仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2014.06.29
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カテゴリ: 宮城
いま東北歴史博物館で「発掘された日本列島2014」をやっている(7月9日まで)。全国5か所の博物館で巡回するようだが、その第一弾。発掘調査の成果を多くの方々に伝えるため、平成7年度から行っている展示。20回を迎える記念として、1300点もの出土品展示など過去にない規模のものとなっている上に、一日も早い復興のために、東日本大震災復興事業に伴う発掘調査を紹介し、明らかになった東北の豊かな歴史を、ふるさとの再発見とコミュニティ再構築の支えとするものだ。
(後掲書の青柳文化庁長官あいさつ文から。)

文化庁編『発掘された日本列島2014 新発見考古速報』(朝日新聞出版、2014年)を読んでいる。

思えば十数年前には前期旧石器時代の遺跡ねつ造事件という激震に見舞われた。おなじ東北に今度は津波が襲った。考古学会はねつ造問題を乗り越えるため努力を重ね、また、津波災害に際しては発掘調査が復興の壁にならないよう関係者を集中投入して、再建と文化財保護の両立に奔走した。

同書には「復興のための文化力」との特集が組まれ、3県の太平洋岸の7つの遺跡が紹介されている。

発掘調査に際しては、調査面積を最小限に計画するとともに、全国の自治体、国、法人調査組織などから多数の職員を被災地に送り、さらに調査費は全額国負担で行うなどの対応を図った。地域のアイデンティティを再発見し、郷土の誇りを取り戻し、真の復興を果たそうとする文化財関係の方々の熱意に、思いを致しながら、説明されている7つの遺跡のうち、まず宮城県内の3つについて、当ジャーナルとしても紹介させていただきたい。



1  新井田館跡 (南三陸町)(にいだたてあと)

■南三陸町サイトの 解説
■同上 平成25年11月の 現地説明会 について(資料が非常にわかりやすい。)

志津川湾にそそぐ3つの川のうち最も北にあるのが新井田川だ。湾にほど近い川沿いの67mの丘陵地。ちょうど気仙沼線がトンネルになるあたり。新井田館について史料は少ないそうだが、志津川には室町から戦国にかけての山城が多い。

津波復興拠点整備事業に先行して調査が行われた。築城年代や城主は不明だが、地域を支配した葛西氏の関連武将が城主と考えられる。

調査では、平場6か所、堀6条、土塁8条が確認され、複数の建物と柱列が見つかった。堀と土塁で防御機能を果たしている。遺物は、陶器、古銭、砥石、石鉢、羽口、鉄滓など。遺物から築城は15世紀前半、17世紀までには廃棄されたようだ。

今回のような山城全体を調査する事例は全国でも珍しく、周辺地域の山城を理解するうえで貴重な調査になった。

なお、同書の解説を執筆した南三陸町教育委員会の方は、長野県から派遣の方のようだ。上掲サイトの現地説明会資料には、この方を含めて町と県の担当者名が紹介されているが、ほとんどが他県から派遣された方々。ありがとうございます。

■関連する記事(後続)
復興のための発掘 その2 波怒棄館遺跡(気仙沼市) (2014年6月29日)
復興のための発掘 その3 荒井広瀬遺跡(仙台市) (2014年6月29日)





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最終更新日  2014.06.29 17:18:09
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