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2022年08月21日

私だけの特捜最前線→15「さようなら、高杉刑事!〜西田敏行氏降板のドラマ」

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※このコラムはネタバレがあります。

私がリアルタイムで見ていた頃は、すでに 西田敏行氏扮する高杉刑事が去った後で、特命課は「エリート刑事の集まり」というイメージが植え付けられていました。高杉は明らかにその枠からは外れています。

高杉は東北出身で、子だくさんの家庭で育った苦労人。いわゆる、たたき上げの刑事として特命課に赴任しました。初期の同僚で典型的なエリートだった桜井刑事(藤岡弘)らとは真逆の存在だったのです。

西田氏の持ち味であるコミカルとシリアスの使い分けは、高杉刑事の個性を特命課の中で一層際立たせていました。しかし、スケジュールの都合から徐々に登場する機会が減り、ついに降板を余儀なくされました。

第105話「さようなら、高杉刑事」では、母親殺しを自白した少女(森下愛子)の無実を証明するため、高杉は孤軍奮闘します。自分の出世を棒に振りかねない行動に、特命課の刑事たちもやきもきするのです。

西田氏らしいシーンといえば、自分の顔を化粧品で塗りたくりながら、化粧嫌いの少女がなぜ化粧をして路上にいたのかという「心の内」を、少女に語り聞かせます。 コミカルとシリアスを融合させた名場面と言えます。

事件解決後、高杉刑事は所轄署の係長として栄転したのです。その荷物整理の場面で、玉井婦警(日夏紗斗子)にエロ本が見つかってしまうシーンがあり、最後まで高杉らしさを見せてくれた降板劇となりました。

あのまま西田氏が特捜に出演し続けていたら、特命課の雰囲気も違ったものになっていたでしょう。たった一人の存在でイメージを変えてしまうほど、 西田氏の存在感は大きかったのだと思います。

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私だけの特捜最前線→14「射殺魔・1000万の笑顔を砕け!〜紅林刑事が語る刑事の役割とは」

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※このコラムはネタバレがあります。

アメリカ帰りの 桜井刑事(藤岡弘、)が特命課に復帰してからも、彼のアウトローぶりがいかんなく発揮されるドラマが時折見られます。時には、他の刑事たちと捜査方針で対立することもあるのです。
私だけの特捜最前線→13「帰って来たスキャンダル刑事!〜桜井刑事のアウトローぶり」

第107話「射殺魔・1000万の笑顔を砕け!」もその一つ。女に振られ、被害妄想となった男が「笑っている人」を許せず、連続射殺するという事件。無差別殺人に特命課も色めき立ちます。

当時、神代課長は不在で、橘刑事(本郷功次郎)が指揮を取っていました。桜井は犯人を狙撃するため、ライフルの携帯を要求しますが、繁華街での銃撃戦を避けるため、橘は断固認めようとしません。

ついに桜井は、犯人が恨む女とそっくりの女性をおとりに使うという強引な手段に出ようとします。そこに立ちはだかったのが 紅林刑事(横光克彦)です。紅林は女に帰るよう促し、それに対し桜井は激しくかみつきます。

紅林は「射殺、射殺と言いすぎやしませんか」とたしなめますが、桜井は「どうせ死刑になる男だ」と言い放ちました。すると紅林は「それは裁判所が決めることで、我々は逮捕するところまでだ」と語気を強めます。

このシーンでは、桜井のアウトローぶりを際立たせるため、生真面目な紅林をぶつけたのでしょう。特捜では「法の下に捜査し、法の下に裁かれるべき」を大原則にしており、その象徴的な場面となったのです。

紅林は、その大原則に最も忠実なタイプの刑事だということが、ここではっきりと示されます。同時に、地味なイメージだった紅林に 「冷静沈着で生真面目なタイプ」というキャラクターが根付くことになりました。

ただし、この作品のラストでは、人質を助けるために自ら大声で笑いながら、男の注意を引きつける場面があり、いざとなれば命懸けの行動も辞さないという熱血漢ぶりも見せてくれています。

ちなみに、もしも神代課長(二谷英明)が指揮を取っていたならば、紅林と桜井の場面は神代に差し替えられていたとも考えられます。そうなれば、紅林をアピールする機会が失われたでしょうね(苦笑)

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私だけの特捜最前線→13「帰って来たスキャンダル刑事!〜桜井刑事のアウトローぶり」

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※このコラムはネタバレがあります。

第1話から52話まで特命課のナンバー2として活躍し、アメリカに渡っていた 桜井刑事(藤岡弘、)が復帰するドラマが、103、104話の2週連続で放送された「帰って来たスキャンダル刑事」です。

桜井VS橘

超エリート刑事としてアメリカでも特別な任務にあたっていたはずの桜井でしたが、現地ですっかりアウトローな刑事に豹変してしまいました。事実上の国外追放の形で日本に戻ってくることになったのです。

「席を空けて待っている」と送り出してくれた神代課長(二谷英明)は長期出張で不在。蒲生次長(長門裕之)が代理を務めていましたが、事実上の特命課キャップは 橘刑事(本郷功次郎)でした。

桜井は、ある犯罪者を追って日本に戻って来たのですが、特命課には加わらず、独断専行でダーティーな捜査をします。部下だった津上刑事(荒木しげる)はその豹変ぶりに唖然とし、怒りの言葉さえぶつけるのです。

大掛かりな麻薬組織を追う桜井に振る舞わされる特命課の刑事たち。その中で、橘刑事だけは組織とつながりのある男の家族を守りたいと、子供につきっきりになっています。その誠意が男の自供を引き出したのです。

組織の取り引き現場で、橘は桜井に対し「お前には俺のやり方はできないだろ?俺もお前のやり方はできない。それだけさ」と言い、さらに「お前が復讐の虎だったら、 俺は牛だ、牛でいいよ」と微笑みます。

桜井の復帰というキャスティングは、ともすれば「両雄並び立たず」の状況を生み出す恐れもありました。しかし、この前後編を通して、二人の違いを明確に示し、同時に「並び立つ」ことも示していたのです。

蒲生次長の存在

当時、神代役の二谷英明氏は、ドラマのロケ中に大けがをして離脱していました。長期出張中という設定を行い、代理として課長を兼務していたのが 長門裕之氏扮する蒲生警視。長門氏の友情出演だったそうです。

神代と蒲生はライバルであり、よき友人でもありました。神代には「カミソリ」、蒲生には「稲妻」の異名があり、切磋琢磨して出世してきたのです。そのキャラクターは正反対と言ってもいいでしょう。

「冷徹」なイメージがある神代と比べ、蒲生は 「直情径行」という感じで、課の雰囲気もガラリと変わりました。暴走する桜井に右往左往させられますが、一方で決断した時には腹をくくる度胸も持ち合わせていたのです。

蒲生次長は事件後、特命課から姿を消しましたが、おそらく桜井の監督責任を取らされたのだろうと推察されます。その理由は、その後の 「窓際警視」シリーズでの準レギュラー化からも読み取れます。

なお、ドラマのラストで「桜井刑事は再び特命課に配属された・・・警部の肩書を奪われて」とテロップが出ます。降格処分を受けたようですが、懲戒免職にならなかっただけマシだったということでしょうか?(苦笑)

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私だけの特捜最前線→12「私だけの三億円犯人!〜犯罪史上に残る事件をテーマに」

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※このコラムはネタバレがあります。

三億円事件は、昭和43年12月に東京都府中市で起きた現金輸送車強奪事件で、白バイ隊員を装った犯人が現金を車両ごと奪い取って逃走。結局、犯人の逮捕には至らず、昭和50年に公訴時効が成立しました。

特捜最前線が事件をテーマに取り上げたのは時効成立の3年後でした。ドラマでは事件そのものを追うのではなく、事件を捜査してきた老刑事とその娘にスポットを当てているのが特徴です。

娘は三億円事件の少し前に見知らぬ 「おじさん」に誘拐されます。しかし娘は、血のつながらない父親(老刑事)より、おじさんに父性を抱くようになるのです。事件の翌日、おじさんは自首し、娘は父親の元に戻ります。

老刑事は時効後も事件の捜査に執念を燃やします。しかし、娘とその恋人がでっち上げた偽の証拠に振り回され、絶望して自殺してしまうのです。一方の娘も、出所後のおじさんとの再会を果たすことができません。

ドラマでは、おじさんが三億円事件の犯人だと匂わすような描写がされていますが、結局真実は語られないまま、おじさんは病気で急死してしまったのです。何ともやりきれないようなストーリーになっています。

神代課長(二谷英明)は、車を乗り捨てた後の足取りがつかめないことから、犯人が周囲に土地勘のある人物であると推測しています。この推測を、娘の誘拐事件とリンクさせた展開は 見事の一言に尽きます。

父親とおじさんの二つの父性に揺れる娘と橘刑事(本郷功次郎)とのやり取り、定年を控えた老刑事の執念に思い巡らす船村刑事(大滝秀治)など人間ドラマとしても見どころ満載です。

なお、同じ刑事ドラマの「太陽にほえろ」でも、三億円事件をテーマにしたドラマが作られています。こちらは事件そのものに直結した話になっていたと思います(記憶が定かではありませんが・・・)

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私だけの特捜最前線→11「交番ジャック・4人だけの忘年会!〜カンコとは違ったキャラの婦警」

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※このコラムはネタバレがあります。

特捜最前線の舞台である特命捜査課には、男の刑事たちに交じって 女性警察官(当時は婦警と呼ばれていた)が配属されていました。太陽にほえろのようなマスコット的存在ではなく、捜査にも携わっています。

特捜の婦警といえば、 「カンコ」こと高杉幹子婦警(関谷ますみ)が有名で、長い間レギュラーを務めました。一方で、カンコの前に所属していた婦警は「誰だっけ?」という感じで、あまり知られていません。

最初期の婦警のあと、2代目として約2年間特捜に所属していたのが 玉井婦警(日夏紗斗子)です。特命課に配属された理由が分かるような知的で落ち着いた感じの婦警で、カンコとは違ったキャラの持ち主でした。

第91話「交番ジャック・4人だけの忘年会!」では、交番に立てこもった若い男に、迷子の子供と一緒に監禁されてしまうという役。やみくもに怖がったり、感情的になったりするのではなく、冷静に対応しています。

若い男は泥棒の濡れ衣を着せられ、事件を起こしてしまったのですが、捜査陣との連絡役となった玉井婦警は、男とのやり取りを報告しながら 「悪い人間ではないと思います」と毅然とした態度で主張しています。

ふだんのドラマでは、さりげない脇役に徹している玉井婦警が、準主役として登場する珍しい回でもあります。カンコの代わりに特命課に長く勤めていたら、課の雰囲気も少し違っていただろうと思わせました(笑)

ちなみに、同じ設定でカンコが犯人と相対していたら・・・勝手な想像ですが、もっと「情」に訴えるような対応をしていたと思います。カンコこと高杉婦警については、いずれじっくりと書くつもりです。

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プロフィール
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マイケルオズ@フリーランスライター
「特捜最前線」がマイブームになっているオヤジです。リアルタイムの頃は津上刑事より若かったのに、今はおやっさんよりも年長者になりました(苦笑)
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