ちっちゃなお部屋

ちっちゃなお部屋

2011.07.05
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結婚した年の初夏に、親戚の集まりがあって、

老婆が二人、御膳の前でちょこんと残りお話をしていた。

年のころは四捨五入したら90か95だと思う。

私はあの頃まだ27歳で本当に、まだまだピチピチの妊婦さんだった。

実生活で子育てをまだしていない、妊婦さん。

子育ての苦労とか、

これから生まれてくる子供たちに、自分が味わったことのない経験をこれでもか~これでもか~とシャワーのように浴びさせられる前の、

かわいいかわいい妊婦さんだった。

皆さんにもあったでしょ?

可愛い可愛い妊婦さんのころ。

まさか、生まれた子供に、そののち「てめぇ~!」とか怒鳴り散らすことなんて、自分自身ですら想像しなかったあのかわいかった自分。

(かわいかったころの自分を返してほしいです。人間的には今のほうが好きなんですが、可愛さがすっかり失せまして・・・・・あああ。)

老婆の話の始まりは、何とも自分的には衝撃的だった。

というか、なんでそういう話しかけかた?だと思った。

特に共通の話題もなくて、一人が寡黙で、一人がおしゃべりタイプだったから、

一人がなんとか話を切り出したかったのだろう。

老婆A「あなたお子さんは何人?」(お二人ともかなりの方言で今一分からないんですけど、私。詳しい方言を覚えていないので標準語まじりになっています、すみません)

老婆B「7人だったけど、一人死なせました。10歳でした。」

老婆A「私は○人だったけど、ひとりあきませんでした。生まれたとき亡くしてしまいました。」

あなたもですか、と、共通点を見出して、話を切り出した方が身を乗り出した、

二人は子供を失った時のことを話していた。

ちょっと離れていたので、あまりじっくり聞かなかったんだけど、

身内の主人は、私の手前ちょっと照れちゃって「年寄りが何たそがれちゃってんだか・・・」と目を細めていた。

いったいいつの話をしているんだ?

と思ったのだろう。

どう考えても、二人とも戦前か戦中かそのあたりだから、

本当に何年前の話かと思うけど、

しんみり話していた。

でも、共通のふたりだからしんみり話して、

二人でそのあと、ぼーーーーっとたそがれて入れたんだな。。。。と、

今日、お風呂の掃除をしているときに、急にフラッシュバックして思い出した。

あの老婆二人を思い出すと、

何年たっても何年たってもやはり背負っているんだ

と、

分かっていたけど、

改めて分かってしまった。

思い出したら、数珠つなぎで、もっと思い出してしまった。

(人間記憶の片隅で残していることって多いですね。)

母方の祖母も、生後1か月の女の赤ちゃんを亡くしていた。それこそ、今で言う赤ちゃんの突然死だとおもう。

ついさっきまでにこにこ元気だったのに、背中におぶっていたら、だら~んとしてこと切れていたという。

その赤ちゃんは、祖母にとっては第一子だったから、ほかの4人の妹弟を知らないことになる。

あの時、祖父はショックのあまり1カ月仕事に行けなくなってしまったらしい。

子供のころに、その話を聞いたとき、へえ~って感じで、わが子を失う感覚が分からなかった。かわいそうな話だと思ったけど、押し寄せるような感情はわかなかった。

母方の祖母は、私が大学1年の時に亡くなった。

亡くなる前に完全看護の病院に入っていたんだけど、痛みを抑えるきつい薬で痴呆が進み、お見舞いに来た母を見て、亡くした赤ちゃんの名前を呼んでいたという。

もう母の顔をみても、他人のように「すみません、分りません。」と祖母はおびえていたという。

私は、大学入学前に、お見舞いに行ったとき、私を見て申し訳なさそうにおびえて「分かりません・・・分かりません」という祖母にショックを受けて病院の廊下で泣いてしまった。母は、「ししぃーごめんね、おばあちゃんの症状を詳しく言っていなかったね。」と背中をさすってくれたことが今も忘れられない。あのときの母の年齢は、今の私より少しだけお姉さんだったと思う。)

たそがれた老婆二人も、あの「たそがれ」の数年後には逝去された。

みなさん、心に抱えて天国に行ったのだと思う。

会えましたか?






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最終更新日  2011.07.05 23:42:23


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