個性と特徴が箇条書き数個で埋まるような薄いキャラたちがそれぞれステレオタイプなセリフで彩るわけですよ。
 そのセリフ一つ一つに、キレがないんですよ。

 いやぁーーーー、退屈でした。

 まだまだ言わせてくれ。
 ドラゴンシリーズの目玉といえばジョブ。このジョブを極めていくたびにキャラとしての性能がどんどん花開いていく。ジョブ一つ一つはそれほどでもないかもしれないけど、あのジョブこのジョブ全部の良い所を一つにまとめたら最強になる。それができるのがこのドラゴンシリーズでした。
 本作は戦闘中に陣形やジョブでさえも一時的に変更することができる、新しい戦術ということでここが目玉ポイントではあるんですけど。つまりそれぞれのジョブには尖ったところがあるから、戦況を見極めて随時選択してくれってことで、あのジョブこのジョブ全部のいいとこ取りして最強の個体を生み出すってコンセプトではないんですね。それぞれのジョブが独立していて、あれもこれも手を伸ばす利点がほとんど無いのが残念でした。

 さらに、前作ラピスで仄かに好きだったスフィア盤システム。これなにさ。隅に追いやられて、ツリー伸ばして、一個パッシブ取って終わりじゃん。なんやかんやで最序盤でスフィア盤埋まっちゃって、やることなくなったぞ。

 遊び心地をフルリメイクした結果、ドラゴンシリーズの良かったところ(大したアイデンティティーではなかったにしろ)がごっそり潰れて、作り手たちは前作ラピスの何が良かったのか、そこも見誤ってしまったというところでしょうか。大手の超大作ゲームの続編みたいな失敗の仕方をしてると思いました。

 なんだよ前作、前前作で推してた"大物作曲家"今回不参加じゃん! そら曲の風味も変わるわいな。

2024年08月23日

571.フェアリーエレメンツ

フェアリーエレメンツ-2024_06_03-08-18-59.png

 おはようございます。あるへです。
 本日はこちら「Fairy Elements」のレビューです。

 Exe-Create製のKemcoゲーですが、また古めかしい感じの作品でしたね。良い所がないわけではありませんでしたが、とりあえず虚無でした。

 最初に良い所をあげておくと、やっぱりチャレンジ精神というのは込められていて、マテリアル砲や先行防御といったシステムを組み込んでいたのは面白い試みだと思いました。
 本作自体にこれらのシステムが良い影響を与えているとか決してそんなことはないのですが、むしろ無くていいし、忘れていいレベルで産廃ではあるのですが、その着眼点は面白いと思ったのです。

 どういうことかというと、マテリアル砲は敵を倒したり、防御したりすると溜まるマテリアルの力を利用してぶっ放す全体攻撃の波動砲で、戦闘中任意のタイミングで使えます。この任意というのがまさしく文字通り任意であって、たとえ敵のターン中であろうともマテリアルの力さえ溜まっていれば使うことが出来るのです。
 マテリアルの力が1ポイントでも溜まっていないと使用できない、つまり連発できないという欠点はあるのですが、もちろん強力ゆえにあえて課されたデメリットでもあるのでそこはうまく付き合いたいのですが、このマジで任意という仕様が、たとえば敵に不意打ちされて、何もできずに敵の攻撃がやむのを待っている間でさえ放つことができ、ストレスの軽減に役立っています。

 そしてもうひとつ、マテリアルの力は敵の攻撃を防御することでも溜まるということで、先行防御という聞きなれないコマンドの登場です。これは敵に内部的にターゲットにされたキャラが発動できるコマンドで、説明不足のためわかりにくいですが、右端にその表示が出た時にコマンドを選択すると、自分のターンを待たずして即座に防御コマンドを割り込ませることができます。これによって敵の強力な攻撃を防ぎ、マテリアルの力まで溜めることができるというわけですね。
 これが活きるのが先ほどのバックアタックされた状況で、たとえ戦闘開始時にマテリアルが溜まっておらず、砲が使えなかったとしても、敵のタコ殴りを先行防御で凌ぎ、溜まったマテリアルで即座に返り討ちにできると。これが決まって、敵に不意打ちされたのにも関わらず自分に一度もターンが回ることなく勝利するのは案外気持ちいいです。
 本来イライラしながら待つしかない不利な状況を、まるでアクションゲームかのように逆転させる発想は正直鋭いと思いました。

 はい、ちゃんと褒めましたが最初に言った通り味方が強すぎるので忘れて問題ない産廃システムですけど(笑)

 とかね、古臭いゲーム画面ですけど、それゆえかモンスターデザインも大きく、迫力があり、意外と悪くないなって。種類は多くなく、色違いも多いですけど、えちぃ女性型モンスターもいるので目の保養になりました。

 あとはキャラの知性が光っていて、主人公の博愛の精神と、もう一人のイケメン仲間の現実主義的な考え方がかなり核心を突いていて、彼らの持論の衝突や拮抗が見ていて面白いと思いました。戦争に関する物事の見方、捉え方が、なるほど、確かにその通りと頷けるんですよね。……はぁ。

 じゃ、その逆ね(笑)
 こいつら、真面目な話になるとそんな感じで意外と知性が光る良いキャラしてんのに、なんでその知性を普通の会話に生かせないのかなぁ。突然IQが下がるので笑う気にもなれないです。
 そしてこのイケメン仲間が良くも悪くもこの作品の全てを担っていて、主人公を差し置いて主人公してるんですよね。彼がいて戦争の残酷な部分を指摘してくれないと、主人公はただの空気どころか共感できない偽善者になってしまうし、彼がいなければメインストーリーのほとんどは進行しません。
 逆に、彼がいるせいで本作の核心、物語の核心、メインテーマがノーマルエンドを迎えるまで一切触れられません。だってこの話に触れるには彼の正体が重要になり、彼の正体を知るにはどうしたって最終決戦まで行かなければいけないから。
 それゆえ本編は言い換えれば長い長いオープニング状態でいつまでたっても大して進展せず、物語の核心、本作のタイトルに込められたテーマ、おまけに今まで張ってきた全ての伏線はエンディング後の追加ストーリーで、全20階に渡るクソ長いダンジョンの中で一気に語られます。

 配分おかしくないっすか? それを本編でやれっつの。

 ここまでやってようやく彼らの人間味が見えてきたのでなんとかなりましたけど、正直キャラデザインは気持ち悪かったです(汗)

 あ、最後に。
 作中に出てくる、とある小悪党は物語をかき混ぜる脇役として良いキャラしてると思いました。まんまケフカですよね。本作で一番気に入ってたキャラなんですが、いくら性根から悪属性だとしても、主人公サイドがそれを"ゴミ"呼ばわりしてはいけないですよね。しかも調子に乗って、まるで子供のように囃したてるので、さすがにライターの倫理観を疑いました。このシーンは確実に、辛うじて残っている主人公たちの品位と共感性を下げます。反省しなさい。

2024年08月17日

570.風乗り勇者の物語

風乗り勇者の物語-2024_05_26-14-22-38.png

 おはようございます。あるへです。
 本日はこちら「Gale of Windoria」のレビューです。

 Kemcoゲーの中でもグラフィックに比重を置くHit-Point製のRPGです。そのせいなのかHit-Point製はボリュームが浅く、ゲームの攻略時間が短い傾向にありますね。
 本作もその例に漏れず、今回はサブクエストがなく、ひたすらメインストーリーだけを追う形になりました(サブイベントとして少し追加の会話を楽しめるものはありますが)。
 本編攻略後の追加シナリオなどもなく短めではあるのですが、意外と満足感は残りました。

 まず、本作のキャラは主人公含めパーティーメンバーがよく喋り、イベントに彩りがあります。また、表情や仕草などがコロコロ変わり、非常に愛らしいんですよね(Hit-Point作品のキャラの、にこ〜って表情は割りとキュン死できる 笑)。この辺の作り込みはさすがHit-Point。数は少ないですが、一枚絵を挟んでHit-Pointの弱点である演出の弱さを克服しようと試みていたり、工夫の跡が見て取れました。
 作品としては結構力をいれたものだったんじゃないかな。

 BGMもとても良かったし、真面目に考えると結構重いテーマなシナリオを、可愛くて愛らしいキャラたちで中和することで、ストーリー自体も野暮なツッコミを控えて楽しく見守ることが出来ました。
 重く、答えの出ないテーマでもあるので、その辺どう決着付けるのか、さらっと伏線らしきものも張られていたようだけど……、ぶん投げましたねぇ。いや、いいと思いますよ。浅はかな哲学や単純思考のキャラに乗せて薄っぺらい正義をかざされるよりは、それはまた別のお話、として喫緊の問題のみに決着を付けるのは悪くない「逃げ」だと思いました。

 ただ、物語全体に漂うテーマが重い割りに、敵の親玉の行動原理が首を傾げるくらい幼稚だったのはちょっとどうかしらね……。尺がないから説明不足ではあるけど、それにしたってねぇ、もうちょっと練り込んでも良かったかな。ついていった人たちが不憫だよ。
 もう一つ不満といえば、ラストバトルのククルガン。解像度www
 そこ頑張ろうよ。一番熱くなれる場面なのに。

 そんな感じでストーリーの終盤は駆け足気味でやや味気ないのですが、そこに至るまでの冒険やキャラ同士の掛け合い、世界観の深みに満足感はちゃんとありました。グラフィックやBGMなど、遊び込めばちゃんと手が込んでいることがわかるし、キャラクターそれぞれがちゃんと個性的で可愛く、フツーに楽しかったです。それこそ黄金期のSFCソフトを遊んでいるみたいでしたね。

2024年08月09日

569.Nostalgic Train

NOSTALGIC TRAIN-2024_05_21-13-16-45.png


 おはようございます。あるへです。
 本日はこちら「ノスタルジックトレイン 〜旅の終わりに二つのゆらめき〜」のレビューです。

 個人製作と思われる小規模な作品であるものの、「昭和」の時代の空気感を味わえるシミュレーターとして、一定の存在価値はあると思います。
 なんでこんな言い方をするのかといえば、まぁ、わかりますよね(笑)

 ゲームとしての感触はそこまで悪くはなかったです。
 夏の一番暑い盛りの時期、誰の心にも残っている懐かしい田園風景、そして現代に比べれば何もかもが不便で、そして温もりに満ちていたあの場所あの時間を切り取り、その中でちょっとした散策を楽しみつつ、ある集落で起きた小さくて悲しい奇跡の物語を追体験しようってコンセプトです。

 虫が大合唱する環境音や発車する電車の軋む音、目に眩しい緑や空の青など、見える景色は大変に素晴らしく、特に電車内で走行中の窓から流れる村の景色は絶景でしょう。場面ごとに天候やBGMが変わるのも芸術点高いです。

 ただね、個人的な感覚で言うと、もはやこの頃の日本の原風景を覚えているゲーマーは、そんなにいないんじゃないかな。かく言う私も、こうした田舎や古民家とはほとんど関りがなく育って来たので、この景色にはなんだか懐かしさ、人が懐かしそうに語って共感する、想像する懐かしさよりも、違和感の方が先に立つんですよね。
 はたして本当にこのような風景は存在したのか。電車や踏切、コンクリート造りの駄菓子屋や喫茶店が立ち並ぶ商店街の裏で、本当にかやぶき屋根の民家はあったのだろうか。そしてその家々は、本当にこんな小さかったの? 母屋ひとつがぽつんと建ってて、離れも物置もないの?

 これはゲーム的な縮尺の問題かと思うのですが、そういった、当時をほとんど知らないがゆえに、イメージ的に新しいモノ、古いモノ、そして古すぎそうなモノとが混在している気がして、果たしてこれは本当にありえた景色なのか、はたまたゲーム的な都合でまとめられたものなのか、昭和と一口に言っても60年あるうちのどの時代なのか、そんなことが気になっちゃったのでした。

 でも私が本作を評価しない理由はこれではありません。
 今までKemcoゲーで散々言ってきましたよね。

 そうです、お話です。
 かつてこの地にあった事件を追体験し、ここで何があったのか、それに自分がどうかかわっているのか、一話完結のオムニバス形式でちょっとした読み物を進めるうちに様々な謎が紐解けていくコンセプトは悪くなかったです。
 コンセプトは狙い通りに作用していたし、繋がりが見えた時のカタルシスもありました(でも辛口批評するなら、これらのお話は創作であり、ゲームの世界観的にも更に古い時代の物語であり、プレイヤー視点での"ノスタルジー"には繋がっていないです。情景描写すらなかったし)。

 では何が良くなかったのか。
 はいその通り。
 文章そのもののクオリティがとても人に勧められたものではない出来なんですね。

 序盤や要所に挟まる自己陶酔したポエミィな表現は置いておくとしても、本当にあなた日本人ですかと問いたくなるくらい文章が稚拙で、誤字脱字が多く、致命的に「てにをは」を使いこなせていません。
 小学校で作文は書かされたし、文章くらい誰でも書けるだろうと思われがちですが、こうしてKemcoゲーを始め多くのゲームに触れ、その文字の一つひとつに触れていると、やはり文章で表現する創作も職人技なんだなと、つくづく実感させられました。

 ゲームなので、小説ではないです。プログラムを書き上げ、3D空間を見事に作り上げられるプログラマーであろうと、ノスタルジックな雰囲気を作り上げ、幻想的な音響で人々を包み込めようと、文章書かせたら顔を覆いたくなるカオスが出てきちゃうものなんですよね(すごく頭が良くてわかりやすく、話も面白い起業家に図やグラフを書かせたらへたっぴだったり、先生や教授なのに字がめっちゃ汚かったりねw)
 お前ら文章技術磨き直して出直してこいなんて毛頭言うつもりはありませんが、いつも勿体ないなぁ、惜しいなぁ、悔しいなぁ、残念だなぁって、良いゲームなのになぁと、同情の気持ちがこみ上げてくる今日この頃です。それがもどかしくて、つい指摘したくなっちゃうんです。

 さて、雰囲気を楽しむゲームとしては悪くなかったですが、人を楽しませるエンターテインメント作品として観察してみると、最初に気が付くのは先に進むための導線の引き方が甘い部分でしょうか。
 こだわりの夏霧町を作り終えてから、そこにストーリーを置いていった感じで、ゲームコンセプトのための舞台ではあるものの、ゲームプレイのためのステージマップではない感覚を受けます。
 というのも、地面に光るもやもやに触れるとテキストが表れ、それを読み終えると次のもやもやがどこかに表れる、それを追ってミステリを解いていくって流れなんですが、物語を読み終えた後にその場で探索モードを発動させても、地形に隠れて次のもやもやが視認できないことが多く、あてもなく彷徨う羽目になることが何度もありました。

 また、テーマに関係のある場所に行ってテキストを読むのですが、そこで出てくる小物や情報は、基本ゲーム画面にはありません。
 看板には村の歴史と地図があってとテキストには書かれていても、目の前には文字のぼやけた木の板があるだけだし、本屋に行ってオカルト雑誌を読んでいても、そこには埃をかぶった古本しかないし、浮き輪を拾ったらしいけどそんなオブジェクトはどこにもないし……。
 そもそも蝉鳴いてなくね? フリーモードでは聞こえてきたけど、なんでストーリーモードにはいないんだろ。

 それからストアでのレビューにもありましたが、狭い村に神社仏閣が二つあるというのは、私も見事に引っかかりました(笑) テキストのヒントには「寺」とあるし、よくよく観察すれば自分がうろうろしてたのは「神社」だったってのはわかることではあるんですけども。
 その前にざっと一周見て回ったけど、地味すぎて実はこれが寺だってのは気づかなかったんです。せめてお寺の名前とか看板とか鐘とか、寺をイメージさせるワンポイントがあればまだ良かったんですけどね。

 うーん……、コレが文化庁メディア芸術審査委員会推薦作品、ですかぁ。はぁ、ふ〜ん。

2024年08月02日

568.デビラビローグ

デビラビローグ-2024_05_11-12-27-02.png

 おはようございます。あるへです。
 本日はこちら「デビラビローグ」のレビューです。

 知る人ぞ知る名作、デッキ構築型ローグライク・Slay the Spireをオマージュした作品ですが、なんとこれKemcoそれも当ブログではお馴染みとなったExe-Createの作品なんですねぇ。
 いつものサックリ爽快お手軽RPGとは違う手触りに新鮮さととまどいを感じつつ、いつも聞いてるSEや(たぶんボス戦の)BGMが流れてきてうわーやっぱりKemcoじゃんと安心感を得たり。

 非常にコミカルな魔界が舞台となっており、拠点がとても広く、そこにたくさんのNPCがいるので賑わいを感じます。また、秘宝というアイテムがあるのですが、その解説文が面白く、世界観に深みを増しています。少し前にレビューしたエルピシアのやつと同様、しょーもないけど魔界という世界観の裏側を知れるのでかなり好きでしたね。イメージとしてはディスガイアシリーズの魔界を思い浮かべると非常にしっくりきます。
 そんな世界で、スレイ ザ スパイア通称スレスパをオマージュしたローグライクカードバトルで冒険するのがラビリンスと呼ばれるダンジョン。
 なので、デビ・ラビ・ローグなんですね。

 いやぁめちゃくちゃ面白かったです。
 オリジナルのスレスパを遊んだことが無いので(スレスパはゲームパス以外にも、旧ゴールドメンバーでも無料で遊べます)どこまでがぱk、オマージュで、どこからがオリジナルなのかよくわかってないのですが、簡単に調べてみたところこのスレスパは完全なローグライクのようです。
 ローグライ"ク"ということは、死んだらぜーんぶやり直しってやつですね。
 その点、本作はローグライ"ト"であり、クリア報酬を使ってガチャを引き、新しいカードを解放したり、ラビリンス攻略開始時の初期HPや初期所持秘宝数、SPなどを上乗せして開始することが出来るRPG的な積み立て要素があります。

 また、本作には大変面白いストーリーがついており、序盤こそ展開が強引で掴みが弱いものの、中盤から終盤そしてエピローグにかけてはキャラクターの掘り下げもあって感情移入がしやすく、笑わせてもらいました。すっごく良かったです。さすが佐川ちゃん、いい仕事してるね! このコミカルで楽しげな魔界の様子もあって、誰も不幸にならないExe-Create伝統のストーリー仕立てが非常にマッチしていて、めちゃくちゃ楽しかったのです。
 中盤の間延びを回避するために投入された勇者や聖剣も個性が引き立っており、結局あのまま退場させるのはもったいないと思いました。何か別作品の絡みとかあるのかな。

 ゲームは面白いし、負けても少し遊びやすくなってまた挑戦できる、しかもストーリーも面白い、言うことなしじゃないですか。この辺がおそらくオマージュに対してExe-Createが行ったオリジナリティの介入で、大成功していると思います。
 むしろスレスパは好きだけど1プレイに時間がかかるし、バランスがシビアすぎて疲れる、といった人にこそ刺さるのではないかと。

 それぞれのデッキには特色があって、感触を確かめながら何回かラビリンスに潜っていき、新しいカードを入手した時に「あれ、これってもしかして……」と閃く感覚、そしてその予感を再現出来た時に、生まれる爆発力がすごく気持ち良かったです。
 これとこれ、組み合わせたら最強じゃね?って思えるパターンがいくつかあるんですよね。そしてそれが出来た時に本当に最強に強くなれるのがまたKemcoらしくて素晴らしい。
 そうして全部で5つあるデッキに触れた後に、では改めてこれらのデッキを混ぜてランダムで使っていきましょうって趣旨のラビリンスがあって、もう一段階起爆剤を残しているわけです。

 今までのKemcoゲーからはおよそ考えられないほどの素晴らしいゲームバランスであり、そういったところからオリジナルであるスレスパへの愛がひしひしと感じられるんですよね。それでいて非常にKemcoらしい味付けのストーリーが良質で、ちゃんとオリジナル作品として昇華されているのが本当に、なんか、すごい、奇跡。


 追記
 いやぁー、本当に面白いですね。
 オリジナルを知らない私には、どこからどこまでがオリジナルのオマージュで、どこからが独自要素なのか見当もつかないし、グラフィックやストーリーはもちろん、ゲームバランスからカードの内容に至るまであらゆるものにKemcoらしさというのが溢れていて、すごーく中毒性があります。持ち帰ったコインや石などでどんどん遊びやすくなるので辞め時がわからない!

 そんなわけでコンプした後もだいぶ時間を溶かしてしまいました(笑)

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