[Stockholm syndrome]...be no-w-here

2022.06.17
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カテゴリ: 宝塚
改めて観劇して気付いたのは、ショパンの「何のために音楽をするのか?」という問い掛けが、以前に紹介した オペラ歌手・車田和寿の語る「音楽の本質」 と通底している事だ。
そして、恐らくそれは「何のために宝塚の舞台に立つのか?」というタカラジェンヌ達への問い掛けと無関係ではないだろう。
ショパンのリストに対する言葉は、「どこまで出世できるか」「路線か否か」でしかタカラジェンヌ達の努力が判断されない昨今の風潮を懸念し、「他人の評価に振り回されて自分を見失うな」という生田大和からジェンヌ達へのメッセージにも聞こえた。
(これは飽くまでも僕個人の印象であり、生田がそれを意図したという意味ではない)

そうした独善的なファン心理を具現化したようなキャラクターが、音くり寿が演じるラプリュナレド伯爵夫人だろう。
音は幼顔ながら、さすがの演技力でどんな役柄でもこなせる幅広さを見せ付けた。
とにかく、台詞回しというか感情の乗せ方が抜群に上手い。
タールベルクを懐柔する場面などは、ゾクッとするほど女の怖さが滲み出ている。
歌唱力も高く、正にこれからの躍進が期待されていただけに、退団は残念だ。

残念と言えば、飛龍つかさも同様だろう。
彼女も幅広い演技力と安定感で、個人的には輝月ゆうまに続く存在になってくれる事を期待していただけに、やはり勿体無いと感じてしまう。
退団後の予定は知らないが、また新たに輝ける場所を見付けて欲しい。
(先日、東京で大千秋楽を迎えた綾凰華にも幸あれ!)
そんな飛龍と音が並んで歌う場面を用意した、生田大和の心遣いに感謝だ。

バウW主演を決めた帆純まひろと一之瀬航季も、限られた見せ場でしっかりと存在感を示した。
帆純は、貴族達の酔狂に翻弄されるジギスムンド・タールベルクの不運を、無邪気な笑顔とその後の茫然自失した表情とで上手く表現していた。
ただ、もっと振り切った演技でも良いような気がするので、自分なりに工夫してみて欲しい。

そして、最後になってしまったが、マリー・ダグー伯爵夫人を演じる星風まどかは、今回も安定の芝居と歌で魅了してくれた。
マリーはかなり起伏の激しい人生を送っているが、その場その場の心情を的確に表現しているし、少女のような可愛らしさと大人の落ち着いた雰囲気のどちらも自然に演じている。
歌声も、つい「もっと聴いていたい」と思わせるほど耳に心地好い。

という事で、今回の【巡礼の年】は、個人的には大満足の作品となった。
既にDVDが欲しくて仕方が無い心境だが(笑)、改めて考えると本作はテレビやパソコンの画面で観る事も意識して、組子を配置しているように感じる。
だから、各場面がすっきり纏まって見えるし、一人ひとりにも眼が届き易い。
正に、花組と生田大和による渾身の力作だ。
正直「生田先生、こんなに気合いの入った舞台を作っちゃって次回作は大丈夫…?」と要らぬ心配をしたくなってしまうが(笑)、星組【ディミトリ~曙光に散る、紫の花~】も期待している。

ありがとう!!



感想を纏めるのに忙しくて後回しになってしまい申し訳ないが、朝月希和の退団発表には驚いた。
おおらかなの彩風咲柰と穏やかな朝月は、大人の雰囲気があって非常にお似合いだったし、トップコンビとしてもこれからと言った感じだったので、たった3作での退団は残念だ。
次回作の雪組【蒼穹の昴】をしっかり見届けたい。

因みに、月組【グレート・ギャツビー】は7月26日(火)と8月2日(火)に観劇予定。
その前日、7月25日には星組【めぐり会いは再び next generation】の深読み考察の更新がある。
「一角獣の聖杯」から何となく始めた考察だが、最終的に日本史上最大のミステリーと繋がり再び一角獣へと戻って来るという、自分でも予想だにしないスケールの読み物になった(笑)。
こういう展開に運命を感じる。

まあ、それまでに1ヶ月以上あるので、【Fashionable Empire!!】の感想をのんびり纏めたい。
(のんびりし過ぎて忘れる可能性もあるので、気を付けないと…笑)





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Last updated  2022.06.18 20:03:48


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