大麻使用のスノボ2選手、無期限登録停止など4処分 スロープスタイル部門(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160427-00000070-dal-spo
処分を受けた選手は既にネットで「この選手ではないか」と過去のブログ記事等から推測されており、それが事実だとしたら個人的に応援していた選手でもあり、スノーボードファンとして本当に残念です。
更に残念なのは、 私の周辺の人(特に年配の方が多い)から 「スノーボードの選手はろくでもないのが多い」という発言が出ていること。
そうじゃないんですよ、とその度にスノーボードの魅力や競技内容の凄さ、選手達が危険を伴いながら必死に練習を重ねていることなどを説明しますが、 「スノボーはチャラい」 というイメージがスノーボードに興味の無い人には面白みがある解釈だからか、簡単に覆すことが出来ません。
しかし、一流のスポーツ選手、オリンピックを目指す競技選手が「大麻を使用する」ということは大いに問題があります。ほんの出来心・・・で済まされる訳はなく、厳しい姿勢で協会が処分に臨んだことは止むを得ないと思います。
大麻使用、現地(海外)では合法らしい
ところで問題になった海外キャンプですが、場所はアメリカ・コロラド州であり、 どうやら現地では大麻の使用は合法なんだそうです。
「えっ、現地で合法なら、法律的には問題ないんじゃないの?」
という素朴な疑問が湧きました。
「海外での合法カジノによる賭博行為」と同じなんじゃないの?と。
テレビでは多くの芸能人や知識人が「海外に行くと必ずカジノに行く」「カジノ大好き」「相当お金を突っ込んでいる」と嬉しそうに海外での賭博行為についてコメントしていますが、 これらが問題になることは一切ありません。
もちろん賭博行為は、国内では立派な刑法違反で、犯罪です。
「国内では違法、海外では合法」
この理屈でいえば、今回の大麻使用も同じなんじゃないか?
何が問題なの?
という素朴な疑問を整理しておきたいと思い、調べてみました。
※法律の専門家ではありませんので、条文の解釈が正しいかどうかについては確認していません。あくまで個人の見解です。
ギャンブルの違法性の根拠は?
ギャンブル、すなわち 賭博行為 については、 刑法に記載がありました。
刑法
第二十三章 賭博及び富くじに関する罪(刑法)
(賭博)
第百八十五条 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
(常習賭博及び賭博場開張等図利)
第百八十六条 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
(富くじ発売等)
第百八十七条 富くじを発売した者は、二年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。
2 富くじ発売の取次ぎをした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
3 前二項に規定するもののほか、富くじを授受した者は、二十万円以下の罰金又は科料に処する。
この第百八十五条に「 賭博をした者は罰金又は科料に処する」と明記されています。
つまりこれが賭博が違法行為となる根拠条文ですね。
だから日本では賭博行為はしてはいけない、ということになります。
ちなみに「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」という例外規定がありますが、これは、すぐに消費される性格のもの、例えばジュースや昼ごはんとか、そういったものを賭けた場合と解釈されているケースが多いらしいです。
ですので、ジュースを賭けてジャンケンするとかいうのは、罪として問われないということみたいですね。
なお、お金は額の大小に関わらずNGという判例があるらしいのでご注意を。
(ジュース”代”を賭けたジャンケンは罪になるんでしょうか?謎です)
じゃあ、大麻使用の違法性の根拠は?
これはそのものずばり、 大麻取締法 という法律がありました。
大麻取締法
第三条 大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。
2 この法律の規定により大麻を所持することができる者は、大麻をその所持する目的以外の目的に使用してはならない。
第三条により、 大麻は使うどころか、持つことや栽培すること、譲り受けることなどが法律により禁止されているということになります。
これが違法性の根拠ですね。
時々押入れで大麻を栽培して逮捕されるケースというのは、この大麻取締法に違反するからという事になるんですね。
(ちなみに逮捕されるのは罰則規定が別の条文にあるからです。違法がただちに逮捕ということではないと思います)
だから日本国内で大麻を使用したというのなら、やはり同様に違法となり、問題行為となります。
ここまでは整理できました。
では、国内ではなく海外で、しかも現地の法律では「合法」となる場合はどうなるのでしょうか。
この答えを解くカギは「刑法」にありました。
現地では合法なら、違法ではないのかという問いについて
刑法第2条、第3条に通称「国外犯規定」と言われる条文があり、引用します。
(長いので読み飛ばしてください。メモ代わりです)
第2条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。
一 削除
二 第77条から第79条まで(内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助)の罪
三 第81条(外患誘致)、第82条(外患援助)、第87条(未遂罪)及び第88条(予備及び陰謀)の罪
四 第148条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪
五 第154条(詔書偽造等)、第155条(公文書偽造等)、第157条(公正証書原本不実記載等)、第158条(偽造公文書行使等)及び公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第161条の2(電磁的記録不正作出及び供用)の罪
六 第162条(有価証券偽造等)及び第163条(偽造有価証券行使等)の罪
七 第163条の2から第163条の5まで(支払用カード電磁的記録不正作出等、不正電磁的記録カード所持、支払用カード電磁的記録不正作出準備、未遂罪)の罪
八 第164条から第166条まで(卸璽偽造及び不正使用等、公印偽造及び不正使用等、公記号偽造及び不正使用等)の罪並びに第164条第2項、第165条第2項及び第166条第2項の罪の未遂罪
《改正》平13法097
(国民の国外犯)
第3条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
一 第108条(現住建造物等放火)及び第109条第1項(非現住建造物等放火)の罪、これらの規定の例により処断すべき罪並びにこれらの罪の未遂罪
二 第119条(現住建造物等浸害)の罪
三 第159条から第161条まで(私文書偽造等、虚偽診断書等作成、偽造私文書等行使)及び前条第5号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録に係る第161条の2の罪
四 第167条(私印偽造及び不正使用等)の罪及び同条第2項の罪の未遂罪
五 第176条から第179条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦、集団強姦等、未遂罪)、第181条(強制わいせつ等致死傷)及び第184条(重婚)の罪
六 第199条(殺人)の罪及びその未遂罪
七 第204条(傷害)及び第205条(傷害致死)の罪
八 第214条から第216条まで(業務上堕胎及び同致死傷、不同意堕胎、不同意堕胎致死傷)の罪
九 第218条(保護責任者遺棄等)の罪及び同条の罪に係る第219条(遺棄等致死傷)の罪
十 第220条(逮捕及び監禁)及び第221条(逮捕等致死傷)の罪
十一 第224条から第228条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪
十二 第230条(名誉毀損)の罪
十三 第235条から第236条まで(窃盗、不動産侵奪、強盗)、第238条から第241条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷、強盗強姦及び同致死)及び第243条(未遂罪)の罪
十四 第246条から第250条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝、未遂罪)の罪
十五 第253条(業務上横領)の罪
十六 第256条第2項(盗品譲受け等)の罪
つまり、いわゆる重犯罪にあたるようなものや、国外で行われても日本国内へ重大な影響を及ぼしかねない犯罪というものは、現地での合法・非合法にかかわらず罪ですよ、という規定です。
条文をざっと読むと、まあ、重々しい犯罪が並びます。
ここで確認しておきたいのは、まず、第185条の罪である 「賭博罪」がこの中に含まれているかどうかです。
第2条の最後は、
八 第164条から第166条まで(卸璽偽造及び不正使用等、公印偽造及び不正使用等、公記号偽造及び不正使用等)の罪並びに第164条第2項、第165条第2項及び第166条第2項の罪の未遂罪
含まれていません。
では次に、第3条です。抜粋しますと・・・
六 第199条(殺人)の罪及びその未遂罪
第184条の次は、一気に飛んで第199条となります。
ここでも含まれていません。
ということはどういうことか。
つまり海外で行う賭博行為(第185条の罪)は、海外で行う場合は日本の刑法では違法性を問えないということです。
ということは、現地の法律で合法であれば、それはつまり合法的な行為であり、日本国民であっても堂々とギャンブルが、賭博行為ができるということなんです。
だから堂々と「俺はラスベガスのカジノで何百万円負けた!!」と声を大にして言うことができるのです。
なるほど。
この点については理解できました。
「まだ行ったことは無いですが、韓国やアメリカなど、合法カジノがあるところに行った際には正々堂々とギャンブルに興じたいと思います」とここに書いたとしても、何も違法なことではないということです。
では次に大麻使用に関する国外規定ですが・・・
あれ?
この刑法第2条と第3条、刑法に書いてある罪のことしか書いていません。
大麻使用のことはもちろん、大麻取締法の名前すら出てきません。
ということは今回の「スノーボード選手のアメリカ・コロラド州での大麻の使用」は合法なのでしょうか。
それでは次に、大麻取締法をもう一度読んでみることにします。
大麻に関する外国での罪はどうなるの?
安心してください(?)。
海外での罪については大麻取締法に規定がありました。
第二十四条の八 第二十四条、第二十四条の二、第二十四条の四、第二十四条の六及び前条の罪は、刑法第二条 の例に従う。
ここに「刑法第2条の例に従う」とあります。
刑法第2条には「この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。」とありますから、これで読み替えると、
第二十四条の八 第二十四条、第二十四条の二、第二十四条の四、第二十四条の六及び前条の罪は、日本国外において罪を犯したすべての者に適用する。
という内容になり、 つまり日本国外で行ったとしても大麻取締法の罪が適用されるということになります。
現地で合法かどうかには関係なく、罪となる。
だから例え現地では合法であり、「この州では合法だから問題ないよ〜」的なお誘いを受けて行ったことだとしても、それは罪になるんですね。
さて、あとは この第24条の8に該当する罪が何なのか、という確認が必要です。
大麻関連で国外犯規定が適用されるのは・・・
再び大麻法の引用です。
下線を引いているものが第24条の8にある国外犯規定が適用される条文です。
第三条 大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。
2 この法律の規定により大麻を所持することができる者は、大麻をその所持する目的以外の目的に使用してはならない。
第二十四条 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
第二十四条の二 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
第二十四条の三 次の各号の一に該当する者は、五年以下の懲役に処する。
一 第三条第一項又は第二項の規定に違反して、大麻を使用した者
二 第四条第一項の規定に違反して、大麻から製造された医薬品を施用し、若しくは交付し、又はその施用を受けた者
三 第十四条の規定に違反した者
2 営利の目的で前項の違反行為をした者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
第二十四条の四 第二十四条第一項又は第二項の罪を犯す目的でその予備をした者は、三年以下の懲役に処する。
第二十四条の六 情を知つて、第二十四条第一項又は第二項の罪に当たる行為に要する資金、土地、建物、艦船、航空機、車両、設備、機械、器具又は原材料(大麻草の種子を含む。)を提供し、又は運搬した者は、三年以下の懲役に処する。
第二十四条の七 第二十四条の二の罪に当たる大麻の譲渡しと譲受けとの周旋をした者は、二年以下の懲役に処する。
うーん、多い!
言葉が難しい!!
噛み砕いて整理してみますと、
・第24条 みだりに栽培・輸出・輸入をする
・第24条の2 みだりに所持し、譲り渡し・譲り受けをする
・第24条の4 第24条(栽培・輸出・輸入)の準備をする
・第24条の6 事情を知りながら第24条(栽培・輸出・輸入)に協力する
・第24条の7 第24条の2(所持・譲り渡し・譲り受け)の斡旋をする
にあたる行為が、 大麻法での国外犯規定にあたる内容ということと読めます。
あれ?
この中には、今回問題となった「海外での大麻の使用」にあたると考えられる項目がありません。
大麻の使用に関する罰則の項目がどこにあるのか?を探してみましたところ、先ほど引用した条文の中で下線を引いていない「第24条の3」があたるのではないかと考えます。
その内容は、 「第三条第一項(大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない)又は第二項(この法律の規定により大麻を所持することができる者は、大麻をその所持する目的以外の目的に使用してはならない。)の規定に違反して、大麻を使用した者は五年以下の懲役に処する」 というものです。
どうでしょう。
多分、この条文が「大麻の使用」が犯罪行為にあたるという根拠になると思います。
だとすると、この条文は大麻取締法の国外犯規定の対象ではありません。
ということは、 「海外の大麻使用が合法なところで、ちょっとだけ大麻を使ってみる」ことが、違法ではないという仮説がこれらのことから導かれます。
なんと!!
本当か!?ちょっと驚きの内容です。
なるほど。
だとすると、今回の「スノーボード選手が海外で大麻を使用した事例」については、 現地のアメリカ・コロラド州での大麻使用が合法であるという前提に立てば、犯罪行為を行ったために処分をされたものではないということになります。
今回の事件でスノーボード選手が処分された本当の理由とは?
最初ニュースを聞いた時は、「犯罪行為をやったから処分されたんだな」と簡単に考えてしまったのですが、そうではない可能性があるということが分かりました。
ではなぜ2人の選手は処分されたのか?ということを考えますと、それはやはり 「守らなくてはならないルールを破ったから」ということに尽きる んだと思います。
確かに法律は破っていないかもしれません。
ですがスポーツ界には、例えばドーピング規定など独自のルールや規則があります。スポーツはルールの範疇でその成果を競うものですから、当然、ルールを守ることが自然と要求されることになります。
今回は、それが何のルールかまでは確認していませんが、JOCの規定やあるいはIOCの規定なのかも分かりませんが、「大麻の使用」がそれに反する行為であったということなのでしょう。
そうであれば、やはりスノーボード選手2名の行為は責められるべきであり、スノーボードファンとしては本当に残念ですが、処分はやむを得ないということになります。
ということで、ようやく自分の中で今回の事件の問題点の整理ができました。
大麻の使用が違法かどうか。
外国の合法とされているエリアでの使用が違法になるのかどうか。
似た例として、外国でのギャンブルは違法にならないのか。
長い記事になりましたが、最後まで読んでいただいてありがとうございました。
あ、少し前に話題になったバドミントン選手の違法カジノでの賭博行為は、刑法によると間違いなく犯罪行為です。
この点、今回のスノーボード選手の事件とは性質が異なるということになりますので、ここは覚えておきたいです。
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