面白いのはもとより、何かちょっと心に引っかかった・・・映画でした。
忘れないよう、感想をまとめておきます。
映画の概要紹介(1回観て、覚えている範囲で・・・)
17才の高校生が不慮のバス事故で死んでしまい、地獄に行く…から始まる映画です。
バス事故の原因は劇中で明らかにされますが、
「 主人公がおやつのバナナを喉に詰まらせてしまい、座っていた最前列の座席から苦しさのあまり運転席へ倒れこみ、はずみでハンドルを谷方向に切ったことでバスが谷底へ転落したこと」
というギャグのような理由です。
その「自分でハンドルを切った」ことで、地獄の閻魔大王に「自分で死ぬ原因を作った=つまり自殺」とみなされて、地獄へ落とされたというのが本作の主人公です。
随分とぶっ飛んだ設定です。
序盤からのこんなぶっ飛んだ感じが映画の中では終始続いて、何だかきつ〜〜いお酒を手当たり次第に混ぜて飲まされるような感覚を受けました。
結構、酔えますよ。
(飲まされる、ではなく、こんなに上手くて楽しいものがあるんだぜと見せ付けられて、気が付いたら一緒に飲んでいた、という感じだったかもしれません。)
さて、あらすじの続きですが、最初は自分自身の生前の恋の行方を確かめたい主人公が、輪廻転生で人間界に戻ることを目指します。その途中で長瀬演じる鬼(キラーK)たちとの絡みがあったり、地獄ロック大会みたいなものへの出場を目指したりといったことをしていきます。
その中で主人公は、他人の生き様や歌に次第に感化され、いつしか輪廻転生の目的が「キラーKの歌を死に別れた彼女に届けてあげたい」という思いへと変化していきます。
ようやく主人公がキラーKの死に別れた彼女と子供とがいる天国に辿り着き・・・というのが、大まかなあらすじです。
そうそう、地獄のシーンで繰り返し出てくるロック音楽のシーンが印象的でした。シャウトが効いたハードロックが何度も映画館に響き、まるでハードロック・ミュージカルのような様相でした。
ここが面白かった
色々と面白い点はありましたが、3点を触れておきたいと思います。
◯長瀬が演じる地獄の鬼「キラー・K」
ヘビメタ色の濃い格好とドスの効いた話し方が特徴で、とにかくキャラが濃かったです。それでいて自己中的な主人公をそれとなく導いていく人間味のあるキャラなんですよね。
実は、死ぬ前は主人公が通っていた貸しスタジオの店員でした。これが明らかにされるなかで、生きていた時に持っていた人間的に弱いところや、付き合っていた女性とのエピソードが明かされ、急に人間臭くなってきます。
生前のどこか情けない男の感じと、死んで鬼になった後の突き抜け感のギャップが強く、また、それが急にまた人間の時のような弱い性格になったりと、この変化が見ていてとても楽しい!
むしろこっちが主人公なんじゃないか?って思いました。
怖くてカッコよくて、それでいて人間臭い、長瀬さん演じる「キラー・K」は最高に面白かったです。
歌も良かった。
◯散りばめられた大人のギャグ
下ネタとまでは言いませんが(一部は完全にそうでしたが)、 結構大人な感じのギャグ がそこかしこに散りばめられていました。
詳しくは割愛しますけれど、劇場でも結構笑いが起きてました。
爆発的な笑いではなく、「クスクス・・・」といった小さな笑いでしたが、そういったテイストが好きな人にはツボに嵌ると思います。
(親と一緒に家で見る時にはちょっと笑い方に困るかもしれません。)
面白かったポイントとして、ここも挙げておきたいと思います。
◯人の一生を俯瞰で見る
映画のストーリー上の仕掛けとして「地獄は時間の流れが早く、地獄で少しの時間でも、人間界ではかなりの時間が過ぎている」という設定がありました。
主人公は定期的に輪廻転生で地獄を離れますが(そのほとんどは「畜生道」つまり動物としての転生ですが・・・)、その度に何年単位で時間が過ぎてしまった人間界を見ることになります。
貸しスタジオの若い女店員にはいつしか子供が生まれ、その子供も大きく成長します。
主人公が好きだった女の子は、最後に高校生の娘を持つ母親として登場します。
主人公の視点を通じてこの時間の流れを見ていくことで、人間の一生を俯瞰の視点で見るという体験をすることになります。
「色々あったけど、人間の一生って、結局はまあ終わってみたら一瞬の出来事みたいなもんだよなあ」
そんな考えが浮かびました。
同時に、世は無常だなあとも思いました。
頑張って生きようとしていた親子が火事であっさりと死んでしまったり、初恋の相手の女の子は誰かと結婚して子供を産んで年老いていたり。
バス事故で生き残った友人(男)は不倫して会社の金を使い込んでいたり。
それらには意味がありそうで、意味がない。少なくとも主人公は「そうなった」という事実のみを体験するんですよね。これはある意味で冷徹な「現実」の有り様を観客に突き付けているのかな、とも思いました。
見方を変えると、人間の一生なんてまあこんなもんだから、あまり深く考えすぎるのは意味がないよ的なメッセージだったのかもしれません。
主題って何だろう
色々とテーマは込められているのだろうと思いますが、最後に主人公が言った 「行った奴じゃないと分かんないよ」という台詞は一つのテーマだといえます。
地獄にいる者達はみな「人間道」そして最上の「天国」に行きたいという渇望を持って描かれています。
そんな中、映画で描かれた天国の姿は決して魅力的なものではありませんでした。天国に行った主人公は、自ら天国での「自殺」を選び、鬼として地獄に戻ってしまいます。
そこでさっきの台詞を言い、
「地獄の方が面白い」 と言うのです。
ところで劇中でキラー・Kは生前に「天国」という曲を作ります。
この曲のサビでは、
「あなたがいれば ここは天国
あなたがいない そこは地獄」
という様な(ごめんなさい!1回だけしか見てないので記憶がアヤシイです)
歌詞が流れますが、まさに主人公が天国から堕天して戻ってくるそのシーンは、 「楽しい仲間がいる地獄が、自分にとっては天国」というメッセージに他ならないな、 と。
若者よ!ここではないどこかの天国なんて無いんだよ。
今いるところこそが、一見苦しそうに見えるかもしれないけど、楽しいことだってある天国なんだよ。
という事が主題だなというのが私の感想です。
エンターテイメントの中にさりげなくメッセージを感じることができる、面白い映画でした。
ロック好きで、力を抜いたギャグが楽しめる人。
何だか世界が灰色に見えて形の見えない苛立ちに苦しんでいる人。
きっと楽しめる映画だと思います。
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