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お話を最後まで読み終えてから、 この記事を書くために、改めて最初からページを捲り始めた時、 「あぁ、そういうことだったんだ」と気付かされました。 とても良く出来たお話です。 ***完全歩合制の生命保険会社営業職として働く岡田修一は、同世代の社長・脇屋から、20名分の1年以内の契約解除連絡が入ったと告げられる。契約先に足を運んだものの良い回答は得られるはずもなく、そこに妻・優子から電話が。それは、不登校になった娘・夢果のことで、今日一緒に学校に行くことを確認する内容だった。さらに、田舎で独り暮らしをする母親からは、帰省を促す電話。仕事、娘、夫婦、母親、実家など様々なことに対処しきれずパニックになった修一は、目の前に近付いてきたタクシーを無意識に止め、後部座席に乗り込む。これが「運を転ずる仕事」をする運転手・御任瀬卓志との出会いとなった。 基本姿勢が不機嫌な人に、 毎日の人生で起こる幸せの種をみつけることなんてできない 今日頑張って明日実になるなんて どんなに早く育つ種でも無理なことですよ運転手とのやり取りの中で、自分自身の生き方を見つめ直し、改めていく修一。そして、サイパンで戦死した祖父・良蔵のエピソードや、自分が知らなかった父・政史の思いや行動、さらには、運転手が修一の前に現れた理由も聞かされる。 自分の人生にとって何がプラスで何がマイナスかなんて、 それが起こっているときには誰にもわかりませんよ。 どんなことが起こっても、 起こったことを自分の人生において必要な経験に変えていくというのが <生きる>ってことです。 だから、どんな出来事だってプラスにできますし、 逆にどんな出来事もマイナスに変えてしまうことだってできる。そして、修一は新たな一歩を踏み出す。以後、彼が遭遇した様々な出来事に、さらには、彼が遭遇した様々な人々に、あの運転手は深く関わっていた。まさに、彼が言った通り「俺の人生を転じた<運転者>」だった。
2021.10.31
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小学6年生の夏、遠藤宏志は友人の木島陽介、高頭健太と3人で騎士団を結成、 同じクラスの有村由布子をレディとし、彼女に愛と忠誠を捧げることを誓う。 一方、彼らの住む天羽市では、1年前に同じ学年の小学生女子が殺されていた。 3人は、その犯人を見つけようと、怪しい人間の見張りを始める。 そんな3人が、有村由布子から8月末に行われる模擬試験を受け、 県で100番以内に入って欲しいと言われることに。 しかし、これまで勉強というものと縁遠かった3人は、なかなか行動を起こすことが出来ず、 そのことで、クラス1の嫌われ者・壬生紀子にまで嫌ごとを言われてしまう始末。しかし、夜の公園で、宏志が札付きの不良に絡まれた際には、壬生が機転を利かしてくれたおかげで、宏志はその窮地から逃れることが出来た。そして後日、文化祭で上演する「眠れる森の美女」のオーロラ姫に壬生が選ばれると、そこにクラスの女子たちの悪意を感じ取った宏志は、自らフィリップ王子に立候補する。そこから、ミュージカルのダンスシーンに向けて、宏志と壬生の練習が始まる。さらに、模擬試験に向け徐々に軌道に乗りかけた3人の勉強に、壬生も加わることに。夏休みに入ってからも図書館で必死に勉強を続けた結果、模擬試験で健太は県で62位に、壬生は県で1位の成績を収めたのだった。任務を果たしたことから、宏志は有村由布子に騎士団解散を宣言。そして、文化祭のミュージカルも大成功して、3人は秘密基地に壬生を招待する。しかし、そこに向かう途中、宏志と壬生を乗せた車の運転手が、あることをきっかけにその態度を急変させ、2人に最大の危機が迫る…… ***とても面白いお話で、ワクワクしながら読み進めることが出来ました。いつか、映画化されるとイイですね。
2021.10.30
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33歳のキム・ジヨン氏は、3年前に3歳年上のチョン・デヒョン氏と結婚。 昨年には、娘のチョン・ジウォンちゃんを出産し、IT関連中堅企業を退職。 現在は、ソウルのはずれの大規模住宅で、子育てをしながら過ごしている。 娘は1歳になり、団地の1階にある家庭型保育園に午前中だけ通うようになった。 今年(2015年)9月、そんなキム・ジヨン氏に異常な症状が見られるように。 ある時には自身の母親が、またある時には先輩女性が乗り移ったように振る舞う。 そして、デヒョン氏の実家でも、自身の母親の口調で義母や義父に対し意見することに。 後日、デヒョン氏は精神科を訪ねて妻の状態を説明し、治療法を相談したのだった。以降、1982年~1994年(誕生から小学生時まで)、1995年~2000年(中学生時から高校生時まで)、2001年~2011年(大学生時から結婚前まで)、2012年~2015年(結婚から現在まで)のジヨン氏の姿が描かれていく。 ***お話の締めくくりは、ジヨン氏の治療に当たった精神科医が、2016年における自身の妻の姿、そして、子供を授かり職場を離れていこうとする女性スタッフについて語ります。韓国で女性として生きることは、想像以上に厳しいことのようでした。
2021.10.30
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家族を描いた7つのお話を集めた一冊。 どのお話も、辻村さんらしい世界観に彩られ、 それぞれの人間ドラマが繰り広げられていきます。 自身の家族について、その関係性や在り様を考えさせられてしまいます。 ***姉の結婚に際し、姉の自分に対する本当の思いを初めて知った妹。年子の姉妹にもたらされた露骨で残酷な運命を描いた「『妹』という祝福」。アイドルのオタク活動に精を出す弟と、バンドの追っかけギャルの姉。いつも衝突ばかりだった姉と弟に訪れた感情の変化を描いた「サイリウム」。担任教師と関係を持った高校生の娘が妊娠。進路に対し意見が合わなかった母娘が共に歩み出す「私のディアマンテ」。これまで息子の小学校と全く縁がなかった父親が「親父会」で活動をすることに。そして息子の卒業から5年、父親が再び動き出す姿を描いた「タイムカプセルの八年」。『学習』を愛読する姉と、『科学』を愛読する妹。妹の夢に寄り添うことで、自身の能力を開花させた姉を描く「1992年の秋空」。孫娘が通う小学校で竹とんぼ作りを教えることになった祖父と友人との関係に悩むことになった孫娘の姿を描いた「孫と誕生会」。『ドラえもん』のタマシイム・マシンを契機に妻と結婚した夫が、息子を連れて帰省。そこでの思い出を振り返る夫の様子を描いた「タマシイム・マシンの永遠」。 ***どのお話も、どこかしらモヤモヤとしたものが漂いつつ進行し、最後も、何もかもがスッキリというわけでは決してありません。でも、これこそが家族というもの、生きるということなのでしょう。それぞれの舞台で、それぞれがそれぞれの役割を演じ続けていくのです。
2021.10.24
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前巻発行から半年余、 新型コロナウイルス第5波の感染拡大は全国的に収束傾向となり、 緊急事態宣言の解除や様々な制限も緩和されつつある中での新刊発行。 しかし今後、第6波の心配もされる中、本巻の持つ意味は極めて重要なものです。 ***第31話「信頼と責任」は、第30話「傾く心」からの続きで、小野塚が提案した「薬剤師主催の一般向け予防接種講座」が開催されることに。芳村さん夫婦や元薬剤師・川瀬らが集まる中、久保山と瀬野にも見守られて、みどりが講師を務める講座が、いよいよ始まります。第32話「信じている」は、みどりの予防接種に関する講話からスタート。患者数が激減した感染症でも予防し続けることの重要性、ワクチンの種類と成分、ワクチン後進国・日本の現状、HPVワクチンについて等々が語られます。そして、その講話終了後の質疑応答で、川瀬が挙手・発言したのです。 今日はとても興味深いお話 ありがとうございました 勉強になりました でも 大事なことをおっしゃっていなかったので- 予防接種は義務ではない- それをちゃんと伝えていただかないとみどりとの間で言葉をいくらかやり取りした後、川瀬は芳村さんをお茶に誘い、会場を後にしようとしますが、芳村さんは席を立つことが出来ません。その様子を見ていたみどりは、川瀬に改めて彼女の考えを問い直します。そして、そのやり取りの後、川瀬にこう言ったのでした。 …それはわかります 私だって人間の治癒力も信じてます でも社会やそこで暮らす人たちが病気や衛生問題と闘って生活していく…… それを手伝うために私たちは日々学んで知識をつけてきたんじゃないんですか その役目を放棄するなら 薬剤師を名乗る資格はないと思います第33話「固まる脚」は、予防接種講座終了後の焼肉屋での打上げの風景から。講座の継続や、学術大会でのポスター発表等々の話題で盛り上がります。そして後日、ナカノドラッグに風邪薬を買いに来た男性客に小野塚が対応。その様子を見たエリアマネージャーは、小野塚に懐疑的な態度を示すのでした。第34話「何者」は、第33話「固まる脚」からの続き。咳止めを大量購入しようとした予備校生に対する小野塚の説明をエリアマネージャーは制止。後日、その少年が咳止めを万引きした際、小野塚は来店した母親に、彼が市販薬の依存症であると告げ、販売方法の改善をエリアマネージャーに進言しますが…… ちょっと…あのさあ なんで売上につながらないこと頑張るわけ? きみは なに売って給料もらってる身かわかってる? どうしちゃったの 小野塚くん~それに対する小野塚の言葉は -俺が 薬剤師だからだよ!第35話「理想の姿」は、若き日の瀬野のエピソード。2002年4月、24歳の瀬野は数名の仲間たちと共に病院に入職。その教育担当になったのが科長と同期の陣さん。「イレッサの積極採用」を巡って、陣さんは科長や担当医と衝突することになりますが…… ***今巻は、みどりも、小野塚も、陣さんも、みんなカッコ良かったですね!!それにしても、次のことは私は全く知らなかったので、とても勉強になりました。 病棟業務って そんなに仕事多くないんですか? いやいや 服薬とか入院患者の服薬指導とか色々あるけど 患者との面談は何回やっても週一しか算定つかないから ほどほどにって話
2021.10.23
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著者は『武器としての交渉思考』の瀧本哲史さん。 本著冒頭「Round 0 イントロダクション」で、次のように述べています。 本書では様々なテーマについて、本を紹介し論評していくことになるだろう。 (中略) そこで考えたのが、あるテーマについて、 全く異なるアプローチの本を二冊紹介し、 それを批判的に、比較検討するという形態で話を進めていこうというものだ。(p.8)そして、「Round 1 心をつかむ」における、D.カーネギーの『人を動かす』とロバート.B.チャルディーニの『影響力の武器』から始まって、「Round 12 児童文学」における、ガース・ウィリアムズの『しろいうさぎとくろいうさぎ』とJ.K.ローリングの『ハリーポッターと賢者の石』の対決まで、激しいバトルが繰り広げられていきます。各Roundの最後には、「Book Guide」として、6冊の関連書が、1ページの紙幅の中で紹介されています。つまり、本著では100冊近くの書籍が紹介されていることになりますが、その中で私がこれまでに読んだことがあるものは、わずか10冊。その中で、今でも強烈に印象に残っているのがエリヤフ・ゴールドラットの『ザ・ゴール』。そして、読んでみたいなと思わされたのは、トーマス・フリードマンの『フラット化する世界』でした。
2021.10.23
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10月1日に映画が公開されると知り、読んでみました。 巻末の、中山さんと瀬々さんの<映画化記念対談>がとても面白く、 小説と映画の関係性や、設定の違い、切り取り方についての部分には、 「なるほど」と頷かされました。 ***仙台市青葉区福祉保健事務所の保護第一課長・三雲忠勝に続き、現職の県議会議員・城之内猛留が殺された。2人とも評判のいい人物で、仕事帰りに拉致され、打ち棄てられた場所で餓死。その後、2人は塩釜福祉保健事務所で一緒に勤務していたことが判明する。時を遡り、利根勝久はチンピラに絡まれていたところを遠島けいに救われる。以後、けいの家に出入りしていた少年・カンちゃんと一緒に三人で過ごすように。しかし、けいの経済状況はとても苦しく、生活保護を申請するも却下されてしまう。やがて、けいは餓死してしまったのだった。利根は福祉保健事務所に乗り込んで三雲を殴り、止めに入った城之内をも殴り倒す。その後、庁舎の裏手でゴミに放火したことで逮捕され、刑に服していたが、懲役10年のところを8年で仮出所し、その直後に三雲と城之内が殺されたのだった。警察は、利根の足跡を追うことに。そこへ、当時の三雲と城之内の上司・上崎がフィリピンから帰国するとの情報が。仙台空港では、変装した利根が城之内を待ち受ける。そして、利根を確保しようとする警察の面々も大集結。しかし、最後の結末は思いもよらぬものだった。 ***さて、この作品で私が最も心に残ったのは次の言葉です。 「刑事さんも組織の人間なら、多かれ少なかれ経験はあるでしょうが、 殊に公務員というのは上にいけばいくほど、 個人の主義主張や人となりがスポイルされてしまう傾向にある。 組織の方針や決定が絶対なので、 上に近くなればそれだけ個人を封殺しなければならなくなる。 おちおちモノも言えなくなる」(p.32)これは、青葉区福祉保健事務所の楢崎所長が、笘篠刑事に言った言葉。この後の笘篠刑事とのやり取りに続く楢崎所長の言葉にも考えさせられました。
2021.10.03
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『小説すばる』で1994年12月号から1997年5月号まで連載されたものを 1997年に連作短編集として刊行し、2000年に文庫化された一冊。 桁外れの暗記能力である「しまう」を持つ春田記実子、 未来を予知する能力を持つ美耶子、「裏返す」能力を持つ拝島暎子、 年を取らず、「つむじ足」の能力を持つツル先生、 そして、時間を遡る能力を持つ矢田部亜希子等々 「常野」に繋がる人々が遭遇する不思議な出来事と、 そこで発揮される不思議な特殊能力が描かれていきます。 *** 「『常野』という言葉の由来を知ってますか? 権力を持たず、群れず、常に在野の存在であれ。そういう意味だそうです。 何世代も昔の常野の人達が広い野に向かって散っていったのに、 今、なぜか皆収束の方向に向かっているような気がしてならない。 本人たちが望むと望まざるとに拘わらず、 みんながある一つの流れに向かって引き寄せられてきている。 きっと、これには何か必然があるに違いない。 これから世界は何か新しい局面を迎えようとしているのかもしれない。 常野の人々が時代の表面に出なければならないような世界に」(p.247)これは、本作の10の作品のうち、9番目の作品である「黒い塔」のなかで、美耶子の夫であり、先の衆議院議員選挙で初当選したばかりの三宅篤が、その選挙戦の手伝いに来ていた亜希子に語り掛けた言葉です。ここからいよいよ「常野物語」が始まりますという宣言としか思えません。実際、この作品の後に、『青春と読書』に『蒲公英草紙 常野物語』が連載され、さらに、『小説すばる』に『エンド・ゲーム 常野物語』が連載され、それぞれに、刊行・文庫化されています。もう、読むしかないでしょう。
2021.10.03
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