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著者は髭男爵の山田ルイ53世。 平成30年5月に新潮社から刊行され、令和2年12月に文庫化された一冊。 採り上げられているのは、レイザーラモンHG、コウメ太夫、テツandトモ、 ジョイマン、ムーディー勝山と天津・木村、羽田陽区、ハローケイスケ、 とにかく明るい安村、キンタロー。そして、髭男爵の面々。 (スギちゃんは、文庫化に際し追加掲載されました)一部、私があまり知らない(と言うか本著で初めて知った)方もいますが、そのほとんどの方の姿を、時々ではありますが、今でもTVで見かけることがあります。スギちゃんを除けば、山田さんが取材をされたのは少なくとも今から3年以上前、あの闇営業問題が起こる前のことですから、芸人さんたちの状況も随分変わったはず。その中で、今なお芸人として生き残っているというのは本当にスゴイことですが、その背後にある理由を、本著の記述の中に見出せたような気がしました。逆に言うと、その露出がすっかり減ってしまった方々についても、本著を読むことで、その理由をある程度理解出来た気がします。
2021.08.29
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著者は、精神科医の中井久夫さん。 『アリアドネからの糸』所収の「いじめの政治学」に基づく一冊で、 自身の体験を振り返りながら、いじめかどうかの見分け方や、 その段階を「孤立化」「無力化」「透明化」の三つに分け説明しています。 かなり大きめの文字サイズを使用して作られた本著は、 1ページが24字×Ⅹ10行、印字されたページ番号の最後が100という たいへんコンパクトで、読み進めやすい一冊になっており、 いわさきちひろさんの手によるカバー画と装画に心が癒されます。
2021.08.29
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島耕作シリーズの作者である弘兼憲史さんが、 島耕作と自分自身の仕事術について述べた一冊。 「第1章 島耕作の仕事論」では、島耕作がどのようにして成長していったかや、 島耕作のコミュニケーション力と情報収集術について解説。 「第2章 弘兼憲史の仕事術」では、時間の使い方やチームについての持論、 そして、40年に渡り漫画家を続けてこられた理由等について明かしています。また、「第3章 島耕作の「ライバル」たち」では、柳井正氏(株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長)、澤田秀雄氏(株式会社エイチ・アイ・エス取締役会長兼社長)、唐池恒二氏(九州旅客鉄道株式会社代表取締役会長)、新浪剛史氏(サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長)、辻本憲三氏(株式会社カプコン代表取締役会長兼CEO)、玉塚元一氏(株式会社ローソン代表取締役会長兼CEO)の6人を取り上げ、その活躍ぶりや各々の経営哲学が述べられています。第1章と第2章が、本著の核となる部分のはずですが、第3章で展開するリアルなお話の方に、より興味を覚える人もいるかもしれませんね。
2021.08.22
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内田也哉子さんと中野信子さんの対談集。 『週刊文春WOMAN』創刊1周年トークイベントとして 2020年1月14日に行われた対談をきっかけに、 以後、2020年2月、5月、7月、9月に対談を重ねられた二人。 そこで語られたのは、内田裕也さんと樹木希林さんの娘として育ち、 19歳で本木雅弘さんと結婚、現在は3児の母である内田也哉子さんと、 高校生の時に信仰熱心な両親が離婚、自身の夫は平日を大阪で過ごし、 週末だけ東京に帰ってくるという中野信子さんの家族に関する諸々。芸能活動をしていた裕也さんや希林さん、そして現役の本木さんのエピソードは、私達もこれまでに数多く接してきましたが、最も身近な立場である也哉子さんの口から語られるお話は、どれもこれも、よりその人の人間性が伝わってきて、興味深いものばかりでした。また、芸能人ではない中野さんの日常や家族については、本著で初めて知ることが多く、中野さんの人となりを知ることが出来ました。『不倫』等自らの著作で述べている脳科学的観点からの言葉も、押しつけがましくならず、二人のトークを楽しんでいる様子に好感が持てました。
2021.08.22
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『独立記念日』は24、『ギフト』は20のお話を集めた短篇集でしたが、 本著は4つのお話を集めた短篇集で、前述2作に比べ1話当たりの紙幅が大きく、 一つ一つのお話に深みと奥行きが増し、読み応えのある一冊になっています。 ただし、女性が新しい一歩を踏み出していくお話を集めたところは同じ。 まず、表題作は、ハーレーのカスタムビルダー・ナギの存在感が圧倒的。 有能な秘書・高見沢に見限られ、女満別を旅する敏腕若手女性社長・鈴木涼香が、 偶然そこで出会ったナギと行動を共にするなかで、少しずつ変わっていく様が爽快。 最後は「高見沢さん、何か仕組んだんじゃないですか?」と聞きたくなってしまいます。続く「旅をあきらめた友と、その母への手紙」は、『ハグとナガラ』にも掲載されたお話。いつもなら、二人で一緒に旅をするハグとナガラですが、このお話は、秋の紅葉が美しい時期に、ハグが一人で伊豆を旅行したときのもの。ナガラが一緒に来られなかった理由を知ったハグは、彼女の母に手紙を書きます。「冬のクレーン」は、都市開発会社で日本最大級の開発案件に関わっていた陣野志保が、部下へのパワハラで訴訟沙汰になったとき、謝罪を拒んで1ケ月の有休を過ごすお話。タンチョウヅルが飛来する冬の釧路湿原を単身訪れた志保は、その観察所で勤務する天羽に出会い、自らの行動を省みることになります。そして「風を止めないで」は、「さいはての彼女」に登場したナギが再登場。と言っても、お話の中でメインを務めるのは彼女の母・みっちゃん。広告代理店の広告制作部長・桐生との出会いが、彼女を新しい世界へと導きます。「さいはての彼女」とお話がリンクする部分は、読み手には嬉しい展開ですね。
2021.08.21
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漫画家の油沼さんが「薬剤師さんの備忘録」という漫画を描き、 それらをネットにアップしたところ、多数の薬剤師さんたちがフォロー。 以後、薬剤師さんたちから関連情報が、油沼さんに届くようになりました。 それらを漫画化することでさらに評判を呼び、書籍化に至ったのが本著です。 まず、「第1章 薬剤師さんの注意録」は、本著の核となる部分。 全体で128頁しかない本著の、p.5~p.62を占めています。 16のテーマについて、それぞれ2~8頁のショートストーリーを展開しており、 とてもテンポよく、スラスラと読み進めることが出来ます。続く「第2章」~「第5章」にかけては、各章ごとにメインキャラクター(わんちゃんねこちゃん、やくざい姉妹、白衣亭ハクイ、おっさん)が登場して、4つずつお話を進行していきますが、やや取っ散らかった印象。色々諸事情あるのでしょうが、第1章と同じトーンで展開した方が良かったのでは?なお、油沼さんの「薬剤師さんの備忘録」は、2021年8月21日現在、第25話までがネット上にアップされています。そのうち、第1話~第4話と第6話~第10話については、『薬剤師さんの備忘録』として、既に書籍化されています。
2021.08.21
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先日読んだ『独立記念日』は短篇集で、短いお話を24集めたものでしたが、 本著は、それよりもさらに短いお話を20集めたものです。 本当に短いお話ばかりで、サラッと読んでしまうことが出来ますが、 どれもこれも心がほっこりさせられるものばかり。 初出は、2005年から2008年頃にかけてのものが多く、 まさに、マハさんの黎明期の小品たち。 それでも、彼女らしさが随所に感じられるのは流石。 ここから、原田マハの世界が築かれていったのですね。
2021.08.15
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月間文庫『文蔵』の2007年10月号から2009年9月号まで掲載された 24のお話を一冊にまとめた短篇集。 各話主人公が、それぞれに新しいステージへと歩を進めていく様を描きながら、 各話に登場する別の女性が、次々に主人公となってお話のバトンをつないでいく。 贈呈してくださったのは、最新刊。 『独立記念日』というタイトルだった。 「ひと言で言うと、会社とか家族とか恋愛とか、 現代社会のさまざまな呪縛から逃れて自由になる人々が主人公の短編集です」 実はこの本の担当編集者だという青年、池野さんが横から言い添えた。 「この本によれば『自由になる』っていうことは、 結局『いかに独立するか』ってことなんです。ややこしい、悩みや苦しみから」 ごくさりげなく、お嬢さんが付け加えた。これは、本著に掲載されている24のお話の中の一つである「独立記念日」の一節。そっくりそのまま、本著の説明になっていますね。お話一つ一つが、とても心温まる内容で素晴らしく、それを、24も書き連ねたマハさんの作家としての力量を思い知らされます。どのお話も、もっともっと深く広く展開させていけそうなものばかりで、短篇で止め置くのがもったいないような気がしたのは私だけでしょうか。
2021.08.14
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辻村さんの2冊目のエッセイ集。 日経新聞夕刊「プロムナード」に2013年7月から12月まで連載された文章や、 2011年以降、様々な媒体に掲載された文章をまとめた一冊。 本著タイトル「図書室で暮らしたい」を冠する文章は記されていません。 本著を読み始めてまず気付かされたのは、 辻村さんは文章を書くのがとても上手いということ。 これまでたくさんの方のエッセイを読んできましたが、 その中でも最上位クラスの力量を持つ作家さんだと思いました。本著掲載の「お姫様のゼリー」には、辻村さんが小学校1年生の時に書いた読書感想文が校内入選し、全校生徒の前で読み上げることになったエピソードが紹介されていますが、やはり幼い頃から、その片鱗を見せつけていたことが分かります。そして、改めて気付かされたのは、辻村さんは随分若い世代の作家さんだということ。本著に掲載されている文章には、子育て真っ最中の女性らしいエピソードも多く、また、ゲームや漫画、アニメへの接し方も、年配世代の方々とは一線を画するものでした。 *** 『家族シアター』という今回の短編集のタイトルをつける時、 いくつかある候補の中から、このタイトルを選んでくれたのは、私の担当編集者だった。 「家族って、それぞれが自分の役割を 家の中で演じているっていう側面もあると思うんです」 その言葉を聞いて、ああ、と思い当たる。 当たり前に「お父さん」や「お母さん」であることを期待されていた私の両親も、 きっと今の私のように悩み、時にはかっこつけながら、 一生懸命「親」をやっていたのだろう。(p.268)これは、本当によく分かります。そして、こんなことに気付くのは、自分自身にその役割が回って来た時。まぁ、仕事でも同じですよね。その役割が自分自身に回ってくるまでは、なかなかそのことに気付けない。 ***とにかく、本著を読んだことで、辻村深月という作家の人となりが、私の中で明確にイメージできるようになりました。辻村さんの1冊目のエッセイである『ネオカル日和』も、ぜひ読んでみたいと思います。
2021.08.14
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1916(大正5)年に出版された『論語と算盤』の現代語抄訳版。 驚かされるのは、古臭さが全く感じられないこと。 現代語に書き換えられていることも、もちろんあるのでしょうが、 その内容が、令和の時代にも十分に当てはまり通用しそうなことが本当に多い。 それでいて、教科書に掲載されているような著名人が随所に登場し、 現役でバリバリと活動するエピソードが盛りだくさん。 大河ドラマで俳優さんたちが演じるのを見ているレベルをはるかに超えて、 自分と同じ時代を生きてきた政治家に感じるものと同様の身近さを感じさせられました。 *** 郭巨という人が、貧しいために親を養う財産がなく、 しかたなく自分の子供を生き埋めにして養う人数を減らそうとした。 そこで土を掘ったら、釜が出てきた。 その釜のなかには、たくさんの黄金があった。 そこでわが子を生き埋めにしないで親を養うことができた。 これこそ親孝行の徳であるというのだ。 もし今の世の中で、「親孝行のためにわが子を生き埋めにする」といったら、 「馬鹿なことをする」「困ったものだ」と人から言われるに違いない。 つまり、親孝行一つとってみても、世の進歩につれて、 人が何を誉め、何を貶すかの基準は変わっているといってもよいと思う。(p.110)この一文には、とても考えさせられました。まさしく、現在も全く同じ状況です。過去の行動を現在の尺度で計り、断罪してしまうことを是とする風潮に、「世の進歩」を感じながらも、一種の危うさを強く感じてしまいます。 ヨーロッパの商工業者は、互いに個人でかわした約束を尊重し、 損害や利益があったとしても、 一度約束した以上は、必ずこれを実行して約束を破らない。 これは彼らの固い道徳心に含まれる「正義」や「廉直」といった考え方が、 そのまま実践された結果なのである。 ところが日本の商工業者は、いまだに昔の慣習から抜け出せずに、 ややもすれば道徳という考え方を無視して、一時の利益に走ってしまう傾向がある。 これでは困るのだ。 欧米人も常に日本人がこの欠点を持っていることを非難し、 商取引においては日本人を完全に信用しようとはしない。 これはわが国の商工業者にとって大変な損失である。(p.168)この一文には、とても驚かされました。私自身は、一般的な日本人の行動は、これとは真逆なものだと思ってきたのですが、100年余前の日本は、こんな感じだったのでしょうか?国も、国民も「変わる」ことは出来るのですね。 ところが現代の青年の師弟関係はまったく乱れてしまって、 うるわしい師弟の交流があまり見られないのはとても憂うべきことだ。 今の青年は師匠を尊敬しない。 学校の生徒など、その教師をまるで落語家か講談師のように見ている。 「講義が下手だ」とか「解釈が劣っている」とか、 生徒としてあってはならないような口を利いている。(p.191)この一文には、ある意味とても感心させられました。こういうのって、100年前からずっとこんな感じなんですね。年上世代から年下世代への「今どきの若者は……」という言い回しは、これからも絶えることなく、ずっと続いていきそうです。
2021.08.14
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本著タイトルの「コメ」は「comedy」はではなく「米」。 著者であるマハさんが、日本農業新聞の連載小説を執筆することになった際、 長野県の一畝の田んぼで、「自然農」の農法によるコメ作りに挑戦した記録。 そして出来上がったのが、約50kgのコメと『生きるぼくら』なのです。 自然農の原則「自然界の営みに任せる」とは、 自然界の食物連鎖をそのままにして、土壌を豊かにするということなのだ。 耕さなければ、動植物が生息し、食物連鎖が起こる。 農薬を撒かなくても、害虫は鳥や別の虫が食べてくれる。 肥料を施さなくても、虫や微生物の死骸や枯れた草が堆積して土を肥やす。 そして、驚くほど豊かな田畑ができあがる。(p.66)本著は、共にコメ作りに励んだ漫画家のみづき水脈さんとの共著になっていて、後半部には、みづきさんの漫画が掲載されています。マハさんが文章によって描き出した「コメ作り」の風景を、みづきさんが具体的に目に見える形で描き出してくれているのがイイですね。
2021.08.12
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TVドラマ『ハコヅメ』を楽しみに見ています。 8月4日(水)に続き、8月11日(水)も「特別編」が放送されるようですが、 新型コロナウイルスに感染していた永野芽衣さんも仕事を再開されるようで、 第05話も、もうしばらくすると見ることが出来そうです。 さて、このお話に登場する交番勤務の警察官や刑事課捜査一係の人たち、 さらには警察署長や副署長って、職場の中ではどのような関係性にあるのでしょうか? 知っていそうで、実はほとんどの人たちが全く知らない世界ですよね。 そんな人たちにおススメなのが本著です。本著では、警察という組織やそこで勤務する警察官の出世や人事、育成について、元警察官僚である著者が、Q&A形式で具体的に分かりやすく説明してくれており、巡査、巡査長、巡査部長、警部補、警部、警視、警視正、警視長、警視監、警視総監、警察庁長官といった11の「階級」等や、「職制」「専務」について知ることが出来ます。なかでも「第4章 警察官の出世と実績・年功等」は、他の職業でも中堅以上の方々にとっては、身につまされる内容かと思います。 もっと端的に言えば、 例えば「音羽警察署の三宅刑事課長が次の異動で上を狙えるかどか?」は、 少なくとも起案段階では、警察本部の刑事総務課次席の匙加減ひとつで決まります(中略) 警察署長、警察本部の課長といった<課長級>以上というなら全くの別論ですが、 しかし現場で実務に当たるギルド員というなら、 その人事権を意識しない者はいないでしょう。(p.191)この「匙加減ひとつ」という言葉は、次の箇所にも登場します。 階級を上げたとき具体的にどのようなポストをゲットできるかは、 警察部門の(専務については一定程度各部門の)匙加減ひとつです。 本人の希望は聴取されますが、警察文化として 「希望は訊かれるものであって叶えられるものではない」ので、 望んだステイタスの/望んだエリアの/望んだジャンルのポストを ゲットできる方が稀かも知れません。(中略) 具体的な配置については、他にも悲喜交々の現象が生じ、 そしてそれを惹起するたいていの変数は、運です。(p.240)「警察官の出世をめぐるその他の変数」(p.238~p.256)を読んだとき、特に、59歳の筆頭署長・警視正が定期人事異動直前に、署内交番巡査部長が無線機を亡失したことにより、総務部長・警視長への栄転が消失?というエピソードには、背筋が寒くなる思いでした。「運も実力のうち」と言ってしまうのは簡単ですが、本人にすれば、決して割り切れるものではないでしょう。
2021.08.07
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姫野さんの作品には『ツ、イ、ラ、ク』で初めて接したのですが、 『ハルカ・エイティ』では、その作品の多様性に驚かされました。 そして、本作は、東大生5人による強制わいせつ事件をテーマに描かれ、 第32回柴田錬三郎賞を受賞した作品です。 私は、今年1月、『炎上CMでよみとくジェンダー論』を読んだ際、 著者である瀬地山角教授について調べていて、その存在を知りました。 *** 退学以外に示談する方法を、才媛は同姓同名の教授に訊いた。 教授は答えた。 「息子さんを含む、事件に関わった5人の男子学生の前で、あなたが全裸になって、 肛門に割りばしを刺して、ドライヤーで性器に熱風を当てて見せるから示談にして、 とお申し出になってみてはいかがですか」 とても静かな声であったが、聞いた才媛は、金切り声をあげて、憤慨した。 「こんなに罵倒されて侮辱されたことはないわ。 学生も学生なら大学も大学ね。どうしようもないバカ大学だわ」(p.534)読者が、それまで溜まりに溜まり続けたストレスを、一気に晴らすことができるシーン。しかし、我が身を振り返ったときには…… 読み進めるうちに、これが自分に無関係なエリートたちの引き起こした事件でなく、 東大生でもなければ男でもない私自身が、 場合によっては加害者と同じ心境に陥る可能性があると感じ始める。 そんな普遍性と迫真性は優れた小説のみが備えるものだ。(p.555)これは、巻末に掲載されている「第32回柴田錬三郎賞選評」のうち、篠田節子さんによる「フィクションでしか書けない真実がある」の一部です。加害者となった5人学生やその保護者たちに存在していた意識や感情は、個々に形は異なるものの、誰のうちにも存在するのではないかと改めて気付かされます。そして、同じく選評「無知と罪科」で、伊集院静さんは次のように記しています。 ただ報道というものは、事件の真実を、実は見出せないという宿命を常に持っている。 真実の定義は別として、その事件に興味を抱き、克明に見つめていくと、 そこに不可解なものや、闇の中にうごめく何かを感じることがある。(p.550)真実を知ることは難しい。断片的な情報、しかもそれが正しいのか間違っているのか自分では判断できない情報だけで、それについて全て知ったような、分かったような気になってしまってはいけません。このことについて、姫野さんは、本作の中で次のように記しています。 インターネットが危険なのは、すべての文字が、均一の電子活字であることだ。 対象となる事物事件等についての専門家からの意見も、 多角的視野から熟考できる社会人の意見も、 若年というより幼年といってよい子供からの、幼さゆえのヒステリックな意見も、 すべてが同じ電子活字で、あたかも公的見解であるかのように表示される。 不特定多数が目にする画面に。(p.466)現在行われている東京オリンピックにおけるアスリートへの誹謗中傷なども、この最たる例だと思います。
2021.08.07
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琢磨は環を救出すべく、多江の助力を得て、梨世と共に屋敷に忍び込む。 君に執着していたのは お母さんの真琴さんの事があるからかもしれない 真琴さんにそっくりな君を見て 今度こそ守らないと…と思ったんだ 僕は真琴さんを救いたかった 君を助けてその償いをしたい そして - 僕は君に関わる全ての事から 自由になる -しかし、梨世の裏切りによって、琢磨と多江は愛怜に捕らえられてしまう。そして、琢磨はモニター越しに対面した男から、極秋会病院を移植ツーリズムに特化した日本初の病院にするという構想を聞かされ、臓器移植手術の経験豊富な医師として、愛怜の指示に従うよう強要される。自身がガンに侵され余命数ケ月となっていた愛怜は、環と愛怜の、心臓を除く臓器全交換手術を行うよう琢磨に命じる。さらに、愛怜は、自身の精子と環の卵子を使って受精卵をつくり、それをもとに拒絶反応のないドナーの分身を大量生産しようとしていた。その頃、廣瀬は、記者・降矢聡を介して曹国良に会い、直接取材を申し出ていた。曹国良は、真琴が日米共同研究で造られたパーフェクトドナーのプロトタイプだったこと、しかし、倫理的な問題が大きすぎることから、秋光正が土壇場でアメリカを裏切り、プティシャトンという非正規ルートを通じてアメリカから脱出させたこと等について語る。 ***お話も、かなり核心に迫ってきた感じですね。そして、梨世によって意識を取り戻しつつある崇。この二人の行動が、今後の動きを左右しそうです。次巻は、2021年秋発売予定!!
2021.08.01
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