全500件 (500件中 151-200件目)
ヴァラエティに富んだコニッツ盤 リー・コニッツ(Lee Konitz)というジャズ・ミュージシャンは、老境に入ってからはともかく、一般には難しい演奏者というイメージがついて回ってしまうように思う。けれども、1968年の本盤は、そうした“難しさ”を脇において楽しさと明るさで聴くことができる好盤だと思う。 1960年代前半のコニッツは、1961年の『モーション』の後、しばらくリーダー作の吹込みから遠ざかる。といっても、演奏をやめたわけではなく、ニューヨークからロスに拠点を移し、ヨーロッパへ演奏旅行に出かけるなどして、新たな境地を切り開こうとしていたように見える。そんな中、ヨーロッパに出かけたコニッツは1968年に複数の録音を残すことになり、結果、この年にリーダー作が再び発表されるようになった。詳しいデータがなく、どれが先か後かはっきりとはわからないものの、そんな中、イタリアはローマで吹き込まれたのが、本盤『ステレオコニッツ(Stereokonitz)』であった。そのようなわけで、共演のメンバーは主に当時のイタリアの精鋭の若手陣である。 インスピレーションいっぱいのアドリブ演奏と言うだけでなく、エレクトリック・サックスを使用し(1.,2.,4.など)、さらに、6.「テイク・セヴン」ではフルートのソロも披露している。演奏面で言えば、従来とは異なる一新された演奏を見せてくれると言えるだろう。 収録曲はいずれもベースのジョヴァンニ・トンマーゾの作とクレジットされているが、インプロヴィゼーションいっぱいでテーマがよくわからない曲もある。このトンマーゾという人は、当時のイタリアRCAのプロデューサーであり、考えようによっては、このメンバーの充実ぶりは彼の手腕によるものだったのかもしれないと思う。 ともあれ、演奏に耳を傾けると、ジャズの難しさを感じさせず、エフェクターを多用しながらフルートまで手にするコニッツの演奏が、ある意味で気楽に聴けるのがいい。コニッツが難しいなどという先入観を得ている向きならば、こういう盤も試してみてよいのではないか。イメージ通りのコニッツが真であるならば、こういう軽妙である種ポップな彼の姿もまた真ということだろうか。[収録曲]1. A Minor Blues2. Five, Four and Three3. Kominia4. Midnight Mood5. Terre Lontane6. Take Seven7. Giovanni d'Oggi8. Tune Down[パーソネル、録音]Lee Konitz (as, fl)Enrico Rava (tp)Franco D'Andrea (p)Giovanni Tommaso (b)Gegè Munari (ds)1968年10月録音。 ステレオコニッツ [ リー・コニッツ ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2017年05月22日
コメント(4)
老練ピアニストの思わぬ“開花” エディ・ヒギンズ(Eddie Higgins)は1932年生まれで、2009年に亡くなっている米国のジャズ・ピアニスト。1958年以降、いくつかのリーダー盤を吹き込んではいるものの、長らく“知る人ぞ知る”(言い換えれば、“知る人しか知らない”)、脇役的ミュージシャンだった。そんな彼の知名度は、少なくとも日本においてはある時点から激変する。そのきっかけとなったのが1997年の本盤『魅せられし心(Haunted Heart)』のヒットであった。 日本のレーベルであるヴィーナス・レコードは、きらきらとしてサウンド志向の音作り(彼のようなピアニストの場合には、カクテル・ピアノなどともよく形容される)、女性写真などを積極的に使ったジャケットなど、“おやじ向けジャズ”を提供していった。そのヴィーナスの作品作りの中で本作はヒットとなり、その後も彼の名義盤が多数出ることになったわけだけれど、今になって本盤を聴きつつ、それほどミーハーな感じでもないと思ったりもする。 レイ・ドラモンド(ベース)、ベン・ライリー(ドラム)とのトリオによる吹き込みで、メロディを際立たせるタッチの演奏。しかもスタンダードがずらりと並ぶと言うと、いかにもヴィーナス盤といった感じに響くかもしれないが、この盤を聴いていると、どうもそれだけではない気がしてくる。ビル・エヴァンス張りの(という形容が適切かどうか自信はないけれど)妙な緊張感や慎重さと繊細さみたいなものが同時に感じられる。そんな観点からすると、例えば、1.「マイ・ファニー・バレンタイン」、表題曲の2.「魅せられし心」、9.「ロマンティックじゃない?」なんかは、個人的なお薦め曲ということになる。確かに予定調和的な感じも強いのだけれど、ただ“美しさ”だけで聴かせるわけではないということを意識しながら聴くだけでも、本盤のイメージは大分と違ったものになるんじゃないだろうか。[収録曲]1. My Funny Valentine2. Haunted Heart3. Stolen Moments/Israel4. Lush Life5. How My Heart Sings6. Someone To Watch Over Me7. I Should Care8. Lover Come Back To Me9. Isn't Romantic?[パーソネル、録音]Eddie Higgins (p)Ray Drummond (b)Ben Riley (ds)1997年6月28日録音。 魅せられし心/エディ・ヒギンズ・トリオ[CD][紙ジャケット]【返品種別A】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2017年05月18日
コメント(0)
密かな名演を聴く楽しみ ジャズを聴いていると、ロック/ポップス以上に“密かな名演”にたどり着けるという感覚が大きい。有名なアーティストや著名な盤ではないけれど、これはなかなかいいのではないかという“感動”に見舞われる確率は、ジャズの世界の方が高いように感じている。 さて、本題に入ろう。今回の盤は、唯一のリーダー作となったドン・スリート(Don Sleet)の『オール・メンバーズ(All Members)』という、1961年の吹込み盤である。ドン・スリートは、1938年インディアナ州生まれのトランペット奏者で、マイルス・デイヴィスやケニー・ドーハムに影響を受けたという。あるいは、チェット・ベイカーやアート・ファーマーを思い起こさせる滑らかなプレイを身上とする。ある種、モダン・ジャズ的には“正統派”のトランペッターであるが、リーダー作はわずか1作で本盤のみで、ドラッグの影響からやがて演奏できなくなり、1986年の大晦日に悪性リンパ腫で48歳の生涯を閉じている。 この盤は、リヴァーサイド傘下で数年間だけ続いたジャズランドというレーベルに吹き込まれた作品である。とはいえ、現在の目からすると、サイドマンの充実度から拾い上げてくれるリスナーも一定数存在すると思われる。テナー・サックスがジミー・ヒース、ピアノはウィントン・ケリー、ベースはロン・カーターで、ドラムスはジミー・コブというメンバー。これに加えてリーダーのドン・スリートがトランペットを演奏している。 筆者の個人的なお気に入りを挙げてみたい。1.「ブルックリン・ブリッジ」は、軽快さ(この“軽快さ”には、ウィントン・ケリーのピアノとジミー・コブのドラム演奏の貢献が大きい)の中で王道的な各楽器のソロが繰り広げられ、モダン・ジャズの演奏としてトランペット+サックスのお手本のような演奏に仕上がっている。3.「朝日の如くさわやかに」は有名なスタンダード曲であるが、この“滑らかさ”は何とも手慣れたもの。リーダーであるドン・スリートのトランペットはもちろんのこと、ジミー・ヒースのテナーがいい味を出している。表題曲6.「オール・メンバーズ」は、本盤の中でも一押しの演奏の一つである。伸びやかで軽快なトランペット演奏は、何枚もアルバムを残していたならば、ドン・スリートの名はきっと今よりはるかに有名になっていただろうと思わせてくれる。ともあれ、決して有名な盤ではないものの、こういう盤に出会った時の望外の感動は忘れずにいたいと思う次第だったりする。[収録曲]1. Brooklyn Bridge2. Secret Love3. Softly, As in a Morning Sunrise4. Fast Company5. But Beautiful6. All Members7. The Hearing[パーソネル、録音]Don Sleet (tp), Jimmy Heath (ts), Wynton Kelly (p), Ron Carter (b), Jimmy Cobb (ds)1961年3月16日録音。 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひ“ぽちっと”お願いします。 ↓ ↓ ↓
2017年05月15日
コメント(2)
マルサリスの真価を考え直す 1961年生まれのウィントン・マルサリスは18歳でプロとしての活動を開始し、今では米国を代表するジャズ・ミュージシャンであるとともに、クラシックでも名声を確立したトランペット奏者である。現在、ジャズ・アット・リンカーン・センターの音楽監督を務めていて、演奏活動以外にも注目されることが多い。そんなウィントン・マルサリスの評価は、巷では二分されるようだ。一方で、上記のようなキャリアを称え、現代の巨匠として見なす一方で、彼がやるジャズには熱さがない、啓発活動的な部分がくどい、などの否定的評価を下す向きもある。 これまで30を超えるアルバム(ジャズに分類されるアルバム)を出してきている彼の盤を、筆者はすべて聴いているわけでもないし、実際問題、彼の作品は気合を入れなければ聴けないものも多いような気はするのだけれども、今回は1980年代末の『ザ・マジェスティ・オブ・ザ・ブルース(The Majesty of the Blues)』を手がかりに、ウィントン・マルサリスの真価とは何なのかをちょっと考えてみたい。 まず、3曲でトータルおよそ60分間。とりわけ、組曲形式になっている3曲目は35分間という大作なので、聴くのに疲れる。さらに、ライナーを見ると、マルサリス自身の言葉も引用しながらの何とも教条的な解説がある。おまけに日本盤では“ウィントン「THE MAJESTY OF THE BLUES」を語る!”と題されたインタヴューまで収録されている。このインタヴューの内容もなかなかくどい。ブルースとは何か、世代間のギャップとは、今後の音楽がどうなっていくべきか、といった話題が理屈っぽく述べられている。たぶん一定数の聴き手はこの辺のくどさに辟易してしまうのかもしれない。 しかし、作品を先入観なしに聴いて見るとどうだろう。ハード・バップに代表される“古いジャズ”、あるいはビッグ・バンド的な要素、これらを巧みにというよりは、当然必要なものとして含みながら、ニューオーリンズ的でブルースの要素を多く含む演奏が繰り広げられていく。 それもそのはず。メンバーはわざわざニューオーリンズで集めた面々をニューヨークに呼んで録音を行っている。けれども、何より面白いのは、どれも模倣ではないという風に感じさせる点である。マルサリスは何かを生き永らえさせようとするのではなく、きっと“モダン・ジャズ”や“ブルース”などの伝統に対し“死を宣告”しているのだろう。いったん既存のものを破壊し、考え直すことで、新しいものを生み出そうとする。だからこそ“模倣”ではなく(しかも“模倣”をする技術的レベルの領域ははるかに通り越えていることが前提なのは言うまでもない)、“創造”の方に偏った演奏ということになるのだろう。 そんなことを考えるにつけ、「ジャズの死(Death of Jazz)」やら「説教(Sermon)」やらという表題や副題に惑わされてはいけない(後者は本当にセリフの“説教”なのだけど…)。小難しい解説も話半分にしておいていいのだろう。案外、ジャズという概念(マルサリスの定義とありがちな聴き手の定義がそもそも違うのだろうけれど)をいったん外し、あるいはニューオーリンズあるいはブルースという発想から聴いてみるというのもいいかもしれない。 “伝統”を踏まえつつ既成のものとはまったく違う境地を目指した、そんな盤として聴けば、従来の小難しさの印象とは違った角度から聴くことができるのかもしれない。[収録曲]1. The Majesty of the Blues (The Puheeman Strut)2. Hickory Dickory Dock3. The New Orleans Function a. The Death of Jazz b. Premature Autopsies (Sermon) c. On the Third Day (Happy Feet Blues)[パーソネル、録音]The Wynton Marsalis Sextet:Wynton Marsalis (tp) Marcus Roberts (p)Todd Williams (ts, ss)Wessell Anderson (as)Reginald Veal (b)Herlin Riley (ds)The New Orleans Function:Teddy Riley (tp)Wynton Marsalis (tp, plunger mute)Freddie Lonzo (tb)Michael White (cl)Danny Barker (banjo)1988年10月27日・28日録音。 【メール便送料無料】Wynton Marsalis / Majesty of the Blues (輸入盤CD)(ウィントン・マルサリス) 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2017年05月02日
コメント(0)
スリル+リラックス、ビ・バップからハード・バップへの移行のドキュメント かなり前に取り上げた『ジ・エミネント・J・J・ジョンソンVol. 1』に続いてブルーノートから出されたのが、本盤『ジ・エミネント・J・J・ジョンソンVol. 2(The Eminent Jay Jay Johnson Volume 2)』。(オリジナルの)ジャケットも同じデザインの色違い(Vol. 1ではJの文字が赤色なのに対し、Vol. 2では緑色になっている)である。 ビ・バップからハード・バップへと移ろいゆく瞬間のドキュメント。そして多くの曲の演奏は、第1集と同様に“スリリング”である。ブルーノートの1500番台初期においてはとりわけ、同じジャケットでいわば“前編”と“後編”のように、Vol. 1、Vol. 2となっている盤は多いが、この盤で少し面白いと思わせられるのは、最初の盤と同じ曲の別テイクが2つ収められている点である。 4.「ターンパイク」は前作の1曲目だったナンバー、そして、本盤の最後を飾る10.「カプリ」は前盤でA面ラストの曲。前者はジョンソン自身の曲で、後者はジジ・グライス(本盤の演奏には参加していない)の曲である。筆者の好みでは「ターンパイク」の演奏は本盤の方がお気に入り、「カプリ」はどっちつかずに甲乙つけがたいままの評価でいるのだけれど、いずれも好演。 全体としては、『Vol. 1』と同じくスリリングさが最大の売りであると思う。その上で、ひたすら攻めにまわるのではなくて、適度にリラックス感があるのがいい。全体を構成したアルフレッド・ライオンの功績なのか、はたまたJ・J・ジョンソン本人の才能だったのか、とにかく“押し”と“引き”のバランスが気持ちいい。少し例を挙げると、1.「デイリー・ダブル」から2.「ペニーズ・フロム・ヘヴン」へと続く流れは結構スリリングだと思う。けれども、どちらの曲にもいくらかのリラックス感はあって、それが3.「ユーア・マイン・ユー」まで行くとすっかりリラックスなムードである。やんわりしてきたかと思うと、4.「ターンパイク」は出だしから再びスリリングさが全開になる。このような具合で、全編を一気に聴いてもリラックスしすぎることもなく、緊張しすぎることもない、実にバランスの取れた環境で聴き手は惹き込まれてしまう。 ジャズを聴く際に、正座をして一音たりとも逃さず、修行僧のように聴くというのも決して悪くはないとは思うけれど、こういう盤のように、押しと引きのコントラストがある盤がもっと気軽に楽しく聴かれるようになったら、ジャズ・ファンの裾野が広がった(否、今からでも広がる)のかもしれないと思ったりもする。そして、聴いていく中でそれが超一流のメンツ(下記パーソネル参照)によるものだと気づいていく、そんな聴き方があっても楽しいのではないだろうか。[収録曲]1. “Daylie” Double2. Pennies from Heaven3. You're Mine, You4. Turnpike(別テイク)5. It Could Happen To You6. Groovin7. Portrait of Jennie8. Viscosity9. Time After Time10. Capri(別テイク)[録音・パーソネル]1953年7月22日(4.、5.、10.):J.J. Johnson (tb), Clifford Brown (tp, 5.を除く), Jimmy Heath (ts, bs, 5.を除く), John Lewis (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)1954年9月24日(9.):J.J. Johnson (tb), Wynton Kelly (p), Charles Mingus (b), Kenny Clarke (ds)1955年6月6日(1., 2., 3., 6., 7., 8.):J.J. Johnson (tb), Hank Mobley (ts), Horace Silver (p), Paul Chambers (b), Kenny Clarke (ds) 【メール便送料無料】J.J. JOHNSON / EMINENT J.J. JOHNSON 2 (RMST) (輸入盤CD) (JJジョンソン) 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2017年04月29日
コメント(0)
カロリー過多? 満腹・満足の1枚 ジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)唯一のジュビリー録音盤が、この『ファット・ジャズ(Fat Jazz)』という作品。同レーベルにはもう1枚マクリーン盤(『ジャッキー・マクリーン・クインテット』)があるけれども、その実は別のレーベルに吹き込まれた盤のリイシューなので、プレスティジを離れ、ブルーノートに移籍する前にジュビリーに唯一吹き込んだのが本盤ということになる。 注目点は、少し変わった取り合わせの3管構成になっている点。マクリーンのアルト・サックスが明らかにメインとなっているが、それに加えてウェブスター・ヤングのコルネット、レイ・ドレイパーのチューバという編成になっている。ウェブスター・ヤングはこちらの盤でよく知られるが、マイルスばりのしかし優しさと哀愁を湛えた演奏が魅力。一方のレイ・ドレイパーはこの都市に若干16歳で初録音、本盤録音時には17歳という若きチューバ奏者であった。 1.「フィリーデ」は、マクリーンとドレイパーの共作で、いかにも大衆受けしそうなラテン風リズムに哀愁あるメロディが組み合わさったナンバー。続くブルース曲の2.「ミリーズ・パッド」はウェブスター・ヤングらしいゆったりさと端正さを併せ持っている。筆者の感想としてはこの2曲だけでも満足と言えそうなほど、どちらも気に入っている。3.「トゥー・サンズ」もレイ・ドレイパーのペンによるもので、センスのいいマイナー調の曲。ドレイパー自身のチューバもいい味を出している。4.「ホワット・グッド・アム・アイ・ウィズアウト・ユー」は、何と言ってもウェブスター・ヤングの演奏が聴きどころ(というか個人的に好きなだけと言われればそれまでなのだけれど…)。最後の5.「チューン・アップ」はマイルスの曲でマクリーンも演奏し慣れていて、リラックスして気持ちよく演っている姿が目に浮かぶ。 といった具合の5曲の演奏なのだけれども、『ファット・ジャズ』という表題は妙にしっくりくるように思う。ジャケットは、カロリーの高いアイスクリームやスイーツを並べた写真である。その見た目ままに聴いた方も、満腹感ならぬ満足感一杯になれる。超有名盤などではないものの、筆者にとっては密かに愛聴する、ある意味いかにもハードバップなお気に入りの1枚なのである。[収録曲]1. Filidé2. Millie's Pad3. Two Sons4. What Good Am I Without You?5. Tune Up[パーソネル、録音]Jackie McLean (as)George Tucker (b)Webster Young (cor)Larry Ritchie (ds)Gil Coggins (p)Ray Draper (tuba)1957年11月27日録音。 [枚数限定][限定盤]ファット・ジャズ/ジャッキー・マクリーン・セクステット[SHM-CD]【返品種別A】 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓ ↓
2017年04月26日
コメント(0)
アルトへの回帰、50年代中期の本領発揮盤 ソニー・スティット(Sonny Stitt)は1924年ボストン生まれの米国のサックス奏者。チャーリー・パーカーの影響を受け、“ビ・バップ”のを通したなどと評される。そんなせいか、スティットの盤には、ある種の“革新性”や“新奇さ”を求めるというよりは、出来上がった“スタイル”のようなものを求めてしまう風潮があるかもしれないという風に思う。 そんなイメージが固定化されてしまっている一方で、一風変わった雰囲気なのが、1955年録音のこの『ペン・オブ・クインシー(Sonny Stitt Plays Arrangements from the Pen of Quincy Jones)』という盤である。スティットにはワンホーン盤が多いけれど、本盤はオーケストラ編成での録音。あくまでスティットが主役なので、“オーケストラをバックにしたワンホーン的演奏”と表現してもよいかもしれない。ともあれ、クインシー・ジョーンズ(当時はまだ20歳代前半!)のアレンジにメリハリが効いていて、伸びやかにやるところは伸びやかに演奏する一方で、随所でグルーヴ感やファンキーさが感じ取られる。 選曲も聴き手に受けそうな曲が複数含まれており、楽しめる。冒頭の1.「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は情緒いっぱいのなかなかの名演。情緒感がさらに高まるのは、3.「降っても晴れても」と7.「スターダスト」。スティットの本来の楽器であるアルトでの本領発揮の演奏である。 他方、ノリとアレンジの妙という観点では、2.「ソニーズ・バニー」、4.「ラヴ・ウォークト・イン」、8.「ラヴァ―」といったあたりがお薦めである。クインシー・ジョーンズのアレンジが冴えているのだけれど、その意図を見事に反映しているのは、とどのつまりソニー・スティットのアルトである。 上でも述べたように、ソニー・スティット全体のイメージからすると、決して代表盤とは言い難い。けれども、1枚、2枚とスティットを聴き進むうち、これを聴かないというのはあまりにもったいない盤だと言えると思う。[収録曲]1. My Funny Valentine2. Sonny's Bunny3. Come Rain or Come Shine4. Love Walked In5. If You Could See Me Now6. Quince7. Stardust8. Lover[パーソネル、録音]Sonny Stitt (as)Thad Jones (tp: 3., 5., 6.)Joe Newman (tp: 3., 5., 6.)Jimmy Nottingham (tp: 1., 2., 4., 8.)Ernie Royal (tp: 1., 2., 4., 8.)Jimmy Cleveland (tb: 3., 5., 6.)J. J. Johnson (tb: 1., 2., 4., 8.)Anthony Ortega (fl, as: 1.~6., 8.)Seldon Powell (ts: 1.~6., 8.)Cecil Payne (bs: 1.~6., 8.)Hank Jones (p)Freddie Green (g)Oscar Pettiford (b)Jo Jones (ds)Quincy Jones (arr)1955年9月30日(1.、2.、4.、8.)、10月9日(3.、5.~7.)録音。 ペン・オブ・クインシー [ ソニー・スティット ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2017年03月22日
コメント(0)
北欧でのリラックス・ムードの1枚 スタン・ゲッツ(Stan Getz,1927年生まれ1991年没)の人生は波乱万丈だったが、1950年代だけを切り取ってもそうだったと言える。ジョニー・スミス『ヴァーモントの月』への参加で得た名声や『スタン・ゲッツ・プレイズ』を筆頭とする名演の数々、かと思えば、麻薬中毒で強盗未遂を起こして服役、さらには米から逃げるかのように北欧へ移住。これらを思い起こすだけでも普通の人の人生ではない。 スウェーデン移住は旅行先が気に入ってそのまま数年間移住生活を送ったとされるが、いろんな意味で“人生のリセット”に与する選択肢だったのだろう。そして、ストックホルムで地元ミュージシャン(トランペットのベニー・ベイリーだけがアメリカ出身の黒人ミュージシャンで、あとは現地ミュージシャン)と吹き込まれたのが、本盤『インポーテッド・フロム・ヨーロッパ(Imported From Europe)』である。 面白いことに、上で述べたような人生の浮き沈みや苦悩のようなものは本盤からはまったく感じられない。スタンダードを中心に7曲が収録されているが、いずれもゲッツのテナーは“快調”と表現するのがぴったりだと思う。他のメンバーとのアンサンブルもよいし、このプレイも軽やかかつ伸びやかで、“これぞスタン・ゲッツの絶頂期”といった印象である。個人的なお気に入りは、収録曲中の4曲でピアノを担当しているベンクト・ハルベルクのペンによる1.「ベンクトズ・ブルース」、定番スタンダードの4.「トプシー」、バリトン・サックスで参加しているラーシュ・グリンによる、ずばりそのまんまの表題の6.「ストックホルム・ストリート」。これら以外の曲でも総じてスタン・ゲッツのテナーは軽やかに舞っている。代表盤的扱いをされることはあまりない盤だけれども、彼の作品として(特に早めに聴いた方がいいお薦めの順序として)は、結構上位にくる盤だとひそかに思っていたりする。[収録曲]1. Bengt's Blues2. Honeysuckle Rose3. They Can't Take That Away from Me4. Topsy5. Like Someone in Love6. Speak Low7. Stockholm Street[パーソネル、録音]Stan Getz (ts)Benny Bailey (tp) Åke Persson (tb)Bjarne Nerem (ts; 6., 7.)Erik Nordström (ts)Lars Gullin (bs) Bengt Hallberg (p; 1., 5.-7.)Jan Johansson (p; 2.-4.)Gunnar Johnson (b)William Schiopffe (ds)1958年8月26日(2.~4.)、9月15日(5., 6.)・9月16日(1., 7.)録音。 インポーテッド・フロム・ヨーロッパ [ スタン・ゲッツ ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”応援お願いします! ↓ ↓
2017年03月02日
コメント(0)
アル・ジャロウ追悼 米国のジャズ歌手、アル・ジャロウ(Al Jarreau)死去のニュースが報じられています。1970年代半ばにデビューし、間もなくジャズ・ヴォーカリストとしてグラミー賞を受賞。その後、1980年代にはポップ界でも活躍。結局、ジャズ、ポップ、R&Bの三つの部門でグラミー受賞という偉大な足跡を残しました。 彼の代表曲はと言うといろいろあって悩みますが、まずはインパクトのあるナンバーということで、初期にシングルとしてリリースされた「テイク・ファイヴ(Take Five)」をお聴きください。 これ1曲でもその非凡さは伝わりそうなものですが、同じくジャズ関係で私的にはインパクトの強かった1曲をと思います。チック・コリアの曲に詞をつけた「スペイン(Spain (I Can Recall))」です。 もちろん、ポップスの分野での活躍も忘れてはいません。実は筆者はこの人の歌う「僕の歌は君の歌(Your Song)」が大のお気に入りです。もちろん、元のエルトン・ジョンのものもいいのですが、アル・ジャロウのこの包み込むようなヴォーカルによるこの歌も最高です。 2010年に一度倒れるということがありましたが、年齢のせいか近年も体調は良くなかったようです。来月には77才となる直前での死去、ご冥福をお祈りします。 【輸入盤】AL JARREAU アル・ジャロウ/THIS TIME(CD) 【メール便送料無料】Al Jarreau / Very Best Of: An Excellent Adventure (輸入盤CD) (アル・ジャロウ) [枚数限定][限定盤]ジス・タイム/アル・ジャロウ[CD]【返品種別A】 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2017年02月13日
コメント(0)
サックス+アンサンブルのよさが前面に出た好盤 ブッカー・アーヴィン(Booker Ervin)は、1930年生まれのテナー奏者(1970年死去)。1960年代前半から中葉にかけてのプレスティジへの吹き込み(例えばこちらの盤やこちらの盤)がよく知られているが、後年には、パシフィックやブルーノートといったレーベルにも録音を残した。今回は、その中からパシフィック盤の一つである『ブッカー・ン・ブラス(Booker’n’Brass)』を取り上げてみたい。 ブッカー・アーヴィンの演奏に関して、一般に“くどい”とか“吹き散らかす”とかいう評はある(筆者はそれも好きなところなのだけれど)。そうしたイメージに比べれば、本盤は全体として比較的うまくまとまった演奏に仕上がっているように思う。無論、それは彼らしさが足りないとかいうわけではない。確かに、それなりに“くどい”演奏も含まれるのだけれど、全体の編成があった上で彼が主役という、この盤の企画全体のコンセプトによるといったところだろうか。 基本的には10名程度のミニ・ビッグ・バンド風の編成で演奏されている。その中でのブッカー・アーヴィンのソロは、他の名義作と比べると、どちらかといえば(もしくは、“彼にしては”というのがより正確だろうか)、ストレートで、これが作品としての統一感に大きく影響している。つまりは、“彼らしさ”と“彼らしくなさ”の微妙なバランスがあるということ。ある意味、“濃い演奏”が売りの(繰り返し言うが、個人的にはそれが好きなのだけれど)ブッカー・アーヴィン作としては、少し異例と言えるかもしれない。 ともあれ、個人的には、この個性控えめ(でもやっぱり個性が出てしまう)の演奏と、全体のバランスが何ともいい。ブッカー・アーヴィンのコアなファンからはどう受け止められるのか自信はないけれど、自分としては、“このバランス”(中途半端さ?)が、なかなか心地いい。普段よりも妙にストレートで、とはいっても、どこか彼らしさが抜けきらないというこの微妙なバランスが筆者のツボにはまるのである。 個人的にお気に入りの演奏をいくつか挙げると、まずは、ノリのいい演奏の1.「イースト・ダラス・スペシャル」。それから、4.(CDでは10.と11.にも別テイクあり)「L.A.アフター・ダーク」は、ブッカー・アーヴィンらしいテナーの歌いっぷりがいい。ビッグ・バンド風の仕上がりとしては、5.「カンサス・シティ」も好み。有名曲の8.「想い出のサンフランシスコ」に続く9.「セント・ルイス・ブルース」もまたブッカー節がいい感じでアンサンブルの中で展開される。ちなみに、ここまでいくつかの曲名を見てお分かりのように、収録曲はちょっとした米国旅行の気分がなるような感じに配されている。上で触れた曲以外では、ソルト・レイク・シティ、ニュー・オーリンズ、バルチモアなどといったように、各地の地名に因んだ曲が並んでいるのが面白い。[収録曲]1. East Dallas Special2. Salt Lake City3. Do You Know What It Means to Miss New Orleans?4. L.A. After Dark5. Kansas City6. Baltimore Oriole7. Harlem Nocturne8. I Left My Heart in San Francisco9. St. Louis Blues10. L.A. After Dark [Alternate Take 3]11. L.A. After Dark [Alternate Take 7][パーソネル、録音]4., 6., 9., 10., 11.:Booker Ervin (ts), Charles Tolliver (tp), Ray Copeland (tp), Freddie Hubbard (tp), Richard Williams (tp),Garnett Brown (tb), Bennie Green (tb), Benjamin Powell (b-tb), Kenneth[Kenny] Barron (p), Reginald[Reggie] Johnson (b), Lenny McBrowne (ds)1967年9月12日録音。1., 2., 5.:Booker Ervin (ts), Martin Banks (tp), Ray Copeland (tp), Richard Williams (tp), John Coles (tp),Bennie Green (tb), Britt Woodman (tb), Benjamin Powell (b-tb), Kenneth Barron (p), Reginald Johnson (b),Lenny McBrowne (ds)1967年9月13日録音。3., 7., 8.:Booker Ervin (ts), Martin Banks (tp), Ray Copeland (tp), Freddie Hubbard (tp), Richard Williams (tp),Garnett Brown (tb), Bennie Green (tb), Kenneth Barron (p), Reginald Johnson (b), Lenny McBrowne (ds)1967年9月14日録音。 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2017年02月06日
コメント(2)
1957年の名演の一つ ジョン・コルトレーン(John Coltrane)は、マイルス・デイヴィスのクインテット(例えばこちらの盤やこちらの盤)で活躍した後、この1957年にマイルスのバンドをいったん退団し、自身のソロ名義の活動を進めていく。まずはセロニアス・モンクのバンドに加わり、さらにはプレスティッジと専属契約を結んで自身の録音に着手する。 そんな中、同年7月に“神の啓示”を受けたとコルトレーン自身は言う。もちろん、神様を見たとか、そういうわけではないのだろうが、なにか大きな精神的変化があって、ここからコルトレーンのプレイは自信を持ったものへと変わっていく。ちょうどそんな時期、1957年の8月に吹き込まれたのが、本盤『トレーニング・イン(Traneing In)』であった。 “ジョン・コルトレーンwithザ・レッド・ガーランド・トリオ”とあることからも分かるように、ガーランドのピアノ・トリオとの共演作。コルトレーンは、この1957年の4月にプレスティッジと吹き込みの契約をしていたが、どうやらその間に入っていたのは、マイルスのグループで一緒だったガーランドだったようだ。 コルトレーンのワン・ホーンなのでどうしてもそちらに注目が行きがちだが、コルトレーンの演奏と同時にガーランドのピアノ、それ以外のメンバーの活躍も聴き逃せない。そしてもちろん、主役はジョン・コルトレーン。聴きどころと思う演奏を少しピックアップしてみたい。表題曲の1.「トレーニング・イン」は、ガーランドによる冒頭のピアノ・ソロが実に印象的で、シングルトーンからブロックコードの使用へとうまく盛り上げていく。3分以上がこれが続いた後で、満を持していたかのようにコルトレーンの流れるような貫禄あるブロウ。チェンバースのベースを挟んで再びガーランドのピアノ、コルトレーンのテナーへと続く。12分半という長さを全く感じさせない興奮に満ちた表題曲となっている。 もう一つ、聴き手側としては興奮度の高まる演奏を挙げておきたい。5.「ソフト・ライツ・アンド・スウィート・ミュージック」である。バラード曲かと思いきや、この演奏は思いっきりスピードを上げている。コルトレーンらしいといえばらしいわけだけれど、求道者よろしくこの高速プレイに挑み真摯に取り組んでそれを吹き上げるといった印象。これにつられてかガーランドのピアノもスピード感にあわせていい味を出している。 レッド・ガーランド(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、アート・テイラー(ドラム)という面々だから、ハイレベルに仕上がってて当たり前と言ってしまえばそれまでなのかもしれないが、1957年コルトレーンの名演の一つとして、この盤も忘れてはならない1枚と言えるように思う。[収録曲]1. Traneing In2. Slow Dance3. Bass Blues4. You Leave Me Breathless5. Soft Lights and Sweet Music[パーソネル・録音]John Coltrane (ts)Red Garland (p)Paul Chambers (b)Art Taylor (ds)1957年8月23日録音。 【メール便送料無料】John Coltrane / Traneing in: Rudy Van Gelder Remasters Series (輸入盤CD) (ジョン・コルトレーン) 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2017年02月04日
コメント(0)
ジャズ界を代表するバラード・アルバムの1つ ジャズ界において最高のバラード・アルバムと言うと、ジョン・コルトレーンの『バラード』やら、ジェリー・マリガンの『ナイト・ライツ』なんかをはじめとしていろんな意見が出ることだろう。そんな至高のバラード・アルバム群に加えても引けを取らないのが、マイケル・ブレッカー(Michael Brecker)の『ニアネス・オブ・ユー:ザ・バラード・ブック(Nearness of You: The Ballad Book)』(2000年録音)ではないかと思う。 マイケル・ブレッカーは1949年フィラデルフィア生まれのテナー・サックスおよびウィンド・シンセサイザー奏者で、残念ながら2007年に白血病で亡くなっている。1970年代半ばからブレッカー・ブラザーズ、1980年代後半からは単独名義でも活躍した。そんな彼が2000年末に録音し、翌2001年に発表したのが本作『ニアネス・オブ・ユー:ザ・バラード・ブック』だった。 本盤の特徴としては、表題(副題)にあるように、まずはバラード集であるということが挙げられる。演奏メンバーも特徴的で、ピアノがハービー・ハンコック、ギターがパット・メセニー、ベースがチャーリー・ヘイデン、ドラムがジャック・ディジョネット。さらに2曲でジェームス・テイラーがヴォーカルを担当している。これらメンバーの中でも、全体のトーンを決めているという点で、パット・メセニー(共同プロデュースも担当)とチャーリー・ヘイデンの役割(この二人の作品としては例えばこちらを参照)が大きいように思う。 フュージョンでもポップスでもいろいろ演ってきたことから、いろんな評価(とはいえある段階から“ジャズの巨匠”みたいな扱いが増えましたが)がありますが、やはり実力は折り紙付きで、ジャズ界を代表するジャズ・アルバムといってよいと思う。ちょっと面白いと個人的に思っているのは、本盤は2通りの聴き方で楽しめるという点。さしあたり、ショート・ヴァージョンとフル・ヴァージョンと呼んでおきたい。前者は前半(1.~5.)だけ聴くといもの。冒頭から、ジェームス・テイラーが登場する表題曲の5.「ニアネス・オブ・ユー」までの、“チャプター・ワン(第1章)”と題された部分のみという聴き方である。これだけで30分弱、昔の作品だったら1枚分の気分ですらある。 もう一つは、そのまんま作品全部を聴くというもの。6.~10.は“チャプター・トゥー(第2章)”の名で括られており、最後の11.「アイ・キャン・シー・ユア・ドリームス」は“エピローグ(終章)”と題されている。前半はヴォーカル曲でメリハリがついていたわけだが、後半はひたすらバラード演奏続きで、一聴すると少々退屈しそうと思う向きもあるかもしれない。けれども、実はこの後半が結構奥深く、好きな人は深くはまってしまうのだと思う。そのようなわけで、あまりバラードが得意でない向きは1つめの聴き方を、バラード好きにはぜひ全編を通してという聴き方で楽しめるのではないだろうか。[収録曲]1. Chan's Song2. Don't Let Me Be Lonely Tonight3. Nascente4. Midnight Mood5. The Nearness of You6. Incandescence7. Sometimes I See8. My Ship9. Always10. Seven Days11. I Can See Your Dreams[パーソネル、録音]Michael Brecker (ts) Pat Metheny (g)Herbie Hancock (p)Charlie Haden (b)Jack DeJohnette (ds)James Taylor (v, 2. & 5.)2000年12月録音。 【メール便送料無料】マイケル・ブレッカー / ニアネス・オブ・ユー:ザ・バラード・ブック[+1][CD]【K2016/11/23発売】 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2017年02月01日
コメント(0)
隠れた名クリスマス曲選 ケニー・バレル(Kenny Burrell)は1931年生まれの米国のギタリスト。1950年代後半から1960年代半ばに主要な吹込みを残しているが、その後も多くの録音をしており、今なお85歳で存命中の大御所ジャズ・ミュージシャンである。そんな彼が1966年秋に録音したのが、この『ハヴ・ユアセルフ・ア・ソウルフル・リトル・クリスマス(Have Yourself A Soulful Little Christmas)』というアルバムで、カデット(かつてのアーゴ、この数年前に改名)レーベルに吹き込まれた作品である。 ジャズの世界というのは、何だか難しいものという印象を与えるようなことが多いが、落ち着いて作品を見ると結構節操のないものを出すこともある。売れっ子ギタリストをリーダーにしてアレンジものでクリスマス盤を出す、それも表題が「ハヴ・ユアセルフ・ア・メリー・リトル・クリスマス」のもじりでだったりするというのも、そんな路線にすら見えてしまう。実際、リラックス・ムードでクリスマス休暇を彩る音楽としても聴ける盤だと思う。 表題が“ソウルフル”だけれども、決して泥臭いというほどでもなく、ケニー・バレルらしい“ブルージー”な演奏で、かつイージー・リスニングな雰囲気の中でクリスマスの有名曲が奏でられていく。アレンジは、ベーシストでアレンジャーのリチャード・エヴァンス(2014年に死去)が担当している。具体的な演奏者の情報がないのだけれど、しっかり練られたオーケストラのアレンジの上で、ケニー・バレルのギター演奏がさらりといい味を出しているというのが全体的な印象である。あと、アレンジャーがベース奏者なせいかベースの音が実にしっかりしている。 ここまでの拙文だと、何だか軽いアルバムというイメージを持つ方もいるかもしれないけれど、決してそうではない部分もある。有名なクリスマス曲が多く収録されているけれども、例えば6.「ホワイト・クリスマス」は、短いながらもブルージー・バレルそのまんまのフレージングが非常に印象的。12.「メリー・クリスマス・ベイビー」は、もともとR&B系のソウルフルなナンバーだが、ジャズ+ソウルがうまく体現されているように思う。それから、何よりも忘れてはならないのが、クリスマス曲ではないのに本盤に収録されている3.「マイ・フェイヴァレット・シングス」。文句なしにケニー・バレルのギターの本領が発揮され、見事な盛り上がりを見せる。ここだけはクリスマス盤とは関係ない雰囲気になっているが、決して聴き逃せない好演となっている。[収録曲]1. The Little Drummer Boy2. Have Yourself a Merry Little Christmas3. My Favorite Things4. Away in a Manger5. Mary's Little Boy Chile6. White Christmas7. God Rest Ye Merry Gentlemen8. The Christmas Song9. Children Go Where I Send Thee10. Silent Night11. The Twelve Days of Christmas12. Merry Christmas Baby[録音・パーソネル]Kenny Burrell (g), Richard Evans (arr) 1966年10月録音。 【輸入盤】Have Yourself A Soulful Littlechristmas [ Kenny Burrell ]以下のランキングに参加しています。お時間の許す方はぜひ応援お願いします! ↓ ↓ ↓ 人気ブログランキングへ
2016年12月20日
コメント(0)
個性派ピアニストと美しき名曲 エロール・ガーナー(エロル・ガーナ―とも、Erroll Garner)は、1921年ピッツバーグ出身のジャズ・ピアノ奏者および作曲家で、1977年に死去している。後に再評価されたとはいえ、現在もジャズ・ピアノの世界では決して有名どころという感じではなく、中途半端に評価されているミュージシャンの一人と言えそうだ。彼の代表作としては、『コンサート・バイ・ザ・シー』(1955年)が圧倒的に有名だが、2枚目・3枚目を考えた時に外せない盤となるのが、その前年に録音されたこの『ミスティ(Plays Misty)』という盤である。 一番の聴きどころととなるのが表題曲の1.「ミスティ」。ジャズ・スタンダードとして知られるナンバーだが、ガーナーの作曲後ほどなくして詞が付けられ、ジョニー・マティスがポップ・ソングとして1959年にヒットさせた。このシンガーの他にも、エラ・フィッツジェラルドやサラ・ヴォーンもこれを歌い、さらに1975年にはレイ・スティーヴンスがカントリーのカバーをしている。この曲の誕生秘話なるものがよく語られるが、それによると、飛行機移動中のガーナーはこの曲を思いついた。ところが楽譜の読み書きが苦手なガーナーはその場でこの曲を書き留めることができず、飛行機を降りてから慌ててテープレコーダーに録音し、無事にこのメロディが留められたと言う。ともあれ、これを聴くだけでも、とりあえず本盤の価値はある。 その一方、その他のいくつかの曲の演奏からは“ガーナー節”が存分に感じられる。よく言われるように“ビハインド・ザ・ビート”の呼び名で知られる独特の左手の演奏である。聴き手によって好き嫌いが生じるのは承知の上で述べるけれど、“右手と左手は別々に動く”という、考えてみれば当たり前の行為が実にヴィヴィッドに伝わってくる。3.「ユー・アー・マイ・サンシャイン」の躍動感は特筆ものだと思う。ちなみに8.「ラヴ・イン・ルーム」や10.「ザット・オールド・フィーリング」も同じような感覚に襲われる。 繰り返すけれども、この“ずれた左手の感覚”は人それぞれで好みがあると思う。けれども、右手と左手が有機的に組み合わさっていくのを感じ取るという意味では実に興味深く、かつ思わず惹き込まれてしまう演奏だというのが個人的な感想である。この不思議な世界、好き嫌いはともかくも、ぜひ一度は体感してみるのがいいと思うのだけれどもいかがだろうか。[収録曲]1. Misty2. Exactly Like You3. You Are My Sunshine4. What Is This Thing Called Love5. Frantonality6. Again7. Where Or When8. Love In Bloom9. Through A Long And Sleepless Night10. That Old Feeling[パーソネル・録音]Erroll Garner (p)Wyatt Ruther (b)Eugene “Fats” Smith (ds)1954年録音。 ユニバーサルミュージック エロール・ガーナー(p)/ミスティ 生産限定盤 【CD】 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、“ぽち”応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2016年11月21日
コメント(2)
知性と実験性 テディ・チャールズ(Teddy Charles, 邦盤表記ではテディ・チャールスとも)は、本名セオドア・チャールズ・コーエンといい、1928年にマサチューセッツに生まれ、2012年に亡くなったジャズ・ミュージシャン。演奏者として主にヴィブラフォン(ヴァイブ)奏者として活動したほか、マル・ウォルドロンの『レフト・アローン』などのプロデュースでも知られる。 1950年代は精力的に活動したが、60年代半ばにジャズ界から身を引いてしまったため、決して吹込みは多くないが、本盤『ザ・テディ・チャールズ・テンテット』は、彼の目指していた音楽がよく分かる1枚だと思う。大編成のアンサンブル(本盤では10人組)を組み立て、クロマティック・スケールや不協和音を大胆に取り入れながら、実験的な音楽を作り上げている。作曲および編曲によって“仕組まれた部分”とジャズの“見せ場”であるインプロビゼーションが高度な次元でうまくかみ合っているといった印象を受ける。 こうした特徴とリンクしているのは、7曲すべての編曲者名(一部は作曲者も兼ねる)が記されている点。3.~5.はテディ・チャールズ自身の編曲だが、残りはマル・ウォルドロン(1.)、ジミー・ジェフリー(2.)、ギル・エヴァンス(6.)、ジョージ・ラッセル(7.)となっている。チャールズがそれぞれに依頼し、準備された編曲でもって吹込みに臨んだというわけである。 結果、出来上がったのは、知性と実験性の同居する盤と言えると思う。1.「ヴァイブレーションズ」の精巧な作り、4.「ネイチャー・ボーイ」の緊張感漂うバラード演奏あたりは聴きどころに挙げていいように思うが、忘れてはならないのは、3.「エンペラー」や7.「リディアンM-1」のようなナンバー。知性と実験性を軸にしながらも、体が思わず揺れるわくわく感というか、要はジャズのノリを忘れてはいない所が大きなミソと言えるだろう。[収録曲]1. Vibrations2. The Quiet Time3. The Emperor4. Nature Boy5. Green Blues6. You Go to My Head7. Lydian M-1[パーソネル、録音]2., 4.(1956年1月6日録音)5., 6.(同1月11日録音):Teddy Charles (vib), Peter Urban (tp)*, Don Butterfield (tuba), Gigi Gryce (as), J.R. Monterose (ts), George Barrow (bs), Mal Waldron (p), Jimmy Raney (g), Teddy Kotick (b), Joe Harris (ds)1., 3., 7.(同1月17日録音):Teddy Charles (vib), Peter Urban (tp)*, Don Butterfield (tuba), Gigi Gryce (as), J.R. Monterose (ts), Sol Schlinger (bs), Mal Waldron (p), Jimmy Raney (g), Teddy Kotick (b), Joe Harris (ds) JAZZ BEST COLLECTION 1000::テディ・チャールス・テンテット [ テディ・チャールス ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2016年11月19日
コメント(2)
爽快さと雄弁さが主役の盤 パーカー没後の1956年、ヴァーヴに吹き込まれた比較的初期の盤の一つが、ソニー・スティット・カルテット(The Sonny Stitt Quartet)名義のこの『ニューヨーク・ジャズ(New York Jazz)』という盤。ソニー・スティットのワンホーン盤はサックスの名手らしさが反映された盤がいくつもあり、そもそもワンホーンの吹込み数が多い。よく知られているように、スティットは“チャーリー・パーカーの模倣”と言われ(実際には真似をしていたわけではないが)、パーカーの存命中はアルトではなくテナーで独自性を出していこうとする。結果、アルトででもテナーでも必要に応じて持ち替えられるという強みは、本盤を含め様々なアルバム作品で発揮されることとなった。テナーとアルトの両方を用いているこの盤もまた、スティットの演奏に聴き惚れることができる1枚である。 安定したピアノトリオをバックにひたすらワンホーンで楽しませるという、スティットお決まりのパターンが展開されるのだが、実を言うと、初めて聴いて1曲目だけで筆者は見事に魅了されてしまった作品だったりする。その1.「ノーマンズ・ブルース」はと言うと、急速調のブルースで、そのソロは実に気持ちよく爽快に演奏している様子が自然と目前に浮かんでくる。 全体としてはスタンダードが多めで部分的に自前の曲といった配分になっている。スタンダードでは、3.「イフ・アイ・ハド・ユー」や4.「アローン・トゥゲザー」、8.「アラバマに星堕ちて」や9.「ボディ・アンド・ソウル」なんかが一貫してそうだと思うのだけれど、腰を据えてじっくりとアドリブを展開しようという意識が見られるように思う。そうは言っても、結局は音数の多い“スティット節”な演奏になっているわけだけれど、本盤の聴きどころは、こうした部分ではないような気がする。これらはどちらかというと“箸休め”になっていて、もっと勢いのあるところが実は聴きどころではないか。勢いよく爽快に吹くスティットは、雄弁でもあり気持ちいい。少なくとも筆者はそんなことを考えながらスティットのサックスを聴くことがある。そうした観点に立つと、上記1.のほかに続く2.「アイ・ノウ・ザット・ユー・ノウ」、5.「12番街のラグ」、10.「絶体絶命」なんかが案外、本盤の主役ではないだろうかと思えてきたりするのだけれど。[収録曲]1. Norman's Blues2. I Know That You Know3. If I Had You4. Alone Together5. Twelfth Street Rag6. Down Home Blues7. Sonny's Tune8. Stars Fell on Alabama9. Body and Soul10. Between the Devil and the Deep Blue Sea[パーソネル、録音]Sonny Stitt (as, ts)Jimmy Jones (p)Ray Brown (b)Jo Jones (ds)1956年9月14日録音。 【メール便送料無料】ソニー・スティット / ニューヨーク・ジャズ[CD][初回出荷限定盤(生産枚数終了,または2016年12月末までの限定出荷)]【K2016/7/27発売】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2016年11月09日
コメント(0)
長く聴き続けられること間違いなし、テナー・アドリブの真髄盤 スタン・ゲッツ(Stan Getz)は白人テナーの最高峰とされるサックス奏者。1927年フィラデルフィア生まれで、1940年代から1991年に亡くなるまで約半世紀にわたってジャズ・ミュージシャンとして活躍した。1960年代前半にはボサノヴァを取り込んで大ヒットさせるが、それよりも前、1950年代前半が彼の絶頂期と言われたりすることも多い。本盤『スタン・ゲッツ・プレイズ(Stan Getz Plays)』は、まさしくその1950年代前半の吹き込みで、ヴァーヴ・レーベルでの最初のセッション(1952年12月12・29日)を収めたもの。ヴァーヴでの吹込みは1971年まで20年近くにわたって続くことになるが、スタン・ゲッツのキャリア全体を見ても代表作としてよく名前の挙げられるのが本盤である。 スタン・ゲッツの調子がいい時の盤はどれも素晴らしいと思うけれど、本盤のいちばんの“売り”は、流れるようでいてしばしばノリを失わない勢いのよさにあると感じる。しっとりというよりは、勢いがあり、とめどなく湧き出してくるかのようなインプロビゼーション。しかもそれをやっているほとんどすべての曲(11曲中10曲)が、いわゆるスタンダード・ナンバーである。 そうした勢いを如実に表すのは、やはりアップテンポの曲調のもの。そうした例として筆者のお気に入りは、有名なナンバーの4.「今宵の君は(ザ・ウエイ・ユー・ルック・トゥナイト)」および5.「恋人よ我に帰れ(ラヴァー・カム・バック・トゥ・ミー)」、そしてジジ・グライス作の10.「ヒム・オブ・ジ・オリエント」。 テンポを落としたバラード調の曲でも、その溢れ出るフレーズは止まらない。どの曲も捨てがたいけれど、いくつか例を挙げるなら、7.「アラバマに星落ちて(スターズ・フォール・オン・アラバマ)」や11.「ディーズ・フーリッシュ・シングズ」など、ゆったりなはずの曲でも、音にはしっかりとした力強さがあり、次から次へと音が繰り出されてくる。活躍時期が長い人物なので、どの時期が代表盤かと言うといろんな意見があるだろうけれど、この盤はまぎれもない代表盤の一つになるべきだし、時代が変わっても聴き継がれる名盤の典型的な例でもあると思う。[収録曲]1. Stella By Starlight2. Time On My Hands3. ’Til Autumn4. The Way You Look Tonight5. Lover Come Back To Me6. Body And Soul7. Stars Fell On Alabama8. You Turned The Tables On Me9. Thanks For The Memory10. Hymn Of The Orient11. These Foolish Things (Remind Me Of You)12. How Deep Is The Ocean *CD追加曲[パーソネル・録音]Stan Getz (ts)Jimmy Raney (g)Duke Jordan (p)Bill Crow (b)Frank Isola (ds)1952年12月12日・29日録音。 スタン・ゲッツ・プレイズ+1/スタン・ゲッツ[SHM-CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2016年11月06日
コメント(0)
ラヴ・バードの歌声(その4) 間が空きながらもとりあえず続いている阿川泰子の名唱選ですが、これで第4回目となります。過去記事ともオーバーラップしてしまう部分がありますが、彼女の良さはヴォーカルの上手さだけでなく、どういう曲を題材として扱い、どういう風に提示して見せるかという部分にも大きな成功の要因があったように思います。その一つが“スタンダードを(懐古趣味も含めて)今風に聴かせる”と言う部分にあったように思うわけです。 そんな観点からというわけで、今回はいかにもなスタンダード曲、「マイ・ファニー・バレンタイン」をどうぞ。 まさにいろんな人が歌ったり演奏したりしている曲なわけですが、“いかにも”な感じを残しつつ、一方で“今どき”な感じにしているというあたりは見事です。もちろん美しい歌声と日本人らしからぬ発音で英詞を歌えるといった能力をお持ちなことはその前提だったと言えます。 その後数十年を見ていて、これに匹敵するシンガーがなかなか現れないというのは、彼女の能力の高さを良くも悪くも証明しているように思ったりするこの頃です。[収録アルバム]阿川泰子 / Jazz Ballad集(1987年) 阿川泰子『JAZZ BALLAD』MEG-CD ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひ“ぽちっと”お願いします。 ↓ ↓ ↓
2016年11月04日
コメント(3)
後期ペッパーを支えたケーブルスを迎えての復帰後第2作 麻薬中毒症によって、本来であれば絶頂期/円熟期であろう時期を完全に棒に振ったアート・ペッパー(Art Pepper)。1970年代ももう半ばというところで復帰した彼の姿は、もはや“ハンサム・ペッパー”とは程遠かった。“閃き”が素晴らしかったサックスは、ある意味重苦しくなり、風貌もまたすっかり人生の苦しみの年輪を積み重ねた姿になっていた。 そんなペッパー後期の大きな出来事の一つは、ジョージ・ケーブルスというピアニストとの出会いだったのではないだろうか。1944年NY出身のピアニストで、年齢的にはペッパーよりも20歳近く年下ということになる。アート・ペッパーとジョージ・ケーブルスが組んだ作品としては、ペッパー晩年の『ゴーイン・ホーム』や『テテ・ア・テテ』もいいのだけれど、今回取り上げるのは、カムバック後、『リヴィング・レジェンド』に続く2作目となった『ザ・トリップ(The Trip)』という盤である。 そもそもペッパー後期の評価(というよりも好き嫌い?)は激しく意見が分かれる。かくいう筆者も、実のところ、かつての軽やかに舞うペッパーの音楽は自然と体の中に入ってくる感じがするが、復帰後の作品全般については、あまりそういう感覚がしていない。その一方で、この『ザ・トリップ』にはまるという人も多いし、上のように言いつつも、筆者自身もたまに引っ張り出してきて聴く盤だったりする。そこで、今回は後期ペッパーの全体的印象論ではなく、この盤に関してどこが面白いのか、何が特徴なのかを少し立ち止まって考えてみたい。 冒頭の表題曲1.「ザ・トリップ」(2.も同じ曲の別テイク)は、妖艶でモーダルな雰囲気で幕を開ける。アルトで演じるコルトレーン、みたいな印象を持つ人もいることだろうと思う。これに続く3.「ア・ソング・フォー・リチャード」は休業前のペッパーの演奏を思わせる柔らかさと優しさを備えている。マクリーンで知られる曲の4.「スウィート・ラヴ・オブ・マイン」、、ミディアム・ブルース曲の5.「ジュニア・キャット」に続いては、6.「おもいでの夏(ザ・サマー・ノウズ)」。この演奏がまた切実感で一杯の名演で、軽妙さとは全く正反対にある重みを感じさせる。一転して、最後の7.「レッド・カー」はジャズ・ロック風である。 上記の収録内容をざっと見渡してみて、ばらばらな印象を受けるかもしれないが、意外と不思議なのは、実際に聴いてみるとそうでもないというところなのである。麻薬中毒により地に落ちたかつての花型プレーヤーのアート・ペッパーは、ジャズ界の流れから取り残された。あらためてここに収録された各曲の、各演奏のヴァラエティを見ると、失われた時間を一気に取り戻そうとしているように見える。つまるところ、一定のスタイルや志向性で統一された全体を聴く盤ではない。いろいろの要素を個々にもしくは全体で聴く盤だと言えるように思う。 その演奏を支えているピアノのジョージ・ケーブルス(さらにはドラムのエルヴィン・ジョーンズ)の存在ももちろん忘れてはならない。個人的には、4.「スウィート・ラヴ・オブ・マイン」の、さらりとしながらもボサ・ノヴァ風アレンジを食ってしまうかのようなピアノソロ(彼らしさが勝っているのは、比較的オーソドックスな5.「ジュニア・キャット」でのソロ演奏部分と比べてみるとよくわかる)がいい。[収録曲]1. The Trip2. The Trip (別テイク,CD追加曲)3. A Song For Richard4. Sweet Love Of Mine5. Junior Cat6. The Summer Knows7. Red Car[パーソネル・録音]Art Pepper (as), George Cables (p), David Williams (b), Elvin Jones (ds)1976年9月15・16日録音。 【送料無料】 Art Pepper アートペッパー / Trip 輸入盤 【CD】 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、“ぽち”応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2016年11月02日
コメント(0)
若きマリガンとベイカーによる感動のドキュメントは、知的で斬新なピアノレス・カルテット盤 トランペット(チェット・ベイカー)とバリトン・サックス(ジェリー・マリガン)という、ある種対照的な音を持つ楽器を組み合わせたこと、さらには、リズム楽器としてのピアノが不在というのが特徴のカルテット演奏。これらは本盤の斬新さで、それまでになかった新しいサウンドを生み出し、西海岸(ウェスト・コースト)ジャズを代表する盤の一つともされることになった。そのまとめ方が見事だったのは、単に上記の組み合わせが生んだ偶発的な結果というだけでなく、マリガン自身のアレンジャーとしての才能もあったのだろう。 ジェリー・マリガンは1940年代後半に活動を始め、マイルス・デイヴィスの『クールの誕生』にも参加。その後、1952年にカリフォルニアに移り、そこで録音したのが、この『オリジナル・ジェリー・マリガン・カルテット(Gerry Mulligan Quartet)』だった。元は10インチ盤を音源としているがゆえに曲に異同があるものの、現在まで国内盤で繰り返し出されているものに基づいておく(下記の収録曲情報を参照)。 いちばんの代表曲と言えるのは、1.「バーニーズ・チューン」、そして3.「ナイツ・アット・ザ・ターンテーブル」、この2曲で決まりである。いずれも、物腰柔らかでありながらキレがあるという形容が当てはまる。そして、ピアノなしの上記二管の組み合わせという状況からは想像できない創造性に溢れたフレーズが次々に飛び出してくる。若さからくる勢いだけではなく、アイデアと知性がそこに加わることで、長く聴き継がれる作品となったと言えるように思う。 収録されている曲数も多く(つまりは1曲当たりの演奏時間も短い)、楽曲のヴァリエーションも豊富である。これら2曲の他に注目と思われる曲をいくつかピックアップしておきたい。4.「木の葉の子守歌(ララバイ・オブ・ザ・リーヴズ)」は、上記1.とともにシングルとしてラジオで頻繁にオンエアされたという。リズム・セクションのメンバーが代わった後半(9.以降)では、9.「アイ・メイ・ビー・ロング」、15.「ジェルー」がお気に入り。それから、バラードの11.「ニアネス・オブ・ユー」も外せない。ちなみに、13.と18.に収録された「アッター・ケイオス」というのは、バンドのテーマ曲として使われた30秒ほどの短い演奏の曲である。[収録曲]1. Bernie’s Tune2. Walkin’ Shoes3. Nights at the Turntable4. Lulaby of the Leaves5. Frenesi6. Freeway7. Soft Shoe8. Aren’t You Glad You’re You9. I May Be Wrong10. I’m Beginning To See the Light11. The Nearness of You12. Tea for Two13. Utter Caos #114. Love Me Or Leave Me15. Jeru16. Darn That Dream17. Swing House18. Utter Caos #2[録音、パーソネル]1.~8.:Chet Baker (tp), Gerry Mulligan (bs), Carson Smith (b), Larry Bunker (ds)1952年8月16日(1., 4.)、1952年8月15~16日(2., 3., 5.~8.)録音。9.~17.:Chet Baker (tp), Gerry Mulligan (bs), Bob Whitlock (b), Chico Hamilton (ds)1953年4月27日(14., 15., 17.)、1953年4月29日(9.~12., 16.)録音。 【中古】オリジナル・ジェリー・マリガン・カルテット(初回限定盤)/ジェリー・マリガンCDアルバム/ジャズ/フュージョン 【メール便送料無料】ジェリー・マリガン / オリジナル・ジェリー・マリガン・カルテット[CD][初回出荷限定盤] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2016年10月28日
コメント(0)
ラヴ・バードの歌声(その3) ボブ・ディランのノーベル賞受賞の話題でしっかり吹き飛んでしまいましたが、阿川泰子の歌唱を不定期更新のシリーズで取り上げています。その続きということで、今回は、秋にぴったりの、それもべったりとジャズ・スタンダードなこのナンバーです。「枯葉(Autumn Leaves)」をお聴きください。 たぶん聴き手によって賛否が分かれる歌唱なのではないかと想像します。でも、筆者はこれはこれでなかなか良いし、何よりもシンガーとしての地力が発揮されているように思います。 思うに、阿川泰子の魅力は良くも悪くも“現代風”だったこと。それに加えて、何よりも歌の上手さが抜きん出ていたことでした。つまりは、歌の上手さに“一捻り”が加わることで、大成功につながったのだと思います。その“一捻り”というのは、ジャズ・スタンダードを現代風アレンジして(とはいいつつもビッグバンド風とかどこかに昔っぽさを残しているのも特徴です)聴かせるという、いまから思えば、ご本人の実力と同時にプロデュースやまわりのスタッフの努力があったのかな、などと思ったりもするわけです。[収録アルバム]阿川泰子 / In Autumn(1992年) 【メール便送料無料】阿川泰子 / In Autumn[CD] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、“ぽち”応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2016年10月25日
コメント(4)
キューバン・ジャズ・ピアニストのルーツ探求 ゴンサロ・ルバルカバ(Gonzalo Rubalcaba)は、1963年キューバ生まれ(後にドミニカ共和国、さらには米国フロリダへ移住)のジャズ・ピアニスト。90年代~00年代には数々の作品を吹き込み、グラミーでも受賞やノミネートしている。 そんな彼の比較的早い時期(1987年西ドイツにて)に録音されたのが本盤『ミ・グラン・パシオン(Mi Gran Pasión)』。スペイン語で『わが大いなる情熱』を意味する表題のこの作品は、キューバ出身の演奏者たちを従え、キューバ伝統の“ダンソン”を演奏したものである。 正直、これをジャズ作品と分類していいかどうかもよく分からないし、実際のところ、ジャズという枠組みでの評価も分かれるところだろう。後にますます磨きがかかっていくテクニックも十分に披露されているが、第一の注目点は、ゴンサロの父も祖父も携わったキューバ伝統音楽を演っていることだろう。血筋などという言葉で過ごしたくはないが、どう見ても“ナチュラル”としか形容できないことには脱帽である。後にさらに極まっていく技巧は存分に発揮され、しかもその発揮のされ方は、見事なまでにこのジャンルに適合しているように思う。踊りながら軽くもできそうだし、のめり込んでピアノを楽しむこともできる。 ジャズ界で名声を得た今となっては、かつてのルーツ探求盤と呼ばれ、場合によっては見過ごされてしまいそうな盤でもあるけれど、キューバのミュージシャンの奥深さを示していた作品でもある。米・キューバ関係が冷え切っていた時期ですらこうだったわけだから、その外交関係が急速に修復されつつある今を考えれば、まだまだキューバ音楽というのはジャズに新要素をもたらしてくれるのだろうと、あらぬ期待を寄せたくなってしまう。[収録曲]1. Recordando a Tschaikowsky2. Mi gran pasion3. Concierto en Varsovia4. Preludio proyecto latino 5. Principe niño6. Cuatro veinte[パーソネル、録音]Felipe Cabrera (b), Horacio Hernández (ds), Rafael Carrasco (fl, ts), Gonzalo Rubalcaba (p, key), Roberto Vizcaíno (perc), Reinaldo Melian (tp), Lázaro Cruz (tp, fl’h)1987年7月録音。 【メール便送料無料】Gonzalo Rubalcaba / Mi Gran Pasion (輸入盤CD) (ゴンザロ・ルバルカバ) 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2016年10月23日
コメント(0)
ラヴ・バードの歌声(その2) 阿川泰子が大きな人気を博したのには、ジャズというジャンルの括りに反して、変に仰々しくなく、ある種の“軽さ”がうまく出せたことも、その大きな要因だったと思います。そんなわけで、調子に乗ってそうした路線のものをもう1曲行ってみたいと思います。 前回の「L.A. Night」と同じく、“ソフトなジャズ”や“スムース・ジャズ”といった形容を受けそうなナンバーです。でも、繰り返しますが、これこそが人気の火種だったのでしょうね。1982年のアルバムに収録された「ニューヨーク・アフタヌーン(New York Afternoon)」です。 この雰囲気がどのくらいニューヨーク的かと言われると、ニューヨークはよく知らないので、あんまりよくわかりません(笑)。元々は、1970年代にアルト奏者のリッチー・コールが発表した曲です。元の演奏に見られた雰囲気(特に下のヴォーカル版の武骨さ)をアレンジで一気に“軽め”にして“おしゃれ”に変えてしまったように感じます。良くも悪くも、こういうことをさらりとやってしまったところが“勝因”といったところでしょうか。 折角ですので、リッチー・コールのアルト演奏、さらにはエディ・ジェファーソンがヴォーカルをとったものを最後にご覧ください。 [収録アルバム]阿川泰子 / Fine!(1982年) [枚数限定][限定盤]FINE!/阿川泰子[HQCD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2016年10月13日
コメント(0)
ラヴ・バードの歌声(その1) 阿川泰子(あがわ・やすこ)は、1951年、鎌倉出身のジャズ・シンガー。1970年代に女優からジャズ歌手に転身してデビューし、1980年代には“ネクタイ族のアイドル”として、ジャズ歌手としては異例の人気と売り上げをを獲得しました。彼女の異名として、よく“シュガー・ヴォイス”と言われたりしますが、筆者個人のイメージは、何と言っても“ヤスコ・ラブバード”(デビュー盤の表題)の方です。そんなわけで、“ラヴ・バードの歌声”と題して、彼女の魅力的なヴォーカルを不定期シリーズでいくつか取り上げていきたいと思います(ちなみに、「スキン・ドゥ・レ・レ」と「A列車で行こう」は過去記事で取り上げていますので、そちらをご覧ください)。 まず、最初は、1984年のアルバム『グレービー』に収録されたこのナンバーです。日本人が英語で歌って、しかもLA(ロサンゼルス)ってどうなのか、と思った方、ぜひL.A.の夜景が浮かぶこの歌唱をお試しください。 それもそのはず、阿川泰子がこの曲を含むアルバムをレコーディングしたのがロスだったとのことです。私自身はロサンゼルスのことはさほどよくは知りませんが、アメリカ有数の大都会の、ある種の無機質感を湛えた、そんなロスの姿が脳裏に浮かんできます。ちなみに、詞の内容の設定も、日本からロスにやって来た日本人という内容で、イギリス(ブルー・バード・レーベル)からシングルとしても発売され、人気を博しました。 不定期で、5回ほどの予定で、阿川泰子の歌唱を取り上げたいと思います。懲りずにお付き合いください。[収録アルバム]阿川泰子 / Gravy(1984年)↓元のアルバムは絶版のようです。以下はいずれもこの曲を収録のベスト盤↓ GOLDEN☆BEST 阿川泰子 [ 阿川泰子 ] 阿川泰子『10th AVENUE』MEG-CD ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひ“ぽちっと”お願いします。 ↓ ↓ ↓
2016年10月10日
コメント(0)
60年代末、ヨーロッパでの“一期一会” スライド・ハンプトン(Slide Hampton,本名ロクスレイ・ウェリントン・ハンプトン)は、1932年ペンシルヴァニア生まれのトロンボーン奏者。音楽一家に育ち、幼い頃に家族とともにインディアナに移住した。そこで1950年代には、ライオネル・ハンプトン、バディ・ジョンソン、メイナード・ファーガソンのバンドで演奏した。その後、1960年代にはブッカー・リトルやフレディ・ハバートらとオクテットを形成したほか、多くの有名ジャズ奏者と共演している。 そんな彼は、1968年にウディ・ハーマンのバンドの一員として渡欧したが、そのままヨーロッパに10年ほど住み着くことになった。当時のアメリカにはもうジャズを真っ当に演奏できる場がない、という限界を感じてのヨーロッパ移住だったと言われる。その翌年初頭に録音されたのが本盤『ザ・ファビュラス・スライド・ハンプトン・カルテット(The Fabulous Slide Hampton Quartet)』ということになる。 スライド・ハンプトン自身の技巧も凄いのだが、何より4人の演奏者の顔ぶれが凄い。当時ロンドンにいたフィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)がパリに来て参加している。残る2人はヨーロッパ出身者である。ヨアヒム・キューンは東ドイツ出身で西ドイツに亡命したピアノ奏者、ニールス・ペデルセンはデンマーク出身のベース奏者で、それぞれ当時25歳と23歳と若い(録音時の年齢は、フィリー・ジョーが46歳、スライド・ハンプトンが37歳)。この4人の不思議な取り合わせが生んだのは、何とも強烈な音の塊と激しさに溢れた演奏であった。 冒頭の1.「イン・ケース・オブ・エマージェンシー」は、曲名(“非常事態”)そのままに突っ走るタイプの演奏で、スピード感のあるトロンボーンも凄いのだけれど、それを支えるリズムセクション(特にベースがいい)の精度の高さが目立つ。以降も勢いと迫力に飛んだ演奏が続くが、若干落ち着いた雰囲気を垣間見せるのが4.「ラメント」で、このナンバーのみスライド・ハンプトンの自作ではなく、J・J・ジョンソン曲。5.「インポッシブル・ワルツ」も曲名(“あり得ないワルツ”)そのままに、激しい演奏(特にヨアキム・キューンのピアノが絶好調)を繰り広げている。ハイテンションで激しい演奏が展開される中で、個々の演奏がばらばらにならず統一感が保たれたのは見事。その理由は何だったのかを考えてみると、最後はスライド・ハンプトンの冷静さ(それは本盤の随所で演奏に現れている)にあったんじゃないかと思う。[収録曲]1. In Case Of Emergency 2. Last Minute Blues 3. Chop Suey4. Lament 5. Impossible Waltz [パーソネル、録音]Slide Hampton (tb)Joachim Kuhn (p)Neils Henning Orsted Pedersen (b)Philly Joe Jones (ds)1969年1月6日録音。 [枚数限定][限定盤]ザ・ファビュラス・スライド・ハンプトン・カルテット/スライド・ハンプトン[SHM-CD]【返品種別A】下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2016年09月05日
コメント(2)
テナー3人+トランペットの共演盤 この『ベン・ウェブスター&アソシエイツ(Ben Webster and Associates)』という作品は、ベン・ウェブスターに加え、コールマン・ホーキンズ、バド・ジョンソンの合計3人がテナー・サックスで参加し、さらにはトランペット(ロイ・エルドリッジ)もフィーチャーされた演奏盤。“ベン・ウェブスターとその仲間たち”という表題のイメージにまさしく合致する内容の盤と言える。 聴きどころは何と言っても、総演奏時間の半分近くを占める1.「イン・ア・メロウ・トーン」。20分にわたる長尺の演奏で、個々がそれぞれに味のあるソロを披露する。個人的に特に印象深いのは、ベン・ウェブスターのあの独特の演奏に加え、ロイ・エルドリッジの艶やかなトランペットだったりする。 テナー3本、そこへさらにトランペットを加え、長尺の演奏をやっているといっても、決して“バトル”にはなってはいない。それどころか、1.は、思いっきりリラックスしらジャム・セッション的な雰囲気の中での演奏である。2.~4.では、各曲の演奏にはもう少しまとまりがつけられているものの、リラックス感は全編にわたってずっと感じ取られる。最後の5.「バド・ジョンソン」が再びリラックス感全開で、しかもバド・ジョンソンのプレイがいい味を出している。ベン・ウェブスターのテナーをべったり聴きたいのなら、こちらのようなワン・ホーン盤の方がよいかもしれない。でも、彼のテナーが他のテナーとトランペットとの組み合わせの中でどう活きるのかを聴いてみようという観点でいくと、この盤はなかなか面白いし、そういう風に見ると特に1.の演奏は聴き逃せないと思うのだけれどいかがだろうか。[収録曲]1. In a Mellow Tone2. De-Dar3. Young Bean4. Time After Time5. Budd Johnson[パーソネル、録音]Ben Webster (ts) Coleman Hawkins (ts)Budd Johnson (ts)Roy Eldridge (tp) Les Spann (g) Jimmy Jones (p) Ray Brown (b) Jo Jones (ds) 1959年4月9日録音。 ↓参考リンク(LP盤です)↓ 【送料無料】Ben Webster / Ben Webster & Associates (180 Gram Vinyl)【輸入盤LPレコード】(ベン・ウェブスター) 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2016年09月03日
コメント(0)
暑い夏に一服の清涼剤を… ケニー・バレル(Kenny Burrell)は、1931年生まれ(現在も84歳で存命中)でブルーノートの看板として活躍したジャズ・ギタリスト。対して、グローヴァ―・ワシントン・Jr(Grover Washington Jr.)は、1943年生まれ(1999年に56歳で没)のフュージョン・サックス奏者で、いわゆるスムース・ジャズの代表的な奏者である。 そんな二人の双頭名義で1980年代半ばに発表されたのが、本盤『トゥゲザリング(Togethering)』である。1985年のブルーノート復活(EMIの一部として)の際にこのレーベルから出されたものだが、ブルーノートを代表するイメージのケニー・バレル寄りの、ブルージ―なジャズの部分を残しつつも、軽やかで饒舌なグローヴァ―・ワシントン・Jrのサックスのテイストがうまく組み合わされた一枚に仕上がっている。 上で“うまく組み合わされた”と言ったけれど、ケニー・バレルは元々いろんな演奏者と一緒になり、相手のスタイルや特色に自分を組み合わせていくのが実にうまい演奏者だと思う(先日のこちらの盤もその一つ)。本盤でもその特技(?)が存分に発揮されている。他方、グローヴァ―・ワシントン・Jrの方はというと、ソプラノ・サックスを主に演奏し、気負うことなくマイペースで軽妙に演っているような感じを受ける。 とはいえ、結果出来上がった音楽全体に、さほど強いフュージョン臭は感じられない。ジャック・デジョネット(ドラム)とロン・カーター(ベース)がしっかり演奏を引き締めているであろうか。しかしながら、かといって、正座をして聴くジャズの雰囲気でもない(グローバー・ワシントン・Jrの軽妙なサックスにかつパーカッションの参加が勝っているのか?)…。などなどと考え出すと、何とも形容しがたい盤なわけだけれど、一つだけ、以下の楽しみ方はお試しいただきたい。暑い夏の庭かテラスに腰かけて(クーラーの効いた屋内ではだめ)、ビール片手に一服の清涼剤として聴く。特に1.「ソウレロ」~2.「セイルズ・オブ・ユア・ソウル」、5.「トゥゲザリング」~6.「ロマンス・ダンス」、さらには8.「ホワット・アム・アイ・ヒア・フォー?」あたりがお勧め。もちろんこれが唯一の聴き方などと言うつもりはないけれども、暑い日の清涼剤としてこんなに爽快な盤というのも、そうそう簡単に出会えるものではないと思う。[収録曲]1. Soulero2. Sails Of Your Soul3. Day Dream4. A Beautiful Friendship5. Togethering6. Romance Dance7. Asphalt Canyon Blues8. What Am I Here For?[パーソネル・録音]Kenny Burrell (g. el-g)Grover Washington Jr. (ss, ts)Ron Carter (b)Jack DeJohnette (ds)Ralph MacDonald (per)1984年4月5~6・23日録音。 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひ“ぽちっと”お願いします。 ↓ ↓ ↓
2016年08月24日
コメント(0)
本領発揮のライヴ盤 「モーニン」や「ダット・デア」、あるいは「ディス・ヒア(ジス・ヒア)」の作者としても有名なソウル・ジャズのピアノ奏者、ボビー・ティモンズ(Bobby Timmons)。これまでこのブログでは、J・ジェンキンスとC・ジョーダンとの共演盤、そして彼名義の名盤『ジス・ヒア(This Here Is Bobby Timmons)』を取り上げている。今回は、同盤の次の年(1961年)に実況録音されたトリオ編成による『イン・パーソン(In Person)』というライヴ演奏盤を取り上げてみたい。 上でソウル・ジャズと書いたけれども、ティモンズのピアノの特徴を抽象的な“ジャンル”ではなくて、もう少しわかりやすく言い表す方法はないものかと思ったりすることがある。少々大胆な意見かもしれないが、彼のピアノは“いかに鍵盤を感動的に叩くか”が主題ではないだろうか、などと思ったりすることがある。誤解のないように言うと、美しいフレーズが飛び出すことはもちろんあるし、でも、ただ粘っこいとかいうわけでもない。要は、ゴスペルやブルース、はたまたソウルといったルーツに根ざした独特の間合いと感覚があって、結果的にピアノを“弾く”というよりは、鍵盤をどう“叩く”かが、ネックになっているのだろうという気がするからである。 聴きどころと言えそうな曲をいくつか挙げておきたい。1.「枯葉(Autumn Leaves)」は超有名曲だけれども、淡々とした演奏の中にボビー・ティモンズ節が満載で、本盤中でベスト曲だと個人的には思う。4.と10.はともに「ダット・ゼア」なのだけれど、1分弱のテーマのみの演奏。ただしCDでは追加曲として、フル・レングス・ヴァージョンも収められている(これがなければ、この有名曲に期待する人には少々ストレスになりそう)。さらに、ちょっと変わったところでは、9.「ソフトリー・アズ・イン・ア・モーニング・サンライズ(朝日のようにさわやかに)」。ロン・カーターのベースが大活躍の一方で、ボビー・ティモンズの控えめなピアノがうまく調和している。ついつい聴き手というものは先入観に振り回され、ボビー・ティモンズと言えば、ソウルとかファンクとかのイメージで聴きどころを求めてしまいがちだけれど、本盤については、上記の1.や9.に注目するというのもいいのかもしれないと思ったりする。[収録曲]1. Autumn Leaves2. So Tired3. Goodbye4. Dat Dere (Theme)5. They Didn't Believe Me *CD追加曲6. Dat Dere (Full-length) *CD追加曲7. Popsy8. I Didn't Know What Time It Was9. Softly, As in a Morning Sunrise10. Dat Dere (Theme)[パーソネル、録音]Bobby Timmons - pianoRon Carter - bassAlbert Heath – drums1961年10月1日録音(ヴィレッジ・ヴァンガードでの実況録音)。 ボビー・ティモンズ・トリオ・イン・パーソン+2 [ ボビー・ティモンズ ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2016年08月22日
コメント(0)
確信的なギターとオルガンの共演 ケニー・バレルとブラザー・ジャック・マクダフ・カルテット(Kenny Burrell with the Brother Jack McDuff Quartet)名義で1963年初頭に吹き込まれたのが、本盤『クラッシュ!(Crash!)』である。形式上はこの名義になっていて、実際にドラムやサックスはジャック・マクダフのお抱えメンバーなのだけれども、実態としては、ギターのケニー・バレルとオルガンのジャック・マクダフの二人の双頭バンド的な顔合わせによる演奏と考えてよいだろう。 これら2人の共演はこれが唯一というわけではなく、この前にもジャック・マクダフ名義の盤にケニー・バレルが加わっていた。よって、すでに何度かの録音によって勝手は分かっているような感じだったのだろう。パーカッショニスト(レイ・バレット)を加えた点もそうだけれど、ソウルでファンキーなマクダフのオルガン演奏とこのテンションに合わせたバレルのギター演奏のイメージがある程度でき上がったうえでの録音だったのではないかと想像する。つまり、手探りで“やってみてどうなるか”よりも、ある種確信犯的に“やってみたらきっとこうなるだろう”という感じが演奏者側にあったのではないかと思う。 だからと言って、すべてが予定調和というわけではもちろんない。上で述べたような段取りと見通しがあるからこそ、マクダフのオルガンが自在に駆け回った後にバレルのツボを押さえたギターがそれを受け継いで展開されるなどといった流れも生まれてくる。全体を聴いてケニー・バレルが控えめに思われる場面があるのも、ソロで出てきた瞬間にハッとさせられるような場面があるのも、そういう全体構想の中での役割を彼が十分に踏まえていたのだろうと思う。 特に聴き逃せないと思うお気に入り曲を一つだけ挙げると、3.「ニカズ・ドリーム」。アップテンポな軽快なアレンジで、ハロルド・ヴィックのさらりとしたテナーからオルガンが徐々に絡んできて、ジャック・マクダフのオルガン・ソロ。いつまでこの調子が続くのかと思わせたところで、すかさずケニー・バレルのギターの入ってくる瞬間が何とも言えない。他の曲の演奏でもそうなのだけれど、ギター・ソロの始まる瞬間が何とも言えないのと、続けて聴いていくと、その間のオルガンが一気に控えめになる傾向が見られる。最後にテーマに戻ったところも、テナー、オルガン、ギターが絶妙に絡んでいる。この曲に見られるように、すべてが段取り通りなわけではないものの、下手をすれば噛み合わない演奏になり得たものをどうまとめるかのイメージがジャック・マクダフとケニー・バレルの、さらには他のメンバーとの間で共有されていたのだろう。結果、その演奏は見事に噛み合っている。[収録曲]1. Grease Monkey2. The Breeze and I 3. Nica's Dream4. Call It Stormy Monday5. Love Walked In6. We'll Be Together Again[パーソネル、録音]Kenny Burrell (g), Jack McDuff (org), Harold Vic (ts), Eric Dixon (fl., 5.), Ray Barretto (conga), Joe Dukes (ds)1963年1月8日、2月26日録音。 【メール便送料無料】Jack McDuff Featuring Kenny Burrell / Crash (輸入盤CD) 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2016年08月20日
コメント(0)
忘れ去られたバリトン・サックスの先駆者 サージ・チャロフ(Serge Chaloff)は、ボストン出身の白人バリトン・サックス奏者。1923年生まれだが、薬物中毒の影響から1957年に33歳の若さでこの世を去っている。そのため、吹込みも決して多くなく、あまり注目されないジャズ・ミュージシャンの一人である。1954年録音の本盤『ザ・フェイブル・オブ・メイべル(The Fable of Mabel)』(手持ち邦盤のカナ表記は『ザ・フェイブル・オブ・メイブル』)は、『ブルー・サージ』(1956年録音)などと並んで、彼の代表作とされる。内容的には、2枚の10インチ盤(『サージ・アンド・ブート』と『ザ・フェイブル・オブ・メイべル』)をカップリングしたもので、1954年の音源が収められている。 バリトン・サックスと言えば、一般には西のジェリー・マリガン、東のペッパー・アダムスなんかが思い浮かぶところだが、サージ・チャロフは、フロント楽器としてのバリトンの先駆者となり、マリガンなどにも影響を与えた。他方、チャロフ自身は“バリトンのパーカー”などと言われることもある。それはちょっと誤解を生むのではないかという気もしないではないけれど、チャーリー・パーカーの影響を受けて、重たいバリトンをあたかも小回りが利く楽器であるかのように軽快に吹いているというのは、確かにそのとおりである。 ジャケットには“サージ&ブーツ(Serge & Boots)”とも書かれてあるが、後者は、ボストンをベースにスタン・ケントン楽団でも活躍したブーツ・ムスリ(Boots Mussulli)というアルト奏者のこと。上記の通り、10インチ2枚のカップリングだが、前半(1.~6.)がこのアルト奏者の入ったセッションとなっている。一方、後半(7.~12.)は替わってアルトにチャーリー・マリアノが入っているのもメンバー的には興味深い。ちなみにこの後半部分ではほかにテナー、トランペット、トロンボーンも加えられ、前半の比較的ストレートな軽快さとは異なる調子で、管楽器の多さによって一捻りした演奏が披露されている。 そのようなわけで、サージ・チャロフのバリトンが比較的ストレートに楽しめる前半、大きめのアンサンブルの中でのバリトン演奏が披露される後半というように、2種の異なる側面が収録されている。ちなみに筆者は最初に聴いた時は、断然前半に心を奪われた。けれども繰り返し聴くうちに、後半を聴く楽しみが増していって現在に至っている。もう少し具体的に言うと、この後半のような演奏を突き詰めていったら、そして早逝することがなかったなら、サージ・チャロフはどれほど歴史に名を残すバリトン奏者になっていたのだろうか、想像がどんどん広がっていく。ともあれ、カップリングで1枚のLPということから、“一粒で二度おいしい”盤なわけで、ぜひ前半と後半を聴き比べながら楽しんでいただきたい。[収録曲]1. You Brought A New Kind Of Love To Me2. Zdot3. Oh Baby4. Love Just Around The Corner5. Easy Street6. All I Do Is Dream Of You7. The Fable Of Mabel8. Sherry9. Slam10. A Salute To Tiny11. Eenie Meenie Minor Mode12. Let's Jump [パーソネル、録音]1.~6.:Serge Chaloff (bs), Boots Mussulli (as), Russ Freeman (p), Jimmy Woode (b), Buzzy Drootin (ds)1954年6月9日録音。7.~12.:Serge Chaloff (bs), Charlie Mariano (as), Varty Haritounian (ts, 12.除く), Herb Pomeroy (tp), Nick Capazutto (tp, 12.除く), Gene DiStachio (tb), Dick Twardzik (p), Ray Oliveri (b), Jimmy Zitano (ds)1954年9月録音。↓以下のリンクは、カップリングなしの別々の盤です↓ 【ただ今クーポン発行中です】【メール便送料無料】【メール便送料無料】サージ・チャロフ / サージ・アンド・ブーツ[CD] 【ただ今クーポン発行中です】【メール便送料無料】【メール便送料無料】サージ・チャロフ / ザ・フェイブル・オブ・メイベル[CD] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2016年07月29日
コメント(2)
癖になるピアノと有名曲 ボビー・ティモンズ(Bobby Timmons)は、1935年フィラデルフィア出身のジャズ・ピアニスト。若くして(といっても38歳で死去したため、結果的には既に人生の半分ぐらいだったわけだけれど)ニューヨークに出て、ハードバップ華やかなシーンに活躍の場を得た。1956年にケニー・ドーハム率いるジャズ・プロフェッツに参加したほか、同年にはチェット・ベイカーとの吹込み、1957年にはこちらの盤などにも参加している。 彼の名が広く知れ渡ったのは、アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズに加わり、「モーニン」を残したことによる。この後、1959~60年にかけては、キャノンボール・アダレイのクインテットでも「ジス・ヒア」や「ダット・デア」という名曲を残した(参考過去記事(1) ・(2))。 そんなボビー・ティモンズが自身のトリオで吹き込んだ、代表盤とされるのがリバーサイド盤『ジス・ヒア(This Here Is Bobby Timmons)』である。上で述べたように、既に有名曲の作者として名をあげていたことから、ジャケットには“The Pianist-Composer of “This Here” “Moanin’” “Dat Dere””と記されている。 というわけで、まず聴き手にとって注目曲となるのは、1.「ジス・ヒア」、2.「モーニン」、6.「ダット・デア」ということになるだろう。“ファンキー”という文句で安易に括りたくはないのだけれど、敢えてこの言葉を使うなら、ファンキーなティモンズ節のピアノ演奏が展開される。彼のピアノを聴いていて思うのは、さらりと聴き逃せない粘っこさという風に感じる。左手は泥臭さやアーシーなブルースらしさを醸し出す。その一方で、右手はさらりと流れるフレーズの随所で“引っかかり”がある。おそらくこの組み合わせが、べったりブルージーでもなければ、流れるような聴きやすさでもないという、微妙なバランスを出すもとになっているのだろう。 他の聴きどころもあげておきたい。スタンダードの定番である7.「マイ・ファニー・バレンタイン」や8.「降っても晴れても」では、いかにもな“ファンキーさ”は少し影を潜め、いくぶん静かに“ティモンズ節”を展開する演奏になっている。個人的には、もう少し個性を強く出してもよかったのかななどと思わないでもない。やはり自作曲の方がある意味本領発揮しやすいのだろうか、上記の最有名曲以外では、9.「ジョイライド」の演奏が聴き逃せない。[収録曲]1. This Here2. Moanin'3. Lush Life4. The Party's Over5. Prelude to a Kiss6. Dat Dere7. My Funny Valentine8. Come Rain or Come Shine9. Joy Ride[パーソネル、録音]Bobby Timmons (p), Sam Jones (b, 3.を除く), Jimmy Cobb (ds, 3.を除く)1960年1月13・14日録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ジス・ヒア [ ボビー・ティモンズ ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2016年06月14日
コメント(0)
“ハンサム”なテナーの魅力 米国のテナー奏者、セルダン・パウエル(Seldon Powell,1928年生まれ、1997年死去)の最初のリーダー作がルースト盤の『セルダン・パウエル・プレイズ(Seldon Powell Plays)』である。本ブログでは先にセクステット盤を取り上げているが、音楽スタイルやら伝統の革新に気を取られると、ついつい見逃してしまいがちなのが、こういうタイプの奏者ではないだろうか。奇をてらったことはしない。聴き手をへんに刺激して興奮させようとはせず、ある種、リスナーの期待にやさしく添いながら自分らしさを発揮できるタイプ。いやはや、自我を強く前面に出さずに他人を満足させられるなど、名人芸としか言えないではないか。 複数管およびギターが入っているものの、基本的にはワンホーンに近い演奏で、パウエルのテナーがほぼ全編にわたってメインになっている。とはいえ、上述のように、パウエルが“吹きまくる”という風では全くない。抽象的な表現になってしまうけれど、演奏全体が“ハンサム”なのである。あくまでやさしく、物腰低く、聴き手は少しずつ納得させられながら、聴き手は彼のテナーの世界に引き込まれていく。演奏スタイルやフレーズ云々以前に、このテナーの“主役でありながらでしゃばりすぎないところ”がよい。 聴きどころをいくつか挙げておきたい。1.「ゴー・ファースト・クラス」は、上で述べたようなテナーの特徴が冒頭からよくわかる。主役だけれども他を押しのけることなく、ワンホーン風に展開しながらも最後は周りと調和して終わるという感じがよい。美しさという点では6.「オータム・ノクターン」が一押し。最後に、聴き逃してはいけないのは、8.「サマータイム」で、ただ“仰々しく盛り上げる”ような感じにならず、かといって聴き手がこの曲に期待するであろう緊迫感を一定に保ちながら、やっぱりスマートかつハンサムに吹き上げているところに好感が持てる。[収録曲]1. Go First Class 2. Why Was I Born 3. Love Is Just Around The Corner 4. Someone To Watch Over Me 5. Count Fleet 6. Autumn Nocturne 7. Swingsville, Ohio 8. Summertime[パーソネル、録音]Seldon Powell (ts)Jimmy Nottingham (tp) Bob Alexander (tb)Haywood Henry, Pete Mondello (as,bs)Tonny Aless (p)Billy Bauer, Freddie Green (g)Arnold Fishkin (b) Don Lamond (ds)1955年10月24日、195511月14日、1956年録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】セルダン・パウエル・プレイズ [ セルダン・パウエル ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2016年06月12日
コメント(0)
ブルーノートでの初リーダー作 人生、いろんなすれ違いというのは、多かれ少なかれ誰しもが体験するのかもしれない。ちょっとした行き違いから仲直りすることなく永遠に会えなくなった友人、逆に若い頃にはすれ違っていた人がそこそこの年齢になって人生最大の友になるような人、はたまた、違うタイミングで出会っていれば結婚していたかもしれない人(そして、いい年になってからその友人と再会して親友になったり、はたまたテレビドラマ風に言うと不倫関係になったり?)、等々。 ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)とブルーノート(あるいはその主宰者のアルフレッド・ライオン)にも、そんなちょっとしたすれ違いがあったのかもしれない。ロリンズは1949年にブルーノートでのレコーディング(バド・パウエルの『ジ・アメイジング・バド・パウエルVol. 1』)に参加しているが、マイルスとのセッションで評価を得たロリンズはプレスティジとの専属契約をすることになり、それは1956年まで続くことになった。 契約が切れた後、ロリンズはようやくブルーノートでの初リーダー作の吹き込みを行う。それが1956年末に録音された本盤『ソニー・ロリンズVol. 1(Sonny Rollins Volume One)』ということになる。その時点までに、『サキソフォン・コロッサス』(ちょうど半年前の録音)に見られるように、ロリンズは既に“完成されたサックス奏者”だった。おそらくはそれゆえに、プレスティジとの専属期間中にサイドマンとしてのブルーノート録音もなかったのだろう。 それでもって、本盤の演奏を聴くと、それまでのロリンズとはどこか違うようにも思う。5.「ソニースフィア」に見られるように、アドリブは冴えているし、3.「グロッカ・モラを思う」ではロリンズならではのバラード演奏が披露される。その違いは何なのかを考えてみると、“枠がついている”点にあるというふうに思う。細かいことを言えば、“型にはまっている”わけでは決してない。ロリンズのインプロビゼーションはちゃんと絶好調なのだが、その演奏の周囲に、絵画でいえば“額縁”がついているのである。おそらくこれは、よく言われるようなプレスティジとブルーノートの根本的な違いにあるのだろう。良くも悪くも放りっぱなしの自由奔放さ(当然それが名作を生むこともある)と“枠のついた”自由度。本作は典型的に後者のパターンであるように思う。[収録曲]1.Decision2.Bluesnote3.How Are Things In Glocca Morra?4.Plain Jane5.Sonnysphere[パーソネル、録音]Sonny Rollins (ts)Donald Byrd (tp)Wynton Kelly (p)Gene Ramey (b)Max Roach (ds)Blue Note 15421956年12月16日録音 CD/ソニー・ロリンズ/ソニー・ロリンズVol.1 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2016年06月06日
コメント(0)
名手たちの参加によるスウィンギーなご当地組曲 本名アンソニー・アッレッサンドリニ(Anthony Alessandrini)ことトニー・アレス(Tony Aless)は、1921年ニュージャージー出身のジャズ・ピアニスト。没年にいくつかの説があってよくわからないが、1985年に亡くなっているとすれば、64歳で死去していることになる。 本盤『ロング・アイランド組曲(Long Island Suite)』は、トニー・アレスが作編曲者としての手腕を発揮した1955年の録音のルースト盤である。ノネット(9人編成)を指揮してスウィンギーな演奏を全編にわたって繰り広げている。ニューヨークから海側に伸びる長い島(ロング・アイランド)がテーマになっていて、収録の8曲はいずれもロング・アイランド内の地名が付されている。ジャケットのデザインは一見すると何だかわからない模様だけれど、実は上半分のこの形がロング・アイランド島である。よく見ると、白い印と黒字の文字が散りばめられていて、これらの地名が各収録曲のタイトルとなっている。 ロング・アイランドには行ったこともない(ジャケ地図には含まれていない西端のJFK空港だけならあるか…)ので、具体的にその光景は想像がつかないし、そもそも60年前は今とは様子も違っていただろうから、現地のイメージについては何とも言えない。けれども、ニューヨークの都会の喧騒とは違う伸びやかさが雰囲気として感じられ、どの曲も見事にスウィングしている。 トニー・アレス自身のピアノのほか、注目すべき参加メンバーには、“MOE”と“JOE”とクレジットされた2人のトロンボーン担当がいる。これらはカイ・ウィンディングとJ・J・ジョンソンの変名で、前者は1.~4.、後者は5.~8.に参加している。それから、ジャケットをよく見ると小さな文字で“introducing seldon powell: tenor sax”と記されている。この録音の数か月後には自身の録音を同じルーストで行い、初リーダー作『セルダン・パウエル・プレイズ』を吹き込むことになるが、彼の名を売り出す録音となったのが本盤であった。 大人数の演奏ながら、いま述べた奏者らをはじめとして各メンバーのソロがしっかりと楽しめる構成になっている。カイとJJの同時演奏はないものの、それぞれのトロンボーンも楽しめるし、パウエル(特にスロー曲7.のソロがいい)も楽しめる。冒頭の1.からして見られるように、アンサンブルとソロのバランスの良さを取りながら、全体に流れるスウィング感を保ったのは、トニーアレスの力量ということだろうか。ハードバップ前のよき時代を体現する名盤と言えるように思う。[収録曲]1. Levittown2. Corona3. Aqueduct4. Riverhead5. Valley Stream6. Greenport7. Fire Island8. Massapequa[パーソネル、録音]Tony Aless (p), Pete Mondello (bs), Billy Bauer (g), Seldon Powell (ts), Don Lamond (ds), Nick Travis (tp), Davey Schildkraut (as), Arnold Fishkin (b), “Moe” and “Joe”[Kai Winding & J.J. Johnson] (tb)1955年7月録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ロング・アイランド組曲 [ トニー・アレス ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひ“ぽちっと”お願いします。 ↓ ↓ ↓
2016年06月03日
コメント(2)
若きコニッツによるアドリブの極致 レニー・トリスターノの教えを受け、“ビバップ”に対する“クール”なジャズを担っていった若き頃のリー・コニッツ(Lee Konitz)。1940年代からプロ活動を行い、40年代末には『クールの誕生』にも参加したが、本盤は1950年代前半の演奏で、いい意味でコニッツの“難解さ”が凝縮された盤である。 本盤『リー・コニッツ・プレイズ(Lee Konitz Plays)』は、アンリ・ルノー(ピアノ)らが参加しており、パリで録音されたものである。ちょうどスタン・ケントン楽団の欧州でのツアー中で、それを機にワン・ホーンで吹き込まれたという(1953年9月18日録音とされるが、前日の17日に吹き込まれたとする説もある)。“ジャズ・タイム・パリ第7弾(Jazz Time Paris vol. VII)”とジャケットに記されているのはそのためである。 この頃のコニッツのアルト演奏は、アドリブのレベルの高さ、それと同時にクールな感覚の演奏の二点がその魅力となっている。一点目に関しては、収められた曲の演奏を聴いても、原曲がよく分からない場合が多い。つまり、明確なテーマを吹いてインプロヴィゼーションに移行する、という常識を超え、自由な演奏が占める割合が高い。結果、同じ曲(同じコード進行)を10回演奏したならば、10通りのまったく異なる演奏が出来上がると言えそうなのである。その証拠に、スタンダード曲(例えば1.「四月の思い出」や5.「ユード・ビー・ソー・ナイス(=ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ)」)を聴けばすぐわかるように、ろくすっぽテーマを吹くことなく、インプロヴィゼーションを繰り広げている。 そのことがよく分かるのが、コニッツ名義の曲としてクレジットされている2.、3.、4.、6.、さらには共同名義の7.の存在である。これらは「オール・ザ・シングズ・ユー・アー」、「ディーズ・フーリッシュ・シングズ」、「四月の思い出」を下敷きにしたもので、原曲とは別のタイトルが付けられているが、要はそれぞれに原曲があり、そのコード進行に従ってコニッツが自在に演奏してしまっているというもの。つまりは、原曲のクレジットを入れられないほど原型をとどめない演奏というのが、本盤の真骨頂である。 二点目のクールさについては、聴き手の感性にゆだねられる部分が多いとは思うけれど、筆者としては、ただクールなのではなく、気持ちや心意気の面での“熱さ”が背後に見え隠れするように思える。一聴して難解に聞こえるかもしれないが、筆者としては、邪念(?)を取り除いてありのままを聴けばいいのではないか、などと考えながらこれを聴くようにしている。[収録曲]1. I'll Remember April2. Record Shop Suey (All the Things You Are)3. Lee Tchee (These Foolish Things)4. Young Lee (These Foolish Things)5. You'd Be So Nice6. 4 Pm (These Foolish Things)7. Lost Henri (I'll Remember April)~以下、CDボーナス曲~8. I'll Remember April –master take-9. I'll Remember April –alternative take 1-10. I'll Remember April –alternative take 2-11. All The Things You Are –alternative take 2-[パーソネル、録音]Lee Konitz (as) Jimmy Gourley (g) Henri Renaud (p) Don Bagley (b) Stan Levey (ds)1953年9月18日(17日?)録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】リー・コニッツ・プレイズ +4 [ リー・コニッツ ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2016年05月17日
コメント(2)
人気盤にして私的愛聴版 アルト奏者ソニー・クリス(Sonny Criss)のキャリアには何度かのピークがあったが、そのうち中期と呼んでよいピークは1960年代後半のプレスティッジに吹込みを残した時期である。決して多作ではないが、1966~69年にかけてコンスタントにリーダー作を残していて、『ポートレイト・オブ・ソニー・クリス』、『ザ・ビート・ゴーズ・オン』、『ソニーズ・ドリーム(新クールの誕生)』なんかがその時期に該当する。 とはいえ、代表作はどれかというと戸惑う人も多いのではないか。何せ知名度が高くなく、“パーカーの影響”のような表現であっさり終わらされる傾向がある。そんな中で、知名度のある盤と言えば、ヒットした上述の『ソニーズ・ドリーム』か、日本のジャズ喫茶でも人気を博したという本盤『アップ・アップ・アンド・アウェイ(Up, Up and Away)』といったあたりではないだろうか。 でもって、この一応“人気盤”とされるアルバムは、個人的な愛聴盤でもある。他の作品が瞼に浮かびこれを代表作と呼ぶのは憚れるのだけれど、非常に“彼らしい盤”であることは間違いがないと思う。ある種の軽さ(軽やかさ)、聴き手へのサービス精神、演奏の上手さ、サックスの音色の哀愁、とソニー・クリスを評する要素がしっかり詰まっている。 いくつか私的好みでおすすめ曲を挙げておきたい。表題曲1.「アップ・アップ・アンド・アウェイ」は、ちょうどこの時期にヒットしたフィフス・ディメンションのナンバー(邦題は「ビートでジャンプ」)だが、爽快なアルトの吹きっぷりが心地よい。4.「サニー」もノルウェイのR&Bグループ、パブリック・エネミーがちょうど吹込みの前年に発表していた曲である。こうしてポップ系の曲を解釈する試みは、本盤の翌年(1978年)に録音された『ロッキン・イン・リズム』へと続いていくことになる。 1.がポップ由来の聴きどころとすれば、ジャズ然たる聴きどころは、パーカー曲の5.「スクラップル・フロム・ジ・アップル」と言えるだろう。とはいえ、時に甲高く時に伸びやかなソニー・クリスの演奏は、ただ明るいだけではない。落ち着いて聴けば聴くほど、その背後に潜むメランコリックな部分が気になり始める。その点で、個人的には、本盤では2.「柳よ泣いておくれ」が実は気に入っている。表題曲とこの曲の冒頭2曲は聴き逃せない。 最後に、余談ながら、本盤の日本語ライナーは村上春樹氏によるというのもよく知られた話である。別に仰々しい文章でも、特別凄いことが書いてあるわけでもないけれど、興味のある方は国内盤でご覧いただきたい。[収録曲]1. Up, Up and Away2. Willow Weep for Me3. This is for Benny4. Sunny5. Scrapple from the Apple6. Paris Blues[パーソネル・録音]Sonny Criss (as), Cedar Walton (p), Tal Farlow (g), Bob Cranshaw (b), Lenny McBrowne (ds)1967年8月18日録音。 CD-OFFSALE!ソニー・クリス/アップ・アップ・アンド・アウェイ 【CD】 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2016年05月14日
コメント(2)
三管編成の醍醐味を楽しむ盤 以前に紹介した『サウス・アメリカン・クッキン』と同じ1961年、厳密にいうと同作の数か月後にカーティス・フラー(Curtis Fuller)のリーダー作として吹き込んまれたのが、本盤『ソウル・トロンボーン(Soul Trombone)』である。 1958年録音のコルトレーンの『ブルー・トレイン』の三管に参加し評価を受けたカーティス・フラーは、その後もジャズテットなどで三管編成の演奏を極めていった。本盤もその流れの中にあり、ジャケットに見られるように、独自のバンド“ザ・ジャズ・クラン”を名乗っている。フロントはフラーの他に、フレディ・ハバート(トランペット)とジミー・ヒース(テナー)というセクステット(6人編成)での演奏である。 全体としてカーティス・フラーのトロンボーンをメインにハードバップを土台にした演奏が展開されていく。注目曲は、1曲目の、このバンド名称を冠した自作曲である1.「ザ・クラン」。フロント三管をいかしたアップテンポの演奏で、スリリングさと各ソロの出来はこのアルバムのハイライトと言える。 それ以外の注目曲もいくつか挙げておきたい。ともにフラーンのペンによるオリジナルの3.「ニュードルズ」と6.「レイディ―ズ・ナイト」は、ノリのいい曲調の中で三管がよくいかされていて爽快感がある。さらに、絶対に忘れてはならないのは、スウェーデン民謡を元にした5.「ディア・オールド・ストックホルム」。この曲は、スタン・ゲッツやマイルス・デイヴィスによる演奏がよく知られているが、このフラーの演奏もなかなかのもので、同曲の名演の一つと言えるように思う。トロンボーンによるテーマ演奏から始まり、途中からフォービートにのせていき、他の管が入ってくる展開が何ともかっこいい。上記の通り、他に聴きどころもあるけれど、先に触れた1.とこの5.だけでもこのアルバムを買う価値は存分にある。ついでながら、インパルスらしいジャケット写真も個人的にはなかなか気に入っている。[収録曲]1. The Clan2. In the Wee Small Hours of the Morning3. Newdles4. The Breeze and I5. Dear Old Stockholm6. Ladies' Night[パーソネル、録音]Curtis Fuller (tb)Freddie Hubbard (tp)Jimmy Heath (ts) Cedar Walton (p)Jymie Merritt (b)Jimmy Cobb (ds, 2.-6.)G. T. Hogan (ds,1.) 1961年11月15~17日録音。 輸入盤 CURTIS FULLER / SOUL TROMBONE & CABIN IN [CD] 【ただ今クーポン発行中です】【メール便送料無料】【メール便送料無料】カーティス・フラー / ソウル・トロンボーン[CD]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2016年05月11日
コメント(3)
メロディックな速弾きピアノ+新進気鋭のヴァイブ 1936年シカゴ生まれ(ただし育ちはインディアナ)のピアノ奏者、ジャック・ウィルソン(Jack Wilson)は、シカゴからロスへと進出して活動を展開した。彼のピアノの特徴とは、黒人的な泥臭さや東海岸ジャズの緊迫感のようなものとはまったく異なる地平にある。ジョージ・シアリングの演奏にインスパイアされ、バップの音楽理論を身につけて行ったという点からも、そうした志向がうかがわれるように思う。 実際、ウィルソンのピアノは、バップを柔らかにのびのびとモダンに発展させたかのような演奏が身上とでもいったところ。ロスで活動をする中で、彼と意気投合したのが、本盤に登場するロイ・エアーズ。彼のヴィブラフォンもまた、ウィルソンに近いフレッシュで爽やかな響きを求めていたように思える。 本盤『ジャック・ウィルソン・カルテット・フィーチャリング・ロイ・エアーズ(Jack Wilson Quartet featuring Roy Ayers)』は、1963年にアトランティックに吹き込まれた初リーダー作で、後にディスカバリーから別タイトル(『コルコヴァード』)でも再発された。 初のリーダー作と言っても気負いは感じられず、むしろやりたいことを自由にやっている余裕が感じられる。選曲を見ても、唯一の非自作曲のボサノヴァ・ナンバー、1.「コルコヴァード」を冒頭にもってきて(ちょうどキャノンボール・アダレイやスタン・ゲッツがこの曲を取り上げたのと同時期の録音ということになる)、スピード感のある2.「ジャックレグ」では、滑らかなウィルソンのピアノにロイ・エアーズのテクニックが絡む。アルバム中盤以降(LPでは4.までがA面収録)にはややテンポを落としたナンバーも配置して、ゆったりとした中でピアノにヴィブラフォンの聴きどころが含まれていたりする(この点では、4.「ハーバー・フリーウェイ」が好み)。ピアノのテクニックとそれをサポートするヴァイブのテクニック、この組み合わせで本盤のように見事な演奏を繰り広げられたら、“思わず聴き惚れる”という状態に陥らない人がどこにいようか、と言いたくなる。それほど聴き手側の“引き込まれ感”の強い作品であると思う。[収録曲]1. Corcovado2. Jackleg3. Blues We Use4. Harbor Freeway5. De Critifeux6. Nirvana and Dana[パーソネル、録音]Jack Wilson (p)Roy Ayers (vib)Al McKibbon (b)Nick Martinis (ds)1963年2月6日録音。 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2016年05月08日
コメント(0)
アルゼンチン出身のサックス奏者、追悼 80年代の洋楽ナンバーをシリーズでアップしている最中ですが、今回は少し脱線して別の内容の記事にしたいと思います。 昨日、ふと手に取った新聞で目についたのが、ガトー・バルビエリ(ガート・バルビエリ、Gato Barbieri)の訃報でした。今月2日に亡くなったとのことで、享年83歳。昨年11月にも公演をしているそうですが、いつの間にかもうそんな年齢を重ねておられたのですね。 追悼ということでどの曲を取り上げようか迷ったのですが、結局は、最初に聴いて印象に残った曲をという考えに行き着き、この「フィエスタ(Fiesta)」という曲です。個人的には、初めて手にしたバルビエリ盤はベスト盤で、その1曲目がこれだったというものです。曲中のスペイン語の掛け声も含め、ラテンの陽気さや愉しさ(表題の「フィエスタ」は“お祭り”もしくは“パーティ”という意味です)が伝わってきます。 でもって、ガトー・バルビエリの魅力はただ単に“ラテン”や“陽気”かというと、そういうことではないでしょう。この泣きのサックス、哀愁いっぱいの節回しが彼の真骨頂ではないかと思っています(この点については過去記事も参照)。 続いてもう1曲ご覧いただきたいと思います。そうした哀愁のサックスを奏でるガトー・バルビエリが、カルロス・サンタナと共演したという1977年のライヴ映像です。曲はもちろん「哀愁のヨーロッパ(Europa)」。サンタナの曲として有名なナンバーですが、バルビエリも彼のアルバム(1976年の『カリエンテ!』、上記「フィエスタ」も収録のアルバム)で取り上げているナンバーです。 アルゼンチン出身のバルビエリとメキシコ出身のサンタナ。同じラテン系でも、アルゼンチンとメキシコでは感性もバックグラウンドもだいぶと違っていることでしょうが、“哀愁”あるいは“泣き節”が2人を結び付けたということになるでしょうか。あと、余談ながら、きっと共演後の会話はスペイン語だったんでしょうね。 あと、音楽性と関係はないですが、映像や写真うつりの面で、クールでダンディな風貌や立ち振る舞いも印象的なミュージシャンだったとの感想を持っています。ともあれ、『カリエンテ!』を聴きながらこれを書きつつ、ガトー・バルビエリが安らかに眠らんことをお祈りしています。R.I.P.[収録アルバム]Gato Barbieri / Caliente!(1976年) Gato Barbieri ガトーバルビエリ / Caliente 【CD】 ↓こちらはベスト盤です(本文で言及のベスト盤とは異なりますが、表記2曲とも収録)↓ 【ただ今クーポン発行中です】【メール便送料無料】【メール便送料無料】GATO BARBIERI / 20TH CENTURY MASTERS: MILLENNIUM COLLECTION (RMST) (輸入盤CD) (ガトー・バルビエリ) 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2016年04月05日
コメント(4)
サックスのアドリブ演奏の真髄 1950年代の名作居並ぶソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)盤の中でも、とりわけ『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜(A Night At The Village Vanguard)』は、彼のテナー・サックスのアドリブの真骨頂とも言ってよいのではないだろうか。通常、優れたアドリブと言われるものの中には、実際には得意のフレーズをうまく取り混ぜながら組み立てられているものも多い。けれども、本盤のアドリブの瞬発力と創造力は、明らかにその域を超えている。 よく知られているように、本盤は、有名ジャズ・クラブ“ヴィレッジ・ヴァンガード”の初めてのライヴ・レコーディングと言われる。けれども、実際のところ、そこで演じられたライヴ・パフォーマンスがそのまま収録されるという感じではなかったようだ。録音当日は、まず、普段よりも早い時間から店を開け、“午後の部”と“夜の部”の2回の演奏機会を設けたという。さらに、その2回の演奏者はまったく同じメンバーではない。1回目は通常のトリオ(テナーに加えてベースとドラム)というメンバー構成、そして2回目に当たる夜の部では、そのままの編成でドラマーとベーシストが交代し、これに加えて、曲によっては夜の部だけで2度演奏されるということになっている。 もちろん、こうした仕掛けを準備したのは、ブルーノートの主宰者アルフレッド・ライオンであった。つまるところ、ロリンズ初のライヴ盤制作、ヴィレッジ・ヴァンガード初の実況録音というのは、半分本当でありながら残り半分は違っていたということになるのかもしれない。ライヴ録音でありながら、細部の仕掛けは、まるでスタジオ録音のようだった。名盤誕生の理由はこの部分の工夫に起因するところが大きいのかもしれない、などと考えてみたりする。[収録曲]1. Old Devil Moon2. Softly, As in a Morning Sunrise3. Striver's Row4. A Night in Tunisia5. I Can't Get StartedBlue Note 1581[パーソネル、録音]Sonny Rollins (ts)Don Bailey (b, 5.), Wilbur Ware (b, 1.-4.), Pete LaRoca (ds, 5.), Elvin Jones (ds, 1.-4.)1957年11月3日録音。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ヴィレッジ・ヴァンガードの夜 [ ソニー・ロリンズ ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2016年03月23日
コメント(2)
唯一のBN盤にして必聴の名盤(後編) さて、前編に引き続き、コルトレーンの名作『ブルー・トレイン』の続きということで、収録曲などを見ていくことにしたい。。 本作収録中の5曲のうち、唯一オリジナル曲ではなく、小休止的な役割を果たしているのが、4.「アイム・オールド・ファッションド」。…なのだけれど、冒頭のピアノと合わせたテーマ、コルトレーンに続きカーティス・フラー、ケニー・ドリュー、リー・モーガンとソロ回しが続いていくのを聴き進んでいくと、やっぱりいい意味での緊張の糸がずっと張りつめているように思う。本盤は“コルトレーンが喜び勇んで吹いている”みたいに言われることがあるけれども、個人的には、“ただ楽しく吹いている”のではなく、演奏者間でうまく緊張関係が維持されているからこそのコルトレーンのこの演奏につながっているのだろうと感じている。5.「レイジー・バード」は、そもそも曲自体が個人的には大の好みなのだけれど、この完成度の高さもやはり同様の理由から来ているような気がする。 ところで、名盤ガイドの類いで常に取り上げられる本盤だけれども、正直なところ、“最初の1枚”にはあまり相応しくないと個人的には思っている。あくまで一般論かもしれないが、最初に聴くのは、どの楽器に耳を傾けたらよいかがはっきりしている方がいいように思う。その点で(ワンホーンでないという理由で)本盤はコルトレーンだけ聴いてもよく分からない(聴き手の頭の中は???)という風になってしまう可能性が高いように思う。もちろん、この完成度、演奏内容は、“聴かずに死ねない”ものであることは確かなのだけれど…。 そのようなわけで、きっと本盤は“3枚目”とか“5枚目”でいいような気がする。いろんな楽器があり、その組み合わせ、演奏メンバーが生む“雰囲気”(ここでの緊張感)、結果として音という形になって出てくる演奏を聴いてみようという余裕が聴き手側に出た時に、初めて勧められるように思うのだけれど、いかがだろうか。[収録曲]1. Blue Train2. Moment's Notice3. Locomotion4. I'm Old Fashioned5. Lazy Bird[パーソネル・録音]John Coltrane (ts)Lee Morgan (tp)Curtis Fuller (tb)Kenny Drew (p)Paul Chambers (b)Philly Joe Jones (ds)1957年9月15日録音。Blue Note 1577 【2500円以上お買い上げで送料無料】【CD】[UCCU-99009]ブルー・トレイン [ ジョン・コルトレーン ] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2016年03月21日
コメント(0)
唯一のBN盤にして必聴の名盤(前編) モダン・ジャズ・テナーを代表する奏者ジョン・コルトレーン(John Coltrane)の代表盤として、『ソウルトレーン』と並んでよく名の挙げられる超有名盤が、この『ブルー・トレイン(Blue Train)』。いきなり脱線話のようになってしまうが、ブルートレインと聞くと、昭和の感覚で思い浮かべるのは次の二つに一つに違いない。一つは、かつて全国を駆け巡っていた国鉄(現JR)の寝台夜行列車“ブルトレ”(なんでもブルートレインは商標登録されていて、いまだJR東日本などがそれを保持しているとか)。そして、もう一つがジャズ界のこの名盤『ブルー・トレイン』なわけである。いずれも1950年代後半(昭和30年代)のネーミングということになる。 コルトレーンの本盤は、名盤中の名盤としてあちらこちらで紹介される。なので、いまさら語りつくされたかもしれないような、おまけに高尚なもの(?)について語るのはどうかと思わないでもない。けれども、やっぱり素晴らしい盤だけに、本ブログで取り上げるのを避けるというのもどうかと考え、ようやく掲載する決心がついたのでお付き合いいただければ幸いである。 さて、本盤を吹き込んだ1957年のコルトレーンは実に精力的で、20枚を優に超える様々な盤の吹き込みに参加した。例えば、レッド・ガーランドのトリオと録音した『トレーニング・イン』や、トミー・フラナガンらとの『ザ・キャッツ』もこの同じ年の吹き込みである。そうした1957年の活動の頂点とも言えるのが、本盤『ブルー・トレイン』である。 ブルーノートらしい組み合わせの三管の共演の中で、コルトレーンの演奏はもちろん聴きどころである。けれども、残り二管を忘れてはならないように思う。ちょうど前年にクリフォード・ブラウンの死と入れ替わるようにシーンに登場し、のりにのっていたリー・モーガンの冴え具合が素晴らしい(名演とされるこちらの曲を吹き込んだのもこの同じ年)。それから三管の残るもう一つ、トロンボーンで参加しているのは、カーティス・フラーである。1957年はフラーにとっても大忙しの年で、プレスティッジでの初のリーダー作に続きブルーノートでも次々と吹込み(参考過去記事(1) ・(2) ・(3) )をこなしていった年であった。 これら三管の関係は、アンサンブルで随所に見られるように、緊張感に溢れている。表題曲1.「ブルー・トレイン」のアンサンブルによる幕開け、これに続くコルトレーンのソロ、その背後でサポートするトランペットとトロンボーン、そして各楽器のソロという展開は、ドラマチックそのもの。2.「モーメンツ・ノーティス」、3.「ロコモーション」と進むと、テンポにのって進む演奏はもはや止まらない、というか、聴き手の側も頑張ってこのテンションについていかなければ楽しめない(いやはや、そのテンポに引きずり込まれてしまう、といった方が適切だろうか)。 久々に長めの記事になりそうなので、続きは後編で(曲目等のデータは後編に掲載します)。 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ブルー・トレイン+2 [ ジョン・コルトレーン ] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2016年03月20日
コメント(2)
らしからぬ表題+らしい演奏 リー・モーガン(Lee Morgan)の代表盤としてよく言及される『Vol. 3』の後、5か月のインターバルを挟んで同じ1957年の夏に吹き込まれたのが、本盤『シティ・ライツ(City Lights)』という作品である。神童リー・モーガンがわずか18歳にしてシーンに登場し、デビュー作を吹き込んでからブルーノートでは4枚目(サヴォイ盤を含めると5枚目)のアルバム作品となる。 アルバム表題となっている1.をはじめ複数の曲を書き、アレンジャーとして参加して大きな役割を本盤でになっているのはベニー・ゴルソン(Benny Golson)である。既に前作の『Vol. 3』で作曲者・演奏者としてモーガンの作品に参加しており、体制は整っていた。ゴルソンやモーガン自身ではなく、レーベル(ブルーノートのアルフレッド・ライオン)の意向だったのかもしれないが、続く本作ではこの体制を生かしてもう一歩先を目指そうとしたのだろう。ゴルソンは演奏ではなく裏方に回る。そして、そのコンセプトはアルバム表題に明示されているように思う。 それにしても、“都会の灯り”とは、ジャズ・アルバムというよりはポップ・アルバム向きな表題であるように思う。ゴルソンが曲を用意し、天才トランぺッターがその曲の上を軽々と動き回る。そのコンセプトはというと、マンハッタンの夜の灯そのものである。勝手な解釈かもしれないが、筆者の印象では、前半(1.~3.)はそうした街灯りの描写、後半(4.~5.)はその街で繰り広げられている光景を映し出すものであるように思う。 本盤の聴きどころで、個人的に繰り返し聴くのは、アルバム前半部分(1.~3.)。ゴルソン作曲の1.「シティ・ライツ」(ベニー・ゴルソンは他に2.と4.の作曲者でもある)は上述の通り、夜のニューヨークの灯を幻想的に映し出す。続く2.「テンポ・デ・ワルツ」と3.「ユーア・マイン・ユー」までの流れは、見事なまでに都会の夜の灯りを幻想的に浮かび上がらせる。そのようなわけで、夜を連想させる名盤をランキングするならば、ジェリー・マリガンの『ナイト・ライツ』と並んで、本盤は絶対に5指に入れたくなる、そんな1枚だったりもする。[収録曲]1. City Lights2. Tempo de Waltz3. You’re Mine You4. Just By Myself 5. Kin Folks[パーソネル、録音]Lee Morga (tp), Curtis Fuller (tb), George Coleman (ts, as), Ray Bryant (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds) , Benny Golson (arr)1957年8月25日録音。Blue Note 1575 Lee Morgan リーモーガン / City Lights 輸入盤 【CD】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2016年03月17日
コメント(0)
100万アクセス記念 いま聴きたい名曲~拡大版(ジャズ編:その10) 実のところ、100万アクセス記念第2弾のジャズ編、締めくくりは、この曲にしたいと少し前から考えていました。もうだいぶ前に所収のアルバム(過去記事)を取り上げたのですが、この名曲を単独で取り上げていなかったことに気づき、ずっと機会を狙っていました(笑)。 ともあれ、『ブルーズ・ムーズ』に収録の「アイル・クローズ・マイ・アイズ(I’ll Close My Eyes)」をお聴きください。この爽快さが何とも言えない名演だと思います。 ブルー・ミッチェルのおかげでこの曲自体も好きになってしまったのですが、他の奏者によるこの曲の演奏を追加でいくつか紹介したいと思います。まずは、ギターをメインとした「アイル・クローズ・マイ・アイズ」というと、まず筆者の脳裏に浮かんできたのは、ケニー・バレルによるこの演奏(『2ギターズ』に収録)です。 次はテナーでの演奏です。セルダン・パウエル、この人ほど甘い演奏をしながらもしゃきっとした端正さが同時に出る人はそうそういません。演奏時間が短くアドリブが少ないのが残念ではありますが、伸びやかで甘い雰囲気ながらも軟派にはならない「アイル・クローズ・マイ・アイズ」(『セルダン・パウエル・セクステット』に収録)をどうぞ。 でもって、最後は再びトランペット奏者です。ライアン・カイザーの『カイザーII』(2000年録音)に収められた「アイル・クローズ・マイ・アイズ」です。ブルー・ミッチェルとは異なる感じの爽快感を残す、これまた見事な演奏だと思います。 ジャズ編はこれにていったんおしまいとなりますが、“100万アクセス記念・拡大版”はまだまだ続きます。引き続きラテン系ポップス&ロック編をお楽しみいただければと思います。[収録アルバム]Blue Mitchell / Blue’s Moods(1960年録音)Kenny Burrell and Jimmy Raney / 2 Guitars(1957年録音)Seldon Powell / Seldon Powell Sextet(1956年録音)Ryan Kisor / Kisor II(2000年録音) 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ブルーズ・ムーズ [ ブルー・ミッチェル ] 【メール便送料無料】ライアン・カイザー / カイザー2[CD] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2016年02月25日
コメント(0)
100万アクセス記念 いま聴きたい名曲~拡大版(ジャズ編:その9) ボビー・ティモンズ(Bobby Timmons)は、ソウル・ジャズの典型みたいに言われたりもし、きっと毎日のように聴くと元気をもらうのを通り越して聴き手側が疲れてしまうんじゃないかと思ったりもします。けれども、その一方で、筆者にとっては“突然、無性に聴きたくなる”タイプのピアニストです。 今回は「モーニン(Moanin’)」を取り上げますが、他にもキャノンボール・アダレイのクインテットによる「ジス・ヒア(ディス・ヒア)」(収録盤過去記事)や「ダット・デア」(収録盤過去記事)の作者としても有名です。まずは、1960年録音の、ティモンズ自身のトリオでの演奏をどうぞ。 言うまでもなく、この曲はアート・ブレイキーによって広く知られています。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ(Art Blakey and the Jazz Messengers)の『モーニン』所収の「モーニン」もお聴きください(ピアノを演奏しているのは、作曲者のボビー・ティモンズです)。 今回はもう一つ、ライヴ演奏の様子も追加したいと思います。1985年、ニューヨーク市のタウン・ホールでの晩年のアート・ブレイキーの姿です(ブレイキーは1990年に71歳で亡くなっています)。ボビー・ティモンズは1974年に38歳の若さで亡くなっていますから、この映像でのピアノ演奏は別人で、ウォルター・デイヴィス・Jr.(参考過去記事、この人もブレイキーと同じ年に鬼籍に入りました)がピアノを弾いています。 [収録アルバム]Bobby Timmons / This Here Is Bobby Timmons(1960年録音)Art Blakey and the Jazz Messengers / Moanin’(1958年録音) 【2500円以上お買い上げで送料無料】【CD】[UCCO-99033]ジス・ヒア [ ボビー・ティモンズ ] 【楽天ブックスならいつでも送料無料】モーニン [ アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ ] 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2016年02月24日
コメント(2)
100万アクセス記念 いま聴きたい名曲~拡大版(ジャズ編:その8) どうもここのところ更新ペースが速いのですが、それだけ聴きたい曲が次々に浮かんできているということなのかもしれません。今回は少し趣向を変えてこんな曲を取り上げてみますが、よろしくお付き合いください。 さて、日本のジャズはあまり聴かないし、フュージョン的なのも得意ではありません。けれども、“ナベサダ”こと渡辺貞夫の曲はいくつか気になるのがあって、頭の片隅から離れないというのがあります。今回はその一つをお届けします。1984年に録音・発表された『ランデブー(Rendezvous)』に収録の表題曲「ランデブー(Rendezvous)」です。 この曲が含まれるアルバムは、内容のみならず、ジャケットも洒落ていて、ヒット盤(ビルボードで2位)となりました。渡辺貞夫という人は1960年代にアメリカに渡り、日本のジャズ・ミュージシャンとしての先駆的活動に加え、独自の音楽を追求していった人です。今回は、この曲の発表当時のライヴ演奏の様子もご覧ください。 そんな彼も今年(2016年、既に誕生日を迎えておられます)で83歳。アルバム制作もライヴ活動もまだまだたくましく活躍されているようで、末永くお元気でいていただきたいものです。[収録アルバム]渡辺貞夫 / ランデブー(Rendezvous)(1984年) [CD] 渡辺貞夫(as)/ランデブー 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2016年02月22日
コメント(0)
100万アクセス記念 いま聴きたい名曲~拡大版(ジャズ編:その7) ミシェル・ペトルチアーニ(Michel Petrucciani)は、フランス出身のジャズ・ピアニストで、先天性の生涯を克服して歴史に名を残す奏者となり、1999年に36歳で亡くなっています。1980年代初頭から活躍しその名を知られるようになりましたが、筆者が初めてペトルチアーニの作品を聴いたのは、それよりもずっと後でした。今回は、初めて聴いた彼の曲、ということで、この「ルッキング・アップ(Looking Up)」です。 のびのびとしたタッチで始まり、鍵盤楽器らしいピアノを聴かせるかと思いきや、のってくると打楽器的な要素を含む激しいピアノタッチへと変わっていく…。この表現力は、一聴でノックアウトものです。 でもって、これがライヴ演奏だとどうなるのか。その質の高さは目をみはるばかりなのです。以下は、1992年のライヴ演奏の様子です。 ベースがエレキなのが少々残念ではあるのですが、まさしく文句のつけようのない好演です。きっと初めて聴いた作品が『ミュージック』というのもよかったのでしょう(最初にどの盤を聴くかは偶発性もあるので、個人的には、ペトルチアーニ作品とのいい出会いを偶然体験できたというわけです)。しかも冒頭がこの曲で、ペトルチアーニの天才度がよく示された、そして個人的に思い入れのあるナンバーであるといったところです。[収録アルバム]Michel Petrucciani / Music(1989年) 【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤は全品ポイント5倍!】【輸入盤】Music [ Michel Petrucciani ] 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2016年02月21日
コメント(0)
100万アクセス記念 いま聴きたい名曲~拡大版(ジャズ編:その6) さて、折り返し地点の6回目は、少し趣向を変えて、アート・ペッパー(Art Pepper)によるちょっと変わったナンバーです。1982年はセロニアス・モンク、ソニー・スティットに加え、アート・ペッパーと、大物ジャズ奏者が相次いで亡くなった年でした。若き日の輝き(参考過去記事(1) ・(2) )、麻薬中毒によるブランク、50歳代半ばでの死と波乱万丈の人生でした。彼が亡くなる前月(5月)と前々月(4月)にはジョージ・ケイブルスとの録音が行なわれていましたが、これらが遺作となってしまいました。今回はそのラスト・レコーディングから、「ゴーイング・ホーム(Goin’ Home)」です。 お聴きいただいてすぐわかるように、いわゆる「家路」あるいは「遠き山に日は落ちて」、すなわちドヴォルザークの「新世界より」です。英語の詞をつけた“Goin’ Home”としては1922年に発表されているそうです。 今回は一気にジャンルを超えて、もう一つ、本田美奈子によるこの曲をご覧いただこうと思います。21世紀に入り、クラシックとのクロスオーバーに取り組んでいましたが、2005年、急性白血病により38歳の早すぎる生涯を閉じることになりました。彼女の生前最後のシングルとなった「新世界」をどうぞ。 [収録アルバム]Art Pepper & George Cables / Goin’ Home(1982年録音)本田美奈子 / 時(2004年リリース) Art Pepper アートペッパー / Goin' Home 輸入盤 【CD】 【送料無料】時/本田美奈子.[CD]【返品種別A】 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2016年02月21日
コメント(3)
100万アクセス記念 いま聴きたい名曲~拡大版(ジャズ編:その5) 「処女航海」に続き、ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)でもう1曲です。1995年、彼は、マイケル・ブレッカー(テナー、ソプラノ・サックス)、ジョン・スコフィールド(ギター)らと共に、『ザ・ニュー・スタンダード』を吹き込みます。その名の通り、従来とは違う種類の曲をジャズ・スタンダードとして取り上げたもので、相変わらずジャズ界をリードするチャレンジ精神が発揮されたものでした。 その中で筆写が最初に魅かれたのは、「ニュー・ヨーク・ミニット(New York Minute)」という曲でした。アルバムがリリースされた1996年、日本でのライヴの模様をご覧ください。 原曲は1989年のドン・ヘンリーのソロ・アルバムに収録されていた曲です。言わずもがな、イーグルスのメンバーとして、あの「ホテル・カリフォルニア」の声として知られる人物でもあります。折角ですので、アルバム『エンド・オブ・ジ・イノセンス』に収められたドン・ヘンリーの元のヴァージョンもどうぞ。 [収録アルバム]Herbie Hancock / The New Standard(1995年録音)Don Henley / The End Of The Innocence(1989年)←原曲Eagles / Hell Freezes Over(1994年)←原曲ライヴ 【楽天ブックスならいつでも送料無料】ザ・ニュー・スタンダード +1 [ ハービー・ハンコック ] 【メール便送料無料】ドン・ヘンリーDon Henley / End Of The Innocence (輸入盤CD)(ドン・ヘンリー) 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2016年02月19日
コメント(0)
100万アクセス記念 いま聴きたい名曲~拡大版(ジャズ編:その4) これまた知名度の高いナンバーですが、今回もよろしくお付き合いください。 ジャズの世界に新たな流れが形成されていった時代、ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)による『処女航海(Maiden Voyage)』の表題曲です。このアルバム作品自体が、海をテーマにした各曲から構成されていますが、タイトル通りの海とそこを進む船の静と動が見事に表現された表題曲をまずはお聴きください。 “新主流派”という括られ方をしたりしますが、特定のジャズ・ミュージシャンたちが新た音楽を作り、新たな流れを作ってそれでおしまいだったわけではありませんでした。今や死語(?)となった“ジャズ・ロック”という言葉からもすぐに連想されうるように、1960年代~70年代前半にかけては、一度は別の道を歩んだはずのジャズとロック音楽が接触する場面もありました。一般にロック側からのリスポンスは少なかったと言われたりもしますが、BS&T(ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ、参考過去記事)によるこの曲の解釈なんかを聴いていると、本当にいろんな“クロスオーバ―”の可能性に満ち溢れていた時代があったんだな、というのを実感します。 [収録アルバム]Herbie Hancock / Maiden Voyage(処女航海)(1965年録音)Blood, Sweat & Tears / New Blood(1972年) 【楽天ブックスならいつでも送料無料】処女航海 [ ハービー・ハンコック ] Blood Sweat&Tears ブラッドスウェット&ティアーズ / New Blood / No Sweat / More Than Ever 輸入盤 【CD】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2016年02月18日
コメント(2)
全500件 (500件中 151-200件目)