小玉智子のお買い物ブログ

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2010年06月02日
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 全世界2100万部を突破したスウェーデン発の傑作ミステリーを映画化した『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(2009年/スウェーデン=デンマーク=ドイツ)が6/4DVD発売!今回は、映画史上にも類をみない強烈な個性を持った不屈の女リスベットが主人公の秀作ミステリーをご紹介します。

 皆さんは強くてカッコイイ女性キャラクターといえば、誰を思い浮かべますか?『ターミネーター』シリーズのサラ・コナー、『グロリア』(1980年)のジーナ・ローランズ、『トゥームレーダー』(2001年)や『ウォンテッド』(2008年)のアンジェリーナ・ジョリー、『ドミノ』(2005年)のキーラ・ナイトレイ。英国TVドラマ『第一容疑者』のヘレン・ミレン…彼女の場合はカッコイイと言うより怖いって感じですけど…。

 『ミレニアム』のリスベットは、その誰とも違います。少年と見紛うほど短髪に小柄で細身。鼻と眉にピアスを付け、背中にはドラゴンのタトゥー。情報収集能力に長け、映像記憶能力を持つ天才ハッカー。無口で凶暴。他人を信じず、法や秩序を無視し、やられたらやり返す。
 ここまで聞けば、気づく方は気づくでしょう。そうです、リスベットはまるでアメコミのダーク・ヒーロー。それも、『ウォッチメン』(2009年)のロールシャッハばりにハードボイルドな世界に生きる孤高のヒロインなのです。

 まずはストーリーから。
雑誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエル・ブルムクヴィストは、大企業ヴァンゲルグループの元会長であるヘンリックに、40年前に起きた少女失踪事件の調査を依頼される。失踪したハリエットは彼が可愛がっていた孫娘で、彼は、事件の背景に、ヴァンゲル一家の誰かが関わっていると疑っていた。死期が近いと悟ったヘンリックは、この迷宮入り事件の真相を確かめ、犯人への復讐を誓っていた。一方、ヘンリックに依頼され、ミカエルを調査した天才ハッカーのリスベット・サランデルは、失踪事件に興味を持ち、独自に調査を開始。やがて、ある重大な手掛かりを発見し、ミカエルと共に、この難事件に取り組むことになる…。

 美しい少女の身に一体、何があったのか?孤島に住むヴァンゲル一家の謎とは?ジャーナリストの立場から事件を探るミカエルと、自身の信じるままに行動するリスベット。二人の特異なキャラクター性と、謎に満ちたストーリーが絡み合い、ある名門一族の第二次世界大戦中にまで遡る忌まわしい過去が暴かれていくという、社会性と独創性に優れた脚本で観る者を惹きこんでいきます。

 原作は、ジャーナリストのスティーグ・ラーソンとパートナーのエヴァ・ガブリエルソンとの共同執筆。ラーソンは、5部作構想で3作目までを書き終えましたが、第1作の出版直前の2004年に突然、心筋梗塞で他界したそうです。
 これが処女作とはいえ、自身が反ファシズム誌や人道的な政治雑誌を編集していたというだけあって、思想に裏打ちされた骨太のストーリーを展開。ミカエルは作者の分身と言えます。
 さらに、本作のテーマは、女性への偏見・軽蔑・暴力に対する怒り。映画の前半、リスベットは様々な男性から暴力や暴行を受けます。しかし、女性であるエヴァ・ガブリエルソンも関わっているためか、通常、男性目線で描かれがちなこれらのシーンで、女性キャラのリスベットは男性に媚びず、決して被害者とはならない不屈のキャラとして行動します。このあたりが本作の見所であり、女性におススメする最大のポイントです。

 本国スウェーデンでは、人口900万人の中で300万部を売り上げ、社会現象とまでなった原作シリーズ。それだけに、24歳のリスベット役が30歳の子持ち女優ノオミ・ラパスに決まった時は、『007』シリーズのボンド役がダニエル・クレイグに決まった時ぐらい?ブーイングの嵐が起きたそうです。でも、ノオミ・ラパスは、半年かけてバイクと空手を習得し、減量にも成功。見事、リスベットに成りきりました。本編を観た後、誰も文句を言わなくなったそうです。これぞ、女優魂。ノオミ・ラパスにも、拍手を贈りたいですね。

 原作ファンからすると映画作品には文句もあるようですし、ウェルメイドされたハリウッド映画ではありませんから、特に前半の展開がとてもゆっくりとしているので、観やすい作品ではないかもしれません。しかし、やはり、演出とか完成度といった技術以上に、原作の面白さが、映画の脚本にも乗り移っており、これを観ない手はありません。
 北欧映画独特のテンポとダークさ、この世の人間とは思えない特異なリスベットのキャラには、他の国の映画にはないオリジナリティが感じられます。本国の俳優さんが演じ、本国で作られるということにも意義がありますよね。

 それに、本作のように男性の暴力の被害者になりがちな女性が、下劣な男たちをギャフンと言わせるという胸のすくような作品は、あまり、お目にかかれるものではありません。ぜひ、女性におススメしたいと思います。勿論、男性も楽しめる作品です。

 最後に、共演者についてふれておきます。本作にはスウェーデンの名優たちが出演しています。主人公のミカエルを演じるのは『歓びを歌にのせて』(2004年)のミカエル・ニクヴィスト、イザベラを演じるのは、巨匠イングマール・ベルイマンの代表作『野いちご』(1957年)、『第七の封印』(1956年)他に出演しているグンネル・リンドブロム、失踪したハリエットは『ファニーとアレクサンドル』(1982年)に出演のエヴァ・フレーリング、ヘンリックは『鷲は舞いおりた』(1976年)でマイケル・ケインの副官を演じていたスヴェン=ベルティル・タウベ 。気がつかなかった方は、DVDでゆっくりと確かめてみてください。

 原作は3部作で、すでに『ミレニアム2 火と戯れる女』『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』も撮影終了、日本では9月に劇場公開が決まっています。ただし、これはテレビドラマを、映画用に再編集したものだそうです。『ミレニアム2』では人身売買・強制売春がテーマとなり、『ミレニアム3』では公安警察も乗り出す国家的政治事件にも発展。リスベットが大変な事に…。楽しみですね。

 ハリウッドリメイクも決定しており、監督は『ゾディアック』(2006年)、『ファイト・クラブ』(1999年)のデヴィッド・フィンチャーの線が濃厚なようです。思い浮かぶリスベット役は、若い時のキーラ・ナイトレイですが、現在の第一候補は『17歳のカルテ』(2009年)のキャリー・マリガンのようです。配役がどうなるのか気になります。こちらも目が離せませんね。いずれにしても、『ウォッチメン』や『ダークナイト』の雰囲気で撮ってくれるよう祈るばかりです。

 次回は、5/19にDVDが発売された『かいじゅうたちのいるところ』(2009年)と、スパイク・ジョーンズ作品をご紹介します。





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最終更新日  2010年06月03日 02時02分41秒


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