必ずお読みください!
ヒラタケ後半戦がスタートしている。キクラゲはほぼ通年だが、夏場のタマゴタケ、秋口のハタケシメジ(今年は台風の影響であまり採りに行けず)と割と大口きのこの時期も過ぎ、1年で最大のイベントであるヒラタケも、もうあとひと月もせず終わり。あとは、このへんではあまり数がとれないシモフリシメジ、冬きのこのエノキタケ、運が良ければブナハリタケが少し・・・今年もほんとうに残りわずかである。
ちなみに私は、大ザルで1日ほど粗干ししてヒラタケを半分ほどの大きさにし、そこから4〜5日みっちり天日で乾燥するようにしている。そうしないと、5kg以上のヒラタケがこの天日干し網の中に入りきらないのだ。
↑およそ半分になったヒラタケ天日干し2日目。見る見るちっこくなっていくが香りは徐々に増幅するフシギ。
これは前半戦のラストに掲載した満開ヒラタケの、食った分数枚を除きほぼ全部。はじめから他より水分が少なく大型・肉厚なため、完全に乾燥を終えてもこいつらだけでよなよなエールの空き箱がほぼ埋まってしまった。
近所の人(毎年家族がヒラタケを差し上げているらしい)がこれを見て、「そんなにあるなら農協にでも売れるんじゃないの?」と笑顔で言っていた。実は家族もそんなようなことを言っている。でも私は売るつもりはない。
あくまでも私は素人であって、あくまでも趣味としてきのこを楽しんでいる。というよりそもそもはじめからきのこ目的で山を歩いているわけではない。私は腰に爆弾を抱えており(ヘルニアです)、しょっちゅう医者にかかっていたことがかつてあった。
あるときかかりつけの医師に、「こんなにしょっちゅうお前の顔なんざ見たかねえな。お前んちの近くにせっかく山があんだから、少し山でものぼってテメエのコルセットを鍛えろ」と発破をかけられたのが山歩きのきっかけであった。つまり、山歩きはきのこ採りの手段ではなく、それ自体を目的としてスタートしたのだ。
確かに量的、質的には売れるヒラタケなのかもしれない。でも、売ってしまったら私は素人ではなくプロになってしまう。アホなことを言いながらこうして写真を掲載することなんてもうできなくなってしまうのだ。素人がきのこを売ることほど危険な話はない。材料を自分で調達してつくったダイナマイトを売り込むようなもんである。かなりのバカである自信はあるが、さすがにそこまでハイレベルのバカではない。
例年であれば、だいたい10カ月くらいかけて乾燥ヒラタケを家族みなで食う。今年は例年以上のハイペースで採りたてヒラタケを食い進めているのでそこまで持たないかもしれない。だいたい家族が「アンタのとってきたもんなんて気持ち悪くて食えない」なんて言ってるクセに、ヒラタケだけは食うし、けっこうな量を人に差し上げてしまう。
あげてもいいけど、だったら俺のとってきたきのこに文句をつけるなよと言いたい。言いたいけど言えない。だからここで言う。そしてそんな事情も知らない親戚からの乾燥ヒラタケの評判はすこぶる良好なのである・・・
で、後半戦のスタート。いつもならまだクソ暑い中真っ先に顔を見せるヒラタケ——台風が無残にへし折ったホダの——が、なんと今年はこんなヘンテコリンな時期にようやく顔を見せた。遅ればせながらもいいとこである。
↑ここのヒラタケは毎年良型。今年も私の手のひらを楽に超える良型を出してくれた。しかし量は半減した。
↓折れ残ったほうのホダにもちゃんと発生している。今年は例年よりひと回り小さく、ヤケに白い。
ちょっとびっくりしたが、今年も出てくれてうれしかった。いつも真っ先に顔を見せるヒラタケだけに、出ないでいるのはなんだかひどく寂しかったのだ。
↑良型ヒラタケときのこ専用ナイフ。大きいナイフだとホダを傷めるので、こういうサイズで切れ味鋭いナイフがベター。ベストはオペ用のメスなんだけどね、そんなもん持って山ん中をふらふらするわけにはいかない。
小ぶりの個体も多く、乾燥していたこともあっておそらく1?sにも満たないだろうと判断し、こいつらはそのまま食うことにした。1週間もあれば食い切れるかな・・・とタカをくくっていたが、野生のヒラタケを甘くみるとえらいことになる。かなりの量の煮つけをつくったのだが、ぜんっぜん減らねよこいつら・・・
でも、煮つけは我ながら絶品である。これこそ売れるっつーの。そんくらいうまい。私はあまり食いもんの画像ってのが好きではないのだが、「焼き」と「煮」の画像をあえて掲載しよう。こういうことはもう金輪際ないだろうから、心して見よ。
↑焼き。ほんとは七輪で炭火焼がベストだけど毎度毎度七輪引っ張り出すのもめんどう。トースターでも十分。それにしても、あんまりうまそうに見えない。だからやだったんだよなー。
↓煮。なんとかタケっつー茶色い毒きのこにそっくり。でも味はやべぇよこれ。自分でも驚いた。
例年初夏のころ、ヤマブキを採ってきて「きゃらぶき」をつくるのが上半期の大きな楽しみ。セリの佃煮もうまいが、きゃらぶきは数倍うまい。ちなみにヤマブキは「山吹」ではなく「山蕗」ですね。きゃらぶきは、ヤマブキをしょうゆと酒で煮詰めるんです。
私は酒のみなので、甘いきゃらぶきよりも、3本食ったら病気になるくらいしょっぱいきゃらぶきが好き。1本あるとめし1膳食えるくらいの味付けを好む。ちょこっとかじって酒をちびりちびりやるのだ。ほぼきゃらぶきの要領でヒラタケ煮も初チャレンジした。ただしきのこなので、多少甘みもつけた。しょうゆと酒と砂糖を適当にぶち込んで、あとはひたすら煮た。
朝晩だけ、めしを食っている時間をつかって1時間ずつくらい煮詰めたのが上の毒きのこっぽい煮つけ。甘辛くて酒が進むしなんつってもヒラタケ自身が出すダシは秀逸。こういう味はやっぱり日本酒——最近はまっている「どぶろく」でちびちびやっている。
タッパー2つにぎゅうぎゅうに詰め込むほどの煮つけができたので、こりゃあひと冬楽しめそう。なくなりそうならまた作ればいいや。