全4555件 (4555件中 401-450件目)
< 1 ... 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 ... 92 >
A氏:君がこの問題は完成検査記録に記入される氏名問題だと予告していたが、今日の新聞報道でようやく、それに焦点があてられた記事になってきたね。 私:報道によると、完成検査結果を記す書類には実際に検査に関わっていない有資格者の名前が示され、押印もあったことがわかり、こうした偽装はほぼ全ての工場で行われていたとある。 実際に検査した人の氏名は、サインでなく印章なんだね。 資格のない検査員が有資格者の印を使って、検査記録の検査者名に押印したというわけだ。 印章の管理もずさんだね。 A氏:記事によると日産では、資格を持たない補助検査員による検査が、国内向けに車両を組み立てる全国の工場で日常的に行われており、検査の結果や誰が検査したかは書類に残す必要があるが、関係者によると、有資格者が実施したように押印などで記載内容が偽装されていたんだね。 私:国土交通省は3日、栃木と京都の工場に抜き打ちで立ち入り検査に入り、関係書類の提出を求めるとともに、従業員からの事情聴取にも着手し、今後、不正の実態解明を進めるという。 A氏:記事では、日本の「ものづくり」の先頭集団にいるはずの日産で、無資格者が書類上は資格者を装い、検査の実態を偽る慣行が続いていた可能性が強まり、生産性を競うあまり、安全確保の認識が甘くなっていた可能性があり、同様の事態がないか、他社も確認を急ぐとある。 私:まだ「安全」という言葉を使っているが、「品質」だよ。 A氏:西川広人社長は2日の会見で、「我々の事情で『補助検査員がやっても大丈夫だからやる』ということをしてはいけない、ということを、現場をコントロールする立場の人間がわかっていなかった」と説明した。 私:この社長の発言もおかしいね。 検査責任者は、検査記録に記入される氏名は有資格者のものであることは十分知っていたはずで、だから有資格者の印章があり、資格が与えられているんだよ。 だから、記事では、現場では無資格者が有資格者の名前や印章を使って確認したように装っており、西川社長の認識とは異なり、現場では、不正な行為だとわかったうえであえて補助検査員に担当させていた疑いが強まるとある。 「疑い」でなく、事実だろうね。 また、記事では、「生産の各工程では、なるべく人手と時間をかけずに質のよい製品を作るため、各メーカーがしのぎを削る。日産幹部は『生産効率の改善は当然だが、検査の工程だけは『不可侵』であるべきだ。その違いがあいまいになった可能性はある』と話す」とあるが、「質のよい製品」を顧客に提供するために完成検査をするのであって、生産効率の改善は「品質」とバーターでなく、「品質」が上位で、目標とする「品質」を達成するための生産効率だね。 「安かろう、悪かろう」ではダメなことは常識だ。 A氏:国土交通省は日産以外のメーカーにも、完成検査を適切に進めてきたかどうか、10月末までに報告するよう求めた。 他社にも波及すれば、「ものづくり」への信頼が大きく揺らぐとある。 私:ホンダのように「現時点で正規従業員しか検査工程に配置していない」というのが正解だね。 10月末に提出される各社の報告はどうなるか結果を待ちたいね。
2017.10.04
コメント(0)
私:この日産の問題は、一昨日のブログ・「日産・全工場、検査体制ずさん 日産ブランドに打撃」でとりあげたが、今朝の新聞でその後のニュースが載っているね。 A氏:君はこの種の問題で新聞の取材者が不勉強なのか、ポイントをついていないと批判的だね。 私:すでに、見出しの「安全管理」自体が間違っているね。 この用語は、通常、土木建設業や機械工場で作業中に怪我のないように管理することだね。 おそらく記者は「車の安全」の問題としてとらえて使っているのだろうが、「車の安全」とは車が故障がなく正常な品質を持っていることを問題にしているのだから、「安全管理」でなく「車の品質管理」の問題だよ。 A氏:だから、君は「品質管理」の国際規格のISO9001を持ち出すわけだね。 私:日本では、1990年頃までは「品質管理」と言っていたが、ISO9001が普及してからは「品質マネジメントシステム・QMS」というようになってきたね。 今日の報道では、無資格の従業員に車の検査を担当させていた問題は、約121万台に上る大規模リコール(回収・無償修理)に発展したという。 車種も24車種。 A氏:書類上は正規の従業員が検査していたように装っていた疑いもあるというが、君が言っていたように、完成検査には、検査した者の氏名を記録するのがQMSの常識だから、記録に記載してある氏名が正規の資格のある従業員の氏名なら問題ないね。 私:ただ、実際には無資格の非正規の検査員が検査しているのに、名前を偽り、正規の検査員の名前を記入することがありえるね。 新聞の見出しで「書類偽装の疑いも」とあるのは具体的にはその検査記録で「名前を偽った」ことだろうね。 A氏:2日、日産本社で記者会見した西川広人社長は「背景にある従業員の認識について徹底的に検証し、対策を立てたい」と 陳謝し、1カ月間をめどに第三者を交えたチームで原因究明に当たり、自身を含めた経営陣の責任のとり方については「調査の後で考える」と明言を避けたね。 私:1カ月間をめどに第三者を交えたチームで原因究明に当たるというが、正規に認められた検査員を支援する役割にとどまる「補助検査員」は、バッジの有無で簡単に識別できるシステムになっている。 だから、問題は完成検査記録の氏名記録だけだから、その記録を遡ってチェックをすれば、第三者を交えたチームでの原因究明は不要だろう。 そして、記録に氏名を記載してある従業員のヒアリンで十分だし、自主申告をさせてもいいし、やる気になっていっせいにやれば、1週間位で調査が終わるレベルだよ。 A氏:西川社長はこうした慣行が続いてきた理由について、「国と約束をしてやらせていただいている工程そのものの意味が十分に認識されていなかったのでは」との見方を示した。 内部告発はなく、経営陣も把握していなかったという。 私:不思議なのは、社長から「品質管理・QMS」という言葉が出ないことだね。 普通、製造業では「品質管理部」とか「品質保証部」とか、専門部門があり、担当役員もいるはずだ。 だから、国土交通省に指摘されるまで全く認識していなかったという社長の弁明もおかしい。 その担当役員が本来なら記者会見に同席するはずだが、それがないし、記者からの追及もない。 通常、財務の不祥事なら、財務部長か担当重役、営業の不祥事なら営業部長か担当重役が記者会見に同席する。 とにかく、社長は「私自身、『品質管理・QMS』が不勉強で、その経営意識がなかった」というべきだね。 そして、「品質管理・QMS」では、内部監査要求があり、結果はトップに報告されるシステムになっている。 ISO9001の2015年版で、トップの「品質管理・QMS」へ関心が強く要求されるようになったのもわかるね。 A氏:リコールの費用は250億円か、もう少しかかるかもしれないという。 私:日産は近年、トヨタやホンダなどに国内販売で水をあけられ、5位が定着していたが、EVへの追い風が吹くなか、自社の技術の先進性をアピールし、昨秋以降、国内販売を伸ばしてきたが、最も基本的な部分の「検査管理」を怠ったと記事にある。 ようやく、「安全管理」でなく、「検査管理」という言葉が出て来たがこれもおかしな言葉で、今回の日産の問題は、完成検査不備を氷山の一角とした露呈した「品質管理・QMS」の怠慢であり、さらに言えば経営幹部のマネジメント力の弱体だね。 記録に弱いから「説明責任」が果たせない。 森友学園、加計学園問題と体質的に似ているね。
2017.10.03
コメント(0)
私:9月の「ピケティコラム」は、日本が著しく遅れている「企業の民主主義」というドイツも含めた労使の協議の場の課題があるので、ふれておきたい。 マクロン政権は労働法を改正したが、今回の法改正は、雇用促進の強化を掲げるが、間違いなく雇用主に解雇へのお墨付きを与え、恣意的に解雇できる権力を強める恐れもあり、従業員に不信感が広がり、長期的に仕事に力を注ぐことなど期待できなくなるとピケティ氏は厳しく指摘する。 最も残念なのは、政府がこの法改正を機に、企業統治へ従業員の参加を促さなかったことだとピケティ氏はいう。 もし、今回の法改正で、フランス民主労働組合が求めたように、役員会で従業員側のポストを大幅に増やしていたら、もっとバランスがとれていただろう。 経済における民主主義を進める、真の欧州型モデルになり得たはずだという。 A氏:株式会社における株主と従業員の影響力を定める規定は19世紀に決まる。 1950年代には、ドイツ語圏の国々や北欧諸国で、この力関係を根本的に変える法律が導入され、目的として掲げられたのが、「共同決定」の促進で、資本家と労働者との間で、本当の意味で影響力を共有することだ。 私:その後、こうした規定は何十年もかけて補強されていき、現在、ドイツの企業では役員会のポストの半数を、スウーデンでは3分の1を、従業員の代表が占める。 株式を持ち、資本に参加しているかどうかとは一切関係なく、この規定により、ドイツやスウェーデンの企業で、従業員が企業の戦略に深くかかわるようになったことは衆目の一致するところで、最終的には、経済的、社会的な効率を大幅に向上させた。 A氏:残念ながら、このような民主化の動きは、思ったほど他国に広がらず、特にフランス、英国、米国の企業では長い間、従業員が担う役割は、単に助言するだけに過ぎなかった。 米国と英国では相変わらず、株主がすべてのポストを握る。 私:もし、フランス政府がこうした動きをさらに推し進める決定をしていたなら、つまりドイツや北欧に追いつくために、役員会のポストのうち3分の1から2分の1といった相当な数を従業員代表に配分していたら、大きな手柄になっていただろうとピケティ氏はいう。 A氏:しかし、欧州の研究者たちによる最近の研究によれば、ドイツ・北欧式の「共同決定」の手法は、完成にはまだほど遠い。 このモデルからもっと先へと進み、改善される余地があるという。 私:研究者たちは(会社内で意思決定をする実権としての)権力と、(株式保有のあり方という)所有の関係に、再考を促している。 ソ連崩壊以降、しばらく消えたと思われてきた問題だが、まだこの再考は始まったばかり。 欧州とフランスは、ここでふさわしい地位を自ら築かねばならないとピケティ氏はいう。 日本は英国、米国型で、ドイツ・北欧式の「共同決定」の導入などは先の話でまだ長時間労働の抑制など「働き方改革」のレベルだね。
2017.10.02
コメント(0)
今週は、興味を持った本が3冊あった。1.長谷部恭男・石田勇治〈著〉『ナチスの「手口」と緊急事態条項』・評者・齋藤純一(早大教授・政治学) 私:総選挙では表立った争点とはならないとしても、「緊急事態条項」の新設は「9条加憲」とともに、自民党などの改憲アジェンダの柱になっていくはずである。 このところの北朝鮮の行動は、「草案」が「緊急事態」に「大規模な自然災害」だけではなく「外国からの武力攻撃」も含めていることに現実味をもたせはじめている。 国民の権利を大幅に制約する権力を政府に与える憲法条項が、いかに危険かを理解するうえで、本書は優れた導きとなると評者は言う。 A氏:麻生副総理の「ナチスの手口を学んだらどうかね」という発言があったね。 それを逆手にとり、その「手口」から「国家緊急権」の危険性を鮮明に浮かび上がらせているという。 私:本書によれば、ナチスが合法的な過程を辿り、民意の支持を得て政権に就いたという歴史理解は、ナチスのプロパガンダを引きずったかなり粗雑なもので、それは、ナチスが国家テロを用いて自由な言論を封殺したという事実を覆い隠してしまう。 ワイマール憲法の「大統領緊急措置権」は、「国家の安全」という口実のもとに基本的な自由を市民から奪い、憲法をも凌ぐ全権をヒトラーが掌握する際の手段となった。 A氏:憲法にいったん「国家緊急権」が設けられたら、為政者はそれを濫用する誘惑に必ず駆られる。 この教訓に学べば、「緊急事態条項」は本当に日本の憲法にとって不可欠なのか、かりに必要だとして、その濫用をいかに制御するかが問われなくてはならなく、本書はこの問いに明確に答えているという。 私:評者が付言すれば、「緊急事態条項」は、人的・物的動員を容易にする新たな有事法制の根拠として用いられる恐れもあり、集団的自衛権は、米軍の後方支援を日本に課しており、「緊急事態条項」は日米同盟における従属的役割をさらに強めるだろうという。 2.中島岳志〈著〉『親鸞と日本主義』・評者・原武史(放送大学教授・政治思想史) 私:親鸞といえば、阿弥陀仏のみを信仰し、その信仰を世俗のいかなる価値よりも上位においたため、師の法然とともに流罪となった人物で、その信仰を徹底させれば、国家主義が強まった昭和初期にあっても、世俗に流されることなく、国家に対する批判的な姿勢を保つことができたはずだった。 A氏:ところが本書によれば全く逆で、作家の倉田百三や亀井勝一郎などは、親鸞の思想を都合よく解釈し、「国体」を正当化しようとした。 それは、真宗大谷派の教団幹部も同様だった。 本書の魅力は、なぜ、このような矛盾が起こったのかを正面から問い直そうとしたところにあると評者は言う。 親鸞の思想には後の国体論につながりやすい構造があったという。 私:しかし、評者は、真宗大谷派の竹中彰元のように、昭和初期に親鸞の思想に忠実になろうとして、反戦運動を続け、検挙された人物がいたと付け加えているね。 さらに、本書では親鸞自身が残した著作が引用・参考文献に全くあげられていないとして、評者は著者に批判的だね。 3.山口裕之〈著〉『「大学改革」という病 学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する』評者:諸富徹(京大教授) 私:2004年の国立大学の法人化で、大学への「トップダウン型ガバナンス」導入が図られたが、真理を探究する非営利組織としての大学には不適合だと、著者は批判する。 A氏:他方、大学の研究教育をめぐる状況は悪化していて、大学予算はこの間、中規模国立大学5~10校が消滅するほど削減が行われ、常勤ポストが減って、若手研究者の雇用不安定が深刻な問題となっている。 私:その結果、日本の論文生産数は世界各国が伸びる中、大学法人化の06年頃より減少に転じている。 著者は、学生が批判的思考を養い、対話による意見構築の技法を学ぶ点にこそ、大学の意義があると説く。 A氏:著者は、改革はトップダウンではなく、教員同士の自主的な取組み支援するやり方に転換すべきだと提案。 私:評者は大学改革について、一歩立ち止まって考える上で必読の書だとしている。 しかし、大学への「トップダウン型ガバナンス」導入した政治家や官僚は、大学の研究の本質をどのように考えて導入したのか、それが疑問として残るね。 論文数が減った責任をとれるのかね。
2017.10.01
コメント(0)
私:日産の工場で本来は社内で検査員と認められた従業員が完成車を検査する必要があるが、守られていなかったということが、9月18日、国土交通省が日産車体湘南工場(神奈川県平塚市)に抜き打ちで立ち入り検査して発覚。 結局、国内の車両組み立ての全6工場で、同じ状態であることがわかる。 A氏:自動車メーカーは、工場で車を生産する最終段階で「完成検査」を行うが、本来は国が行う検査を、工場で代行しているような形で、「完成検査」を受けた証明が、安全に路上を走る車としての「お墨付き」となる。 私:国が定めた実施要領では、各社が知識や技能を考慮し、自社であらかじめ指名した従業員が検査するよう求めている。 しかし、日産では、認定されていない「補助検査員」が一部の検査を行っていた。 全工場で日産が認めた正規の「完成検査員」は約300人で、補助検査員は約20人。 この補助検査員が、完成検査員が行うべき業務を行っていた。 A氏:安全性が重視される自動車の生産現場で、法令を守る認識が欠けていたことになり、この状態がどれだけ続いていたかについて、日産は「調査中」としており、長期にわたって常態化していた可能性があるという。 完成検査員かどうかは、バッジの有無で判別で、補助検査員は作業に習熟しているが、レベルには個人差があるという。 日産の社内調査では、補助検査員が検査をすることが問題だという認識もない従業員もいたという。 私:例によって、こういう工場問題での品質問題の取材は、突っ込みが甘いね。 別に国が定めた実施要領を持ち出すまでもなく、品質マネジメントシステムの国際規格ISO9001に要求事項として定められていて、常識になっていることだね。 ISO9001では、検査も含め、作業をやる人は必要な「力量」を持つための訓練要求があり、必要な「力量」が得られると「記録」要求がある。 現場では、その「力量」を得た人がその業務に配置される。 「出荷検査」は独立した項目で、検査に合格した証拠、さらに合格と判定した検査員の氏名の記録まで要求している。 A氏:日本の製造業の多くはISO9001を認定されているから、常識的なことなんだね。 私:この問題を日産は「調査中」としているが、そんなことはなくISO9001の要求通りなら、毎日、ラインから出てくる「完成車検査記録」は検査員の氏名が明記されているから遡って「補助検査員」の氏名を追えば「調査」は「即」できるね。 そういう突っ込んだ取材がない。 それに今回、国土交通省の抜き打ち審査で発覚したが、日産にはISO9001で要求されている「内部監査」のような自浄システムがないのかね。 これも、そういう突っ込んだ取材がない。 A氏:現時点で、ユーザーへの引き渡し前で新車登録されていない6万台は、引き渡し前に検査をやり直す。 すでに引き渡された車は登録され、路上を走っていて、いつから問題があったかがわからず、影響台数は特定できていないという。 私:これも毎日、1台1台、氏名の記録をとっているはずだからすぐ分かるはず。 もし、品質マネジメントシステムでは最低限のレベル要求のISO9001規格を日産が持っていないなら、顧客の信頼度はガタ落ちだね。 本来、ISO9001の品質マネジメントシステム要求は、顧客の信頼を得るためなんだから。 日産の西川広人社長は日本自動車工業会の会長を務める。 間近に迫った東京モーターショーを主導する立場だが、自社が信頼を損なう事態を招いてしまったことになると新聞は報じている。 A氏:昨年の三菱自動車にも問題がありISO9001との関係で下記のブログで扱っているね。 三菱自動車の不祥事とISO9001私:天下の日産がこんな幼稚な品質マネジメントレベルでケチをつけるとはね。このマネジメントレベルだとまだいろいろ出そうだね。 昨年の三菱自動車の不祥事同様、品質マネジメントに弱い企業体質が氷山の一角で露呈したのかね。
2017.09.30
コメント(0)
私:今度の突然の解散を新聞各紙がどう報じているか、大いに興味があるが、早速、池上氏がとりあげているね。 もっとも取り上げているのはまだ、安倍首相の解散の正式発表前の解散予測の新聞記事だね。 朝日新聞は9月17日付朝刊の1面トップで「首相、年内解散を検討」と書き、本文には「安倍首相は年内に衆院を解散する検討に入ったと与党幹部に伝えた」「複数の政権幹部が明らかにした」とある。 同日付の日経は、1面に「早期解散強まる」の見出しで、「公明党は16日に幹部が協議し、年内解散が選択肢に入ったとの認識を共有した。これを受け、公明党の支持母体の創価学会は17日に選挙対策の関連会議を開く」と書いている。 公明党・創価学会が選挙に向けて走り出したので、早期解散は間違いないと日経は、こう判断したと思われる。 A氏:これに対し、同日付の産経は「首相衆院解散を決断」と1面トップで報じ、本文では「安倍首相は、28日の臨時国会召集から数日以内に衆院を解散する方針を固めた」と断じていて、安倍首相から直接聞いたとしか思えない表現。 日頃から安倍首相を支持する論調の新聞ならではと池上氏はいう。 ただ、本文中には「公明党の支持母体である創価学会は16日昼に方面長会議を緊急招集した」とあり、公明党・創価学会関係者からも情報を得たのだという。 惜しむらくは「10月29日投開票 有力」と見出しに書いたことで、結果的に正確ではなかった。 私:東京新聞は「与党内で、安倍首相が年内の衆院解散・総選挙を検討しているとの見方が広まり、選挙準備が本格化している。早ければ二十八日召集の臨時国会冒頭での解散も想定されている」と書いており、産経が「臨時国会召集から数日以内」と幅の広い表現なのに対し、日付を絞り込んでいる。 地方紙を中心に記事を配信している共同通信も「公明党は16日、緊急の幹部会合を東京都内で開き、9月28日召集の臨時国会冒頭や10月22日投開票の衆院3補選後の解散もあり得るとの認識で一致した」と書いていて、これも情報源は公明党のようだ。 A氏:安倍首相が自身の改憲案について「私の考えは読売を熟読してほしい」とまで言い切った読売は、どうかと池上氏は皮肉まじりにふれているが、なんと、同日付の1面には影も形もなく、2面の中ほどの目立たない場所に「早期解散論 与党に浮上」という記事があるだけ。 これはどうしたことか、大きく出遅れていて、安倍首相からのサインはなかったのか、安倍首相から情報提供がなくても、公明党をきちんと取材していれば、他社のように情報が取れたはずなのだがと、池上氏は指摘する。 私:毎日新聞は、2面の下に小さく自民党の竹下亘総務会長が、衆院解散・総選挙について「そう遠くないという思いを全ての衆院議員が持ち始めている」と講演したことが掲載されていて、竹下氏は「選挙は近いのかなあというような思いもした」とも語っていることを報じているが、それだけ。 本当は、この発言でピンと来て、他の記者たちが確認に走らなければいけなかったのだと池上氏はいう。 A氏:日頃からアンテナを張り巡らし、政治家の片言隻句に敏感に反応する記者の感度が問われていると各紙の姿勢を比較しているね。 私:しかし、池上氏は最後に「とはいえ、いまの時期に衆院を解散する大義などないというのが常識的な見方。安倍首相の突然の変心にはついていけないのも無理はありませんが」と「大義なき解散」とコメントしているね。 安倍首相に近いはずの読売にとっても意外だったようだね。
2017.09.29
コメント(0)
私:今日、憲法第七条により衆議院が解散された。 第七条には「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」とあり、その第3項に衆議院の解散がある。 この「天皇は、内閣の助言と承認により国事行為を行う」との記述を根拠に内閣(ひいては首相1人)には解散権がある、とする解釈が実務的に定着してきた。 A氏:英国政治に詳しい近藤康史・筑波大学教授(政治学)は、「首相1人の判断で自由に議会を解散させる日本は特殊な国になりつつある」と警鐘を鳴らす。 英国は、以前は首相に解散権があったが、2011年に成立した法律で、その権限を事実上封印したからだ。 近藤教授によれば、英国には元々、首相が解散権を行使することへの批判的な世論の素地があり、「与党が自身に有利な条件で解散を行うことは良くないという考えと、任期をフルに生かして政策実現を目指すべきだという考えの双方が強くあった」という。 私:憲法学者の木村草太・首都大学東京教授は「党利党略での解散」を抑制する工夫が必要だという。 同じく憲法学者の永山茂樹・東海大学教授も「多数派を維持するために解散をするという判断は認められていない」とした。 A氏:木村教授は、主権者である国民の「代表」と規定される国会議員と内閣との関係に着目し、内閣が国会で解散理由をきちんと説明する手続きがなかったことが、解散権を制限する慣行が形成されてこなかった一因だと指摘。 私:実際、安倍首相は25日、解散理由を記者会見で説明し、他方、国会では「冒頭」で解散を行い、主権者である国民の「代表」と規定される議員たちに説明したり国会での審議に臨んだりする手続きはしなかった。 木村教授は、解散をする場合には内閣が衆院で解散の理由を説明し、それについての国会審議を行う、と法律で定める方法を提唱し、「不当な解散でないかどうかを議員が吟味でき、その議論が有権者の判断材料にもなる。内閣が持つ権限とは、公共の利益を実現するために主権者から負託されたものであり、与党のために使っていいものではない。解散権もその一つだ」という。 憲法改正のテーマが1つ増えたね。 しかし、その後、「希望の党」の出現で、安倍首相の解散の意図と事態が変わってきているようだね。
2017.09.28
コメント(0)
私:戦後ドイツはナチスの反省から、隣国を攻撃させないこと、欧州共同体(EC)など西欧の枠組みに組み込むことで、ドイツの国益を考えない「控えめさ」が、「国際社会復帰」という国益をたまたまもたらした。 しかし、こうした態度の弊害は、今や随所に表れているとヤン・テッハウ氏はいう。 ユーロ危機では、ギリシャがロシアに接近してしまう地政学的リスクを考えず、ギリシャを怠け者扱いして突き放そうとした。 難民問題でも、道義的判断から大量に受け入れたが、そもそもの原因である中東での戦争には関与せず、ほぼ他人任せ。 A氏:ドイツは、2度の世界大戦での敗北から、「歴史的に間違った側に立ちたくない」という意識が強く、西ドイツ時代は主権が制限され、安全保障は米国任せ。 外交は「欧州を大事にする」と言っていればよかったから「一国潔癖主義」に閉じこもっていられた。 私:ドイツは経済的に指導力を持ち、そうした時代は終わりを告げようとしていると、ヤン・テッハウ氏はいう。 「ドイツのためにヨーロッパに尽くす」という奉仕的指導性こそが求められ、ドイツは今、こうした変革に向けた「陣痛」を感じているところだという。 A氏:2人目の仲正昌樹教授は、日本の戦後と比較しながら、論じている。 戦後のドイツは、ナチスと根本的に異なるとアピールして区切りをつけたことが、今日の国際的地位を支えている。 私:その点、日本は、天皇制などが存続し、新憲法は大日本帝国憲法の改正手続きに従って制定され、戦前の国家との連続性が残り、責任の焦点を当てにくい。 「人道に対する罪」が東京裁判の判決文では使われなかったし、ドイツとは戦争責任をめぐる取り組み、そして周辺諸国との関係に決定的な違いが生まれた。 A氏:日本がまだ、日韓問題で代表されるように、戦前の責任問題に決着がついていないのと大違いだね。 私:ドイツが反省と区切りをアピールするのに言葉の力も大きく働いていて、節目で要人が名演説を残しているとして、戦後40年の1985年、ワイツゼッカー大統領の「荒れ野の40年」は、過去の責任を直視する反省の重さを示したことで有名で、そこでは、ナチスとの決別と欧州回帰を印象づけた。 それと比較すると、日本のアピールはうまくないと仲正教授も指摘しているね。 そもそも、戦争責任の追及のされ方や周辺諸国との関係が根本的に違うからうまい発信をする必要がなかったのかもしれないが、日韓基本条約を結んだ佐藤首相や日中国交正常化を実現した田中首相が、気配りの行き届いた名演説をしていたら、過去の清算をめぐる国内外の状況は、その後大きく変わっていたかもしれない、と仲正教授はいう。 A氏:3人目のフォルカー・ペルテス氏は、ドイツ、欧州の外交・安全保障問題の権威という立場から欧州統合の推進がドイツの力の源であるとしている。 ドイツに求められる指導力とはサッカーチームの主将のようなもので、ボールを持っている時間は長いかもしれないが、得点するために隣の選手にボールを回すこともあり、チーム内での共同のリーダーシップなのだという。 そうでなければ、EUに加盟する残り27カ国が容認しうる指導者にはなれないという。 私:英仏独の協力関係は、(EUから離脱する)英国の影が薄れ、独仏が主導する形になり、欧州では独仏が互いによき、信頼できる、効果的なパートナーであることが大事になる。 メルケル首相の米トランプ政権に対する方針は, 正面からは反対しない、というもので, 米国なしには進展しない分野がある以上、実務的にできる限り協力した方がいいが、安倍首相のように個人的な信頼関係を築くため「ゴルフ外交」をするようなタイプではないとペルテス氏はいう。 アジアの安全保障問題では、南シナ海の航行の自由はドイツ、欧州と中国との貿易にとって極めて重要だが、ドイツは中国と非常に強い経済関係があるだけに、中国に対して国際法を順守するように促すことができるはずだとペルテス氏はいう。 A氏:ドイツにはイランとの核合意など長期間、多国間で隠密に外交を進めた技量と経験があり、ベルリンに南北朝鮮の大使館を持ち、北にとって敵ではない。 もし求められれば北朝鮮問題で仲介役を担える立場にあり、そんな国はそう多くはないとペルテス氏はいう。 私:戦後、米国との結びつきによって国際社会に復帰した日本とは異なり、ドイツは欧州の統合を通じて主権を回復してきた。 欧州統合の物語と歴史に対する率直な姿勢こそがドイツのソフトパワー。 外国人がベルリンに来ればナチスの犯罪について学ぶことができ、かつては悪い人で悪い国だったが、周辺国と友好関係を築き、統合したことで現在はいい国になったという物語が伝わるという。 A氏:日本の遊就館とは大きく違うようだね。 私:メルケル首相は、今度の総選挙結果を受け、内憂外患だが、この難局を乗り切ってほしいね。 3氏ともナチスの反省のための萎縮を克服し、ドイツの国際的なリーダーシップを期待しているね。
2017.09.27
コメント(0)
私:24日のドイツ総選挙の選挙結果で一番驚かされたのは、与党キリスト教民主・社会同盟(同盟)の苦戦。 4選を固めたものの、連立相手の中道左派・社会民主党(SPD)とともに支持を落とし、躍進したのは新興の右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」。 A氏:「反難民」を掲げるAfDは、選挙戦の最後まで、メルケル首相を苦しめた。 2年前の寛容な難民の受け入れ政策に、有権者は予想以上の反発を見せたね。 ただ、難民問題だけが苦戦の理由ではなく、既存2大政党は、低失業率の裏側で広がる格差ワーキングプアの拡大に、有効な手立てを示せず、雇用の流動化が進み、低賃金の労働が広がったこと。 私:経済好調のドイツにも格差問題があるのだね。 連立の相手がどうなるか、次期政権の発足は年末まで長引くとの見方が出ている。 A氏:トランプ氏の米国が示した社会の分断、自国第一の動きはドイツでも広がっている。 有権者は与党の辛勝という形で一定の安定を選びつつ、議会内にAfDの存在を容認することで不安も表明。 メルケル氏の指導力低下は避けられず、マクロン仏大統領と協調して進めるはずの欧州統合の深化が減速する恐れもある。 私:欧州経済最大の課題は、共通通貨ユーロを導入するEU加盟19カ国(ユーロ圏)で広がる格差への対応。 経済で一人勝ちのドイツのメルケル氏は自国経済の成長維持や財政規律の重要性を強調し、積極的な対応を控えてきた。 正面から取り組めば「我々が納めた税金を、ギリシャのために使うな」という内向きの主張をさらに勢いづかせかねない。 メルケル政権が国内で失速すれば、欧州統合もまた失速する。 A氏:ドイツの昨年の貿易黒字は、2529億ユーロ(約33兆円)と、中国に次ぎ、世界2位で、この欧州内の格差を放置し、欧州最大の勝者が自国の利益維持にこだわれば、欧州全体での新たな経済危機やポピュリズムの嵐が吹き荒れかねない。 内と域内で富をどう再配分するか、メルケル氏のドイツが抱える最大のジレンマになるだろう。 私:パウル・ノルテ氏(独ベルリン自由大学教授〈政治社会学〉)は、与党の苦戦は有権者が長期政権に飽きた表れでもあり、「メルケル時代の終わりの始まり」と言えるという。 一方、AfDは躍進したものの、これをもってドイツの民主主義が危機にあるとは言えず、ドイツの政治は依然中道にあり、この党に投票したのは8人に1人に過ぎない。 連立与党は同盟と自由民主党(FDP)、緑の党で構成されるだろうと教授は予測する。 ユーロ圏での経済・財政協力に批判的なFDPが加わることで、より他国との妥協が難しくなる可能性があり、欧州を安定させるためには、パートナー国と緊密に連携することが必要だと教授は指摘する。 まさに、今度のドイツの総選挙結果で、メルケル首相は内憂外患を抱えることになったね。 次は、10月の日本の選挙だが、これも小池氏登場で波乱を呼びそうな予感がするね。
2017.09.26
コメント(0)
私:どこの国でも、公式発表された最高権力者の決定の背後にある事情は、ベールに包まれている。 それを著者は、米主要メディアとともにホワイトハウス中枢に入り込み、一枚一枚、皮を剥ぐように真実に迫っていく。 ホワイトハウス内の暗黙の取材ルールを体得し、英語を克服し、最後は度胸で重い扉を一枚一枚開けていく。 A氏:評者は、その中で「ロシア疑惑」と「オバマ大統領の広島訪問」の箇所をとくに秀逸だとしている。 日本では「ロシア疑惑」というと、トランプ政権のスキャンダル的な側面に興味が行きがちだが、問題の本質は、米国の大統領選挙結果が外国(ロシア)の介入により左右されたか否かにあり、しかも介入を招いたのが現職大統領だとすれば前代未聞であり、米国民主主義の根幹を揺るがす深刻な事態。 私:米国での捜査に絡み、「ロシア側で関係者が何人も殺されている、その死者たちの足跡を追うべきだ」とFBI元捜査官が証言するくだりは圧巻で、この問題の闇の深さを窺わせるという。 A氏:ロシアは複雑な問題によく暗殺がからむが、この問題にも登場しているんだね。 私:トランプ政権とは対極のオバマ政権による統治の本質も描いている。 それは、米国内の反対を押し切ってオバマ大統領が広島を訪問したことだ。 それは、日本に歴史と向き合い、近隣諸国との和解を求めたオバマが、今度は米国が歴史と向き合い、核軍縮への決意を改めて示す、象徴的な機会として広島訪問を位置づけていたからだという。 著者はこれを、大統領最側近のベン・ローズから引き出す。 高い理想主義の一方で、それを周到に実現する卓越した政権運営能力。 日本は、そこから何を学ぶことができるだろうかと評者は指摘する。 同時に、高い理想主義の一方で、それを周到に実現する卓越した政権運営能力がトランプ大統領に欠如しているということか。
2017.09.25
コメント(0)
私:著者は米ノースカロライナ州立大教授で、著書に『わたしたちの体は寄生虫を欲している』などがある。 評者の佐倉教授は、本書は作物が病気で全滅し、世界中から食糧がなくなるかもしれないという警告の書であるという。 野生状態なら何千という品種があったのに、経済性を追求した結果、今は世界中で現在栽培されている作物の多くは単一品種になっている。 ジャガイモ、カカオ、バナナ、コーヒー、キャッサバ、そして食べ物ではないけれどゴムなど、ほぼ一種類だけの品種が栽培されている。 A氏:問題なのは 単一品種になると、病気にやられやすいことだね。 一九世紀アイルランドのジャガイモ飢饉では、百万人以上の命が失われた。 そして先に挙げた作物の多くは、同じような事態をすでに経験しているという。 最近は、バナナがそうだね。 私:世界中の農民や研究者たちは、病原体から作物を守るために、血の滲むような努力を続けてきた。 病原体の天敵を放す、さまざまな種類の種子を保存しておく、農家の情報をSNSでつないで病気対策を支援する、などなど。 しかし、病原体はいつか必ず作物を見つける。 この地球上に、栽培植物の安住の地はない。 やるべきことは、これらの地道な研究者たちに、もっと力を与えることだという。 A氏:著者は、一般消費者にもできることがあると呼びかけていて、それは、地元の産品を買うこと。 そうすることで、地域農家が細々と続けている少数品種の栽培が維持され、多様性の維持につながるかもしれないからだという。 私:大学の農学部の研究強化も必要だね。 獣医学部だけでなくね。
2017.09.24
コメント(0)
私:明日24日はドイツの総選挙なので、新聞は昨日、今日と2日にわたって、ドイツ経済の課題を特集している。 1日目は、「生産デジタル化、競争力強化」として、欧州最大の経済国ドイツの好景気が続いていることにふれている。 競争力を高めている背景に「第4次産業革命」と呼ばれる生産工程などのデジタル化「インダストリー4・0」がある。 高度な自動生産設備を入れることで品質管理が向上し、割安でできるため、生産拠点を海外からドイツにもどす動きも出始めた。 A氏:カールスルーエ工科経済専門大学のシュテフェン・キンケル教授の試算によると、「インダストリー4・0」が広がったこの数年、東欧やアジアなどからドイツに生産を移す製造業は年間約500社に上るという。 ドイツの製造業の強みは、フォルクスワーゲンなどに代表される大企業だけでなく、独自技術で世界のニッチ市場で戦う中堅・中小企業の競争力にあり、それらの企業は「インダストリー4・0」の導入でさらに力を付けつつある。 「産学連携」も進んでいる。 私:GDPに占める製造業の割合は、フランスの11%や英国の10%に対し、ドイツは23%を占め、雇用面でも全体の約4分の1を支える。 失業率はEU内で2番目に低く、工業都市が国内各地に分散しており、ラストベルト(さびついた工業地帯)が生まれにくい。 A氏:米国の「トランプ現象」の背景にあったグローバル化による製造業の空洞化によるラストベルトもないし、日本のような「地方創生」の必要もないようだ。 私:5月のフランス大統領選での製造業の空洞化を背景に保護主義や反EUを訴えた右翼・国民戦線のルペン候補が「自国第一主義」で支持を集めたが、ドイツの経済構造は「自国第一主義」のうねりが起きにくい一因になっている。 ただ、「インダストリー4・0」の普及と同時に、労働者も将来はデジタル化に対応する技術を身につけないと、労働市場からはじき出されかねない。 キンケル教授は「技術を持たない労働者をどう教育するかは企業、政府ともに待ったなしの課題だ」という。 A氏:この記事の2日目は、「控える財政支出、不均衡招く」として、ドイツでまず、問題になっているのが、インフラの老朽化が進んでいることだとして、背景にあるドイツの財政健全化のこだわりにふれている。 私:インフラの老朽化の原因は政府が公共投資を控えてきたためだ。 背景にあるのは財政健全化に対するこだわりだ。 日本と大きな違いだね。 第1次世界大戦のときのインフレがナチス台頭を招き、東西ドイツ統合のときも財政赤字が膨らみ「欧州の病人」と呼ばれた時期もあったという歴史的反省がある。 A氏:しかし、これが国際的な摩擦を生み出す要因になっている。 ドイツが財政支出を呼び水に国内投資を活発化させれば、内需が拡大し、輸入も増えるが、現実は逆方向で、ドイツは16年過去最高の貿易黒字を記録している。 これは対ドイツの貿易赤字を抱える国が多いという「不均衡」になり、結果として保護主義的な風潮をリードしているという。 私:IMFも7月、対独の経済報告書で国内のインフラ投資などに財政余力を使うように求めたばかり。 しかし、明日に向けての総選挙では各党の選挙公約には投資拡大の視点は少ないという。 欧州最大の経済国が一人勝ちでは問題で、その国際的な役割が問われているというわけか。
2017.09.23
コメント(0)
私:今朝の新聞では、OECD諸国の高等教育機関に対する支出の私費負担割合にふれているね。 それによると、英国は約70%でトップで、次いで日本、韓国、米国と60%台が続く。 OECD平均の30%平均以下がフランス、ドイツ、スウーデン、デンマーク、最下位のスウーデンとヨーロッパ諸国が続く。 高等教育機関に対する支出の私費負担割合が多いと、「教育格差」を生み、「格差の再生産」の大きな原因となる。 この「欧州季評」では、96年から英国在住する保育士・ライターのブレイディみかこ氏が、英国の「命の格差」、すなわち「平均寿命の格差」にふれている。 A氏:ところで、フランスの歴史学者エマニュエル・トッド氏は、米国大統領選で選挙前からトランプ氏の勝利を予言していたが、その理由にあげていたのが、45歳から54歳までの米国の白人の死亡率は、1999年から上昇していることだね。 まさに白人労働者の「命の格差」だね。 その原因は自殺や麻薬、肥満といったことが多く、生活レベルの低下、退職後の不安といった、グローバル化による低賃金の労働力をめぐる競争などが、多くの人にとって耐えがたくなっており、これは、グローバリゼーション・ファティーグ(グローバル化疲れ)なのだとトッド氏は指摘し、「トランプ現象」もそれを反映していると述べていたね。 私:英国を扱ったこの「欧州季評」では、英国の1998年から2002年のスコットランドの調査で、グラスゴーのたった数キロしか離れていない高級住宅地レンジーと貧困区カルトンで、男性の「平均寿命」の差が28年(前者が82歳で後者が54歳)だったことが判明した。 そこまで極端な数字ではないにしろ、英国全土でも、ゼロ年代にはわずかに縮小していたはずの「健康格差」が、10年以降、再び拡大しているという。 A氏:15年の統計で、高級住宅地と貧困区の男性の「平均寿命」の差は、イングランド平均で9・2歳、女性では7・1歳で、「平均寿命」の伸びもほぼ横ばい。 英国は世界で最も豊かな国の一つであり、医療技術は発展こそすれ、後退することはないはずなので、「平均寿命」は右肩上がりで伸びていくのが当然なのに、10年以降、足踏み状態。 私:「平均寿命」の伸びが止まり始めた10年とは、労働党から政権を奪還した保守党が、戦後最大と言われる規模の緊縮財政政策を始め、経済学者たちに「危険なレベル」と言わしめるほど医療や社会保障への財政支出を切り始めた年。 格差が広がっているのは寿命だけではなく、日常生活に支障なく過ごせる期間を示す「健康寿命」の格差はさらに大きい。 高級住宅地と貧困区の「健康寿命」の差は、実に20年近くまで広がっていて、これは緊縮財政によるNHS(国民保健サービス)の人員削減、インフラ削減と明らかにリンクしており、NHSが提供している医療サービスの質が落ちているからだという。 A氏:一時は「ゆりかごから墓場まで」と言われ、公的医療のモデルとなった無料の国家医療制度NHSも、予算削減でサービスが劣化し、注射1本打つにも何週間も待たされるが、裕福な層はこうした事実の影響は受けず、高額な医療費を払って私立病院を使うことができるからだという。 私:「寿命格差」や「健康寿命格差」ほど赤裸々に経済的不平等を示すものはなく、これは「命の格差」。 それが広がるほど、富める者は生き、貧する者は死ぬしかない野蛮な時代に社会が戻っているということで、戦争が人の生命を脅かすように、経済政策も人の生命を奪うとブレイディみかこ氏は指摘する。 キャメロン元首相を辞任に追い込んだ国民投票の結果は、米国の「トランプ現象」のように現状への怒りとその打破を求める人々の声を反映したものではなかったのかという。 離脱派が多かった貧しい北部の人々は、残留派が多かった豊かな南部の人々に比べると、75歳までに死亡している確率が20%高いという。 A氏:トッド氏が指摘した死亡率の高い米国の白人労働者が起こした「トランプ現象」に似ているね。 私:夏になると、英国では「ホリデーハンガー」という言葉が聞かれ、直訳すれば「休日の飢え」で、長期の休みに入り、給食がなくなると飢える子どもが増えることから、こんな言葉が使われるようになり、フードバンクでは、子ども用の夏季緊急食糧も配布されているという。 昨年の英国のEU離脱投票の結果は、欧州の時計の針を逆戻りさせるような出来事と形容されたが、離脱を選んだ人々の意識が欧州の歴史を逆戻りさせているのではなく、彼らが暮らしている社会環境の野蛮さこそが時代に逆行しているのだとブレイディみかこ氏は厳しく指摘する。 高等教育機関に対する支出の私費負担割合がイギリスなみに高い日本も、他人事ではないね。
2017.09.22
コメント(0)
私:君は血糖値が高めなので糖質制限食をしているから、食べ物の選択に苦労するだろうね。 A氏:そうだね。 しかし、最近、いろいろな食物に「シュガーレス」の表示食品が増えているようだね。 ロッテもかなり前から「ノンシュガーチョコレート」で「砂糖ゼロ、糖質ゼロ」の「ZERO」という菓子をだしているし、アイスクリームもグリコで50%糖質を抑えたものも売っている。 ドリンク剤でアリナミン・ゼロというのも糖質を抑えている。 問題は外食で、糖質を制限したメニューはまだ一般的でないね。 特に「すし」はだめだね。 私:ところが、糖質カットのため、シャリの代わりに大根を使った「すし」が売り出されたと報じている。 記者は、8月末に回転ずしチェーン「くら寿司」が売り出したばかりの「すし」を食べた。 ネタのエビの下には厚さ5ミリ、幅2ミリほどの大根の酢漬けがあり、大根はシャキシャキした歯触りで、エビの味が際立つように感じるが、「すし」というより海鮮サラダのよう。 糖質を88%カットしたといい、手巻きずし風など、糖質カットをうたう計10商品を展開中。 その前に、糖質制限ブームのせいか、シャリだけを食べ残した皿の画像がSNSで拡散され、その是非を巡って話題になり、「くら寿司」を運営するくらコーポレーションによると、ここ数年、コメ部分の「シャリを少なめに」との要望が増え、約2年前から新メニューを考えていたという。 A氏:レストランでも「ハンバーグ定食」などもついてくるご飯を残す人が増えているという。 私:糖質オフをうたった商品は最近、相次いで売り出されていて、牛丼チェーン「松屋」は、定食のライスを湯豆腐(現在は冷や豆腐)に変更できるサービスを1月に開始。 ファミリーレストラン「ガスト」では、ホウレン草などを練り込み、中華麺より糖質25%減という自家製麺を6月からメニューに加えた。 07年には、アサヒビールが初めて糖質ゼロの発泡酒を発売。 市場調査を行う富士経済によると、「糖質オフ・ゼロ」とうたう食品の市場規模は、12年の2468億円から16年(見込み)は3431億円と4割伸びた。 A氏:健康を扱う雑誌「ターザン」では、10年ほど前から「糖質オフ商品」紹介を始め、12年に糖尿病と低炭水化物食の関係が学会で取り上げられたことをきっかけに、何度も特集。 大田原透編集長は「コメは我慢しても、肉などは食べていい手軽さが受けた。外食産業も、糖質オフに取り組まないと企業イメージが悪くなる状況が生まれているのでは」と分析する。 私:糖質を制限する食事は糖尿病患者への治療の観点から生まれたというが、効果の評価は定まっておらず、日本糖尿病学会は13年、「現時点では糖尿病患者に勧められない」との提言を出し、予防効果も結論は出ていないという。 A氏:俺の場合は血糖値が下がったので効果は感じているね。 私:一方で、日本人の食生活で最もリスクが高いのは塩分で、糖質を減らしても、味付けに塩分を多く使えば、がんや脳卒中など命に関わるリスクが上がるので注意が必要だという。 A氏:当然だね。 私:ところで最近、マスコミで米国での研究で17万人調査で糖質制限ダイエットで死亡率2割上昇と報じているね。 A氏:詳細を読むと因果関係がはっきりしないように感じたね。 私:君の場合は、定期的に全体の健康チェックをして慎重にすすめているので問題ないだろうね。
2017.09.21
コメント(0)
私:24日にドイツの総選挙があるが、メルケル首相の与党が優勢。 ジャーナリストで作家のラルフ・ボルマン氏は、20世紀前半にナチのような大きなカオスを経験したドイツ人にとって、「安定」こそが何よりも重要な価値観だという。 A氏:歴代の首相をみても、戦後初代のアデナウアーが14年、東西ドイツの統一を成し遂げたコールが16年、メルケル首相もすでに就任以来12年。 私:金融危機のような混乱にあって、欧米諸国や旧西独出身の政治家たちは「世界の経済システムが崩壊する」とパニックになったが、メルケルは「世界の終わりではない」と言わんばかりに、あわてて財政拡大に解決策を見いださず、長期的に何が良いのか、答えが出るまでじっくりと待った。 メルケル首相いつも冷静で、国民を安心させるという。 それは、東西ドイツ統一の経験が大きかったという。 A氏:世界は自分の思い通りにはならない、環境に適応していかなければならないという現実主義かね。 自由と民主主義をとても大切に考えているが、その社会では、すべての価値観は相対化され、すべての理念は、トライ&エラーのシステムによって検証され続けなければならないという考え方。 脱原発や同性婚の合法化をめぐる態度の変化も、彼女なりの検証の結果なのだろうという。 私:確かにメルケル首相には、コールに見られたような壮大な「ビジョン」はないが、今の時代には危機をマネジメントすることによって存在感を増していったという意味で、1970年代の首相シュミットに似ているという。 近年、世界をポピュリズムが席巻し、民主主義の危機が叫ばれているというが、世界が破滅的な状況になるのを防ぐ危機管理能力こそが求められている気がするとボルマン氏はいう。 A氏:成蹊大学教授の板橋拓己氏はやや厳しい目で見ているね。 ドイツでメルケル首相が支持されるのは、周りの国々への不安からきているのではないかという。 私:「自国第一」を公言するのをはばかるのもこの国の特徴だが、そのせいか、経済的にはEUで指導的地位にあるのに、EUに関する議論が選挙戦で驚くほど少ないという。 英国はEU離脱を選び、フランスでは5月の大統領選で勝ったマクロン氏がユーロ圏の共通予算を提案しているのに、ドイツはどうするのか、その答えが論じられていないという。 EUレベルでメルケル政権がギリシャやスペインで見せた態度は、「怠け者の他国のためにドイツのお金を使いたくない」という、まさに自国中心主義だったという。 「外国人には優しく」と考える人が多い割には、自国の行使している権力に無自覚なところがあるようにも見えると板橋教授は指摘する。 A氏:父がドイツ人、母が日本人で、10歳でドイツから日本移住したタレントのサッシャ氏は、その子どものときの経験から、ドイツ人と日本人はどちらも勤勉でルールは守るという似ているところが多いだけに、違うところがはっきり見えるという。 「違い」の基本は、ドイツも会議が多くて長いが、鶴の一声で決まるようなことはない。 究極に「空気を読まない人」たちで、納得できなければ理由を求めて延々と議論するが、 ただ、決まれば従う。 だから、できあがったモノやシステムには安定感があるという。 私:ドイツ語のwarumとwiesoは、どちらも「なぜ」「どうして」という意味だが、ドイツ人が一番好きな単語じゃないかとサッシャ氏はいう。 サッシャ氏は小学3年までドイツにいて、あらゆる場面で「なぜ」を問われる環境に慣れたという。 理由を求めて、理解して、だからどうすると言えないとダメで、日本人からすると理屈っぽいが、「なぜ」をあいまいにすると責任がはっきりしないし、進歩しないという。 A氏:最近の森友学園、加計学園問題で出た官僚の「文書がない」「記憶にない」という「説明責任」の欠如や「忖度」はドイツでは考えられないようだね。 私:サッシャ氏はメルケル首相が支持されるのは、政策の「なぜ」が分かりやすいからではという。 東日本大震災後の脱原発やシリア難民の大量受け入れは、感情に動かされたのかもしれないが、戦後の歴史を踏まえて、人道的な正しさを尊重するのがドイツの常識で、メルケル首相の感情的決断の「なぜ」は理解できるという。 メルケル首相は「お母さん」と呼ばれているが、決断に愛情や人間味があり、長く政権が続くのは、私利私欲とか党利党略とかではない「なぜ」を、彼女には見つけられるからだと思うとサッシャ氏はいう。 「なぜ」が明らかだということは、「説明責任」が確立しているからだろうね。 日本では年金支給漏れで大臣が謝っていて、今後はしかりやりますと頭を下げていたが「なぜ」支給漏れがあったかの説明がなかった。 これがサッシャ氏のいう日本とドイツの違いかね。 24日の選挙結果が待たれるね。
2017.09.20
コメント(0)
私:加計・森友学園や陸上自衛隊「日報」の問題で、ずさんな公文書管理の実態が明らかになったが、内閣府は20日にも、各省庁の意思決定過程を記した公文書の廃棄を防ぐため、ガイドラインの見直し案を示すと報じている。 だが、「公文書」に対する安倍政権の後ろ向きな姿勢が目立ち、どこまで実効性を持たせられるかが焦点だと新聞は疑念を表明しているね。 A氏:ガイドライン見直しの最大の焦点は、保存期間が「1年未満」と分類される文書の扱いで、1年未満と判断する基準やその扱いは各省庁に委ねられている。 これがもろに森友学園の国有地売却や陸上自衛隊の「日報」で問題になり、各省庁が関連文書を「1年未満」に分類し、いつでも廃棄できるようにしていたことが批判された。 私:見直しの議論では、省庁の意思決定の過程をたどれる文書は「1年未満」に分類しないと定めることが固まった。 さらに、1年未満に分類できる文書として、別に原本がある場合など、複数の具体例を示し、メモ類もパソコンの共有フォルダーに入れた場合は「公文書」とすることも盛り込む方針。 「公文書」の具体的な基準を示し、省庁の裁量の余地を狭める方向で議論が進んでいる。 ガイドラインは、個人的メモでも「国政上の重要な事項に係る意思決定」などに関わる場合、行政文書として保存すると規定する。 A氏:しかし、「公文書」の取り扱いをめぐる問題点はこれだけにとどまらず、保存すべき文書の範囲をことさら狭く捉えようとする省庁の姿勢も目立ち、恣意的な運用が広がれば、情報公開は後退して、政策決定の過程はより見えにくくなると新聞は懸念しているね。 私:内閣府の公文書管理委員会委員の三宅弘弁護士は、「行政文書の範囲を狭める運用がなされるようなら、役人が職務上作った全ての文書を残す方向での法改正もやむを得ないだろう」という。 A氏:ガイドラインの見直しと別に、加計問題の舞台となった特区制度をめぐる複数省庁の協議について、各省庁が記録内容に合意した「合意議事録」の作成を求めているが、内閣府が今後、具体的な運用を詰めるというが、これでは省庁が互いに都合の悪い内容を削除して議事録を作ることになりかねない。 例えば、加計学園の獣医学部新設について、文科省の文書には、内閣府から同省が「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」と言われたと記録された文書が残っていたが、内閣府の担当者は「記憶にない」としており、こうした文言が削除され、意思決定の実態が見えなくなる可能性がある。 大蔵綾子・鶴見大非常勤講師(記録管理論論)は「公文書管理法は意思決定過程を検証できるよう文書作成を義務づけている。相手の合意と関係なく、各省庁が協議文書をつくり、残すべきだ」という。 当然だね。 私:一連のこの報道記事で欠落しているのが政策実行者の「説明責任」の義務の理解不足だね。 政策責任者は国民に明確な文書に基づき説明する責任がある。 これが「公文書」管理の基本だ。 森友学園問題で、国有地の売却価格に国民から疑念を持たれて「文書を破棄した」と堂々と回答する官僚の認識が問題で、文書の保存期間の問題ではないね。 しかも、その「説明責任」を堂々と放棄した人物が昇格するとはーーー。 加計学園理事長も「学園申請をしているから、これからは首相の判断の『説明責任』上、 ゴルフ、食事のつきあいは一時やめましょう」と言うべきだし、首相や官邸のほうからもそういうべきだね。 安倍夫人の森友学園名誉理事長就任のときも金銭の授受は一切ないという契約文書を「説明責任」のため交わしておくべきで、そういう認識が欠如しているのが今回の森友学園、加計学園問題の底流にある問題だね。 A氏:その視点からこのブログの「説明責任はどこへ」でとりあげられているね。 私:新聞も、「説明責任」欠如問題の視点から、「公文書」保存を扱ってほしかったね。 比喩で言えば、首相は「李下に冠を正さず」というなら、李下を歩くとき、冠に手をふれていないという写真をとっておくべきで、そのくらいの「説明責任」意識を持つべきだね。
2017.09.19
コメント(0)
私:「リファーラル」は英語で「紹介」「推薦」の意で、米国で「リファーラル採用」と呼ばれて普及している。 俺は、若い頃、米国企業に新入社員の入社式がなく、中間採用が通常なのに驚いたが、たまたま、現地で知り合ったアメリカ人が、「これから、他社にいる知人や、仲間の集まりで、人が多く集まるので、そこで転職先をさがしにいくのだ」というのを聞いて、そういう場があるのだと理解したね。 個人が自分の能力を自分で売り込んで、転職していくというのは、「タテ社会」化している日本とは別世界を感じたね。 こうした中途採用が「リファーラル採用」で、米国の中間採用の基本にあるのだね。 日本ではまだ一般的でないが、初めた企業もあり、この記事で2社紹介している。 人手不足が鮮明になるなか、「有力な中途採用の手段」と評価する声もあるという。 A氏:人材会社エン・ジャパンが運営するウェブメディア「キャリアハック」でライターと編集の仕事をしている山本氏の前職は、ネットのエンジニアで、まだ分からないことが多く、編集長の白石氏の指示をちょくちょく仰ぐ。 2人は同僚になって半年足らずだが、出会いは昨年8月にあった社外の勉強会。 その後もフェイスブックでつながり、昨年12月に「キャリアハック」が主催したイベントで再会し、2人で飲みに行くと、山本氏が「転職を考えている」と打ち明けた。 山本氏の前職の経験が自社の仕事に生かせると思った白石氏は「うちの中途採用に応募してみないか」と持ちかけ、白石氏が人事担当者に山本氏を紹介し、中途採用の選考をパスし、無事入社が決まった。 まさに「リファーラル採用」だね。 私:同社は「リファーラル採用」は、(1)知人を紹介する社員は意欲的に働く人が多く、連れてくる人も活躍する可能性が高い(2)多様な人材と出会える(3)採用に結びつく確率が高く、選考の負担が少ないなどから、2014年度から力を入れ始めた。 社内に貼り紙を出すなど大々的に告知し、紹介した人が採用につながった社員に10万円の報奨金を出す制度を整え、社長らが朝の集会で呼びかけたほか、最も多くの社員の採用に貢献した職場に納涼会費を援助した。 取り組みは実を結び、「リファーラル採用」による社員は、全社員約1200人の1割ほどになり、16年度は35人が入社し、今年もすでに26人と増加傾向にあるという。 非常に有効な採用方法なので、もっと割合を上げていき、今後は忙しい現場の社員が、社外の知り合いを増やせるような支援をしていきたいという。 A氏:フリーマーケットアプリ大手のメルカリも、「リファーラル採用」を中途採用の主力に据えており、国内で働く約500人の6割ほどが社員の紹介で入社した。 同社では、紹介する社員とその知人に対して、入社したら上司や同僚になりそうな担当役員や社員を交えて、夕食や昼食をともにすることが多く、それは、面接よりフランクな形で、会社の雰囲気や仕事内容を知ってもらうため。 「リファーラル採用元年」と位置づけた15年以降、その費用は全額会社持ちで、金額に上限は設けず、4月から事前申請もいらなくなった。 社員と社外の人材が知り合う機会になる「ミートアップ」と呼ぶイベントも定期的に開催し、15~30人ぐらいの規模で、8月下旬にはデータアナリスト、広報、カスタマーサポートの職種で開いた。 「ミートアップ」をきっかけに入社する人もいるという。 私:企業の採用動向に詳しい横浜国立大大学院の服部康宏准教授によると、「ここ数年、人手不足のため、従来の手法では人材確保が難しくなり、『リファーラル採用』が広まっている」という。 「単なる縁故採用にしないためには、会社が社員にどんな人材を必要としているかをはっきり示す必要があり、『目利き』ができる社員を増やせるほど、有力な中途採用の手段になる」と指摘する。 「タテ社会」的な賃金制度から離脱し、同一労働、同一賃金の賃金体系の基礎にもなるね なお、米国の『リファーラル採用』の実状やもし、日本との違いがもしあればそれにもふれてほしかったね。
2017.09.18
コメント(0)
私:北朝鮮のミサイルが日本上空を飛んでいるというのに、官邸や永田町は選挙が近いと大騒ぎだという。 民進党の分裂状態につけこもうということらしい。 ところが、自由党の小沢一郎氏は、最近、ある座談会で過去の選挙で、自由党が大勝したと言っても、自民党への票が大きく伸びたわけでなく、投票率の低下によるものだと言っていた。 この新聞コラムは、それに関連して「政治家不信」という観点から興味ある話題を提供しているね。 A氏:まず、とりあげているのは、大阪商業大学のJGSS(日本版総合社会調査センター)が拠点となって定期的に続けている全国調査の最新の結果だね。 そこには社会に影響を持つ15の組織や仕組みへの信頼感を問う項目が含まれているのだが、これまでと同様に今年も「国会議員」の信頼度がかなり低い。 回答の選択肢は「とても信頼している」「少しは信頼している」「ほとんど信頼していない」「わからない」の四つだが、そのうち信頼に肯定的な二つを合わせても「国会議員」の信頼度は29・4%と低く、逆に「ほとんど信頼していない」は、52・2%。 「市区町村議会議員」も不信が45・2%と高い。 私:逆に信頼の選択肢の合計が安定して高いのは「病院」で90%前後、「学校」も70から80%台。 最近は「裁判所」「自衛隊」「警察」「金融機関」で70%台、「大企業」で60%台が続き、「学者・研究者」もおよそ70%で、「中央官庁」と「労組」はやや落ちて40から50%付近を上下。 「新聞」には80%台、「テレビ」には70%台の信頼が寄せられているが、不信度は上昇傾向。 「あきらかに人々は自分たちで選んだわけではない人たちの方を信頼している」。 「傍若無人な国会運営を追認し、保身のみに汲々(きゅうきゅう)としている議員たち」「首相の国会でのヤジ、はぐらかし、閣僚の失言、暴言は最高度。あぜんとする」という政治家や国会への不信のあらわれ。 A氏:日本にはないが、フランスには投票先の候補がいないときは「白票」を投ずることができるらしい。 この5月に大統領選があったフランスでも有権者たちが政治家不信の葛藤に揺れていて、棄権するか白票を投じた人は有権者の約3分の1と、歴史的な高さになった。 決選に残った2人の候補の「どちらも信頼できないのにどうして投票できるのか」と考えた人が多かったからといわれた。 新大統領についていこうという熱狂はなく、人々はよりひどくない方に投票しただけだという。 新大統領就任後の3ヶ月後には、支持率は36%、不支持が49%。 私:日本の国政選挙の投票率は低下傾向が続く。 近年では半分近くの人が投票所に足を運ばないが、それは、議員を信頼していない人がざっと半分という調査データと重なり、低い投票率が示すのは、政治への無関心というより政治への不信と読めると大野氏は指摘する。 さらに大野氏は「民主主義では選挙こそが正統性の根拠だ、とだれでも考えるが、その結果、人々がもっとも信頼していない者たちが民主的な正統性を独り占めすることになるのだとしたら、奇妙だと思う。そして、このことは腑に落ちない」という。 それを反省せずに官邸や永田町での選挙騒ぎが虚しく感ずるね。
2017.09.17
コメント(0)
私:この記事で指摘しているのは、実は、「教員の生産性」の問題で、最近、流行りの言葉で言うと、「働き方改革」の問題だが、総体のスローガンだけで、「教員」という具体的な職業レバルになると全然進んでいない実態を国際比較のデータが示しているようだね。 A氏:12日に発表されたOECD調査によると、日本の公立の小学校から高校までの教員の労働時間は最も長いレベルだったのに対し、労働時間のうち授業にあてる割合は最も低いレベルだった。 授業以外の負担が他国と比べても重い実態が改めて浮かんだという。 私:「教員の生産性」の問題だね。 安倍首相は11日、「人生100年時代構想会議」の初会合で「人生100年時代を見据えた『人づくり革命』は1億総活躍社会をつくり上げるうえでの本丸であり、『生産性革命』とともに安倍内閣の最大のテーマだ」と発言しているが、「人づくり」のための重要な「教員の生産性」が先進国で最低のレベルとはね。 「人づくり革命」「生産性革命」のスローガンが皮肉に聞こえるね。 A氏:日本の公立学校の教員の2015年の法定労働時間は年間1891時間。 加盟国の平均より200時間以上多く、中学校教員で比べると4番目に長かった。 それなのに、日本の教員が授業にあてる時間は小学校742時間、中学校610時間、高校511時間で、いずれも加盟国平均より短く、労働時間に占める割合も小学校39%(加盟国平均49%)、中学校32%(同44%)、高校27%(同41%)より低かった。 OECDは「教育相談や課外活動など授業以外に多くの時間を費やすことが求められているため」と分析している。 私:教員は授業をすることが本業だから、それ以外の仕事はムダだがムダな時間のほうが多いというわけだ。 欧米では、授業以外の教育相談などは、別の担当がいて、「分業」になっている。 「分業」は18世紀にアダム・スミスが言い出したように「生産性向上」の基本のテクニックの一つだね。 なんで、こんな簡単な改善策があるのに放置しているのだろう。 「生産性革命」と「革命」とおおげさなスローガンを叫ばず、まず足元の身近な問題から粛々と行うべきだね。 「まず、先ず隗より始めよ」だ。 しかし、日本で「分業」発想が進まないのは、日本社会が組織横断の職業別の発想が弱く「タテ社会」的な仕事の「分業」軽視が強いからかね。 A氏:一方、OECDによると日本は幼児教育と高等教育における家計支出の割合が50%を超えており、加盟国の中でも特に高いレベル。 高等教育の場合は家計支出が51%と、加盟国の中で最も多く、平均の22%の倍以上。 私:日本は高等教育の授業料が最も高い国の一つでありながら、学生に対する公的支援の仕組みも少ない。 OECDのアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は「授業料の負担が高いにもかかわらず、支援も限定されているのは(加盟国の中で)日本と韓国だけだ」と述べたという。 このままだと「人づくり革命」は「革命」までいかず、スローガンで終わりそうだね。
2017.09.16
コメント(0)
私:最近、埼玉、群馬両県でO157に感染し、3歳児が亡くなるなどの事件を起こしているが、感染源がまだわかっていないようだ。 O157は腸管出血性大腸菌(EHEC)と言われているが、この藤井教授の寄稿でO157などのEHECの自然宿主は「牛」だというのを知ったね。 A氏:EHECは「牛ふん」1グラムあたり約1万個以上にのぼり、土壌で数カ月以上も生存する。 用水路やため池などが汚染され、台風などの大雨により汚染が一気に広がり、EHECは、こうして野菜や果物に付着して出荷されている。 私:埼玉、群馬両県の今夏の大雨が関係しているのだろうか。 「牛ふん」の管理はどうなっているのだろうか。 厚労省は2012年に生食用の牛レバーの提供を禁止するなど「牛生肉」の対策を強化し、牛肉によるEHEC食中毒は一般に広く知られるようになった。 A氏:しかし、野菜や果物も加熱しないときは次亜塩素酸ナトリウムなどによる殺菌を徹底すべきだ、という。 昨年8月、千葉県と東京都の老人ホームで同じ給食業者が提供したキュウリによりO157食中毒が発生し、10人が死亡。 下痢や血便などの症状を発した患者に対する死亡率は約12%にのぼった。 厚労省の調査では、同じ流通経路のキュウリを使っても、水道水で洗浄したうえで加熱を行った施設はもちろん、加熱しなくても次亜塩素酸ナトリウムでわずか40ppm、5分間殺菌した施設では感染者が全く出なかったという。 私:これにより、厚労省は昨年9月、老人ホームなどで高齢者らに野菜や果物を加熱せずに供する場合は、徹底して次亜塩素酸ナトリウムなどで殺菌するよう都道府県に通達。 漂白剤である次亜塩素酸ナトリウムで野菜を洗うと味が落ちるため、健康な成人に対しては殺菌しなくてもよいことになっているが、いまだに埼玉、群馬両県などでのポテトサラダなどの食中毒事件の真相解明ができない以上、例外なく野菜や果物の殺菌をすべきだと藤井教授は指摘する。 A氏:家庭においても食品添加物規格の次亜塩素酸ナトリウムによる野菜や果物の殺菌が認められており、次亜塩素酸ナトリウム濃度が薄くても、使い回しをしない限り、その殺菌効果は十分にあるという。 私:健康志向の高まりで生野菜や果物を食べる機会は増えているが、O157から身を守るためには、キュウリなどの生野菜や果物は殺菌されない限り危険なものが存在するという人々の意識改革が求められていると、藤井教授は警告する。
2017.09.15
コメント(0)
私:新聞は公的年金の約600億円もの支給漏れが1度に発覚したと報じている。 年金問題といえば、第1次安倍内閣の2007年のとき、年金記録で問題が起きたね。 当時、社会保険庁のコンピュータ入力した年金記録にミスや不備が多いこと等が明らかになり、国会やマスコミにおいて社会保険庁の年金記録のずさんな管理が指摘された。 その結果、社会保険庁は廃止され、2010年に日本年金機構に衣替えした。 A氏:しかし、新聞は年金管理のずさんさは衣替えしても、なかなか根本から改まらず、関係者は不信感を募らせているとしている。 私:2007年のときの問題の原因の多くは、「コンピュータは正確だ」というコンピュータ信仰が原因だったね。 「コンピュータはミスも正確にする」ということを理解していなかった。 だから、オペレーターの管理が盲点で、年金番号などの入力ミスが主な原因だった。 A氏:当時、年金記録は、多くのパソコンの前にオペレーターがいて手で入力するが、ここが問題だね。 私:当時は、日本社会にコンピュータ利用が広まったが、「コンピュータはミスも正確にする」トラブルも広まったね。 ある卸業で、在庫管理にバソコンシステムを導入。 小売りから電話で商品の在庫問い合わせがあると、パソコン端末で検索し「在庫がありますので、午後便でお届けします」と即答できる。 ところが、この1万点ほどある商品の在庫データがほとんどウソだったんだ。 商品コードの入力ミスが主な原因だね 出庫指示がパソコンで出ても、倉庫現場からは、「そんな商品は在庫がありません」と返事が来るというわけだ。 A氏:しかし、卸業は在庫が重要だから、そんな状態では財務状態もおかしくなるのではないかね。 私:その通りで、欠品が多いのに滞留する不良在庫が増大し、システム導入後2年位で経営破綻寸前まできたね。 一時、パソコンシステムを廃止して、なんとかもとに戻った。 このとき、パソコンシステムをやめるとき、反対したのは「コンピュータは正確だ」と思い込んでいる公認会計士。 社長が「コンピュータはミスも正確にする」と言って押し切って危機を脱した。 2007年の年金破綻のとき、手書き台帳にもどったのと似ているね。 A氏:今は、バーコードが普及しているから、手入力の問題はないだろうね。 私:当時は、製造管理にコンピュータを導入した製造業も悲惨だった。 ある中堅企業で、決算に使う部品在庫データを棚卸しをせず、コンピュータデータを使った。 しかし、製造活動で使っているうちに、部品の欠品が増加し、現場がストップすることが増えた。 そこで、実際の部品在庫棚卸しをしたら、10億円ほど少ないことがわかった。 部品在庫は資産だから、これがマナスになると会社の利益はその分もろに、減ることになる。 ところが、その会社はコンピュータ在庫で決算していたから黒字で、実際は赤字なのに法人税を払っていた。 A氏:監査法人も問題だね。 私:いや、監査法人も手でやる棚卸しより、コンピュータの方が正しいと思い込んでいたんだね。 俺は、そのコンピュータのアウトプットの部品在庫リストを見たことがあったが、いくつかの部品在庫数にマイナス符号がついていた。 マイナス在庫なんて現実にありえないが、コンピュータは正直に表現したんだね。 ところで、今度の年金機構のミスについては、年金問題に詳しい日本総研の西沢和彦主席研究員は「今回のミスは共済年金と厚生年金を一元化した際に、事務手続きを担う機構と共済組合を統合しなかったことが本質だ」といい、「制度の複雑化に現場の執行が追いついていない。年金機構の単純なミスと決めつけるのではなく、いかに制度をわかりやすくしていくかが重要だ」という。 今回のミスの原因をもっとパソコン入力のような事務的なレベルの問題から立ち上げて機構の管理問題を具体的に説明してほしかったね。
2017.09.14
コメント(3)
私:安倍首相は11日、「人生100年時代構想会議」の初会合で「人生100年時代を見据えた『人づくり革命』は1億総活躍社会をつくり上げるうえでの本丸であり、『生産性革命』とともに安倍内閣の最大のテーマだ」と発言。 本来、「革命」は政治や社会の体制がひっくり返るという意味だが、最近、氾濫気味だという。 A氏:今まで社会活動や企業活動では「革命」でなく、「改革」とか「改善」という言葉が普通だったと思うね。 私:人事コンサルタントの経験がある常見陽平・千葉商科大専任講師も「実質的に『改善』や『改革』に過ぎないことを『革命』と呼び、ワンフレーズをはやらせようとしているだけでは」と手厳しい。 安倍内閣はこれまでにも「地方創生」「1億総活躍」「働き方改革」などを掲げてきたが 「そろそろ『ポエム化』した政治を終わらせるべきでは」という。 「ポエム化」とは、日常語としてはあまり用いられないような語句が多用される傾向を意味する語だというが、たしかに「生産性革命」などは、企業活動では通常行われている「生産性向上活動」と何がちがうのか、実体がつかめないで、言葉だけ独り歩きだね。 A氏:「地方創生」「1億総活躍」「働き方改革」は言葉遊びで、実体がいまだに見えていないね。 俺達の若い頃、日本の生産性が諸外国(特に米国)に比較して低いということで「生産性向上運動」というのがあり、日本生産性本部が主導して向上のための具体的な手法の研修会もあったと思う。 これが効果を出したのか、2000年代には製造業では日米の労働生産性の差が縮まり、業種によっては、米国に追いつき、追い越したものもある。 残念ながら、サービス業はまだ、米国の半分程度にとどまっているが。 私:大辞泉によると、「革命」とは「被支配階級が時の支配階級を倒して政治権力を握り、政治・経済・社会体制を根本的に変革すること」で、「フランス革命」などが例だが、2番目の意味に「物事が急激に発展・変革すること」もあり、「産業革命」などが当たるという。 しかし、「産業革命」も「政治革命」同様、エネルギーが蒸気機関という新しいある種の「新しい支配」の大きな交替があったといえる。 A氏:それにしても、「革命」は近ごろさらにカジュアル化する一方。 記事にあるように、本屋をのぞけば「家事革命」「スーパー小顔革命」「人生に革命が起きる100の言葉」などの言葉がタイトルや表紙に躍り、まさに「革命」のインフレ状態。 一見、大げさだと思われる言葉が、時代や人々の意識に大きく訴えることがあるのも事実。 私:国立国語研究所の相澤正夫教授(社会言語学)は、「放っておくと世の中、『革命』だらけになってしまう」と嘆きつつ、逆に日本の「安定」もみていて、「本来の『革命』から遠いところにいるからこそ、かえって気楽に無邪気に使えるのではないか。生々しい闘争や確執から疎遠でいられる平和な社会であることの反映と見ることもできそうです」という。 しかし、そんな感覚で「人づくり革命」や「生産性革命」を唱えるのは言葉の遊びに終わり、関連する会議も長引くだけで、いっこうに埒があかない会議である「小田原評定」に終わるのではないか。
2017.09.13
コメント(0)
私:「不時着」か「墜落」か、でもめていた、沖縄県名護市東部の沿岸で昨年12月、米軍輸送機オスプレイが不時着水を試みて大破した事故について、米軍は11日、事故原因は「操縦士のミス」とする最終報告書を日本政府に提供。 機体の不具合や整備不良が事故原因ではなく、操縦士の操縦ミスと結論づけた。 防衛省はこれまで「オスプレイの同様の事故は初めて」としてきたが、今回の報告書は、15年にも米海兵隊のオスプレイが同様のトラブルを起していたことに言及していた。 この時は損傷が軽微で、安全に着陸したといい、同機は米カリフォルニア州の飛行場に所属しているが、米軍は事故の詳細について明らかにしていない。 A氏:12月の事故後、9ヶ月もたって最終報告書がでるとはね。 私:報告書によると、問題のオスプレイは、昨年12月13日夜、空中給油訓練をしていたが、空中給油機の給油管への接続に何度か失敗した後、燃料が少なくなり、方向転換。 普天間基地に向かいながら給油管につなげようとしたが、操縦士が速度を上げすぎたため、オスプレイの右プロペラが空中給油機の給油管と接触したという。 A氏:同じ空中給油機の給油管への接続事故が、2015年にも米国内で起きていたのを、今回の報告書で、防衛省ははじめて知ったわけか。 私:小野寺防衛相は防衛省内で「あくまで操作の問題ということだと思うが、沖縄を含めて不安の声があることも事実。安全な運航を心がけていただきたい」と記者団に語った。 11日に防衛省を訪れた翁長沖縄県知事は、小野寺防衛相と会談後、記者団に「事故が起きるとパイロットの責任に帰しているが、機体の構造的欠陥は言わないようにしているのではないか」と疑問を投げかけた。 A氏:正論だね。 兵器は、戦闘で兵士の生命にかかわるものだから、操作ミスのないように構造を安全なものにしておくべきだね。 私:ものづくりの基本に「フール・プルーフ」という言葉がある。 フールは「馬鹿」でプルーフ「守ること」だから、日本の現場では最初「バカヨケ」と言っていたが、その後、「ポカヨケ」で工場の現場用語で一般化したね。 作業者のミスを防止する装置のことで、ミス・ゼロを目指す。 小野寺防衛相は、空中給油機の給油管への接続作業の「ポカヨケ」装置について聞くべきだったね。 翁長沖縄県知事も同様に「ポカヨケ」装置について、追及すべきだったね。 私:ところで、こないだCSテレビ映画で「ハドソン川の奇跡」の映画を見た。 昨年、クリントン・イーストウッド監督制作したが、2009年にエンジントラブルで事故を起こした旅客機が、ハドソン川に着水し、乗員全員155名が助かったという実話に基いている。 機長の勇断で、機長は英雄となる。 機体は見事な着水で、破損はみられない。 昨年12月のオスプレイは不時着による着水だというが、めちゃめちゃに機体が破壊され大破しているのを見ると、「ハドソン川の奇跡」と比較するとオスプレイは「墜落」だね。 A氏:ところで、これはネットニュースだが、在沖縄米海兵隊のオスプレイが8月5日午後、オーストラリア東部沖で事故を起こした。 オスプレイが米軍艦に着艦しようとした際、船尾に機体が接触して墜落。 乗員26人のうち23人は救助されたが、3人は死亡。 これも操縦士のミスか。 私:オスプレイ配置反対ばかりいうのでなくもっと操縦し易いように「ポカヨケ」装置の構造的改善をしたオスプレイを期待したいね。 ベテランでないと使いこなせない兵器は、現代戦向きではないね。 そんなことは世界一強大な米軍では常識だから、「操縦士のミス」の説明は技術的でなく、政治的な背景をなんとなく感ずるね。
2017.09.12
コメント(0)
私:この記事は、このブログでとりあげた「緩和マネー、リートに流入 不動産、路線価の10倍も:(異次元緩和の行方:上)」の「下」だね。 「上」ではマネーが「リート」に流れていたことに主にふれていたが、「下」では国債にふれている。 日銀の金融政策で、国債市場は機能不全の状態で、ずっと続くと、市場がいつか消滅するんじゃないかと本気で心配してしまうと証券会社のベテランの国債担当ディーラーはいう。 職場では、国債関連の人員が2割近く減らされた。 ある金融機関は、関連部署の人員を投資信託の販売や支店などに移し、一部の外資系金融機関では、日本国債の取引部署を大幅に縮小し、事実上撤退した。 A氏:日銀が推進する異次元の金融緩和で、国債買い入れをペースアップし、国債保有額は17年3月末時点で約430兆円と、発行残高全体の約4割を占める。 貸出金利を下げる効果は出たが、市場に出回る国債は減り、国債売買で利益を上げていた金融機関は市場から手を引き始めている。 低金利で国債利回りは下がり、一部の国債はマイナス金利で、満期まで持っても損失が出てしまうし、市場で多くの売買益も見込めない。 私:異次元緩和で国債の利回りが低下し、債券市場が閑散とする中、影響は身近な金融商品にも出ていて、それは、契約時に日本円で一時金を払い込むと、満期10年で、約束した利回りを上乗せした保険金を受け取れる貯蓄型保険。 ただ、運用は米ドル建てで為替変動の影響を受け、契約時より円高なら、為替差損が出る可能性がある。 しかし、国債の利回りが低下し、さらに昨年2月、日銀がマイナス金利政策を導入して以降、国債の利回りは一段と下がり、魅力的な利率の商品が提供できなくなっている。 A氏:日銀は、銀行や証券の市場担当者から意見を聞く「債券市場参加者会合」を定期的に開いているが、そこで聞かれるのは、「現在の状況で国債運用は困難」「市場から『価格発見機能』が失われている」「いまのままでは日本国債に投資しがたい」という、市場の機能が失われたことへの批判。 私:日銀が当初「2年程度で物価上昇率2%」とした物価目標の達成期限は6度も先送りされ、物価上昇率はまだ0%台で、専門家は「2%」の達成には懐疑的。 黒田日銀総裁は、6回目の先送りを決めた7月20日の記者会見で「見通しの誤りであることは事実」と認めたが、「(現在の枠組みで)緩和効果はさらに強まっていく」と、年50兆~60兆円のペースでの国債買い増しを続けている。 A氏:日銀の国債買い入れは、年60兆円ペースで積み増すと、遅くとも18年10~12月に限界に達するという。 私:日銀の保有量が5割に近づくと、国債を手放す金融機関が減り、日銀の国債の買い入れは難しくなり、国債の大量買い入れを柱とした「異次元緩和」の枠組みは見直しを迫られる可能性が高まっているという。 なにか、危ない橋を渡っている気がするが、日銀が国債を手放す「出口」はいつになるのだろうかね。
2017.09.11
コメント(0)
私:今週は、2冊に興味を持った。 1.(書評)『帝国と立憲 日中戦争はなぜ防げなかったのか』 坂野潤治〈著〉:評者・評・齋藤純一(早大教授・政治学) 本書は、1874年の台湾出兵から1937年の日中全面戦争に至る歴史を、「帝国」対「立憲」という構図のもとに簡明に描き直しているという。 「立憲」が強いときには「帝国」抑制され、「帝国」が伸長するときには「立憲」は息を潜め、「立憲」と「帝国」は交互に現れたのであり、両者の併存はむしろ例外。 A氏:この場合の「帝国」は、中国(満蒙)への膨張をはかる軍拡の政策・行動を指し、対して、「立憲」は、狭義の「立憲主義」(憲法による公権力の制限)には還元されない。 明治憲法は「統帥権」の独立を保障しており、「帝国」化に抗するためには、「違憲」ではなく「非立憲」の論理立てが必要だった。 司馬遼太郎は軍部の独裁を「統帥権」の存在を理由にあげているね。 私:「立憲」は、国会開設、政党内閣、男子普通選挙を順次実現した政治制度の民主化に加え、軍拡を抑えようとする財政指針もカバーする。 本書は、「帝国」化を阻もうとする努力が、昭和に入ってからも消え去りはしなかった事実に注目を喚起する。 昭和15年2月には、民政党の斉藤隆夫が、有名な「反軍演説」を行っているね 「立憲」は「帝国」化に繰り返し、執拗に立ちはだかったが、日中戦争はなぜ防げなかったのか。 「立憲」と「帝国」の抗争から著者が引きだす歴史の教えは、「デモクラシーが戦争を抑え込み、それゆえにさらに発展するという好循環は、リベラルな政党内閣の下でしか生じない」というものだという。 A氏;本書が問いかけるのは、「立憲」主義を擁護するに加えて、いまデモクラシーに何が求められるか、である。 政府および人民の権力濫用を抑えながら、単なる受け皿ではない、リベラルな議会多数派をどう安定的に組織していくことができるかが求められているということか。 「立憲」という課題への再度の取り組みを本書は促すという。 私:今の自民党はリベラルな議会多数派だろうか。 「立憲」は守られていくのだろうか。 2.東谷暁氏〈著〉『山本七平の思想 日本教と天皇制の70年』10日朝日新聞「読書ビジネス」欄・評者:ジャーナリスト・小林雅一氏 A氏:山本七平氏は、昭和を代表する評論家の一人で、君はファンでもあるね。 私:ほとんどの氏の本は読んだね。 講演依頼で、山本氏の書斎を訪れ面談したこともあるが、ゆっくりと落ち着いた話し方をする人だった記憶がある。 本書は優に200冊以上に及ぶ山本氏の作品群の中から、代表作を選び出して解説。 そこに七平氏の歩んだ苦難の人生も絡めつつ、氏が捉えた戦後70年余りにわたる日本社会を総括しているという。 A氏:評者が特にとりあげた79年に刊行された「日本資本主義の精神」は、日本企業の原型は江戸幕府配下にあった数百の「藩」にあるとした。 私:そこには「主君が立派でなくとも家臣は忠誠心をもらねばならない」という独特のイデオロギーが存在し、これが日本企業の経営体質に受け継がれた。 その類似点が戦後の高度成長のように長所として働く一方、破綻をもたらす短所にもなると氏は見ていた。 こうした分析は近年、経営危機に陥った東芝のように一部の大手企業などを見ると確かに評者の言うように予言的だね。
2017.09.10
コメント(0)
私:評論家の宇野常寛氏は、自らのツイッターで8月31日、出演する日本テレビの朝の情報番組「スッキリ!!」を9月で降板すると公表。 日中戦争中の南京事件に否定的な本をホテル室内に備え置きしていたアパホテルについて、1月19日の放送で「歴史修正主義だ」と批判したことを紹介。 その結果、「(日本テレビに右翼の)街宣車が押し寄せ」たため、番組側が問題視したのではないかと宇野氏はツイッターで主張した。 また、宇野氏は、ユーチューブにも自ら説明する映像を投稿し、「僕は事実上のクビだと解釈しています」などと約30分語った。 A氏:宇野氏は、3月2日の森友学園問題についての打ち合わせで、「(番組内で)安倍政権のナショナリスティックな言動を批判する」と予告したところ、当時のプロデューサーから発言内容を修正するよう求められたとも主張している。 プロデューサーは理由として、「政治的公平」を定めた放送法を挙げたという。日本テレビは読売新聞系で、親安倍だからかね。 宇野氏は修正の要求について「別のスタッフから、1月の『歴史修正主義発言』が番組上層部の怒りを買ったことが原因、と聞いた」と語った。 それ以降も、コメントをめぐって「何度か摩擦があった」という。 私:一方、日本テレビは「番組の制作過程に関する詳細についてはお答えしていない。10月期の番組リニューアルに伴う通常のコメンテーターの交代。交代される方は他にも複数いらっしゃる」と例の型通りの回答らしい。 A氏:こうした出演者の発言をめぐる舞台裏は、以前なら視聴者の目に触れにくかった。 私:碓井広義・上智大教授(メディア文化論)は、ツイッターなどの発信手段が多様化したことで、「番組の制作過程が見えやすくなっている」と指摘し、その一方で、「コメンテーターの発言が局の都合に合わないと『切る』んだな、という思いを視聴者は抱くだろう。 メディア不信が広がるのは間違いない」とも語り、情報番組での意見の幅が狭まることを懸念する声もある。 A氏:元共同通信記者で、民放各局に出演する青木理氏は「発言内容に不当な縛りをかけられたことはほとんどない」としつつ、「面倒を避けるために物言うコメンテーターを避ける傾向が強まるかもしれない。当たり障りのないコメンテーターが増えれば、言論空間は閉じていくだけなのではないか」と指摘する。 私:青木氏はたしか、テレ朝でもTBSテレビでもコメンテーターとして参加しているね。 日本テレビではどうだったのだろう。 青木氏は、コメンテーターの起用・降板、発言内容も含めてテレビ局には放送責任があるだけに「組織の論理があるのは現実」で、事実、テレビ局側は近年ますます、コメンテーターの発言に神経をとがらせているといい、ある民放キー局のディレクターは「論争を生むコメンテーターは番組にとってリスクでしかない。発言内容に口を出すことはないが、人選には気をつかう」と打ち明ける。 A氏:碓井教授は情報番組の現状を「単なるまとめサイト化を招いている」と指摘。 「以前は情報番組も、もっと独自に取材していたが、いまはネットや週刊誌の話題に飛びついて、井戸端会議をするような傾向が強まっているように思う。それだけに、番組の中での言論や議論の幅が狭まれば、視聴者の利益にもならない。テレビ離れがますます加速するのではないか」とみる。 私:その上に、権力側が「記憶にない」「文書がない」とやりだすと、ますます、テレビの情報番組離れになるね。 そして、SNSでフェイクニュースが飛び交うことになる。 このブログの「政治の圧力・自己検閲 米識者が見た日本のメディア・キングストン教授のインタビュー」でふれたように、日本メディアの政府からの独立性について問題点を指摘しているね。 その点、日本は世界の先進国としても遅れをとっているが、「国民の知る権利」は守りたいね。
2017.09.09
コメント(0)
私:米共和党を生んだのは人種問題であるが、トランプ氏による人種問題の対応が党を破壊する問題に大いになりうる、というコラムニスト・デイビッド・ブルックス氏の論説だね。 共和党は奴隷制と闘うために設立され、そのほとんどの期間、公民権についてまともな実績を残してきて、共和党議員のうち、公民権法に賛成した人の割合は、民主党議員における割合よりも多かった。 A氏:リンカーンはもともと共和党だね。 私:近年の共和党は「白人の党」の傾向を強めたが、1984年から2003年にかけて保守系メディアで仕事をしていた筆者の友人はほとんどが共和党支持者だったという。 A氏:だが共和党は05年以降、変わり、「白人アイデンティティーの政治」の場になった。 05年に、白人は「多大な」差別を受けていると感じる共和党支持者はわずか6%に過ぎず、そう感じる民主党支持者と同率だったが、16年までには、そう感じる共和党支持者の割合は3倍に増えた。 最近の調査によれば、共和党支持者の約47%が従来からの「保守的な万人救済派」とでも呼べる人たちで、おそらく40%が問題となっている「白人アイデンティティー主義者」とでも呼べる人たち。 「白人アイデンティティー主義者」は保守的だが、自分たちが白人であることがかなり重要で、場合によってはそれが保守主義よりも重要と考えている。 私:人種差別というのは、ほかの人が自分より劣ると感じることだが、「白人アイデンティティー主義」は、逆に自分が虐げられていると思うことで、トランプ氏を支持した「ラストベルト」の人たちがそうだね。 「白人アイデンティティーの政治」は完全に有害で、トランプ氏はその巨匠であるとブルックス氏はいう。 トランプ氏はオバマ大統領が米国生まれではないという運動を展開して政治的アイデンティティーを確立し、イスラム教徒の入国禁止を唱えて共和党大統領候補の指名を勝ち取り、選挙ではメキシコ国境の壁建設を訴えた。 A氏:そして、バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義団体と反対派が衝突した事件では中立の立場をとり、人種差別主義者のジョー・アルパイオ元保安官に恩赦を与えるという統治を行っている。 私:いま、共和党支持者の一人一人が、この「くず」のような話を受け入れるか、受け入れないかを強いられている。 そして自分が虐げられていると思っている「白人アイデンティティー主義者」の恨みが、今後何カ月もの間、ますます共和党の政策を特徴づけていくことになる。 トランプ氏の大事に思っているのはこの分野だからで、アイデンティティーのために闘う左派の人々は、(南軍の)銅像などを傷つけ、アイデンティティーの右派の人々と、互いに利益になるように対立を引き起こし、事態はもっと醜くなっていくだろうという。 「白人アイデンティティー主義者」と違い、「保守的な万人救済派」とでも呼べる人たちは、保守的な白人は保守の原理を信じ、保守主義があらゆる人々に当てはまると考えていて、そして自分たちが白人であるということは、特に重要な特徴とは思っていない。 A氏:そして、共和党の解体という話になってくる。 「保守的な万人救済派」は、自分たちの党が「白人アイデンティティー主義者」と人種間対立の場になってしまったと理解し始めている。 外交や国内の問題について党内闘争があるときは、相手の意見が間違っていると考えるが、人種問題についての党内の闘争では、相手に強い嫌悪感を抱く。 それが今まさに起きており、右派全体にまたがる友情は終わりつつあり、党派的な理由でトランプ氏を支持した人々は、いま、人種問題で彼を支持せざるをえない状態に追い込まれていると感じ、自分たちに反発を感じているとブルックス氏はいう。 私:「白人アイデンティティー政治」の影響力が弱まる時がくるかもしれないが、トランプ氏の在職中は無理で、彼が権力を握っている限り、共和党は内部に激しい分断を抱え続け、立ちゆかなくなるだろうとブルックス氏はいう。 アメリカ国内の「分断」は共和党内にもあるのだね。
2017.09.08
コメント(0)
私:「梟雄(きょうゆう)」という言葉が出てくるが、「梟」は「ふくろう」のことで、性質があらく、昼はかくれ、夜出て小鳥などを捕食する。長じてその親鳥をも食うといい、悪鳥・不孝の鳥として憎まれるという。 したがって「梟雄」とは、「たけだけしい」「荒く強いこと」や、「残忍で勇猛な人物」を意味するという。 日本史の戦国時代では戦国三大梟雄といって、北条早雲、斎藤道三、松永久秀とするものと、斎藤道三、松永久秀、宇喜多直家とするものがあるという。 そのどちらにも斎藤道三、松永久秀が共通しているが、この松永久秀が松永弾正のことだね。 松永弾正は将軍や主君を殺すなど、裏切りを繰り返した「梟雄」とされていたが、天理大の天野忠幸准教授(日本中世史)の研究で、松永弾正の逸話は後世の創作や誇張で、実際には忠義の人だったことが明らかになってきたという。 A氏:江戸中期の逸話集「常山紀談」では、家康が信長に対面した際、信長は久秀について「普通の人が出来ないことを三つした」として、将軍を殺し、主君を殺し、東大寺大仏殿を焼いたと紹介したという。 現代でも多くの小説やマンガ、ゲームなどに個性の強い悪役として登場し、天野准教授も「調査するまで、主君を裏切り、暴れまくるイメージしか持っていなかった」という。 私:しかし、天野准教授が古文書を調べると、有名なエピソードとは異なる事実が次々と明らかになったといい、今春に「松永久秀 歪められた戦国の“梟雄”の実像」(宮帯出版社、本体3500円)にまとめた。 天野准教授によると、「常山紀談」があげた三つの悪事のうち、「将軍殺し」はそもそも事実ですらなく、室町幕府の13代将軍、足利義輝は1565年に殺されるが、久秀はすでに大和で隠居し、攻め込んだのは息子の久通だった。 A氏:「主君殺し」については、久秀が補佐していた主君の三好長慶の息子、義興は22歳の若さで亡くなり、久秀による毒殺説もあるが、実際には死を嘆き、「敵が出てきたら、真っ先に戦って死んでしまいたい」と書いた手紙が残り、その後隠居する。 私:また、主君の三好長慶に裁判の最終判定のお伺いをたてたり、支配を任された大和での戦況を報告したりする文書が残り、「久秀の越権行為は確認出来ず、自分を取り立ててくれた長慶に背くことは一度もなかった」と天野准教授はいう。 A氏:3つ目の「大仏の炎上」そのものは事実だが、長慶の死後、久秀と敵対するようになった三好家の有力者「三好三人衆」が67年に大和へ攻め込み、東大寺に陣を張ったため、夜襲をかけた際の失火で燃え広がったらしく、故意に焼いたわけではない証拠に、翌年には再興のために尽力しているという。 私:では、なぜ簡単に裏切りを繰り返す、悪名高い人物として伝わるのか。 久秀は出自もはっきりしない松永の姓のまま、異例の出世を遂げ、将軍からは三好長慶・義興親子とともに、かつて足利尊氏が後醍醐天皇より賜ったという桐の紋章の使用も許可されている。 天野准教授は、「家柄社会に慣れきった当時の人にとっては、社会秩序を破壊しているともとれる」という。 家臣なのに主君と同じ待遇を受けた久秀は、主君への敬意を重視する江戸時代の儒学者から危険な存在とみられるようになった。 A氏:現代では有名な久秀の「爆死」も、後世の創作という。 戦前の小説からは爆死の記述が見つからなかったといい、戦後に作られた俗説の可能性が高いという。 私:「『聖徳太子』と『厩戸王』併記に批判、なぜ?」でふれたように、日本史の研究が進むと聖徳太子の存在が疑問視されたりする。 日本史は、まだ史実をめぐって研究の余地が多いね。 来年のNHK大河ドラマは「西郷どん」で西郷隆盛をとりあげるようだが、これもいろいろな新事実がもりこまれるようだね。
2017.09.07
コメント(0)
私:今回のコラムは、前回同様、トランプ大統領の環境政策の徹底的な批判だね。 その前に、トランプ大統領が政策の細部どころか大まかな概略にも何の関心もなく、例えば、明らかに共和党の医療保険制度案の内容を全く把握していなかった。 また、自分のポピュリスト的美辞麗句を、具体化させることに全く関心を示していない。 だから、「オバマケア」を廃止しようとする試みは、今のところ失敗しており、「税制改革」(実質的には富裕層の大型減税)は、雲行きが怪しい。 A氏:実のところトランプ氏の頭には「勝つこと」以上の考えはなく、彼には直感と偏見はあるが、政策の細部どころか大まかな概略にも何の関心もない。 その結果、トランプ氏といかなる個人的確執を抱えていようとも、従来通り、共和党のエスタブリッシュメント(既成勢力)がトランプ政権の政策課題を定めるという状況になっている。 私:政策の法制化は確かに行き詰まっているように見えるが、利益集団が望むことの多くは立法措置が不要であり、行き詰まったとは言えないとクルーグマン氏はいう。 特に当てはまるのが環境政策で、この分野では、既にある法律をどう解釈し執行するのかという決断だけで、多大な影響を及ぼし得るという。 ここで環境問題が登場する。 トランプ氏の残す真の遺産を形作るものは、彼が法案を通したり阻んだりすることではなく、スコット・プルイット氏を環境保護局(EPA)長官に据えたという決断だという。 A氏:オクラホマ州司法長官だったプルイット氏は事実上、市民に仕える公僕ではなく、環境汚染産業の下僕としての役割を果たした人物だという。 私:トランプ政権の大部分はリーダーシップや主要スタッフを欠いて機能不全に陥っているように見えるが、そのなかでプルイット氏はエンジン全開。 しかし、そのエンジンはトップ自ら妨害工作に加担し、瞬く間にEPAの使命をむしばんでいる方向に動き、気候変動対策だけではなく、環境保護全般における役割も弱めているという。 クルーグマン氏は、トランプ大統領が、米国を再び偉大な国にすることはないだろうが、プルイット氏は、トランプ氏の全面的な支持を受け、米国を再び汚染された国にすることをするだろうという。 A氏:環境政策は人気のない分野だが、1970年にEPAが発足して以来、大気の質や水質が改善したことは、米国史上、偉大な成功を収めた政策の一つ。 トランプ氏の若い頃、ニューヨークは大気が汚染され、強烈なスモッグで何百人もの死者が出ることがあった。 ハドソン川は、ニューヨーク州知事をして「巨大な汚水浄化槽」と言わしめるほどだったが、規制が事態を変えたことをトランプ氏はおそらく覚えてもいないし、気づいてもいないだろうし、多くの有権者も同じだとクルーグマン氏は指摘する。 ただ、当たり前のように享受している、比較的きれいな大気と水が危険にさらされていることに人々が気付けば、すぐに事態は変わりえるという。 私:だが前述のように、プルイット氏は法律を変えずに大きな害を及ぼすことができる。 たとえば、EPA内の科学者が子どもの神経系に損傷を与える可能性があると指摘している農薬の禁止を撤回することができ、また、発電所の廃水の重金属汚染を制限する規則の廃止に動くこともできる。 さらに規則を無効にせずとも、トランプ氏と連携してEPAの人員や資金を干上がらせ、ルールの執行力を弱めることもでき、5月に提案されたトランプ政権の予算教書は、実際には立法化されないが、優先順位は示しており、EPAの予算は、他のどの省庁よりも厳しい31%もの削減だったという。 こういうことが、積み重なると、環境汚染の害は少しずつで、ときには目に見えなくても、多数の米国人に死や危害をもたらすことになる。 A氏:ところで、環境保護に反する政策は少なくとも雇用の創出になるという考えに対し、答えは「ノー」だとクルーグマン氏はいう。 具体的に言うと、石炭会社に対して露天掘りの山頂爆破をどれだけ認めようとも、有害物質の水路放出をどれだけ許そうとも、石炭業界の雇用は回復していない。 私:クルーグマン氏は、政権の政策課題が行き詰まっていると部分的にはみえても、他は順調に進んでいるという。 特に、こと環境政策に関する限り、トランプ氏は確実に米国を変える。 その遺産は文字通り有毒なものとなるだろうと指摘は厳しい。 また、ニューヨークは大気が汚染され、ハドソン川は、「巨大な汚水浄化槽」と言わしめるほどの汚れにもどるのだろうか。 この記事は、英語訳だがところどころ、変な日本語訳があった。改善を期待したい。
2017.09.06
コメント(0)
私:まだ小池都知事の人気が高い中、どちらかというと、小池支持と思われた朝日が「社説」で、小池知事に厳しい批判をしている。 A氏:豊洲移転に関する問題だね。 都議選直前の6月に小池知事が突然打ち出した「築地は守る、豊洲を活かす」の意味するところを、都民の代表である都議に直接説明する最初の場となるはずだったが、知事はあいまいな答弁に終始し、将来像は一向に見えないというものだね。 私:豊洲移転後の築地のあり方について、知事は「民間の知恵をいかす」と先送りするばかりで、「仲卸の目利きをいかした市場内取引の確保」などには、あまり言及しなくなった。 仲卸の多くは零細企業だから、都が主体となり早期に構想を描いてこそ、今後進む道を決めることもできるのに最近の知事の態度は「移転後もまだ築地に戻りたい業者がいるなら方策を考える」と言わんばかりだというが、いったい築地の何を、どう守るというのか。 明確なビジョンを示す責務が知事にはあるという それとも「守る」は選挙前のリップサービスだったのかと「社説」は厳しい。 最近、マスコミは北朝鮮問題ばかりで、豊洲問題のその後をあまり報じていないので、俺も意外だったね。 A氏:一方の「豊洲を活かす」も心もとなく、昨夏、移転延期を表明した際、知事は「都民の安心を優先させる」と述べたが、そのカギを握る地下水管理システムは、本格稼働から1年足らずで目詰まりし、水位は思ったように下がっていないという。 今回の追加工事で課題は解消するのか、補修にまた巨費を投じることにならないか、広まってしまった不安を、開場までにどうやってぬぐうのかが問題だが説明がはっきりしないようだ。 私:地下水管理システムが、本格稼働から1年足らずで目詰まりし、水位は思ったように下がっていないというのも、寡聞にして俺は初耳で、それは、大きな問題だね。 たしかに「社説」が指摘するように、丁寧に説明し、軌道修正する点があるのなら、理由とともに理解を求める、それが行政の長として当然行うべきことだね。 A氏:驚いたのは、豊洲・築地併存の決定過程を記録した文書がないことについて、知事が「人工知能、つまり私が決めた」「回想録に残すことはできる」と会見で述べたことで、説明責任に背を向け、都民を愚弄した発言だと「社説」はいう。 私:知事は公約で「透明性ある都政」をかかげていたのに、現在の安倍政権並みの文書の存在を軽視するのは、公約違反だね。 「記憶にありません」「記録はありません」で説明する気なのかね。 A氏:「社説」は 支持勢力が都議会で圧倒的多数を占め、怖いものなしの状態になっているのだろうが、議会は乗り切れても、市場関係者、そして都民の納得がなければ、市場運営はどこかで行き詰まるという。 状況によっては五輪の準備にも支障が出るだろうという。 すみやかに姿勢を改めるよう、小池知事に求めると要請している。 私:小池都知事がこの「社説」の意見にどのように対応するかみたいものだ。 その対応次第では都政改革は期待外れに終わり、豊洲・築地問題やさらには五輪準備問題に火がつくかもしれない。 そして、かって民主党が人気で政権をとった後て運営で失敗し、壊滅状態に陥った前例を踏襲しかねないね。 知事をサポートする優秀な実務スタッフがいないのだろうか。 「社説」はその点にもふれてほしかったね。
2017.09.05
コメント(0)
私:中根千枝氏は、日本は「タテ社会」だという説で有名になり、著書『タテ社会の人間関係』(講談社現代新書)がある。 出版後、50年を迎えたというが、若い時、自分の身の回りを見ながら、納得してよく読んだのを思い出すね。 今も読み継がれ、117万部に達するベストセラーだという。 この新聞のコラム「語る 人生の贈りもの」は連載で、とりあげたその人の今までの人生を語るもので、今回は中根千枝氏をとりあげ、今日がその初回。 インタビュー形式で載せている。 A氏:このブログでは「『タテ社会』揺るがぬ50年・読み継がれる日本論」で詳しくとりあげているね。 私:中根氏によると、40歳のときの本だけど、それなりに長い前史があり、子どものころ北京に住み、大人になって、日本各地の農村を訪ねて調査し、一人でインドに長期滞在し、現地社会の構造を調べ、英国やイタリア、米国で学んだことなど。 東大の助教授のとき、雑誌「中央公論」の編集者が来て「なんでもいいから書いてくれ」と言ったとき、日本の組織や集団の特徴はタテの原理だ――そんな見立てが頭に浮かんできたという。 A氏:「タテの原理」の典型は先輩・後輩の関係で、会社みたいな「場」が重視され、そこに入った時期を基準にした序列が強く働く。 対照的にインドや英国では記者とかエンジニアとかいった職種、つまり「資格」が重視されていて、資格をベースに関係が「ヨコ」につながる。 私:雑誌「中央公論」に載った論考は、加筆され新書や英語版になる。 中根氏は、米シカゴ大の知人に「君が女性だから書けた。どっぷり社会につかっている男性には書けまい」と言われたという。 外国での経験もあり、外からの視点を持っていたことが、日本を発見する基盤になったのかもしれないという。 「タテ社会」はまだ、根深く日本の社会に根づいていて、この体質が、今、問題になっている「同一労働・同一賃金」というヨコの横断的な「職種」や「資格」の明確化を阻んでいるね。 ITや人工知能の急速な進化や「働き方改革」で今の若い人が社会の中心になって活躍する頃、「タテ社会」は変わるのか、それとも変わらないのか、改革の成果も問われるね。
2017.09.04
コメント(0)
私:北海道庁は土地売買の事前届け出を義務づけ、登記簿上の土地所有者4千人余に通知したが、その45%が宛先不明で戻ってくる。 こうした土地の「所有者不明化」問題はいまや全国に広がり、面積にして九州を上回るという。 背後には、土地の相続登記が任意だという事情があり、登記手続きは煩雑で、費用もかかり、しかも、登記しなくても不都合はないという。 これでは、放置され、世代交代が進めば法定相続人がねずみ算的に増え、所有者の関心は低下し、自分の森林の場所や境界すら分からなくなる。 A氏:これは今、林業の現場でも大問題となっている。 荒れた森林に手を入れたくとも、所有者が不明で手が付けられない。 また、震災復興事業をはじめ全国で様々な事業が、土地の権利関係の確定に膨大な時間と労力を要するため、遅れたり暗礁に乗り上げたりしている。 まずは所有者の確定を、次に、基盤となる土地情報システムの整備が急務、と著者は強調する。 私:根底には、人口減少で土地需要が縮小し、大都市圏を除いて、もはや地価が上がらないという構造要因があり、土地は有利な資産ではなくなり、登記の必要性は低下。 にもかかわらず、所有者不明で有効活用できない土地・不動産は、今後さらに拡大する見込み。 A氏:俺も十数年ほど前に風光明媚な田舎に空き地を買ったが、どんどん値段が下がり、今は買い手がつかず、安いとは言え固定資産税を払ったり、除草費用がかかったりなどで、マイナス資産だよ。 登記などせず、放置すればよかったのかね。 私:所有者不明となれば、農林業の集約化や空き家活用によるまちづくりなどが、所有権の壁にぶつかって進まなくなる。 本書は「強すぎる所有権」ゆえ、土地・不動産の有効利用が進まない実態を浮かび上がらせた。 これは究極的に、「所有権と利用権の分離」というラディカルな思考にもつながっていく重要な問題提起だと評者は指摘する。 A氏:俺は空き地の所有権も放棄し、自治体に寄付でもしたいね。 もっとも、寄付された自治体も使いみちがなければ、負担増だね。 私:高度成長時には土地神話があったが、今は、地方の人口減少で崩壊しているね。 特に地方がそうだね。 それが山林まで及ぶと、治水まで影響し、災害に弱い国土になるね。 少子化に対応した根本的な土地、山林対策が必要だね。
2017.09.03
コメント(0)
私:保守の論客・佐伯教授の今月の「異論のススメ」欄のテーマはずばり、保守の「文化」とそれに対立する「文明」の没落論だね。 100年前に書かれたオスヴァルト・シュペングラーによる「西洋の没落」を最初にふれているね。 この本は19世紀には、高々と歴史の進歩を掲げ、世界をわがものにしようとしていたヨーロッパは、その内部抗争と破壊によっていまや「没落」の運命にあると指摘しているという。 A氏:ヨーロッパという独特の文化が作り出した「近代文明」は、その発展の極致で、抽象的で普遍的なものへと変化し、世界的なものへ膨張するが、それはまた、ヨーロッパの没落を意味している、というわけだ。 私:ヨーロッパは、合理的な科学や産業技術、自由や平等の政治制度、競争的な市場経済、金融のメカニズムなどの「近代社会」を生み出し、アメリカへ移植されて、普遍化され、世界へと拡張された。 今日、アメリカ主導によって世界化しているが、それをグローバリズムや情報技術革命などとよんで、地球を覆いつくす「現代文明」だと考えられる。 A氏:シュペングラー考えによると、まさしくこの「現代文明」の世界化こそが、「文明」の没落を準備するという。 なぜなら、抽象的で普遍的な世界化された「文明」は、われわれの生活や精神に密着した「文化」と対立するからだ、という。 ここで「文化」が出てくるね。 私:「文化」とは、われわれの日常的な生な、親しい知人との交流や慣れ親しんだ風景やそれと結びついた日常的なものと切り離せないし、そこには、緩やかな形の宗教的精神やある場所に対する愛郷心や土地に根差したものの信頼もあり、それらの「文化」とともに、われわれは人格形成も行う。 慣れ親しんだ風景や人間関係は安定した世界をもたらし、そのなかから時間をかけてその場所を刻印された「文化」も育ってゆく。 これが「保守思想」の原点だろうね。 A氏:しかし、「文明」の発展で情報ネットワークも、グローバル市場の競争原理も、合理的な科学や技術も、世界につながった金融も、われわれにとっては、「外部」から押し寄せてきて、われわれの「生の」と切り離せない「文化」を破壊するものと思われるだろうと佐伯教授はいう。 「文明」の普遍化が、「文化」の衰退を招き、それはまた、「文化」がもたらす創造的な精神の衰退にもなるだろうという。 A氏:シュペングラーは、世界都市、数字(統計、計量されたもの)、貨幣(金融)、技術こそが「現代文明」を象徴しているというが、それは「文明」であるが「文化」ではない。 確かに今日、「現代文明」を象徴するこの四者は密接に結びついている。 私:数字で示された経済成長を追求するために、政府は技術革新を支援し、経営は徹底した効率主義のもとにあるが、これは、「現代人」の典型的な思考形式になっているといってよいだろうと教授はいう。 シュペングラーは、「文明」とは、伝統や人格が意味を失い、すべてを貨幣に換算しなければ意味をもたない「文化段階」をいい、そして、デモクラシーとは、貨幣と政治権力との結合の完成であるという。 シュペングラーは、アメリカを念頭におきつつ、成熟したデモクラシーにおいて、「成り上がり者」の政治は、大都市の投機的事業のもっとも汚らしい部分と結びつくという。 教授は今のアメリカをみて、何とも予言的というほかないであろうという。 しかし、トランプ大統領のアメリカファーストは「保護主義」「移民反対」など、「現代文明」を破壊する要素もあるのはないかね。
2017.09.02
コメント(0)
私:今上天皇の退位での特例法によれば、天皇陛下は2017~20年に退位し、「上皇」となる。 そこで、このシリーズの3回目は、日本史上での「上皇」をとりあげている。 A氏:死去によらない退位は119代の光格天皇以来、約200年ぶり。 生きて退位した天皇(「上皇」)と現職の天皇との関係で、日本史上、有名なのは「院政」だね。 「院政」とは、自らの退位に伴い、直系の子や孫を跡継ぎとした「上皇」が天皇に代わって政治を行うことで、「あの企業は前の社長が院政を敷いている」といった比喩として今でも使われ、東芝がそういわれる。 安倍首相も健全な企業成長の障害となるとして批判的で、良い意味には使われていないね。 私:立命館大の美川圭教授(日本中世史)によると、初めて院政を行ったのは71代の後三条天皇だが、本格的になったのは72代の白河天皇の時。 白河天皇には輔仁親王という20歳離れた異母弟がいたが、自分の子の善仁親王を皇位に就けたかったため、1086年に退位し、8歳だった善仁親王を堀河天皇として即位させ、続いて1107年には孫の鳥羽天皇を、23年にはひ孫の崇徳天皇を即位させ、3人の天皇の「上皇」となり、43年も権勢を誇った。 さらに、平安後期に白河、鳥羽、後白河と続いた3人の「上皇」が行った「院政」の期間は90年以上に及ぶ。 A氏:「院政」の特色の一つは、次の天皇を誰にするかという「天皇の任命権」を「院(上皇)」が完全に掌握していたことで、摂関期には、天皇の外戚の藤原氏が牛耳っていたが、白河上皇はそれを奪回し、自らの直系の子孫に天皇の位を継がせた。 私:このような院の力の源泉は、皇学館大学の岡野友彦教授(日本中世史)は「前任者としての漠然とした影響力などでなく、『院領荘園』という財源を握っていたことに尽きる」と指摘。 岡野氏によると、古代以来続いてきた律令的な国家体制が10世紀に破綻した結果、天皇家や将軍家をはじめとする中世の政治権力は、いずれも自らの私有地である荘園や知行国などからの収入をもとに、自家運営や政治を行わざるを得なくなっていた。 「しかし、天皇家の場合、律令国家は建前としては残っており、公地公民制に基づき、すべての国土と国民を所有しているはずの天皇がその一部にしろ、改めて私的な領地所有をするといったことはあり得なかったから、天皇その人が「天皇家領荘園」の領主になることが難しい事情があった。 A氏:そこで、このため、天皇家の権威を頼って各地から寄進される荘園は、天皇家が建立した寺院の荘園となったり、内親王を領主とする「女院領」となったり、さらには天皇譲位後の財産の「後院領」にならざるを得なかった。 私:岡野氏は、「荘園を確実に領有するためにも天皇は一刻も早く『上皇』という自由な立場に立つ必要があり、それで『院政』が誕生した」という。 院領荘園の主となり、天皇家を含む「院宮家」の家長的立場にあった「上皇」や「法皇」(仏門に入った「上皇」)は「治天の君」と呼ばれる。 岡野氏は「生前退位した天皇は数十人にのぼるが、このうち『院政』を行ったのは半数にも満たないのは、『院政』を行ったのは、院領荘園の領主である『治天の君』だけであり、財源を握られている以上、天皇といえどもそれに逆らうことはできなかった」という。 A氏:白河院から15世紀の後花園院まで、「院政」はその後も中世だけで400年近く続いたが、岡野氏は「その理由は、個人的資質に基づく専制志向というより、荘園領主としての『上皇』という存在が、新たに求められた結果ではないか」という。 やはり権力にはカネがからむね。 私:「旧皇室典範」は政治的に利用されることなどを恐れ、生前退位を禁じたが、あれから約130年。 日本人の平均寿命も飛躍的に伸びるなど、取り巻く環境も変わり、今や退位を巡っても、陛下の健康問題など、新たな形の定着を考えるようになっているね。 それにしても天皇の歴史はいろいろ運用の紆余曲折があり、一直線ではないね。
2017.09.01
コメント(0)
私:女性天皇を認めるべきかというのは、天皇制の一つの問題だね。 このシリーズの2回目は女性天皇問題をとりあげている。 「皇室典範」では、皇位継承は原則として男系の男子に限られており、過去に即位した女性天皇はいずれも皇位継承に不都合が生じた場合の「中継ぎ」に過ぎないという考え方。 日本の歴史上ではどうなのか。 専修大学の荒木敏夫・名誉教授(日本古代史)によると、日本史上即位した女性の天皇は、重祚(退位したのち、再び即位すること)も含めて、8人10代。 近世の明正天皇と後桜町天皇を除き、いずれも古代に活躍。 古代の王位継承に際し、時に『中継ぎ』的な性格が付与されたこと自体は否定できないが、それは男女を問わずであり、性差を前提にして『女性だから中継ぎ』とする一部の議論には問題があると主張する。 A氏:女性天皇は、「中継ぎ」的性格という見方の否定だね。 実際、古代の女性天皇には「実力者」が多く、帝京大学の義江明子・名誉教授(古代史・女性史)は、夫の天武天皇の跡を継いで天皇となった41代の持統天皇について、天武の息子の1人である大津皇子を倒すなど、激烈な後継者争いを勝ち抜いて即位していることから、壬申の乱で王権を奪取した天武と同様にまぎれもなく正当な王者だったという。 私:当時は大后(正妻)だったからといって夫の跡を継いで天皇になれるわけではなく、その地位は自身の血統(持統は38代の天智天皇の娘)と、協力氏族の政治力で決まるものだった。 A氏:日本史上初の「女帝」となった33代推古天皇の評価も変わりつつあり、推古天皇の治世は外交も含め、蘇我氏や「聖徳太子」が取り仕切っていたと考えられてきたが、推古天皇が外交儀礼の中心にあったことがわかってきたと荒木氏はいう。 さらに荒木氏は「推古天皇の即位については従来の解釈を見直す必要がある。推古は29代の欽明天皇の娘でもあり、その血統に加えて、大王にふさわしい人格資質が評価されて即位に至ったのだろう」という。 私:また、荒木氏は、古代の女性天皇は、6世紀末から8世紀後半の約200年に集中し、この時代は朝鮮半島の新羅や中国の唐でも女帝が即位しており、アジアは女帝の時代で もあったという。 A氏:女性天皇は48代の称徳天皇を最後に、約860年のちの江戸時代まで途絶えたが、その理由は、荒木氏は「律令国家の樹立後、継承に中国由来の父系原理と男性優位が浸透したため」とし、「女帝即位の可能性は残されていたが、その後は排除されるようになってしまった」という。 しかし、中国では清王朝末期にはまだ西太后が権力を握っていたね。 私:ジャーナリストの中野正志氏は、著書『女性天皇論』で、父子での継承は44例と全体の半数に満たないことを指摘。 これは、考古学者や古代史研究者の多くが考えるように、6世紀までの社会は現在、一般にイメージされているような男系(父系)オンリーではなく、女系(母系)も並列する「双系社会」だったからだという。 さらに古代は「母系社会」だね。 A氏:荒木氏は、「明治時代に成立した旧皇室典範は、それまで成文化されていなかった皇位継承原理を『男系の男子』と限定したことで、皇位継承のフレキシビリティーを喪失させてしまった」という。 私:まさに、皇位の安定的継承のため、「女性宮家」問題同様、柔軟な議論が求められているね。
2017.08.31
コメント(0)
私:今上天皇の退位問題から天皇制への関心がたかくなったのか、文化・文芸欄で「歴史の中の天皇制」シリーズを載せている。 28日は初回で、万世一系の天皇についてふれている。 A氏:国立歴史民俗博物館の仁藤敦史教授(日本古代史)は「6世紀以前の王位はむしろ、実力・能力主義で決められていたのでは」と考えているという。 中国の歴史書に出てくる、5世紀の日本列島を治めたとされる讃、珍、済、興、武の5人の王・「倭の国王」は、自ら甲冑を身につけ、山河を駆け巡って東西を平らげた――などと中国の皇帝あての文書に記したことで知られる。 私:済は19代の允恭天皇、興は20代の安康天皇、武は21代の雄略天皇とする説が有力。 仁藤氏は、「天皇は元々、自然神などを祭る祭祀を司ることで特別な存在となっていくが、5世紀になると、軍事や外交などの実務に秀でていなければ務まらなくなる。 そんな状況下では、親から子への世襲より、広い意味での血縁・婚姻関係の中で優れた能力を持った人物が王位に就いていた可能性が高い」という。 にもかかわらず、日本書紀などで天皇がすべて世襲であるように記されたのは、それらが編纂された8世紀に、中国から、男系での皇位世襲を重視する思想が入ってきていたからで、「それに従う形で歴史が改変された結果」とみる。 A氏:しかし、これには反論があり、堺女子短期大学の水谷千秋教授(日本古代史)は「少なくとも5世紀頃からは、基本的に古事記や日本書紀の記述は信用できる」との立場。 私:ここで問題になるのが、26代の継体天皇で、書紀などによると、25代の武烈天皇が506年に後継ぎを決めずに死去したため、15代の応神天皇から5代離れた男大迹王が越前(今の福井)から迎えられ、王位に就いたという。 A氏:日本では、血筋以外の人物が王位に就く危機は、水谷氏は「古代で可能性が極めて高かった」と考えるのが、35代皇極天皇に仕えた蘇我入鹿と、46代孝謙天皇(48代称徳天皇)に重用された僧・道鏡だという。 私:「入鹿は皇位継承さえ左右した権力者であり、自らも政治の表に出ようとする傾向があり、乙巳の変で暗殺されなかったら、将来的には天皇の位に就いていたのではないか」という。 A氏:日本のラスプーチンと言われる道鏡は、「孝謙天皇は疫病や相次ぐ天災を自らに徳がないのが原因と憂え、その救いを仏教に求めた父の聖武天皇(45代)の影響を強く受けていた。 僧である道鏡に国を委ねることで『天命』を更新し、仏教によって国を立て直していこうとした可能性が高い」と推測。 私:一方、仁藤氏は「日本では藤原氏なども基本的に王位を奪うのではなく『第一の臣下』のポジションを志向してきた」とし、「天皇がすべてのセンターで他の貴族の貴種性もすべて天皇家に依拠している。このため、取って代わるという事が起きにくかった」という。 歴史をひもとくと、天皇家の権威の源は元々、「祭祀」にあり、それを司ってきたからこそ、人々の尊敬を集め、血筋が続いてきたことがわかるという。 天皇陛下が私事として行っている「宮中祭祀」もその伝統を引き継いでいるといえるだろうという。 三島由紀夫が日本は「祭祀国家」だというのもそこからきているのかね。 これが万世一系の天皇であることを示しているのかもしれない。「宮中祭祀」がポイントだね。 A氏:「宮中祭祀」については、この知的街道のブログの高谷朝子著「宮中賢所物語」、「昭和天皇」原武史著、「天皇家に何が起きている・総力特集」、「神々の乱心・上下」松本清張著が参考になるだろう。 私:このうち、特に「昭和天皇」原武史著の5の2、5の4、5の5に戦前戦後の「宮中祭祀」の変化が詳しくまとめられている。 歴史的には、紆余曲折があったが、万世一系の天皇は、特に学問的にも問題ないようだ。
2017.08.30
コメント(0)
私:この欄では「鉄腕アトム」についてもふれていたが、俺は後半の「ゴジラ」と「シン・ゴジラ」の昭和と平成の時代変化を反映した記事があり興味をもったね。 A氏:1954年に封切られた「ゴジラ」は冷戦の申し子。 放射能怪獣が日本を襲う物語は観客961万人を動員、作品はシリーズ化された。 「シン・ゴジラ」の監督は庵野秀明氏で、2016年夏に公開され、シリーズで51年ぶりに500万人を超すヒット。 私:「さようなら、ゴジラたち」の著書がある文芸評論家の加藤典洋氏は、「庵野作品の特徴は、現代を舞台に物語を一から作り直した点にある」と分析し、連作の流れをあえて無視したことで、昭和と平成の相違と類似、双方が浮き彫りにされたという。 戦争体験が生々しい時期だった第1作は、焼け出された人や負傷者の描写が迫真的。 作中、逃げる人々は「せっかく長崎の原爆で命拾いしたのに」「また疎開か」と口にする。 A氏:一方、東日本大震災と福島第一原発の事故から5年後に封切られた「シン・ゴジラ」には、死体やけが人は登場しない。 災害報道でメディアが遺体の映像を禁忌としているのを、なぞるような扱いが特徴。 私:加藤氏は、「そして、この作品には生活感が極めて希薄だ」と指摘する。 登場人物に家庭生活や恋愛が付随しない、いわば「人口増加率ゼロ」の世界が抑揚のない早口で淡々と語り進められ、人々の頭と体と心がバラバラに分断された平成の社会を強烈に暗喩していると、加藤氏は読み解く。 A氏:だが、共通点もあり、2作品ともゴジラは銀座の繁華街や国会議事堂を破壊する一方、皇居は襲わない。 私:「東北学」を提唱する民俗学者の赤坂憲雄氏は、「昭和から変わっていない日本社会のある部分を、シン・ゴジラは冷めた目で眺めている」という。 赤坂氏は共通点をもう一つ挙げ、「戦争を想起させ、安全保障につながる筋立てなのに、アジアが登場せず、日米関係に呪縛されていること。戦後日本の一貫した国際社会の立ち位置を、見事に反映している」という。 なるほど、そうかもね。 日米安保は強固なものになりつあるからね。 今日は、北朝鮮のミサイルが日本上空をとんだということで、北海道や東北にJアラートが鳴ったようだが、これは「シン・シン・ゴジラ」か。
2017.08.29
コメント(0)
私:このブログで、日銀の「異次元緩和」の知的街道ができたことをブログ「緩和策『副作用積み上がった』」で述べたが、今回の記事は、「異次元緩和」のカネの行方を追っている。 ここで出てくる「リート」というのは、不勉強ではじめて聞いたね。 A氏:上場不動産投資信託(Jリート)のことで、投資法人が投資家からお金を集めて、オフィスビルやホテル、マンション、物流センターなどの不動産を買い、テナント賃料などの収益を配分し、不動産の取得などは委託された運用会社が行うものだね。 2001年に初めて上場し、現在は上場の58の「リート」があり、時価総額は11兆円。 日銀は金融緩和の一環で、年900億円の規模で「リート」を買い増している。 お金をリートに流し、不動産市況を活性化させ、景気を刺激する狙い。 私:もともと、日銀の黒田総裁が始めた大規模な「異次元緩和」は、都心部の地価上昇には効果を上げている。 緩和による低金利で借り入れ負担は軽く、投資家や不動産業者は高値で物件を買っても賃料などで利益を出せ、投資マネーを集めるリートも活況で、こうして「不動産投資ブーム」が起きている。 A氏:昨年8月、「リート」の「いちごホテルリート投資法人」が約14億円であるビジネスホテルを取得。 付近の2017年分の路線価の約8倍だった物件。 東京五輪があるので資産の一つとして東京のホテルを探し、築年数が浅く(15年新築)、修繕費の計上もまだ先で、中長期にわたり、安定的な収益を確保できると判断したという。 私:取得価格が路線価を大きく上回るのは、物件は、賃料などの収益に応じて鑑定評価され、訪日客の増加でホテルの稼働率や宿泊料が上がって賃料収入が増え、鑑定価格を押し上げているためだ。 「外国人観光客はスマホでホテルを探すため、路線価に関係なく、移動に便利な駅に近いホテルに集まる」とホテル業界関係者は話す。 ホテルだけではなく、集客力が高く、賃料が取れる商業ビルも同様。 A氏:低金利下では、高利回りを求める投資マネーはリートに流れ込み、高収益が期待される物件はリートが高値でも買っている。 東北のある地方銀行では、「日銀が『リート』を買っているから、うちも買って大丈夫」という論理で、「『リート』購入を開始する行内の稟議を通した」といいい、「異次元緩和」が始まった2013年に買う銘柄を日銀の購入対象銘柄に限定することで「リート」を買い始めた。 私:08年のリーマン・ショックでいったん「リート」投資をやめた地銀は、13年の「異次元緩和」前後から投資を再開し、いまでは、ほぼすべての地銀が「リート」へ投資しており、「リート全体の時価総額のうち、実質的に2割ほどを地銀を中心とした金融機関が保有している。 A氏:いつまでこうした状況が続くのか。 将来、日銀の緩和縮小で「リート」の買い入れが減れば、「リート」相場は大幅に下落する可能性があり、この相場は日銀頼みという。 株と同じだね。 私:サラリーマンや地主が銀行からお金を借りてアパート経営に乗り出す例も増え、こうした「個人による貸家業(貸家を持つ個人)」向けの融資残高は22兆円超と過去最高水準。 不動産業全体の銀行貸出残高もバブル期を上回り、やはり過去最高水準だ。 A氏:だが「緩和マネー」に支えられた不動産市況は、「新バブル」を思わせる危うさがある。 リーマン・ショック後の不動産価格の急落で不動産会社を倒産させたある男性は、「今がピークなのか、果たして、これで終わりなのか、リーマン・ショックのようなものは10年単位で来る。先のことは誰にも読めない」という。 私:東京五輪まで後、3年。 その後が問題のようだね。
2017.08.28
コメント(0)
私:著者はジャーナリストで、元日経編集委員。 この書評で、東芝が消滅の危機に陥った原子力敗戦の実態がコンパクトに理解できるね 本書は、なぜ東芝が原発ビジネスの泥沼に引きずり込まれたかという点に、正面から迫っているという。 A氏:当初、東芝の問題とは粉飾決算のことだとされ、歴代三社長による「チャレンジ」なる用語に示される経営方針がその原因とされた。 私:ところが、これは実は、米国原子炉メーカーのウェスチングハウス社(WH)の経営危機を隠すための、巧妙な陽動作戦だった。 実は国際的には、すでに原発は儲からないビジネスとなっており、原発安全規制が強まり、そのコストがかさむ一方、シェールガスや再生可能エネルギーの価格低下が起き、原発は競争力を失った。 WHは、米国企業も英国企業も手を焼いて手放した代物だった。 A氏:それを東芝は、三菱重工と競って高値づかみした。 なぜ、そんな会社を東芝は子会社にする必要があったのか。 東芝を、「国策」としての原発輸出に引き込んだのは、経済産業省。 WH買収は、日本の原子力産業が海外飛躍する切り札のはずだったが、「国策」は不発に終わり、開けてみればWHは火の車だった。 私:その間、少なくとも二度(2009年と、11年の福島第一原発事故後)、軌道修正のチャンスがあったと著者は強調する。 だがそれも、「これは『国策』だ」の大声にかき消され、東芝が代わりに取り組んだのが、「原発の将来は明るい」との強弁と、損失をなかったことにする会計操作だったというわけだ。 A氏:会計操作のもとは、「チャレンジ」とともに、原子力も一因だったのか。 私:著者は、東芝が危機に陥った原因を、「サラリーマン全体主義」に見いだす。 「チャレンジ」という名の粉飾指示に、唯々諾々と従った一般社員たち。 「国策」と心中しつつも、その当否判断から逃げる幹部たち。 だが、判断を預けられた官僚たちも、惨憺たる結果に責任を取ることはない。 思考停止、無責任、同調主義、こんな「サラリーマン全体主義」から脱却できるか否かに、東芝再生の未来はかかっていると評者は指摘する。 私:東芝転落は、ある意味、「原子力神話」に踊らされた、第2の福島第一原発事故だね。 東芝は、1960年頃、一度、危機にあっていて、このブログの「東芝の再建策、崩壊 膨らむ損失、支援頼み」「『東芝の悲劇』再び」でもふれたが、今度の危機は再建の見通しは困難だね。 ついには、株上場不可能までが、危ぶまれている。
2017.08.27
コメント(0)
私:日銀の最高意思決定機関である政策委員会のメンバーは、任期は5年で、エコノミストや学者、企業経営者らの起用が多く、定員6人。 これに総裁と副総裁2人を加え、計9人の合議制で金融政策などを決める。 インタビューした木内登英氏は、審議委員を7月に任期満了で退き、野村総研エグゼクティブ・エコノミストとなった。 A氏:審議委員当時、14年以降の黒田総裁の国債の購入量増加などの3回にわたる金融緩和やマイナス金利策の導入、長期金利操作の導入にことごとく反対意見を主張してきているね。 このブログで「日銀緩和、2審議委員批判 『物価2%に固執』『市場の機能損ねる』」でとりあげた「2審議員」の1名が木内氏で、もう一人が佐藤健裕氏。 両氏は7月に退任し、異例の政策を続ける日銀内での「歯止め役」が、今後はいなくなりかねないという。 後任人事次第では、従来の路線に肯定的な委員ばかりがそろう可能性もあるという。 私:木内氏は、のインタビューで、4年超に及ぶ大規模緩和について「プラス効果が上回ったのは2014年までで、今は副作用だけが積み上がっている」と語り、金融政策の正常化を図るべきだと訴えた。 木内氏は最初、緩和開始には賛成したが、「物価上昇率2%」の目標は実現できないとの考えから、達成期限を「2年」と区切ることに異議を唱えた。 「緩和策が長期化したり緩和拡大を迫られたりするリスクがあった」と振り返る。 木村氏の懸念は的中し、日銀は追加緩和を繰り返したが、4年超が過ぎた今も目標達成は見通せないし、3年目の15年以降は「追加緩和の効果がほぼなくなった」とし、弊害だけが膨らんでいると懸念を示した。 A氏:具体的には、日銀が銀行などから買った国債などの資産が巨額になり、将来の金利上昇局面で日銀の財務が悪化する可能性や、上場投資信託(ETF)を買うことによる株式市場のゆがみなどを木内氏は挙げ、今の国債買い入れペースを続けると、「来年半ばにも日銀が国債を買えなくなる限界を迎える」と予測され、市場に出回る国債が極端に減り、金利が乱高下するなど「金融市場の大混乱を引き起こす恐れさえある」と警告した。 私:混乱回避のためには、「長期金利操作をやめ、国債買い入れ額を段階的に減らしていくべきだ」と提言。 今の日銀は「国民生活より物価を重視する物価目標至上主義に陥っている」とし、来春任期を終える黒田総裁の後任は「副作用を抑えるリスク管理が重要。緩和の『後始末』が仕事になる」と木内氏は語った。 A氏:このような意見は、このブログでも以下の「日銀知的街道」とりあげているね。 「中央銀行バブル 元日銀副総裁・山口泰氏インタビュー」、「公的マネー、東証1部の半数980社で大株主に・GPIF・日銀の『2頭のクジラ』株高演出、運用40兆円の巨大投資、ゆがむ株価」、「マイナス金利の功罪」加藤出氏、植田和男氏の論評・、「積極財政、首相に進言次々 米識者ら『19年10月・消費増税、さらに延期も』、「不動産は活況、偏る果実」、「しっかりしてよ、日銀」、「金融緩和手法、課題抱え修正 日銀、『量』より『金利』重視」、「日銀の金融政策変更 「市場に流す」でわかる?」など。 木内氏のような警告をしている意見が多いね。 来春任期を終える黒田総裁の後任には誰がなるだろうか。
2017.08.26
コメント(0)
私:今月は、池上氏は、スペインのテロ事件報道をとりあげ、主に読売、朝日の2紙のななめ読みだね。 こういう事件が起きると、スペイン特有の事情で起きたのか、ヨーロッパ各地で起きているテロ事件と関係があるのか、あるいは日本にまで影響してくるような事件なのか、と不安と疑問が募る。 そこで、池上氏は、新聞各紙の分析をななめ読みしている。 まず、読売は19日付朝刊の2面で解説を掲載しているが、移民・難民に紛れてイスラム過激派が入国し、大規模なテロを起こす危険性などが指摘されていたと、今回の事件が難民に紛れて入ってきた過激派の犯行だと断定しているかのような文章。 A氏:続く解説の文章ではイスラム国などに加わった外国人戦闘員のうち、欧州出身者が約2500人に上るが、戦闘員がそれぞれの母国に戻り、テロを起こす事態を懸念していたが、スペインもこうした危険と無縁ではないという一般論になっていると池上氏は指摘する。 私:そして、スペインに社会の不満や反感が渦巻く状況があり、テロリストが潜伏する余地があったとの「見方」も浮上しているとあるのを池上氏は、治安悪化の一般論も登場し、「社会の不満や反感が渦巻く状況」があると、なぜ「テロリストが潜伏する余地」があるのか、しかも、そういう「見方」をしているのは、誰なのかが明らかでないと指摘している。 1面にはモロッコ国籍の男3人とスペイン国籍の男1人が拘束されたという記事があるのに、この解説記事にはモロッコが登場せず、結局、解説は一般論を並べただけだという。 A氏:これに対して、同日朝刊の朝日の解説記事は、具体的に「爆発に関与したとして拘束された男は、モロッコに隣接したスペインの飛び地メリリャ出身だという」とあり、さらに続いて「モロッコに隣接するスペイン領メリリャでは近年、ISへの勧誘活動をしていたグループが摘発されている」とあり、ここまで読んで、ようやくスペインとモロッコの関係が見えてきたが、だらだらと書かず、これらの文章をまとめた解説記事にしないのか、不満が募ると池上氏は、厳しい。 私:同日朝刊の毎日は、ヨーロッパで自動車を使ったテロが相次いでいることを解説しているが、スペインとモロッコの関係については触れておらず、やはり不満だという。 読売は、翌20日付朝刊で、7面に大きくモロッコとスペインの関係についての解説記事がようやく掲載。 モロッコにスペイン領の飛び地がセウタとメリリャの2か所あるという説明だが、 なぜ飛び地があるのかまでの解説はなかった。 解説記事にはないが、ネット情報によりとやはり、飛び地はスペインと後で独立したモロッコとの間の領土問題でもめ外交問題になっているようだ。 読売、朝日とも説明記事は十分とはいえないね。
2017.08.25
コメント(0)
私:今年6月、国連人権理事会で日本の「表現の自由」について報告書を発表したデービット・ケイ氏(米カリフォルニア大教授)は日本政府の報道関係者への圧力を懸念する一方、日本メディアの政府からの独立性について問題点を指摘した。 報告書はケイ氏が昨年4月に来日し、政府関係者や報道関係者らを聞き取りを行ったことに基づいている。 A氏:報告書では政府・自民党による放送メディアへの圧力、記者クラブの排他性を指摘しているという。 また、政府の歴史教育のへの介入や特定秘密保護法についても強い懸念を示したという。 私:これに対して、日本政府は反論しているね。 しかし、森友学園、加計学園問題などで、「書類がない」「記憶にない」などを平気でいう説明責任の欠如している政府、官僚を持つ日本ではメディアの環境は厳しいね。 同時にそれは国民の「知る権利」が侵害されている実態となっている。 A氏:安倍首相は反省して「国民に丁寧に説明する」というが依然として、具体的な動きが見えないね。 私:22日の朝日新聞は、ケイ氏の報告書に関連して、日本の「報道の自由」をテーマにした編著もあるジェフ・キングストン米テンプル大日本校教授(現代アジア史)にインタビューした記事を掲載している。 まず、キングストン氏は、ケイ氏の報告書を高く評価している。 A氏:ケイ氏が驚いたのは調査した日本記者たちが「匿名」を希望したことで、政府はメディアを萎縮する力を持っているので、自分が属する組織の上層部に、そしてその上層部に圧力がかかるのを恐れているからで、日本メディアの最大の問題は報道を自主規制してしまうことだと、キングストン氏は指摘する。 私:ケイ氏は、記者クラブは、非主流メディアを締め出し、当局への特権的なアクセスを確保できると指摘し、この「アクセスジャーナリズム」の体質は「ウオッチドッグ(番犬)」ジャーナリズムでなく、「ラップドッグ(愛玩犬)」ジャーナリズムをもたらしているという。 メディア幹部も安倍首相とゴルフをしたり、食事をしたがったりしているように見え、権力と対峙する覚悟がみえないとキングストン氏は指摘する。 これは安倍首相から見れば、メデイア操縦のテクニックの一つだね。 A氏:米国では、今、メディア不信が高まっているが、トランプ大統領の攻撃に対し、メディア側はファイティングポーズをとっているという。 私:キングストン氏はメデイアの真の責任とは、政府が知らせたくないニュースを人々に知らせることだという。 「国民の知る権利」が脅かされれば、健全な民主主義社会の基盤は揺らぐ。 日本のメデイアにとって必要なのは「ラップドッグ」でなく、「ウオッチドッグ」としての役割を果たすというジャーナリズムの原理原則を貫くことだとキングストン氏はいう。 しかし「説明責任」を自覚しない政府や官僚の「書類なし」「記憶なし」の壁に挑まなければならない日本のジャーナリズムは、厳しい環境にあるね。 森友学園の国有地売却、加計学園の認可は、まさにその試金石だね。 この問題の「説明責任」についてはこのブログの「説明責任はどこへ」で詳しくふれている。 ケイ氏の報告を政府は否定したが、その報告後に発生した森友、加計問題は、まさにケイ氏の報告が予言になったね。 日本の民主主義は未成熟なのかね。 それとも一強多弱の政治環境のせいか。 一強多弱になると崩れるほど未成熟だったということか。
2017.08.24
コメント(0)
私:22日、河野太郎新外相が、報道各社のインタビューに応じた。 考えてみれば、ロシアとの北方領土問題については、祖父、父親とそして自分と3代からんでいるんだね。 A氏:祖父の河野一郎氏は、旧ソ連との国交を回復した1956年の日ソ共同宣言をめぐる交渉の当事者の一人で、フルシチョフ共産党第1書記と激しいやりとりの末、宣言をまとめたが、宣言に四島返還につながる文言を入れることをソ連側が拒否。 私:その後、父洋平氏も外相として尽力したが、北方領土問題解決の道筋をつけることはできなかった。 河野太郎新外相はこうした経緯をふまえ、インタビューで、北方領土問題について「ずっと日ロ間の宿題で、4島の帰属を解決して平和条約を結ぶというのを3代目まで残してしまっている」と指摘。 日ロ双方が柔軟な考え方をもち、「既存のアプローチでないやり方を含めて考えていかないといけない」と語り、早期にモスクワを訪問することに意欲を示した。 A氏:しかし、このブログの「世界揺さぶるロシアの論理 武器は情報、プーチン流外交」でもふれたが、北方領土問題は日本が望むような解決は当面困難で、ロシアから見れば、米国の強固な同盟国である日本に領土を引き渡すことは、アジア太平洋地域での米国の影響力強化を助けるようなものだからだ。 冷徹な現実を踏まえた議論が不可欠だね。 私:河野太郎新外相にとっては、最大の難問だね。 ところで緊迫している北朝鮮問題については、河野氏は、国連安保理事会の制裁決議を各国がしっかり履行することが重要だと強調し、「人、物、カネの流れをしっかり監視し、抜け道をつくらせないことが大事だ」と述べたが、これは、常識的な説明だね。 A氏:北朝鮮と米国のやりとりでは厳しい緊張関係で情報が混乱しているね。 こないだ、日韓合同演習で米軍が参加人員を4千名ほど減らしたことをNHKの解説者が米軍の譲歩だといっていたが、これは、逆で、地上兵力を減らし、情報兵力を強化したためのもので、戦闘能力の強化のあらわれだと専門家は言っていたね。 私:河野氏は、中国、韓国との関係については、外相同士の往来などを通じ、改善を進める考えも示し、中東問題では「日本は宗教的にもきわめてニュートラル(中立的)」として、和平に向けて積極的に関与する意欲を示した。 韓国問題は、父親の河野洋平氏の「河野談話」問題もあるが、今度は「徴用工」の問題がでてきて、親子2代の韓国外交問題だね。 A氏:河野氏はまた、米トランプ政権が離脱を表明したTPPについて、「内向き、保護主義的になっているところでどう自由貿易の旗を降ろさずに頑張れるかも大事だ」と語った。 これから、自動車、農産物などの日米の貿易問題が登場するだろう。 私:米中韓ロと、トランプ現象が世界を巻き込み大きく変わるとき、外交問題は、非常に難しくなるね。 3代続いた外交努力の最後を飾って貰いたいね
2017.08.23
コメント(0)
私:フェイクニュースは否定されても復活する例をいくつかあげている。 昨年7月、「ウィキリークス」が民主党の選挙戦の内幕を暴露する内部メール2万通を公開、党全国委員長が辞任に追い込まれた。 米情報機関はメール流出をロシア政府による大統領選介入のためのサイバー攻撃と認定した。 ところが、その2週間前、民主党職員セス・リッチ氏がワシントンの路上で射殺されたのがフェイクニュースのネタになった。 警察は射殺事件を強盗とみていたが、ネットでは「メールを流出させたのはリッチ氏。報復で民主党関係者に殺された」とのフェイクニュースが流布。 ファクトチェックで否定され下火になった。 A氏:ところが、今年5月に再び注目され、訴訟に持ち込まれる騒動となった。 それは、米FOXニュースが「殺害された民主党職員、ウィキリークスと接触」とネット配信したことが発端で、遺族らの抗議で、記事は1週間で削除された。 記事で両者のつながりを証言した同局コメンテーターが今月、「証言はFOXに捏造された」と提訴した。 私:フェイクが、フェイクを呼ぶだね。 このコメンテーターはその訴状で、トランプ政権とパイプを持つ資産家に雇われ、「ロシア疑惑」への注目をそらす工作に加担させられたと主張。 大統領が配信前の原稿を読み、「すぐ配信してほしい」と言っている、と資産家が伝えてきた、とも指摘する。 FOXとホワイトハウスは否定、裁判で争われる。 A氏:こうなると、「殺害された民主党職員」をめぐり、何が本当で、何がフェイクかわからなくなるね。 私:大統領選で最も拡散したフェイクニュースである、「ローマ法王、トランプ氏を支持」も、ファクトチェックで否定されても、なお氾濫し続けたという。 「クリントン氏が児童虐待組織に関与」とする陰謀論「ピザゲート」は、否定された後に、これを信じた男性による発砲事件が起きているのは有名な事件だね。 フェイクニュースの復活は、ファクトチェックだけでは、その根は断てないことを示しているようで、そこには、さらに何か別な要因が働いているようだね。
2017.08.22
コメント(0)
私:北朝鮮による7月4日と28日のミサイル発射について、ロシアは2発とも高度、飛距離共に1千キロに遠く及ばない「中距離ミサイル」だったという。 A氏:北朝鮮が「大陸間弾道ミサイル(ICBM)を成功させた」と誇らしげに発表し、日米韓も同様の分析をしたにもかかわらず、ロシアだけ違う。 北朝鮮はこれに強く反発し、朝鮮中央通信は8月10日、「国際社会でロシアだけが事実に目と耳を塞いでいる」という論評を発表。 私:駒木明義氏は、おそらくロシアは「北朝鮮は米国が引いたレッドライン(超えてはいけない一線)を超えていない。米国の武力行使は認められない」と主張したいのだろうという。 それが、関係国外交官らの受け止めだという。 ロシアにとって、情報の価値は真偽にはなく、自国の立場を有利にするための武器に使えるかどうかで、そう思わせる例は、枚挙にいとまがないという。 A氏:KGB出身のプーチン大統領は ロシア対外情報庁(SVR)の95周年式典で、名前や国籍を偽って外国で活動する「イリーガル」と呼ばれる非合法スパイが集める情報を日常的に得ていることを公言。 「非合法諜報のような強力な特務機関を持つ国は少ない」と胸を張った。 私:多くの国がスパイ活動を行っていることは公然の秘密かもしれないが、非合法活動を誇らしげに宣言する国はまれだ。 浮き彫りになったのは、「国家のための非合法活動」を公然と奨励、称賛する政権の体質。ロシアをめぐっては、ドーピング疑惑や、昨年の米大統領選でトランプ氏の当選を目指して介入した疑惑などが次々に浮上。 プーチン氏は国ぐるみの関与を強く否定しているが、真偽はともかく、説得力には欠けると言わざるを得ないと駒木明義氏はいう。 A氏:そもそもロシアは、北朝鮮よりも米国の方が自国への深刻な脅威だと考えており、プーチン氏は北朝鮮の核開発に反対しつつも、「米国から身を守る」という動機には理解を示している。 私:核戦力で米国の向こうを張るロシアだが、2016年の国内総生産(GDP)は世界12位(世界銀行の統計)。中国の約9分の1で、韓国を下回る。 ラブロフ外相は「米中がロシアに対抗するのも、中ロが米国に対抗するのも建設的ではない」と語り、米国がロシアを置き去りにして中国との関係を深める事態を恐れ、3国の関係をバランス良く保ちたいのが本音だろうと駒木明義氏は指摘する。 A氏:ロシアでは来年3月18日、大統領選が行われ、プーチン氏の立候補と当選を疑う者はほぼ皆無。 大統領の任期は、前回大統領選から6年に延長されたので、00年に大統領に就任したプーチン氏は、大統領の座をメドベージェフ氏に譲って首相として政権を率いた4年間も含め、24年もの長期政権を手にする。 私:北方領土問題は日本が望むような解決は当面困難で、ロシアから見れば、米国の強固な同盟国である日本に領土を引き渡すことは、アジア太平洋地域での米国の影響力強化を助けるようなものだからだ。 今後、隣国ロシアとの関係をどう築いていくかを考えるとき、冷徹な現実を踏まえた議論が不可欠だと駒木明義氏は指摘する。 北方領土問題は、沖縄返還のようにはいかないね。 むしろ、沖縄返還のほうが、稀有なことだったのかもしれない。
2017.08.21
コメント(0)
私:著者は、一橋大学院教授(日本近世史・村落史)。 ところで、江戸時代の人口の約8割は百姓だが、多くの日本人の先祖が、武士に隷属するだけの物言わぬ民ではなく、したたかに生きてきたことが本書で分かるという。 現代も土線を地の境界めぐるトラブルは絶えないが、本書によると、江戸時代の山野の利用・所有権は村にとって死活問題。 百姓たちは肥料、建築資材、燃料、食料を山野から得ており、その価値は現代と比較にならないほど大きい。 その山野の境界をめぐって争った百姓たちの歴史を、江戸時代の裁判を中心に解説する本書は、人間ドラマの魅力に満ちていて、知略を尽くして闘う姿は「百姓」のイメージを一変させるという。 A氏:武士が裁く裁判では立ち会う弁護士がいないため、村役人らは訴状にもとづき自ら権利を主張するわけで、評定所で強硬に示談を迫る幕府役人に抗弁して入牢を命じられることもあっただろう。 私:そのため、将来に備えて村の子どもに寺子屋で訴訟関係文書を学ばせる。 地元で解決できない争いが江戸の幕府評定所に持ち込まれたら、多額の旅費などの負担に耐える。 このように、著者が全国各地の古文書を読み解いて紹介する山争いにかける百姓たちの意気込みには鬼気迫るものがあるという。 A氏:大名にとっても、他領の村との山争いによる山野の境界変更は領地の増減につながる重要問題だったから、百姓とタッグを組んだ武士が百姓に扮して裁判で主張することもあっただろう。 私:百姓とタッグを組んだ武士が百姓に扮して裁判で主張することもあり、裁判劇の興趣が尽きないという。 あの手、この手を考えて使うわけだ。 著者は、百姓たちが山争いによって確保した山野の自然と長い間共生してきたゆえ、「日本列島の約七割におよぶ森林」保護が成されたという。 本書の引用史料はすべて現代語訳だというが、これは読者には嬉しいね。 歴史書での古文書のそのままの引用は、読みやすさの障害になるからね。 江戸時代の正確な百姓像を知るには本書は役立つだろう。
2017.08.20
コメント(0)
私:山極寿一氏は、長い間、「細菌」は悪者扱いされ、「ばい菌」と言われて人間同士の差別やいじめにも使われてきたが、実は彼らの多くは人間と「共生」、人間の健康を保つ仲間なのだという。 地球は「細菌」の惑星とも言え、人よりずっと前に誕生し、あらゆる場所に生息していおり、彼らを排除するのではなく、共生することを心がけないと、人は滅びてしまうだろうという。 そのことをこの寄稿で知り、俺は改めて「細菌」の重要性を知ったよ。 A氏:テレビCMで、洗浄剤など殺菌効果99%と宣伝しているが、「細菌」は悪者扱いだね。 私:人の腸内には1千種類以上の「腸内細菌」が約500兆~1千兆個も存在し、重さは約1・5キログラムにものぼり、これらの「細菌」は病気を防ぐ働きをする。 抗生物質を用いて病気を治したはいいが、「共生細菌」を死滅させてしまい、かえって免疫能力が減退してしまうことがある。 かつて法定伝染病といわれた「細菌」による感染症はほぼ消滅し、かわりにアトピー性皮膚炎、花粉症、小麦アレルギー、1型糖尿病など、人の免疫系に関する病気や胃腸疾患が急増。 体の病気だけではなく、うつ病、強迫性障害などの心の病も蔓延しており、環境汚染や社会不安が増加したせいだと考えられてきたが、実は抗生物質や抗菌剤などの過度な使用により、「共生細菌」が減ったり、バランスを崩したりしたことも原因だという証拠が次々に発見されているという。 A氏:それで、こうした「21世紀病」は、20世紀の中盤に先進国で起こった薬剤による衛生環境の改善が、「腸内細菌」の量やバランスを大きく崩した結果だと言われるわけだ。 私:「腸内細菌」の遺伝子は約300万個以上もあり、人の遺伝子総数2万1千個の100倍以上。 人体はこれらの細菌の集合体で、人の遺伝子は「細菌」の遺伝子と協力しながら体を維持し、エネルギーの摂取や貯蔵を操作し、肥満や病気への抵抗性、脳の働きにも大きな影響を与える。 人の遺伝子と違い、単細胞生物である「細菌」の遺伝子は環境の変化に応じてめまぐるしく変化して問題に対処できるからこそ、人間は多様な環境で暮らせる。 その「共生関係」が崩れれば、人は健康状態を維持できなくなる。 同じ食事をとっているのに、同じ両親から生まれているのに、太り方に大きな差が出るのは、すべて「腸内細菌」の環境の変化に関係があるという。 A氏:面白いことに、腸内の細菌を復活させるには、健常人の糞から直接細菌を移すのが効果的だという。 ときどきゴリラは仲間の糞を食べるのは、そういう理由があったのだという。 私:山極寿一氏は、ゴリラが専門の霊長類学者だね。 赤ちゃんは胎児の間は無菌状態で、産道を通るときに細菌のシャワーを浴び、細菌との共生体としての道を歩み始める。 自然分娩と母乳保育は赤ちゃんに微生物たちとの健全な関係を構築させ、正常な免疫系を発達させる助けとなる。 どういう「細菌叢」を構築すれば健康になれるのか、薬剤の投与や免疫系の疾患によって弱った「細菌叢」をどうしたら復活させられるのか、研究は始まったばかり。 A氏:米国は早くも2008年に1億7千万ドルの予算を付け、「細菌叢」の解析を始めた。 日本はまだ個別の研究者が独自の手法で実施する段階で、大規模プロジェクトには発展していないが、やっと4月に製薬会社、食品会社、化粧品会社など19社が日本マイクロバイオームコンソーシアム(JMBC)を設立し、まず大規模データベースの構築を目指し、学界と企業の情報交流や人材育成にも取り組んでいくという。 私:われわれの「ばい菌」の見方も「細菌」から見直すことからはじめないとね。
2017.08.19
コメント(0)
私:今月の「安心新聞」は、このところの異常気象に関連して、「地球温暖化」問題をとりあげている。 神里教授は、「地球温暖化」の可能性に関する指摘は意外に古く、19世紀の前半、フランスのフーリエという科学者は、太陽からもたらされる熱量に比べて、地球の気温が高すぎることに気づき、彼は、その原因を大気の「温室効果」によるものだろうと考えた。 またスウェーデンのアレニウスは、二酸化炭素の増加によって気温が上がることを、19世紀の末に指摘し、二酸化炭素の濃度が2倍になれば、気温が5~6度上昇するだろうという予測もすでに示している。 A氏:だが、それらの科学的な知見を結びつけ、具体的な問題として捉え直し議論の俎上(そじょう)に載せたのは、1960年代の環境NGOであり、また米国大統領の科学的助言委員会であった。 さらに、それが地球全体にとって重要な共通課題として広く共有されたのは、80年代後半から90年代にかけてのこと。 私:しかし、「地球温暖化」問題の「捉えにくさ」は、従来の科学の枠組みに収まりきらない、この問題の特殊な性格と深く関わっている。 まず、この仮説を検証するための実験が困難であったことが挙げられ、もし、地球を二つ用意して、一方では二酸化炭素の放出を続け、もう一方では放出を止め、長い時間をおいて両者の違いを観察することができれば、仮説は「簡単に」検証できるだろう。 だが、そんなことは当然不可能で、その点、化学物質の反応や、物体の運動といった他のケースと、この点で大きく異なる。 「シミュレーション」も地球全体の問題であるために、対象が時間的・空間的に非常に広範囲に及んでしまい、不確実性が大きくなる。 A氏:もう一つ、二酸化炭素の放出の後、実際に気候が変化するまでに、かなり時間がかかるというのも大きな問題だ。 たとえば、磁石の性質をわれわれが容易に把握できるのは、磁石を鉄などに近づけてから吸い付けられるまでの時間が、非常に短いからだ。 仮にそれが1年かかるとしたら、きっと磁石という現象は、因果関係として捉えられないだろう。 私:このように「地球温暖化」問題は、科学的に実態を把握すること自体に根本的な難しさを伴う。 これは、政策決定者に対して、政治的な判断の余地を大きくする作用を持つ。 なぜなら科学的不確実性が高い分、事実によって政策判断が自動的に決まる領域が狭まるからだ。 これが、「地球温暖化」問題が政治問題化しやすい、一つの大きな要因。 A氏:トランプ大統領の「パリ協定」離脱も政治的だね。 二酸化炭素が「地球温暖化」の原因だというのは原子力産業の政治的陰謀説まであった。 私:神里教授は、それでも、世界中の専門家が努力を続けた結果、最新の報告書では、人為的な二酸化炭素の放出によって温暖化が起きている可能性が極めて高いと、結論づけられるところまで来て、これは重要な成果であろうという。 また、最近の異常気象は、「地球温暖化」と関係していると理解すべき証拠も確実に増えていると神里教授はいう。 A氏:さらに、神里教授は一点だけ追記しておきたいのは、今、パリ協定から離れようとしている米国こそが、最初にこの問題の深刻さを理解し、本格的な科学的検討を開始したこと、そして今も多くの中心的なメンバーが米国で活躍している、という事実であり、私たちはアメリカという国の重層性と奥深さを、忘れるべきではないという。 私:しかし、神里教授は「地球温暖化」問題は、科学的に実態を把握すること自体に根本的な難しさを伴うと言いながら、最新の報告書では、人為的な二酸化炭素の放出によって「地球温暖化」が起きている可能性が極めて高いと、結論づけられるところまで来て、これは重要な成果であろうとしている。 どういう「科学的証明」の進歩があったかふれていないのは楽観的にすぎるのではないかね。 また、神里教授が、最近の異常気象は、「地球温暖化」と関係していると理解すべき証拠も確実に増えているというのも、どのような「科学的証明」がなされたのかの肝心の説明がないね。 どうもまだ、「安心」できないね。
2017.08.18
コメント(0)
私:日米地位協定の本体は一度も改定されていないが、他国ではどうかという記事だね。 まず、イタリアは、国内に六つの主要米軍基地を抱えていて、基地の運用・管理に関する米国との二国間合意(1954年締結、95年改定)を結んでいる。 国内の米軍基地の管理権はイタリアにあり、軍用機の発着数や時刻はイタリア軍司令官が責任を持つ。 飛行訓練には国内法が適用され、重要な軍事行動にはイタリア政府の承認が必要とされる。 イタリア軍元統合参謀総長のビンチェンゾ・カンポリーニ氏は「米軍とイタリア軍は明白な相互関係にあり、イタリア当局の管理が及ばない状況はない」と話す。 A氏:1998年に低空飛行訓練中の米軍機がロープウェーのケーブルを切断し、スキー客ら20人が死亡した事故後もイタリア当局は直ちに米軍と協議し、米軍機の低空飛行を厳しく制限。 イタリアの米軍に対する発言力の強さの背景には、第2次大戦で連合軍に敗れた一方で、ナチス・ドイツ軍に占領された北部のレジスタンス勢力が連合軍の協力を得て蜂起し、自力解放を果たした歴史があるといい、その後、安全保障上互恵的な関係が続いた。 私:ドイツでは、NATO軍地位協定を補う形で、ドイツ国内の駐留6カ国との補足協定(ボン補足協定)で基地使用が定められている。 冷戦時代、米軍の危険な超低空飛行訓練などが問題化し、90年の東西ドイツ統一直後から、改定への取り組みが進んだ。 2年の交渉を経て、基地外での訓練はドイツ当局の承認が必要となり、危険物を輸送する場合も含め駐留軍の陸海水路の移動のすべてにドイツの交通法規が適用されるように改定され、駐留軍機は騒音を規制する国内法にも縛られる。 A氏:ドイツ外務省法制局長として改定交渉を率いたトノ・アイテル元国連大使は「冷戦終結後も我々は米軍を必要としており、交渉では妥協も必要だったが、統一を達成した今こそ完全な主権を得るべきだとの考えには(米国からも)大きな異論はなかった」と振り返る。 私:日米地位協定は、日本国内での米軍の権限などを定めた協定で、1960年に結ばれた。 米国が米軍の施設内で運営や管理に必要なすべての措置をとることができると規定し、軍人や軍属が公務中に起こした事件で米側に優先的な裁判権を認めている。 環境調査のための自治体の立ち入りを認める補足協定や軍属の範囲を明確にする補足協定が策定されたが、本体は一度も改定されていない。 各地で起こされている米軍機の騒音をめぐる訴訟では、騒音が違法と認定されながら「国に権限がない」などとして飛行差し止めは認められていない。 A氏:米軍基地を抱える15都道府県でつくる渉外知事会は、沖縄県で米兵による少女暴行事件が起きた1995年から、国に改定を求め続けている。 今年も2日、「米軍基地に起因する環境問題、事件・事故を抜本的に解決するには地位協定の改定は避けて通れない」などとする要望書を外務省や防衛省に提出。 市街地や夜間、休日などの飛行制限や最低安全高度を定める国内法令の適用▽日本に第一次裁判権がある場合、日本の容疑者引き渡し要請に応ずる▽基地外での事故現場での統制は日本当局の主導で実施する、など15項目の改定要求ポイントを挙げた。 私:協定の本質的な見直しがなされない原因について、元外務省国際情報局長の孫崎享氏は「多くの国民に『地位協定は沖縄など基地を抱える地域の問題』という意識が染みついている」と指摘。 「日本政府内で『外交とは米国との間に波風を立てないこと』という傾向が強まるなか、米側が嫌がる地位協定の改定はもってのほかという状態になっている。 国民の薄い当事者意識は政府にとって都合がよく、本来主張できることさえしていない。 まずは日本国民が、同じ同盟国あっても米軍基地の受け入れ方は国ごとで違っているということを知るべきではないか」と話す。 イタリアやドイツの例から考えても、「基地問題は基本的に沖縄問題」としている日本人の根底にある意識に問題がありそうだね。
2017.08.17
コメント(4)
私:8月15日は、日本では終戦の日だが、韓国では日本統治からの解放を祝う「光復節」の記念日だ。 15日、韓国の文大統領はその記念式典で演説し、歴史認識問題を巡る過去の日本の対応に不満を表明。 この日の発言も、日韓慰安婦合意を結んだ朴前政権の否定から出たものだが、進歩(革新)系の団体が政府の動きに呼応して、日本を批判する動きが活発化している。 A氏:ただ、文政権はこの日、「歴史問題が韓日関係の未来志向の発展を妨げ続けることは望ましくない」と述べ、シャトル外交などの交流拡大や北朝鮮問題での日本側の協力を呼びかけていて、政策の基調は反日ではないと、日本側も受け止めているという。 私:しかし、一方で、市民の気持ちを無視できないとして、保守政権の業績を否定し約7割という高支持率につなげてきた。 国民の不満が高い少女像の問題を含む日韓慰安婦合意などに否定的な動きを維持していて、記念式典には初めて元慰安婦2人を招き、同式典で慰安婦問題や徴用工問題の解決策として「人類の普遍的価値と国民的な合意に基づく名誉回復と補償、真実究明と再発防止の約束という国際社会の原則がある」と主張し、「この原則を必ず守る」と訴えた。 A氏:文氏を支援してきた進歩系の団体は、こうした文政権の姿勢に力を得て、日本批判の動きを強めている。 韓国の進歩系の代表的団体の全国民主労組総連盟などが主導する市民団体は12日、ソウルと仁川で徴用工を象徴する像の除幕式を初めて実施。 世論に理解が得られやすい徴用工問題を取り上げ、支持拡大を図ったとみられる。 このブログでとりあげた「韓国映画『軍艦島』」で最近、また問題になっているね。 私:ソウル市の路線バスに慰安婦問題を象徴する少女像のレプリカ設置を認めた朴市長も、進歩派の代表的な人物。 日本側はこうした動きについて、「民間の動きが日韓関係に悪影響を与えないよう努力してほしい」と外交ルートで韓国に申し入れたが、目立った反応は出ていないという。 A氏:最近は、慰安婦問題に加え、徴用工像の建造など徴用工問題が加わり、反日感情が逆に悪化しているね。 私:一方、韓国とともに8月15日に敏感な中国は、外務省が15日の定例会見で、安倍首相が靖国神社に玉串料を納めたことについて、「我々は日本側の誤ったやり方に断固反対する」と批判し、「侵略の歴史を深く反省し、実際の行動でアジアの隣国と国際社会の信用を得るように日本側に促す」と主張。 中国国営新華社通信は15日、国外向けの英語版で「安倍首相は日本の戦争責任に対する『反省』にまたもや言及しなかった」と批判する一方で、天皇陛下が「深い反省」との表現を3年連続で述べたことを好意的に紹介した。 天皇陛下は依然として靖国神社には行かないね。 A氏:しかし、中国の15日付の各紙は対日批判のトーンは抑制気味。 これは習近平主席と安倍首相が首脳会談を重ね、日中関係が改善基調にあることが影響しているとみられるという。 私:両国とも、70年たっても、反日感情は消えないね。 抑圧した方は抑圧したことは忘れやすいが、抑圧されたほうは、忘れにくく、100年を超えても、続きそうだね。
2017.08.16
コメント(0)
全4555件 (4555件中 401-450件目)