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私:一昨日のこのブログ「明治維新150年 矛盾はらんだ日本の近代」で「明治維新」をとりあげたが、ここに「福沢諭吉」が登場するね。 今年で150年を迎える「明治維新」にとって「福沢諭吉」は欠かせない重要人物だね。 日本の近代を振り返るときに、外せない重要人物の一人である幕末明治期の開明的な思想家としての「福沢諭吉」の評価をめぐっては、戦後になって「侵略的絶対主義者」との批判的学説が登場したという。 その論拠が岩波書店の福沢諭吉全集「時事新報論集」(第8~16巻)にあるという。 A氏:しかし、そもそもこの新聞社説を集めた「論集」には無署名の筆者が複数おり、「福沢諭吉」本来の思想とは異なる時局迎合的な社説が混在しているという。 私:そこで、日本思想史研究者で静岡県立大学助教の平山洋氏が、その複雑な背景を指摘し、2004年の自著『福沢諭吉の真実』で「侵略的絶対主義者」でなく「市民的自由主義者」としての福沢像を改めて示した。 さらに、この表題の著書「『福沢諭吉』とは誰か 先祖考から社説真偽判定まで」では、「福沢諭吉」の著書の原形となる社説を追究する過程で「それらの大部分が福沢全集に未収録だったことが判明した」という。 A氏:また明治天皇の「五箇条の誓文」や坂本龍馬の「新政府綱領八策」が「福沢諭吉」の「西洋事情」などをベースにしている点、「福沢諭吉」が現憲法につながるような「交詢社憲法草案」に関与した点など、新たな観点にも触れていて興味深いという。 私:気になるのは、暫定的であれ、「侵略的絶対主義者」の反証例が出されたらその確度を再検証するなど共同研究が行われてもよいはずだが、平山氏は「難しい」という。 学説の違いは平行線のままで、権威筋も版元も動く気配はなさそうだという。 A氏:だからなのか、平山氏は独自に福沢の著書の本文や全集未収録の福沢執筆と推定される社説をテキスト化し、「誰もが読めるように」ネット上で公開。 さらに、それらを基に著書や社説にクセとして残る福沢の語彙や文体を時事新報の無署名社説と比較検討する地道な作業を続けている。 私:平山氏は「私は還暦までに、福沢が健康だった頃の全社説の起草者を判定する目安をつけたい。福沢の起草ではない社説を福沢の思想の反映とすることはできません。批判はしても差別はせず、個人の独立だけでなく国家の独立も説いた福沢の先進的で普遍的な思想を再確認し、21世紀にあっても色あせることのない客観的な福沢像を私は示したい」という。 150年を迎えた「明治維新」も「明治維新150年 矛盾はらんだ日本の近代」でもふれたように奥が深いね。
2018.01.14
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私:農業問題は、数年前からこのブログでもすでに問題にしているが、このインタビュー記事では日本の「食料自給率」が、先進国で最低レベルの38%であることをとりあげている。 作家・浅川芳裕氏は専門サイト「農業ビジネス」編集長でもあり、著書に「日本は世界5位の農業大国」がある。 浅川氏は、冒頭から「自給率38%」の数字に異論を唱えているね。 この「自給率」は率の分母は国民1人1日あたりの供給カロリーで、国産に輸入を加えているが、この供給カロリーは我々が実際に消費した分ではなく、食品工場やコンビニエンスストア、レストランなどで捨てられる、だれの胃袋にも入らなかった食品廃棄物など、年約2千万トンものが含まれているという。 A氏:ふつう「自給率」でイメージするのは、一人が健康的に生活するのに必要な食料がどれだけ国産でまかなわれているか、のはずで、大量廃棄まで含んだ数字は、実態より不安をあおる。 私:厚労省のデータなどから浅川氏が試算すると、「自給率」は49%で、政府目標の45%を上回り、「カロリーベース」でなく「生産額ベース」では、すでに68%だという。 A氏:どうして「自給率」の数字がおかしいのか? まず、65年から「生産額ベースの自給率」が公表されていたのが、1980年代に「自給率」が「カロリーベース」で突如、登場し、発表されるようになったからだという。 背景に、牛肉、オレンジの日米農産物自由化交渉が盛んだったことがあり、「カロリーベース」の方が輸入依存度が高いことを示せるので、農水省は自由化を阻止する宣伝手段になると判断したのだと浅川氏は指摘する。 私:国民の危機感をあおるのに、4割程度の数字はちょうどいいという、農水省最大の「ヒット商品」だと浅川氏は皮肉る。 これにより、財務省の官僚は、毎年の予算折衝で「食料自給率」が下がってもいいのか、と脅されたそうで、予算も確保しやすいので、農村を基盤とする政治家や農協にもありがたいというわけだ。 「カロリーベースの自給率」を農業政策の柱にしているのは、世界でほぼ日本だけ。 農水省が発表する先進国の「自給率」も、国際食料農業機関(FAO)の統計などから自ら計算した「自作自演」で、米価をつり上げるため「自給率」向上と矛盾するコメの減反政策を続けてきた。 A氏:対する世界の食料安全保障の定義は、「国民の栄養が足りているか」「貧困層が買えるか」「災害時に調達できるか」の3点。 浅川氏は、2008~11年にかけて、こうした疑問点を月刊誌や新書で指摘。 「カロリーベースの自給率」向上を国策にすると、カロリーの低い野菜の農家や、エサのほとんどを輸入に頼る畜産農家は、国策に逆らう存在に位置づけられる。 農家からは「よく言ってくれた」という手紙が届いたという。 私:浅川氏や一部の学者の批判もあり、農水省は15年から「食料自給力」という新しい指標を導入。 これは、輸入が止まったとき、いまの農地でどれだけの農産物が生産できるか、をみるもの。 それでも、選挙などで錦の御旗とされるのが、「自給率」。 それは、1999年施行の食料・農業・農村基本法に、自給率の目標を定めて向上させるという原則が書かれているため。 だから、浅川氏は、法律のこの部分をなくし、「食料自給率」は廃止するべきだという。 長年、政府が膨大な補助金を支給し、農家に何をつくれ、消費者に何を食べろと、事実上命令できる根拠になっていて、統制主義的な考え方が根底にある。 しかし、政府の指導なしで経営する農家が育ってこそ、いざというときでも食べる人の立場にたった判断ができ、これこそ、真の食料安全保障の前提条件だと、浅川氏はいう。 A氏:この記事でインタビューしたもう一人の横田農場社長・横田修一氏は、自主的な農業経営を行っている例を紹介している。 私:しかし、「少子高齢化」で農業の後継者不足で休耕地が増えている。このブログでは、すでに9年前の「農政改革」では、耕作放棄地と休耕田を合わせた面積は東京都の3倍近くにまで増えたというが、この問題にもふれてほしかったね。 同じ年のブログ、「減反選択制を検討」では榊原英資氏は21世紀の成長産業は農業だと言っていることにふれているが、このときから約10年近くたって、どのように改善されたのか知りたいところだね。
2018.01.13
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私:今年は「明治維新」150年ということで、NHKの大河ドラマも「西郷どん」。 このブログではすでに「明治維新150年 三谷博氏、色川大吉氏に聞く・でとりあげたが、今月の「異論のススメ」では、「明治維新」150年を保守の論客の立場からとして佐伯氏はとりあげている。 A氏:佐伯氏は、この日本の近代化150年という長い時間を真っ二つに分けている。 ちょうど、昭和の太平洋戦争の4年間がその中間に位置し、その真ん中の4年をはさんで、前半の73年は、明治に始まった近代化があの大戦争へ行き着き、後半の73年は、戦後のいわば第二の近代化が今日のグローバル競争へと行き着く時間であるとしている。 私:佐伯氏にとって、「明治維新」のもっとも基底にあるものはといえば、「壮大な矛盾をはらんだ苦渋の試み」といいたいという。 「維新」は英語でいえば「リストレーション」つまり「復古」であり、「復古」とは、天皇親政や神道の国家化など、日本独自の「伝統」を強く意識した国家形成を行うことを意味し、「刷新」の方は、徳川の封建体制を全面的に打ち壊して西洋型の近代国家へ造り替えることを意味する。 すなわち、「明治の近代化」は、日本独自の「国のかたち」や日本的な倫理や精神の覚醒を促すと同時に、西洋型の近代社会の建設という目標を掲げたるという二面性を持つものであった。 A氏:黒船に象徴される西洋列強の来襲で、圧倒的な文明に日本は適応するほかはなく、「富国強兵」の明治政府の積極政策から始まり、大多数の民衆はこの「文明開化」に飛びつき、一気に「欧化」が始まった。 私:福沢諭吉は「文明論之概略」(明治8年)のなかで、西洋文明は明らかに日本を先んじており、日本は早急にそれを取り入れなければならないが、それは、あくまで日本の独立を守るためである。 国の独立こそが目的であり、西洋文明の導入はその手段で、西洋が力で世界を支配しつつある時代に、列強と対峙しつつ独立を保つには、西洋文明によるほかない、という。 しかし、その先にあるのは何かといえば、知識であれ、制度であれ、生活様式であれ、西洋流を先進文明とみなしてひたすら模倣し、しかもそれを日本の先端で誇るという奴隷根性。 これでは福沢が文明の礎石と考えた不羈独立の精神、つまり「一身独立、一国独立」などどこかへ霧散しかねない。 A氏:福沢もそうだが、政治にせよ言論にせよ、明治の指導者たちは、もともと武士であり、強い倫理観と武士的精神の持ち主であったから、本来は、明治の欧化政策と、士道の延長上にある強い自立心の間に矛盾を抱えていたはずであると佐伯氏は指摘する。 私:ところが、「明治憲法」が制定され、議会が開設され、富国強兵もそれなりに功を奏して、日本が西洋列強に伍するにつれ、日本人の内面生活の方が何とも希薄化してゆく。 ともかく西洋列強を追いかけ、彼らに認められることに意を注ぎ、何のための文明化か、など問おうともしない、ということになり、夏目漱石は、それを、うわすべりの「外発的開化」と呼んで批判したと佐伯氏はいう。 A氏:日本の近代化は、同時に日本の西洋化であるほかなく、それに成功すればするほど、「日本」は溶解しかねないという日本の近代化のはらむ大きな矛盾があったと佐伯氏は指摘する。 私:戦後の日本の第二の近代化は、西洋化というよりアメリカ化であり、今日、アメリカ型の文明がグローバリズムという名で世界を覆いつつあるものだ。 佐伯氏にとっては、明治の近代化において日本が直面した矛盾が解決されたとは思えないという。 残念なことに、第二の近代化で福沢を後継する「新・文明論之概略」はでてこず、彼の危惧した「独立の気風」の喪失も問題とされないという。 とはいえ、「西郷どん」がいまだに人気があるのは、日本の近代化の宿命的な矛盾をわれわれもどこかで気にかけているからではなかろうかと佐伯氏は最後に多少の期待を抱く。 ただ、150年の近代化で「日本が失ったもの」の具体的な例示が、佐伯氏の寄稿の中になかったのは残念だね。 家族制度であろうか。 A氏:このブログの文頭にあげた「明治維新150年 三谷博氏、色川大吉氏に聞く・では東大名誉教授の三谷博氏は、別な視点で「明治維新」を見ているね。 三谷博氏は、「明治維新」の大きな特徴は、これまであまり目が向けられていない二つとして、武士という支配身分が消滅したことと、外国の革命に比べ犠牲者が非常に少なかったことだという。 私:支配身分の武士と被差別身分がともに廃止され、社会の大幅な再編成が短期間に行われた点で、「明治維新」は「革命」といえると三谷氏はいう。 NHKの大河ドラマ「西郷どん」では、「明治維新」をどう評価するのか興味があるが、奥の深い問題だね。
2018.01.12
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私:日本では少子高齢化が進み、2060年の日本の人口は8674万人、今の7割にまで減ってしまい、同時に高齢化がさらに進み、65歳以上の老年人口の割合が現在の23.0%から39.9%まで上昇するという。 しかし、アフリカは逆で、現在は12.56億人なのに対し、50年には倍増の25.20億人になり、世界全体の4人に1人を占める見通しで、かつ、6割は若者だという。 A氏:アフリカは54カ国あるが、記事はまず、その中で約1億9千万人と大陸最大の人口を誇るナイジェリアを中心にとりあげている。 ナイジェリアの人口は2050年までに4億人に増えて米国を抜き、中国、インドに次いで世界で3番目に人口が多い国になるとみられている。 2100年には8億人近くに増えるとも推測されている。 私:21世紀に入って大きく経済成長したこの国の人口増に、企業が熱い視線を送る。 昨年11月にラゴスで開かれた国際見本市には、大手の自動車メーカーや食品関連企業がこぞって出展し、日本企業も20社以上がブースを構えた。 バイクの新モデルを披露したホンダ現地法人社長の室岡克博氏は「ナイジェリアでは中 国やインドのメーカーとの競争が激しい。ただ、人口増で巨大マーケットに成長すること を考えれば、ここに来るしかない」と断言。 国際見本市を主催したラゴス商工会議所のショラ・オイエタヨ副会頭は「ナイジェリアは資源も豊富で、何より優秀な若い人が大勢いる。この国の未来は明るい」と太鼓判を押したという。 A氏:しかし、アフリカ諸国では、一方で、貧困や飢餓の解決や、教育や雇用の確保などが急務。 世界銀行によると、アフリカ諸国ではナイジェリアを含む少なくとも12カ国で、1日1.9ドル未満で暮らす貧困層の割合が人口の半数を超える。 人口の3割を超える国だと約30カ国になり、栄養不足人口の割合や、5歳以下の乳幼児死亡率が高いと国連が認定した「後発開発途上国」も、全47カ国中33カ国(17年6月時点)がアフリカ諸国。 私:国連は15年、持続可能な開発目標(SDGs)を採択。 「貧困をなくす」や「質の高い教育をみんなに」など、30年までに達成すべき17の目標を設定。 ナイロビ大学のアルフレッド・オティエノ准教授は「出生率が高い国では、教育機会や雇用、食料、水の確保が喫緊の問題。解決できなければ、高い出生率は貧困を永続化させる恐れがある」「国際社会はアフリカ諸国で教育機会の拡大や女性の地位向上、避妊薬の普及を今以上に支援すべきだ」と指摘。 現在の世界総人口は75.50億人だが、50年には97.72億人になるという。 食糧は大丈夫かね。 その頃は、日本は人口減と老人国で、「経済小国」になっているかもしれない。
2018.01.11
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私:米ラスベガスで9日始まった家電・技術見本市CESを前に、トヨタの豊田章男社長は、「車をつくる会社からモビリティーの会社へ変えることが私の目標だ」として、自動運転車を使った様々な移動サービスの基盤をつくると発表した。 A氏:米グーグル、米アップルやウーバーなどのIT企業が先行する自動運転車やそれを使った割安なシェアサービスが普及すると、米国の新車販売市場は40年までに4割縮む、と英金融大手のバークレイズは予測する。 トヨタの「ドル箱市場」であり、ほかの先進国もこうした流れと無縁ではなさそうだ。 私:自動車各社は、サービス事業者に商用車を卸す「下請け」になりかねないことにも懸念を募らせる。 トヨタは、シェアサービスや自動運転車の普及でマイカー需要が減る懸念が強まる中、「ライバル」と名指ししたITの巨人、米アマゾンや資本提携先のマツダに加え、相乗りタクシーのようなライドシェア事業を手がける米ウーバー・テクノロジーズ、中国の滴滴出行(ディディチューシン)と自動運転車を使った様々な移動サービスを共同で開発していく。 A氏:米フォード・モーターや独フォルクスワーゲンは移動サービスを強化しようと、ノウハウを持ち、全面対決は避けたいIT大手との関係を強めており、トヨタの提携もこの流れに沿う。 私:トヨタは、初公開した電気自動車の試作車「eパレット・コンセプト」を使い、ライドシェアや商品の宅配といった運輸・物流のサービスを運転手なしで提供する基盤をつくり、車両の販売や貸し出しだけでなく保守や保険でも稼ぎたい考え。 各社との実証実験を2020年代前半から米国などで始め、。他社の自動運転システムも載せられるようにする。 A氏:国内外の主要企業には事業の重点を時代にあわせて変化させたところが少なくない。 トヨタも1937年、織物機械メーカー、豊田自動織機の一部門が独立して生まれた。 豊田社長はこの日、祖父の喜一郎が織機づくり技術を土台に自動車づくりを始めたことを紹介し、「3代目が会社をつぶすと言われるが、そうならないようにしたい」として、移動サービスへの注力に生き残りをかける考えを強調した。 私:自動車やITの大手がめざすサービスは、モノや人の移動に伴う費用を引き下げ、消費者の生活を豊かにする可能性を持つ。 国内の人手不足の解消にも貢献しそうだが、一方でクルマの生産や販売が減ったり物流などの仕組みが変わったりすれば、多くの働き手に影響が及ぶ懸念もある。 トヨタをはじめとして、自動車業界も大きな転機をむかえつつあるね。
2018.01.10
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私:原氏は、昨年1年をふりかえり、時代の変わり目のような場所に立っているとして、そのひとつとして、「石油の世紀」といわれる石油依存の変化にふれている。 世紀を超えて増え続けてきた石油需要が、いよいよ頭を打つのではないかと、最近、世界の石油専門家たちの間に「需要ピーク説」が浮上しているという。 A氏:きっかけはフランスと英国が昨夏、2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売を禁止すると相次ぎ発表したことで、いわゆるEV(電気自動車)シフト。 背景には地球温暖化や都市の大気汚染問題、産業政策上の思惑があり、ドイツやインド、中国などにもこうした機運が広がりつつある。 中国については、このブログの「東京モーターショー始まる 変容する『クルマの世紀』」で、中国は先進国に先んじて国家戦略として、19年から、EVを売るようメーカーに迫る規制を入れるとしてとりあげているね。 私:もし、世界消費の4割以上を占める自動車市場で石油が使われなくなってくれば、石油は供給不安どころか供給過剰になりかねない。 ただ、需要のピークが数年後、あるいは十数年後にやってくるとみる早期到来説はまだまだ少数派のようで、国際機関や石油メジャーの多くは早くとも40年代、50年代になるだろうと考えている。 「それでも21世紀は少なくとも『石油の世紀』でないことだけははっきりしてきた」と日本エネルギー経済研究所の小山堅常務理事は言い、次は「電気の世紀」と予測する。 A氏:その電気を作るのが、再生エネルギーなのか、原子力や石化燃料なのか、で意味は違ってくるが、自動車という最大消費市場で石油が使われなくなれば「世界」は変わると原氏はいう。 私:需要ピーク説はすでに至るところで影響を及ぼしつつあり、サウジアラビアの若き皇太子によるすさまじいまでの急進的改革。 潤沢な内部留保があっても賃上げに渋いトヨタ自動車も、政権や労働界から批判されても動かないのは、迫りつつある脱石油の荒波に備え投資資金を蓄えているのだとしたら、合点もいくと原氏はいう。 A氏:中東の安全保障から春闘まで、石油の未来がさまざまなシステムの命運を握っている。 次世代エネルギーが何であれ「ポスト石油の世紀」の混迷はとうぶん続くのだろうと原氏はみる。 私:石油問題以外に、トランプ大統領の暴露本などのニュースや英国のEU離脱などで民主主義の問題点と思われるものが出ているが、今年は、今までの世界を支配していた考えが、大きく見直される転機の年になるのだろうか。
2018.01.09
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私:昨日、テレビ番組を見ていたら、産経新聞社論説委員・河合雅司氏著「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」 (講談社現代新書)をとりあげ、著者を呼んで1時間番組をやっているのを見た。 先進国のトップを切っている日本の少子高齢化のゾッとする問題点がクローズアップされた。 A氏:この本の読者評に「人口動態とそのインパクトは、この本にあるように20~30年先の予測が可能です。逆に言えば、現在直面する人口減少・高齢化とそのインパクトは20~30年前から分かっていた筈ですが、つい最近まで無為無策だったことに政治と行政のレベルの低さと劣化を感じます」とあるが、その通りだね。 私:少子化は、すでに1940年代に問題となり、生産労働人口は1990年代より問題になっている。 それに対して、政府は何も効果的な手を打っていないで、昨年の選挙で安倍首相が「少子高齢化は日本の危機」だといい出した。 読者評にある通り「危機」は遅くとも20~30年前から分かっていた筈で、今更、「危機」というのは、政治と行政のレベルの低さと劣化を感じるね。 A氏:テレビでは河合雅司氏は、対策の基本理念として「縮む」ことだと言っていたね。 これは高度成長再びという「成長志向」の否定だね。 「縮む」という発想は、このブログでふれた「都市を離れ『野生』に飛び込む 山あいで狩猟や農業、五感通し『生きる実感』」の生き方に通ずるね。 私:少子高齢化に伴う労働力不足が懸念される中、政府は「働き方改革」をうたい、女性活躍や男性の育児参加などを訴える。 電通の女性社員が自殺したのは過労のためと労災認定されると、企業側も雪崩を打つように働き方改革を叫ぶようになったが、長時間労働や非正規雇用で労働力を調整してきた構図は複雑で、政府も企業も成長の目標を手放さず、現場に変革を求める。 「縮む」志向がない。 A氏:『「働き方改革」の不都合な真実』(共著)などがある千葉商科大の常見陽平専任講師は、こうした上を目指し、働く人に無理を強いる現状に「第2昭和をつくろうとしている」と批判的。 「目的達成率の高い人を前提としたら生きづらい社会になる。サービス残業が増えるだけの『働かせ方改革』だ」と指摘。 私:まだ、「成長志向」だね。 常見陽平氏は「各個人が人生で大事なことを明らかにし、『自分の気持ちのいい場所』を見つけていくしかない」という。 「縮み」志向だね。 「自分を縛りつけるものから」の「逃走」だね。 A氏:慶大の若新雄純特任准教授は、結論づけられないものは避けて、一つの答えだけを評価してきた戦後の日本人のあり方を「正解教」と表現し、「正しい家族」「手に入れるべき家電や車」、そして「正しい働き方」もその一つであるとみる。 私:画一的な就職活動に違和感を抱く若者向けの「就活アウトロー採用」など、若新氏は多様な働き方を提案してきて、福井県鯖江市では、地元での就労や就農を前提としない「ゆるい移住」施策のコーディネーターも務めた。 高学歴やスキルを身につけ、安定した組織で働くという、そんなかつての「正解」モデルから逃れた若者もやってきた。 A氏:バブル崩壊以前は物を次々と手にすることで得られたと想像するが、低成長時代を生きる自分の尺度は、過去の自分と今を比べる「自分相対」だという。 私:安倍首相は将来、ITを駆使したIoT業界の成長を期待すると年頭に言っていたが、すでに少子高齢化でIT技術者の不足が予測されている。 少子高齢化を「日本の危機」といいながら、政策に「危機感」が乏しく、逆方向の手を打っていると言わねばならない。 「危機」なのは少子高齢化ではない。 それに対する手を20年、いや、30年も放置してきた政治の劣化、怠慢であり、いまだに厳しい反省のなさである。
2018.01.08
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私:ジョン・W・ダワー氏は、敗戦・占領下の日本の内向きの姿を描いた名著『敗北を抱きしめて』の著者でこのブログでもジョンダワー著「敗北を抱きしめて・増補版」で3日間とりあげ、さらに追加して、戦前と戦後の区別はあるの?:、美しい特攻隊?:、幻の日本の戦争裁判:でもとりあげ、合計6日分の記録となった。 また、太平洋戦争中、米兵の日本兵に対する残虐行為にふれた日本人は本質的に残虐か?ジョン・ダワー著「容赦なき戦争」もあるね。 また、戦後、いつまでも続く、日本の近隣国との歴史問題にふれた「なぜ、まだ領土問題なのか」というインタビュー記事もある。 A氏:ダワー氏は、米マサチューセッツ工科大名誉教授(日本近代史・日米関係史)だが、この書評でとりあげた本は、「アメリカの世紀」の裏面に光を当てるものだという。 ダワー氏は、世界に平和をもたらすことができるというこの信仰にこそ、「アメリカの世紀」を実質上「暴力の世紀」にしてきた要因があると見る。 私:注目したいのは、他を圧倒し、自信にあふれるこの国家が、一方では絶えず怯えと不安に苛まれてきた、という指摘である。 その怯えと不安は、冷戦後もなお軍拡を続け、強大な軍事機構を維持するうえで不可欠な要素で、アメリカはいま、ほぼ70カ国に800を超える基地をもち、グローバルな展開を遂げたこの軍事網を維持するために、日々3千億円超が費やされている。 A氏:そのコストは膨れあがった軍事費にとどまらず、とくに印象に残るのは、軍事から身を引き離すことができなくなった政治のありようである。 安全保障への過剰反応は、社会を常時「準戦争状態」に置き、特定の個人や集団だけではなく、市民社会全般が秘密裏の諜報活動の対象となり、民主主義にも暗鬱な影を落としている。 私:アメリカの世界覇権に日本がどのように加担してきたかについて本書は直接には言及しないが、『敗北を抱きしめて』の著者ならではの示唆が随所に読み取れるだろうと評者は指摘する。 日本には120を超える米軍基地が置かれていて、「在日米軍駐留経費」を負担し、アメリカの軍事展開を兵站面で支え続けてきた。 実際の軍事行動面でも日本政府がアメリカに異を唱えたことは戦後一度もなく、対米従属の根は深いと評者はいう。 A氏:北朝鮮の挑発が「国難」として語られるなか、巨費を投じてミサイル防衛システムの更新・拡充をはかるなど、日本はいま、アメリカの軍事複合体制にさらに深く組み込まれつつあり、学界の一部に軍事的な安全保障研究を解禁しようという動きがあったことも記憶に新しい。 私:今年は改憲論議がいよいよ本格化するだろう。 憲法は、これまで日本が少なくとも米軍の作戦行動に巻き込まれるのを阻んできたが、ダワー氏は、「普通の」軍事化を促進するために憲法を変えれば、国家の性格も変わる、と言う。 日本は大きな岐路にさしかかっている。 「暴力の世紀」を省みることは、私たちにとっての課題でもあると評者はいう。
2018.01.07
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私:この記事では「タメ」という言葉が重要な位置を占めているが、この意味が最初、ピンとこなかったね。 「タメ」の意味をネットで検索すると、「溜(め)」「為」「ため」と3つ出てくる。 「溜め」は「ためておくこと。その場所。特に、こえだめ」、「為」は「利益となること。有利なこと。役に立つこと」、「ため」は相手と対等なこととある。 A氏:この記事の出だしに、ネタ一丁でテレビを席巻、彗星のように現れ、きれいに消える「一発芸人」、「一発屋」の例をあげている。 その多くが一時的なお笑い芸人だから、記事の「タメ」は「溜(め)」の意味だね。 私:ライターの佐野華英氏は、平成から世にあふれた一発芸を「背景説明なし。パッと見て、即笑える。せいぜい30秒」「ネオンサイン化した笑い」だという。 いわば「タメなき笑い」だが、見渡せば、「タメ」がないのはお笑いに限らず、20代以下の若者のコミュニケーションツールは、LINEの一人勝ちに終わりそうで、手元でひと呼吸おく手紙や電話どころか、「もはやメールでさえ、まどろっこしい」と佐野氏はいう。 A氏:一橋大教授の中北浩爾氏も「タメなき時代」を実感していて、教室が300人以上占める政治学の授業で、毎回、政治家らの発言に、学生のコメントを求めるが、ある日、元大阪市長・橋下徹のツイッターから作った題の「全会一致が決められない政治の元凶」で多数決こそ民主主義、という命題に感想を求めた。 中北教授は、「学生にマイクを回して見解を聞くんですが、8割方は多数決がいいと。少数の反対で決まらなくなることへの恐怖感がすごい」という。 私:時間のかかる合意形成よりは、即断即決、即効性で、それこそが政治だという、転機は1994(平成6)年。 政治改革4法案を可決し、小選挙区制の始まりで、過半数に至らない得票率でも、国会では改憲さえ発議可能な巨大与党を形成できる。 多くの政党が時間をかけて、合意点を手探りするという、そんな状況に、「決められない政治」と宣告が下され、2015年に安保法、17年に「共謀罪」法が「スピード感をもって」「決められ」たのは、だから、ある意味で制度設計通り。 A氏:中北教授は、自著で、(1)小選挙区制―二大政党制―即断即決の「競争デモクラシー」(2)比例代表制―穏健な多党制―時間をかけた合意形成の「参加デモクラシー」と、分類している。 すなわち、(1)は「タメ」なし民主主義、(2)は「タメ」のある民主主義。 私:昨年、ベストセラーとなった千葉雅也氏(立命館大准教授)の「勉強の哲学」は、異色で、時間のかかる「かったるい」勉強の面白さを伝え、「現代のコミュニケーションは、善か悪か、敵か味方かと二元論に単純化しがち。言葉に重層性や含みがない。アイロニーとユーモアが通じなくなっている」「分かりにくさ、『タメ』を大事にするがゆえ、『タメ』のない、分かりやすいコミュニケーションも追究する。そもそも勉強とは、自分のコミュニケーションの仕方が変わっていくということなんだから」という。 今、多数決で、賛否僅差で全体の方向が決まる例が増えているね。 英国のEU離脱、最近のスペインのカタルーニャ独立も賛否が僅差だが、政治は多数派の一方的支配になり、「少数でない少数派」は無視される。 「白か、黒か」、「右か、左か」の間のない決定に僅差の多数決は、民主主義的決定なのだろうか。
2018.01.06
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私:霊長類学者の山極寿一京大総長は、山へ行くことで学問に必要な「直感力」が鍛えられると訴える。 突然の危機に遭遇する自然では、とっさの身体の動きが生死を分ける瞬間が何度も訪れると指摘。 ネットでいつも他者とつながり、共有することばかり考えていては五感は養われないとも述べ、野生のゴリラと共に暮らすように研究してきた自身の体験から、「野生の思考」の中にこそ「幸福の原点」があるとも説く。 A氏:最近、視力が落ちて来たので、眼の健康本を読んだら、狩猟民族の視力は4.0が普通だと書いてあった。 テレビ、パソコン、スマホの生活では視力という重要な身体情報収集能力が低下しているのを痛感したね。 私:「人間らしいAI」を研究している國吉康夫東大教授は、人間の五感や身体運動を通して、新たなAI開発に取り組む。 人のために本当に役立つのは、バランスの取れた『思考』が可能な、汎用性のあるAIで、設定したプログラムや与えられたデータだけをもとにしたAIでは、突発的な事態に反応できなかったり、想定外の動きをしたりするリスクがあり、「体を動かす経験が、共感など人間らしい心のベースになる」という。 それに加え、内臓の働きや呼吸、心拍といった全身の動き、つまり情動も重要な研究対象で、五感を通して感じ、外界に働きかけることで、脳は様々な情報を得ており、身体は情報の源だという。 A氏:国吉教授は、さらに、都市よりも自然な環境に身を置く方が人間は豊かな情報を得られるのでは、ともいう。 都市では特定の機能がある人工物に囲まれ、それらに行動が規定されるため、思考もパターン化されがち。 一方、自然界では同じ場所にいても人によって得る情報が違い、人間の側からも無限に外界へいたずらを仕掛けられる。 こういった条件の下でこそ、意味のある創発が起こるという。 私:なぜ、今「非合理性」や「野生」が見直されるのか。 オーストラリアなどの先住民族にも詳しい比較文学者の中村和恵明大教授は「成長型経済は行き詰まり、環境問題も拡大し、このままでは未来は暗く、別の生き方を探すのは当然」という。 「リスクヘッジのためには多様性が重要なのに、強者によるグローバル化は一つの価値観やシステムを推し進めた。西洋起源の近代文明はどん詰まりです」という。 A氏:電気などの便利なインフラに依存する都市のあり方に不安を抱く人も増え、「先住民族や狩猟民の暮らしを見直す動きが生じている。でも彼らは現代をともに生きる同時代人。安易に野生のラベルを貼るのではなく、長年自然と折り合いをつけてきた人々の知恵を学び直すべきです」という。 私:その一つが「いかんともしがたいことについて深く考えつづける力」ではないか、と中村教授は言う。 「地震や洪水、病気や死、どうしようもない不確実さや不安に見舞われる状況下で耐え、生きつづけるために人々は儀礼を行い、物語を共有した。文字のなかった民族は多いが、歌や舞踊、物語、儀礼がない民族はない。 それらこそが、困難と向かい合う手段だからで、最速で解決することばかりに価値を置く現代社会は、こうした力を失いつつあるのでは」とさらに言う。 A氏:成果や効率を求める都市的な思考や環境からいったん距離を置き、自然の中で五感や身体性を問い直す、それが新たな発想や可能性を探る道にもつながる。 私:このブログの養老孟司氏著『遺言。』で、養老氏は、目や耳などを通じて受ける「感覚」に対して、そこに「同じもの」を見つけ、意味に変換し、秩序を与えるのが「意識」。 動物は「感覚」を使って生きるが、人間の活動の大部分は「意識」に基づくという。 都市化が進む社会で暮らすと「『感覚』入力を一定に限ってしまい、意味しか扱わず、『意識』の世界に住み着いている」ようになり、それはほとんど病気に近づいているという。 実際には多くの人がその息苦しさに気付き、何とかバランスをとろうとしているのだという。 以前、昆虫採集マニアの養老氏は「参勤交代」を提唱していたね。 半年ごとに、都会を離れ、田舎にいくわけだ。 A氏:もう、6年ほど前になるが、このブログの「減速して生きる・ダウンシフターズ」で3日間連続でふれていたテーマでもあるね。 私:都会に住んでいる現在だが、とりあえず、近所の自然林に囲まれた自然公園をできるだけ散歩道にするか。
2018.01.05
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私:韓国の大学入試の厳しさはマスコミで盛んに報じられているが、中国も厳しいことをこの記事は報じている。 中国・安徽省の毛坦廠鎮は、山あいに位置する小さな村で、元々の人口は約1万人だったが次第に増え、現在は5万人近く。 増加分のほとんどを受験生とその親などが占め、彼らは1年限定の住民。 A氏:毛坦廠政府が教育に力を入れ始めたのは、2000年代以降で、優秀な教師を集め、外部から高校生や浪人生を招くため、地元の毛坦廠中学(高校に相当)に私立高校と予備校を併設し、東京ドームの約5倍の敷地に校舎や寮を建て、保護者帯同用のアパートも周辺に整備。 私:街では映画館やカラオケなど娯楽施設の営業を禁じ、ネットカフェも撤去し、大学合格者数が年々増えるにつれ、評判を聞いた受験生が集まるようになり、いつしか村全体が「アジア最大の大学合格工場」と呼ばれるようになった。 A氏:毛坦廠中学は外地から来る受験生について、母親など家族の帯同を求める。 過酷な受験戦争を乗り切るのは家族の支援があってこそ、との考えからだ。 朝6時半に授業が始まり、帰宅は午後11時半で、日曜のみ午後3時までだが、休みは1日もなく、こうした生活が、「高考」と呼ばれる大学受験の6月まで続く。 私:こうした背景には、13億人が暮らす中国の都市と農村の貧富の激しい格差がある。 農村出身の低賃金労働者が都市部の成長を支える構図だが、都市戸籍を持たない彼らに住み続ける権利はなく、人口が増え続ける北京では昨年11月、多くの出稼ぎ労働者が排除される事件も起きた。 農村出身者にとって、大学受験は人生を変えるほぼ唯一のチャンスと言える。 A氏:ただし、経済的な発展とともに変わりつつある価値観もあるようで、家族主義が強く残る中国ではかつて、成功をつかんだ子供が家族や一族を支えるという考え方もあったが、子供が親たちの世代より豊かになれば、それでいいという考え方も出てきた。 私:農村で生まれ育った親たちには、本を読んで知識を得る機会さえなかったが、子供には多くを学んでほしく、人生の基礎さえ築けば、あとは自分で歩けるという。 しかし、若い受験生2人それぞれに「あなたの幸せは何ですか」と記者が聞いたら、「親と一緒に過ごせる今が、一番幸せです!」と偶然同じ答えだったという。 でも大学合格後は、都市化の流れでその幸せを捨てないといけないことになる。
2018.01.04
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私:作家・真山仁氏については、福島第1原発事故の文藝春秋の特集で真山仁氏が、この事故についてふれていたのを読んで初めて知った。 実は、真山氏は原発事故を想定した小説を書きたかったので、最初、日本の原子炉を舞台にしようとしたが、日本の専門家に「日本の原子炉は絶対安全だ」と言われ、中国に小説の舞台を移した「ペイジン」という小説を書いたという経緯がある。 真山仁氏はこの小説で「全電源喪失」をすでに「想定」して書いている。 A氏:その小説は2008の刊行だから、福島第1原発事故の予言となったね。 当時、このブログの「ペイジン」上、下でとりあげているね。 私:その真山氏が、昨年、日本の財政危機を巡る小説「オペレーションZ」を出版。 日本の財政の債務残高が1千兆円を超えても放置されていることへの問題意識があったとのこと。 真山氏は「怖いものはみたくない。できたら通り過ぎてほしい。『見ざる』『聞かざる』『言わざる』の3ザルですよね。お上に、よきに計らってもらえばって思っている表れでしょう。でも、そうしていたらろくなことがなかったのが、この20年ですよね」という。 A氏:福島第1原発事故などに関して官僚やメディア、大学教授といったインテリに対して国民が嫌悪感をもってしまっていて「だまされた」という感情があり、「もっと一生懸命言ってくれたら、気にしたのに」と思っている。 本当は、スリーマイルもチェルノブイリの事故も隠されてはいないのにという。 私:今度の小説「オペレーションZ」を書く動機として、「政治家も、財務省をたたいていれば自分たちの責任が転嫁される、と考えているふしがあり、官僚主導が嫌ならば、政治家がもっと勉強して官僚を使いこなせばいいのに、それもできず、警鐘がきちんと鳴らされていないので、目の前にあるものが現実味のある恐怖であるということを伝えるのは、小説家の真山氏の仕事だと思ったという。 A氏:国債を持っている外資の機関投資家は、ヤバイと思った瞬間に即、逃げていく。 専門家に詰めていくと、2020年の東京五輪・パラリンピック後が危ういとか言い始めていて、日本は経済規模が大き過ぎて、破綻をしたらIMFにも他の国にも助けてもらえない。 あと何年で爆発するのかは正確には分からないが、時限爆弾は動いていて、財政問題の最大のポイントは、危ないことは分かっているのに、誰も逃げようとしないことだという。 私:現状を認識すれば、お金が足りないのだから国民にも我慢してもらいましょうとなり、我々は没落貴族で、もう荘園はなく、ワンルームに住んでいて預金も封鎖されるかもしれないような状況。 日本人の頭の中はいまだに右肩上がりのため、現実と意識が隔たっている。 我々は低成長でなく下降しているのに、成長過程のルールが守られているという。 増税を掲げると選挙に負けると政界で言われているが、歳出削減や増税に反対するのは、現世での利益を追求する人たち。 でも財政の問題は、未来の話。 今の1兆円の借金は今の1億人で割るのでなく、これから生まれる3千万人ぐらいの人で負担することになる。 A氏:真山氏は「新聞のインタビューで、18歳の若者が『僕は増税する議員に投票する』と言っていた。借金を減らすために、我々は歳出削減や増税を言う政治家を探さなければならない。そういう政治家は『勇気のある』『格好よい人』のはずなのです」という。 真山氏は、原発事故のときのように財政問題で「だまされた」とか「知らなかった」と言わせたくなく、人間は未来に何かを残すために生きているという。 最初に誰かが言わないと動かない。 小説家として、自分たちの世代の責任として真剣に伝え続けたいという。 私:早速、小説「オペレーションZ」を図書館に予約するか。
2018.01.03
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私:年末の紅白歌合戦を途中から見たが、かっては、時代のシンボルのような歌手が中心を占めたが、次第にバラバラになっていて、名前の知らない歌手が多く興味を失ったね。 紅白の出場歌手が映す時代の姿は、昭和と平成で大きく異なり、それを音楽ジャーナリストの柴那典氏は「大小の袋」に例え、 昭和から平成初期は、一つの大きな袋に、老若男女、誰もが知る人気歌手たちが詰まっていたのが、それが今世紀に入り、女性アイドルグループ、若手演歌歌手など、複数の小さい袋に分かれたという。 A氏:そして、最近の紅白出場歌手は、それぞれの小さな袋から少しずつ選ばれ、視聴者は、興味のない袋の歌手を知らない。 柴那典氏は「普段から、SNSでも、小さな袋を共有する同士で対話する。共有しないメンバーでカラオケに行くと、ぎくしゃくするのには、そんな背景があるのではないか」という。 私:そにせいか、カラオケ店が入る商業ビルから、1人ずつ出入りする男女が目立つ。 一人でカラオケを楽しむ人たち。 友人と来る時は、選曲が違い、「全員で歌える曲ってないですよね。一番盛り上がって大合唱になるのは『君が代』と線香のCMの『青雲のうた』」だという。 「大きな袋」は、国家と広告で、それが平成なのか。 確かに、大勢でカラオケに行く機会が減っていて、そのせいか、平成前半の1組あたりの平均利用人数が3.6人が、後半では2.8人と減っている。 A氏:昭和から平成、バブルの崩壊後に経済と消費の右肩上がりが止まり、必要なものは店まで行かずにインターネットを通じて購入。 新車よりリースやシェアが注目され、音楽やカラオケも、通信技術の革新に伴って大きく変容。 私:CDなど音楽ソフトの生産額はピーク時の98年に比べて4割に落ち込み、日本レコード協会が16年8月に行った調査では、半年間に音楽商品を買ったことがある人は全体の3割。 買わない人が挙げた理由で最も多いのは「今持っている曲で満足している」で、最も利用する音楽聴取手段は、4割以上が動画サイトの「ユーチューブ」と回答。 A氏:内閣府の生活満足度調査で「心の豊かさ」を重視する人が「物の豊かさ」派を引き離していく。 生涯未婚率の上昇や高齢化の進展により、平成の時代に「単身世帯」が最も多い世帯類型となり、「おひとりさま」は流行語となり、一人客専門の飲食店ができ、コンビニでも総菜の量がコンパクトになった。 私:國分功一郎・高崎経済大学准教授は、満員電車の風景の例で、多くの人がぼうっとスマホを見ていて、暇さえあればゲームを始めるとして、「消費社会は私たちを終わることのない消費のゲームに投げ込み、もはや依存症に近い。平成にもたらされたのは、依存を利用して人々にお金を使わせる仕組みではないでしょうか」という。 A氏:平成になってIT化が進んでも、人々は楽になるどころか逆に長時間、仕事に拘束され、仕事以外も誰かとつながり続けている。 自分が本当にしたいこと、幸せを感じることは何なのかを、心身が疲れてそれを考えられない。 「楽しむ」には、自分と向き合う時間や訓練が必要で、人は楽しみ方を知らないと、「暇」で、自由の中で「退屈」し、「退屈」がつらいから、スマホに貴重な時間を奪われる。 私:國分功一郎教授はユダヤ人哲学者ハンナ・アーレントが、「孤独と寂しさは違う」と言っていて、「孤独」とは、私が自分自身と一緒にいることで、自分と一緒にいられない人が「寂しさ」を感じ、一緒にいてくれる他者を求めるから、自己と対話できないとし、「孤独」にならなければ、人はものを考えられなく、「孤独」こそ、現代社会で失われているものだと言っているという。 この記事の筆者は最後に自分の体験を交えて言う。 「流行に流されて似合わない服を買い、「話題の曲を歌えば友達や同僚にウケる」と、本心では共感もしていないCDを買ってきた。昨夏、旅先で見た花火の写真をインスタグラムに投稿した。『いいね!』の数は13。内なる自分が言う。『1300でも、1でも、今まで生きてきた中で見た一番美しい花火だったことに変わりはない』。もう一人の自分が答える。『当然だ。人と自分を比べてばかりいたら、全てが面白くなくなる』。この感覚。たぶん、ハッピーだ」 A氏:1日の新聞の「逃走/闘争 2018:1」欄でも「歌手にしろ俳優にしろ、国民的な『象徴』が存在していた時代は遠のいた。作り手も受け手も、シンボルを見上げたかつての枠組みから逃走し、創作・表現を自由な形でやりとりする流れが加速している」とあるね。 私:その「逃走」が、自己の「孤独」を見つめる「闘争」になるのかね。
2018.01.02
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私:朝日新聞の「社説」は見出しをみると、大体、内容が推定できるのであまり取り上げていないが、この元旦の「社説」は安倍長期政権を別な視点で捉えていて興味があるね。 持論の憲法改正も、狙いを定める条項が次々変わってきたね。 A氏:原因の一つに 国政選挙を実に頻繁に行ったこと。 政権を奪還した2012年12月の衆院選まで含めて数えると合計5回と、ほぼ年に1回で、その都度、政策の看板も次から次へと掛け替えてきて、慌ただしい。 私:学界、経済界、労働界の有志の集まり「日本アカデメイア」などは昨年12月、「先進民主政はどこへ向かうのか?」と題するシンポジウムを催した。 日本について指摘されたのは、政権維持が自己目的化し、長期的見通しや政権担当期間を通じてのプログラムがないという、場当たり的な政権運営のあり方だ。 A氏:シンポでは、「財政再建」や「地球温暖化対策」といった政策課題を解決する難しさが挙げられた。 長い時間軸の中で取り組まなければならないテーマであって、今さえよければという姿勢では、まだ生まれていない将来世代に大きなツケが回ると「社説」はいう。 私:短期志向になりがちな政治の一つの側面を表現するのが、「シルバー民主主義」という言葉。 日本では有権者に占める高齢者の割合が高く、しかも、若い世代に比べて投票率が高く、その大きな影響力を、政治の側は気にせざるをえない。 結果として、社会保障が高齢者優遇に傾けば、世代間の格差は広がり、長期的には財政を圧迫し、将来世代に禍根を残すというわけだ。 A氏:ところが、昨年夏、東京都文京区の有権者2千人を対象にアンケートをしたら、日本の「財政赤字」や「地球温暖化」といった「持続可能性」に関わる問題への関心は、高齢層の方が高かった。 生まれていない「将来世代の代弁者」の役割を積極的に担う意欲についても、同じ傾向だった。 老人は子どもや大学生に比べ、近視眼的な判断をしにくいという先行研究にも触れつつ、調査をした亀田達也・東大教授は「今の世代と将来世代との間の公平を実現する上で、高齢者の果たしうる役割はありそうだ」という。 私:俺も先の短い自分の世代以上に、孫の世代が心配だね。 A氏:民意の「変化」を敏感に追う政治家に対し、政策の「継続」と一貫性にこだわる官僚。 そんな役割分担は、官邸主導が進む中であやふやになったと「社説」はいう。 「民主主義の時間軸」を長くする方策を新たに考えなければならないとして、様々なアイデアが既に出ている。 「財政再建」でいえば、独立した第三者機関を置き、党派性のない客観的な専門家に財政規律を厳しくチェックさせる、といった提案や、若い人の声をもっと国会に届けるため、世代別の代表を送り込める選挙制度を取り入れてみては、という意見もある。 私:国政選挙が年中行事化しないよう、内閣の解散権を制限すべしという主張は、最近の憲法論議の中で高まりつつある。 「来たるべき世代に対する」国の責任を明記するのは、ドイツの憲法に当たる基本法で、ドイツでは1994年の改正で、環境保護を国家の目標として掲げた。 しかし、「社説」は、ドイツ憲法だけでなく日本国憲法でも 前文には「われらとわれらの子孫のために……自由のもたらす恵沢を確保し」とあり、11条は「基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」とうたうと指摘している。 「働き方改革」のスローガンの後に、「人づくり革命」、「生産性革命」が登場した。 確かに、政策スローガンの「時間軸」が短い気がして、次の世代に対して心配だね。
2018.01.01
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私:人類が原発を利用し始めて約60年。 東京電力福島第一原発事故の惨禍を経て、世界は大きく二つの流れに分かれ、中国、日本、フランスのように原発利用を推進し続ける国がある一方、ドイツ、スイス、台湾などは脱原発に向かった。 その中国が世界一の原爆大国をめざしていて、その規模には驚いたね。 5年前に15基だった原発の営業運転は現在37基、建設中19基、計画40基、構想179基で構想段階のものを含めると、将来は2705基を超えるという。 20年代半ばには米国(現在99基)を抜き、世界一の原発大国になるとの予測がある。 A氏:中国国内では深刻な大気汚染対策として「脱石炭」の動きが進み、地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の牽引役を担おうとする習近平指導部が、二酸化炭素の排出量削減の面で原発にかける期待は大きいためだ。 総発電量に原発が占める割合は3%程度で「世界の平均水準の11%より低い」と、増設の余地は十分あるとの認識だという。 習指導部が注力するシルクロード経済圏構想「一帯一路」でも、原発輸出は戦略の柱で、習氏は15年にパキスタンや英国でトップセールスを展開し、アルゼンチンとも輸出で合意。 私:しかし、中国では課題も多い。 政府が頭を痛めるのは、東京電力福島第一原発事故で、中国の人々は原発に強い恐れを抱き、計画地で相次ぐ抗議が出ていることと、最終処分場問題。 中国南部に位置する防城港市では、現在の原発から約20キロ離れた場所でも08年に2基の建設計画が持ち上がったとき、14年5月、市の人民代表大会(市議会に相当)常務委員会が建設協議の中止を求める決議を採択した。 国の重要政策に地方から反対意見が出るのは異例。 市民は福島原発事故も記憶に生々しいのだろうという。 この2基の計画は滞り、いまも着工していないという。 A氏:使用済み核燃料再処理施設のほうも課題が多く、江蘇省連雲港市では昨年8月、再処理施設の建設に抗議する数千人の群衆が市庁舎に押し寄せた。 市当局はデモを断固取り締まると強い態度に出たが収まらず、市政府は建設地選定の中断に追い込まれた。 私:これに対し、政府は、来年1月、「原子力安全法」を施行させ、原発の建設や運転などを巡る規則違反に厳しい罰則を科し、施設を建設する際には地元自治体の意見を聞くことも明記。 厳格な基準を採り入れることをアピールし、市民の信頼を取りつけようと必死だ。 しかし、特に後処理の遅れは否めず、1990年代から稼働する広東省や江蘇省の原発では「使用済み核燃料プールはすでに満杯」との報道があり、一方、人材育成が追いついていないとの指摘もある。 10年で3万~4万人の管理者が必要になるとの見通しだが、大学などで専攻する学生は1万人に上るが、育成に5年以上を要するため、限られた技術者が各地を飛び回って業務をこなしているのが現状。 A氏:中国が「核のごみ」の処分場建設の難題に直面していることが明らか。 原発は多くのリスクを抱えた存在で、事故の危険だけではなく、とりわけ「核のごみ」の処分は世代を超え、原発利用国に共通する世界的な課題。 私:福島の事故後、原発の建設費は安全強化のために高騰。最新型の原発の建設費は、1基1兆円をゆうに超えるとされる。 それでも利用するのであれば、原発が抱えるさまざまなリスクに真摯に向き合うことが責務で、対応を誤れば、惨禍を繰り返しかねない。 黄砂が飛来する国から大量の放射能物質が飛んでくることを想像すると他人事ではないね。
2017.12.31
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私:「働き方改革」はスローガン化して、大企業の「長時間労働」の体質におおきな変化が感じられないが、この記事は中小企業だが、神奈川県秦野市の鶴巻温泉にある来年で創業100年を迎える老舗「陣屋」の「働き方改革」としての具体的な仕事改善例をとりあげている。 A氏:きっかけは、2009年、先代が急逝し、長男で大手自動車会社の技術者だった宮崎富夫氏(40)が跡を継ぎ妻の知子さん(40)は旅館で働いた経験がないまま、出産2カ月後に女将(おかみ)になったことだ。 私:借金は10億円で、どんぶり勘定の経営が続いた結果。 料理に使う食材の在庫管理があいまいで、むだが多く、経営分析しようにも、紙の台帳しかない。 富夫氏の経験を生かし、目をつけたのがITで、予約から経理まで一元管理できるソフトを開発し、全従業員にタブレット端末を配った。 やはり「働き方改革」には、改善ができる人材が不可欠だね。 A氏:風呂にセンサーを付けて入浴客が一定数を超えると通知が来るようにし、また、掃除が必要か何度も確認に行かずに済むようにし、客の好みなどの情報も端末で共有。 従業員が積極的に動くようになった。 従業員の「ムダ」な作業の削減だね。 私:業績が上向く一方、浮上したのが「働き方」の問題。 休みなしで働き、知子さんの体は限界で、「顧客満足度が上がっても、働く人の生活の質が上がらないと意味がない」として、14年、思い切って火、水曜日の宿泊をやめて休館にした。 今度は生産性を落とす「ムリ」の改善だね。 「旅館が休むなんて」と苦情もあったが、16年から月曜日もランチのみで宿泊をやめた。 日本の高度成長期の週6日制から週5日制への「時短」の発想と同じだね。 A氏:それでも料理などの評判で、グループ全体の売り上げは10年の2億9千万円から、いまは7億2600万円に。 パートを減らして人件費を下げつつ、改革前に20人だった正社員は25人に増やし、正社員の平均年収は288万円から398万円に。 離職率は33%から4%に下がった。 私:知子さんは、今は、旅館業を憧れの職業にするのが目標だという。 これが真の「働き方改革」の典型例だね。 大企業も分解すれば中小の集企業合体だ。A氏:JALを再建した稲森氏のアメーバ経営はそれだね。私:「長時間労働」に頼らず、改善のプロを育て、個々の現場業務の改善を具体的に進めるべきだね。 そうすれば「働き方改革」はスローガン化しないだろう。
2017.12.30
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私:後、今年も3日残すのみだが、この「2017年回顧と展望」連載記事の最後は、「日銀の金融緩和」の問題になったね。 A氏:黒田日銀総裁は就任直後の13年4月、「2年で2%」を実現すると宣言し、短期決戦のはずが、6~7年の持久戦に追い込まれたという実態。 さらに、7月の決定会合で、日銀は物価見通しを引き下げ、「物価上昇率2%」の達成時期を「2018年度ごろ」から「19年度ごろ」へ1年ずらした。 6度目の先送りで、日銀の信認は傷ついたと記事はコメントしている。 6度目の約束破りにしびれを切らしたかのように、「無理して2%にこだわらなくてもよいのでは」という議論が専門家の間で高まっている。 「期待に働きかける」として始まった異次元緩和は、逆に期待を裏切り続けている。 私:12月21日、今年最後の金融政策決定会合を終え、黒田総裁は午後の記者会見で「(物価は)プラス幅の拡大基調を続け、『2%』に向けて上昇率を高めていく」と発表。 記事では、強気の姿勢に市場は冷ややかで、エコノミストの一人は「そもそも日銀の物価見通しは強気すぎる。黒田総裁が『2%に達する』と言っても、信用する市場参加者はほとんどいない」とし、直近の消費者物価指数は、ゼロ%台後半にとどまると指摘。 A氏:景気拡大の長さは戦後2番目で、日経平均株価は約26年ぶりの高値水準で、バブル期を上回る人手不足。 物価の伸びが鈍いのは確かだが、「これほどの緩和策をなぜ続けるのか」という疑問が広がるね。 私:緩和策の弊害も無視できず、日銀が買った国債は440兆円を超えて発行額の4割超で、国債の買い増しは限界。 株価指数に連動した上場投資信託(ETF)も買っており、「日銀が実質的な大株主」という企業が増えていて、株価の下支えとなっていて、市場機能を失っている。 マイナス金利政策は利ざやの稼ぎが出なくなり、銀行経営を追い込み、地方銀行の経営を圧迫し、3大メガバンクの大幅人員削減に追い込んだね。 A氏:それでも日銀は2%に執着するのは、2%は、欧米の中央銀行も掲げる世界標準で、日銀だけ目標を下げると、緩和縮小の思惑から為替市場が急速な円高に振れ、経済に打撃を与えかねないからだという。 私:欧米の中央銀行は今年、緩和を縮小して金融政策を正常化する「出口」へ向かい始めたが、それでも日銀は今の政策にこだわり、出口政策を語ろうとしない。 日銀幹部の一人は「我々は5年前に政府の要望で、強力すぎるほどの緩和策でちゃんと仕事をしてきた。いま外部から聞こえるのは『これ以上(大規模緩和を続けることで)がんばらないで』という意見ばかり。皮肉なことだ」と語っているという。 A氏:5年で情勢が変わってきたんだね。 「出口」の見えない大規模緩和の継続に、いらだちは日銀内にもくすぶっているという。 日銀にとって来年は、緩和の副作用にも目配りしつつ、2%目標の実現をめざすという困難な年になりそうだと記事はいう。 私:その日銀のかじ取りは誰が担うのかを市場の視線は、来年4月に任期を終える黒田総裁の「次」に注がれていると記事はいう。 それまで、市場に異変が起きないことを望むね。
2017.12.29
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私:この記事は昨日に続き、2017年回顧と展望の連載記事で、今日は「長時間労働」をとりあげている。 A氏:今年、「長時間労働」で問題になったのは、2年前の2015年12月25日、電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が過労自殺に追い込まれた件で、今年、厚労省の強制捜査を経て違法残業事件として立件され、電通に対する「罰金50万円」の有罪判決が10月に確定したことだね。 一連の動きは「長時間労働は当然」という意識が根強い日本社会に衝撃を与えた。 私:事実上青天井の残業時間は、連合と経団連の調整を経て3月、罰則付きの上限を初めて設ける方針を政府が決めた。 これに関連してこのブログの「人手不足 『バブル期超え』といわれても」で朝日新聞は4日付朝刊で、日経平均株価を構成する東証一部上場225社の過半数が今年7月時点で、「過労死ライン」とされる月80時間以上まで社員を残業させる労使協定(三六協定)を結んでいたことを独自調査に基づいて報じたね。 A氏:朝日新聞の調査担当者は調査を手がけ、多くの大企業が「長時間労働を前提とした働き方」で支えられていることを改めて痛感したという。 私:今日の「けいざい+」欄の記事では、企業が家族も含む正社員の生活を定年まで丸抱えすることが前提だった「日本型雇用システム」が、長時間労働を助長してきた面もあるとしている。 経営者は、正社員を簡単に解雇できない場合も多いため、その人数を抑えたいし、正社員の側はふだん残業して仕事をこなせば、景気が悪化して仕事が減っても職を失わずに済み、波風を立ててまで残業削減を強く主張しづらいという。 しかし、俺は、「日本型雇用システム」が、長時間労働を助長してきたという、この記事は疑問に思うね。 俺たち、高度成長時代を経験した者は人手不足の中で、時間短縮(時短)運動で、ムダな仕事を減らし生産性をあげてきた。 A氏:「時短運動」の結果、最初は週6日制が、隔週5日制となり、そして毎週5日制となるね。 背景に生産性向上がある。 だから、労働時間が減っても生産性向上でカバーできた。 私:俺が、目の前で体験したのは、30人位の女性の手作業を工場長が機械化を若い技術屋に号令し、半年で人手ゼロにした職場があり、当然、生産性は上がる。 高度成長期には、こういう改善がさかんに行われた。 改善は最初、米国の「IE(Industrial Engineering)」という改善技法の体系を学んで実行したね。 そして、それに加え、日本のオリジナルの代表的な改善技体系の例が「トヨタ生産方式」だね。 これらは、今でいう「働き方改革」の主役だった。 だから、高度成長期には「日本型雇用システム」でも、生産性をあげ、「長時間労働」を減らし、「時短」に成功できた。 A氏:これらの改善体験が伝承されず、いつからか途絶えたのかね。 オイルショックや、リーマンショックの頃からかね。 私:今日の記事は、「日本型雇用」のきしみは賃上げ交渉でも目立ってきているとして、賃上げ問題にもふれている。 安倍政権が賃上げを呼びかける「官製春闘」は4年目にして息切れが鮮明。 18年春闘で前年実績からの大幅な上積みを予想するエコノミストは少ないという。 A氏:新卒一括採用の慣行と年功色の強い賃金・人事制度のおかげで、転職して正社員になるのは簡単ではなく、働き手の4割弱を占めるに至った非正社員の雇用は不安定で、正社員との待遇格差は大きい。 大企業の正社員が主力の労働組合側は賃上げ要求より、長期的な雇用維持と企業経営の安定を優先しがちだ。 私:しかし、これも高度成長期と比較すると、当時は経営陣が利益をためこむのでなく、借金してまでも積極的に機械設備に投資したり、賃金に配分したりした。 今、バブル期並みの景気拡大だと言いながら、経営陣にその積極性がないのは、高度成長期と違い、経営側が先が見えないのか慎重になっているからだろう。 A氏:記事では、「政府は3月に決定した『働き方改革』実行計画などで、現状にそぐわなくなってきた「日本型雇用システム」の修正という考え方は示したが、具体策は小粒。 働き手の事情に合わせた柔軟な働き方を可能にし、高い賃金を支払える伸び盛りの企業・産業に人材が自らの意思で移りやすくする。本当の意味での『働き方改革』へ、覚悟を決めて踏み出す時だ」という。 私:俺は、この記事もおかしいと思う。 退社時間を早くするなどという、言い訳がましい「小粒」の「働き方改革」でなく、「IE」や「トヨタ生産方式」などの改善技法を仕事そのものへの分析に応用しムダをなくし、同時に機械化、IT化を具体的に個別の仕事について進めるべきだね。 同時にそれができる人材を育てるべきだね。 これらの仕事の改善による「時短運動」を進めるべきだね。 ところで、この連載記事は明日の最終回はどういうテーマをとりあげるだろうか。今日、別の紙面で、2017年の「17」と平成29年の「29」はともに「素数」だとあったが、興味がわいたね。
2017.12.28
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私:景気を示す国内総生産、株価、有効求人倍率、失業率も好調な数字が続いている。 しかし、消費の現場で目立つのは「節約志向」。 それを反映してか、商品も値下げ気味だね。 A氏:牛丼チェーン「すき家」は、原材料費や人件費の上昇で、11月に多くの商品を10~50円値上げする中、割高感を避けるためによく売れている主力の牛丼「並盛」の値段は変えなかった。 イオンは春と夏、スーパーなどで食品などを相次いで1割前後、値下げ。 イオンの岡田元也社長は、「脱デフレは大いなるイリュージョン(幻想)だった」と言ったが、その言葉には実感がこもっていたという。 西友も秋、断続的に値下げ実施。 私:企業業績が好調なのに、「景気拡大の実感がない」のは、多くの人が給料が増えたと感じていないからだ、というのが専門家の一致した見方だと記事はいう。 だからこそ、政府は春闘に向け、賃上げの旗を振る。財布のひもを緩めてもらい、内需拡大につなげる狙いだ。 ただ、将来不安から消費に慎重な姿勢を変えるのは容易ではない。 A氏:消費の詳細な実態はどうか。 今年の消費者白書では、若者が消費に慎重なことが報告された。 1984年に比べ、使えるお金のうち消費に回すお金の割合は、全年齢の平均が7・8ポイント減の78・4%だったのに対し、25歳未満は11・9ポイント減の76・8%、25~29歳は10・9ポイント減の79・0%、30~34歳は13・3ポイント減の73・8%だった。 すなわち、「節約志向」は若い世代で際立っていることを数字は示している。 私:就職氷河期に社会に出た世代は「ロストジェネレーション」と呼ばれ、不安定雇用に苦しむ人が少なくない。 いまは恵まれた仕事に就いている若者でも、社会保障の将来不安も重なって楽観的にはなれず、消費には慎重だ。 A氏:来年も企業業績は好調が続く見通し。 消費喚起のためには、企業が利益を賃上げに回し、魅力的な商品が生み出される必要もあり、さらに、老後を含めた将来への展望も欠かせない。 私:それには、信頼できる社会保障制度を整えること、安心できる雇用を広げてゆくことなど、多くの人が景気拡大を実感できるよう、政府も企業も取り組めることは少なくないと記事はいう。 これは、昨日のブログの「安倍政権の5年、評価は 識者2人に聞く」の水野氏の企業利益と賃金の偏りを直すべきだという指摘と共通するね。 しかし、賃上げは先のブログで田原氏が指摘しているように、先の見通しが甘くないので、企業経営側が慎重だ。 政府の口車に乗って賃上げして、それが原因で自社の業績が悪化したら、政府は責任をとってくれるのか。 高度成長期には経営者は、自社の賃金が他社より高いことが自慢だった。 今は、それは幻想だね。
2017.12.27
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私:安倍政権は26日、2012年12月の第2次内閣発足から5年を迎えた。 この記事は、安倍政権運営の評価を、ジャーナリストの田原総一朗氏と元大手証券エコノミストで法政大教授(経済学)の水野和夫氏の識者2人に聞いたもの。 A氏:田原氏は、安倍首相の一番の自慢は完全失業率が3%を切り、有効求人倍率は全国で1倍を超え、株価も2倍以上になったということで、見た目は悪くないが、経済は大きく成長せず、企業は設備投資をしていないし、経済界はすでに2020年の東京五輪後を心配しているという。 私:しかし、経済界はおおむね政権を支持し、これほど長く政権を維持できている理由として、米国に嫌われないようにしているというところもあると田原氏はいう。 2013年末に安倍首相が靖国神社を参拝した直後、田原氏は、電話で「とんでもないことをやったな。二度と行くな。また行ったら米国は歴史修正主義者と決めて反安倍になるぞ」と忠告したという。 それ以後、参拝しなくなったね。 A氏:安倍首相の憲法改正については、今は戦前のような怖さを感じるという。 戦争を知っている世代の自民党の首相は憲法9条改正を言わなかったが、戦争を知らない世代の安倍首相は、できれば戦える自衛隊にしたいのだろうと田原氏はいう。 田原氏は、安倍首相は憲法の自衛隊明記案を国民投票で否決されたら「自衛隊が憲法違反ということになりかねない」という理屈で、何とか否決されないようにもっていこうとしているのだと思うという。 私:小選挙区制で自民党もイエスマンになり、官僚も人事をにぎられ官邸にものが言えず、その結果が「忖度」の森友・加計問題で、長期政権の罪の部分が出てきているとみている。 田原氏は、「野党やメディアは『財政はどうするんだ』ともっと言わなきゃいけない。金融緩和と財政出動の出口をどうするのか。そこが日本の一番の問題だ」という。 A氏:数年前から、このブログでもよくとりあげている水野和夫氏は、利益・賃金、偏りを直すべきだとしている。 このまま異次元の金融緩和を続けても、政権が掲げる2%の物価上昇にはならないし、名目GDP(国内総生産)の3%成長もうまくいかないという。 その中で「成長と分配」ということになり、消費税の使い道を変えて教育無償化に充てるのは一定の評価はするが、その前にやるべきこととして、この20年間続いてきた企業利益と賃金のゆがんだ偏りを直すことだと水野氏はいう。 私:97年ごろから、企業利益は上昇傾向で史上最高益を更新しているが、働く人の実質賃金は15%も下がり、その上、この5年で持てる人と持たざる人の分断が深まった。 安倍政権で突然始まったわけでないが、戦後2番目の景気回復でもまったく歯止めがかからず、金融資産を持たない人の割合が3割もいると、水野氏は指摘している。 さらに、水野氏は「企業の406兆円に上る企業の内部留保と、1845兆円の個人金融資産に課税しなければいけない。時限立法で十分、不平等を正せる。消費税の使途変更だけで『分配をやっています』というのは、過去20年間の失政を無かったことにするのと同じで許されない」と厳しい。 A氏:野党が経済政策に関する明確な対立軸を打ち出せていないことについて、「成長と分配」が両立しないことを旗印に掲げ、分配だけ訴えればよく、経済成長であらゆるものを解決しようという近代の発想は、もう古いから、前例はなくても、野党は「ポスト近代」に向けて「ゼロ成長」の代替案を出さなければいけないという。 私:水野氏は、「成長は難しい」として「これだけの議席と支持率を持っている安倍政権が『異次元の金融緩和』を続けても、長期金利が全然上がらないのは、『成長の時代』が終わったからだ。安倍政権は一生懸命やっているのだろうが、逆説的に成長の時代が終わったことを証明する役割を果たすことになるだろう」という。 水野氏の考えは、数年前から、このブログの下記のような「水野氏の知的街道」でとりあげている。 「超マクロ展望・世界経済の真実」の6日間シリーズ。 「世界経済の大潮流」の6日間シリーズ。 「資本主義の終焉と歴史の危機」の4日間シリーズ。 野党も「水野イズム」を参考に安倍政権に対抗する現実的な「脱成長」「ポスト成長」の経済政策をもったらどうかね。
2017.12.26
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私:堀篭俊材氏は、品質よりもコストなどを優先する企業風土は、相次ぎ不正が発覚した他の素材メーカーや自動車メーカーにも共通するとして、日本のものづくりで何がおきているのかと、記事を展開している。 しかし、出だしに「品質よりもコストなどを優先する企業風土」ときめつけるのには、疑問があるね。 日本のものづくりは「より良く、より安く、より早く」をともに追及してきたからだ。 A氏:品質は、コストと対立しない。 ものづくりに「ムダ」があるから、コストがあがり、品質が低下するという発想だね。 ムダを省けば、コストもさがり、同時に品質も良くなるという考えだね。 私:ここで、堀篭氏は、「ケイレツ」(系列)に着目する。 グループ会社を含め、改ざんが発覚した神鋼、三菱マテリアル、東レは素材メーカーと呼ばれ、材料を供給し、自動車などの完成品メーカーを頂点に部品会社などがつらなる「ケイレツ」(系列)を支える。 長期の取引が「ケイレツ」の特徴で、部品約3万点からなる車のコスト削減には開発初期から部品会社も協力する。 短期契約が多い米国と違い、この信頼関係が日本製品の強みとされる。 「ケイレツ」を支える素材各社も同じ。 A氏:その信頼関係がときに現場には重荷になり、「完成品メーカーは『過剰品質』といわれるまで、素材メーカーに品質やコスト削減を求め続けてき、この重圧こそが、不正の一番のきっかけだ」と立正大の苑志佳教授は指摘する。 私:トヨタにせよ、日産にせよ、「ケイレツ」の部品メーカーには毎年コストダウン要求があるのはよく知られている。 しかし、完成品メーカーが部品メーカーに「過剰品質」を求めているというのはあまり聞かないね。 コスト削減は、改善によって行われるが、改善はムダを見つけて、これをなくしことで可能となるが、ムダを見つけるのは容易でない。 しかし、ムダを見つけるベテランもいて、智恵の勝負だね。 トヨタは、時には、部品メーカーに自社の改善ベテランの人材を派遣し、ムダを見つけてこれを省き、コストをさげる手伝いをすることがある。 A氏:ニッセイ基礎研究所の百嶋徹・上席研究員によると、国内の大手製造業の多くは人材や設備への分配を抑え、株主配当を捻出する傾向があり、「製造現場が余裕のない操業を強いられれば、安定的に素材や部品の供給を受けたり、製品をつくったりすることが難しくなる。もっと人材や設備に投資するべきだ」というがその通りだね。 仕事の「ムダ・ムラ・ムリの排除」ができる改善の人材を育てていない。 日本企業が米国のような短期的な株主配当を重視するようになってから、ものづくりの強さがなくなってきたのでろう。 私:堀篭氏は、在庫をもたない「カンバン方式」の生みの親で、旧トヨタ自動車工業で活躍した大野耐一氏は「ムダ・ムラ・ムリの排除」をめざしたが、過度なコスト削減などの「ムリ」が、国内の製造現場の一部で常態化しているのではないかという。 しかし、これは大野氏の「ムダ・ムラ・ムリの排除」の堀篭氏の不勉強だね。 「過度なコスト削減」を「ムリ」と言わない。 長時間労働で仕事をしているのが「ムリ」の典型例で改善のネタになる現象を意味し、ものづくりの「ムリ」をなくせば、コストが下がることになる。 A氏:堀篭氏は、不正の原因が日本の製造力の低下にあるとみるのは早計だが、大野氏が掲げた「現場が異常を自動的にチェックする」という理念からは遠のいているという。 私:これもおかしいね。 トヨタ生産方式の基本は、「現場が異常を知ったら、すぐ、作業を停止する」だね。 トヨタの「ニンベンのついた自動機」というのは、自動機に人の代わりに異常検知装置をつけ、異常を検知したら直ちに機械を停止するものだ。 A氏:11日、博多発東京行きの新幹線「のぞみ34号」が、走行中に異常音や異臭があり、名古屋駅から運転を取りやめるトラブルがあり、台車に亀裂が見つかった事故があった。 これも、すでに乗務員が異常現象に気付いてから、2時間ほど放置して走っていて、後、運転を継続し、3ミリ亀裂が深く入ったら脱線して大事故になっていたね。 ものづくりだけでなく、JRも「現場が異常を自動的にチェックする」という理念からは遠のいているね。 私:日本経営の現場主義がうすれ、長時間労働も含め、現場労働の軽視があちこちにではじめたね。 堀篭氏は、それを問題にすべきだね。
2017.12.25
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私:2017年ベストセラーが、1位から20位まで載っていて、武田氏がコメントしている。 第1位は、佐藤愛子著「九十歳。何がめでたい」で、御年94歳の直木賞作家が「ヤケクソが籠った」と宣言したエッセーだが、100万部を超えるベストセラーとなった。 しかし、現代社会に苦言を呈するために自らの経験を持ち出し、(主に若者の)未成熟をいたずらに突く「説教本」とは、一線を画していて、自身に対する諦めも含まれており、社会にも自分にも分け隔てなく邪気を向ける様が清々しいという。 A氏:2万通を超える便りが読者から寄せられたというが、勇気をもらった、との声に、「どうして読んだ人が勇気が湧くんだか私自身にはわからない」と「ヤケクソ」をかぶせていく。 流行語大賞となった「忖度」とは真逆の姿勢が受け入れられたと武田氏がコメントしている。 私:第6位の今年最も売れた新書のケント・ギルバート著「儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇」は、刊行時のオビ文に「日本人と彼らは全くの別物です!」と掲げてあり、「日本人、中国人、韓国人のDNAには、大きな違いがあることが判明したそうです」「メディアのなかに、かなりの数の外国工作員が紛れ込んでいます」などと、隣国やメディアへの蔑視をひたすら積もらせることによって「愛国心」を粗造していき、人種差別主義が、通りの下、ではなく、通りの上で大声を発しているという。 A氏:この書については、武田氏は批判的で、ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏の記念講演の言葉を引用して批判している。 カズオ・イシグロ氏は「人種差別主義が、あるときは伝統的な形で、あるときは現代的な形で、再び台頭している。まるで埋もれた怪物が目覚め始めるように、文明化された通りの下でうごめいている」とし、その困難を乗り越えようとする時に文学が重要となると位置づけた。 私:子ども向けの本で第2位の今泉忠明監修、下間文恵ほか絵の「ざんねんないきもの事典」は、既存の図鑑のように、強くてかっこいい動物の姿を中心に並べるのではなく、トラは笑っちゃうほど狩りがヘタ、キリンは長い舌で鼻くそをほじるなどと、ざんねんないきものを並べて多くの子どもたちが関心を寄せた。 A氏:それに対して、大人たちの関心があるのは、第9位の佐久間健一著「モデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット」や、第15位のEiko著「どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法」と第20位の西山耕一郎著「肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい」だね。 私:実は俺は、西山耕一郎著「肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい」を買っている。 日本人の死亡原因の3位は「肺炎」だが、その7割が「誤嚥性肺炎」。 要するに、年齢とともに、のどの筋力が衰え、食事したものが、間違って肺に行き(誤嚥)肺炎になりやすくなるというものだね。 一時、週刊誌やテレビで盛んにとりあげられた。 A氏:これに対し、武田氏は、世界を柔軟に見つめて楽しもうと試みる子どもたちの姿勢を、大人たちはどれだけ持てているだろうかという。 痩せるのも、開脚できるのも、喉を鍛えるのも、結果を出して改善するのは大切なのだろうが、本って、メソッドを知ってクリアするためにあるのだろうかという。 自分が知らなかった価値観に触れるため、多様性を排除しないために本を読みなさいと、子どもたちが教えてくれていると武田氏は大人の本の読み方に苦言を呈しているね。 私:しかし、年齢とともに人体のわからない謎にぶつかるのは、自分が知らなかった価値観に触れることになるね。 特に最近の医学では、脳が体に司令をだすのでなく、内臓同志が直接情報交換をしているという、身体ネットワークという理論は、今までの脳の価値観を覆したね。 特に腎臓が重要な情報処理機能があり、血圧の治療に腎臓の治療が効果的だという事例もお出ている。 人体の未知な活動分野の知識は、今後も拡大するだろう。
2017.12.24
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私:一昨日のブログ「弱者への攻撃 なぜ苛立つのか」で、大阪地裁が11月に、ネット上の中傷に損害賠償を命じたと簡単にふれていたが、今日の「Media Times」の記事で、その背景とともに詳細に報じているね。 A氏:背景にネット上の個人のツイッターやブログ、新聞・テレビのサイト、掲示板、企業や公的機関のサイトなど、膨大な情報から、特定のテーマ、切り口に沿った情報を抽出して「まとめ」、公開する「まとめサイト」があるんだね。 情報収集には便利だが、情報が不確かだったり、差別をあおったりするなどの指摘がある。 私:大阪地裁は11月、在日朝鮮人に対する差別的な投稿を集めたまとめサイト「保守速報」に名誉毀損や差別の目的があったとし、運営者に200万円の支払いを命じた。 原告側弁護団によると、ネット上の掲示板などに書き込んだ本人でなく、「まとめサイト」運営者の責任に踏み込んだ判決は初めてだという。 訴訟は「保守速報」側が控訴し、大阪高裁で係争中。 A氏:訴えたのは大阪府東大阪市のフリーライター李信恵氏で、「保守速報」がネット上から集めた李氏に関する投稿には「朝鮮の工作員」「日本から叩き出せ」などの表現が多数あった。 判決は、こうした表現が人種差別や女性差別、侮辱にあたると指摘し、そのうえで注目されたのは、「保守速報」側の「ネット上にあった投稿を引用しただけ」という主張が認められるかだった。 私:それに対して、判決は、運営者の男性が元の投稿にない差別用語や揶揄する文言を表題に追加した行為のほか、返信の順番を変え、文字の拡大や色づけもしており、「引用しただけではない」と指摘。 「記載内容を容易に効果的に把握することができるようになり、広く知られたものになった」として「まとめ」が新たな効果を生んだと認定し、引用した投稿とは独立して「人格権を侵害した」と結論。 また、判決は「ネット上の表現でも読者が信頼性の低い情報として受け取るとは限らず、不特定多数が瞬時に閲覧可能であり、一度損なわれた名誉の回復は容易でない」とした。 A氏:李氏は「まとめサイト」を訴えた理由について「若い子たちと話していると皆、テレビや新聞のニュースではなく、『まとめサイト』を見ている。そこに差別があふれていてはいけないと思う」と話しているという。 私:「まとめサイト」は、一般の人がまとめたり、ネットサービス事業者が自ら編集したりと様々な形態があるが、情報の入手手段として存在感を増し、一般の人たちが匿名で情報をまとめて記事を作り、公開するためのサービスを提供する「NAVERまとめ」は月間の閲覧数が22・3億。 閲覧数に応じ、まとめ記事を作った人に報酬が支払われる仕組みもあり、不確実な情報の温床だとの指摘がある。 A氏:このため、「NAVERまとめ」を運営するLINEは先月末、新たな対策として、まとめ記事を作った人が自己紹介する欄を試験的に設けた。実名や肩書を公開する必要はなく、どんな内容にするかも作者に任されている。 LINE広報は「誰がどういった経緯で発信した情報かわからないという信頼性に関わる課題が残されていた。記事の信頼性を測る判断材料にできるようにしたい」という。 私:情報問題に詳しい岡村久道弁護士は「裏付けのない情報が半永久的に残ってしまう可能性もある。名誉毀損などの被害が拡大・深刻化しているのが現実だ」と指摘。 一方で、「表現の自由」もあり、法的な規制などには慎重であるべきだとし、「妥当な判決を積み重ねつつ、事業者の自主的な努力やメディアによる監視などで対応するしかない」という A氏:インターネット事業者らでつくる「セーファーインターネット協会」の吉川徳明・違法有害情報対策部長は、特に若い人たちが、一定の訓練を積んだ人が信頼性をチェックしている新聞やテレビ局などマスメディアの情報と、そうでない「まとめサイト」の情報を同等に受け取っていると憂慮する。 吉川氏は「学校などで情報の読み解き方をきちんと教育する必要がある。『まとめ』や編集を担う情報の送り手側の人材をどう育てていくかも課題だ」という。 私:しかし、一昨日のブログ「弱者への攻撃 なぜ苛立つのか」で分析されていたように、意図的に「弱者攻撃」ため「まとめ」を作成する者の心理も裁判で争点にしてほしかったね。
2017.12.23
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私:このインタビューで、「ツキジデスのわな」という言葉が出てくる。 覇権国と台頭する新興国の間で緊張が高まり、誤算などがきっかけで戦争にいたることで、ギリシャ時代の歴史家のツキジデスの名から、アリソン氏が提唱したものだという。 このインタビューでは覇権国米国と大国化しつつ新興国中国との関係を述べているね。 A氏:日々の事象に埋もれ、見失いがちな潮流を見通すレンズとしてアリソン氏が提唱したのが「ツキジデスのわな」だという。 流星のごとく台頭する中国と、挑戦に受けて立つ覇権パワーの米国という基本構造は変わらないという。 私:台頭する中国を見ると、習氏は現代の国際舞台で最も野心的な指導者で、10月の中国共産党大会で最高指導者に再選されただけでなく、後継選びを拒み、党規約に自らの名を冠した思想を盛り込んだ。 つまり「皇帝」の座に就き、毛沢東以来の強力な指導者の地位を固めたといってもいい。3時間半の活動報告は盛りだくさんで、党を活性化し、軍を再編し、ロボットから人工知能まで先端技術の先頭にたって経済革命を成し遂げ、中国人としての誇りも取り戻し、今世紀半ばにグローバルリーダーにするという。 「一路一帯」の名の下、近隣国を自らの勢力圏に引き寄せる構想は、アジアの地政学的な重心を中国に移したい意思の表れで、地域安定の守護者を自任してきた米国とのあつれきは強まっていくだろうとアリソン氏はいう。 A氏:米中とも自らを国際社会で特別な存在とみなしている点で共通しているが、秩序のとらえ方は正反対で、中国がヒエラルキー(階層)を通じた調和を国の内外で重んじる半面、中国からすれば「自ら作ったルールを押しつけている」と映るだろうが、米国は「ルールに基づく国際秩序」を求める。 私:冷戦が終わり、ソ連が消滅すると、市場に立脚する資本主義が豊かさをもたらし、民主主義を根づかせ、平和をもたらすとみられたが、その後、中国は国家主導による市場経済モデルを構築し、それをうまく機能させている。 A氏:トランプ大統領の登場で、米国が支えた「自由で開かれた、ルールに基づく秩序」も後退していているようにみられるが、アリソン氏は、トランプ氏は昨年の大統領選挙で、共候補への指名獲得と本選勝利という、人々が「ありえない」と信じた二つを成し遂げ、その自信は計り知れず、自分はあらゆる物事を支配できると考える自信家という点では習氏と共通しているという。 トランプ大統領は、交渉では即興を駆使し、先を読む才もあり、過小評価は禁物だとアリソン氏はいう。 私:長い目で見た米中双方の最大の課題は、米国では民主主義が致死的な兆候を示しているのは心配で、党派的分断が極まり、ホワイトハウスと議会の関係悪化が国の予算や国際合意をもまひさせ、政府への国民の信頼を消滅させていること。 中国では個々の市民を追跡監視する中央の官僚機構が、スマホを使いこなす都会の若者層を管理しきれるか、市民が求めるものを提供する機能的な政府システムを築けるかどうかが課題。 A氏:米中の軍事的に衝突のリスクは高まりつつあるが、それは「ツキジデスのわな」によるもので、トランプ氏の性格の問題ではないとアリソン氏はいう。 実は覇権国や台頭国が自らの意思によって戦争で決着をつけようと図ったケースは歴史的には珍しく、むしろ目立つのは覇権国と台頭国の影響下にある第三者が挑発や不測の対応をとり、連鎖反応を引き起こして両者を戦争に引きずり込む例だという。 その意味で今はきわめて危険な最大の要因は北朝鮮だとアリソン氏は指摘する。 私:アリソン氏は、トランプ氏と習氏が結束して金正恩氏に核開発をやめさせるわずかな奇跡を祈りたいという。 米中は核保有国だから、軍事力行使に慎重になる面はある。 アリソン氏は、「ツキジデスのわな」は診断の手法で、処方箋ではないから、戦争を避ける特効薬はないという。 しかし、運命論、悲観論のように受け止めてほしくなく、まず中国の台頭が一時的な現象ではなく、慢性の体調変化のように、途方もない政治的手腕が求められるという。 A氏:過去500年にあった16事例の「わな」のうち4事例は戦争にらなかった。 戦争回避は十分に可能で、冷戦中、米ソは「望まない戦争に滑り落ちたり、ふらふらと入り込んだりしないように」との意識を共有し、意図的な攻撃は止めがたいが、ミスは何としても避けねばと、ホットラインを引いたり、兵器を制限する協定を交わしたりした。 あの冷戦にも、今に生かせる教訓があるという。 私:アリソン氏は、最後に「『過去を記憶できない者が、過去を繰り返す運命に陥る』。哲学者ジョージ・サンタヤナが残した言葉です。歴史上の過ちと成功の両方から学ぶことこそ、戦争のない関係を米中が築く道なのです」という。 俺は、米中戦争が起こることは想像できないね。 しかし、目先、北朝鮮問題での米中関係が気になるね。
2017.12.22
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私:「弱者利権」批判の「弱者」には、「生活保護」「沖縄」「LGBT」「障害者」「ベビーカー」なども含まれる。 批判の投稿者たちは、これらの人々が「立場の弱さを利用して権利を主張」しているとみなし、「在日特権」という言葉はそうした認識を象徴するものだ。 ネット上の韓国・中国への侮蔑も「弱者利権」批判の延長。 A氏:ネット上の中韓批判は、歴史修正主義やナショナリズムの問題というよりも、慰安婦問題、戦争責任、戦後補償、植民地支配について、韓中にいくら謝罪しても結局(第二次大戦時における弱者の立場を盾に取り賠償金をとろうとして)問題を蒸し返されるという意識が根底には強く横たわっているという。 その延長で、「弱者」の擁護者とみなされた新聞も「マスゴミ」などと侮蔑され、「嫌韓・嫌中」や「マスコミ批判」も、「弱者に対する強い苛立ち」から派生しているという。 私:投稿者たちは、「弱者」や「少数派」より、自分たちこそ優遇されるべきだという認識に立ち、「その人たちなりの公正さ」を主張して苛立っているのだという。 だがこうした「弱者」「少数派」への苛立ちは、日本だけの現象ではない。 ドイツのザクセン州は、旧東独の炭鉱地帯だったが、東西統合後は経済的に停滞し、移民排斥運動への支持者が多い。 彼らは自分たちこそ優遇されるべきなのに、少数派や「弱者」の方に目をむける新聞や政治家は許せないという心理が、難民への憎悪となるという。 A氏:ドイツでは資産格差が広がってはいるが、所得格差は相対的に小さい。 日本のネット研究者は、過激な投稿をする人に、所得や学歴で顕著な特徴は見いだせず、彼らは、必ずしも経済的な「弱者」ではない。 私:中国の中流階級は、比較的リベラルな人々さえ、反体制派を軽蔑していて、何かしら非難する理由を見つけることで、悪いのは被害者であって、彼らを逮捕し、拷問し、牢屋に入れる人々は悪くないという。 しかし、それは生き延びるための自己防衛であり、独裁主義に順応する1つの方法なのだという。 不公正な世界を前にしたとき、人間は精神的な防衛機能として、世の中は公正だと思い込もうとし、他人の苦しみを正当化する理由を探し、自分は大丈夫だと根拠もなく安心したくなる。 つまり、現状を変えられない自分の無力を直視するよりも、今の秩序を公正なものとして受け入れ、秩序に抗議する側を非難する。 A氏:中国、ドイツ、日本はそれぞれ事情が違うが、急激に変動する現状に苛立ちながら、それを制御できない無力感を抱く人に、不寛容が蔓延する状況は共通する。 ここでの決定要因は政治的・経済的な無力感と疎外感の程度で、必ずしも所得の多寡ではないようだ。 私:そして世界各地では、無力感の反映としての「投票率低下」、少数派への不寛容、新たな権威主義が広がり、「民主体制の崩壊」と評する論者もいる。 A氏:日本の低投票率は、このブログの「低い投票率、民意と隔たり 批判の棄権、結果左右せず 衆院選」、「投票率53.68% 戦後2番目の低さ 衆院選、小選挙区」で、問題としてとりあげているね。 私:ネット投稿者の「苛立ち」では、アメリカの14歳の女性が開発したシステムでは、SNSに人を傷つける言葉を投稿しようとすると、「本当に投稿しますか?」と表示されるというもので、実験したところ、93%が投稿をやめたという。 過激な少数者差別は目立ちはするが、実は極端な人々の所業で、専門家の研究では、ネットで過激な言辞をくりかえし発信している投稿者は約1%。 A氏:内閣府の調査では、ヘイトスピーチには否定的な回答が大多数で、「ヘイトスピーチをされる側に問題がある」との回答は10・6%にすぎない。 訴訟などの法的対応を含め、拡大を止める余地はあり、大阪地裁は11月に、ネット上の中傷に損害賠償を命じた。 私:小熊氏は「『無力感』と『苛立ち』を他者にぶつけても何も生まれない。逆にそれを制御する力を自覚することは、誰にとっても生きやすい社会を築く第一歩となる。新年は、そうした努力の始まりにしていきたい」という。 来年に、何か変化を期待できるのだろうか。
2017.12.21
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私:来年は明治元年から数えて150年。 政府は施策を数々用意し、「明治の精神に学び、更に飛躍する国へ」とうたうという。 そこで、この欄では歴史家2人に維新の実像を問い、現代人にとっての意味を聞いている。 まず、専門は日本近世・近代史の跡見学園女子大学教授で、東大名誉教授の三谷博氏は 明治維新の大きな特徴は、これまであまり目が向けられていない二つとして、武士という支配身分が消滅したことと、外国の革命に比べ犠牲者が非常に少なかったことだという。 A氏:それは、「維新」は「革命」ではないという思い込みが強かったからだと三谷氏はいう。 「革命」とは下の身分が上に挑戦し、特に君主制を打倒して、多くの犠牲が出るものとされていたが、君主が復権し、大名や公家が華族として残った明治維新は「革命」ではない、だから比較の対象にならないとされてきた。 私:支配身分の武士と被差別身分がともに廃止され、社会の大幅な再編成が短期間に行われた点で、明治維新は「革命」といえると三谷氏はいう。 また、維新での死者は約3万人で、フランス革命と比べると2ケタ少なく、暴力をあまり伴わずに権威体制を壊した点で注目すべきだという。 A氏:それから、明治維新の原因の一つに黒船来航があるが、米国や英国は開国という小さな変化を求めただけで、日本を全面的に変えようとしたわけではなく、個々の変化は微小なのに、結果として巨大な変化が起きたのが維新の特徴。 私:飛び離れた因果関係が偶然に絡み合って、大きな変化が生じることもあり、維新でいえば、安政5(1858)年政変がそれで、外国との条約問題と将軍の後継問題が絡み合い、井伊直弼が大老になって、一橋慶喜を14代将軍に推す「一橋派」を一掃。 それが徳川体制の大崩壊の引き金となり、同時に「公議」「公論」や王政復古というアイデアも生まれた。 A氏:「公議」とは政治参加の主張で、それを最初に構想したのは越前藩の橋本左内。 「公議」「公論」と王政復古は10年かけて浸透していき、幕末最後の年には天皇の下に「公議」による政体をつくることがコンセンサスになり、最初はゆっくり進行したけれど、合意ができてからは一気に進み、反動も小さかった。 私:フランス革命は逆で、最初の年に国民議会がつくられ、人権宣言が出され、3年後には王政を廃止するが、そのあと迷走し、第三共和制で安定するまでに80年かかってしまった。 日本では、1868年の王政復古クーデターを主導したのは薩摩と土佐藩で、軍事衝突を避けるため、会津藩と長州の兵力引き離しに努めた。 それでも鳥羽・伏見の戦いが起きたが、ごく小規模で終わり、関ヶ原以西の大名は天皇を担いだ新政府に従ったので、東北と箱館以外では内戦にならなかった。 A氏:維新のプロセスは、常に戦争を避けようとする選択が行われ、東北、箱館と西南戦争では回避に失敗したとはいえ、政治家が暴力の行使より「公議」「公論」を重視したからこそ、結果的には犠牲者が少なくてすんだ。 私:三谷氏は「150年を前に、明治維新をただ持ち上げるのではなく、考える材料にすべきと思います」という。 「武力よりも『公議』『公論』を重視」だね。 今の国会運営のように、野党の質問時間を減らしたり、政権側がはぐらかしたりの回答をしているようでは、明治維新の「公議」「公論」が泣くね。 A氏:次に、専門は日本近代史、思想史で東京経済大学名誉教授の色川大吉氏は、明治維新の原動力になった民衆のエネルギーに着目しているね。 色川氏は、明治の自由民権運動時代に西多摩の青年らがつくった「五日市憲法草案」を見つけたが、これは国民や議会の権利を重視し、個人の権利保護の仕組みを詳しく定めた実に優れたものだという。 私:この草案こそ、草の根の民衆が生み出したもので、そんな民衆の力がなかったら、明治維新のような一連の社会変革を起こしえなかったと色川氏は指摘している。 維新期には、幕末の未曽有の農村危機に負けず、寺子屋などで知識を積み、生活打開の姿勢を打ち出してきた民衆、とりわけ中農以上の層が大きな役割を果たした。 A氏:これら民衆が自分たちの幸福を実現してくれる歴史の発展方向へと動く。 その中で幕末の打ち壊しや世直し一揆の運動も起き、そうした民衆のエネルギーと、倒幕の志士たちが結びつき、明治の新政府を作ることができたという。 しかし、新政府ができてもその後の歴史は民衆の望んだ方向に進まず、「富国強兵」は強調されたが、政治の民主化や個人の解放といった近代の重要な課題は取り残された。 そこで明治10年代になって豪農層を中心に、自由民権運動が強力に展開され、「五日市憲法草案」につながる。 私:明治の為政者たちは、西欧列強の植民地政策に対峙するために強力な中央集権国家を作り出すことに全力を注いだので、当然、民権勢力と激しく対立し、加波山や秩父のような民衆によるすさまじい武装蜂起事件を引き起こした。 しかし、伊藤博文や大久保利通らは、歴史の渦の中で鍛えられており、幕藩権力を倒す過程で同志らと死線を乗りこえてきて、変革や民衆のエネルギーがどういうものか、身にしみていた。 だから、権力を握っても、ある程度自分にブレーキがかけられ、西欧まで行って勉強し、議会を開いて皆の意見を聞こうと、その根本的な法として憲法も必要だと考え、民のエネルギーをくみ取る仕組みを、それなりにつくった。 A氏:だが、その後の日本は結局、民衆の幸福を実現する方向ではなく、「富国強兵」という軍国主義の道を進んで1945年の敗戦に至る。 色川氏は、敗戦後、日本は軍国主義を完全に否定する平和憲法を持ち、70年以上も、戦争で一人も死なない平和な時代を保ち続けてきて、市民生活がどれだけ内面的にも豊かになったか、社会福祉が充実したものになったかを誇るべきではないかと思うという。 私:それでも先の総選挙では、改憲を唱えて戦後の平和の誓いを怪しくしている安倍晋三首相が大勝した。 色川氏は、「その彼らが『明治150年』を祝う官製の行事をやるのなら、私たちは断固反対したい。安倍首相は、『むかし晋作、いま晋三』と言いたいところかもしれないが、仮にもそんなことを言えば、歴史を歪曲するようなもので、許されない。高杉晋作は革命に命を懸けたのだから」と厳しい。 1968年の「明治100年」を、当時の佐藤栄作首相は政府主催の式典で祝った。 色川氏は、そのときは、「むかし晋作、いま栄作」だと皮肉っているね。 明治維新を讃えるなら、それによってせっかくできた近代日本をメタメタに壊したことも同時に反省すべきだね。 そして、明治維新の「公議「公論」を復活すべきだね。
2017.12.20
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私:来春卒業する大学生の就職内定率は最高の水準になり、人手不足で有効求人倍率はバブル期のピークを超える水準が続くが、一方、教育の現場は「ブラック企業」に頭を悩ます。 「バブル期超え」といわれても冷めた現実があると堀籠氏はいう。 A氏:「ブラック企業」などの著書で知られるNPO法人、POSSE(ポッセ)の今野晴貴代表は「低賃金で長時間働いてくれる人がみつからず、人手不足になっている」と指摘。 高水準の有効求人倍率が続くのも、ある「カラクリ」があるという。 私:今野氏は「人手不足と言っている会社の多くは働き手がどんどん辞めてしまうので、辞めることを見こし、つねに必要以上に求人を出し続けている。そのため、有効求人倍率はどうしても高くなり、技術者の確保に困る真面目な製造業などとは二極分化している」という。 A氏:人手不足が続いても賃金がのび悩むのは、ここにも理由があるのだろうと堀籠氏はいう。 デフレというトンネルを抜けたら、30年前と同じような光景もどこか違うのかもしれないともいう。 私:そういえば、朝日新聞は4日付朝刊で、日経平均株価を構成する東証一部上場225社の過半数が今年7月時点で、「過労死ライン」とされる月80時間以上まで社員を残業させる労使協定(三六協定)を結んでいたことを独自調査に基づいて報じたね。 調査を手がけ、多くの大企業が「長時間労働を前提とした働き方」で支えられていることを改めて痛感したという。 A氏:形だけの「働き方改革」を進めれば、「サービス残業の横行」を招くことにもなりかねないね。 私:ところで、厚労省は2018年度予算で、安倍政権が成長戦略に掲げる「失業なき労働移動」を進めるための「目玉政策」として導入された「労働移動支援助成金」を減額する方針を決めた。 転職者に職業訓練をする企業に助成金を支給する仕組みを廃止し、予算規模はピークの5分の1に減る。 理由は、この助成金を活用して職業訓練を受けた再就職者は今年の9月末までの3年半119人。 17年度の9月末時点でわずか9人と想定を大幅に下回ったからだ。 「目玉政策」が空振りに終わった。 A氏:転職市場では職業訓練が要らない即戦力が重視されることが助成金の利用が伸びない一因ともいわれる。 私:成長産業に人を動かすには、資格よりコネが重視されがちな転職市場のあり方の再検討や、失業時のセーフティーネットの構築など幅広い検討が必要と専門家は指摘する。 「長時間労働」をなくす「働き改革」も、「失業なき労働移動」も、実態は改革が思うように進まず、またスローガン倒れだね。 働く人々の現場をよく見て、具体的なきめ細かい手を打つべきだね。
2017.12.19
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私:第17回大佛次郎論壇賞(朝日新聞社主催)は、神戸大教授(政治学・行政学)の砂原庸介氏の「分裂と統合の日本政治――統治機構改革と政党システムの変容」(千倉書房)に決まった。 二大政党制を目指した政治改革が行われたはずなのに、なぜ実現しないのか。 本書はその原因を「地方」の政治や選挙のありようの中に探り、今の制度の中には有力な野党が育ちにくい構造があることを示したという。 A氏:政権交代の可能性を感じさせる力強い野党の成長を邪魔している要因は地方議会の選挙制度なのではないか、と受賞作は意外な角度から回答したという。 私:二大政党による政権交代の可能な政治に変えよう――そうしたかけ声のもと、1990年代の政治改革で衆議院に小選挙区比例代表並立制が導入された。 2009年には民主党(当時)政権が誕生したが、12年には早くも自民党が政権に復帰し、いまや「自民1強」の状況にある。 「この20年で分かったことは、衆院の選挙制度を変えるだけでは変わらないということだ」と砂原氏はいう。 A氏:衆院選は確かに、政党を選ぶ選挙に変わったかもしれないが、地方には、国政とは異なる選挙がある。 地方議会には、多くの定数のもと、「政党という看板」ではなく「人」で選ぶ選挙制度が依然として残っている。 砂原氏は、「地方議会の選挙では民主党の候補者たちは、党の掲げた政策プログラムのもとに結束するより自分個人の利害を優先して戦うことを強いられがちだった。結果として民主党は、国政と地方を貫く、まとまりのある政党には育ちにくかった。国政の選挙制度と地方の選挙制度との組み合わせに問題があったのです」と指摘する。 私:野党が育ちにくい構造があった、という指摘だ。 選挙制度の違いのほかに、地方分権改革の影響もあったと見る。 たとえば分権は知事や市長の権限を強め、首長が地方政党を立ち上げる動きを加速させたが、それは、民主党のほかに野党を乱立させる結果にもつながったという。 小池都知事の「希望の党」による野党分裂はそれかね。 A氏:この状態を改善するには 「国政と地方政治の関係を再構築する制度的な整備が必要」だと同書で砂原氏は述べる。 野党が与党と、より公平な条件で競える制度に作り替えるべきとし、砂原氏は、具体的には、地方議会の選挙に比例代表制を導入することを提言。 私:砂原氏は、大学院では当初、経済学や社会学を学んでいたという。 「開発経済やコミュニティーの研究を考えていました。よい統治とは?に関心があったからです。地方政治を研究するようになったのは、首長と議会という別々に選ばれた二つの代表で統治する仕組みに興味を持ったからです」という。 より自由で民主的な社会を作り出すための手助けになる研究をしたい、と語る。 A氏:砂原氏は、「単一の正しさでまとまった社会は好ましいと思えないし、正しさについては色々な主張があるべきです。ただその中でも一定の合意はしていかなければいけない。個人の自由を尊重しながら必要な意思決定を行える方法とはどんなものか。それを考えたい」という。 私:砂原氏のいま関心のあるテーマの一つは、都市での住民投票だという。 「望ましい意思決定だと言える条件を探りたい」という。 具体的に大阪の都構想の住民投票や東京都の小池問題の構造を明らかにしてほしいものだね。
2017.12.18
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私:3氏とは、オリックス・シニア・チェアマン宮内義彦氏、元金融庁長官佐藤隆文氏、日立製作所会長中西宏明氏だね。 このうち、民間企業の宮内氏と中西氏の2氏の発言を取り上げたい。 まず、昭和で人生の大半を過ごした宮内氏にとって成長が続くのは当たり前だが、平成で社会の中核になった人は違い、意識のギャップを感じるという。 命がけで新しいことに挑戦する人が出てこなくなり、まじめな経営者はコスト削減ばかりに力を注いだ。 A氏:昭和は、ホンダやソニーのような世界的なブランド企業を数十社生んだが、平成で成長した企業は、楽天やソフトバンク、ファーストリテイリングなど数えるほどしかない。 昭和から続く大企業の大部分はサラリーマン社会。 世界を驚かす革新的な製品やサービスを出す意欲を失い、経済の柱が製造業から非製造業にシフトしたのに、財界の中心はいまだに製造業の企業だ。 財界の意識も変わらないと、日本を蘇生させられないと宮内氏は指摘する。 私:宮内氏は、社会の仕組みが時代に合わなくなり、改革が迫られるときは、政権も不安定になり、選挙を考えて課題を先送りする体質はますます強まる。 世界中で起きている現象で、民主主義は根本的な矛盾を内包しているという。 経済が行き詰まった平成では、「会社は誰のものか」という問題も突きつけられたが、「経営者は株主に奉仕する」というのが、資本主義の原則で、宮内氏それが最も効率的に社会に富をもたらすと「業績を上げるのが最優先だ」と訴えた。 しかし、いまは、この考え方が変わったと宮内氏いう。 米国は企業の稼ぐ力では抜きんでているが、貧富の格差が社会の亀裂を生んでいる。 これを調和させるために社会が払うコストは高く、ここ5年ほどで、「そういう資本主義でいいのか」と宮内氏は疑問を抱くようになったという。 A氏:会社は人、モノ、カネをうまく使って経営するが、人はモノやカネとは違い、最大限の配慮が必要だ。 経済活動は人に奉仕するために存在し、「昔言っていたことと違う」と言われるかもしれないが、時代にあわせて人は変わるべきで、次の時代は、より分配に力を入れた社会をめざすべきだと宮内氏はいう。 私:宮内氏から見れば平成の経営者は政治家同様、劣化しているのだろうか。 次に参考になったのは、日立の中西会長のインタビューだね。 高度成長期の日本は一生懸命、海外市場を開拓し、家電や半導体、通信機器などを世界にどんどん売り、当時は生産も開発も、すべて日本を中心に考えられていた。 だが、このモデルは、商品の品質・性能の差が小さくなって価格競争が主となるコモディティー(汎用品)化が進み、人件費の安い韓国や台湾、中国にとって代わられたために壊れた。 A氏:日立も経営戦略を変え、競争力のある鉄道や情報通信は、それぞれ英国と米国に事業の軸足を移した。 海外市場では、単に製品を売るだけではだめで、例えば鉄道なら保守技術や運行に関することで現地の人との本格的な折衝が必要になり、そうしたことは日本人だけではできないので、トップは現地で採用した。 私:いまは海外に出て行かないという選択肢はなく、日本はあくまで世界市場の一部だという考え方が必要。 日本が縮小していけば、日本の売上比率は縮む。 そんなに大きいマーケットではない日本に増産の設備投資をしたってしょうがない。 「内部留保がたくさんあるんだから国内に設備投資しろ」と言われても、「どこへ?」という感じだと中西氏はいう。 A氏:少子高齢化が進む日本は、付加価値をつけていく国にならざるをえない。 多様な人が触発しあって初めてイノベーションが生まれる。 海外の人の出入国の自由度を高め、社会の競争力を高める必要がある。 日本が中長期的に成長していくには、ものをネットにつなげるIoTや人工知能、ロボットなどのイノベーションを採り入れることがカギで、産業界としても政府と一緒に進めていきたいと中西氏はいう。 私:東芝が去った後、日立の健闘に期待したいね。
2017.12.17
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私:12月の日銀短観では、企業の景況感の改善が続いていて、大企業・製造業の業況判断指数が5四半期(1年3カ月)連続で改善し、11年ぶりの高水準となった。 海外経済が好調で自動車やIT関連産業の生産、輸出が増え、景気を引っ張るが、非製造業では人手不足が深刻さを増しており、先行きに不安が残るという。 そこで、人手不足を現実に補っている外国人の技能実習が問題になるが、今日の「けいざい+」欄では、昨日の「外国人技能実習の幻想、零細企業中心、賃金未払いも」に続き、連載で技能実習を取り上げている。 A氏:製造業ではあるが佐賀県江北町にある靴下製造「イイダ靴下」(本社・奈良県)の工場では、30人のベトナム人の技能実習生が働いている。 約100人の日本人従業員の平均年齢は60歳近く、「生産性」は若く手先が器用なベトナム人が高く、彼女たちがメイド・イン・ジャパンをつくり、日本人の雇用を支えているという。 若い日本人が来てくれなかったという。 私:「力仕事」の現場でも実習生の存在は大きく、埼玉県上尾市の左官業、日下工業の日本人従業員は25人だが、半分以上が60歳以上で、最高齢は75歳。 日本人は雇っても雇っても辞めていき、肉体的にきつい左官を選ばないという。 約10年前から技能実習生を受け入れ、いまはフィリピン人とベトナム人の3人が働く。最低賃金でも真面目に働いてくれ、残業もいとわず、実習生なしには仕事が回らないという。 A氏:加速する人口減を背景に人手不足がますます深刻になっていて、海外展開が難しい中小企業やサービス産業にとって技能実習生はいまや大黒柱。 問題は、最長でも5年という期間限定の「一時しのぎ」に頼り続けることができるか、だ。 私:昨日のブログでもふれたが、ほとんどの実習生は、多くのお金を稼ごうと日本に来ている。 しかし、ベトナム、ネパール、フィリピン、中国などの国内賃金は上昇している。 中国人の実習生の新規入国者数は13年に前年を大きく下回り、16年は約3万3千人と前年より約5500人減っている。 第一生命経済研究所の星野氏は「門戸を開けば外国人に来てもらえる状況が続くとは限らない」と警告する。 人気の陰りを実感している一人が日下工業の桑田専務で、「うちに来る実習生も第1希望は別の国だったケースが多い。働く場所を選べるとか、制度を改善しないと、いずれ日本に来なくなる」と心配する。 A氏:外国人受け入れ問題に詳しい日本国際交流センターの毛受氏は「このままでは日本のもの作り技術の継承者がいなくなる。企業も、優秀な実習生が後を継いでくれるなら一生懸命に教育する」と強調し、「日本に必要なのは新たな消費者であり、税金や年金をしっかり納めてくれる人だ」として、有能な実習生には日本定住を認める制度への改変を提唱する。 私:イイダ靴下で実習生として働き、帰国した女性は111人だが、縫製に携わっているのはたった4人で、最多は給料が高い日本語教師の約20人。 イイダ靴下の飯田会長は「彼女たちが幸せならそれで良いではないか」と納得しているが、「実習生は脂がのりきったところでサヨナラ。10年とか働いてもらえると大変な戦力になる」という。 この特集記事を書いた記者たちは「『技能移転による国際貢献』という幻想に真正面から向き合うべきときだ、との思いを強めている」としている。 それは、「移民」問題に、真正面から向き合わうことでもあるね。
2017.12.16
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私:公益財団法人「国際研修協力機構」によると、実習先の半数は従業員10人未満の零細企業で、従業員100人以上の受け入れ企業は1割にすぎない。 ある実習生受け入れ団体の幹部は「制度の目的が技能移転なら、先進技術を持つ大企業での実習がもっとあって良いはず」と指摘する。 実習制度が、資金力が弱く、人手も足りない会社の支援策となっている証しだという。実習生は、約束通りの賃金を支払えない企業にめぐり合うリスクを抱えている。 A氏:実習生側も、来日の目的は大半が技能習得ではなく「お金稼ぎ」。 まず、来日前に「初期投資」が必要で、ある例では元実習生のほとんどが来日前、数十万円から百数十万円を銀行などから借りていた。 来日するために登録が必要な現地の送り出し会社への手数料や、同社を紹介してくれた人への謝礼などを払うためだ。 私:このブログの「外国人雇用、韓国の光と影 単純労働、ニーズ高く待遇改善」でとりあげたたが、外国からの労働力受け入れの先進的な韓国の「産業研修生制度」では、ブローカーを排除したため送り出しの経費が減り、中間搾取もないというが、日本もそうできないのかね。 A氏:強烈な借金返済のプレッシャーにさらされた実習生は、賃金に不満な場合、失踪してもっと多い手取りが見込める職場を探すことも選んでしまう。 実際、失踪者は急増しており、厚労省によると、監督指導した企業などで見つけた労働基準関係法令違反のうち、2割が賃金の支払いに絡むものだった。 実習生の弱い立場につけ込んで長時間労働を強いたり、賃金未払いをうやむやにしようと言いがかりをつけて強制帰国させたりする受け入れ団体や企業が後を絶たない。 国内外で「人権侵害の疑いがある」と、批判の声が上がっている。 私:日本政府は、新設の認可法人「外国人技能実習機構」を中核組織として、実習生の保護強化を進める方針。 受け入れ団体や企業などに定期的に検査に入り、「日本人と同等の報酬」を払っていなかったりした場合、受け入れ停止などに踏み切るという。 技能実習制度に詳しい、公益社団法人「自由人権協会」の旗手明理事は「実習生は基本的に実習先を変更できない。『日本人と同等の報酬』もあいまいすぎる。結局、最低賃金でOK、となる」と実習生の労務環境の劇的な改善には懐疑的。 旗手氏は制度の抜本見直しを求めてきたが、今は機構の人員態勢の強化を訴えており、企業への検査の頻度を増やし、強制帰国の阻止などにも注力してほしいからだという。 「この制度が続く限りは、実習生の人権侵害を減らすために、機構に頑張ってもらうしかない」と話しているという。 この問題はだらだら、続いているが、やはり、韓国のように制度の抜本見直しが必要だろう。
2017.12.15
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私:この欄では中国と「ラオス」の首都ビエンチャンを結ぶ鉄道の建設状況を報じている。 この路線は、中国の習近平政権の対外戦略の柱「シルクロード経済圏(一帯一路)」の一部で、中国・昆明からシンガポールに至る「東南アジア縦貫鉄道」の一角を占める。 中国にとって、中東からの資源の輸送路マラッカ海峡の有事に備えた迂回路の役割も担う。 タイとの国境側に約3・5キロの鉄路しかない「ラオス」では、初めての本格的な鉄道で、国土の広さが日本の本州と同じぐらいの「ラオス」は、人口700万人足らず。 全区間約420キロのうち半分近くがトンネル。 A氏:建設中の鉄路は、大きな需要が見込めないことから単線となり、時速も、旅客は160キロが基本で、貨物は120キロ。 今年から工事が本格化し、2022年までの開業を目指す。 アフリカのインフラ工事でもそうだが、中国は現地人を工事に使わないで、ラオス人も中国で鉄道業務の研修中とはいえ、工事現場の主力は中国人。 広大な敷地に、工事に関わる中国人らの宿舎や分譲マンション・店舗、免税店などが並び、働く人の多くは中国出身で、「ラオス」より1時間早い中国時間で勤務し、人民元も使える。 A氏:鉄道の建設費用は約70億ドル(約8千億円)で、ラオスの年間GDP(国内総生産)の半分、年間予算の約2倍の規模。 7割を中国、3割を「ラオス」が負担するが、その半分以上を中国からの借り入れ。 利益があがらず借金を返せなくなれば、沿線の土地や鉱山を中国に差し出さざるを得ないと警戒する声があがる。 私:11月中旬、習国家主席が中国のトップとして11年ぶりに「ラオス」を訪れ、留学支援や病院など幅広い協力を約束した。 外国からの「ラオス」への投資のうち、中国の割合が半分を超え、不動産開発から小売り、バナナ栽培まで幅広い。 日本は先進国では最大の援助国だが、国際会議場や競技場、人工衛星など政治的に目立つ事業は中国が請け負う。 A氏:アジアだけではなく、中国が築く鉄道は、グローバリゼーションの恩恵からこぼれた国・地域を走る。 11月末、中東欧と中国の首脳が集う6回目の「16+1」会議に合わせ、中国の協力のもとでハンガリー―セルビアを結ぶ鉄道が正式に着工された。 中央アジアや中東を含めて、鉄道が発達していない地域には理由があり、厳しい自然環境、低い人口密度や紛争の多発など高いリスクを抱える場合が多い。 そこに、あえて踏み込んで中国が築く鉄路は、地域を新しい融合に導くのか。 経済力に乏しい国々の発言力を買い取りながら、政治的な分断をもたらすのか。 明暗の将来像を織り交ぜながら、「一帯一路」は「発車」したと報じている。 もう、30年ぐらいしたら、これらの列車の「発車」が「到着」になりそうだね。 そうしたら、「一帯一路」で中国の経済覇権はアジアから中央アジアまで一挙に拡大しそうだ。
2017.12.14
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私:新浪氏は3年前から政府の経済財政諮問会議の民間議員として、高齢化でふくらむ「医療費」の抑制策を提言してきている。 新浪氏の基本的な「医療費」抑制策の視点は、ムダな部分を削り、そのお金を病気の予防にまわして国民のQOL(人生の質)を高めれば、結果的に「医療費」を抑えられるというものだ。 A氏:まず、ムダを削る一つとして、薬剤費をあげているね。 効果が画期的な「ピカ新」(画期的新薬)は財政的に支援すべきでも、似た薬がある「ゾロ新」(改良型新医薬品)は支援の対象から外すべきだという。 効果は同じで安い「後発薬」は、もっと普及させられ、また、大病院の前に並ぶ「門前薬局」は、病院内で処方するより調剤報酬が多いが、そこも削る余地があるという。 俺は薬局でもらった説明書をみたら、ある薬では「薬価27.8円」のところ、当薬局で取扱いのある「後発品」は「5.8円」で、差額22円、別の薬では「23.8円」のところ、「後発品」は「9.9円」で差額13.9円と書いてあった。 随分違うものだね。 私:こうして生み出したお金を、予防医療に使うわけだ。 たとえば腎不全の治療で人工透析を受ける人は30万人以上いて、1人年500万円ほどの「医療費」がかかるが、糖尿病が悪化して腎不全になる人が多く、早めに食事や生活習慣を見直せば、透析を受けずにすむ。 実際に、広島県呉市などは重症化予防に力を入れ、国民健康保険(国保)の「医療費」を大幅に減らしたという。 A氏:他の自治体にも広げたいけれど、なかなか進まない。 新浪氏は、その原因の一つに「調整交付金」という制度をあげているね。 「調整交付金」とは、国保は自治体ごとに保険料を集めて運営しているが、地域ごとに「医療費」の支出水準にはばらつきがあるので、支出が多い自治体の財源をおぎなうために国が配る金だ。 私:国保の今年度の給付総額は約11兆円で、財源のうち「調整交付金」は約7700億円。 問題なのは、約6千億円を占める「普通調整交付金」の存在。 実際に使った「医療費」などをもとに額を決めるので、多く使った自治体ほど、交付金を多く受けとる。 これでは自治体が「医療費」を減らす意欲が起きない。 A氏:新浪氏は、このしくみを改め、年齢や所得で調整した標準的な「医療費」を基準に配分すべきだとし、こうした改革の方向性は、政府の今年の「骨太の方針」に盛り込まれたが、一刻も早く取り組んでほしいという。 私:打つ手が遅いね。 ムダを削減して生まれた財源は、画期的な治療法や新薬の開発の科学技術の支援にも使うというわけだ。 これら病気の予防につながり、さらに「医療費」の削減にもなり好循環を生むね。 新浪氏は「70~80歳代でも元気に働き続けることができれば、生活の不安も減り、国の財政にも良い。そんな社会をめざすべきだと思う」という。 広島県呉市のような自治体が、ドンドン増えていってもらいたいね。
2017.12.13
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私:政府・日銀は、いまだに危機時のような強力政策をやめないのは2%インフレ目標が達成されていないからだと言っている。 足もとの消費者物価の上昇率は0%台でたしかに目標にほど遠いが、それのどこに問題があるのかと原氏はいう。 A氏:物価が上がれば家計は苦しくなるから、安いに越したことはない。 モノの値を無理やり上げてほしいなどと、庶民は望んでいない 売り手もそこはわかっているようで、朝日新聞の主要100社景気アンケートで、3割弱の経営者が2%インフレは「当分実現できない」と回答し、日銀の見通し通りにいかないと考えている経営者をすべて合わせると7割に及ぶ。 私:日本の物価は四半世紀のあいだほぼ横ばい。 生鮮食品を除く消費者物価はバブル期に2%台に伸びた年が4年だけあったものの、その後はほとんどゼロ%台かマイナスゼロ%台。 A氏:これを「デフレ」とひとくくりにしたことは本当に正しかったのかどうかと原氏はいう。 企業業績も雇用も好調で、株価はバブル崩壊後の最高値と、日本経済はそれなりに順調に見えるが、それでも安倍政権はいまも「デフレ脱却」を掲げ、景気てこ入れに余念がない。 一方、日銀は「世界でも例を見ないチャレンジングな」超金融緩和を続行中。 かつて米FRB議長は中央銀行の役割を「盛り上がっているパーティーでさっさと酒を片付けること」と言ったが、いまの日銀は酔客に「もっと飲んで」と無理強いするバーテンダーのようなものだという。 私:この頑固な「デフレ」感覚について、原氏は、「失われた20年」という言葉の罪も小さくないとしつつ、実は、この言葉を初めて世に問うたのは原氏たち朝日新聞取材班だと白状している。 8年前、日本経済の四半世紀の変化を描いた連載をもとに朝日新聞取材班は「失われた〈20年〉」(岩波書店)という本にしたが、その後、この言葉を表題に盛り込んだ経済書の出版が相次いだ。 当時、表題をめぐって取材班と編集者でかなり議論になり、バブル崩壊後の経済低迷の長期化は「失われた10年」と呼ばれていたが、さすがに「20年」という認定はなかった。 でも、原氏は「20年」を推した。 かつての日本経済の栄光、日本企業の強さを懐かしみ、それに比べ今は……という意識がどこかにあったのだろうという。 二つのキーワードは「失われた」成長を取り戻すためならギャンブル的な政策もやむなしという空気を生む。 そして低成長や低インフレのもとでも持続可能な財政や社会保障にしていくのだという、本来めざすべき道を見失わせてしまったのだと思い、原氏は、いまは「失われた」という名付けを悔やんでいるという。 この経済成長にこだわる現代を保守の論客・佐伯啓思・京大名誉教授からも、下記のブログのように疑念を呈しているね。 「現代文明の没落 貨幣で思考、衰える文化」、「社会主義崩壊後の世界 新自由主義に壊されるもの」
2017.12.12
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私:藤原氏は司法の世界に「感銘力」という言葉があるとしている。 それは刑罰を受ける者に「再び罪を犯さない」と思わせる力を指すという。 藤原氏はその「感銘力」という視点から、一昨年12月に自殺した新入社員の高橋まつりさん(当時24)ら4人の違法残業を防ぐ措置を怠った労基法違反の罪を問われた「電通」の裁判について述べている。 A氏:メディアは「電通」の労働実態を詳しく伝えたが、それは東京簡裁が「電通」について異例の「正式裁判」を開いたことで、初めて可能になったのだという。 労働基準監督年報によると、2015年に検察が厚労省から送致を受けて起訴した労働事件は404件あるが、「正式裁判」になったのは4件で、ほとんどの事件は審理内容すらわからないまま。 私:同様に「電通」問題で検察は今回、「正式裁判」を求めておらず、多くの検察幹部は簡裁の決定について「世論に影響されすぎだ」と批判した。 だが、「正式裁判」と決まるや、捜査を担った公安部と、専門性の高い事件を手がける特別公判部の検事の計2人を立ち会わせる「万全の態勢」(検察幹部)を取り、さらに、論告では「こうした犯罪が厳しく指弾されることを社会に周知する必要がある」とまで述べた。 A氏:強い「感銘力」の行使だね。 私:藤原氏は、何故、当初から「正式裁判」を求める選択肢はなかったかと問うている。 この「電通」の裁判の結果、被害者遺族で共通するのは、再発を防ぎたいとの強い願いだ。 A氏:「電通」には検察の求刑通りの罰金が科されたが、その額はわずか50万円。 裁判官は「他の事件との均衡を勘案した」と説明したが、確かに、「電通」と同じく厚労省の「過重労働撲滅特別対策班」が手がけた過去5件の事件の罰金も50万円。 この罰金金額に「感銘力」はあるのだろうか。 私:労働事件に長く携わる弁護士は「労基法違反は反社会性の強い行為なのに、ずっと軽視されてきた」と言う。 現行の労基法が定める罰金刑そのものの「感銘力」は限定的。 だが今回の「電通」問題は公開の審理になり、企業にも社会にも大きな影響を与えた。 「正式裁判」を求める権限がある検察には、この意義を考えて欲しいと藤原氏は問題提起している。 政府は「働き方改革」とか「生産性革命」というスローガンを掲げて久しいが、まず、こういう長時間労働など「労基法」違反には「感銘力」を強化するきめ細かい法改正から、すぐに始めるべきだったね。
2017.12.11
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私:2017年のノーベル経済学賞は10日、シカゴ大学教授のリチャード・セイラー氏に授与される。 「行動経済学」という新しい学問分野を発展させることに多大な貢献をしたことが理由。 02年の「行動経済学」の創設者ダニエル・カーネマン氏、13年のロバート・シラー氏に続いてのこの分野での受賞。 A氏:1979年にカーネマン氏と共同研究者のエイモス・トベルスキー氏が発表した論文から現代的な「行動経済学」の発展が始まったが、伝統的経済学は簡単には受け入れず、その頃の伝統的経済学者からの「行動経済学」への凄まじい批判を「棒打ち刑」を受けたとセイラー氏は自書で表現しているという。 新しい学問の創設者たちの苦労は並大抵のものではないが、そうした障害を乗り越えて、経済学の流れを変えることに大きく貢献したセイラー氏にノーベル経済学賞が授与されるのは当然だろうと大竹教授はいう。 私:俺が若い頃、ビジネスの基礎知識で学んだのは「行動科学」で、企業などの人間の集団の中の行動を研究する知識体系で、「経営工学」の一分野だったね。 組織上の権限、責任、動機づけ、リーダーシップなどの人間行動の科学的研究を言っていた。 これで有名なのは、このブログの「ホーソン実験以後の社員重視経営の『取り戻し』」「ホーソン実験以後の社員重視経営の『取り戻し』」でふれた1927年から1932年にかけて、米国のウエスタン・エレクトリック社のホーソン工場で、ハーバード大学のメイヨー教授らによって行われた、作業能率に及ぼす要因に関する実験だね。 これに対し、当時は「行動諸科学」という広い意味の人間活動の科学的研究があった。 言葉は似ているが、これとは、違うようだね。 A氏;大竹教授は、ダイエットの例で、痩せたいのについ食べ過ぎて太ってしまうという、わかっているけれどやめられないという人間の行動を経済学にきちんと取り入れることに成功したのが「行動経済学」であるという。 私:セイラー氏は、伝統的経済学の人間像を「エコン」と呼び、「行動経済学」で対象とする現実的な人間像を「ヒューマン」と呼ぶ。 「ヒューマン」の第一の特徴は、損失回避で、誰でも損失を嫌うのは当然だが、利得からの喜びに対して、損失を嫌う程度が非常に大きいという特性。 「ヒューマン」の第二の特徴は、「現在バイアス」で、将来よりも現在のことを重視。 ダイエットの例でいうと、計画することはできても、実際にダイエットを始める時には、目の前のデザートを我慢することができないで、ダイエットを先延ばししてしまう。 このように、計画を立てるのに先延ばししてしまうという意思決定の特徴を「現在バイアス」と呼ぶ。 A氏:「行動経済学」をうまく使うと、選択の自由を維持したまま、私たち自身はよりよい選択ができるようになる。 それが、軽く肘で押すという意味の「ナッジ」という考え方で、選択肢の文章やデザインを変えてみるだけで、私たちは望ましい意思決定や行動をする可能性が高くなる。 そのような仕組みを貯蓄や健康促進に使っていくことができる。 米国のオバマ政権では、「行動経済学」者が政権に参加し、「ナッジ」を政府の規制に取り入れ、その具体例が描かれている「シンプルな政府」という本が発行されている。 私:「行動経済学」は、私たち自身の生活をよりよいものに変えていくヒントに満ちているが、一方、悪用する企業も多く、対策には、「行動経済学」を学ぶことが一番だと大竹教授はいう。 とりあえず、「シンプルな政府」を図書館から借りて読んでみるか。
2017.12.10
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私:中国の消費は数年前まで、派手さを好む「ゴージャス」か、安さを好む「チープ」かだったが、米アップルが13年秋に発売したスマートフォン「アイフォーン5s」の色にゴージャス感のあるゴールドが加わると、飛ぶように売れた。 だが、ここ最近、中国の消費者の志向は日本に急速に接近し、派手さはないがデザインがよく、実用的な「無印良品」が急速に浸透している。 A氏:日本と商品や店構えがほぼ変わらない店舗が急拡大し、5年前は44店だったが、直近では210店まで増え、420店の日本と並ぶ一大市場になっているという。 日中両国の文化に詳しい陳祥氏は「2、3年前まで、ぜいたくな物はよいという高級志向があった。だが、本来中国は日本と同じ東アジア文化で、自然で素朴なものを好む」と指摘。 「収入が増えて生活に余裕が出た若者は、自分の文化を見つめ直せるようになり、日本のものを受け入れやすくなった」と分析する。 637万人(16年)もの中国人旅行客が日本での買い物を楽しみ、日本式サービスに接して帰国する現象は、両国の消費志向を近づけた大きな要因。 私:中国での消費者の価値観の変化を間の当たりにした日本の小売業は、中国への進出を加速している。 16年の日本の対中直接投資は前年比3・2%減の9843億円だったが、うち卸売り・小売業だけをみると、同17・2%増と逆に大幅に増加。 中国での店舗展開に力を入れる「イオン」は、来店客から北海道銘菓の名前を挙げて「白い恋人を置いていないか」と尋ねられたことがあり、日本製品への信頼が高まっており、日本の商品を入れやすくなっているという。 A氏:チャンスは日本側に限らず、ネット通販を使い、中国にいながら日本の商品を買う国際取引「越境EC」が大きく伸びている。 経産省の推計では、日本から購入する中国の「越境EC」の規模は1兆366億円(16年)だが、20年には倍近い1兆9053億円に達する見込み。 私:中国の「越境EC」最大手「網易コアラ海購」は16年以降、日本の商品は、頼んで1週間で届くので好評で、商品の購入先では日本が首位を走る。 売れ筋はベビー・マタニティー用品や化粧品、ヘアケア用品など。 中国の莫大な消費市場を背景に、新しいネット通販が国を超えて拡大しつつあるね。
2017.12.09
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私:東北に仕事で2泊の出張をしたので、ブログは2日分お休みした。 ところで、今朝のマスコミは、トランプ大統領の「『エルサレムが首都』宣言」で、世界の多くの国から非難を浴びていることを報じているね。 このクルーグマン・コラムはNYタイムズ、12月1日付のコラムの抄訳だから、クルーグマンク氏は、それについてはふれていない。 徹底したトランプ大統領批判のクルーグマン氏だが、今回の抄訳したコラムでは、トランプ大統領でなく、今回の大型減税案に関連して共和党員を批判をしているね。 A氏:まず、ムニューシン財務長官への批判だね。 大型減税だから、税収が減るため、財政上、それを補う手当を同時にしておかなくてはならない。 これに対し、ムニューシン財務長官は、(あらゆる独立系調査とは違って)税制案は採算が合うとする財務省の報告書があると繰り返し主張し、経済が成長し、歳入が増えるので、赤字は拡大しないという。 私:これに対して、クルーグマン氏は、その報告書は存在しないし、財務省職員がこの点を検討するように言われたことさえないと指摘している。 同日、ジョン・マケイン共和党上院議員が、党の税制案を支持すると表明。 マケイン氏は「慎重な考慮」の末に決断を下したと言うが、実のところ、マケイン氏が支持を表明した時点では、まだ主要条文が、提示されたら審議の間もなく採決できるようにと、秘密にされていた。 上院の指導者たちは、減税法案で、一度も公聴会を開かず、専門家の証言を求めることもなく、あわててこの法案を本会議に送っている。 マケイン氏は「慎重な考慮」は、「うそ」だとクルーグマン氏は指摘する。 A氏:この日遅く、連邦議会の公式記録員である両院税制合同委員会(JCT)はクルーグマン氏の予測通りの判断を下した。 それによると、上院の法案は米国の経済成長にほとんど貢献しない一方で、何千万もの中間層の米国人に直接痛みを与え、赤字を膨らませ、富裕層に惜しみなく恩恵を与え、税金逃れの新たな地平を切り開くことになるという、判断を下した。 私:クルーグマン氏は、こんなにあわてて、誰もその中身や影響が分からないうちに重要な法案を通過させるなど、前例がないと言う。 通常の政治的情報操作(政治家はだれでも、自らの政策の良い面を強調する)と、今回の全局面を特徴づけてきた「真っ赤なうそ」との間には、天と地のような開きがあるとクルーグマン氏は厳しい。 A氏:ムニューシン財務長官は、財務省の調査で成長に大きな効果が示されたと話したが、「うそ」で、トランプ大統領が、この法案が「私に良いことなんかない」と言ったが、これも「うそ」で、ジョン・コーニン上院議員が、「富裕層と大企業が得することを第一に考えた法案ではない」と言ったのも「うそ」とクルーグマン氏は指摘する。 私:クルーグマン氏は、つまり、この法案検討プロセス全体に、奴隷制擁護者が廃止論者を上院の議場で暴行した時代以来、久しく米国の政治で見られなかったレベルの不誠実さが漂っているという。 さらにクルーグマン氏は、このモラルの腐敗に関しては、さらに指摘しておくべきことが2点あるという。 第1点は、腐敗は共和党全体に広がっているということだ。 法案の細部には確かに、トランプ家が得をするようにあつらえたと見受けられるところもあるが、その概要にしろ、ごまかしに満ちた成立に向けたやり口にしろ、どの共和党の大統領のもとでもほぼ同じだっただろうという。 第2点は、腐敗は根深いだけでなく、幅広く広がっていることだという。 連邦議会の共和党議員はほぼ皆、信条よりも党への忠誠心を優先させようとしており、お粗末で無責任な法案だと分かっているのに賛成票を投じようとしているが、それ以外に 顕著なのが、例えば、専門家として真面目に信用されている共和党寄りの経済学者たちが出した公開書簡で、明らかに、奇跡的な経済成長というムニューシン財務長官的な約束を支持しようとしている。 A氏:あいまいな表現のほかにも、公開書簡は、基にしたとされる研究結果をねじ曲げて使っていて、共和党全体に広がる不誠実の腐敗が、同党に関わる多くの知識人にまで及んでいるとクルーグマン氏は指摘。 共和党のなかの反トランプの一部保守派は、自身の信条を守っているが、彼らはこれまでのところほとんど影響力をもたない。 私:腐敗の一掃には、基本的に選挙での惨敗が必要で、それ抜きには、あるいはそれが起こるまでは、共和党がどこまで堕ちるか分からないとクルーグマン氏はいう。 ここで、選挙というのは、議員を選ぶ来年の「中間選挙」のことだろう。 それまでにトランプ大統領の業績は好転するだろうか。 ロシア疑惑は命とりならないだろうか。
2017.12.08
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私:民法の第239条には「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」との規定があるがどんな場合に国庫に帰属するかという基準はずっとあいまいだった。 そこで、鳥取県のある男性が山林約2万3千平方メートルを父親から生前贈与されたが、その3週間後、鹿島さんは山林の所有権を「放棄する」とし、所有者のいない不動産なので国が引き取るべきだとの訴えを試しに起こした。 A氏:広島高裁の判決では、原告は山林を保有し続けることが負担になると考え、国に押しつけようとしたなどと認定し、権利の濫用に当たるとして請求を退けた。 山林を国が管理することになった場合、境界の画定や柵の設置に150万円以上、草刈りや巡回警備に毎年8万円ほどの税金を投じることになる点も重視された。 一方で、判決は「不動産の所有権放棄が一般論としては認められる」とした。 敗訴した男性は、「どういうケースなら国庫に帰属できるのか基準が必要だ」という。 私:人口は増え、不動産は価値を持ち続けるという「土地神話」を前提とした日本の土地制度が曲がり角を迎えている。 地方や都市郊外を中心に、資産価値を失って処分に困る「負動産」が広がっている。 土地の所有権を、放棄したい時に放棄できる制度は日本にはない。 制度上、相続放棄された土地には家庭裁判所を通じて「相続財産管理人」を立てることができる。 競売など手を尽くしても売却できなかった時に初めて、国が引き取ることになる。 A氏:財務省によると、こうした手続きを経て国が引き取った土地は、ここ数年は年間30~50件台。 一方、相続財産管理人選任の申立件数は16年度で約2万件で、管理人業務を担う司法書士から「国に引き取ってもらえず、業務を終結した」との声も聞かれ、その場合、所有権は事実上宙に浮いたままになる。 私:4日の参院本会議で、現状を放置すれば、公共事業も進まないし、土地は荒れ放題となるとして所有者不明土地の問題が取り上げられた。 安倍首相は「所有者不明土地は、さらに拡大が見込まれる。対策は喫緊の課題だ」と強調し、「公園などに所有者不明土地を利用するための、権利設定などを内容とする法案を通常国会に提出する」と述べた。 A氏:法務省では踏み込んだ検討も始まり、有識者らを集めて10月に立ち上げた研究会で、土地を放棄できる仕組みの是非について議論し、18年度中に論点を整理するという。 ただ、放棄地を国や自治体などが引き取る制度を整えたとしても、土地の管理に税金を投じることに理解が得られない可能性もあり、「本気でやったら膨大なお金がかかる」など、放棄のルール化に懐疑的な見方は政府内にもある。 私:安倍首相は少子高齢化を「国の危機」だと言っていたが、具体的に「土地神話」の崩壊で「負動産」問題にも現れているね
2017.12.05
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私:このブログの「中国の夢と足元」でふれたが、中国はベンチャー企業の企業価値や投資額で米国に次ぐ、世界第2位で、ITの技術革新は急速に進んでいる。 このブログの「東京モーターショー始まる 変容する『クルマの世紀』」でもEV時代に「中国のEVは手ごわい」とわれていることにふれていて、まだ日米欧も開拓できていないEVで主導権をとろうとの中国の国家戦略があるという。 A氏:その中で、中国政府が主催する「世界インターネット大会」が3日、浙江省烏鎮で始まった。 先の共産党大会で「新時代」を掲げた習近平主席は中国が先行するデジタル経済やビッグデータ、AI(人工知能)などの分野を育て、国際競争での優位性を高める狙いだ。 私:一方、「ネット空間にも主権あり」とうたい、言論や表現の自由を重んじる欧米諸国などとは一線を画す姿勢も鮮明になっている。 A氏:スマートフォンを使った決済が普及するなどITの社会活用が進む中国が目指すのは、IT分野での国際的影響力の強化だ。 開会式で演説した米国アップル社のクック氏は「中国には180万人のアプリ開発者がいる。彼らをクリエーターとして支援できることを誇りに思う」と持ち上げた。 私:習氏は大会に寄せたメッセージで「中国は世界に向けた門を閉ざさない」と強調し、ネット空間の秩序を守る必要があると主張する中国政府は、6月にインターネット安全法を施行し、言論に対する規制を容赦なく進めている。 「グレート・ファイアウォール」と呼ばれる検閲システムによりグーグルやフェイスブックなどは現在も利用できないまま。 A氏:中国・北京で19人が死亡した先月18日の火災をきっかけに、当局が「危険な住宅を一掃する」との理由で住民を家から追い出している問題で、当局が言論規制を強めていて、主な対象になった出稼ぎ労働者をやゆする「低ランク(低端)人口」という言葉がSNS上で使えなくなった。 私:その後も「低ランク人口」を減らすとした過去の政府文書などが次々に投稿され、「私も低ランク人口だ」などと連帯をアピールする声も登場。 ところが、先月末ごろから「低ランク人口」という言葉がコメントできなくなった。 政府批判を抑えるためとみられる。 しかし、このブログの「変化押し寄せる世界 集中する中国、迷走する米国」でふれたように、中国がテクノロジーの分野では、戦略的な10の産業に政府資金を投じ、政府主導の研究に取り組む「メイド・イン・チャイナ2025」という計画を打ち出している。 重点産業は、電気自動車、新素材、人工知能、集積回路、生物薬剤学、量子コンピュータ、第5世代モバイル通信、ロボット工学で、一方で、これらの成長を早めようと規制を作っている。 現代になって、言論の自由のない独裁国家のほうが、指導層のやりたい方向に国を強力に進める力があるのだろうか。
2017.12.04
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私:80歳になる養老孟司氏が新著「遺言。」を出版した。 養老氏は新著発刊の動機について「いや何となくという感じですよ。いつ倒れてもおかしくない年代ですから、とりあえず言いたいことを言っておこうかと」という。 A氏:言いたいことの一つに「意識」が引き起こす害があるという。 目や耳などを通じて受ける「感覚」に対して、そこに「同じもの」を見つけ、意味に変換し、秩序を与えるのが「意識」。 動物は「感覚」を使って生きるが、人間の活動の大部分は「意識」に基づくという。 都市化が進む社会で暮らすと「『感覚』入力を一定に限ってしまい、意味しか扱わず、『意識』の世界に住み着いている」ようになるのだという。 私:養老氏は、「それはほとんど病気に近づいています。そのしっぺ返しで子どもが減っているのでは。『意識』の中に住み着いてしまったような人間に子どもは、経済的でも効率的でも合理的でもないもの、邪魔にさえ映るのでしょう」と言い、実際には多くの人がその息苦しさに気付き、何とかバランスをとろうとしているのだという。 少子化の原因が「意識」過剰にあるとはね。 A氏:養老氏は、「団塊世代はしょっちゅう山に行くし、若い人だって森へ出かけて癒やされると言う。全部そうですよ。生きるために必要なんです。みんながそれを理解するだけで大きな違いを生むと思います」という。 私:以前、養老氏は「参勤交代」を提唱していたね。 半年ごとに、都会を離れ、田舎にいくわけだ。 インタビューしている筆者は、犬や猫との比較やマグリットの絵など、奔放に広げられていく論に引かれ一気に最後まで読んでしまったという。 養老氏が語って、編集者がまとめる「語りおろし」スタイルかと思ったが、書き下ろしだそうで、一から書いたものは四半世紀ぶりだという。 養老氏は、初めての船旅で半月という時間がとれ、人間とは、生きるとは、これまで考えてきたことをまとめることができ、だから「遺言」なのだという。 A氏:養老氏は、「あとは死ぬまでウロウロですかね。昔から、最期は芭蕉か西行かだと思ってたんです。野ざらしで終わるのがいい」という。 旅に病で夢は枯野をかけ廻る 芭蕉 願はくは花のもとにて春死なむその如月の望月の頃 西行 を連想するね。 インタビューした筆者は「とは言え、虫捕りと山歩きで鍛えられた肉体は、やはりまだまだ旅に病みそうには見えなかった」という。 私:養老氏は、愛煙家で、タバコが健康に悪いという考えに反対だね。 タバコと肺ガンには因果関係がないという。 今も健康で、自ら、それを実証しているようだね。
2017.12.03
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私:「重量挙げ」界のドーピング問題は深刻で、2015年の世界選手権(米)では24選手の検体から陽性反応が出た。 08年北京五輪と12年ロンドン五輪を対象にしたIOCの再検査では全競技のなかで最多の計49件(9月発表時)の陽性反応が発覚。 「重量挙げ」は、1920年アントワープ大会からの正式競技だが、手を汚す者は後を絶たない。 A氏:事態を重く見たIOCは、20年東京大会では16年リオデジャネイロ五輪から男子1階級の削減を決め、さらに出場選手を64人減らす。 24年パリ大会は、リオ五輪と同等の28競技を行うことを9月のIOC総会で承認したが、「重量挙げ」だけは今月の理事会で判断すると保留。 国際重量挙げ連盟(IWF)は11月下旬の理事会で組織改革案を承認し、その内容をIOCに提出することを決め、違反が多い国では競技会外での抜き打ち検査を増やし、反ドーピング対策への取り組みが甘い国の連盟には、最大で4年国際大会への出場権利を取り上げるなどの項目を盛り込んだ。 私:今月5、6日にスイス・ローザンヌであるIOC理事会で不十分と判断されれば、24年パリ大会の実施競技から外れる可能性がある。 IWFは9月、08年北京、12年ロンドン大会で3件以上の違反が出た中国やロシアなど9カ国に1年間の資格停止処分を科した。 「重量挙げ」女子48キロ級の日本の第一人者で、ロンドンは銀、リオで銅メダルを獲得した三宅宏実氏は、「未来のオリンピックで(重量挙げが)なくなると、子どもたちの夢がなくなってしまう」という。 20年東京大会では「重量挙げ」の種目が減るだけだが、24年パリ大会ではなくなる可能性がある。 来週のIOC理事会の結論待ちだね。
2017.12.02
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私:保守の論客として有名な佐伯教授が、今年がロシア革命から100年であることから、社会主義の衰退から、論じているね。 「ソ連社会主義」などというものはもはや地上から姿を消してしまい、ひと昔前の若者にとっては、ロシア革命やトロツキーやボルシェビキという単語は、それだけでどこか琴線をくすぐるところがあったことを思えば、隔世の感があると教授は言う。 A氏:俺たち世代も11月7日のロシア革命の日はなんとなく覚えていたからね。 それが、このブログの「ロシア革命100年、ロシア複雑 ソ連戦勝「誇り」/困窮の記憶も」でふれた通り、当のロシアでは05年、プーチン大統領が「11月7日」の革命記念日の祝日を廃止しているね。 私:ソ連が崩壊した1991年に「社会主義」に対して批判的であった佐々木教授は、ちょうどイギリスに滞在していて、そのとき、左翼を自認するイギリス経済学者と話をしたら、彼は意外にも「実に歓迎すべきことだ。私は決して社会主義者ではない。私はあくまで社会民主主義者であって、ようやくわれわれの出番になったのだ」といったという。 A氏:日本ではずいぶんと長い間、「社会主義」に対する幻想があり、革新政党は、「社会主義」や「共産主義」への傾斜を隠そうともしなかったし、左翼学生も、現実には不可能だとわかっていても、社会主義革命を熱く語っていた。 しかし、すでに欧米では、スターリン政治にみられるように「ソ連社会主義」は恐るべき全体主義国家である、という認識が広がっており、「社会主義」の崩壊とは「全体主義」の崩壊を意味していた。 私:佐伯教授は、「社会主義」の崩壊は、自由な社会の勝利であったとともに、それは「資本主義」の勝利であり、世界中がグローバルな市場競争に覆われ、アメリカ主導のIT革命や投機的な金融市場の展開によって、まさしく「資本主義」が凱旋したのであるという。 しかし、「資本」が瞬時にして世界中を動きまわり、「資本」の増殖を求めて、個人も企業も国家も、果てしない競争にのめり込んでしまい、共産党が支配するはずの中国までもが、「資本」の競争に国家ぐるみで参入しているという。 A氏:これが冷戦以降の世界の実態であり、それをわれわれは「新自由主義」などというが、この現実はまた、別種の「全体主義」ではないかといいたくもなると教授は指摘する。 資本の増殖を求めるグローバルな市場競争というメカニズムがあまりにわれわれの生を圧迫しているからで、競争、効率性、自己責任、能力主義の支配する世界へわれわれは囲い込まれている。 私:教授は、この自由社会は、われわれを過剰なまでの競争に駆り立て、過剰なまでの情報の中に投げ込み、メディアやSNSを通じて、われわれは他人のスキャンダルを暴き立て、気にくわない者を誹謗し、少しの失態を犯した者の責任を追及するという、実に不寛容な相互監視社会へとなだれ込んでいて、これもまた一種の「全体主義」といわねばならないという。 A氏:家族、地域、学校、組織、企業、それに様々な仲間の集まりやサロンや社交の場が、かつてはそれなりに機能していた。 様々な葛藤や矛盾を含みながらも、多くの人は、何らかの場に属して、そこで「人間交際」をやっていて、こうした「人間交際」の重層化されたものが「社会」であり、だから、社会は一定の倫理的価値を保ちえたのであると教授はいう。 私:このような「社会的(ソシエタル)なもの」を重視するという意味では、教授はずっと「社会」主義(ソシエタリズム)に共感してきた。 それは「社会主義(ソシアリズム)」ではないが、また、「新自由主義的な資本主義」でもないと教授はいう。 A氏:ところが、「社会主義」が崩壊し、冷戦が一応終了し、「新自由主義」とグローバル競争の時代になって、「社会的なもの」までもが崩壊していると教授は指摘する。 家族や地域は、ずたずたになっており、学校も機能しなくなっていて、組織も成果主義や自己責任で窮屈になっている。 もっと大きくいえば、過剰なまでの市場競争と情報社会化が、「社会的なもの」の崩壊を促しているように見え、それを立て直すのは難しいと教授はいう。 私:しかし、われわれの日常生活がごく自然に多様な「人間交際」によって成り立っているという当然のことを思い起こせば、「社会」の復権にもさほど悲観的になる必要もないのかもしれないと教授はいう。 教授の「保守」という立場からは家族、地域、学校、組織、企業、それに様々な仲間の集まりやサロンや社交の場の復活への期待が大きいね。 しかし、その「保守」の復活には、日本では同時に、急速に進む少子高齢化が大きな解決すべき課題になるね。
2017.12.01
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私:大企業の終身雇用制が根強い日本は、起業家が育ちにくい国と言われてきた。 開業率(新規の事業者数が既存の事業者数に占める割合)は、先進国の中で最低レベルに近いが、変化は見える。 昨年度の開業率は5・6%で25年ぶりの高さとなり、昨年の未上場ベンチャー企業の資金調達額は、5年前に比べ3倍以上に増えた。 A氏:これについてはこのブログの「22日の朝日新聞・日曜書評より」の中で、山口栄一氏〈著〉『イノベーションはなぜ途絶えたか 科学立国日本の危機』の著書を紹介しているね。 私:この「ザ・コラム」欄は、米フェノックス・ベンチャーキャピタル社が昨年から始めた起業家コンテスト、「スタートアップ・ワールドカップ」日本予選の観戦記事からはじめている。 予選優勝者は、来春にサンフランシスコで開かれる本選に出場し、世界30地域以上の代表らと競い合い、優勝すれば、100万ドルの投資賞金がもらえる。 昨年の本選の覇者は、日本代表の「ユニファ」。 最先端技術を使って保育園児の見守りサービス支援を行う会社である。 A氏:今年の日本予選に真っ先に登場したのは、世界初の洗濯物自動折りたたみ機、「ランドロイド」についてプレゼンした阪根信一氏。 「ランドロイド」は、人工知能を使って衣類の形を見分け、ロボットアームでたたみ、分別する。 来年に米国や日本などで発売され、当初の値段は185万円と高いが、将来は、20万円台以下にしたいという。 坂根氏は、「大企業は持っている技術の『シーズ(種)』から考えがちで、世の中の「ニーズ」から考えていないので、中途半端な製品になることがある」とみる。 私:6番目に登場したのは、メビオール社の森有一氏で、75歳の森氏が披露したのは、「フィルム農法」だった。 透明なフィルムに野菜(水菜)がはりついている現物を掲げ、中東の砂漠でもトマト生産ができると話した。 優勝は阪根氏、森氏は特別賞を受賞した。 A氏:森氏はもともと、東レなどの大企業の研究所に勤め、人工臓器などを開発していた。 医療用の高分子膜の技術を農業に生かそうと、53歳で起業。 18年間の赤字を耐え抜き、黒字化した。 大企業と組み、本格的な海外進出を考えているという。 私:「ワールドカップ」の審査員も務めた経産省の石井芳明氏は「大企業の中で限界を感じている人が増えているのも一因だろう。ベンチャーは、日本市場で満足するのではなく、最初から世界市場を狙う姿勢が重要だ」という。 A氏:山脇氏は、「過去20年、日本企業の世界での存在感は急落したが、日本人の創造性が衰えたわけではないだろう。ベンチャーと大企業が互いの強みを生かせば、世界にはばたけるチャンスはある」という。 私:これは先にとりあげた「22日の朝日新聞・日曜書評より」の『イノベーションはなぜ途絶えたか 科学立国日本の危機』の著者山口氏が、日本で企業家精神が育たないのはリスクを避ける国民性ではなく、制度設計に問題があり、これを修正すれば、産業競争力は復活するというのと同じ見方だね。 米国政府は「大企業はもはやイノベーションを起こせない」と見切りをつけ、技術革新の新たな担い手として大学院生らの起業を支援する「SBIR制度」を1982年に創設。 これが卓越した審査・報償方式によって目覚ましい成果を上げた。 日本でも同じ制度を開始したが、成功していない。 その日米比較を山口氏は、下記サイトで述べている。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/58/6/58_462/_html/-char/ja
2017.11.30
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私:NYタイムズは反トランプであるだけに、トーマス・フリードマン氏もこのコラムで中国を再び偉大にするという長期的な目標を進める習近平と、全ての小さな戦果でさえ歴史的だと持ち上げ、手っ取り早くテンションが上げられるなら、どんな道でも進んでいくトランプ氏と比較して、習近平氏に劣るトランプ氏を批判している。 A氏:フリードマン氏は、我々は三つの「変化」が同時に押し寄せる世界にいるという。 第1に、「気候変動」の中にいる。 第2に、「グローバル化」の変化の中にいる。 第3に、「テクノロジーと仕事の変化」を体験している。 以上の3つの視点から、習近平氏とトランプ氏の比較をしている。 私:まず、中国は、「気候変動」に対応するため、クリーンエネルギーや電気自動車に巨額の投資をしている。 「グローバル化」の変化には、中国は国内市場を厳しく規制する一方で、成長し続けるアジア市場とはシルクロード経済圏構想「一帯一路」やアジアインフラ投資銀行(AIIB)を通して、通商関係を深めており、「他国のためではなく、自国のためのグローバル化」と呼ぶべきもの。 テクノロジーの分野では、戦略的な10の産業に政府資金を投じ、政府主導の研究に取り組む「メイド・イン・チャイナ2025」という計画を打ち出している。 重点産業は、電気自動車、新素材、人工知能、集積回路、生物薬剤学、量子コンピュータ、第5世代モバイル通信、ロボット工学で、一方で、これらの成長を早めようと規制を作り、外国の知的財産を侵害している。 A氏:これに対して、トランプ氏はどうか。 第1の、「気候変動」に対しては、彼は風力や太陽光のようなクリーンエネルギーより石炭を推進し、環境政策の主要ポスト全てで地球温暖化否定派を指名し、科学担当の補佐官すらいない。 第2の、「グローバル化」については、トランプ氏は、環太平洋経済連携協定(TPP)を壊した。 参加していれば、米国の利害と価値観に基づいて築かれた太平洋12カ国(中国を除く)の貿易圏のかじ取りができ、世界の国内総生産(GDP)の約40%を占める国々で、1万8千品目に及ぶ米国輸出製品への関税を撤廃させることができたのにと、フリードマン氏はいう。 米国が数十年にわたって市場開放の努力をしてきた後、他のTPP参加国は米国抜きで市場を開放しようとしている。 フリードマン氏は「トランプ大統領、中国は君に感謝しているよ。米国の存在感が薄れる中、TPP参加国は中国の経済的な圧力をますます受けるだろう」という。 私:第3の「テクノロジーの変化」についていうと、トランプ氏は税制改正を進めているが、それは先端技術への投資を促すための分析に基づかないもので、その法案では、電気自動車への7500ドルの税額控除を廃止し、風力発電の実現に重要な税額控除を縮小し、科学者や技術者の宝を育てている裕福な大学の寄付金に課税するというものだ。 つまり中国が巨大な変化の風に目を向けている中、トランプ氏は自身の直感と減税案の寄せ集めに賭けていて、彼が目を向けているのは、疑わしいトリクルダウン経済学(富める者が富むことで、貧しい者にも富が滴り落ちるという考え方)だけだとフリードマン氏は指摘する。 A氏:フリードマン氏は、個人的には、上意下達の中国の産業政策が中国を偉大にするとは考えられず、実際、米国の経済システムの方が、理論上は優れているが、中国はその集中力で、あっという間にここまで来たのであなどれないという。 私:フリードマン氏は、このコラムの最後で「中国人が北京でトランプ氏を盛大にもてなし、大いに喜んでいた理由は、もうお分かりだろう」と皮肉っている。 しかし、このブログの「中国の夢と足元」、「中国発のスマホ革命 独裁国家が握る個人の信用」、「東京モーターショー始まる 変容する『クルマの世紀』」で、とりあげたように、中国社会は急速に変化していて、恐るべき力を持った大国になろうとしている感じがするね。 俺達の孫の世代には中国は、米国を超えた経済大国になっているのかもしれない。
2017.11.29
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私:本業の貸し出しや手数料ビジネスで、地方銀行約60行の6割が25年には赤字になると金融庁が今年に報告書を出している。 人口減による国内市場の縮小に、日銀のマイナス金利で収益環境の悪化が苦境に拍車をかけている。 A氏:すでに、このブログの「3メガ銀、スリム化急ぐ 低金利・人口減、収益頭打ち」でとりあげたように、同じ環境にあるメガバンクは大量の人員や業務量の削減に乗り出している。 地銀の場合は生き残るには「統合」による「再編」が望ましいが、それによって、シェアが上がると競争が起きにくく、企業に不利益になりかねない。 こうした視点から、公取委は「統合」を慎重に審査している。 私:新潟県の地銀、第四(だいし)銀行(新潟市)と北越銀行(長岡市)の2行は、人口減の中で生き残るための「統合」を計画したが、2行で、県内シェアが5割超に上がり取引先への立場が強くなるとして公正取引委員会が慎重に審査している。 第四銀行の並木富士雄頭取は「(審査は)想定よりも時間を要しているが、一日でも早く認可を取れるよう鋭意努力する」という。 「統合」相手の北越銀行の佐藤勝弥頭取は「『統合』は新潟県にとってベストな選択だと判断した。変更するつもりはない」という。 A氏:新潟県内1、2位の第四銀行と北越銀行の2行は4月に統合で基本合意し、10月に最終契約を結び、来年4月に持株会社傘下に2行が入る予定だったが、公取委の独占禁止法上の審査が長引き、統合は半年遅れることになった。 私:「統合」すれば新潟県での融資シェアは5割超となり、シェアが上がると競争が起きにくく、企業に不利益になりかねないという視点から、公取委は「統合」を慎重に審査しているわけだ。 実際に、2行の「統合」についてへ新潟県の企業側からの懸念もある。 新潟県では、雪が多い冬場は受注が少なく、春先までの「つなぎ融資」を受けるケースが多く、そのとき、複数の金融機関を競わせ、より低利の貸し出しを求めることも多く、「統合」で競争がなくなれば、銀行側の発言力が強くなり、条件は確実に厳しくなるという懸念もある。 A氏:公取委の杉本委員長は今月初め、「独占の利益に頼って金融システムを維持する考え方は決して適切ではない」と発言し、「統合」が地域の利益になるかを厳しく見る考え。 私:同じ地銀の「統合」問題が、九州でも起きている。 ふくおかフィナンシャルグループ(福岡市)と十八銀行(長崎市)の「統合」計画で起きていて、2行で、長崎での融資シェアが7割となることを公取委が問題視し、「統合」は無期限延期となった。 A氏:金融庁も公取委を意識してか、先ごろ発表した2017事務年度(7月~18年6月)の「金融行政方針」で、地域での競争のあり方も検討すると明記。 公取委が「統合」への懸念を相次ぎ示したことを受け、考え方を明確にする必要があると判断したとみられる。 私:地銀は「統合」で生き残りを賭けたが、思わぬ伏兵にやられたね。 地銀の生き残りが、ますます、厳しくなりそうだね。 地銀については、下記の知的街道がある。 「地銀サバイバル」、「地銀の『地方創生』協力・金融庁は監督の役割忘れるな」、「鹿児島銀行 農業に風穴、地銀の挑戦」、「緩和マネー、リートに流入 不動産、路線価の10倍も:(異次元緩和の行方:上)」、「商工中金、ほぼ全店で不正 関与職員も数百人に」
2017.11.28
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私:前にテレビでアメリカンフットボールのプロリーグ戦での異常なシーンが放映されていたね。 まず、スタジアム中が起立して国歌を唱和し、合間には招待客のイラク帰還兵が「わが町の英雄」として誇らしく紹介される。 ところが、フィールド脇では国歌斉唱中に片ひざをついたり、拳を挙げたりする選手がいた。 相次ぐ警官による黒人射殺などに抗議して昨夏から黒人選手らが始めた「実力行使」。 A氏:政治の中枢ワシントンでも様々な街頭抗議が連日、繰り広げられているという。 私:公民権運動、ベトナム反戦から反グローバル運動まで、米国の抗議運動の歴史は長く、スポーツも例外ではなく、1960年代、メキシコ五輪では黒人選手が表彰式で拳を挙げ、モハメド・アリは徴兵を拒んだ。 だが、この1年間、女性や同性愛者の権利向上、移民・難民への連帯から、気候変動や科学予算の削減撤回まで、ありとあらゆる論争が噴出。 イリノイ大学のヒーニー助教(社会運動)は「ここまでテーマが多様化したのは異例」という。 A氏:過激な言動や物議を醸す政策を繰り出すトランプ大統領に触発された動きなのは明白だが、気がかりなこともあると沢村氏はいう。 トランプ氏は抗議するアメフト選手を「高給取りが国家を侮辱している」となじり、白人支持層の喝采を浴びた。 各地の大学のキャンパスでは「言論の自由」を標榜して集まる極右の若者と、ヘイトスピーチに反対する学生の対立が先鋭化。 為政者や権力への異議申し立てであるはずの抗議が、「市民対市民」の構図になる、または、そう仕向ける力学が働いているように思えてならないと沢村氏は指摘する。 スタンフォード大学のマカダム教授(社会学)は「民主主義が劣化してきた先に分断があったので、トランプ氏は原因ではなく、その産物だ」と指摘する。 私:米国では過去50年、自党に有利になる選挙区の引き直し(ゲリマンダリング)や、有権者登録時に免許証など身分証の提示を義務づけ、「移民やマイノリティー(少数者)、貧困層が投票しにくくなる法律」が地方レベルで静かに広がってきた。 これらが支持者の顔色だけをうかがう政治家を生む一方、自分の声は政治に届かないという不信を社会に蓄積させてきたとマカダム教授は指摘する。 1年前のトランプ氏の当選自体が、不満を募らせてきた白人労働者層による「抗議」の結実といえよう。 ワシントンでは、しばしば「日本は政治も社会も安定して、うらやましい」と褒められるが、「一票の格差」、「低投票率」、「立場を異にする者を拒絶する政治家のとがった発言」など、日本からワシントンに伝わるこれらは何の前兆だろうと、どうも胸騒ぎがすると沢村氏はいう。 A氏:抵投票率については、このブログでも「低い投票率、民意と隔たり 批判の棄権、結果左右せず 衆院選」、「投票率53.68% 戦後2番目の低さ 衆院選、小選挙区」、「総選挙の構図 『希望』が幻想だったわけ」でふれているね。 私:「低投票率」だけとっても、「日本は政治も社会も安定して、うらやましい」とほめられるのはおかしいね。 たしかに胸騒ぎがするね。
2017.11.27
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私:著者の家近氏は、「幕末維新史」を専門としており、徳川慶喜や西郷隆盛の研究を続けてきた。 自らを「歴史学では異端」と語り、本書は体調不良の観点からとらえた西郷の評伝の続編。 「歴史は敗者にもフェアな目配りが必要」と失敗続きで謎多き西郷の実像に迫った。 A氏:例えば、近代化における立憲制の導入や共和政治をどう考えていたのか。 皇族の血をひく最後の将軍慶喜をなぜ恐れたのか。 征韓論の真意とは、人間嫌いだったのはなぜか。 これらの謎を福沢諭吉の思想や側近の残した資料、極端な犬好きの側面などから推定する。 浮上するのは豪胆だが繊細で気配りができ、理詰めだが多情多感で、意外と不器用な西郷像。 私:さらに西郷に匹敵したという幕末から明治まで活躍した「中根雪江」や「日本警察の父」と言われる「川路利良」らにも言及し、リーダーの資質を示す。 背景には今日の「政治の劣化」や「礼節の欠如」があるといい、大切なものに人生をかける清廉潔白で人間力豊かな「人物」が不在と嘆く。 A氏:森友・加計学園問題は忖度だらけで「政治の劣化」の氷山の一角と言われるね。 私:家近氏は「『人材』と『人物』は違います。いまの日本ではすぐ役立つことに価値を置きますが、『人物』は効率から生まれない。『人物』を育むのは余裕。それは回り道や失敗体験を経ないと身につかない」。 そして「『人物』には面白みがあり、それは私にとって最も価値あるもの」という。 A氏:「人物」というには「人格者」や「品格のある人」という意味かね。 卑近な例だが、最近、大相撲が横綱の暴力問題で「横綱の品格」が問われているが、大相撲の横綱の「人材」はいるが、横綱の「人物」はいなくなったね。 元気のある若い相撲取りを「生意気だ」と殴り倒すのでなく「これからは、君たちの世代になる。頑張れ」という太腹の余裕のある「人物」横綱はなくなったね。 私:家近氏は 一方、維新革命から1945年の敗戦までを「不幸の歴史」と語る。 振り返れば、米国の外圧(黒船)で開国し、富国強兵に邁進。 日清・日露・日中・太平洋戦争と戦争の連続で他国にも侵略。 日本人だけでも300万人超もの死者を生み、戦後もまた米国と共にある。 A氏:家近氏は、「歴史には原因と結果がある。いま必要なのは近現代史にきちんと向き合い、中国や韓国のような時間をかけた歴史教育です。他国に対し、過去を水に流す、は通用しませんから。そして敗者復活が可能な社会にしなければ」という。 この点、同じ第2次大戦の敗戦国のドイツでは、このブログの「ナチスの加害学ぶ独 悲劇繰り返さないために」にあるように、日本の中学・高校にあたるギムナジウムでは、負の部分、加害者としてのドイツについて、映画「シンドラーのリスト」を見に行ったりして、じっくり学ぶ。 これに対して、日本では学校やメディアで戦争について取りあげる際、被害の部分に焦点を絞ることが多く、加害者としての日本について語られることは多くないね。 私:来年は明治維新150周年で、家近氏は「歴史は刻々と変化する。だから歴史を学ぶことが大事で、すべての教養の根本には歴史があるのです。とくに若い人には歴史を考えることの楽しさ、魅力的な『人物』を伝えたい」と繰り返す。 しかし、このブログの「上杉謙信・吉田松蔭・坂本龍馬、高校教科書から消える?」でとりあげたように、幕末で薩長連合、大政奉還で活躍した坂本龍馬が、高校の教科書から消えるのは残念だね。 彼は「人物」だと思うがね。
2017.11.26
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私:原氏が、日本の経営者や経済学者たちで、最近は「低成長やむなし」の意見に耳を傾ける人が少なくないという。 4年前、サマーズ元米財務長官が先進国の「長期停滞論」を発表し、米欧経済そのものも以前よりずっと低い成長率のまま10年近くが過ぎ、いまでは低成長経済はすっかり先進国共通のテーマになった。 そして、その対応をめぐっての意見は「何が何でも成長率を高める手を打つべき」と「低成長社会を受け入れる」の真っ二つに割れる。 A氏:原氏は、著書「時間かせぎの資本主義」で昨年、この問題を正面から論じたドイツの社会学者で、低成長受け入れ派のひとりである、ヴォルフガング・シュトレーク氏に過日インタビューした。 私:70歳をすぎてなお情熱的に持論を語る氏によると、先進国の自然体での高成長は1960年代にはすでに寿命を迎えていた。 そこで各国は成長をなんとか延命させようと「時間かせぎ」に走る。 先進国にとって民主主義的な資本主義は存在意義であり、それを守るには国民の経済的な不平不満を抑え、支持を取り付け続けないといけなかったからだ。 A氏:「時間かせぎ」の手法は、70年代はインフレ、80年代は政府の借金、90年代からは家計の借金と限界を迎えるたびに入れ替わり、それが膨れあがって破裂したのが2008年のリーマン・ショック。 私:次いで「時間かせぎ」の主役になったのは日米欧の中央銀行。 これまでの常識を踏み出す超金融緩和に乗り出し市場に大量のお金をばらまいた。 日本では、日本銀行が巨額の国債、株式や不動産の金融商品まで買うようになり、市場のビッグプレーヤーとして相場の下支え役となっている。 A氏:だが、バブル崩壊の傷を新しいバブルで癒やす手法は、もはや限界にきていると、シュトレーク氏は強調し、さらに「リーマン後のグローバル構造の崩壊はまだ序章にすぎない。早晩、国際エリートたちは今の資本主義システムの代替案を出さなければならなくなる」という。 このブログで3年前に4日にわたり、とりあげた水野和夫氏の「資本主義の終焉と歴史の危機」と似た視点だね。 私:とにかく、現在、米欧の中央銀行もさすがにこれ以上の深入りを警戒したのだろう。 量的緩和の出口へと相次いで動き始めた。 ところが、日銀はひとり出口に背を向け、いまも超緩和のエンジンをふかし続けている。 A氏:原氏が、シュトレーク氏に日本への提言を求めると「グッドラック(幸運を祈る)としか言いようがない」と言ったという。 私:黒田日銀総裁の任期切れが迫っているが、黒田総裁の再任か、緩和に加え財政拡張も唱え始めたリフレ派への交代か、あるいは別の候補か。 日銀の「顔」とともに、異次元緩和の大きく変わると新聞は報じているが、安倍首相は黒田総裁継続を主張とのことなので、低成長路線は期待できず、本当に「グッドラックグッドラック」だね。 しかし、低成長経済社会とは、具体的にどういう姿なのかシュトレーク氏も水野和夫氏も描いていないのが残念だね。
2017.11.25
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私:スペインのカタルーニャ州の独立問題は、このブログの「カタルーニャ、80年後の『讃歌』」で、現地の報告をとりあげ、その実状にふれたが、ピケティ氏は、この問題について、所得税の地方への分配問題の視点から追及しているね。 A氏:まず、ピケティ氏は、今回のカタルーニャ危機の原因は、行き過ぎた中央集権化とスペイン中央政府の権力の横暴にあるのだろうか、それとも、逆に、むしろ地域や国家の間に競争を持ち込む論理が広がったためだろうかという。 この地域と国家の間の競争論理はこれまで、スペインでも欧州でも行き過ぎるほどに推し進められてきた。 そのために、自分の地域だけを守ればよいという風潮が、ますますエスカレートしているとピケティ氏は指摘しているね。 私:忘れられているのは、スペインでの税の地方分権を進める新しい規定が、10年に承認され、カタルーニャ州および他の地域全体を対象にしており、11年に施行されたこの規定によって、税と予算ではより地域の規模が大きく、連邦制をとる他の国と比べても、スペインはいまや最も地方分権の進んだ国の一つになったことだ。 特に、所得税の課税基準は11年以降、中央政府と地方政府の間で半々に配分され、地方はおのおのの税率に従って税収を受け取り、他の地方と分け合う必要はなくなった。 A氏:こうしたシステムには、数多くの問題があり、国内の連帯という概念さえ台無しにし、地方同士を対立させる。 こうした事態は、所得税といった手段においては、ことに問題だ。 私:これに比べ、スペインの7倍の人口があり、地方分権と州の権限に重きを置くことで知られる米国では、所得税はこれまでずっと、ほぼ例外なく連邦税である。 A氏:米国では、州はそれぞれ、さらに加算率を議決することもできるが、現実には5~10%という低いものにすぎない。 カリフォルニア州だけで、人口はほぼスペインと同じであり、それは、カタルーニャ州の6倍にのぼる。 カリフォルニア州の納税者も、できるものなら自分のため、子孫のために、連邦税の税収の半分を州に残したいだろうが、決してそうはならないし、実を言えば、本当に残そうとしたことは一度もないのだとピケティ氏はいう。 私:よりスペインに近い例としては、ドイツ連邦共和国があり、ドイツでは、所得税はもっぱら連邦税であり、例えば、ドイツのバイエルン州の納税者がどう思おうが、州が加算率を議決することもできなければ、ほんのわずかな税収を手元に残すこともできない。 ピケティ氏は、地方や地域レベルで決める加算率という考え方自体が、悪いわけではないが、節度あることが条件だという。 所得税の収入を地方と半分ずつ分かち合うというスペインの選択は、行き過ぎで、その結果、カタルーニャ州の一部の人たちが、独立することで税収のすべてを手元に残そうとする事態に今日、至ったのであるとピケティ氏は指摘する。 A氏:今回のカタルーニャ州の独立運動の背景には、所得税の収入を地方と半分ずつ分かち合うというスペインの選択があったわけだ。 私:ここで、ピケティ氏は、スペインという一国家の視点を離れ、ユーロ圏を国家になぞらえる視点に移る。 そういう視点から見た場合、欧州全体の予算は存在するが、極端に少ない。 だから、欧州規模、世界規模で大市場への統合を進める一方、連帯の義務も、公共財に出資する義務も、実質的にはない。 A氏:ピケティ氏は「よりうまくできるかもしれないが、道のりは遠い。連帯と、バランスのとれた発展を実践することでこそ、欧州は『分離独立主義』に対抗しうるだろう」という。 ピケティ氏は、スペインの極端な所得税の地方分権がカタルーニャ州の「分離独立主義」を推進させたと見るとともに、同じことが欧州連合の中央予算が少ないことから欧州統合からの「分離独立主義」を推進させることを危惧しているね。 私:具体的に欧州連合の予算の強化はどのように進められるのか、ピケティ氏のいうように道は遠いのか。 それまで、「分離独立主義」を弱体化できるのか。
2017.11.24
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