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安部公房『内なる辺境/都市への回路』出た安部公房『内なる辺境/都市への回路』(中公文庫)が復刊されました。これまで別々だった著作を一つにまとめたもので、私にとっては思いがけない贈りものです。安部公房は卒論に選んだ作家であり、すべての初版単行本を持っていました。またデビュー作『壁』には、直接サインももらっていました。しかし大学時代に、サイン本もふくめてほとんどを古本屋に売ってしまいました。貧しい時代でした。今でも残念に思っています。山本藤光2019.04.30
2019年04月30日
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069cut:支店長会議での提案――Scene10:全国営業会議影野小枝 引き続き支店長会議の午後の部です。新谷営業部長が、新たな営業方針をお話ししています。ちょっとだけのぞいてみます。新谷 社長宛てにきたSSTの奥さんたちからの、お礼状を読ませてもらいました。SST事務局では、社長名で奥さん宛てに、花と手紙を届けていたようです。長期の出張を続けるSSTメンバーを支えてくれている、奥さんや家族への感謝の印です。この話を聞いて、「Rファミリー」の心は消えていないと実感しました。みなさんの熱い思いを真摯に受け止め、社長は舵を元に戻してくれました。これまでの甘い体質を改め、私たちは社長の期待に応えなければなりません。河野 私も手紙を読んで泣いてしまいました。家族があってのSSTだったのです。新谷 みなさんに提案があります。毎年全営業部員を集めている全国営業会議に、受賞者の家族を招待したいと思います。当然予算の都合があるので、全国営業会議は受賞者だけにきてもらうように改めたいと考えています。吉岡 家族の招待は大賛成です。受賞者への拍手をするために、全員を集める意味はないと考えます。倉島 刺激になってもらいたいので受賞の晴れ舞台を見せているのですが、刺激にも何にもなっていないメンバーもいるわけです。河野 新人MRは、全員参加させる方がいいと思います。きっと大きな目標になると思いますから。新谷 では次回の全国営業会議は受賞者とその家族、そして新人MRだけの集まりとさせていただきます。漆原部長、それでいいですね?漆原 家族同伴の表彰式ですか、最高の舞台ができましたね。ところで名称は変えなければなりませんね。全国営業会議ではなく、R製薬リボンアワードなんていかがですか?新谷 いいね、それ。ずっとハイカラになった。影野小枝 家族同伴の表彰式ですか。小さなお子さんたちの走り回っている姿が、目に浮かびます。
2019年04月30日
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しがらみこれも世間の「しがらみ」だから、と用いられる「しがらみ」の語源は意外なものでした。――水流を塞(せ)き止めるために、杭を打ちならべて、これに竹木や柴などを渡した柵のことをいう。『万葉集』には、「明日香川しがらみ渡し塞かませば流るる水も長閑(のど)にかあらまし」とある。(『語源2』青春出版社文庫)山本藤光2019.04.30
2019年04月30日
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007:夢と妄想瀬口家の夕食は、店番の関係で二組に別れる。「キンキじゃないか、今日は豪華な夕食だな」 食卓についた兄の恭一は、ことさら明るくいった。恭二のことは、すでに母親から聞かされている。店にお客さんらしく、父の大きな声が聞こえてくる。恭二は父の声に覆い被せるように、きっぱりと告げた。「母さん、おれ、F高へ行かない」「野球を諦めることにしたの?」「辞める」「おいおい恭二、そんなに簡単に夢を諦めてしまっていいのか?」 口をはさんだ兄に向かって、恭二は自分にいい聞かせるように告げる。「いつまでもかなわない夢に、しがみついていたくないんだ」「恭二、おまえは強いよ」「今は空っぽだけど、野球以外の夢を探してみる」 恭二は兄の言葉を、胸のなかで転がしてみる。そしてかなわぬ夢を追いかけるのは、単なる妄想だろうなと思う。夢って努力すれば、届くところにあるものだろう、とも思う。さっき開いた猪熊勇太からのメールを思い出す。――恭二。ずいぶんあっさりとした決断だな。おまえが行かないのなら、おれもF高へは行かない。おまえがどんな新しい夢を拾うかを、見届けなければならないからな。勇太。 母と交代に、父が食卓につく。そして悲しげな声を出した。「恭二、母さんに聞いたけど、野球と決別するんだな。未練を断ち切るのは難しいけど、おまえの決断を尊重しよう」「おれ標(しべ)高へ行く。そこで夢中になれる、何かを探す」「久しぶりで見たけど、詩織ちゃんきれいになったな」 胸がチクリとした。恭二は黙って、脂がのったキンキの身を口に運ぶ。そして夢中になれる何か、の存在を意識しはじめている。今のところそれは、詩織の存在なのかもしれない。
2019年04月30日
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「12223」の単語は?「ナンクロ」でどうしても解けない問題がありました。「12223」の並びの単語です。仕方がないので降参してナンクロの検索サイトに、この数字を打ち込みました。あっという間に答えが出てきました。この並びの単語は一つしか存在していませんでした。前にも書きましたが、クロスワードよりも、ナンバークロスワード(ナンクロ)の方が性に合っているようです。毎日1問ずつ解いています。解答は末尾に書きますので、ここからは活字から目を上げて、考えてみてください。判った人は閃きの天才です。答えはカタタタキでした。本日で平成最後の投稿となります。明日からは令和になるんですね。山本藤光2019.04.30
2019年04月30日
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阿部昭『天使が見たもの』出た阿部昭『天使が見たもの』(中公文庫)が出ました。本書は「少年小景集」とサブタイトルがついてます。表題作はこれまでに、沢木耕太郎編『右か左か・日本文学秀作選』(文春文庫)やアンソロジー『年の眼』(光文社文庫)などに収載されていました。私は『子供部屋』(集英社文庫)とともに、『天使が見たもの』を高く評価していました。これでやっと書評を発信できます。再読するのを楽しみにしています。山本藤光2019.04.29
2019年04月29日
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068cut:新谷営業部のスタート――Scene10:全国営業会議影野小枝 新谷営業部の支店長会議をのぞいてみます。今回から河野さんが札幌支店長として参加しています。札幌の杉本支店長は、大阪支店長になりました。新谷 いろいろあったけれど、ようやくすべてが元に戻りました。体制刷新のためにみんなで力を合わせて、ようやくここまできたというのが偽らざる実感です。ただ一つ元のままで困っていることがあります。それはメーカーランキングです。4年後に19位を目指しているわけですが、1年間で順位は3つ上がっただけです。現在35位。まだまだ遠い道のりです。では今回から参加してくれた河野・札幌支店長にあいさつしてもらいます。河野 SSTリーダーをしていました、札幌支店の河野です。時計の針を逆戻ししている前体制に憂慮していましたが、社長が本部長を兼務し、新谷部長が営業部を引っ張る体制が生まれ、胸をなでおろしています。及ばずながら、懸命にがんばり、少しでもメーカーランキング19位の目標に、貢献させていただきます。杉本 大阪支店は前任の新谷部長が種まきをしてくれており、順調にいけば大阪府内でランキング10位以内は可能です。問題は和歌山や兵庫にあります。しばらく様子をみて、ここのてこ入れをしたいと考えます。吉岡 やっと業務課の補充をいただき、営業リーダーのMR職兼務も解いていただきました。これで実績が上がらないはずはない。東京支店がこけたら甚大な被害をおよぼしますので、目いっぱいがんばります。倉島 福岡支店はSSTが入ってくれた、北九州が引っ張ってくれています。SST効果は他課にも影響を及ぼし、全体に勢いが出てきました。九州地区のメーカーランク32位を、あと1年で20位台の前半まで引き上げます。河野 ありがたいご報告です。SSTはみなさんの熱い支援で、R製薬の営業組織に大きな風を起こしました。もうすぐ終了を迎えますが、支店長が先頭に立って更なる風を起こさなければなりません。
2019年04月29日
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さしすせそ調味料は「さしすせそ」の順に入れるのが好ましい。これは主婦なら誰でも知っていることです。「さしすせそ」は、砂糖、塩。酢、醤油、味噌のことです。科学的な正当性は長くなるので紹介為ません。ところで、結婚式のスピーチでも「さしすせそ」は時々使われています。昔の主婦は「さ行」でしたが現在の主婦は「か行」に専念しています。「さ行」も忘れないでください、と結ばれます。このあいさつは、丸谷才一が書いたものです。出典は忘れました。さ行:裁縫、舅姑、炊事、洗濯、掃除か行:カルチャー、教育、クッキング、健康、コミュニケーションか行については、記憶が定かではありません。丸谷才一が書いたものと、何かが違うかもしれません。山本藤光2019.04.29
2019年04月29日
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006:穴吹家の決断 穴吹貞雄の家は、虹別で酪農業を営んでいる。長男の健一は、工面して高校へ入れた。健一の下には、標茶中学三年の弟・健二と双子の姉妹の茜(あかね)と萌(もえ)がいる。姉妹は、虹別小学校の四年生である。 貧しい夕食を終えて、健二は父・貞雄に食い下がっている。「兄ちゃんは高校へ行かせたのに、おれはなぜ行かせてもらえないんだ」「兄ちゃんはうちの跡継ぎだから、酪農や農業の勉強をしてもらわなければならない。おまえは、学校で就職先を探してもらえ」「高校へ行きたい!」「うちには、もうそんな余裕はない」 二人のやり取りに耐えかねて、健一が口をはさんだ。「おれ、高校を中退して、ここを手伝う。だから、健二は高校へやってもらいたい。健二はおれよりも、ずっと優秀だ。どこかに就職するにしても、中卒では肩身が狭い。なあ、父さん。おれがバリバリ働いて、健二の入学資金は稼ぐから」 健二は泣き出した。おろおろしていた母の美津子は、泣きながら貞雄に訴えた。「私が毎日、卵の行商に行く。だから、健二を高校に行かせて。健一も、せっかく入った高校を辞めたらダメだ」「おれ、定時制に編入する。そうしたら、昼間はここで働ける。だから、健二を高校に行かせて」「健一がそうしてくれれば、母さんは標茶町へ働きに行ける。健一、本当にそうしてくれるのかい?」「高校を中退しないで、この問題を解決するには、それしか方法はないさ」 貞雄は腕組みを解き、咳払いをしてからいった。「母さんも健一も、よくいってくれた。おれがふがいないばかりに、みんなに迷惑をかける。すまん。健一は定時制への編入。母さんは標茶で仕事を探す。おれはもっともっと働く。だから、健二、標高へ行け。金はみんなでなんとかする」 健二は、しゃくり上げて泣いている。美津子は健二の肩を抱き、「健二、よかったね。しっかりと勉強しなさいね」と泣きながら告げた。 健一は大好きな、漫画の定期購読を止める決心をした。一円でもムダにはできない。何としてでも、弟を高校へ行かせたい。健一はまだ泣き止まない弟に視線を向け、貧乏の底にわずかな光を見出している。
2019年04月29日
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孫たち帰国タイから遊びにきていた孫たちが帰国し、我が家に静寂が戻った。桜の花びらを押し花にしていた小2の孫娘は、友だちから頼まれたからといっていた。小6の孫娘はタイ語、日本語、英語、中国語まで習っているという。目標は4カ国をマスターすることらしい。桜の季節にやってきて、アジサイの季節に戻っていった。毎年約1ヶ月きてくれる孫たちは、賑やかさを失った爺婆に、幼いエネルギーを教えてくれる。山本藤光2019.04.29
2019年04月29日
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新訳版『ドルジェル伯の舞踏会』出たラディゲは、『肉体の悪魔』(光文社古典新訳文庫)を紹介しています。しかし新訳版『ドルジェル伯の舞踏会』(光文社古典新訳文庫、渋谷豊訳)が出ましたので、こちらも読んで追加したいと思っています。ただしkindle版がまだ出ていないので、読むのはそれからです。とにかく拡大鏡で読むのは,非常に疲れます。山本藤光2019.04.28
2019年04月28日
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067cut:居酒屋での祝杯――Scene09:営業本部の嵐漆原 営業部長就任おめでとう。新谷 いや、きみこそ、よく耐えてくれた。そしてSSTプロジェクトリーダー就任、おめでとう。漆原 あの血判書がなければ、こうはなっていなかったと思う。支店長たちのパワーのお陰だよ。新谷 森永のタヌキは総務本部長か。辞めさせられなかったのかな。影野小枝 突然、失礼します。筆者が気にしているのでひと言。SSTは実話ですが、このあたりの話はフィクションですので、犯人探しはしないでくださいね。漆原 何か聞こえなかったかい?新谷 隣の部屋の声だろう。漆原 日報の復活。営業リーダーのプレイイングの廃止。支店業務課の増員。すべて元に戻してくれたな。さすが新谷だよ。釧路空港へ向かう車中で、きみに読んでもらった作文のこと覚えているかい?新谷 札幌支店の山崎くんのこどもが書いた作文だろう。あれを読んで泣いてしまったよ。そうか、会社と家族はつながっているんだ、と思ったらジーンときた。漆原 何がRファミリーなんだ。磯貝くんが社内報に書いていた世界は、どこに消えてしまったんだ。タヌキとヒラメが、土足で乱入してきて、滅茶苦茶にしてしまった。新谷 3匹のヒラメは、総務と人事と開発に飛んだ。社長が当分は営業本部長を、兼務するといってくれている。きみは企画部長も代行するんだろう。統括部長の代行は柳田くんがあたるとのことだ。漆原 まずは営業部の再建だな。大いに期待している。新谷 SSTはもうすぐ終りになる。そうしたらきみと、席を並べられるかもしれない。漆原 まあ、お互いがんばろう。影野小枝 何だか胸が熱くなりました。漆原さん、辞めなくてよかったですね。またチャンスをいただいたのですから。
2019年04月28日
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ハッケヨイ相撲の行司は「ハッケヨイ」といいます。これは力士を鼓舞するためですが、この「ハッケヨイ」には、こんな意味がありました。――「ハッキョイ」(発気揚々)ということばがつまったもので、気を高めて全力で戦うべしといった意味なのだ。(『天下無敵のネタの宝庫雑学事典』永岡書店)「ハッケヨイ」は「当たるもハッケイ」のことだとばかり思っていました。もうすぐ相撲が始まります。行事の声に耳を澄ませてみましょう。「ハッキョイ」と聞こえるかもしれません。山本藤光2019.04.28
2019年04月28日
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005:月夜の散歩「恭二、詩織ちゃんだよ」 階下から、父の声が聞こえた。スマホを胸に抱いたまま、うとうとしていたらしい。恭二はベッドから飛び起き、階段を駆け下りる。恭二の家は、小さな調剤薬局を経営している。両親は恭二に薬剤師の資格を取らせて、店を継いでもらいたいと切望している。兄の恭一は成績が優秀で、北大医学部を受験する予定だ。それゆえ、恭二に寄せる親の期待は大きい。 詩織は薬局カウンター前の、ソファに座っていた。昼間見たのと同じ、黄色いセーターを着ている。「やあ」恭二は、並んで腰を下ろす。「びっくりしちゃって、返信しないで飛んできちゃった」 走ってきたのだろう。詩織の声はくぐもっており、肩が激しく上下に揺れている。「ごめん、心配かけた。歩きながら話そう」 恭二は詩織をうながして立ち上がると、調剤室の父に告げた。「ちょっと出かけてくる」「もうすぐ、夕ご飯だぞ」「わかってる」 九月の戸外は冷凍庫の扉を開けたときのように、冷たい風を身体に浴びせかけてくる。満月だった。足下のおぼろな影を踏みながら、二人は黙って歩いた。歩みに合わせるように、二人の口からは白い吐息がこぼれた。駅前の商店街を抜けたところに、「藤野温泉ホテル」の案内看板があった。「おれ、めちゃくちゃ混乱している」「もうピッチャーはできないの?」「完治するには、時間がかかるようだ。重度の損傷だっていわれた」「恭二、ぐずぐず未練を持ってちゃダメ。野球をどうするのか、はっきりといいなさい」 立ち止まって問いつめる詩織の目に、涙がたままった。「おれ、断念する。F高へも行かない」「恭二、かわいそう」 詩織は恭二を見上げて、深いため息をついた。そして独り言のようにつぶやいた。「野球がなくなる恭二は、想像できない」「小学生のときから、野球ばっかりだったからな」詩織の指が遠慮がちに、恭二の右手に触れた。恭二はそれを握りしめる。そのとき恭二は手をつないだのは、初めてだったことに気がつく。詩織の手は、温かかった。痛んだ自分の心を、包みこんでくれるような確かさがあった。「恭二と一緒に、標高(しべこう)へ通えるの?」「もう迷っていない。標高にも入学願書を出してあるから、明日から受験勉強をしなければならないな」「安心した。恭二はぐずだとばかり思っていたけど、見直しちゃった。野球に代わる何かを、探すお手伝いしてあげるね」「まずは受験だ。おれ、受験勉強はしたことがない。大丈夫かな?」「私が特訓してあげる。農業科は競争率が高くて難関だけど、普通科は楽勝だよ」 目の前に、藤野温泉ホテルのネオンが見えてきた。玄関前には、マイクロバスが停まっている。詩織の父・敏光が、応対に出ていた。詩織はあわてて、恭二の手を離す。「恭二、『月夜の散歩』をプレゼントするわ」 そういうなり、詩織は歌いはじめた。――落葉のじゅうたん敷き詰められた/月夜の小道を散歩する/ムーンライトに照らされて/黙って黙って寂しく歩く/頬に涙がきらりと光り/リリリリ、リーリーとコオロギ鳴いた「これ恭二のお兄さんが、作った曲だよね。去年の文化祭で一緒に聴いた。ちょっと寂しいけど、すてきな曲。私から、今の恭二へのプレゼント。落ちこんじゃダメよ」 詩織の姿が見えなくなるまで、恭二は立ちつくしていた。手のひらに、詩織の温もりが残っていた。メールでは平気で「大好き」と書いていたが、それを形にすることができないでいた。初めて手をつないだ。そう思うと、心臓がピクっと跳ね上がった。
2019年04月28日
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大型連休が始まる大型連休が始まりました。企業人時代は、休日を楽しみにして働いていたように思います。もっとも、現在は毎日が連休ですが。さてしっかりと計画を立案したでしょうか。働いていたときは、休みになったらあれがやりたいこれがやりたいと、思い巡らせていたことでしょう。ぜひやるべきことを書き出してみてください。山本藤光2019.04.28
2019年04月28日
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プーシキン『大尉の娘』購入プーシキン『大尉の娘』(光文社古典新訳文庫、坂庭淳史訳)を購入。プーシキンは書評を書いていない作家ですので、じっくりと味わいたいと思います。本書は一度新潮文庫(中村白葉訳)で読んでいます。2つの訳文の違いに触れるのが楽しみです。山本藤光2019.04.27
2019年04月27日
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066cut:社長室――Scene09:営業本部の嵐影野小枝 片岡部長の退職から半年。支店長たちは浮き足だっています。ひたすら宣伝回数を増やせ。何としてでも売ってこい。ノルマ、ノルマの連呼のなかでは、営業のモチベーションは上がりません。内勤職の肩叩きも終わりました。森永本部長室には、3匹のヒラメが入っています。あのメンバーに復讐したい。そんな漆原さんは、久しぶりで社長に呼ばれました。漆原さん、退職の勧告だと覚悟を決めました。社長 暇そうだな。漆原 はい、何もすることがありません。社長 森永本部長は相当乱暴に、営業の尻を叩いているようだね。実は全支店長連名での、血判状が届いている。宣伝回数の水増し。支店業務担当のリストラでの混乱。営業リーダーがプレイイングになった弊害。経費と販促資材の大幅な削減。このままでは支店の運営ができないと書いてある。全員の辞表が添えられていた。漆原 ……。社長 どう打開すべきか。きみの率直な意見が聞きたい。漆原 片岡部長も三枝部長もR製薬1期生として、会社を支えてきた方です。その2人が辞職に追いこまれたのですから、営業現場のショックは測り知れないものです。みんな会社が大好きです。自由で、明るく、健康的で……。社長 わかった。来月から私が営業本部長を兼務する。森永くんは別のポストについてもらう。だからきみには、せっかく船出したSSTの面倒をみてもらいたい。営業部長には大阪支店長の新谷くんになってもらう予定だ。そんな関係で河野くんをSST責任者からはずして、どこかの支店長になってもらう。つまりSST責任者のポストが空いてしまうわけだ。どうせ暇だろう。またひとがんばりしてくれないか。影野小枝 漆原さん、泣いています。社長は漆原さんの肩を暖かく叩きました。営業本部に蔓延している肩叩きとは別次元の、とても優しい叩き方です。
2019年04月27日
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ものもらい目が腫れる病を「ものもらい」といいます。私は誰かからうつされた意味だとばかり思っていました。ところが違っていました。昔は「ものもらい」にかかったら、他の家から食事をもらえば治るとされていました。これは栄養のかたよりによって発病するので、他の家の食事で不足している栄養を補えるという発想によるものです。(『天下無敵のネタの宝庫雑学大事典』永岡書店おまとめました)山本藤光2019.04.27
2019年04月27日
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004:耳慣れない診断名恭二と勇太の壮行試合は、標茶中学校の野球グラウンドで開催された。対戦相手は、隣町の磯分内(いそぶんない)中学校である。ネット裏には、詩織がいて理佐がいた。恭二の父・恭平の姿もあった。恭平は息子の中学最後の勇姿を見たくて、店番を妻・園子に託してきていた。底冷えのする、日曜日だった。校庭のナナカマドの木は、赤い実をつけていた。詩織は黄色いセーター姿、理佐は緑のハーフコートを着て、同色のマフラーをしていた。勇太は目ざとく、理佐の存在を認めていた。「理佐ちゃんが、きてくれている。気合いが入るな」 勇太は快活にいって、拳で強くミットを叩いた。乾いた音が、朝靄のなかに響いた。「色気は試合がすんでからだ」恭二にたしなめられても、勇太はまだでれでれしている。恭二は中学最後の野球とあって、意気ごんで試合に臨んだ。勇太を相手にマウンドで何球か投げているとき、肩に違和感を覚えた。寒いせいだろうと思って、恭二は構わずに投げた。捕手の勇太も、いち早く恭二の変調に気づいていた。何度もマウンドに足を運び、「大丈夫か?」と肩の調子を質問している。そのたびに恭二は、「大丈夫」と答えていた。 九回、最後の打者への初球を投げたとき、恭二の肩に激痛が走った。恭二はそのままマウンドに、しゃがみこんでしまった。マスクを外して、勇太は素早く駆け寄った。「肩が動かない」 額から脂汗がしたたり落ち、左手はしびれたままだった。父の恭平は、マウンドに駆けつけた。「病院へ行くぞ」 父は恭二を抱えて、病院に向かった。さっきからうつろな目は、活字の波を泳いでいるだけである。上方肩関節唇損傷。初めて耳にする診断名は、両手を広げて行く手をふさいでいる。もうボールを投げてはいけない。手術で完治する可能性もあるが、一年間はリハビリに費やす必要がある。ただし手術には、大きなリスクが伴う。頭のなかで医師の言葉を、何度も並べ変えてみる。医師の言葉を耳にしたとき、恭二は何かが折れる音を聞いた。生まれて初めて味わう挫折感。震える肩に置かれた、父の手がうっとうしかった。恭二は天を仰ぎ、「誤診に違いない」という言葉を飲みこむ。目の前の医師の姿が、急に遠くなる。損傷のない方の肩に置かれた、父の手に力が入ったのを感じた。とたんに、意識が遠のいた。気がついたときは、病院のベッドで点滴を受けていた。家のベッドで仰向けになり、恭二は何度も医師の最後通牒(つうちょう)を思い浮かべる。――手術をしても完治する確率は低い。――野球を断念することだね。 誤診に決まっている。恭二は浮かんでくる医師の言葉を、そのたびに拒絶する。しかしその言葉は、水に沈めたコルクように、いくら押してもすぐに浮かび上がってくる。突然しゃっくりが出る。恭二はそれで、自分が泣いていたのだと気がつく。野球を失っては、F高へ行く意味はない。肩への不安の少ない、野手へのコンバートはどうだろうか。絶望の泥沼のなかに手を突っこみ、恭二は野球への未練をつまみ出す。そしてすぐに、それを放り投げる。打つのはからっきしダメなのは、自分が一番よく知っていた。ただ持っていただけの新聞を放り投げ、恭二はスマートフォンを開く。着信はない。階下からは、魚の煮物の匂いが漂ってくる。母はおれの好物を、用意しているらしい。恭二はそれが母の心からの激励なのか、願いがかなってのお祝いなのかと、ひねくれた思いを脳内天秤にのせてみる。――大好きな詩織。応援ありがとう。無様な姿を見せて、心配かけた。もう野球はダメらしい。恭二。一通を送信した後、恭二はもう一通の入力をはじめる。――勇太。投げてはいけないといわれた。ディエンドだよ。おまえとは、もうバッテリーを組むことができない。おれの分まで、F高で頑張ってくれ。恭二。
2019年04月27日
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はやぶさ2の快挙朝刊に「はやぶさ2」が「リュウグウ」の地表に金属弾を撃ち、生まれたクレーターの写真が掲載されました。新聞では不鮮明なので、ネット検索をしてみました。感動的な画像でした。5月下旬には飛散した石や砂を採取するそうです。この世界初の快挙には、まだまだ続きがあるのです。それにしても、日本人として誇らしい。無事の帰還を祈ります。山本藤光2019.04.27
2019年04月27日
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福田和也『平成批評』は読み応えあり独断的な書評を展開する福田和也は、あまり好きな評論家ではありません。近著『平成批評』(角川新書)も、いつものように辛口でした。しかし知らず知らず平成という時代に汚染されてきた国家や日本人を批判する論理に、納得できることが多々ありました。自分は甘いかも知れない、と字画している人にはお勧めです。山本藤光2019.04.26
2019年04月26日
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065cut:窓際から――Scene09:営業本部の嵐影野小枝 漆原さんと河野さんは居酒屋にいます。片岡営業部長、三枝管理部長は退職してしまいました。漆原企画副部長の席は、窓際に移されています。そんな漆原さんに声をかけたのは、河野さんでした。河野 2人の尊敬していた部長が辞めてしまい、漆原さんも恵まれない環境に押しやられてしまいました。うちの会社はどうなってしまうのでしょうか。漆原 コンサル会社は、支店長のインタビューを終え、営業リーダーをはじめたようだ。これが済んだら大人事異動がはじまる。新谷(大阪支店長)がいっていたけど、数字を前面に「なぜこれしか売れていないのか」と、ひどく高圧的らしい。さらに「営業リーダーをプレイイング(MR職兼務)にすることに賛成か否か」と、必ず質問されるらしい。まるで踏み絵だよ。河野 私のところにも、SSTを営業本部直轄にできないか、との打診がありました。以前の失敗例を説明し、社長直轄でなければならないと説明しました。漆原 成功を横取りしたいんだな。でもSSTは社長が手放さない。社長の信念で立ち上がったのだから。 ◎漆原の日記窓際族に転落してから3カ月になる。今日も森永に呼ばれた。露骨に辞めろといわれた。あのとき、片岡部長や三枝部長と一緒に辞めていたら、どんなに楽だったかと後悔している。売り言葉に買い言葉で、「あんたが辞めるのを見届けてやる」と吐き捨ててしまった。影野小枝 この日記からさらに3ヶ月後、事態は急展開します。コンサル会社のインタビューは完了し、支店長会議は数字の追求の場に変わりました。全営業リーダーがプレイイングになり、支店の業務の人数も半分になってしまいました。
2019年04月26日
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未亡人夫に先立たれた夫人を「未亡人」といいます。この漢字の意味がわかりませんでした。解説がありました。意外なものです。――本来は「夫が死んだのに後も追わずに未だ亡くならない」、夫に死に後れたことを自嘲して使うことばだった。(『天下無敵のネタの宝庫雑学大事典』永岡書店)山本藤光2019.04.26
2019年04月26日
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003:遠距離交際になる二学期の始業式を終えた瀬口恭二と藤野詩織は、藤野温泉ホテルのレストランで談笑している。詩織はこのホテルの一人娘である。「あと半年で卒業だね。そうしたら、恭二と別れ別れになってしまう」 詩織はコーヒーカップをおいて、悲しそうな表情を浮かべた。まずい展開になってきた、と恭二は警戒する。普段楽天的な詩織は、何かを考えこむと深刻な話を突きつけてくる。中学を卒業すると同時に、恭二は札幌のF高への進学が決まっている。「夏休みには帰ってくるんだし、いつだってスマホで話はできる」「遠距離交際は必ず破綻するって聞いたわ」「標茶と札幌は遠距離じゃないよ」「遠いわ」 詩織の大きな瞳に、涙の玉が盛り上がった。恭二はそんな詩織を、愛おしく思う。「おれ、絶対に甲子園に行く。詩織はおれの夢を応援する、っていってくれていた」「そうだけど、現実が近づいてくると、つらくて」 止まっていた涙が、頬を伝った。恭二はテーブルのナプキンを抜いて、詩織に渡す。「ごめんなさい。私ね、札幌の私立に行きたいってお母さんに頼んだんだけど、一蹴されちゃった。私も華やいだところで、高校生活をしてみたい。こんなダサい田舎で、大切な青春を埋没させたくないの」「高校を卒業したら、二人とも札幌の大学へ通って……」「一緒に暮らすんだったわね」「だから、それまでの辛抱」「恭二のユニフォーム姿は、今度で見納めだね」 浴衣姿の集団が入ってきた。詩織はそれを見て立ち上がり、腕時計に目をやった。「いけない。こんな時間だ。お手伝いがあるから、今日はこれまでだね。恭二、日曜日は応援に行くからね。私に恥をかかせないように、しっかりと投げるんだよ」「わかってる」 恭二も立ち上がり、詩織の後ろ姿を目で追う。そして、詩織のいない半年後を想像する。寂しいけど、おれには野球がある。
2019年04月26日
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大好きな水田風景千葉市から車で15分ほど走ると、市原市に入ります。田植えが終わった水田が車の左右に広がり、まるで鏡のなかを走っているような錯覚におちいります。春の穏やかな陽光が水面を照らし。きらきらと輝いています。父親の実家は、美瑛で米農家をやっていました。幼いころに遊んだ光景と重なり、懐かしい気分になります。水田風景が大好きです。山本藤光2019.04.26
2019年04月26日
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梅原猛さんの本梅原猛さんが亡くなって、3ヶ月が過ぎました。書店には追悼コーナがまだ残されています。そのなかから2冊紹介させていただきます。『少年の夢』(河出文庫)『梅原猛の授業 能を観る』(朝日文庫)両方ともに講演や講義録ですので、非常に読みやすくなっています。ぜひ知の巨人に触れてみてください。山本藤光2019.04.25
2019年04月25日
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064cut:コンサル会社のご注進――Scene09:営業本部の嵐影野小枝 森永本部長の部屋です。3人の新しい部長と、コンサルタント会社の2人が打ち合わせ中です。森永 加藤と三枝には辞めてもらったが、漆原は居座ったままだ。安田本部長時代の取り巻きは、早急に一掃しなければならない。そうしなければ、新しい風は吹かない。ところで支店長へのインタビューは終わったのかい?コンサルA(責任者)本部長がおっしゃるとおり、Rファミリーという甘い体質がはびこっています。新たに導入したマークシート方式の日報にも反対、営業リーダーのプレイイングにも反対と、新体制に拒否反応を示しています。森永 営業リーダーたちのインタビューを終えたら、若返りということで、総取っ替えしなければならんな。コンサルB 特に東京の吉岡支店長と大阪の新谷支店長は、古い体制の信奉者のようです。森永 黒田くんに頼んで、支店長たちのメールをチェックしてもらった。なるほど、この2人は新体制について批判的なメールを流布していた。コンサルA 現在導入中のSSTプロジェクトには、有能な人材がたくさんいます。旧態依然とした営業部とは別組織のメンバーですので、彼らを登用するべきと考えます。森永 SSTは社長直轄だし、彼らを登用するのは喜んでくれると思う。
2019年04月25日
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相撲取草「相撲取草」をご存知でしょうか。「現代俳句歳時記」を読んでいたら、夏目漱石の「菫程な小さき人に生まれたし」の解説に次のような文章がありました。――スミレ科の多年草。子どもの遊びで、花を引っかけて相撲(すま)わせることから、相撲取草ともいわれる。そういえばスミレではありませんが、クローバーで同じような遊びをした記憶があります。山本藤光2019.04.25
2019年04月25日
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002:空気も死んでいる南川理佐が標茶中学校へ転校したのは、三年一学期の後半、先々月のことである。父が標茶町虹別小学校の校長に赴任したため、札幌北高進学を断念している。虹別から標茶町への交通手段は、一日四往復のバスしかない。住民のほとんどは、酪農か農業に従事している。虹別小学校の児童数は三十八人。虹別は歴史の古い開拓村であるが、過疎化に直面している。南川理佐には、愛華という姉がいる。姉は札幌北高校から、標茶高校一年生に編入してきた。二人は見た目も性格も異なるが、仲のよい姉妹である。理佐は、百五十センチにちょっと足りない小柄。いっぽう愛華は、百六十五センチと大柄である。成績も理佐は学年の平均であるが、愛華はいつもトップクラスにいた。二人は毎日バスで三十分かけて、標茶町まで通学している。「学校慣れた?」バスの震動で、問いかける姉の声が跳ね上がる。車窓には延々と、牧草地が広がっている。理佐はあくびをかみ殺し、放牧されている牛の群れに目をとめる。白黒のまだら模様の牛の乳は、搾乳(さくにゅう)がすんでいるらしく張りがない。「うん、学校には慣れたけど、この田舎の空気にはなじめない」「私も。田舎の空気には酸味があって、張りつめたものがないの。人の吐息や車の排気ガスが、少ないせいかもしれないね」「お姉ちゃん、高校生活は楽しい?」「標茶高校は、受験生にとっては地獄よ。英語と数学の授業は、まだ一学期のところが終わっていない。この前、大学進学希望者への説明会があったんだけど、参加したのはたったの十八人。同級生の九割以上は、就職希望なんだから」道端で手を上げている詰襟を認めて、バスは停まる。手を上げると、どこからでも乗せてくれるのである。酪農家の息子・穴吹兄弟が乗りこんでくる。「おはよう」といつものようにあいさつをして、指定席になっている後部座席に座る。穴吹健一は愛華と同学年だが、農業科の生徒である。彼はカバンから分厚い少年漫画を取り出し、あっという間に周囲を遮断してしまう。弟の健二は、標茶中学の三年生である。理佐とは同学年であるが、クラスが違うために話をしたことはない。「この前『標茶町だより』で読んだんだけど、ついに町民の人口は、牛の数に抜かれたんだって」 愛華は鼻を手のひらで覆い、くぐもった小声で理佐に語りかける。穴吹兄弟が運んでくる、サイロの臭いが嫌いなのだ。「何だか、活気がないよね。学校もそうだし、町の空気も死んでいる」「お父さんはいつも、空気がおいしいっていっているけど」 理佐の言葉に、姉は少しだけ笑ってみせてから、「こんなところにいると、だらけちゃうよね」と相槌を求めた。「お父さんの学校の児童たち、弁当はほとんどが麦ごはんに生味噌だけなんだって。みんな貧乏なんだ。でも……」「でも、何?」理佐が飲みこんだ言葉を、愛華は問い正す。「でも誰一人、貧乏だなんて思っていない。きっと、おおらかなんだろうね」「ほんと。おおらかの代表格が、見えてきた」「ばかだね。あんなもので観光客を誘致できる、と思っているんだから。私、札幌でも、見たことがなかったのに」理佐は白々とした気持ちで、白いまがい物の建造物を眺める。いつものように時計の針は、七時四十分ぴったりだった。「標茶高校って、日本一敷地面積が広いんだよ。校内には牛舎や牛乳の加工工場があって、トラクターの練習コースまであるの。高校を観光客に開放すれば、受けると思うんだけど」「中学校には、何にもない。誇れるのは野球部が、道内でベストエイトになったことくらいかな。今度の日曜日に、そのバッテリーの壮行試合があるんだ。詩織から、応援に誘われている」「薬局の次男坊が、エースでしょう。そのお兄さんが私と同じクラスで、成績はいつも一番。ただし私が入ったので、うかうかできないようよ」「瀬口恭二はイケメンだけど、お兄さんもそうなの?」「ちょっとイケてる」 理佐は姉に猪熊勇太の存在を、教えてあげたいと思った。勇太の日焼けした顔とたくましい体を思い出すと、胸が自然に脈打ってくる。高校前で愛華は下車し、理佐は次の中学校前でバスを降りる。角を曲がるときに、恭二たちと歩いてくる勇太の姿が見えた。理佐は足早に、校門をくぐる。理佐は自分の臆病さを、情けなく思う。背後から、勇太の笑い声が聞こえた。理佐はもっと近くで、その声を聞いてみたいと思う。
2019年04月25日
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タッチタイピングができる理由大学を出て外資系の会社に就職しました。社内の公用語は英語。与えられた机の上には英文タイプライターがありました。とんでもないところに迷い込んだと焦ってしまいました。来る日も来る日もタイプの練習をさせられました。そのお陰で今でもタッチタイピングができます。英会話は会社のお金で習いましたが、こちらはまったく身につきませんでした。山本藤光2019.04.25
2019年04月25日
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「ロビンソン・クルーソー」(伊集院静・文)読了『痛快世界の冒険文学』(全24巻、講談社)は孫たちが大きくなったら読んでもらおうと買いそろえたシリーズです。昨日少し時間があいたので、「ロビンソン・クルーソー」(伊集院静・文)を読みました。たたみかけるような文章は、いつもの伊集院作品とちょっと面持ちが違います。久しぶりに楽しい読書でした。このシリーズは執筆者が豪華です。少しだけ紹介しておきます。「十五少年漂流記」(志水辰夫)「フランケンシュタイン」(山中恒)「真田十勇士」(後藤竜一)「神秘島物語」(佐藤さとる)「宝島」(宗田理)「笛吹童子」(橋本治)「500+α」では志水辰夫の「十五少年漂流記」を取り上げています。伊集院静もこのシリーズを紹介したくなりました。山本藤光2019.04.24
2019年04月24日
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063cut:居酒屋での密談――Scene09:営業本部の嵐影野小枝 営業本部の片岡営業部長、三枝統括部長、漆原企画部長は、早いピッチでお酒をあおっています。森永本部長から、降格を宣告された日の夜です。片岡 あのタヌキは、ウワサ通りの男だ。全部内輪で固めようってことだ。三枝 3人揃って討死だからな。 漆原 それにしても、ひどい人事ですね。片岡 辞令が出る前に、辞めざるを得ないかな。三枝 私もそう考えている。屈辱的な辞令は受けたくない。漆原 SSTが軌道に乗った矢先です。何とか成功させたいのですが。三枝 あのおっさんからは、支店の業務担当を半分にしろといわれていた。リストラだぜ。そんなことができるわけがない。片岡 営業リーダーに担当を持たせろ、と命令されていた。しかもP評価(最低評価)の連中の首を切れだとさ。漆原 SSTを中止できないか、との相談を受けていました。さすがに社長の肝入りなので、断行できないようです。日報を廃止して、マークシート方式にするともいっていました。徹底してMRの宣伝回数を、管理したいようです。さらにコンサル会社を入れて、営業組織の改造もするようです。片岡 ばかな。日報は上司と部下の、いちばん大切なコミュニケーション・ツールじゃないか。MRの宣伝回数を増やすために、そんなツールを導入するのは、現場を知らない人間の発想だよ。
2019年04月24日
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円周率「円周率」は、円の周長の直径に対する比率として定義される数学です。ところで円周率をなぜ必死になって、語呂合わせで覚えたのでしょうか。一度も活用した覚えはありません。ましてや最近の小学校では、「3」でよいことになっています。円周率の覚え方を紹介します。π = 3.141592653589793238462643383279502884197... 身一つ世一つ生くに無意味違約無く身文や読む(みひとつよひとついくにむいみいやくなくみふみやよむ)。※2段落目は「佐伯修の教育活動」から引用しました。山本藤光2019.04.24
2019年04月24日
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001:九月の雪虫釧路発網走行き電車の朝は、華やいでいる。塘路(とうろ)や茅沼(かやぬま)、五十石(ごじっこく)といった沿線の駅から、多くの学生が乗ってくるからである。電車は釧路湿原を縫うようにして走り、標茶(しべちゃ)駅で通学生をまとめて吐き出す。標茶町は北海道の東に位置し、釧路と網走の中間あたりに存在している。広さは、東京都のほぼ半分。全国では、六番目の敷地面積の広さを誇る。国立公園に指定されている釧路湿原の半分は、標茶町をしなやかな曲線を描いて流れている。世帯数は約三千七百。人口は約七千九百人と、過疎化が深刻な町である。 瀬口恭二はいつものように、駅前商店街の入口で友人を待っていた。恭二は標茶中学三年。本日は、二学期の始業式である。標茶駅からは、百人ほどの通学生が出てきた。そのなかの一人が、猪熊勇太(ゆうた)だった。彼は二つ先の、茅沼駅からの通学生である。駅から中学校までは、徒歩で三十分ほどを要する。勇太は「おはよう」とあいさつして、恭二と肩を並べる。恭二と勇太の背丈は、百七十五センチとほぼ等しい。しかしやせ形の恭二に対して、勇太はがっちりとした体格である。 駅前の通りは、閑散としている。通学時間に開いているのは、豆腐店と新聞配達所くらいである。九月になると空気はたちまち、ひんやりと張り詰めてくる。二人は制服の上に、コートを羽織っている。「F高から入学までの、自主トレ・メニューがきていだだろう。毎日十キロのランニング、五百本の素振り、それに腹筋百回。たまらないね。学校へ行く前から、ヘトヘトだよ」「ランニングと腹筋は一緒だけど、おれには素振りではなく、シャドーピッチング五百回が課せられていた。濡れタオルでやること、と書いてあった」「恭二、ちゃんとやっているんだろうな?」「やっていない」「一流の野球選手になるためには、とことん自分自身をいじめる必要がある。中学までは、才能で何とかなるかもしれない。高校になったら、基礎体力が大切になる。だから恭二、悪いことはいわない。ちゃんと、トレーニングしなきゃダメだ」「わかった。努力するよ」二人は、野球部のバッテリーである。標茶中学を北海道大会の、ベストエイトに導いた立役者であった。そのため二人は、札幌のF高校への推薦入学が決まっていた。川のない舗道に置かれた、朱色の派手な橋を渡る。しばらく行くと、とってつけたような石畳のゆるい坂道に行きあたる。さらに進むと今度は、時計のついた白亜の建物が現れる。すべてが最近建造されたものである。標茶中学校は、それらの先にある。坂の上に藤野詩織の姿を認めて、勇太は肘で恭二の脇腹を突く。「彼女のお出ましだ。おはようのキスでもしてやれよ」「ばか」 恭二は勇太から離れて、詩織と肩を並べる。セーラー服は、ベストに替わっていた。二学期からは、冬の制服になったのである。「セーラー服もかわいかったけど、ベストも似合っている」 恭二がそういうと、詩織は持っていたコートを着こんだ。「恭二に見せようと思って、寒いのに我慢してたんだ。かわいいでしょう」「食べちゃいたいほど、かわいい。ところで、日曜日の壮行試合は、応援にきてくれるよね」「理佐もきてくれるって。彼女、勇太に気があるみたい」 突然耳元で、勇太の野太い声がした。「リサって、転校生の南川理佐ちゃんのこと? おれも好きだって、伝えておいて」 後ろを歩いているとばかり思っていた勇太は、いつの間にか並んで歩いていた。「何だ、おまえ、聞いていたのか。油断も隙もない」「キャッチャーっていうのは、研ぎ澄まされた神経の持ち主でなければ務まらないの。理佐ちゃんか、おれにもついに春がきた」 コートの襟を立てながら、勇太は屈託なく笑ってみせる。こいつがいるから、おれの投げるボールが活かされている。恭二は全道大会で、投げ抜いた日のことを思い浮かべる。「恭二、ほら雪虫」 目の前を、白い綿毛のようなものが舞っている。「勇太には春がきて、おれたちには冬の使者がやってきた、ってところかな」 詩織は笑った。大きな瞳が細くなり、左の頬にえくぼができた。中学校の玄関脇の噴水は、凍結防止のために、荒縄が巻かれて止まっていた。もうすぐ本物の冬がくる。
2019年04月24日
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スリランカのテロ事件スリランカの最大都市コロンボなどで教会やホテルが狙われ、計290人が死亡した連続爆破テロ。人間がここまで邪悪になれるのか、と非常に悲しい気持ちになりました。民族対立が終わったと思ったら、今度は宗教対立かもしれません。テロとの報道もありますが、どうも違うように見えます。宗教の第一義は、命の尊さを教えることにあるはずです。オウム事件もそうでしたが、深く一つの宗教を究めれば、こんなに怖ろしい思想を生んでしまうのでしょうか。とんでもない世の中になってしまったものです。山本藤光2019.04.24
2019年04月24日
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清水義範の笑える3冊前にも書きましたが、おもしろい本を紹介してとよくいわれます。そんなのきに真っ先に上げるのは、清水義範の作品3冊です。『蕎麦ときしめん』『国語入試問題必勝法』『永遠のジャック&ベティ』(いずれも講談社文庫)。未読の方がいたら、どんなことをしてでも読んでみてください。読書の楽しさが実感できるはずです。山本藤光2019.04.23
2019年04月23日
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062cut唐突な嵐――Scene09:営業本部の嵐影野小枝 森永本部長が着任してかr、1ヶ月がたちました。営業本部の3部長は、本部長の部屋に集められています。森永 来月から営業本部の組織を改める。このままの体制では、いつまでたっても業績は上がらない。きみたちのポジションに新たな人材を迎えることにした。きみたちは副部長として、新しい3人の部長を支えてもらいたい。彼らは前の会社で、私とともに汗を流した有能な人材だ。真摯に彼らを受け入れてもらいたい。片岡 私たちのどこがまずいのですか? 本部長の命令に従わなかったからなのですか?森永 現在の業績低迷の原因が、きみたちにあることは歴然としている。甘い体質を一掃しなければ、業績の回復はないと確信している。三枝 私がリストラを断行できないから、甘いというのですか? 人を減らして生産性を上げるのは、極めて簡単なことです。あなたには、彼らの背後にいる家族の姿が見えますか? 何の落ち度もないのに、首を斬ることなどできません。漆原 営業本部を円滑に回すのが、企画部の役割です。やっとSSTが軌道に乗りました。今度は営業リーダーのレベルアップを、急がなければなりません。そんな過渡期にある営業部隊に、あなたは手を入れてかき回しているんですよ。森永 何をほざこうと、私の決意は揺るがない。片岡 辞めろ、とおっしゃっているんですね?森永 それは受け止める方の判断だ。私は副部長として、新任の部長を補佐してもらいたい、としかいっていない。三枝 うちの黒田を使って、データベースでの管理をはじめました。私たちはMRの質を上げることを、最優先しています。森永 そんな悠長なことをいっているから、メーカランキングは38位から動かない。5年以内に19位まで引き上げるには、量で管理しなければならない。漆原 それでは現状と逆行しています。森永 そんな甘い考えだから、いつまでも現状を打開できないんだ。副部長として、本物の仕事を学んでもらいたい。影野小枝 大変なことになりました。3人は憤然と席を立ちました。
2019年04月23日
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希望ちょっと古い資料ですが、いいなと思った文章を紹介します。――希望というものは、願いが叶った時のイメージが明確でなくては段々と力を失う。イメージという名の肥料をやり続けなければ、痩せていくものなのだ。(桐野夏生『柔らかな頬』自作を語る、「本」1999年5月号)「夢」と「希望」は、似ていますが異なる概念です。夢も希望もない、という言葉があります。つまり二つは別物なのです。 あの人と交際したいな、というのが夢。あの人がこっちを向いてくれた、が希望が生まれた瞬間。夢はぼんやりと遠くにあり、希望はそこに到る過程に生まれるもの。山本藤光2019.04.23
2019年04月23日
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353:クラーク像 瀬口恭二は、四十九歳の誕生日を迎えた。食卓には、詩織が作ったキンキの煮物が置いてある。長男の可武威(かむい)は、全国高校新聞最優秀賞の授賞式に行っていて不在である。「恭二、お誕生日おめでとう」 ワイングラスを合わせた。さっそく恭二は、キンキに箸をつける。口に運ぶ。「詩織おいしいよ。その二で磨いた腕は、さびていないな」「そんな日があったね。恭二は私をじらして、三つも課題を与えたんだから」「あれがあったから、今のおれたちがある」「恭二、おいしいね」「大学はどう?」「ものすごく楽しい。テストさえなければ、極楽なんだけど」「実力診断テストの結果はどうだったんだい?」「内緒。でも勇太くんには勝った」「勉強するって、楽しいことだよね。悪夢のような浪人時代を、除けばということだけど」「猛勉強して、北大薬学部に合格して、あの六年間の勉強は、今どう活かされているの?」「それをいわれると、貝になってしまう。あれがあって、途方に暮れているおれがいた。そして藤野詩織に、再会したんだ」「瀬口薬局の後継者は、お兄さんがスカウトしてくれたので、一安心だよね」「皮肉な話だよな。おれが挫折したMRを、引き抜いたんだから」「そうか、恭二はたった二ヶ月だけ、MRだったんだわね」「落ちこんで、標茶に戻ったら、詩織がいた。だからMRは、詩織との縁結びに役に立ったわけだ」「恭二、きて!」 寝室で詩織が呼んでいる。ワイングラスを持ったまま、恭二は寝室へ行った。「これ、恭二へのお誕生日のプレゼント。開けてみて」ベッドの上に小箱が乗っている。恭二はていねいに包装紙をはがした。箱を開ける。なかには、クラーク像が入っていた。恭二はそれを取り出し、ベッドサイドのテーブルに乗せる。「恭二、箱のなかに、まだ入っている」 箱に手を入れると、小さな包みがあった。取り出して開封する。セーラー服と詰襟の人形だった。恭二はそれを、クラーク像の傍らに置く。「これ、私と恭二」(『町おこしの賦』第10部:生涯学習の町・おわり。第11部へとつづく)※第11部は現在執筆中です。掲載はしばらくお休みさせていただきます。明日からは第1部からの再掲載になります。
2019年04月23日
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急げ年寄りの車事故対策またも老人による死傷事故がありました。ブレーキとアクセルの踏み違い。これだけ多いのに、なぜ車メーカーは対策ができないのでしょうか。ブレーキは足で、アクセルは手で操作するように改善すればすむはずです。ただしいくら改善されても、年寄りの運転は危険です。思い切って、どこかの年齢で線引きするしか方法はないと思います。その代わりに、年寄りのタクシー料金は一部を自治体負担にするなどの新制度導入が必要となります。山本藤光2019.04.23
2019年04月23日
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花田清輝『復興期の精神』のこと朝日新聞に作品社の増子信一さんが、花田清輝『復興期の精神』(講談社文芸文庫)について書いていました。本書は「山本藤光の文庫で読む500+α」で取り上げています。増子さんは次のように時代を語っています。――1970年代の初めは「埴谷千年、吉本万年」という言葉がまだ生きていて、埴谷雄高『幻想のなかの政治』、吉本隆明『共同幻想論』がもて囃されていた。(朝日新聞2019.04.17)このあと増子さんは、――花田・吉本論争でコテンパンにやられたオールド・左翼、花田を読んでいると白眼視されること必至。と書いています。しかし私同様、花田清輝によって読書の幅が拡大したとも添えています。若い人にはぜひ読んでもらいたい作家が、花田清輝です。埴谷、吉本よりもずっと知的だと、私は信じています。もっとも二人はほとんど読んでいないのですが。山本藤光2019.04.22
2019年04月22日
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061cut:甘いな――Scene09:営業本部の嵐影野小枝 安田本部長が去り、森永本部長が着任しました。現状について、3部長が説明を求められています。森永 業績が低迷している理由を説明してもらいたい。片岡 申し訳ありません。現在5年後19位に向けて、鋭意努力中です。森永 私が質問しているのは、現在のことではない。過去のことだ。きみたちはそのために、何をしてきたのか。片岡 新製品のすべてが大手メーカーとの併売のため、苦労することが多いのが原因のひとつです。森永 甘いな。そんなことを理由にあげるから、勢いがつかないんだよ。片岡 すみません。森永 雑誌で読んだけど、エスなんとかのために、現場から精鋭を引き抜いたんだって。漆原 SSTです。現在1年を終えて、2年目に突入しています。MR活動の質を上げて、業績向上を図ろうとの意図です。森永 そんなままごとで、現場は変わらない。MRの1日の面談医師数は何人だ?三枝 病院班と開業医班とでは違いますが、平均すると10人くらいかと……。森永 データは取っているんだろう?三枝 データは取っていません。森永 甘いな。だからMRは働かないんだ。影野小枝 とんでもない展開です。
2019年04月22日
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風が吹けば桶屋が儲かる風が吹けば桶屋が儲かる。この言葉は誰もがご存知だと思います。しかしその理屈を完全に覚えている人は少ないので、整理しておきます。――風が吹くと、砂ぼこりが立って砂が目に入り盲人が増える。盲人は三味線を弾くので、それに張る猫の皮を取ることから猫が減り、猫が減ると猫を天敵とする鼠が増える、増えた鼠は桶をかじるので、結果的に桶屋が儲かることになる。山本藤光2019.04.22
2019年04月22日
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352:夜間大学と大学進学塾 四月二日。標茶町生涯学習センターは、朝から多くの生徒を迎えていた。九時の開所と同時に、一階ロビーには人が満ちあふれた。マガジンラックには週刊誌が並べられ、北海道新聞や釧路新聞なども置いてあった。瀬口恭二と長島太郎は「おはようございます」と、一人一人を迎えた。四階の『知だらけの学習塾』のオープンは、十時であった。続々と、塾の運営者が姿を見せはじめた。囲碁教室の大場純一は恭二にあいさつしてから、上気した声でいった。「ワクワクしています。いよいよですね」「生徒は何人くらい集りましたか?」「三十人ちょっとです。町長の奥さんのお父さんも参加してくれています。村田善治さんの計らいで、おあしすの里のサークルは、みんな知だらけに合流してくれました」「それはいいね」 午後五時。役場での執務を終えて、恭二は生涯学習センターに足を運んだ。夜間大学と受験塾の様子を、見ておきたかったのである。最初に、夜間大学をのぞいた。まだ授業がはじまっておらず、詩織と勇太が後ろの席で談笑していた。恭二を認めて、勇太が手招きした。「今日から、ピカピカの一年生だ。詩織ちゃんも一緒で、何だか高校時代に戻った感じがする」「ちゃんと勉強しなよ」「もうすぐ五十歳だ。手抜きをしている時間はないよ」「ミユさんも一緒じゃなかったの?」「ミユは教科書を見て、卒倒してしまった。だからそっとしておくことにした」「しゃれてる場合じゃないだろう。残念だけど、仕方がないか」 高校生の受験教室は、すでに授業がはじまっていた。恭二は後方の入口から、A教室のなかへ入った。樋口正直が教壇に立っていた。「数学の基本は国語力です。数学の点数を上げたかったら、まずは国語の読解力を身につけなければなりません。だから長島先生の国語の講義は、しっかりと聞いてください」 恭二は窓越しに、隣りのB教室をのぞく。村田善治が英語の授業をしていた。耳を澄ます。「今日から、センター試験の過去問に挑みます。先生の授業のレベルはきみたちの実力に合わせますので、とりあえず実力診断テストを行います。はい、テスト用紙を後ろに回して。所要時間は三十分。またほとんどの生徒は解けないと思うけど、チャレンジしてみてください」 生徒から笑い声が響いた。
2019年04月22日
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小野なりこさん当確一緒に仕事をしていた小野なりこさんは、都民ファーストの会の千代田区から出馬していました。今朝彼女のブログを確認したら「当確です」とありました。自分の娘みたいな小野さんは、きっとまともな政治をやってくれると思います。彼女の武器はたぐいまれなる「傾聴力」と「共感力」にあります。私が最も大切に思っている二つの才能をもった希有な人です。当選を確認するまでおめでとうはいいませんが、素敵な人が政治に参入することになるでしょう。山本藤光2019.04.22
2019年04月22日
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昨日買った文庫たち昨日購入した新刊文庫は11冊。読みたい作品がそろい踏みでした。いくつかをあげてみます。中島京子『パスティス』(ちくま文庫)恩田陸『蜜蜂と遠雷・上下』(幻冬舎文庫)『泡坂妻夫引退公演』(創元推理文庫)真藤順丈『黄昏旅団』(文春文庫)藤岡陽子『陽だまりのひと』(祥伝社文庫)堀川アサコ『幻想寝台車』(講談社文庫)柚月裕子『慈雨』(集英社文庫)さてどれから読もうか。楽しい悩みです。山本藤光2019.04.21
2019年04月21日
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060cut:子会社への出向――Scene09:営業本部の嵐影野小枝 安田本部長室に、片岡営業部長、三枝統括部長、そして漆原企画部長が集っています。みなさん、深刻な顔をしています。安田 実はさっき、子会社への出向を命じられた。心残りだけど、仕方がない。後任には、社長の以前の部下がくるようだ。片岡 5年後にメーカーランキング19位。私たちはそこに向かって一丸となっているのに、なぜこの時期に?安田 社長が前にいたG製薬が吸収合併となり、片腕だった本部長がはみ出してしまったようだ。三枝 そのあおりで、本部長が外されるんですか?安田 これもサラリーマンの宿命だよ。なんとなくきな臭い匂いがする。やってくる人が幹部を引き連れてきなければいいが。漆原 それで異動はいつなんですか?安田 今月いっぱいだ。きみたちには大変世話になった。SSTプロジェクトも成果を上げつつあり、これからというところなのに。
2019年04月21日
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きちょうめん「きちょうめん」はその漢字から、「几帳」台に関係しているとは思っていました。調べてみるとなるほど語源は建築用語からきていました。――柱や器具などの角ばった部分を削り、両側に刻み目を入れる技法、多く、几帳の柱に用いられたことから、細部にまで気を配る意が生まれた。(日本語語源辞典)几帳台の上の紙に、ていねいに記帳することが語源だと勘違いしていました。山本藤光2019.04.21
2019年04月21日
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351:生涯学習センターの開所日 標茶町生涯学習センターのオープンの日は、抜けるような青空に恵まれた。四月一日午前九時。瀬口恭二と長島太郎は、並んでテープカットをした。待ち構えていた町民は、一斉になかへと身を滑らせている。 九時半からは、瀬口恭二町長の講演が予定されている。二百人を収容できる階段席は、早くも埋まりはじめた。司会役の樋口正直は、町民の関心の高さに驚いている。九時半。樋口が司会席に立った。会場は満席となり、後ろに立っている人も大勢いる。詩織の姿もあった。幸史郎も勇太もいた。「ただ今から、町長の瀬口恭二さんから、生涯学習のお話をいただきたいと思います」 恭二は演壇に立ち、感激に胴震いしたほどだった。「こうして直接、町民のみなさんにお話ができる場が生まれたことを、まずは大変うれしく思っております。標茶町生涯学習センターは、すべての町民の学びの場として、産声を上げました。ここには、中学生による小学生のための指導教室があります。高校生のための進学塾があります。そして大人のための、夜間大学も誘致されました。さらに町民の誰もが、気楽に参加できる知だらけの学習塾もあります。 標茶町には、これまでおあしすという語らいの場はありました。しかし学校以外には、学びの場はありませんでした。温泉の町、農業の町、酪農の町。標茶町はさらに、生涯学習の町として、新たな転換期を迎えました。どうかここをみなさんの手で、活力ある場に育てていただきたいと思います」 詩織は、会場の最前列にいた。夫の堂々とした姿を見て詩織は、胸が熱くなるのを覚えた。
2019年04月21日
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ファイル増殖中新聞、雑誌の切り抜きはカゴに放り込んであります。ときどき取り出し、あかさたな…と区別したファイルに入れます。どの切り抜きにも出典と年月日とともに、キーワードをつけます。ところがファイルに整理するまで、読み込みにたくさんの時間を要してしまいます。ファイリングする記事は、言葉の語源と作家の関連資料に限ります。ファイルは増殖中で、あ行は2冊目になっています。山本藤光2019.04.21
2019年04月21日
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