それは何故かと考えると、
・今の現実とは違うユートピアのような世界が広がっていて
・自分もそのおこぼれに有りつける
というような 幻想 を持っていたのだと思います。
書店でこのタイトルに目が止まったのも、 「ああ、なんかそんな生活っていいなあ・・・」という思いを、微小規模ながらブログを書いている身として思い浮かべてしまったからに他ありません。
その背景には、私自身が
「ウェブという集合知で作られる世界の中には、人間の小さな悩みなど吹き飛ばしてしまうような素晴らしく新しい空間が広がっているんだ」
という理想論的な認識を持っていたのだと思いますが、しかし、 この本に書かれているのは、徹底的にリアリズムで、人間が作り上げる戦いの物語でした。
多くの人間が登場してはその関わりの中で仕事が生まれたりトラブルが生じたりというごく普通の社会で、ウェブというものは一つのフィールドに過ぎず、そこを舞台に仕事をする人間たちが主人公の世界。
書中ではその様子がありありと生臭く書かれていました。
本の帯に書かれていたというキャッチコピーがその様子を良く表しています。
(良くできたキャッチコピーだなあと感心しました)
その中でも「なるほどなあ」と認識を新たにさせられたのは、”ウェブはバカと暇人のもの”という筆者の本のタイトルともなった、ウェブに対する悲観的というか、ネガティブなものの見方でした。
筆者の体験と結びついたこの考えは本書中で実体を持つかのように、大きな説得力を発揮し、ごく自然に私はその考えに納得してしまいました。
腑に落ちた、というのが正解かもしれません。
ネットニュースサイトを見るたびに「有名人のブログ記事や、テレビのバラエティー番組での発言をニュースに挙げたものばっかりじゃないか」と違和感を感じていたのですが、その違和感の正体と、ネットニュースが自然とそうなってしまっている現象の背景とが、この本を読むことによってすっと自分の中に入ってきた感覚がありました。
「そうか、自分はウェブに幻想を持っていたんだなあ」
そう気付かされたのが、この本の大きな収穫だったと思います。
勿論読み物としてもとても面白かったです。濃いエピソードが山盛りで圧倒的でした。
中川淳一郎さんの著書を読んだのはこの本が初めてで、実は名前を知ったのも初めてだったのですが、本の内容は不思議とすっと自分の中に入ってきました。
世代的にも近いものがあり、大学の情報室でだけメールが出来た時代や、テレホーダイへの熱狂など、共通する時代背景が書かれていたこともその理由かもしれません。
他の著書も読んでみたいと思いました。
というか早速一つ注文してしまいましたが・・・
※この早さはインターネットの恩恵ですね。最初に紹介した自分の「ウェブに対する幻想」とは全く別の次元で、作用としてのインターネットは確実の社会と生活を変えているのは間違いないなあ、と痛感しました。
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