3 時起床.
体調は良い.
早起きできたので数学をやる. 関手が圏における極限を保存するための必要十分条件.
うまくイメージが掴めない.
2016年05月29日
入院中のメモ: 数学 ── 特異ホモロジー群
特異ホモロジー群を定義する.
$n$ を非負整数とし, $e^{(n)}_0$ を $\mathbb{R}^n$ の零ベクトルとする.
\[
e^{(n)}_0 = 0 = 0_{\mathbb{R}^n} = (0,..., 0) \in \mathbb{R}^n
\] また $e^{(n)}_i = (e^{(n)}_{i,1},..., e^{(n)}_{i,n}) \in \mathbb{R}^n \, (i = 1,..., n)$ を
\[
e^{(n)}_{i,j} = \begin{cases} 1 & (i = j), \\ 0 & (i \neq j) \end{cases}
\] により定義する.
$n$ を非負整数とし, $e^{(n)}_0$ を $\mathbb{R}^n$ の零ベクトルとする.
\[
e^{(n)}_0 = 0 = 0_{\mathbb{R}^n} = (0,..., 0) \in \mathbb{R}^n
\] また $e^{(n)}_i = (e^{(n)}_{i,1},..., e^{(n)}_{i,n}) \in \mathbb{R}^n \, (i = 1,..., n)$ を
\[
e^{(n)}_{i,j} = \begin{cases} 1 & (i = j), \\ 0 & (i \neq j) \end{cases}
\] により定義する.
\[
e^{(n)}_i = (0,..., 1,..., 0)
\] ($i$ 番目の座標成分が 1.) $e^{(n)}_1,..., e^{(n)}_n$ は $\mathbb{R}^n$ の各座標軸に沿った単位ベクトルである.
集合 $\Delta^n$ を
\[
\Delta^n = [e^{(n)}_0,..., e^{(n)}_n] = \biggl\{ \sum_{i=0}^n t_i e^{(n)}_i \bigg| t_i \in \mathbb{R}, t_i \geq 0 \, (i = 0,...,n), \sum_{i=0}^n t_i = 1 \biggr\}
\] により定義する. $\Delta^n$ を標準 $n$-単体と呼ぶ.となっていて, このような標準 $n$-単体をピースとして複雑な図形を構成していく.
$\Delta^0 = [e^{(0)}_0] = \{ 0 \}$ (原点 0 のみからなる 1 点集合),
$\Delta^1 = [e^{(1)}_0, e^{(1)}_1] = I = [0, 1]$ (単位閉区間),
$\Delta^2 = [e^{(2)}_0, e^{(2)}_1, e^{(2)}_2]$ ($(0, 0), (1, 0), (0, 1)$ を頂点とする三角形とその内部領域),
$\Delta^3 = [e^{(3)}_0, e^{(3)}_1, e^{(3)}_2, e^{(3)}_3]$ ($(0, 0, 0), (1, 0, 0), (0, 1, 0), (0, 0, 1)$ を頂点とする三角錐とその内部領域),
. . . .
$X$ を任意の位相空間とする. このとき連続写像 $\sigma_n : \Delta^n \rightarrow X$ を特異 $n$-単体と呼ぶ. $X$ の特異 $n$-単体の全体を基として生成される自由アーベル群を $C_n(X)$ とおく ($n = -1, -2,...$ に対しては $C_n(X) = 0$ とおく). すなわち,
$C_n(X) = \biggl\{ { \displaystyle \sum_{i=0}^m} c_i \sigma_i \bigg| c_i \in \mathbb{Z}, \sigma_i : \Delta^n \rightarrow X$ は特異 $n$-単体, $m$ は非負整数 $\biggr\}$
である.
$C_n(X)$ の元を特異 $n$-チェイン複体と呼ぶ. 特異 $n$-チェイン複体は, 有限個の点・線分・三角形などの特異 $n$-単体を組み合わせた "図形" と捉えると幾何学的なイメージが持てる.
写像 $\partial_n : C_n(X) \rightarrow C_{n-1}(X)$ を次のように定義する.
まず, 写像 $\varepsilon^{(n)}_i : \Delta^{n-1} \rightarrow \Delta^{n}$ ($n = 1,2,...$) を
\[
\varepsilon^{(n)}_i(e^{(n-1)}_j) = \begin{cases}
e^{(n)}_j & (j \lt i) \\
e^{(n)}_{j+1} & (j \ge i)
\end{cases}
\]
と定義し, これを用いて, 写像 $d^{(n)}_i : C_n(X) \rightarrow C_{n-1}(X)$ を各特異 $n$-単体 $\sigma : \Delta^n \rightarrow X$ に対して
\[
d^{(n)}_i(\sigma) = \sigma \circ \varepsilon^{(n)}_i (i = 0,...,n)
\]
により定義する. 特異 $n$-単体は特異チェイン複体 $C_n(X)$ の基なのでこれで $d^{(n)}_i (i=0,...,n)$ が $C_n(X)$ 上で定義される. 特異 $n$-チェイン複体 $c \in C_n(X)$ に対して, $d^{(n)}_i(c)$ を $c$ の $i$ 番目の面と呼ぶ. 実際に特異 $2$-単体 $\sigma = \text{id}: \Delta^2 \rightarrow \mathbb{R}^2$ (三角形) に対して $d^{(2)}_0(\sigma), d^{(2)}_1(\sigma), d^{(2)}_2(\sigma)$ を計算してみると, ちゃんと三角形の 0 番目, 1 番目, 2 番目の辺 (境界) になるのがすごい.
写像 $\partial_n : C_n(X) \rightarrow C_{n-1}(X)$ を
\[
\partial_n = \sum_{i=0}^n (-1)^i d^{(n)}_i \quad (n=0,1,...)
\]
により定義する. $\partial_n$ は上述の $d^{(n)}_i$ による境界の (向きを考慮した) 和であり, 境界作用素と呼ばれる.
以上により境界作用素の系列
\[
\begin{xy}
\xymatrix {
\cdots C_{n+1}(X) \ar[r]^{\partial_{n+1}} & C_n(X) \ar[r]^{\partial_n} & C_{n-1}(X) \ar[r]^{\partial_{n-1}} & \dots
}
\end{xy}
\] が得られる.
境界作用素 $\partial_n$ は定義により $C_n(X)$ から $C_{n-1}(X)$ への線形写像で,
\[
\partial_{n} \circ \partial_{n+1} = 0 \quad (n=0,1,...)
\]
という性質を持っている. このことは $\partial_n$ の定義に立ち返って実際に計算をしてみると確かにそうなることがわかる.
つまり, $\text{im}(\partial_{n+1}) \subset \text{ker}(\partial_n)$ である.
この $\text{im}(\partial_{n+1})$ と $\text{ker}(\partial_n)$ には名前が付いていて, それぞれ
$Z_n(X) = \text{ker}(\partial_n : C_n(X) \rightarrow C_{n-1}(X))$,
$B_n(X) = \text{im}(\partial_{n+1} : C_{n+1} \rightarrow C_n(X))$
とおかれる. $Z_n(X)$ を特異 $n$-サイクル群, $B_n(X)$ を特異 $n$-境界サイクル群と呼ぶ.
$n = 1$ で考えると, $Z_1(X)$ の元である特異 1-サイクルはループ, $B_1(X)$ の元である特異 1-境界サイクルは曲面の境界になっているループになる. ここで,
$H_n(X) = Z_n(X) \, / \, B_n(X)$
とおく. $H_n(X)$ を特異 $n$ 次ホモロジー群と呼ぶ.
$H_1(X)$ の意味については, 対象となっている図形にどれだけ穴が空いているかを示す量, という説明をいくつかの本で読んだことがある. そうなのだろうが, 自分でも少し納得できるまで考えてみたい.
ここまでで, 空間 $X$ に対するループ空間 $\Omega(X)$, 基本群 $\pi_1(X)$, 特異 1-サイクル群 $Z_1(X)$, 特異 1-境界サイクル群 $B_1(X)$, 特異 1 次ホモロジー群 $H_1(X)$ という概念を得た.
基本群を定義した際に考えたループ空間 $\Omega(X)$ の元である道としてのループと, 特異 1-サイクル群 $Z_1(X)$ の元であるサイクルとしてのループが結び付く. 実際に, この結び付きを利用して Hurewicz 準同型 $hX : \pi_1(X) \rightarrow H_1(X)$ を定義する.
2016年05月28日
入院中のメモ: 数学 ── Hurewicz 変換とは何だったか
基本群については弧状連結な位相空間 $X$ に対する $\pi_1(X)$ の群としての定義, 弧状連結な位相空間の圏 $\textbf{pcTop}$ から群の圏 $\textbf{Grp}$ への関手 $\pi_1 : \textbf{pcTop} \rightarrow \textbf{Grp}$ の定義が行えた.
目標である Hurewicz 変換が基本群関手から 1 次の特異ホモロジー群関手への自然変換であることの証明に進む.
ここで Hurewicz 変換と呼んでいる概念は, 元々は位相空間の基本群から 1 次の特異ホモロジー群への群準同型として定義されるもので, Hurewicz 準同型と呼ばれていたものを圏論的に解釈したものである.
つまり, 基本群関手 $\pi_1 : \textbf{pcTop} \rightarrow \textbf{Grp}$ と 1 次の特異ホモロジー群関手 $H_1 : \textbf{pcTop} \rightarrow \textbf{Grp}$ (簡単のために弧状連結な位相空間の圏で考えている) に対する Hurewicz 変換 $h : \pi_1 \rightarrow H_1$ は弧状連結な位相空間の圏 $\textbf{pcTop}$ における任意の射 (つまり連続写像) $g : X \rightarrow Y$ に対して, 図式
\(\require{AMScd}\)
\(\require{XY}\)
\[
\begin{xy}
\xymatrix {
\pi_1(X) \ar[d]_{\pi_1(g)} \ar[r]^{hX} & H_1(X) \ar[d]^{H_1(g)} \\
\pi_1(Y) \ar[r]_{hY} & H_1(Y)
}
\end{xy}
\] を可換にするものである.
目標である Hurewicz 変換が基本群関手から 1 次の特異ホモロジー群関手への自然変換であることの証明に進む.
ここで Hurewicz 変換と呼んでいる概念は, 元々は位相空間の基本群から 1 次の特異ホモロジー群への群準同型として定義されるもので, Hurewicz 準同型と呼ばれていたものを圏論的に解釈したものである.
つまり, 基本群関手 $\pi_1 : \textbf{pcTop} \rightarrow \textbf{Grp}$ と 1 次の特異ホモロジー群関手 $H_1 : \textbf{pcTop} \rightarrow \textbf{Grp}$ (簡単のために弧状連結な位相空間の圏で考えている) に対する Hurewicz 変換 $h : \pi_1 \rightarrow H_1$ は弧状連結な位相空間の圏 $\textbf{pcTop}$ における任意の射 (つまり連続写像) $g : X \rightarrow Y$ に対して, 図式
\(\require{AMScd}\)
\(\require{XY}\)
\[
\begin{xy}
\xymatrix {
\pi_1(X) \ar[d]_{\pi_1(g)} \ar[r]^{hX} & H_1(X) \ar[d]^{H_1(g)} \\
\pi_1(Y) \ar[r]_{hY} & H_1(Y)
}
\end{xy}
\] を可換にするものである.
2016年05月27日
入院中のメモ: 数学 ── 入院中に勉強したこと
入院中はひたすら休んでいたため, 読んでいる本 "Toposes, Triples and Theories"
も結構読み進めることができた.
自分のための忘備録として, それぞれについて簡単にまとめておきたい.
- Hurewicz 変換が自然変換であることの証明
- 関手圏
- 部分対象
- 米田の補題
- 引き戻し (Pullback)
- 極限
自分のための忘備録として, それぞれについて簡単にまとめておきたい.
タグ: 圏論
2016年01月27日
数学: 基本群の定義
2 時起床.
数学をやる.
ひとまず, 基本群の定義についての自由研究はまとまったように思う. 時間ができたらノートに清書しながら内容を確かめる.
やったことは以下の通り.
$X$ を弧状連結な位相空間とする. $I$ を閉区間 $[0, 1]$ とし, $X$ 上のループ空間を
$\Omega(X) = \{ \alpha \bigm| \alpha : I \rightarrow X$ かつ $\alpha$ は連続写像であり $\alpha(0) = \alpha(1)$ が成り立つ. $\}$
と定義する.
$\alpha_0, \alpha_1 \in \Omega(X)$ に対して連続写像 $F : I \times I \rightarrow X$ で
$F(t, 0) = \alpha_0(t)$,
$F(t, 1) = \alpha_1(t)$,
$F(t, u) \in \Omega(X)$ $(t \in I, u \in I)$
を満たすものを $\Omega(X)$ におけるループ $\alpha_0$ からループ $\alpha_1$ へのホモトピーと呼び, \[ \alpha_0 〈homotopy/\Omega(X)〉 \alpha_1 \] と書く. $〈homotopy/\Omega(X)〉$ は $\Omega(X)$ 上の同値関係である.
$\Omega(X)$ の $〈homotopy/\Omega(X)〉$ による商空間を \[ \pi_1(X) = \Omega(X)\big/〈homotopy/\Omega(X)〉 \] とおく.
この定義は, 点付き位相空間 $(X, x_0)$ に対するループ空間を
$\Omega(X, x_0) = \{ \alpha \bigm| \alpha : I \rightarrow X$ かつ $\alpha$ は連続写像であり $\alpha(0) = x_0 = \alpha(1)$ が成り立つ. $\}$
としたとき, $\Omega(X, x_0)$ 上のホモトピー同値関係 $〈homotopy/\Omega(X, x_0)〉$ (すなわち $\alpha_0, \alpha_1 \in \Omega(X, x_0)$ に対して, 連続写像 $F : I \times I \rightarrow X$ で $F(t, 0) = \alpha_0(t)$, $F(t, 1) = \alpha_1(t)$ かつ $F(t, u) \in \Omega(X, x_0)$ $(t \in I, u \in I)$ が成り立つものが存在する) で割って得られる商空間 \[ \pi_1(X, x_0) = \Omega(X, x_0)\big/〈homotopy/\Omega(X, x_0)〉 \] が群になること, この群を $(X, x_0)$ の基本群と呼ぶことの拡張である.
最初はこの定義の方が基本群のより自然な定義と考えていたが, そうでもなかった. このことは最後に書く.
上述のように $X$ の商空間 $\pi_1(X)$ を定義したときに次が成り立つ.
ここまでだが, 一連の計算を通じてこのような基本群 $\pi_1(X)$ の定義は必ずしも自然なものではないという気がしてきている.
その理由を説明するが, うまく説明できるかどうか... あくまで自分の感じたことなので.
通常は弧状連結な点付き位相空間 $(X, x_0)$ (議論を簡単にするために弧状連結という条件を付けている. この条件が無くても中心的な議論の流れは変わらない) に対して, そのループ空間 $\Omega(X, x_0)$ をホモトピー同値関係 $〈homotopy/\Omega(X, x_0)〉$ で割った商空間 $\pi_1(X, x_0)$ を考える. これは $\Omega(X, x_0)$ 上の積 (ループの連結) から自然に導かれる積によって群になる. $\pi_1(X, x_0)$ を $X$ の基本群と呼ぶ.
この定義では, 元になるループ空間 $\Omega(X, x_0)$ はループの連結を積, ループの逆回しを逆元のようなもの, 定数ループを単位元のようなものとする構造を持っている. しかもループの積は任意の 2 つのループの間に定義される. 結合律が成り立っていないために群にはならないが, 群の素のような構造 (マグマと呼ぶらしい) を持っている. 基本群 $\pi_1(X, x_0)$ の構造がループ空間 $\Omega(X, x_0)$ におけるループに対する幾何学的な操作とうまく対応している.
一方, 弧状連結な位相空間 $X$ のループ空間 $\Omega(X)$ は, 任意の 2 つの元に対して定義される積というものを持たない. 基点が同じループ同士に対してのみ積が定義される. だから, $\pi_1(X)$ に群の構造を入れるためにある基点 $x_0 \in X$ を定め, $x_0$ から $X$ の各点 $x$ への道の族 $\{ \gamma(x_0, x) \}_{x \in X}$ と, 写像の族 $\{ \varphi(x, x_0) : \Omega(X, x) \rightarrow \Omega(X, x_0)\}_{x \in X}$ を選んで固定する. これによって各ループ $\alpha$ を写像 $\varphi(x, x_0)$ $(\alpha(0) = x = \alpha(1))$ によって $x_0$ を基点とするループ $(\varphi(x, x_0))(\alpha) = (\gamma(x_0, x)\alpha)\gamma(x_0, x)^{-1}$ に変換して $\Omega(X, x_0)$ でのループの積に還元し, これによって群の構造を $\pi_1(X)$ に定める. 技巧的であってあまりすっきりとした議論ではないという気がする.
位相空間に対する基本群というのは基点 $x_0$ を用いて定まる. 弧状連結な位相空間という幾何学的な対象については, 基点 $x_0$ は任意にとってよい. どのように選んでも結果の基本群は群として同型になるからである.
このことは実は弧状連結な位相空間というきれいな対象について真なだけではないのか.
一般に基本群をより一般的に考察した場合に, ある (必ずしも幾何学的とは限らない) 対象 $X$ に対する基本群というものが定義されるならば, それは基点の取り方に依存する場合もあるのではないか.
今回の自由研究で導入した $\Omega(X)$ というループ空間は構造がかなり緩い. その緩さを無理矢理に直接 $X$ の基本群 $\pi_1(X)$ に結びつける, 群という強い構造に結びつける議論も今ひとつすっきりしない.
ここから先は自分の数学の知識の先にあるような気がする.
ひとまず自由研究はこれらをノートに清書して終わりとして, 元々の本 ("Toposes, Triples and Theories") の流れである Hurewicz 変換の議論に戻ろうと思う.
数学をやる.
ひとまず, 基本群の定義についての自由研究はまとまったように思う. 時間ができたらノートに清書しながら内容を確かめる.
やったことは以下の通り.
$X$ を弧状連結な位相空間とする. $I$ を閉区間 $[0, 1]$ とし, $X$ 上のループ空間を
$\Omega(X) = \{ \alpha \bigm| \alpha : I \rightarrow X$ かつ $\alpha$ は連続写像であり $\alpha(0) = \alpha(1)$ が成り立つ. $\}$
と定義する.
$\alpha_0, \alpha_1 \in \Omega(X)$ に対して連続写像 $F : I \times I \rightarrow X$ で
$F(t, 0) = \alpha_0(t)$,
$F(t, 1) = \alpha_1(t)$,
$F(t, u) \in \Omega(X)$ $(t \in I, u \in I)$
を満たすものを $\Omega(X)$ におけるループ $\alpha_0$ からループ $\alpha_1$ へのホモトピーと呼び, \[ \alpha_0 〈homotopy/\Omega(X)〉 \alpha_1 \] と書く. $〈homotopy/\Omega(X)〉$ は $\Omega(X)$ 上の同値関係である.
$\Omega(X)$ の $〈homotopy/\Omega(X)〉$ による商空間を \[ \pi_1(X) = \Omega(X)\big/〈homotopy/\Omega(X)〉 \] とおく.
この定義は, 点付き位相空間 $(X, x_0)$ に対するループ空間を
$\Omega(X, x_0) = \{ \alpha \bigm| \alpha : I \rightarrow X$ かつ $\alpha$ は連続写像であり $\alpha(0) = x_0 = \alpha(1)$ が成り立つ. $\}$
としたとき, $\Omega(X, x_0)$ 上のホモトピー同値関係 $〈homotopy/\Omega(X, x_0)〉$ (すなわち $\alpha_0, \alpha_1 \in \Omega(X, x_0)$ に対して, 連続写像 $F : I \times I \rightarrow X$ で $F(t, 0) = \alpha_0(t)$, $F(t, 1) = \alpha_1(t)$ かつ $F(t, u) \in \Omega(X, x_0)$ $(t \in I, u \in I)$ が成り立つものが存在する) で割って得られる商空間 \[ \pi_1(X, x_0) = \Omega(X, x_0)\big/〈homotopy/\Omega(X, x_0)〉 \] が群になること, この群を $(X, x_0)$ の基本群と呼ぶことの拡張である.
最初はこの定義の方が基本群のより自然な定義と考えていたが, そうでもなかった. このことは最後に書く.
上述のように $X$ の商空間 $\pi_1(X)$ を定義したときに次が成り立つ.
- (1) $\Omega(X)$ は各 $\Omega(X, x)$ $(x \in X)$ の和集合である. つまり \[ \Omega(X) = \coprod_{x \in X} \Omega(X, x) \] が成り立つ.
- (2) $x_0 \in X$ を任意に固定する. $X$ は弧状連結だから, 各 $x \in X$ に対して道 $\gamma(x_0, x) : I \rightarrow X$ で
$(\gamma(x_0, x))(0) = x_0$ かつ $(\gamma(x_0, x))(1) = x$
となるものが存在する. このような道の族 $\{ \gamma(x_0, x) \}_{x \in X}$ を 1 つ選んで固定する. また, 各 $\alpha \in \Omega(X, x)$ $(x \in X)$ に対して写像 $\varphi(x, x_0) : \Omega(X, x) \rightarrow \Omega(X, x_0)$ を \[ (\varphi(x, x_0))(\alpha) = (\gamma(x_0, x)\alpha){\gamma(x_0, x)^{-1}} (\alpha \in \Omega(X, x)) \] と定義する. このとき各々の $\varphi(x, x_0)$ はホモトピー同値性を保存する. - (3) 点付き位相空間 $(X, x_0)$ に対する基本群 $\pi_1(X, x_0)$ と $\pi_1(X)$ は集合として同型である. ループ空間 $\Omega(X, x_0)$ の元 $\alpha$ の同値関係 $〈homotopy/\Omega(X, x_0)〉$ による同値類を $[\alpha]_{\Omega(X, x_0)}$, ループ空間 $\Omega(X)$ の元 $\alpha$ の同値関係 $〈homotopy/\Omega(X)〉$ による同値類を $[\alpha]_{\Omega(X)}$ と書いたとき, 集合の同型写像 $i : \pi_1(X, x_0) \rightarrow \pi_1(X)$, $r : \pi_1(X) \rightarrow \pi_1(X, x_0)$ はそれぞれ
$i([\alpha]_{\Omega(X, x_0)}) = [\alpha]_{\Omega(X)}$,
$r([\alpha]_{\Omega(X)}) = [(\varphi(x, x_0))(\alpha)]_{\Omega(X, x_0)} (\alpha(0) = x = \alpha(1))$
により与えられる. - (4) 群 $\pi_1(X, x_0)$ における積を各 $a, b \in \pi_1(X, x_0)$ に対して \[ m_0(a, b) = ab = a \cdot b = a \cdot_{\Omega(X, x_0)} b, \] 各 $a \in \pi_1(X, x_0)$ にその逆元を対応させる写像を \[ inv_0(a) = a^{-1} \] とおく. また, $e_0$ を$\pi_1(X, x_0)$ の群の単位元とする. これらを用いて写像 $m : \pi_1(X) \times \pi_1(X) \rightarrow \pi_1(X)$, $inv : \pi_1(X) \rightarrow \pi_1(X)$ をそれぞれ
$m = i \circ m_0 \circ (r \times r)$,
$inv = i \circ inv_0 \circ r$
と定義し, 元 $e \in \pi_1(X)$ を $e = i(e_0)$ により定義する. このとき, $m$ を積, $inv$ を逆元を与える写像, $e$ を単位元として $\pi_1(X)$ は群となる. つまり, 任意の $a, b, c \in \pi_1(X)$ に対して \[
ab = a \cdot b = a \cdot_{\Omega(X)} b = m(a, b), \\
a^{-1} = inv(a)
\] とおいたとき, \[
(ab)c = a(bc), \\
aa^{-1} = a^{-1}a = e, \\
ae = ea = a \] が成り立つ. - $\pi_1(X)$ は群として $\pi_1(X, x_0)$ と同型である. 群の同型写像は $i : \pi_1(X, x_0) \rightarrow \pi_1(X)$ と $r : \pi_1(X, x_0) \rightarrow \pi_1(X)$ により与えられる.
- (5) 弧状連結な位相空間の圏を $\textbf{pcTop}$, 群の圏を $\textbf{Grp}$ とする. 任意の対象 $X, Y \in \text{Ob}(\textbf{pcTop})$ と任意の $\textbf{pcTop}$ の射 $f : X \rightarrow Y$ に対して写像 $\pi_1(f) : \pi_1(X) \rightarrow \pi_1(Y)$ を \[
(\pi_1(f))([\alpha]_{\Omega(X)}) = [f \circ \alpha]_{\Omega(Y)} (\alpha \in \Omega(X)) \] と定義する. このとき $\pi_1 : \textbf{pcTop} \rightarrow \textbf{Grp}$ は関手である.
ここまでだが, 一連の計算を通じてこのような基本群 $\pi_1(X)$ の定義は必ずしも自然なものではないという気がしてきている.
その理由を説明するが, うまく説明できるかどうか... あくまで自分の感じたことなので.
通常は弧状連結な点付き位相空間 $(X, x_0)$ (議論を簡単にするために弧状連結という条件を付けている. この条件が無くても中心的な議論の流れは変わらない) に対して, そのループ空間 $\Omega(X, x_0)$ をホモトピー同値関係 $〈homotopy/\Omega(X, x_0)〉$ で割った商空間 $\pi_1(X, x_0)$ を考える. これは $\Omega(X, x_0)$ 上の積 (ループの連結) から自然に導かれる積によって群になる. $\pi_1(X, x_0)$ を $X$ の基本群と呼ぶ.
この定義では, 元になるループ空間 $\Omega(X, x_0)$ はループの連結を積, ループの逆回しを逆元のようなもの, 定数ループを単位元のようなものとする構造を持っている. しかもループの積は任意の 2 つのループの間に定義される. 結合律が成り立っていないために群にはならないが, 群の素のような構造 (マグマと呼ぶらしい) を持っている. 基本群 $\pi_1(X, x_0)$ の構造がループ空間 $\Omega(X, x_0)$ におけるループに対する幾何学的な操作とうまく対応している.
一方, 弧状連結な位相空間 $X$ のループ空間 $\Omega(X)$ は, 任意の 2 つの元に対して定義される積というものを持たない. 基点が同じループ同士に対してのみ積が定義される. だから, $\pi_1(X)$ に群の構造を入れるためにある基点 $x_0 \in X$ を定め, $x_0$ から $X$ の各点 $x$ への道の族 $\{ \gamma(x_0, x) \}_{x \in X}$ と, 写像の族 $\{ \varphi(x, x_0) : \Omega(X, x) \rightarrow \Omega(X, x_0)\}_{x \in X}$ を選んで固定する. これによって各ループ $\alpha$ を写像 $\varphi(x, x_0)$ $(\alpha(0) = x = \alpha(1))$ によって $x_0$ を基点とするループ $(\varphi(x, x_0))(\alpha) = (\gamma(x_0, x)\alpha)\gamma(x_0, x)^{-1}$ に変換して $\Omega(X, x_0)$ でのループの積に還元し, これによって群の構造を $\pi_1(X)$ に定める. 技巧的であってあまりすっきりとした議論ではないという気がする.
位相空間に対する基本群というのは基点 $x_0$ を用いて定まる. 弧状連結な位相空間という幾何学的な対象については, 基点 $x_0$ は任意にとってよい. どのように選んでも結果の基本群は群として同型になるからである.
このことは実は弧状連結な位相空間というきれいな対象について真なだけではないのか.
一般に基本群をより一般的に考察した場合に, ある (必ずしも幾何学的とは限らない) 対象 $X$ に対する基本群というものが定義されるならば, それは基点の取り方に依存する場合もあるのではないか.
今回の自由研究で導入した $\Omega(X)$ というループ空間は構造がかなり緩い. その緩さを無理矢理に直接 $X$ の基本群 $\pi_1(X)$ に結びつける, 群という強い構造に結びつける議論も今ひとつすっきりしない.
ここから先は自分の数学の知識の先にあるような気がする.
ひとまず自由研究はこれらをノートに清書して終わりとして, 元々の本 ("Toposes, Triples and Theories") の流れである Hurewicz 変換の議論に戻ろうと思う.
2016年01月22日
数学: 基本群の定義
早く起きられたので, おととい病院への往き帰りに求めた結果をノートに清書する.
作業療法への往き帰りの電車の中でもやる.
弧状連結な位相空間 $X$ の基本群 $\pi_1(X)$ を, $X$ のループ空間 $\Omega(X)$ の, ホモトピー同値関係 $〈homotopy/\Omega(X)〉$ による商空間 $\Omega(X)\big/〈homotopy/\Omega(X)〉$ として定義する. このとき $\pi_1(X)$ が群になり, かつ点付き位相空間 $(X, x_0)$ から通常の方法で定義した基本群 $\pi_1(X, x_0)$ と同型になることの証明がやっとうまくいきそうに思う.
これまで進んでは戻り進んでは戻りしていた理由が少しずつわかってくる.
一つに, 一連の試行錯誤の中で集合を使って議論を進めた部分と圏を使って議論を進めた部分が自分の中でうまく整理できず, まとめることができていなかったことがある.
もう一息だと感じるが, 集中した時間が必要だ.
作業療法への往き帰りの電車の中でもやる.
弧状連結な位相空間 $X$ の基本群 $\pi_1(X)$ を, $X$ のループ空間 $\Omega(X)$ の, ホモトピー同値関係 $〈homotopy/\Omega(X)〉$ による商空間 $\Omega(X)\big/〈homotopy/\Omega(X)〉$ として定義する. このとき $\pi_1(X)$ が群になり, かつ点付き位相空間 $(X, x_0)$ から通常の方法で定義した基本群 $\pi_1(X, x_0)$ と同型になることの証明がやっとうまくいきそうに思う.
これまで進んでは戻り進んでは戻りしていた理由が少しずつわかってくる.
一つに, 一連の試行錯誤の中で集合を使って議論を進めた部分と圏を使って議論を進めた部分が自分の中でうまく整理できず, まとめることができていなかったことがある.
もう一息だと感じるが, 集中した時間が必要だ.
2016年01月20日
数学: 基本群の定義
朝の時間と病院への往き帰りの電車内で数学をやる.
この 1, 2 週間やってきた計算や証明を, 可能な限り射と可換図式を使ったやり方で書き直す. 自分自身の理解もかなりすっきりしてきたようだ.
だけど慌てるとまたどこかで躓くだろうから慎重に進めないといけない.
絵を描くのもそうだが, 数学をやっているときはいろいろと苦しい状態から解放されるからいいな.
この 1, 2 週間やってきた計算や証明を, 可能な限り射と可換図式を使ったやり方で書き直す. 自分自身の理解もかなりすっきりしてきたようだ.
だけど慌てるとまたどこかで躓くだろうから慎重に進めないといけない.
絵を描くのもそうだが, 数学をやっているときはいろいろと苦しい状態から解放されるからいいな.
タグ: 基本群
2016年01月12日
2016年01月05日
数学: 基本群の定義
5 時起床.
目の疲れを感じるので目薬を点す.
起きたときの体調はなんともなかったが, 顔を洗って着替えたあたりから鬱っぽくなってくる.
今日は作業療法で絵を描きに行きたいので寝込んでしまわないために頓服を服用する.
昨年末からの続きで, 計算の見直し. 詰めの部分で不完全なところがあった.
計算の前提として, 考えている弧状連結な位相空間 $X$ の任意の 2 点の組各々に対してその 2 点を結ぶ道を選んでおく必要があるのだが, その選び方に条件を付ける必要があるのだ. 今のままでは証明がうまく進まない.
時間がないのでとりあえず弁当を作って出かける.
目の疲れを感じるので目薬を点す.
起きたときの体調はなんともなかったが, 顔を洗って着替えたあたりから鬱っぽくなってくる.
今日は作業療法で絵を描きに行きたいので寝込んでしまわないために頓服を服用する.
昨年末からの続きで, 計算の見直し. 詰めの部分で不完全なところがあった.
計算の前提として, 考えている弧状連結な位相空間 $X$ の任意の 2 点の組各々に対してその 2 点を結ぶ道を選んでおく必要があるのだが, その選び方に条件を付ける必要があるのだ. 今のままでは証明がうまく進まない.
時間がないのでとりあえず弁当を作って出かける.