小玉智子のお買い物ブログ

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2010年05月31日
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 フランス映画史上屈指の傑作として名高い『天井桟敷の人々』が、5/5にHDニューマスター版でDVD発売。今回は、HDニューマスター版のDVDと、名作50本を1年に亘り上映しているTOHOシネマズ“午前十時の映画祭”について、ご紹介します。

 まずは、作品紹介から。
『天井桟敷の人々』(1945年/仏/モノクロ)は、19世紀のパリを舞台に、愛と自由と誇りを持って生きるフランス人の姿を高らかに謳いあげた人生讃歌です。
 1945年と言えば第二次大戦の最中。マルセル・カルネ監督率いるフランス界の映画人たちは、ナチスドイツの占領下にありながら、ナチにひるむことなく、国内に留まって本作を製作。フランス人の真髄を描いた作品として高く評価され、1946年ヴェネツィア国際映画祭特別賞を受賞しています。

 物語は第1部「犯罪大通り」、第2部「白い男」の2部構成となっています。
 19世紀のパリ。“犯罪大通り”と呼ばれる下町の一角で、見世物小屋に出演している美女ガランスと、パントマイムの天才役者バチストとが劇的な出会いをし、二人は一瞬のうちに愛し合います。しかし、ガランスには自称詩人のラスネールや、美男役者フレデリック・ルメートル、そしてモントレー伯爵など恋敵が多く、一方のバチストには座長の娘ナタリーが一身に愛を捧げていました。それぞれの想いが絡み合いながらも5年の歳月が流れ…。

 第1部「犯罪大通り」では、“犯罪大通り”にあるフュナンビル座の周辺を舞台に、善人や悪人、庶民や上流階級の人々、浮浪者に至るまで、様々な登場人物たちが流れるように紹介され、当時の活気に溢れたパリに生きる人々が浮き彫りにされていきます。それぞれの人物紹介とキャラクター造形は見事で、物乞いや仕立屋といった脇役までもが丁寧に描かれています。中でもナイーブな青年バチストの登場シーンは印象深く、演じるジャン=ルイ・バローの演技には全編、魅了されます。4人の男に愛されながらも運命に翻弄される女ガランスを演じるアルレッティの愁いを帯びた演技、ラスネールを演じるマルセル・エランの単純に悪人とは言い切れない深みのある演技も素晴らしく、各名優たちの個性的な演技が楽しめます。役者たちによる舞台のシーンや、タイトルにもなっている桟敷席に陣取り、野次を飛ばす庶民の姿などの風俗描写も見応えがあります。
 第2部「白い男」は、5年後からはじまり、それぞれの生活の変化が描かれ、そこから新たにシェイクスピアかギリシャ悲劇のような愛憎劇が展開されます。そして、彼らには思いもよらない結末がやってきます。

 詩的レアリスムを代表する一編と位置づけられている本作は、当時としては破格の予算がかけられ、オープンセットを初めとする美術や俳優たちが身にまとう衣装の美しさが圧巻です。しかし物語の中心は、あくまでも市井の人々です。彼らの中には貧しさ故に犯罪に手を染める者もいれば、貧しくとも夢を捨てずに善良に生きようとする者もいます。その多くは愛を求め、愛に生き、愛に死んでいきます。ジャック・プレヴェールによる数々の名セリフに彩られた脚本は、そんな彼らの人生を鮮やかに浮き彫りにしていくのです。これぞ、愛に生きるフランスの真髄と言える1本なのです。

 そこで、DVDのご紹介です。
 戦時中とは思えないほど、豪華絢爛たるセット、衣装、美術、そして名優たちによる豊かな人間模様…。HDニューマスター版では、その映像の細部までが再現され、俳優たちの顔の表情や、通りを行き交う群衆の一人一人、美術セットの隅々まで、鮮明な映像で観る事が出来ます。私は、これまでLD版でしか観ていなかったので、このDVDの映像には感激しました。名画であればあるほど、画質が悪くても、脚本や音楽や演出によって作品の良さを感じる事は可能ですが、やはり、クリアな画像で観る事によって、より作品本来の良さを体感出来るものです。役者さんの演技一つをとっても、表情などをはっきりと観る事が出来るので、彼らの演技を、これまで以上に楽しめます。また、これまで気づいていなかった細部の演出にも気づくかもしれません。ですから、ぜひ、傑作と言われているような作品は、高画質で観る事をおススメします。

 ちなみに、HDニューマスター版のDVDは、各メーカーより発売されています。例えば、『天井桟敷の人々』は、販売元のSPOさんが“愛蔵版 欧州女優コレクション”の1本としてリリースした作品です。他に『ひまわり』(1970年)、『美しき諍い女』(1991年)、『若草の萌えるころ』(1968年)などが発売されています。洋画の旧作については、あまり宣伝がされていないので、欲しかった作品のHDニューマスター版が発売されているかもしれません。たまには検索でチェックしてみてください。

 さらにおススメしたいのは、名画と呼ばれるクラシカル作品を映画館で観ることです。なぜなら、ソフトが無い時代の作品は、製作側もスクリーンで観る事を前提に撮っていますから、テレビ画面で観るのと、劇場のスクリーンサイズで観るのとでは、全く印象が変わってくるからです。
 私の場合は、小さい頃からテレビで何回も観て来た『ローマの休日』(1953年)をDVD発売記念の劇場試写会で観た時、言葉では何とも表現出来ない感動を覚えて涙があふれたという体験があったんですね。それから、今まで観たつもりになっていた旧作をリバイバル上映などで観るようにしたのですが、その結果、これまでテレビ画面サイズで観たつもりになっていた作品は、正確には、観たことにはならないんじゃないか?ということに気づいたんです。
 『ローマの休日』は、テレビで観ても勿論、素晴らしい作品なのですが、ヘップバーンの顔がスクリーンいっぱいにアップになった時、その美しさとスターオーラに圧倒されました。現代はスターシステム自体が崩れてきていますから、昔のスターのオーラとは違うというのもありますが、それ以上に、スターをスター然として撮る監督の演出技術も、現代とは違うのです。映像の構図やフレームも、当然、スクリーンの大きさに合わせているので、テレビ画面では効果が半減してしまいます。

 そこで、次にご紹介するのがTOHOシネマズで開催している“午前十時の映画祭”です。2010年2月~2011年1月まで、1年に亘り、名画50本を全国25館で上映しています。それも、すべてオリジナル・ニュープリント版の高画質で観る事が出来るのです。上映タイトルと上映期間は、各劇場によって異なりますが、私は先日、『天井桟敷の人々』を観て来ました。これが、実はHDニューマスター版のDVDよりも高画質で、バチストの衣装の布地や、エキストラさんの顔までわかるくらいの鮮明さでした。50本の中には、ソフト時代のカラー作品もありますが、観るならぜひ、リアルタイムで見逃した作品をおススメします。『アラビアのロレンス』(1962年)、『北北西に進路を取れ』(1959年)、『ウエスト・サイド物語』(1961年)といったロケ効果や映像センスの高い作品がおススメです。今度は『ライトスタッフ』(1983年)を観に行こうと思っています。まずは劇場で観て好きになって、それからDVDやBlu-rayを買う。これが映画ファンの王道スタイルかな、と思うこのごろです。

 次回は、6/4にDVDが発売されるベストセラー小説の映画化『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2009年/スウェーデン=デンマーク=ドイツ)をご紹介します。





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最終更新日  2010年06月01日 02時06分06秒


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