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2021年12月10日

479.大神 絶景版

大神 絶景版.png

 おはようございます。あるへです。
 本日はこちら「大神 絶景版」のレビューです。

 本作は、言うなればカプコンがゼルダを作ったらこうなった、という感じでしょうか。あっちへこっちへ冒険しつつ、新しいスキルを身に着ければ今まで行けなかったところが行けるようになり、そこにまた想像を超える大冒険が待ち受ける。
 その連鎖が非常に面白く、ゲームクリアまで一時も目が離せませんでした。

 本作の特徴は何といっても墨絵風のグラフィック。なんだか常に線が動いてるようで、色の濃淡や線の太さ、カスレといった墨独特の要素が、最初はなんだか気持ち悪くて、しばらくは受け付けなかったんですよね。
 加えてオリジナルはPS2で、そのリマスター版ということでカメラワークもあまり直感的ではなく、正直取っつきは悪いと思います。
 これが本当に面白くなってくるまでは少しの時間を要するんですね。

 ただ、そこを越えてしまえば本作の虜になることは間違いなしです。上記の事柄は「慣れ」で自然と乗り越えることができるので(カメラワークはある程度自由に動かせつつも、基本的にはキャラクター追従型です。プレイヤー自身もそれを理解してある程度その動きに任せられるようにならないと、意志と現実の乖離が起きて、つまり3D酔いに発展します)、心に余裕が生まれるとだんだんとこの世界の奥深さが見えてくるようになります。

 その一つが作り込まれた世界観。
 本作は日本神話から江戸時代あたりまでの文化やお話、おとぎ話などをアレンジして詰め込んだ、ぶっちゃけなんちゃって日本なんです。
 時代背景も文化レベルもめちゃくちゃなので、厳密に言えばよくあるアジアファンタジーと同じものなんですよ。
 なのに気持ちいい。
 すんなりと受け入れられる。
 やっぱりこれは、作り手が日本人だからこそですよ。

 圧倒的「和」の雰囲気が存分に世界観に浸らせてくれます。
 でね、プレイ中は一時期「これこそが本当のゲーム化された日本」というか「あれとかこれとかそれとかのデベロッパーたちが手本にし、なんちゃって日本を作る時のベースになるべき」とか、考えてたんですよね。
 だって五重塔がそこにあることに意味があるし、それは三重でも七重でもないし、お寺と神社の違いもしっかりと心得てるし、やっぱりそこには中国ではなくて日本の空気が流れているし。
 当たり前ですけど、日本人として日本人の目から見て、外国の人たちが作った日本リスペクトの世界観に、中国の文化が混ざってたり、あるべきところにあるべきものがない、どうでもいい所に仰々しいものが置いてある、とか、すっごくもやもやするんですよ。私個人としては太刀と刀の違い(太刀は佩くもの、刀は差すもの。そして刃の向きも異なる)や握り方、振り方にも違和感と場合によっては怒りを覚えてしまうくらいです。

 なーんて、傲慢なことをつらつらと考えてたんですよ。
 ある意味でそれは正しいとも思います。我々の様々な観念の根底にはこの地の魂が染みついていますからね。
 ただね。
 一方で、別の考え方も芽生えてきたんですよ。
 大神は「和」という世界観を余すことなく表現できているけれども、あまりに異世界感、別世界観が強すぎると、今度は外国の人たちが理解できなくなるなって。

 だからね、大神というゲームは痺れるほど和風の心意気のある素晴らしい和ゲーではありますけど、だからこそ、海外の人たちのいわゆる「日本オタク」それも日本の文化についてよく勉強している人たちほど受けは良いかもしれないけど、そうじゃない一般の人たちにこそ受け入れられるのは、もしかして(以前レビューした)Aragamiとかの、おいしいとこだけなんちゃってジャパンな方かもしれないなって。

 それくらい、本作の世界観は、事実としての日本の文化や歴史については大胆に無視しつつも、「和風」という空気づくりに関しては全てが相乗効果的にうまく出来ていました。

 誰もがぼんやりと聞いたことのある あまてらすおおみかみ から すさのおのみこと、いざなぎ いざなみ神話、それからきっと誰でも耳にしたことのある日本の古いおとぎ話の数々。これらが軽妙で愛着のあるキャラクターたちで生き生きと語られるんですよ。

 お、キャラクターもまた素晴らしいですよね。なんかもうね、クリエイターの視点が違うというか、さすが神谷さん。
 本作のキャラクター……当然墨絵の輪郭で顔の細部までよくわからないのはもちろんなんですが、人という人の等身がまず他のゲームと違うんですよね。
 非常に胴が長く、足がとんでもなく短いんですよ。
 非常にコミカルで自虐に富んだ愛嬌のあるキャラクターたちです。
 こんなんでシリアスな物語が展開できると思いますか?

 できちゃうんですよね。
 ここがすごい。
 ギャグテイストなシーンにしたいときはキャラの全体像を映せばいいんです。もうそれだけで笑えますし、可愛いです。
 でもヤマタノオロチと戦う時や、誰かの死を悼むようなシリアスなシーンにしたい時は、下半身を映さないようにするとか、キャラを少し前かがみにして上半身の印象を強く、下半身に視線が行かないようにする、たったこれだけで印象がまったく違うんです。

 まるで見る角度によって感情が千変万化する般若の面。能面の概念をここに持って来るとか、まじで次元が飛び出してますよね。

 BGMに関してもまるでモンハンのように敵やボス、あるいはフィールドや街によって驚くほど種類がありますし(クリア後の特典で初めて気づきました。BGM一覧を見てみるとびっくりするくらい種類があったんですね)、世界観づくりに手を抜かないところが本当にすごい。

 じゃあ本作はそんな芸術性を堪能する雰囲気ゲーかというとまったくそんなことはないんですよね。
 むしろこんなことについて語っている人はほとんどいないと思います。

 なぜなら、本作は、れっきとしたゼルダゲー、プラットフォーマーあるいは、ストーリードリブンなアクションゲームとしてマジで面白いからです。

 むしろこっちが先。
 独特過ぎるグラフィックスタイルと、あんまり言うことを聞いてくれないカメラワークに四苦八苦しながら、ようやく本作の面白さが見えてくると、広いフィールドを駆け回り、覚えたての筆技を試し、まだ解けないギミックに夢を馳せ、聞き覚えはあるし最後どうなるかも知ってるおとぎ話が出てきて、でも想像の斜め上をゆく珍妙な登場人物で、結局お話はどう転がっていくかまったく想像できない。
 そのお話は笑いあり涙あり、犬っころの主人公アマテラスの代わりに喋ってくれるイッスンのキャラクターが素晴らしく心地いい。
 なにせイッスンのキャラは非常に江戸っ子気質で相手が誰だろうと物怖じせず啖呵を切るのが気味がいい。そのくせ絶妙に汚い言葉は言わないしで、いつしかプレイヤーはこのイッスンに感情移入していくことになります。

 だからこそ、最終盤のイッスンの大一番は心にぐっとこみ上げるものがあり、涙が止まらないんですよねぇ……。
(個人的には、本作にはたくさんの「古い言葉」が出てきます。謙譲語や尊敬語の違いを理解し、古い言い回しを知っている日本人だからこそ、「読んで」楽しめるセリフ回しになっているんですよね。こればっかりは、たぶん英語では味わえません。我々が日本人だからこそ理解できる味で、ゲームをやっていて自分が日本人で良かったと感じる瞬間でもあります。まぁ、自分がアメリカ人だったらなぁって思う瞬間も多々ありますけどね(笑))

 そしてクリア後の余韻に浸りながら、今までの冒険の数々を思い返し、アートワークなどを見返すと、これが思っていた以上に作り込まれていることを知り、満足感と達成感に包まれるという具合です。

 なんかいつも以上にくどくどと面倒くさい文章になってしまったので、ざっくりまとめます。

 本作は神ゲーです。プレイすべし。
 ただし、取っつきは悪いです。場合によっては3D酔いするかもしれません。
 でもそこでやめてはいけません。必ず面白くなります。

 あ、(私の)妹によれば一押しはやっぱり大神アマテラスだそうです。リアルな犬の仕草がとてもキュートで萌え萌えなんだとか。
 でも私、ネコ派なんですよね。
 よく出来てるとは言え、犬は犬でしょ。
 アマテラスより幼女サクヤに萌えました(笑)

 ああぁー……、桜の神様サクヤ様、墨絵風だからピンとこないかもしれませんけどね、あれ、よく見てくださいよ。とんでもねぇ痴女っすよw
 デフォルメされぼやけた印象の強い墨絵風のグラフィックってのは開発も百も承知なんですよね。そのせいか、あるいはあの頃の時代性でもあるのか、意外とね、えっちぃ表現が多いんですよね。このゲーム。プッフフフフフ。

↓爆笑間違いなし、怒涛のボケ!
 でもこのゲーム、ミカン爺といいスサノオといい、ここぞという場面で神様に頼らないのがすっごく良い(たとえばこの動画だと、最後の大きな樹に咲かせるシーンだけは筆技に頼ってません)



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