小玉智子のお買い物ブログ

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2010年01月08日
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 全世界で五百万人が涙したベストセラー小説「朗読者」の映画化作品が1/8にDVD発売。今回は、ケイト・ウィンスレットがアカデミー賞主演女優賞に輝いた戦争文芸ドラマ『愛を読むひと』(2008年)をご紹介します。

 1958年大戦後のドイツ。15歳の少年マイケルは20歳も年上の女性ハンナと激しい恋に落ちるが、ハンナは突然姿を消してしまう。1966年、法学生のマイケルは、傍聴した裁判でハンナと衝撃の再会を果たす。彼女は加害者の一人として裁かれようとしていた。彼女はある秘密を守るため、不当な証言を受け入れ、無期懲役の判決を受けてしまう。1976年、弁護士となったマイケルは、15歳の時、読み聞かせた本の朗読をテープに吹き込み、服役中のハンナに送るのだった…。

 2009年アカデミー賞の作品、監督、主演女優、脚色、撮影賞の5部門にノミネートされた本作ですが、1996年に映画化権を取得してから映画化までに10年以上の歳月を費やしました。当初、『イングリッシュ・ペイシェント』(1996年)のオスカー監督、アンソニー・ミンゲラが脚本・監督を担当。製作には『愛と哀しみの果て』(1985年)の名匠シドニー・ポラックが加わりました。しかし紆余曲折の末、ミンゲラは製作にとどまり、監督は『めぐりあう時間たち』(2002年)のスティーヴン・ダルドリーに交代したのです。主演女優は原作者ベルンハルト・シュリンクの意向もあり、当初からケイト・ウィンスレットの名が挙がっていたといいます。しかし、スケジュールの都合でケイトが降板し、こちらもニコール・キッドマンに交代。しかしそんなキッドマンも妊娠のため降板。ケイトが復活したのです。こうして撮影が開始された本作ですが、アンソニー・ミンゲラ、シドニー・ポラックは、完成を待たずして2008年に相次いでこの世を去りました。

 原作は未読なので、映画単体についてのみ語ります。
 見どころは、やはりドイツ人女性ハンナの35歳から30年後までを演じるケイト・ウィンスレットの演技です。15歳のマイケルとの官能シーン(R15指定)を体当たりで演じエロティックな一面、マイケルの朗読に少女のように笑い涙する屈託のない一面、過去を話すことを嫌い、どこか人とは違う謎めいた一面と、女性の様々な感情を演じ分ける一方、戦争犯罪の被告、20年の獄中生活で身なりに構わなくなった老女を、オスカー女優に恥じない名演で見せています。

 本作はドイツが舞台ですが、ハリウッド資本の英国監督作品ですから、全編、英語。主人公マイケルの少年時代を演じたドイツ人俳優のデヴィッド・クロスは、そのため、英語を猛勉強し、台詞、朗読、またギリシャ語とラテン語の朗読シーンもこなしています。大人になったマイケルを演じるのは、『イングリッシュ・ペイシェント』、『ナイロビの蜂』(2005年)のレイフ・ファインズ。こんな役、何回目?というくらいのタイプキャストです。

 他の共演者としては、『ベルリン・天使の詩』(1987年)の名優ブルーノ・ガンツがマイケルに多大な影響を与えるゼミの教授を演じ、『存在の耐えられない軽さ』(1988年)のレナ・オリンが被害者女性を演じています。

 15歳の少年が経験したたったひと夏の恋が、彼の人生を支配してしまうという文学的なアプローチが素晴らしく、朗読されるホメロスの『オデュッセイア』、チェイホフの『犬を連れた奥さん』などの文章が効果的に使われています。ムーディーな文芸メロドラマとしては良い作品だと思います。

 ただ、末端の庶民を問う戦犯裁判、ハンナとマイケルのキャラクターの本質については、いささか舌足らずに感じます。原作者ベルンハルト・シュリンクは、ウィリアム・スタイロンの名作「ソフィーの選択」(映画『ソフィーの選択』(1982年)は未DVD化)に少なからず影響を受けていると思われますが、「ソフィーの選択」は個人の罪の意識にとどまっているのに対し、本作は、戦犯裁判にまで話を広げているため、若干、主題が逸れてしまっているのではないでしょうか。
 特に、秘密を知っているマイケルが、そのせいで20年もの刑に服したハンナに対して「過去の罪を思い出すか?」と問う台詞には違和感を感じます。英国人のスティーヴン・ダルドリーが監督し、脚本は『めぐりあう時間たち』のデヴィッド・ヘアに依頼したことにより、このようなシーンが追加されたのかもしれません。アンソニー・ミンゲラが脚本・監督していたら、もっとマイケルのハンナに対する思慕の情が描かれたのではないかと想像を巡らせてしまいます。
 この機会に原作を読んでみようと思います。

 次回は、日本アカデミー賞優秀作品賞に選ばれた、鶴瓶主演作『ディア・ドクター』(2009年)をご紹介します。





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最終更新日  2010年01月10日 12時38分11秒


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