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公的な情報の全面的な開示は民主主義にとっての最低条件であり、国際的に「民主主義国家」として認められるためには情報公開を法律で定める必要がある。一時的に隠す必要がある情報もあるが、一定の期間をおいて明らかにしなければならない。その期間が50年とか60年という長い期間になることも論外だ。 日本で「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)」が公布されたのは1999年5月、施行は2001年4月1日のこと。第1条には、「政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。」と書かれている。政策を決定する権利と義務は最終的に主権者である国民にあるのが民主主義国家だが、そうしたことは考えていないようだ。国民は「説明」の対象であり、「理解」と「批判」が許されているだけだ。 そうした法律だが、それでもこの法律ができた頃、霞ヶ関の官僚たちが陰で不満を口にするのを聞いたことがある。本当に隠したい情報は文書にしないと法律に挑戦するかのようなことも話していた。 そうした不満を爆発させたのが問題の「特定秘密の保護に関する法律案(特定秘密保護法案)」だろう。法案を作成する切っ掛けはアメリカ政府からの要求だったかもしれないが、それを利用して自分たちの夢を実現しようとしたとしか考えられない。「官僚支配」から「官僚独裁」へ日本を作り替えようとしている。 明治維新によって生み出された「近代日本」は三島通庸のような内務官僚の自由民権運動弾圧で始まっている。1885年から88年まで警視総監を務めているが、その間に「治安維持法」の前身となる「治安警察法」を施行されている。三島の二女が大久保利通の次男と結婚、その娘の結婚相手が吉田茂であり、吉田の孫が麻生太郎だ。 1910年に日本は韓国を併合、その年に「天皇暗殺」を計画したという口実で幸徳秋水などが拘束され、24名に死刑が言い渡されている。いわゆる「大逆事件」だ。勿論、でっち上げ。思想弾圧の実行部隊になる特高警察の歴史は1911年に始まる。警視庁に特別高等課が設置されたのだ。 1927年と28年、日本は中国の山東省へ出兵して中国侵略を本格化させるが、それにタイミングを合わせて28年には日本共産党や同党と関係の深い団体の事務所や幹部の自宅などを家宅捜索、その際、約1600名を逮捕したと言われている。この「三・一五事件」をひとつの切っ掛けにして、特高警察は肥大化していく。 第2次世界大戦で敗れるまで、日本の支配層は「治安維持法」や「軍機保護法」などで体制を維持し、その体制を支配している自分たちを守ろうとしていたのだが、その一方で新聞社や出版社が自主規制、多くの庶民は法律を私利私欲のために利用していた。 戦前の映画監督で伊丹十三の父、伊丹万作の書いた「戦争責任者の問題」という一文が「映画春秋」創刊号(1946年8月刊)に掲載されたが、その中で「戦争中の末端行政の現われ方や、新聞報道の愚劣さや、ラジオのばかばかしさや、さては、町会、隣組、警防団、婦人会といつたような民間の組織がいかに熱心にかつ自発的にだます側に協力していたか」を指摘している。 こうした思想弾圧の犠牲になった人は多いが、その中には、創価学会の前身になる「創価教育学会」を設立した牧口常三郎や戸田城聖も含まれている。牧口は獄死した。そうした歴史のある創価学会の事実上の政治部門、公明党は特定秘密保護法案で安倍晋三首相に同調し、推進している。 現在の創価学会に君臨しているのは池田大作。戸田が1958年に「急性心衰弱」で死亡した2年後、池田が会長に就任する。1961年に創価学会の顧問となった塚本素山(清)は日本軍が中国で略奪した財宝のうちダイヤモンドをフィリピンから日本へ運び込んだひとりだとされ、アメリカの支配層と深いところで結びついていたと信じられている。
2013.11.30
ロシアのビタリー・チュルキン国連大使をCNNがインタビュー、その内容を放送したのだが、重要な点を削除したと指摘され、2日後に全筆記録を公表する羽目に陥った。CNNが放送した日にロシアの国連代表部はインタビュー全体の内容を明らかにしていたことも影響したかもしれない。 CNNはシリアの和平交渉へイランを参加させるべきかどうかにポイントを絞って放送している。チュルキン大使はシリアの将来を決めるのはシリアの人びとであるべきだとしたうえで、バシャール・アル・アサド大統領はシリア国民の多数派から支持されていると指摘、またシリアで残虐な行為を繰り返している反政府軍の背後関係も明らかにするべきだと発言しているのだが、この部分をCNNは削除したわけだ。 反政府軍を使ってシリアのアサド体制を転覆させようとしている外国勢力とは、本ブログで何度も書いてきたことだが、アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタール、イスラエルなど。ただ、最近はサウジアラビアとカタールが対立、アメリカの非ネオコンやイギリスが好戦的な姿勢を弱めている。 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、ネオコン(親イスラエル派)の大物、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官がシリア、イラン、イラクを殲滅すると語ったのは1991年、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが2007年に書いた記事によると、その時点でアメリカ、イスラエル、サウジアラビアはシリアやイランをターゲットにした秘密工作を開始していた。 つまり、反シリア政府軍の後ろ盾の中枢にはネオコン/イスラエルとサウジアラビアの同盟がある。化学兵器使用の黒幕はサウジアラビアだという疑いが濃厚であり、イスラエルはシリアを繰り返し空爆、挑発している。この同盟をチュルキン大使は暗に批判しているのだが、CNNはそうした発言を当初、隠した。 かつて日本はアジア侵略を正当化するため、「大東亜共栄圏」なる幻影を作り出して宣伝、日本国内ではそれなりの効果があったようだ。同じように、中東/北アフリカに対する支配力を強めるため、「西側」は「民主化」や「人権」を掲げている。勿論、その実態は看板と正反対。それでもCNNは看板に反することを放送したくなかったのだろう。
2013.11.30
60年前に同じ病院で生まれた子どもが取り違えられていたことがわかり、東京地裁は取り違えた病院に対して3800万円の賠償を命じたという。訴えた男性の実の親は豊かで教育熱心だったのに対し、育った家は母子家庭で生活保護を受け、工場で働きながら定時制高校に通う環境だった。そのことから、「男性の本来の家庭は裕福だったのに、高等教育を受ける機会を失わせて精神的な苦痛を与えた」と裁判官は認定したようだ。 実の親から引き離されて生じた精神的な問題は別にして、経済力と教育との関係は政策の問題である。実の親に育てられていても、さまざまな理由から経済的に苦しい環境にある人は少なくない。そうした環境の中に置かれた子どもをどう考えるのか? 斎藤貴男の表現を借りるならば、日本は「機会不平等」の社会になっていて、向学心も能力もある子どもが経済的な理由から進学できないケースもある。そうした子どもも「重大な不利益」を被っているのではないのか。 「家庭環境だけで必然的に学歴が決まるわけではない」とはいうものの、日本では家庭環境が圧倒的に重要な要素だということは明らか。バーテルスマン基金が算出した指数によると、日本の「社会的公正さ」はOECDの中で22位。(PDF)日本が不公正社会だということは世界が認めているということ。 こうした不公正な社会を作り上げた「理論」は新自由主義。「神の見えざる手」が支配する架空の「理想的市場」を絶対視する一種の宗教だ。実際の市場は圧倒的な資金力と情報力を持つ個人や集団に動かされているわけで、新自由主義のキーワードは「操作」であり、新自由主義に基づく教育も社会的に有利な立場にある人びとによって操作されることになる。 安倍首相の私的諮問機関だという「教育再生実行会議」が提出した「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」は、アメリカのように情実入学を公然と認める内容。恣意的に合格者を選べる仕組みを作ろうとしている。 教育課程審議会の会長を務めた作家の三浦朱門はかつて、「平均学力が下がらないようでは、これからの日本はどうにもならんということです。できん者はできんままで結構。戦後五十年、落ちこぼれの底辺を上げることにばかり注いできた労力を、できる者を限りなく伸ばすことに振り向ける。」(斎藤貴男著『機会不平等』文藝春秋、2004年)と主張していた。 しかし、「教育再生実行会議」の提言を見ると、日本の「エリート層」は自分たちの仲間の子どもを「できる者」と位置づけ、庶民の子どもは「限りなくできない非才、無才」として切り捨てようとしている。こうした政策を推進すれば、能力のある子どもを切り捨て、「非才、無才」が「エリート」として社会に君臨することになる。 不公正な社会は衰退していく。日本がそうした仕組みの国だということを今回の子ども取り違えは示している。子どもの取り違えで教育環境が大きく変わってしまうのは社会的な犯罪だ。
2013.11.28
新たに公表された「エドワード・スノーデン文書」によると、NSAはインターネット上の性的な行為の記録、あるいはポルノ・サイトへアクセスした証拠を集めているという。「急進的な思想を広めている」と見なされた人物の評判を落とすことが目的のようだが、自分たちの手駒として使うために脅迫する材料としても使われる可能性がある。 この情報を伝えたハフィントン・ポスト紙も指摘しているように、アメリカでは政治家など社会的に影響力のある人物を脅すために性的なスキャンダルを集め、利用してきた。例えば、J・エドガー・フーバーFBI長官はジョン・F・ケネディ大統領とロバート・ケネディ司法長官の兄弟、あるいは公民権運動の指導者だったマーチン・ルーサー・キング牧師もターゲットにしている。 また、マジックミラーなどを通して室内を撮影できるようにした場所へターゲットを誘い込み、薬物を混ぜた飲み物を与えるなどして女性とセックスさせ、その様子を記録するという、犯罪組織が行うようなものもあったようだ。 1998年までUNSCOM(国連特別委員会)の査察官としてイラクの大量破壊兵器を調査していたスコット・リッターはジョージ・W・ブッシュ政権がイラクを先制攻撃する前、攻撃の口実としていたイラクの大量破壊兵器保有に否定的な見解を公表、後にリッターの主張が正しかったことが証明されている。 このリッターは2009年に逮捕される。15歳の少女を装った捜査官とインターネット上のチャット・サイトで性的な行為を行ったという容疑で、2011年には1年半から5年半の懲役が言い渡されている。 現在、NSAは全ての通信を記録しているようなので、何らかの事情でターゲットになると、何年もさかのぼって記録が調査されることになる。CIA長官だったデービッド・ペトレアスが辞任に追い込まれたのは、彼の伝記を書いた元情報将校のポーラ・ブロードウェルと浮気していたことが発覚したためだと言われているが、その証拠となった電子メールも、そのように調べられたのだろう。 つまり、巨大銀行やヘッジ・ファンドで大金を手にしている人びとの活動内容もNSAは知っている可能性が強いのだが、たとえ犯罪行為があっても秘密にしている。それどころか、相場操縦に協力している疑いがある。 こうしたNSAの情報活動が「矛(攻撃)」だとするならば、、「特定秘密保護法案」は「盾(守り)」。この法案は自衛隊をアメリカ軍の下請け部隊として使うために出てきたと言われているが、アメリカ側からの要求を利用し、日本の官僚は公的な情報の独占を図り、支配階級としての地位を確たるものにしようとしている。心置きなく私腹を肥やすと同時に、過去の犯罪的な行為の責任を問われないようにすることが目的だろう。 当然、日本の原子力行政に関する情報も隠される。東電福島第一原発の事故では日本だけでなくアメリカ大陸でも放射性物質の生態系への影響が報告され、このまま進むと、予想外に早い時点で官僚の責任が問われることになりかねない。原発での作業に広域暴力団が関与していることも世界的に知られ、作業員の健康状態も深刻で、多くの死者が出ているという噂も流れている。核兵器の開発に関する情報は最高度の「特定秘密」になるはずだ。 原発の「安全神話」は政治家、官僚、巨大企業、マスコミ、学者が広めた荒唐無稽な作り話で、物事を考えるタイプの人は事故の前から全く信じていなかった。「特定秘密保護法案」とは、そうした荒唐無稽な話以外、口にすることを許さないという強制装置だ。官僚として働き始めるのは20歳代の半ば、仕事の中心になるのは30歳代。60年経てばそれぞれ80歳代と90歳代。「逃げ切れる」と考えて決められた年数なのだろう。
2013.11.28
中国政府は11月23日、東シナ海に防空識別圏を設定したと宣言した。尖閣諸島/釣魚島をめぐる日中の対立という見方が主流のようだが、現在、中国が意識しているのはアメリカに外ならず、アメリカ政府に対するメッセージだと考えるべきだ。 経済的に中国と結びつこうとする力がアメリカで働いていることは確かだろうが、ネオコンや戦争ビジネスは東アジアでの軍事的な緊張を高めようとしている。そうした意向に沿う形でジョージ・W・ブッシュ政権は「中国脅威論」を宣伝、その力は今でも消えていない。今の日本を支配しているのは、そうした好戦的な勢力である。 今年に入ってからアメリカが東アジアでどのように動いたかを見ると、まず目に飛び込んでくるのは、朝鮮軍部内の強硬派を鎮圧して情勢を安定させるという想定で10万人以上の韓国軍と3月11日に実施した軍事演習。その際、アメリカ軍はB-2ステルス爆撃機を派遣、F-22ステルス戦闘機をオサン(烏山)空軍基地に配置したという。4月にフジテレビ番組に出演した自民党の石破茂幹事長は、自衛隊による敵基地攻撃能力の保有を検討すべきだと発言している。米韓の動きに日本も同調しているということだ。 その韓国では8月28日、情報/治安機関の国家情報院(NIS)が統合進歩党の李石基議員に対する家宅捜索を実施、後に逮捕、起訴している。5月に開かれた党の会合で警察署や通信施設、石油施設などの破壊を話し合ったというが、統合進歩党のスポークスパーソンは容疑を事実無根だと主張、リークされた録音記録は、彼らの意図に合わせて歪曲され操作されたものだという。統合進歩党側の説明では、朝鮮とアメリカとの対立が戦争に発展する可能性を懸念した李議員は「平和と統一をめざす我が統合進步党の党員たちはどのように対処していくか」という問題を語ったのだという。 この強制捜査が行われる伏線は昨年12月に行われた大統領選挙。NISはセヌリ党を勝たせるために工作を実施したのである。日本において東京地検特捜部の果たしている役割を韓国ではNISが担当しているということだが、得票率はセヌリ党の朴槿惠が51.6%、民主党統合党の文在寅が48.0%という僅差。アメリカにとって好ましくない勢力が与党に拮抗する支持を得たということだ。 そうした不正を行ったNISに対する抗議活動が今年に入って盛り上がり、8月10日にソウルで行われた集会には5万人が集まったという。その18日後に統合進歩党への強制捜査が始まったわけだ。この逮捕劇はそうした抗議活動に水を差すことになる。当局の作戦は成功したということだろう。 韓国では済州島に海軍基地が建設されようとしているが、アメリカ軍の軍事的な拠点になると見る人は少なくない。また、今後、中国を睨んで無人偵察機や対潜哨戒機を日本に配備するともいう。こうしたアメリカ側の動きに対して中国は神経を尖らせ、ハワイへ情報収集船を派遣したと伝えられている。 エドワード・スノーデンのケースでも明らかなように、アメリカの言いなりになっているスペイン。その国の裁判所が中国の元首脳らに対して逮捕状を出す決定を下したことも中国を刺激した可能性がある。 アメリカが東アジアでの軍事的な緊張を高める方向へ動き出したのは1990年代後半のこと。1998年に作成したOPLAN 5027-98は、金正日体制を倒して朝鮮を消滅させ、アメリカの傀儡が主導する新たな国を建設することを目指している。 こうした動きに対し、この年の8月に朝鮮は太平洋に向かって「ロケット」を発射し、翌1999年3月には海上自衛隊が能登半島の沖で「不審船」に対し、規定に違反して「海上警備行動」を実行している。この年には金体制が崩壊、あるいは第2次朝鮮戦争が勃発した場合に備える目的でCONPLAN 5029が検討され始め、日本も朝鮮戦争に備え、アメリカ軍が日本や太平洋地域に駐留することを認めたと言われている。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターにあった超高層ビル2棟に航空機が突入、ほぼ同時に国防総省の本部庁舎が攻撃されると、それ口実にしてアメリカは20年近くかけて準備してきた「戒厳令」を始動させ、石油パイプラインをめぐって対立していたアフガニスタンを先制攻撃、2003年3月にはイラクを先制攻撃する。 このイラク攻撃とほぼ同時にアメリカは空母カール・ビンソンを含む艦隊を朝鮮半島の近くに派遣、6機のステルス攻撃機F117が韓国に移動し、グアムには24機のB1爆撃機とB52爆撃機を待機させたという。この年、核攻撃を想定したCONPLAN 8022を作成したとも言われている。 WikiLeaksが公表した文書がによると、2009年7月に韓国の玄仁沢統一相はカート・キャンベル国務次官と会談し、朝鮮の金正日総書記の健康状態は悪く、余命はあと3年から5年だとしたうえで、息子の金正恩への継承が急ピッチで進んでいると説明している。 この会談で玄統一相は朝鮮が11月に話し合いへ復帰すると見通していたのだが、こうした流れを壊す動きが韓国側から出てくる。10月に韓国の艦艇が1日に10回も領海を侵犯、11月に両国は交戦、話し合いどころではなくなったのだ。 2010年9月には、尖閣諸島/釣魚台群島の付近で操業していた中国の漁船を海上保安庁が「日中漁業協定」を無視する形で取り締まり、その際に漁船が巡視船に衝突してきたとして船長を逮捕する。漁業協定に従うなら、日本と中国は自国の漁船を取締り、相手国漁船の問題は外交ルートでの注意喚起を行うことになっていた。この協定を無視した海上保安庁は国土交通省の外局。事件当時の国土交通大臣は前原誠司で、その直後に外務大臣に就任している。 東北で地震が起こり、東電福島第一原発が破壊されて大量の放射性物質を環境中に放出し始めた後、2011年12月に石原伸晃はハドソン研究所での講演で、尖閣諸島を公的な管理下に置いて自衛隊を常駐させ、軍事予算を大きく増やすと発言、翌年4月には父親の石原慎太郎が「ヘリテージ財団」主催のシンポジウムで講演、尖閣諸島の魚釣島、北小島、南児島を東京都が買い取る意向を示した。それに対して日本政府は諸島を国有化、日中関係は急速に悪化することになる。 そして昨年11月、日本とアメリカは沖縄を中心にした大規模な統合軍事演習「キーン・スウォード」を実施した。日本から3万7000名余り、アメリカから約1万人が参加、自衛隊の艦船やアメリカの空母も加わっている。当初の予定では、仮想敵に占領された無人島を解放する作戦が含まれていたのだが、最終的にはプログラムから除外されたようだ。ただ、それでも中国を挑発するには十分な内容で、強硬路線を引き出すことになる。 その1年後、中国は防空識別圏の設定を宣言する。その直後、アメリカはグアムから2機のB-52爆撃機をその防空識別圏の中を飛行させて対抗、南シナ海には2隻の原子力空母、ジョージ・ワシントンとニミッツがいる。米中の力比べが始まった。イランやシリアで話し合いが進んで緊張が弱まるのと反比例する形で東アジアでは軍事的に緊張が高まっている。中国の資金で戦争しているアメリカが中国を挑発するという倒錯の世界だ。 これまで中国は親米的な姿勢を示していたが、力で対抗しなければ、アメリカの好戦派は侵略してくるということを中東/北アフリカで中国も学んだはず。今後、シリアにおけるロシアのように、中国も軍事力と外交を絡めてくるのだろう。【追加】 アメリカ軍の戦略爆撃B-52に続き、自衛隊は対潜哨戒機P-3Cを、また韓国も航空機を中国が設定を宣言した防空識別圏を無通告で飛行させたと伝えられている。 中国は日本に対し、自分たちに宣言は、日本が1969年に防空識別圏を一方的に設定したのと同じことだと主張。 日本やアメリカのメディアは、今回のケースでも日米政府の主張を垂れ流している。「特定秘密保護法案」は既に起動しているかのようだ。 中国が戦闘機と早期警戒機を防空識別圏へ通常パトロールのために派遣したと発表。
2013.11.27
これまでも日本の支配層は情報を支配、そうした体制を大手のマスコミや名のある学者は容認してきた。公的な情報を隠し、個人の情報を集めているわけだが、技術力の進歩によって情報を収集する能力は地球規模になっている。アメリカでは通話だけでなく、電子メール、インターネットのアクセス状況などを全て記録、いつでも引き出して攻撃に使えるような体制だ。 アメリカでは1970年代の終盤から不特定多数の人物を追跡し、情報を収集/分析するシステムが開発されていた。INSLAW社がアメリカ政府と共同で開発したPROMISもそのひとつで、日本の法務総合研究所は「研究部資料」で紹介している。 この当時、駐米日本大使館に一等書記官として勤務していたのが原田明夫であり、システムを開発したINSLAWと実際に接触していたのは敷田稔だ。後に原田は法務省刑事局長として「組織的犯罪対策法(盗聴法)」の法制化を進めることになる。 その後、技術の進歩はすさまじく、21世紀に入るとアメリカ国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)は、個人の学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータなどあらゆるデータを収集し、分析するシステムを開発する。最近、その一端をエドワード・スノーデンが内部告発した。 本ブログで何度も書いているように、誰が公的な情報を支配しているかで、誰がその体制を動かしているのかがわかる。安倍晋三政権が強引に成立させようとしている「特定秘密保護法案」は全ての情報を官僚が支配し、その支配に「部外者」が介入することは許さないという代物。民主主義の装いすら破壊し、公然と官僚が日本を支配する独裁体制に移行するということだ。支配階級を固定するため、「情実」で入学者を決められる入試システムへ変更しようとしている。 「特定秘密保護法案」によると、情報は基本的に官僚が支配することになるが、アメリカの支配層へは流れていく仕組み。安倍首相は「戦後レジームからの脱却」、つまり「戦前レジームへの回帰」を主張しているが、戦前も日本はウォール街に支配されていた。 戦前の日本を振り返ると、イギリスとアメリカの影響を無視することはできない。徳川幕府を倒した薩摩藩や長州藩などの勢力が支援を受けていたイギリスは当時、中国(清)を狙い、すでにアヘン戦争を仕掛けていた。その関係を大きく変化させたのは1923年にあった関東大震災。8月24日に加藤友三郎首相が死亡、山本権兵衛が組閣している最中の出来事だ。 地震で破壊された首都圏を復興させための資金を調達するために頼ったのがウォール街の巨人、JPモルガン。その後、日本はこの金融機関の影響下に入った。山本内閣で蔵相に就任した井上準之助は対中国借款の交渉を通じてJPモルガンと緊密な関係を築いていた人物。井上は1924年に蔵相を辞めるが、5年後、浜口雄幸が首相になると再び蔵相に就任、血盟団に暗殺された1931年までその職にあった。 震災以降、JPモルガンは日本へ多額の資金を供給、その半分以上は電力業界へ流れたという。日本が緊縮財政と金本位制へ向かい、経済状況を悪化させ、庶民に塗炭の苦しみをなめさせた黒幕はJPモルガンだということだ。 アメリカでもJPモルガンをはじめとする強大資本は「強者総取り」の政策を推進させていた。その代理人がハーバート・フーバー大統領だったが、庶民の怒りは1932年に行われた大統領選挙でフーバーの再選を阻止するという結果を生む。そして選ばれたのがフランクリン・ルーズベルトだ。 アメリカ海兵隊の伝説的な軍人、スメドリー・バトラー少将の議会証言によると、JPモルガンを中心とするウォール街の一派は1933年から34年にかけて反ルーズベルトのクーデターを計画していた。この件を取材したポール・フレンチによると、クーデター派はコミュニストから国を守るため、ファシスト政権をアメリカに樹立させる必要があると語ったという。 ウォール街がアメリカで主導権を奪われた1933年から45年までの期間、日本は迷走することになったと言えるのだが、今の日本も似た状況の中にある。1990年代から日本の支配層はネオコン(親イスラエル派)と戦争ビジネス(軍需産業や傭兵会社)と結びついているのだが、この勢力が現在、世界的に孤立しつつあるのだ。つまり、再び日本が迷走を始める恐れがある。「特定秘密保護法案」のゴリ押しはその前兆だろう。
2013.11.26
イランの核問題についてジュネーブで協議していた「P5+1」(アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスの国連安保理事会の常任理事国にドイツを加えた6カ国)とイランは11月24日、合意に達したという。イスラエル/シオニストの資金力とロビー活動、サウジアラビアの石油マネーでも潰すことはできず、一旦は合意を潰したフランスも今回は素早く合意の事実を公表している。 前回、フランスが合意寸前だった協議を壊した理由はイスラエルからの圧力だった。ベンヤミン・ネタニヤフ首相の友人で、フランスにおけるイスラエルの代弁者でもあるメイヤー・ハビブ議員がローレン・ファビウス外相に電話、イランに対して強い姿勢を示さなければ、イスラエルはイランを攻撃すると伝えたことが理由だという。 しかし、バラク・オバマ米大統領はバレリー・ジャレットをイランへ派遣して秘密裏に話し合いを進めていたようで、フランスの動きはアメリカ政府の努力を無にしかねないものだった。17日午後にフランスのフランソワ・オランド大統領とファビウス外相がイスラエルを訪問したが、そうした事情を説明した可能性がある。 本ブログでは何度も書いていることだが、ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によると、1991年にポール・ウォルフォウィッツ国防次官はシリア、イラン、イラクを殲滅すると話していたという。湾岸戦争(イラクへの先制攻撃)でジョージ・H・W・ブッシュ大統領がサダム・フセインを排除しなかったことへの不満から出た言葉だ。 この当時、ソ連は消滅寸前で中東の問題に介入する余裕はなかったのだが、ネオコンは「西側」が軍事行動を起こしてもソ連/ロシアは動かないと主張するようになり、外交を捨て、軍事力で世界を制圧しようという姿勢を示しはじめる。ネオコン系のシンクタンクPNACが2000年に発表した報告書「米国防の再構築」も、そうした立場から書かれている。 イスラエルとサウジアラビアがイランを敵視する理由はいくつか考えられる。中東/北アフリカにおける主導権争い、大イスラエル構想、エネルギー問題などだ。 例えば、イランの石油や天然ガスをイラク、シリア、レバノン、そして地中海を経由してヨーロッパへ運ぶパイプラインを建設することで合意したとイランでは報道されているが、これはバクー油田からグルジアのトビリシを経由してトルコのジェイハンにつながるパイプラインにとって脅威になる。イランの天然ガスをパキスタンやインドへ運ぶパイプラインでタンカーが使われなくなると、保険を使って影響力を行使しているイギリスにとっては好ましくない。イラクとシリアとの間にあったクルクーク・バニアス・パイプラインは2003年にアメリカ軍が破壊してしまった。 また、地中海の東側に膨大な量の天然ガスや石油が存在していることも明らかにされている。USGS(アメリカ地質調査所)の推定によると、エジプトからギリシャにかけての海域には9兆8000億立方メートルの天然ガス、そして34億バーレルの原油が眠っている。ガザ地区、シリア、レバノンなどを制圧することで、イスラエルはこの天然ガスを支配しようとしている可能性が大きい。 こうした思惑からイスラエルやサウジアラビアは軍事力や破壊工作を使っている。イギリスやフランス、アメリカではネオコンも同じ姿勢を見せていたが、状況が変わったのは主戦場がシリアへ移動してから。 アル・カイダとの関係も露見、サウジアラビアが化学兵器を使っている疑いも濃厚になったことも大きいのだが、ロシアの強硬姿勢も無視できない。アメリカ、イギリス、フランス、イスラエル、トルコなどが軍事力を前面に出すとロシアは対抗して艦船を地中海へ派遣、そこに中国も加わった。 ネオコンは話し合いのできる相手ではない。リビアでの失敗を教訓にして、外交だけでなく、力には力で対抗する方針にロシアは転換、オバマ政権はロシアとの戦争も視野に入れざるをえなくなる。イスラエル/ネオコンに引きずられるのは危険だと認識したはずで、その影響は東アジアでも出始めている。
2013.11.25
東京都の猪瀬直樹知事が「徳洲会」から無利子/無担保で5000万円を受け取っていたことが明るみに出て問題になっている。徳洲会から多くの政治家へ資金が流れているようなので、ほかにもビクビクしている人はいるのだろう。「国家安全保障基本法案」、「特定秘密保護法案」、TPPなどを考える余裕はないに違いない。 猪瀬知事より遙かに問題のないことで地検特捜部に秘書が逮捕され、マスコミから総攻撃を受けた政治家がいる。小沢一郎だ。 2009年3月、自民党の敗北、民主党の勝利が見通されていた総選挙の5カ月前に、民主党の小沢一郎代表(当時)の公設第一秘書だった大久保隆規が東京地検特捜部に逮捕された。政治資金収支報告書の記載漏れ、つまり西松建設の寄付であるにもかかわらず政治団体の寄付だったと記載したとされたのだが、この政治団体は実在し、実際にカネはそこを流れているので、本来なら問題になるはずはなかったようだ。そこで、裏には贈収賄とか、斡旋利得といった容疑があるに違いないという妄想が流れはじめる。 逮捕後、大久保秘書が政治資金規正法違反に係る起訴事実について、その大筋を認めているといった報道があったが、弁護士はこの報道を否定しているわけで、情報源は検察しかない。事実なら国家公務員の守秘義務違反だろうが、この情報は虚偽。検察にとって都合の良い方向へ世論を誘導しようとした可能性が高い。特定秘密保護法案が成立した後、こうした報道がありながら検察官も記者も逮捕されなければ、情報操作だということが明確になる。 その後、小沢一郎に対する強制捜査という展開になるが、検察は不起訴にする。そうせざるをえなかった。それを翻したのが東京第5検察審査会。問題にされていた小沢からの4億円借り入れは被疑事実に含まれず、土地代金の支払い時期が2カ月ずれていたということのみ。騒がれていた水谷建設の裏献金5000万円の話は消えてしまった。 裁判の過程で検事の違法な「威迫や利益誘導」や架空の内容を盛り込んだ捜査報告書も明らかにされ、2012年11月12日に東京高裁は無罪判決を言い渡す。その中で「小沢は秘書が違法な処理をしていると思っていなかった」だけでなく、担当秘書も「登記に合わせて所有権が移転すると信じていた可能性がある」としている。 「マスコミ市民12・12号」に、大治浩之輔同誌編集代表の書いた「小沢一郎事件」に関する一文が掲載されているが、これは読んでおく価値があるだろう。その中で大治は、小沢が「内政ではアメリカ型の新自由主義(金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏になる自由)からヨーロッパ型の社民主義的な福祉社会への基本的な転換。外に向かっては、アメリカ隷属からの相対的自立とアジア重視」を掲げたことが検察やマスコミに「暗殺」された原因だと指摘しているが、同感である。 小沢一郎の事件では、官房副長官だった漆間巌が記者団に対し、「自民党側は立件できないと思う」と発言している。反対勢力を潰すため、恣意的に法律を運用するという宣言だ。 アメリカのように全世界をターゲットにするかどうかは不明だが、日本でも全ての住民に関する個人情報を集め、邪魔だと思えば排除に使うことになるのだろう。「国家安全保障基本法案」や「特定秘密保護法案」も反対派弾圧の強力な武器になる。 「特定秘密」という呪文を使い、容疑も告げずに逮捕、起訴、裁判が行われる時代が間近に迫っている。拷問も「特定秘密」にすれば問題にならない。 今年5月にジュネーブで国連拷問禁止委員会の「第2回日本政府報告書審査」が開かれたのだが、例によって日本側は「官僚発言」を繰り返したという。その日本の刑事司法についてモーリシャスの委員は、「弁護人に取調べの立会がない。そのような制度だと真実でないことを真実にして、公的記録に残るのではないか。」と指摘、「自白に頼りすぎではないか。これは中世のものだ。中世の名残りだ。」と言われたという。適切な表現だ。 本当のことを言われて外務省の上田秀明人権人道大使は激怒したようで、「日本は、この分野では、最も先進的な国の一つだ」と発言、会場で笑い声が起こる。それでさらに頭へ血が上り、今度は「笑うな。なぜ笑っているんだ。黙れ!黙れ!」と叫んでしまった。日本で「エリート」とされている人びとの知的レベルはこの程度ということ。上田大使だけの問題ではない。 こうした知的レベルの人間が進めているのが「国家安全保障基本法案」、「特定秘密保護法案」、TPP、原発推進など。エリート意識だけはあるものの、真の知性がない彼らは庶民を賤民視、国をブラック企業化しようとしている。賤民に人間としての権利を認めるはずはない。
2013.11.23
資金と公的な情報の流れていく先に権力は存在している。つまり、社会的に優位な立場にある人びとに富が集中する仕組みを作り、そうした人びとへ公的な情報を独占させようとしている日本やアメリカの支配層が民主主義を目指しているとは言えない。形ばかりの情報公開制度しかない日本の民主主義は形ばかりだったが、安倍政権はその形さえ壊してしまおうとしている。自分たちの意思で全てが動く独裁体制を夢見ているのだ。 今から50年前、1963年11月22日にアメリカ大統領がテキサス州ダラスで暗殺された。言うまでもなく、殺されたのはジョン・F・ケネディ。ソ連との平和共存を訴え、巨大企業の横暴を批判、キューバへアメリカ軍を侵攻させることに反対、ベトナムから撤兵させる決断をし、シオニストにも批判的で核兵器開発を止めさせようとしていた大統領には多くの敵がいた。そのケネディ大統領の暗殺に関する重要な情報は現在でも秘密にされ、疑問点を指摘する人びとは有力メディアから「謀略論者」のレッテルを貼られ、その指摘が鋭ければ攻撃され、場合によっては排除される。 同じ月の2日に訪問する予定だったシカゴで暗殺計画が発覚していたことを考えれば、シークレット・サービスにしろ、FBIにしろ、地元警察にしろ、大統領を守るために最高度の警戒態勢に入っていなければならなかった。 11月22日の午前11時22分頃にケネディ大統領はカーズウェル空軍基地からダラスのラブ・フィールドへ飛行機で移動し、ジョン・コナリー知事の出迎えを受けた。テキサス州は親シオニストで有名なリンドン・ジョンソン副大統領の地盤だ。その日、ダラスではリチャード・ニクソン前副大統領がペプシ・コーラのドン・ケンドール社長と会っている。そのダラスで市長を務めていたアール・キャベルは、ケネディ大統領にCIA副長官の職を解かれたチャールズ・キャベル元副長官の弟だ。 ラブ・フィールドで一行はパレード用のリムジン・カー(1961年型リンカーン・コンバーティブル)に乗り換えた。防弾仕様ではなく、屋根は取り払われた状態。自動車の後ろ、右と左にはエージェントが立てるようにステップとバーが取り付けられていて、そのそばをエージェントが走り始めるのだが、動き始めた直後にふたりのエージェントは肩をすくめながら自動車から離れて歩き出してしまう。後ろの車に乗っていた上司の命令で大統領車から離れたようだ。 問題のディーリー広場では、リー・ハーベイ・オズワルドが勤めていた教科書ビルに面したエルム通りをパレードは進む。当初はメイン通りを通過する予定だったのだが、パレード当日にルートに変更されていたのだ。エルム通りへ入るためには、「ヘアピンカーブ」を左折する必要があり、パレードは大きく減速する。そして12時半頃、銃撃が始まる。ここでは詳しく書かないが、公式見解の銃撃内容は荒唐無稽なもので、ありえない。致命傷になった銃撃は前方からのものだということは間違いない。 ケネディ大統領の暗殺について公式見解は一貫して「リー・ハーベイ・オズワルドの単独犯行」を主張しているが、それが成り立たないことを多くの人びとが暴いてきた。地方紙の編集発行人だったペン・ジョーンズは暗殺の目撃者や関係者が次々に変死している事実を明らかにしている。彼の作った変死者リストは300名を超える。 そうした中、事件の様子をエイブラハム・ザプルーダーが撮影した8ミリ・フィルムの映像は生き延び、公開されている。このフィルムは暗殺の翌日、写真雑誌LIFEに買い取られるのだが、発行人だったC・D・ジャクソンは公開しないという決定を下す。事件を調査したウォーレン委員会にも提出されていない。(FBIが作成したコマの入れ替えられた映像が使われた。)ちなみに、ジャクソンはドワイト・アイゼンハワー大統領のスピーチライターを務めていたことがあり、アレン・ダレスなどCIAの大物たちと深い関係にあることも有名。暗殺の翌年、1964年9月に62歳で死亡している。 LIFEが隠したフィルムを公開させたのはルイジアナ州ニュー・オーリンズの地方検事を勤めていたジム・ギャリソン。1969年2月のことだが、そのフィルムには大きな問題があった。大きな傷があり、肝心なところがよく見えないのだ。 LIFEの説明によると「現像所の技術的なミス」が原因だというが、世界的に有名な写真雑誌のプロがそうしたミスをする確率はきわめて小さいはず。この説明を信じている人は多くないだろう。 アメリカの支配層にとって、ケネディ大統領暗殺に関する情報は「特定秘密」。重要な情報は隠され、あるいは破棄されている。こうした種類の隠蔽工作を合法化するのが「特定秘密保護法案」だ。
2013.11.22
日本では現在、クーデターが進行中である。憲法の機能を停止させるための法案を安倍晋三政権が成立させようと暴走中なのだが、この手法はアメリカが1980年代から行っていたこと。 1982年にロナルド・レーガン大統領がスタートさせたCOGプロジェクトとは、憲法の機能を停止させてアメリカを一気にファシズム化するための準備だった。そのプロジェクトを始動させたのが2001年9月11日の衝撃的な出来事。つまりニューヨークの超高層ビルに航空機が突入、国防総省本部庁舎(ペンタゴン)への攻撃。その直後、攻撃を実行したのはオサマ・ビン・ラディンが率いるアル・カイダだとジョージ・W・ブッシュ政権は断定し、中東/北アフリカへの軍事侵攻を始めた。 その出来事の2カ月前、2001年7月にビン・ラディンが腎臓病を治療するため、アラブ首長国連邦ドバイの病院に入院していたとル・フィガロ紙は報道している。その入院患者を見舞うために家族のほか、サウジアラビアやアラブ首長国連邦の著名人が訪れているのだが、それだけでなく、CIAのエージェントも目撃されている。 そうした病人が山岳地帯でゲリラ戦を指揮しているという話に疑問を持つ人は少なくない。しかも、エジプトで出されているアル・ワフド紙の2001年12月26日付け紙面にはオサマ・ビン・ラディンの死亡記事が掲載されている。その10日前、肺の病気が原因で死亡し、トラ・ボラで埋葬されたというのだ。 しかし、アメリカ政府によると、ビン・ラディンはその後も生き続け、2011年5月にパキスタンで特殊部隊のSEALチーム6が殺害したことになっている。が、襲撃された家にオサマ・ビン・ラディンは住んでいなかったと住民は主張している。 現地のテレビで放送された証言によると、襲撃されることになる家の上空に1機のヘリコプターが飛んできて、10人から12人を屋根に降ろして飛び去り、20分ほどして戻ってきて降りていた人を回収したのだが、爆発で炎上してしまったという。この作戦に参加していた人びとはパシュトゥーン人の言葉を話していたと住民は話している。 COGを始動させた9/11には謎が多すぎる。「アル・カイダ」と呼ばれるイスラム武装集団を動かしているのがサウジアラビアであり、アメリカ、イギリス、フランスなども作戦遂行のために利用、イスラエルも敵視していないことがリビアやシリアの戦闘で明確になった。ブッシュ・ジュニア政権が始めた「テロとの戦争」は歴史に残るイカサマだった可能性が高い。
2013.11.21
安倍晋三政権は「国家安全保障基本法案」や「特定秘密保護法案」を成立させると同時に「国家安全保障会議」を創設して憲法の機能を停止させ、TPPでアメリカ資本による日本支配を実現しようとしている。民主主義の建前を投げ捨て、独裁体制を築こうとしているのだ。 その作業は現在、最終段階に入った。支配層に「王手」を宣言されてしまったということだ。この段階になってからマスコミの一部はおずおずと声を上げ始めたわけだが、そもそも安倍政権の誕生を後押ししたのは検察やマスコミ。まだ沈黙している人がマスコミの世界に多いというが、不思議ではない。 すでに書いたことだが、アメリカで憲法の機能を停止させ、独裁体制を実現するためのプロジェクトが始まったのは1980年代、ロナルド・レーガン政権が始まって間もない頃のことだ。 核戦争を想定して「秘密政府」の仕組みが作られたのは1950年代からだが、その仕組みを利用してクーデターを実行しようとするプロジェクトが動き始めるのは1982年。この年、レーガン大統領はNSDD55を出してCOGプロジェクトをはじめたのだ。 国民に気づかれないように進められていたが、1987年に「イラン・コントラ事件」の公聴会で取り上げられる。オリバー・ノース中佐に対し、下院のジャック・ブルックス議員が「大災害時に政府を継続させる計画」、つまりCOGプロジェクトについて質問したのだ。 ところが、この質問は委員長のダニエル・イノウエ上院議員が「高度の秘密性」を理由にして止めてしまう。憲法を無力化して「秘密政府」がアメリカを動かす仕組みを作り上げることは秘密であり、国民に知らせてはならないということだ。このエピソードは「特定秘密保護法案」が日本にもたらす事態を暗示している。 こうして練られたCOGは2001年9月11日に始動する。この日、ニューヨークの超高層ビルへ航空機が突入、国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたことを引き金にして1000ページにおよぶ「愛国者法」や国家安全保障省の「エンド・ゲーム計画」が成立しているが、その基礎になったのがCOGだ。 この法律の本質を見抜き、反対する議員もいた。その代表格がトム・ダシュル上院議員とパトリック・リーヒー上院議員。炭疽菌で汚染された手紙が送られた議員である。手紙を送られた後、両議員は法案に反対するのをやめてしまった。 9/11以降の出来事はクーデターと呼ぶにふさわしいが、その準備作業は1982年から始まっている。こうした動きに呼応する形で日本の支配層も動きはじめる。マスコミを支配する作業は1980年代から始まっているが、「国家改造」の動きが出てくるのは1990年代になってからだろう。大本にはアメリカ支配層の一部が存在しているのだが、その勢力の指示を自分たちの利権拡大に利用しているのが官僚たち。その延長線上に「国家安全保障基本法案」や「特定秘密保護法案」はある。 「特定秘密保護法案」によって国会は機能を停止すると指摘されているが、TPPが締結されれば国の上にアメリカを拠点とする巨大資本が位置づけられ、政府も国会も裁判所も存在価値が限りなくゼロに近づく。 現在、TPPに関する話し合いが秘密裏に進められているのだが、巨大企業にとってはオープンになっている。600を超す大企業のロビイストはTPPの文面を参照するだけでなく、意見を述べる権利もあるのだ。 TPPの条項の中で特に問題なのがISDS(国家投資家紛争処理)条項。この条項によって、企業活動や金融システムに対する規制、食糧の安全、環境汚染の防止、労働者の権利保護などを各国の政府や議会で決定することが不可能になってしまい、庶民は巨大企業に生殺与奪の権を握られる。 「国家安全保障基本法案」にしろ、「特定秘密保護法案」にしろ、TPPにしろ、原発問題にしろ、安倍首相は心配ないと言う。例えば、IOC(国際オリンピック委員会)の総会で、「汚染水による影響が福島第1原発の港湾内0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされ」、「健康問題については、今までも現在も将来も全く問題ないということをお約束いたします」言い切ってしまった。 しかし、東電福島第一原発の事故は収束からほど遠い状態。東電のみならず、日本の政治家や官僚も嘘つきで信用できず、犯罪組織を使って作業している碌でもない集団だと世界では評価されている。そうした目で4号機の使用済み核燃料プールから燃料棒を取り出す作業を世界の人びとは見ているわけで、気が気でないのだろう。 安倍首相は状況を理解できないのか、あるいは生まれつきの嘘つきなのか、いずれにしろ安倍首相は信用できない人物だ。そうした人物が首相になる環境を作り上げたマスコミの責任は重い。
2013.11.21
東電福島第一原発の事故で放出された放射性物質の影響が太平洋の対岸、カリフォルニアで出ている可能性があることを示す論文が来週、「小児科学オープン・ジャーナル」で発表されるという。 ニューヨークを拠点とする「放射線と公衆衛生プロジェクト」のジョー・マンガーノとジャネット・シャーマンに加え、ヤコブス大学ブレーメンのクリストファー・バスビーはカリフォルニアで先天性甲状腺機能低下症の子どもが増えているとしているようなのだ。 昨年10月にマンガーノとシャーマンは論文を「放射線と公衆衛生プロジェクト」に提出して今年3月に公表され、その報告に基づく報道もあった。伝えたのはアメリカのABC系列のローカル・ニュース・テレビ局で、福島第1原発の事故が、カリフォルニア州の新生児に影響を及ぼしている可能性があるとしている。その後の調査をまとめた論文が出るということだろう。 日本では今月12日に福島県が甲状腺検査の結果を発表した。福島第1原発事故が起こった際に18歳以下だった人の甲状腺を検査したところ、約22万6000名のうち59名が甲状腺癌、あるいはその疑いがあると診断されたという。「被曝の影響とは考えられない」としているが、その根拠は薄弱。 朝日新聞の記事によると、チェルノブイリ原発の事故では事故から4~5年たって甲状腺癌が発生、「複数の専門医」は「被曝から3年以内に発生する可能性は低い」と分析したというのだが、チェルノブイリでも影響隠しが組織的に行われていたわけで、隠しきれなくなったのが4~5年後だと見ることもできる。 また、チェルノブイリのデータが正確だとしても、福島第1とは状況も違うわけで、そのまま当てはめることはできない。詳しく調査し、分析する必要があるのだ。記者は何十人の「専門医」に確認したのか知らないが、十分な調査分析をせず、一方的な主張をするのは非科学的。「専門医」の口にすべきことではない。 チェルノブイリ原発事故の後、放射性物質が心臓病を引き起こすことも明らかにされている。最初に気づいたのはベラルーシの病理学者ユーリ・バンダシェフスキー教授。セシウム137が心臓に蓄積され、深刻なダメージを与えると発表したのだが、2001年に「収賄」で有罪判決を受け、懲役8年間の判決を言い渡されてしまった。露骨な情報隠しだったため、判決は世界的に批判されて2005年に釈放された。 勿論、放射性ヨウ素やセシウム137だけが被害をもたらすわけではない。チェルノブイリ原発事故による生態系への影響を調べた学者たちの報告によると、ダメージの結果はさまざまで、癌や心臓病だけでなく、すべての臓器が影響を受ける。免疫力が低下し、先天性の障害も増え、死産の率が上昇、脳、肺、眼内レンズ、皮膚への影響も指摘されている。しかも、遺伝子の損傷は何世代にもわたって引き継がれる可能性がある。 最近、カナダではニシンのひれ、腹部、あご、眼球などから出血が報告され、サケへの影響が懸念されている。こうした現象と福島第一原発事故との関係を疑う声も出ているのだ。ヤマトシジミに遺伝的な異常が出たとする調査結果もある。 福島第1原発の事故による影響が出てきたとなると、原発を推進してきた勢力は責任を問われることになる。第2次世界大戦の終盤、敗北が決定的になると日本の支配層は重要文書の大量処分を始めた。記録を消し去り、なかったことにしようというわけだ。「特定秘密保護法案」の成立を急ぐ理由のひとつはここにあるだろう。 この法案によって日本を「戦争ができる国」にしようとしていると言われている。この主張が間違いだとは言わないが、それだけではない。官僚たちは過去の不正を隠し、責任を追及されない仕組みを作り上げようとしている。今後、庶民の見えない場所で日本の富を食い尽くそうとも考えているだろう。 治安/安全保障を口実にして支配層が情報を独占すると同時に監視システムを強化、経済を活性化するために「成果主義」を導入したのはソ連を中心とする「社会主義」国だった。日本は同じ道を歩いている。
2013.11.20
アメリカとイスラエルの関係が緊張、ジョン・ケリー国務長官は今週金曜日に予定されていたイスラエル訪問を感謝祭(11月の第4木曜日/28日)以降に延期したという。そうした中、19日にベイルートのイラン大使館で自爆攻撃があって23名以上が死亡、イランやヒズボラはイスラエルやサウジアラビアを非難している。 現在、アメリカとイランの話し合いをイスラエル、サウジアラビア、フランスの3カ国が妨害しているわけで、状況的にはイランやヒズボラの主張は説得力があるのだが、まだ決定的とは言えない。もう少し、様子を見る必要があるだろう。 それはともかく、「大イスラエル(ナイル川とユーフラテス川に挟まれた地域)」を妄想しているらしいベンヤミン・ネタニヤフ首相の暴走はアメリカ支配層の利益に反する状況だ。シオニスト・ロビーはアメリカ議会に圧力をかけているが、押し切れていない。 イスラエルが手を組んでいるサウジアラビアは配下のイスラム武装勢力(アル・カイダ/サラフィ主義者など)を使い、リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制を倒し、今はシリアの体制転覆を目論んでいるのだが、侵略に対するシリアの抵抗は強く、思惑通りには進んでいないようだ。その結果、イスラム武装勢力の残虐な実態が広く知られるようになっている。 シリアの反政府軍にはカフカス(コーカサス)出身者で構成された戦闘部隊が参加していると報道されているが、それだけでなく、最近では欧米出身者が戦闘に参加しているようだ。例えば、イギリスからは数百名がシリアへ入っていると言われているが、そうした人びとが出身国へ戻り、戦闘を継続する可能性があり、懸念されている。少なくとも結果としてサウジアラビアがそうした状況を作り出しているとも言えるだろう。 アメリカにとってイスラエルは以前から中東/北アフリカを不安定化させるリスク要因なのだが、その一方でこうした地域からの移民を使ったイスラエルの情報活動にアメリカが依存してきたことも事実。イスラエルへ資金が流れ、その一部がアメリカの軍需産業や議員へ還流されるという仕組みもアメリカの親イスラエル政策を支えてきたのだが、ネオコンやネタニヤフのような好戦派は明らかにやり過ぎている。イスラエル国内でも懸念されていたように、世界で孤立化しつつある。シオニスト・ロビーの資金力も万能ではない。
2013.11.19
ローレン・ファビウス仏外相を伴い、フランソワ・オランド仏大統領が11月17日にイスラエルへ到着した。大統領は早速、フランスはイランに対してイスラエルの立場に立ち続け、イランが核兵器の開発をしていないことを確信するまで制裁を続けると宣言。つまり、核兵器には関係なく、イランに対する制裁を継続するというわけだ。この両国と同盟関係にあるのが「アル・カイダの黒幕」であるサウジアラビア。イスラエルのイラン攻撃に協力する姿勢を示している。 言うまでもなく、イスラエルはアラブ系の住民が住む地域にシオニストが破壊と殺戮を用いて作り上げた国。その後も周辺への侵略を繰り返し、ナチスと同じように巨大な壁でパレスチナ人を隔離している。このイスラエルをオランドは「偉大な民主主義国」だと褒め称え、自分はイスラエルの友人であり続けるとヘブライ語で語ったという。 オランドはイランの核開発を問題にしているが、イスラエルの核兵器開発に協力、世界有数の核兵器保有国にしたのはフランスに外ならない。1949年にはイスラエルの核兵器開発に協力しはじめ、52年にはイスラエル原子力委員会が設置されている。1959年から69年にかけてフランスの大統領だったシャルル・ド・ゴールはイスラエルの核兵器開発に協力しないように命令したというが、中止されることはなかった。 イスラエルの核兵器開発に必要な資金を提供したのは国外の富豪で、その中心にはアメリカのエイブ・フェインバーグやフランスのエドムンド・ド・ロスチャイルドが含まれている。ジョン・F・ケネディ大統領までアメリカ政府はイスラエルの核兵器開発に反対の立場だったが、フランス政府は大統領の命令を無視してまでド・ロスチャイルドの意向に沿う動きをしていたことになる。 こうした経緯も関係があるのか、現在のフランス政府はイスラエルと一心同体の姿勢を鮮明にしているのだが、アメリカ政府は1年以上前からイランとの交渉を秘密裏に続けてきたと報道されている。交渉の中心はバラク・オバマ大統領の顧問でイラン生まれのバレリー・ジャレットだという。昨年10月、ニューヨーク・タイムズ紙は、イランは核問題でアメリカと協議することに同意したと報じていたが、その協議は行われ、アメリカ側の代表を率いていたのがオバマ大統領の信任厚いジャレットだった可能性は小さくない。 そうなると、ジュネーブで行われた「P5+1」とイランの会議はカモフラージュだった可能性がある。その会議を壊したフランスはアメリカを捨て、イスラエルを取ったと考えることもできる。イスラエルと強く結びつけばつくほど中東/北アフリカでは敵視されるだけでなく、世界的に批判が高まってるイスラエル自体が不安定要因。オランド大統領は危険な賭をしている。
2013.11.18
2003年11月から2009年1月にかけてニューヨーク連銀総裁、09年1月から今年1月までバラク・オバマ政権で財務長官を務めたティモシー・ガイトナーがプライベート・エクイティ投資会社ウォーバーグ・ピンカスの社長兼マネージング・ディレクターへ来年3月に就任するのだという。(pdf)企業を売り買いする賭博会社の経営者になるわけだ。 ガイトナーが財務長官になる直前、アメリカは金融スキャンダルで揺れていた。新自由主義経済によってアメリカでも経済活動は行き詰まり、架空の資産で資金を回転させる一種のマルチ商法的な政策を推進して誤魔化していたのだが、それが2007年に破綻、08年にはリーマン・ブラザーズが倒産したのだ。 新自由主義は富の集中を加速、資金の滞留を「是」とし、「貧困化」と「カネ余り」を促進する。つまり庶民の生活を破壊、資金が流れ込む投機の世界には富裕層/大企業が集い、我が世の春を謳歌する。 貧困化が限界に近づき、投機市場への資金流入が細れば相場は天井を打ち、反転して下落し始める。相場が下落すれば架空の資産は消滅し、負債という現実が目の前に現れてくる。2007年に始まる金融破綻は経済政策の必然的な結果であり、その中心部に存在しているのが巨大金融機関である。 当然、巨大金融機関には社会を破壊させた責任があり、投機市場で行われた不正は罰せられなければならない。が、アメリカ政府は「大きすぎて潰せない」という理屈で巨大金融機関の経営陣を救済した。この「泥棒に追い銭」的な政策を立案、実行したのがガイトナーに外ならない。巨大金融機関や富裕層の救済とは、庶民からの略奪を意味する。 アメリカにはガイトナーが行った「大きすぎて潰せない」政策を厳しく批判している上院議員がいる。ハーバード大学の教授だったエリザベス・ウォーレンだ。2016年の大統領選挙では、ロッキード・マーチンという巨大軍需企業の代理人として有名なヒラリー・クリントンのライバルだと最近では言われている。 金融危機の後、ウォール街の4大銀行は30%巨大化、アメリカの銀行が保有する資産の半分以上を5大金融機関が独占しているとウォーレン議員は指摘する。言うまでもなく、巨大金融機関は庶民の富を吸い上げることで肥大化している。その仕組みを作り上げる上で中心的な役割を果たしたのがガイトナーだ。 ウォーレン議員は「大きすぎて潰せない」銀行を解体し、潰せる大きさにするべきだとしているが、当然のことである。アメリカは日本と同じように国として崩壊寸前だが、それでもこうした当然の主張をする人物が有力議員の中にいる。日本よりは希望があると言えるかもしれない。
2013.11.18
11月17日午後にフランスのフランソワ・オランド大統領とローレン・ファビウス外相がイスラエルを訪問する。「第5共和制発足以来、最も国民に嫌われた大統領」だと言われるオランドはイランの核開発問題でイスラエルとサウジアラビアの代弁者として行動、7日からジュネーブで行われた「P5+1」(アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスの国連安保理事会の常任理事国にドイツを加えた6カ国)とイランとの会議では、声明を出す寸前に合意を壊してしまった。 寸前で破綻した合意内容には、ウラン濃縮は3から5%に制限し、高性能な遠心分離器IR-M2を使用せず、アラクにある重水炉を稼働させないことなどをイランは認める一方、凍結されているイランの原油収入の一部を解除、経済制裁を緩和するというようなことが含まれていたという。イランにとって有利な内容だとは言えない。 しかし、イランへの制裁が緩和されることを認めないどころか、体制転覆も狙っているのがイスラエルとサウジアラビア。ジュネーブではフランスを使って会議を混乱させ、合意には至らなかった。が、基本的に協議の主人公はアメリカとイランであり、フランスには限界がある。 協議の際、合意が近いことを知ったイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はフランスにおけるイスラエルの代理人、メイヤー・ハビブ議員にファビウス外相へ電話させ、イランに対して強い姿勢を示さなければ、ネタニヤフはイランを攻撃すると伝えたという。間接的にアメリカを脅したのかもしれない。 その一方、サウジアラビアはフランスに対して10億ユーロ(約1300億円/15億ドル)でフリゲート艦4隻と給油艦2隻の修理を依頼したと8月に報道された。その前月にはアラブ首長国連合がフランス系の軍事企業が開発した軍事衛星ヘリオスを9億1300億ドルで購入することで合意している。 サウジアラビアとイスラエルの協力関係は遅くとも1980年代のアフガン戦争から始まるが、シーモア・ハーシュは2007年にニューヨーカー誌で、アメリカのジョージ・W・ブッシュ政権が、サウジアラビアやイスラエルと共同でシリアやイランをターゲットにした秘密工作を開始したとしている。 ムスリム同胞団やサラフィ主義者などイスラム武装勢力(アル・カイダと重なる)を使い、アメリカ、イギリス、フランス、トルコなどのNATO加盟国、ペルシャ湾岸のサウジアラビアやカタール、そしてイスラエルはリビアに続いてシリアの体制転覆を目指してきたが、行き詰まっている。シリアではアメリカが直接的な軍事介入を止めてしまい、イギリス下院はシリアに対する直接的な攻撃に反対の姿勢を示し、デイビッド・キャメロン首相は武力行使を断念すると表明せざるをえなかった。リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制を崩壊させた後、カタールとサウジアラビアが対立、エジプトの政変につながってしまう。現在、イランの体制転覆を目指しているのはイスラエルとサウジアラビアだ。 サンデー・タイムズ紙によると、イスラエルがイランを攻撃する際には自国領空を使わせ、攻撃に協力する意向をサウジアラビアは示しているという。ただ、実際にこうしたことが行われれば、王制が崩壊する可能性も出てくるわけで、サウジアラビアやイスラエルは追い詰められていると見ることもできる。
2013.11.17
権力者は被支配者を監視するために個人情報を集める一方、自分たちにとって都合の悪い行政情報を隠す。掲げられた看板が「資本主義」であろうと「社会主義」であろうと、権力者にとって監視と秘密は支配システムを支える重要な柱だ。アメリカやイギリスの情報機関を東ドイツで恐れられたシュタージに準える人が出てくるのは当然だということでもある。 最近も、こうした権力者の実態を示唆する出来事が表面化した。イギリスでは4年にわたり、ジョン・チルコットを中心とするチームがイラクに対する先制攻撃について調べていたのだが、その報告書の公開をアメリカのホワイトハウスや国務省が止めているのだという話がひとつ。もうひとつは、アメリカの巨大企業が環太平洋を植民地化することになるTPPの交渉内容をWikiLeaksが明らかにした話。 チルコットの報告書でアメリカ側が問題にしているのは、ジョージ・W・ブッシュ米大統領とトニー・ブレア英首相との通信内容だという。当時、ブッシュ・ジュニア政権はイラクに大量破壊兵器があり、今にもアメリカが核兵器で攻撃されるかのように宣伝、その一方でサダム・フセインがアル・カイダと関係があるかのような内容の偽情報をメディアで流していた。この話が嘘だということはブッシュもブレアも知っていたはず。そうしたことを裏付ける会話が含まれている可能性がある。 TPPは秘密裏に話し合いが進められているのだが、それは庶民に限られたこと。巨大企業は協議の内容を知る立場にある。600を超す大企業のロビイストはTPPの文面を参照するだけでなく、意見を述べる権利もあるのだ。この事実だけでもTPPの本質がわかる。 今回、明らかにされた文書を見て「大企業主体の要望リスト」だと批判する人もいる。アメリカ企業に都合良く著作権を定め、ジェネリック医薬品(後発医薬品)に対する規制を強化、インターネットから自由を奪うという指摘もある。アメリカではインターネットの監視を強化、事実上、あらゆる情報をアメリカのDHS(国土安全保障省)が入手できるようにしようとしているが、TPPもそうした動きが反映されるのだろう。 しかし、言うまでもなく、TPPで最大の問題はISDS(国家投資家紛争処理)条項。巨大企業のカネ儲けを容易にするため、この条項によって参加国の政府、議会、裁判所の手足は縛られることになるからだ。企業活動や金融システムに対する規制、食糧の安全、環境汚染の防止、労働者の権利保護などを各国の政府や議会で決定することが不可能になってしまい、庶民は巨大企業に生殺与奪の権を握られる。 民主主義を装うという考えもなくしたらしい安倍晋三政権は、国家安全保障基本法案や特定秘密保護法案を成立させようとしている。憲法を破壊しようということであり、「法の支配」という発想もない。 安倍首相が「特定秘密保護法案」を審議する「特別委員会」を衆議院に設置するよう指示した10月3日、日米安全保障協議委員会は「より力強い同盟とより大きな責任の共有に向けて」という共同文書を発表した。この時点のメンバーはアメリカのジョン・ケリー国務長官、チャック・ヘーゲル国防長官、日本の岸田文雄外相、小野寺五典防衛相だ。 日本とアメリカとの間にある思惑の違いがここに出ている。つまり、「特定秘密保護法案」とは行政情報を官僚が完全に支配することを目的にしているのだが、日米共同発表では軍事情報の保全を想定している。アメリカの要求に日本が「悪乗り」した可能性が高いということ。この違いが日米間に亀裂を入れるかもしれない。
2013.11.14
シリアやイランの現体制を軍事的に破壊しようとする姿勢をイスラエルやサウジアラビアは崩さず、話し合いで解決しようとしているロシアや中国と対立している。シリアに対してイスラエルは空爆を繰り返し、サウジアラビアは反シリア政府軍を再編成し、配下の戦闘員をパキスタンで訓練し始めていると伝えられている。イランの核開発問題が話し合いで解決されることを阻止するため、イスラエルは激しいロビー活動を展開している。 イスラエルの好戦派を率いているのはベンヤミン・ネタニヤフ首相。昔から言われていることだが、この人物は国連の決議などは無視、「大イスラエル」を実現しようとしている可能性が高い。旧約聖書に書かれた「約束の地」、つまりナイル川とユーフラテス川に挟まれた地域をイスラエルの領土にしようとしているのではないか、ということだ。パレスチナ国家を認めないことは勿論、シリア、レバノン、ヨルダン、イラク、エジプトも侵略の対象。ペルシャ湾岸の産油国やトルコも無関係ではない。 ベンヤミンの「大イスラエル」構想は父親のベンシオンから受け継いだもの。ベンシオンはポーランドからパレスチナへ移民した人物で、大学時代にウラジミール・ジャボチンスキーの「修正主義シオニスト世界連合」へ参加、1940年にアメリカへ渡ってジャボチンスキーの秘書となる。その直後にジャボチンスキーは死亡するのだが、その後もアメリカへ残って活動を続けた。パレスチナへ戻るのはイスラエルの「建国」が宣言された翌年、1949年のことだ。1950年代からはアメリカの大学で教鞭を執っている。 ネタニヤフが「大イスラエル」を実現する上で最大の障害はパレスチナ解放闘争の象徴的な存在だったヤシル・アラファトだろう。このアラファトが急死したのは9年前だが、そのアラファトの遺体から少なくとも通常レベルの18倍という放射性物質のポロニウム210をスイスのローザンヌ大学病院放射線物理学研究所のチームは発見したという。暗殺の可能性が高まったということである。 状況証拠はイスラエルを指している。ル・モンド紙によると、2001年にイスラエルのアリエル・シャロン首相はアラファトを排除する計画を立てたという。暗殺が決まったのは2003年だとも言われている。
2013.11.13
日本のマスコミが気骨あるジャーナリストを露骨に排除し始めたのは1980年代のことである。手間暇かけて記事を書いたり番組を制作するより、政府や大企業などが提供する情報を横流しにした方がコスト・パフォーマンスは良く、儲けが大きいとマスコミの経営者は判断、有能な記者は必要ないということになったのだろう。 支配層と癒着すれば情報を優先的に提供してもらえる。勿論、そうした情報は支配層にとって都合良く加工されているわけだが、手間暇かけずに情報が手に入るので経営的にはありがたい。この仕組みなら支配層と対峙し、攻撃されるリスクも少なくなり、スポンサーとの関係も良好になる。「バブル」の時代、広告に苦労はせず、読者/視聴者も内容を問わないという事情もあった。 そうした流れの中、1987年5月に兵庫県西宮市にある朝日新聞阪神支局が襲撃され、そこにいた小尻知博記者が死亡、犬飼兵衛記者が重傷を負う。「赤報隊」を名乗る人物、あるいは集団から犯行声明が出されているが、事件は未解決である。この事件で日本のマスコミが「びびった」ことは確かだろう。 支配層と手を組めば低コストで情報は手に入り、様々なリスクは低下する。限られた同業者で一種の特権集団を形成し、部外者を排除すればビジネス的にも楽だ。そうした環境にどっぷりつかったマスコミが情報公開の徹底に消極的なのは必然であり、「秘密保護」にも鈍感になる。そうした歴史の延長線上に今回の特定秘密保護法案は出てきたわけだ。 公の情報は主権者のものであり、国民を主権者だとしている日本では国民にそうした情報を政府は知らせなければならない。こうした政府の義務を免除する法案が憲法違反だとうことは明らかで、問題の法案は一種のクーデターだと言わざるをえない。 この法案には官僚たちの夢が詰め込まれているのだろうが、自分たちの情報支配に対する欲望が露骨すぎて、アメリカからも批判の声が挙がった。10月29日付けのニューヨーク・タイムズ紙でも法案が批判されている。政府が自分たちにとって不都合な情報を秘密に指定し、国民から知る権利を奪うものだというわけだ。 11月11日に日本外国特派員協会は特定秘密法案について、報道の自由や民主主義の根本を脅かすと批判、法案の撤回か、報道活動を脅かさないように大幅な修正を求めるという内容の声明文を出した。 アメリカでも有力メディアは1970年代の後半から気骨ある記者を排除、21世紀に入ってから戦争の旗振り役として「大活躍」。支配層のプロパガンダ機関化が顕著だ。こうした環境の中にいる「外国特派員」も特定秘密保護法案は認められないと考えた。 同じ日、日本のマスコミで仕事をしている8名が記者会見を開き、特定秘密保護法案に反対すると表明している。その8名とは青木理、大谷昭宏、川村晃司、金平茂紀、岸井成格、田勢康弘、田原総一朗、鳥越俊太郎。 この席上、「おそらく、最初は米国との軍事情報に限られた話だったのだと思う。しかし、そこへいろいろなものが入ってきて、どんどん一気に悪乗りしてこういう法に作ってしまったという感じがする」と語った岸井を批判する声もあるようだが、アメリカの要請に日本側が「悪乗り」したとする推測はおそらく正しい。アメリカから批判が出ている一因はこの辺にあるのだろう。 この法案には反対なのだが、権力と組織上層部に怯えて自分の意思を表明できない人たちもいたという。ファシズム化を支えているのはそうした人びとなのだ。少し前に書いたが、マーチン・ルーサー・キング牧師は1963年4月、「バーミンガム刑務所からの手紙」で「悪意ある人びとの憎悪に満ちた言動だけでなく、善意の人びとの驚くべき沈黙」を批判している。
2013.11.13
エドワード・スノーデンの内部告発によって、NSAが行ってきた世界規模の監視システムが注目されている。そのNSAがイスラエルの8200部隊と協力してサイバー攻撃を仕掛けていたことも事実。両組織がイランの核施設を攻撃したことで有名になったウイルス、スタックスネットが数年前、ロシアの原子力発電所のシステムに感染したという。このウイルスは世界中に蔓延しているようで、イランやロシア以外の国でも感染している可能性は高いようだ。 言うまでもなく、日本の原子力発電所も危険。日本の「エリート」は庶民を監視、自分たちの利権を守ることには熱心なのだが、自分たちが攻撃されるという意識は希薄だ。日本で言われる「安全保障」とは「民主主義の破壊」に外ならず、本来の意味のセキュリティとは違う。コンピュータ・システムのセキュリティも甘い。 東電福島第一原発の事故は昔から指摘されていた経過をたどった人災だが、これも希薄な安全意識の結果。そうした危険性を考えて発言したり行動したりすると、福島県知事だった佐藤栄佐久のように検察が出てきて犯罪者にされてしまう。安全性の問題を指摘することが、「エリート」にとっては安全上の問題だということだ。こんな国では、地震がなくても津波がこなくても原発で「過酷事故」が起こる可能性は小さくない。
2013.11.12
ここにきて「西側」はシリアに対する直接的な軍事介入を止め、イランと核開発問題で話し合いを始めている。こうした動きに激しく反発しているのはイスラエル/ネオコンとサウジアラビアであり、この「好戦連合」にすり寄っているのがフランス。ネオコンのジョン・マケイン米上院議員がフランスに対して「万歳」を送っている。 和平の動きに激怒したイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はフランスに働きかけた。ネタニヤフと緊密な関係にあり、フランスの国会議員でもあるメイヤー・ハビブがフランスのローラン・ファビウス外相に電話し、イランに対して強い姿勢を示さなければ、ネタニヤフはイランを攻撃すると伝えたという話は本ブログで既に書いた通り。 ファビウスといえば、シリアに対する「西側」の直接的な軍事介入を実現できなかったことに怒り、「大量殺人行為の場合」に国連安全保障理事会常任理事国の拒否権を一時停止するように提案した人物だ。勿論、イスラエルやアメリカの「大量殺人行為」は例外になるのだろう。 それだけでなく、フランスがイランとの交渉を壊したには武器取引があるとする見方がある。例えば、今年8月に伝えられた報道によると、サウジアラビアはフランスに対して10億ユーロ(約1300億円)でフリゲート艦4隻と給油艦2隻の修理を依頼したという。ただ、サウジアラビアはアメリカやイギリスからも武器/兵器を購入しているわけで、この見方で全てを説明できるとは言えないが、ひとつの要因ではある。 その頃、サウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官は、フランスの外交官を紅海に臨む都市、ジッダに招待したとも言われている。また、フランソワ・オランド仏大統領は11月17日にイスラエルを訪問する予定だという。 ロシアに対してもサウジアラビアは懐柔を試みている。7月下旬にロシアの石油利権を脅かさないという提案をしたというのだ。もっとも、このときにバンダル長官はソチで開かれるオリンピックの安全を約束すると語り、ソチでの破壊活動を予告しているチェチェンの反ロシア勢力をサウジアラビアはコントロールしていると口を滑らせてしまった。 チェチェンの反ロシア勢力はこれまでロシアに対して戦闘を続けてきたわけだが、その背後にサウジアラビアが存在することを白状したに等しい。ボリス・エリツィン時代のロシアで不公正な手段を使って巨万と富を築いたイスラエル系富豪のボリス・ベレゾフスキーもチェチェンの反ロシア勢力とつながっていた。ここでもイスラエルとサウジアラビアが連合している。 バンダル長官のロシア訪問後、ロシア政府のシリアにおける姿勢は強硬になり、地中海の艦隊を増強する一方、シリアにおける化学兵器の使用とサウジアラビアを結びつける情報を流し始める。「西側」の反応を見ると、その情報は説得力のあるもので、同じ内容の報道も出てくる。その延長線上にシリアの和平交渉やイランの核開発問題の話し合いがある。 これに対し、イスラエルはアメリカ議会をはじめ、「西側」にロビー活動を展開、サウジアラビアはパキスタンとの関係を強めている。ムスリム同胞団との関係を弱める一方、1980年代のように、パキスタンで戦闘員を訓練しているのだ。またイランが核兵器を保有した場合はパキスタンから核兵器を購入するという情報も流している。 アメリカの立場も微妙で、今月、アメリカ海軍は空母ニミッツなどの艦船を引き揚げるなど軍事的な緊張を緩和させる動きを見せているが、CIAによる反シリア政府軍支援は続いている。傭兵を使ってシリアの体制を揺さぶるという形に戻ったとも言える。
2013.11.12
イランの核開発問題を協議するため、今月7日から「P5+1」、つまりアメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスの国連安保理事会の常任理事国、そしてドイツはスイスのジュネーブでイランと会っていた。フランスの妨害で合意には至らなかったと言われている。 この協議に強く反対していたのはイスラエル。アメリカ議会に対するロビー活動だけでなく、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はアメリカのバラク・オバマ大統領、ロシアのウラジミール・プーチン大統領、フランスのフランソワ・オランド大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、イギリスのデイビッド・キャメロン首相といった各国の首脳に電話、イランと合意しないように働きかけていたが失敗、合意が近いことを知る。 そこで、ネタニヤフの友人でフランスの国会議員でもあるメイヤー・ハビブがフランスのローラン・ファビウス外相に電話し、イランに対して強い姿勢を示さなければ、ネタニヤフはイランを攻撃すると伝えたという。 基本的に電話は盗聴されているわけで、ファビウス外相への通話内容が傍受されていることを承知でハビブは電話をかけたはず。会話の内容はフランス以外の国に伝わることを念頭においていただろう。 1981年6月、イスラエルは8機のF-16と6機のF-15でイラクのオシラク原子力研究所にあった「タンムズ-1号炉」を爆撃、破壊しているが、そうしたことを実行するというわけだろう。破壊された原子炉はフランスのOSIRIS型で、IAEA(国際原子力機関)の査察を受けていた。 ここで時代を戻して現在。ロシア政府の働きかけでシリア攻撃が中止され、イランとの交渉が始まったわけだが、こうした展開にイスラエル/ネオコンやサウジアラビアは不満を募らせている。これまで傭兵を雇い、反シリア政府軍に資金や武器/兵器を提供してきたサウジアラビアだが、ここにきてパキスタンで反政府軍の兵士を訓練し始めたとも伝えられている。1970年代の終わりから80年代にかけてアフガニスタンで行ったようなことを始めたということだ。 ところで、イスラエルの核開発を始める際、支援したのはフランス。シオニスト人脈ならイギリスにもあり、フランスにはプラス・アルファがある。 第2次世界大戦が終わるとフランスの植民地でも独立の動きが出てきた。1954年にはアルジェリアで民族解放戦線が結成され、戦争が始まるのだが、この戦争でイスラエルの情報機関がフランスを助けている。イスラエルには北アフリカ出身者がいて、解放戦線の懐へ飛び込むことができたことが大きい。そうした関係がイスラエルの核開発支援につながるわけだ。 こうした話はアメリカにも当てはまるのだが、最近は「情報のイスラエル依存」が悪い結果をもたらしている。重要な件で偽情報をつかまされ、操られるようになったのだ。こうした問題はアメリカに情報を依存したがっている日本でも生じてくる。他国から提供される情報にはそうした側面が常に伴う。 シリア、イラン、イラクの体制転覆をイスラエル/ネオコンは遅くとも1991年に計画している。この年、アメリカを中心とする軍隊がイラクを攻撃したのだが、ジョージ・H・W・ブッシュ政権はサダム・フセイン体制を倒さないまま、戦闘を止めてしまった。 そこでネオコンは怒り、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官はシリア、イラン、イラクを攻撃するとこの時点で口にしていたとウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官は語っているのだ。こうした計画を実現するため、イスラエル/ネオコンが偽情報を広めようとしたのは必然だった。 シオニスト人脈や情報依存によって、フランスはイスラエルの影響を今でも受けているのだろうが、こうした状態はフランスを破壊していく。イスラエルやサウジアラビアも自分たちの影響力を過信、破滅へ向かい始めているように見える。(追加)イスラエルのフランスへの圧力が伝えられた後、アメリカのジョン・ケリー国務長官は、イランがP5+1の合意内容を受け入れなかったと語っている。 また、アメリカとフランスは手を組んでいて、「善玉」と「悪玉」の役割分担をしているという見方もある。フランスがアメリカに刃向かうことは困難だということだ。
2013.11.11
新しいアメリカの駐日大使としてキャロライン・ケネディが選ばれた。言うまでもなく暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領の娘であり、イラク戦争に反対したことでも知られている。新大使に批判的な声も出ているようだが、それだけ期待できるということだ。 日本では政府もマスコミもイラクへの軍事侵攻を反省していない。偽情報に基づいて攻撃したのだが、当時から情報が正しくないことは明白だった。戦争の障害になるような意見を表明したり、行動する人びとや団体を激しく攻撃した責任を彼らはとらなければならない。そうした自らの戦争責任をとろうとしない日本人にとって、キャロライン・ケネディは好ましからぬ人物なのだろう。 イラク攻撃に参加できなかったことを残念に思っているのか、最近ではアメリカ支配層の一部と手を組み、東アジアの軍事的な緊張を高めようとする勢力が日本で暴走、自分たちの悪事を隠し、支配力を強めるために国家安全保障基本法案や特定秘密保護法案を成立させ、国家安全保障会議を創設しようとしている。 こうした動きは外国から見ても危険であり、11月11日には日本外国特派員協会が「特定秘密保護法案」の撤回か大幅な修正を求めるとする声明文を出したようだ。支配層のプロパガンダ機関に堕している欧米のメディアも、日本の動きは容認できないと判断したのだろう。 ところで、今から50年前、1963年11月22日にテキサス州ダラスでジョン・F・ケネディ大統領は暗殺された。キューバへアメリカ軍を侵攻させることを拒否、ミサイル危機を話し合いで解決し、1963年6月にはアメリカン大学の学位授与式(卒業式)でソ連との平和共存を訴え、ベトナムから軍隊を撤退させることも決めるような人物で、好戦派から憎まれていた。経済面では、巨大企業に社会的な責任を求め、巨大な鉄鋼会社や金融機関にも厳しい姿勢で臨んでいる。 国外ではイスラエルから嫌われている。前から住んでいたアラブ系住民を殺戮、追放の上で「建国」されたイスラエルに対し、ケネディは批判的だった。この点は前任者である共和党のドワイト・アイゼンハワー大統領と似ている。そのアイゼンハワーは退任の際、軍産複合体に関する警告を口にした。 1960の大統領選で民主党には3人の候補者がいた。ヒューバート・ハンフリー、リンドン・ジョンソン、そしてケネディだ。ジョンソンは議会における親イスラエル派の代表格で、イスラエルの核兵器開発を資金面から支えたアブラハム・フェインバーグを後ろ盾にしていた。イスラエル/シオニストの望んでいた人物がジョンソンだったのは当然。 11月上旬に予定されていたシカゴの暗殺計画からは逃れられたケネディだが、22日には凶弾に倒れる。命を狙われていることが明白であるにもかかわらず、ダラスで乗せられた自動車は防弾仕様でなく、屋根はシークレット・サービスの指示で取り外されていた。シークレット・サービスの責任者は大統領に言われたとしているが、その話を聞いた人物はほかにいない。銃撃の直後、リムジンにエージェントのひとりが飛び乗っているが、これは命令を無視してのことだ。 リムジンに飛び乗ったエージェントによると、ステップに足がかかる直前、血、脳の一部、頭骨の破片が自分に向かって飛んできて、顔、衣類、髪の毛についたという。(Clint Hill with Lisa McCubin, “Mrs. Kennedy and Me”, Gallery Books, 2012)映像を見ても明らかだが、前から銃撃されている。パレードの後ろ側にいたリー・ハーベイ・オズワルドの単独犯行だとする公式見解はナンセンスなのだ。 その公式見解によると、大統領の首の後ろに命中した弾丸は体の中を通過、喉から飛び出し、空中で大きくS字を描いてジョン・コナリー知事の右脇の近くに命中して第5肋骨を粉砕、肺を潰し、右側の乳首近くから飛び出し、右手首を貫通し、左の太腿で止まり、しかも弾丸はダメージを受けていないことになっている。 この暗殺で名前の挙がる人物の中には、日本と関係の深い人物もいる。その日本にアメリカ大使として赴任するキャロライン・ケネディ。日本で推進されている好戦的な政策とどのように向き合うのか、注目されている。
2013.11.11
安倍晋三政権は日本のファシズム化を進めるだけ進め、主権をアメリカ支配層へ渡そうとしている。次の選挙より前に後戻りできない状況にしてしまおうというわけだろう。だからこそ、国家安全保障基本法案や特定秘密保護法案を成立させ、国家安全保障会議を創設して憲法の機能を停止させ、アメリカ資本が日本の富を奪いやすい環境を整えるためにTPPへ参加して国家戦略特区をつくり、原発を再稼働させようとしている。2020年に東京で開催が予定されている夏期オリンピックをファシズム化促進に利用することも間違いないだろう。 イギリスの首都ロンドンでは昨年、夏期オリンピックが開催されたが、その際にロゴが問題になったいた。ナチスを象徴する鉤十字に似ている、あるいはエルサレムの丘を意味する「シオン」と読めると言われたのだ。シオンに帰れという看板を掲げ、イスラエルを「建国」したのがシオン主義者、つまりシオニストである。 ロゴ以上に問題視されたのはファシズム化の促進。「テロ対策」と称し、監視システムが強化されたのだ。以前から監視カメラが張り巡らされてきたロンドンだが、一段とひどい状況になる。 リビアやシリアでの戦闘で明確になったように、イギリスが支援していていた反政府軍はアル・カイダ、あるいはアル・カイダと緊密な関係にある。こうした勢力を監視するために社会を牢獄化しているわけではない。ターゲットは一般市民であり、自分たちの支配体制を揺るがしかねない個人や団体、例えば戦争に反対して平和を望むような人びとをあぶり出し、潰すことが目的だ。戦争の原因を作るアル・カイダはある意味、望ましい存在。 オリンピックの際、顔の識別も可能な監視カメラを張り巡らせ、無人機による監視も導入、通信内容の盗聴、携帯電話やオイスター・カード(イギリスの交通機関を利用できるICカード)を利用した個人の追跡も実用化させた。海兵隊や警察の大規模な「警備訓練」も実施されている。本番では警備のために軍から1万3500名が投入されたはずだ。日本でも同じようなことを目論んでいるのだろう。東京のオリンピックは、国家安全保障基本法案や特定秘密保護法案と関係がある。 こうした日本やイギリスのファシズム化は合法的に行われているのだが、この問題についてマーチン・ルーサー・キング牧師は1963年4月に「バーミンガム刑務所からの手紙」で次のように書いている。「ドイツでアドルフ・ヒトラーが行った全てのことは合法的だったということを私たちは忘れるべきでない。」「悪意ある人びとの憎悪に満ちた言動だけでなく、善意の人びとの驚くべき沈黙も、この時代に悔い改めなければならない」のであり、「人類の進歩は必然的にやってくるわけではない。」 安倍政権の暴走を可能にした一因は、多くの人が支配層の不公正な行為に沈黙し、社会情勢、国際情勢に無関心だということにある。例えば、国民を監視するシステムに関する日本人の問題意識は他国より40年以上遅れている。処世術としての「見猿、聞か猿、言わ猿」や「長い物には巻かれろ」は根強く生きている。傍観はファシズム化を後押しすることになるからこそ、安倍政権は法律によって国民を沈黙させ、「教育」とNHKで支配層に都合の良い話を国民に刷り込もうとしている。 現在、日本ではファシズム化作業の最終段階に入りつつある。そうなってからマスコミもおずおずと声を上げているが、この段階になれば支配層から厳しい反撃はないと読んでいるのだろう。これは「左翼」とか「革新」と見なされている団体にも当てはまる話だ。
2013.11.10
パレスチナ解放闘争の象徴的な存在だったヤシル・アラファトが死亡して9年になる。そのアラファトの遺体を調査していたスイスのローザンヌ大学病院放射線物理学研究所のチームは、少なくとも通常レベルの18倍という放射性物質のポロニウム210を発見、ロシアの調査団も同じ物質を検出したという。死亡した直後から暗殺説は流れていたのだが、今回のポロニウム検出で疑いは強まったと言えるだろう。 暗殺を実行したと疑われているのはイスラエル。2001年にイスラエルの首相となったアリエル・シャロンはアラファトを排除する計画を立てたとその年、ル・モンド紙は報道した。2003年に暗殺が決まったという情報も流れている。 ポロニウム210による毒殺と聞いて、2006年に死亡したアレクサンドル・リトビネンコを思い出す人も少なくないだろう。ボリス・エリツィン時代のロシアで巨万の富を築いた「オルガルヒ」のひとり、ボリス・ベレゾフスキー(亡命後、プラトン・エレーニンへ改名)のボディー・ガードを務めていた人物で、ロシアの情報機関FSBの元メンバー。イギリスではMI6(イギリスの対外情報機関)の仕事をしていたと言われている。 リトビネンコの体調が悪くなった日、ロンドンの「寿司バー」で彼と会っていたイタリア人のマリオ・スカラメッラはECCP(環境犯罪防止プログラム)という組織を運営、その一方でナポリの犯罪組織、カモッラともつながっていた。 その一方、スカラメッラはイタリアの情報機関とも緊密な関係にあり、2002年にローマの近くで開かれた秘密会議では、情報大臣だったフランコ・フラティニ、SISDE(治安機関)のマリオ・モッリ長官、SISMI(対外情報機関)のニッコロ・ポッラーリ長官、ルイジ・ラムポーニ元SISMI長官と同席している。後にポッラーリ長官はCIAによる拉致事件に絡んで解任されるが、この拉致にはスカラメッラも協力していたという。 リトビネンコは殺される数週間前にイスラエルを訪れ、ロシアの石油会社ユーコスの元幹部レオニド・ネフツーリンと会っているのだが、ベレゾフスキーは少なくとも一時期、イスラエルの市民権を持っていた。亡命後、ベレゾフスキーが親しくしていた人物には、ニール・ブッシュ、マイケル・ミルケン、ルパート・マードック、ジェイコブ・ロスチャイルド卿、ナサニエル・ロスチャイルドがいる。 ベレゾフスキーは蓄財の過程でチェチェンの犯罪組織と結びつき、反ロシア勢力ともつながっていていたと言われる。現在、その勢力のメンバーがシリアへ入り、体制転覆を目指して戦っている。また、エリツィンが失脚した後、相当数の犯罪組織メンバーがイスラエルへ逃れ、情報機関とも結びついたとも指摘されている。
2013.11.09
日本では官僚が情報を独占してきたが、その独占力をさらに強化しようとしている。そして、庶民が情報に迫ろうとする行為を厳しく罰する「特定秘密保護法案」が持ち出された。11月7日から衆議院の本会議で法案に関する審議が始まったようだ。 機密漏洩を厳罰に処す法律がないため、アメリカは日本に重要な情報をくれないと脳天気なことを言う防衛省の幹部もいるらしい。本心なら、大した「物貰い根性」である。どのような法律を作ろうと、アメリカが日本へ情報を提供するときは、それなりの思惑があるからであり、情報の提供は日本を操る手段にすぎない。 ウォール街の大物弁護士で国務長官を務め、日本の「右旋回」を演出したジョン・フォスター・ダレスはこんなことを言ったという:「アメリカに友人はいない。ただ利害があるだけだ。」 最近は怪しいが、イスラエルはアメリカと友好的な関係を維持してきた。それにもかかわらず、1985年にはアメリカ海軍の情報部に勤務していたジョナサン・ジェイ・ポラードがイスラエルのスパイとしてアメリカで逮捕され、2005年には国防総省の分析官だったローレンス・フランクリンが軍事機密情報をイスラエルのロビー団体、AIPACの幹部に伝えた容疑で逮捕されている。「友好国」でもそうしたことは行われている。ホワイトハウスを含むアメリカの通信がイスラエルへ流れる仕組みができていることは本ブログでも書いたとおり。 ドイツをはじめとする国々をアメリカの電子情報機関NSAが監視していたとする報道もあった。ランパート誌の1972年8月号に掲載された記事の中では、元NSA分析官が全ての政府をNSAが監視してると語っている。勿論、ドイツはアメリカの「友好国」だとされている。 情報機関の連携は、より深刻な問題をはらんでいる。前にも書いたことだが、情報機関が「国家内国家」として機能する恐れがあるのだ。例えば、1972年にオーストラリアの首相となり、自国の情報機関とアメリカとの関係にメスを入れようとしたゴフ・ホイットラムは75年にイギリス女王エリザベス2世の総督から解任され、ニュージーランドの場合は反核政策を掲げていたデイビッド・ラング首相の指揮下に情報機関は入っていなかった。命令は米英の情報機関、つまりNSAとGCHQからきていたのである。 日本も情報収集活動の対象だ。そんなことは日本の官僚たちも知っているはずで、彼らが「特定秘密保護法案」などを成立させたい理由は好きなように日本の庶民を食い物にしたいからに違いない。これまでも食い物にしてきたが、尻の毛まで抜いてやろうとしている。そのためなら日本をアメリカの支配層へ売り飛ばすことなど、何とも思わないようだ。 安倍晋三首相は「特定秘密の恣意的な指定が行われることのないよう、重層的な仕組みを設けており、本法案の適正な運用が確保されるものと考えています」などと言ったそうだが、東電福島第一原発に関する発言と同じように、単なる戯言。国民の「知る権利」は「十分尊重」したうえで踏みにじるつもりだろう。
2013.11.08
今から50年前の11月2日、アメリカのジョン・F・ケネディ大統領はシカゴを訪問する予定になっていたのだが、その直前、シカゴで大統領を暗殺する計画があるとする情報をFBIとシカゴ警察はつかむ。FBIは情報提供者「リー」からの通報、シカゴ警察の場合はバークレー・モイランド警部補が聞き込んだのだ。 ところが、FBIのJ・エドガー・フーバー長官は捜査に着手せず、シークレット・サービスに情報を伝えたと言われている。シークレット・サービスのシカゴ支部は容疑者を監視、11月1日に2名を逮捕するが、残りの2名は取り逃がしてしまう。 モイランド警部補の場合、10月の後半、行きつけのカフェテリアで大統領について不穏当な話をする客がいると聞き、その人物が元海兵隊員でジョン・バーチ協会に所属する人物だということを確認、シークレット・サービスに連絡した。その人物の自宅からM1ライフル、カービン銃、2800発の銃弾が発見され、11月2日に逮捕する。逮捕の直前に大統領のシカゴ訪問は中止が決まっていた。 地元の警察で事件を担当したふたりの警官のうち、ひとりはFBIやCIAで訓練を受け、後にブラック・パンサーの指導者、フレッド・ハンプトンとマーク・クラークを射殺している。もうひとりは1970年代にシカゴの警察本部で情報担当の幹部になる。 ケネディ大統領は11月22日にダラスで暗殺されるが、その犯人だとされて逮捕されたリー・ハーベイ・オズワルドを射殺したジャック・ルビー(生まれたときの名前は、ヤコブ・ルーベンシュタイン)はシカゴからダラスへ移り住んだ人間。犯罪組織と深い関係にあり、シカゴ暗黒街の大物でCIAの協力者でもあったサム・ジアンカーナと面識があった。 フルゲンシオ・バチスタが支配していた革命前のキューバは犯罪組織が支配するカジノの島で、ユダヤ系ギャングの大物でラッキー・ルチアーノの親友でもあったメイヤー・ランスキーの代理人としてサント・トラフィカンテが君臨していた。このトラフィカンテはベトナム戦争の際、CIAのために麻薬を売りさばいた人物。ルビーはこのトラフィカンテと1959年にキューバで会っている。 ギャングがはびこるバチスタ体制が早晩、崩壊することは明白で、アメリカの支配層は「バチスタ後」を任せる相手としてフィデル・カストロに目をつけていた。そこでルビーはカストロのために銃を密輸したと言われている。 そのカストロは1959年に革命を成功させ、土地改革やアメリカ系企業の資産接収、あるいは基幹産業の国有化を推進する。アメリカ支配層に操られる人物ではなかった。そこで、今度は反カストロの秘密工作が始まり、この工作にもルビーは参加したという。
2013.11.07
地震で破壊された東電福島第1原発が深刻な状態にあることは世界的に知られるようになり、アラスカやカナダからカリフォルニアへ広がりつつある海洋汚染の生態系に対する影響を懸念する声も高まっている。4号機の使用済み核燃料プールから燃料棒を取り出す作業は全面核戦争の寸前だったキューバ危機なみのリスクがあるとも言われ、日本政府や東電に任せておけないと考える人も少なくない。 今でも大量の放射性物質を太平洋に向かって放出し続けている福島第1原発。「汚染水による影響が福島第1原発の港湾内0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされ」、「健康問題については、今までも現在も将来も全く問題ないということをお約束いたします」と安倍晋三首相が叫んだところで、危機的な状況に変化はない。 そうした中、米エネルギー省のアーネスト・モニツ長官が日本を訪れて日本側と会談、廃炉に向けた技術的な協力を東電は受け入れることで一致したという。自分たちに廃炉させる能力がないことを東電も認めたということだろう。 日本が核兵器の開発を進めていることはCIAやNSAにとって常識であり、CIAの上層部に情報源を持つジャーナリストのジョセフ・トレントは、日本が70トン(キロではない)に及ぶ兵器級プルトニウムを保有していると主張している。 この核兵器開発にアメリカの一部支配層が協力していると以前から推測され、イギリスも関係している可能性がある。トレントがキー・パーソンとして示しているのはリチャード・ケネディ。ロナルド・レーガン大統領の側近として核問題を担当していたようだ。 レーガンの意思には関係なく、1980年代の半ばになると軍事部門も経費削減が求められるようになり、議会は増殖炉の予算を廃止してしまった。そこで目をつけられたのが日本。「思いやり予算」が急増したのも、そうした背景があるからだ。1980年度は374億円だったものが、90年度には1680億円、そして2000年度には2755億円に達した。アメリカの核も日本が支えるようになる。 カネの問題だけでなく、日本が核武装すればアメリカの軍事負担は軽減されるという思惑もあった。核武装した日本は、レーガンの戦略に合致、当初はプルトニウムと核技術の日本への移転に反対していた国防総省も黙認するようになる。 現在、福島第一で燃料棒の溶融物が地下に入り込み、地下水を汚染、その汚染水が海に漏れている可能性が高く、4号機の使用済み核燃料プールから燃料棒を取り出すことに失敗すると北半球が全滅するとも言われている。それに加え、日本は核兵器という要素も抱えているわけだ。当然、「特定秘密」だ。 廃炉に向けた作業をする人間をかき集めるために広域暴力団が使われていることは世界的に知られるようになったが、その背後で犠牲者が闇から闇に葬り去られているという噂も囁かれている。こうした話も「特定秘密」だろう。国民の目から隠される。 裏で何が行われていても知らなければ責任を問われず、汚いことを知らなければ安穏に生活できると考える人もいるかもしれない。「知らぬが仏」ということわざもある。が、核問題の場合、「知らぬは御陀仏」。「特定秘密保護法案」は日本人を死滅させかねない。
2013.11.07
シリアへの直接的な軍事介入が中止されたものの、アメリカ政府の内部から好戦派が一掃されたわけではなく、「証拠はないが怪しい」というイラクへの先制攻撃前を彷彿とさせる発言をする人物がいる。そうしたひとりがアメリカの国連大使、サマンサ・パワー。 彼女の前任者であるスーザン・ライスが安全保障問題担当の大統領補佐官(NSA)に就任し、パワーが国連大使になったのは今年6月上旬のこと。この段階でアメリカ政府は戦争への道を歩き始め、8月下旬には開戦の一歩手前まで進んだ。ふたりは好戦派の手駒である。 アメリカがシリアの化学兵器廃棄に懐疑的になる気持ちもわからないではない。1993年に署名され、97年に発効した化学兵器禁止条約では、すでに存在している化学兵器は条約発効の10年後、2007年に全てを廃棄、延期も2012年までとされているのだが、アメリカはまだ3100トン以上の化学兵器を保有している。自分たちが約束を守っていないのだ。 シリアが化学兵器を持つようになった理由はイスラエルの大量破壊兵器にあるとも言われている。イスラエルが保有している核弾頭の数は不明だが、推定数は80発から400発。イスラエルの核兵器開発に携わったモルデカイ・バヌヌによると200発以上、イスラエルのイツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めた経歴を持つアリ・ベンメナシェによると1981年の時点で300発以上、そしてジミー・カーター元米大統領は150発だと見ている。化学兵器を保有している可能性も高い。 シリアで化学兵器を使ったのはサウジアラビアだった疑いが濃厚で、シリア政府が使ったので化学兵器の廃棄が決まったわけではない。和平を進めるひとつのステップとして決まったのだ。そうした和平の流れを嫌う勢力は怪しげな化学兵器話を流し、シリア人が自国の大統領を決める権利を否定して戦争への道へ引き戻そうとしている。勿論、イスラエルの話などはしない。
2013.11.06
シリアでの戦闘を続けたい勢力と、集結させたい勢力が対立している。ネオコン、イスラエル、サウジアラビア、トルコなどは戦争を続けようと必死であり、バラク・オバマ政権は止めようとしている。戦争を続ければ、アメリカは疲弊して崩壊する可能性もあるからだ。 そうした中、サウジアラビアで好戦的な政策を推進しているバンダル・ビン・スルタン総合情報庁長官の周辺がざわついている。10月2日にスルタン長官はイスラエルを訪問してモサドのタミル・バルド長官と会ったと言われているのだが、これがサウジアラビアの内部で問題になっているという。 8月21日にあったゴータへの攻撃で化学兵器が使われ、「西側」や湾岸の産油国などはシリア政府の仕業だと主張していたが、実際はサウジアラビアが実行したという話がある。最初に伝えたのはミントプレスで、8月29日のこと。此の報道が正しければ、責任者はスルタン長官の可能性が高い。 その前にロシアのビタリー・チュルキン国連大使は文書と衛星写真に基づいて反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射したことを示し、毒ガス攻撃を受けたとされるゴータで着弾していることを国連の臨時会合で説明していたこともあり、注目された。後に筆者として名前が載っていたひとりが記事と自分は無関係だと主張するのだが、編集長のムナル・ムハウェシュはその主張を全面否定、電子メールのやりとりもあると反論している。 10月に入ると「ロシア外交筋」からの情報として、ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れ、アフガニスタンの反政府軍支配地域で「第三国」がアル・ヌスラなどシリアの反政府軍に対し、化学兵器の使い方を訓練しているとする報告があるとロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は語る。そうした中、スルタン長官はイスラエルを訪問したことになる。 現在、オバマ政権にとってスルタン長官は目障りな存在。1983年から2005年までアメリカ駐在の大使を務め、ブッシュ親子とも親しい親米派として知られているが、切り捨てられる可能性が出てきた。今後、動向を注目しておく必要があるだろう。
2013.11.05
東地中海でインビテックスという軍事演習が11月4日に始まった。NATO、アメリカ海軍、そしてトルコの海軍、空軍、沿岸警備隊が参加して14日まで続けられる予定。NATOから参加するのはフリゲート艦3隻、アメリカからはフリゲート艦1隻なのに対し、トルコからはフリゲート艦3隻、コルベット艦2隻、高速戦闘艇4隻、潜水艦3隻、給油艦2隻、巡視艇2隻、上陸艦1隻、タグ・ボート1隻、沿岸哨戒機1機、ヘリコプター5機等々。要するにトルコ主導だ。 トルコ軍は10月20日から26日にかけてバルカン諸国と軍事演習を実施、NATOは11月2日から軍事演習「ステッドファスト・ジャズ2013」をロシアとの国境近く、航空機なら30秒で国境に到達する地点で始めている。11月9日までトルコとヨルダンが行う軍事演習には特殊部隊も参加しているという。シリアとロシアに対する軍事的な恣意行動と言えるだろう。実際に軍事侵攻するというポーズだけでなく、和平交渉でバシャール・アル・アサドを退陣させるための脅しだとも言える。 10月25日から28日にかけてアメリカ海軍は空母ジョージ・ワシントンを中心とする艦隊が実施した軍事演習との関連を指摘する声もある。24日からは中国海軍が西太平洋で大規模な軍事演習を実施、威圧し合う形だ。 トルコはシリアに軍事的な圧力をかけているだけでなく、レバノンの放送局MTVはイスラエルとシリア攻撃で協力していると伝えている。10月30日の夜から31日の未明にかけてラタキアに近いシリア空軍の基地が攻撃され、アメリカ政府の高官が攻撃はイスラエルによるものだと語った攻撃。その攻撃でトルコがイスラエルへ情報を提供したというのだ。 今年7月5日にもラタキアはイスラエルに攻撃されている。イギリスのサンデー・タイムズ紙はイスラエルのドルフィン級潜水艦から発射された巡航ミサイルで攻撃されたと報道していたが、ロシア系のRTはトルコの基地から飛び立ったイスラエルの戦闘機が海上に出てからラタキアへ向かったとしている。 RTの報道をトルコは否定しているのだが、2年前からからトルコとイスラエルは、アメリカ、イギリス、フランス、サウジアラビア、カタールなどと手を組んでシリアを攻撃してきたわけで、ありえない話ではないだろう。今回、トルコからイスラエルへ情報が伝えられたとしても驚きではない。 シリア攻撃を中止、イランとの話し合いを進めるアメリカのバラク・オバマ政権をネオコン、イスラエル、サウジアラビアは強く批判、そこにトルコが加わることはありえる。トルコ主導で行われている軍事演習もそうした雰囲気を感じさせる。
2013.11.05
2010年にWikiLeaksは、アメリカ軍のアパッチ・ヘリコプターが非武装の十数名を殺害する場面を撮影した映像を公開した。その中にはロイターのスタッフ2名も含まれ、自動車に乗っていた子どもふたりも重傷を負っている。世界的に話題となったが、日本のマスコミは無視した。 アメリカの電子情報機関NSAの仕事をしていたエドワード・スノーデンという人物が今年、NSAを中心とする機関による大規模な監視プロジェクトを明らかにした。こうした機関が監視しているのは各国の政府、企業、国際機関だけでなく、普通の人びとだ。 こうした監視プロジェクトを擁護する人たちは、その目的をテロリストの監視だとしている。が、2011年9月11日の出来事を防げなかった。監視システムが弱体だったからだと主張する人もいるようだが、実際は事前に多くの警告がアメリカ政府へ届いている。 例えば、FBIで翻訳官を務め、機密情報に接する機会のあったシベル・エドモンズによると、2001年4月にFBIはイラン情報機関の協力者から、オサマ・ビン・ラディンが航空機でアメリカの4ないし5都市を攻撃する計画を立てているという情報を得ていた。 CIAの協力者だったスーザン・リンダウアーによると、やはり2001年4月の段階でアメリカの情報機関はカリフォルニアやニューヨークで「テロ活動」があることを知っていたとしている。8月の上旬には、ジョン・アシュクロフト司法長官のスタッフや司法省のテロリズム対策室へ電話し、航空機のハイジャックや航空機を使った爆破工作に関する兆候を探すようにリンダウアーは伝えたという。 8月16日にミネソタ州ミネアポリスで逮捕されたザカリアス・モウッサウイが「テロ計画」に関係している疑いがあると9月4日にFBIは警告するが、アシュクロフト長官は動かない。 その遙か前、1999年にはイギリスの情報機関MI6から、アル・カイダが航空機を「空飛ぶ爆弾」として利用する攻撃を計画しているという警告があり、2001年年8月にはハイジャックの可能性を指摘している。 アル・カイダのメンバー20名がアメリカに潜入し、そのうち4名は戦闘訓練を受けていると2001年1月にエジプトの情報機関は警告、6月にはドイツの情報機関が「中東のテロリスト」による民間機のハイジャックをCIA、MI6、モサドに警告、9/11の数週間前にはロシアの情報機関が「自爆パイロット」のアメリカでの攻撃準備を警告、イラクのサダム・フセイン政権もアル・カイダのアメリカでの「テロ活動」を警告していた。 クレジット・カード詐欺の容疑でカナダの刑務所に入れられていた自称アメリカ海軍情報局の大尉、エドワード・ブリーランドは自分が情報機関員であり、無実だということを証明するためだとして2001年8月に封印した封書を刑務所に渡したのだが、9月14日に開封したところ、そこにはシアーズ・タワー、世界貿易センター、ホワイトハウス、ペンタゴン、世界銀行、オタワのカナダ議会、トロントのロイヤル銀行が攻撃される可能性があると書かれていた。 こうしたこともあり、2002年1月にカナダの法廷からペンタゴンに電話、交換手にエドワード・ブリーランド大尉のオフィスがどこかを尋ねる。すると、部屋の番号と直通ダイヤルを教えてくれた。つまり、ブリーランドの主張が正しかった。そのブリーランドをアメリカの警察当局は2004年10月に逮捕、08年にコロラド州で懲役336年が言い渡されている。 その気になれば9/11への対応はできたということであり、監視システムを強化する必要はないということだ。監視システムの仕組みからして、ターゲットは不特定多数の人びとであり、「テロ」とは関係ない。歴史的に、アメリカの支配層は戦争に反対し、平和を望む人びとを危険視している。 ランパート誌の1972年8月号に掲載された元NSA分析官のインタビュー記事で、NSAが全世界の政府を監視していることは明らかになっているが、電子技術の進歩でターゲットは限りなく拡大している。 1980年代になると情報収集/分析システム、そのシステムへトラップ・ドアを組み込んでの販売、地球規模の通信傍受システムECHELONなどが明らかになり、NSAやイギリスのGCHQなどによる情報支配が大きな問題になる。「民間企業」を配下に持つイスラエルの軍の8200部隊も注目されている。 こうした情報支配の問題に関心を持つ人が少ない希有な存在が日本。「右」とか「左」、あるいは「保守」とか「革新」には関係なく、全体的にそうしたことが言える。その一方、かつての上瀬谷、現在は三沢など、通信傍受の上で日本は重要な役割を演じていることも事実だ。
2013.11.04
NATOは11月2日から軍事演習「ステッドファスト・ジャズ2013」をロシアとの国境近くで始めた。参加人員は約6000名で、NATO加盟国以外にフィンランド、スウェーデン、ウクライナからも参加しているようだ。演習の中心はポーランドやラトビアで、航空機なら30秒で国境に到達する地点だという。それに対し、9月20日からはロシアとベラルーシの合同軍事演習「ザパド2013」が実施された。参加人員は約1万2000名とも1万3000名とも言われている。 こうした軍事演習の前、8月下旬にNATOはシリアを攻撃する姿勢も見せ、9月3日には地中海の中央から東へ向かって2発のミサイルが発射された。ロシアの早期警戒システムはミサイル発射をすぐに探知、2発のミサイルは海中に落ちたとされている。その直後、イスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だと発表したが、事前に周辺国へ通告されてはいない。 実際にシリアへの攻撃を始めたのだとする説もあり、スペインにあるNATOの基地から発射されたミサイルをロシア軍が撃墜したとレバノンのメディアは報道、ジャミングでミサイルのGPSが狂って落下したとも言われている。 もし、地中海でアメリカ、フランス、イスラエルなどの艦隊がロシアや中国の艦隊と軍事衝突したなら、ヨーロッパでNATO軍とロシア/ベラルーシ軍との衝突に発展した可能性がなかっとは言えず、日本も巻き込まれたかもしれない。ネオコン、イスラエル、サウジアラビアなどは、そうした展開も辞さないという姿勢だ。 1990年にドイツが統一される際、アメリカのジェームズ・ベイカー国務長官はソ連のエドゥアルド・シュワルナゼ外相に対してNATOを東へ拡大させないと約束していたのだが、それを無視して東へ拡大してきた延長線上に今回のNATOによる軍事演習もある。 NATOを東へ拡大させているのはネオコンだ。例えば、1996年には元情報将校でネオコンのブルース・ジャクソンが「NATOに関する米国委員会」を設立している。ジャクソンは1996年にボブ・ドールの陣営で働き、97年にはネオコンのシンクタンクPNACの創設に参加している。2003年にこの委員会は解散、「過渡的民主国家プロジェクト」をスタートさせた。 ジャクソンが親しくしているひとり、ランドール・シューネマンはジョン・マケインの顧問で、グルジア政府のロビイストでもある。イラク攻撃を熱心に主張していたイラク解放委員会の中心人物としても知られている。 1991年の段階で、ネオコンのポール・ウォルフォウィッツ国防次官はシリア、イラン、イラクを掃除するとしていたと話すのはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官。2001年9月11日から程なくして攻撃予定国リストをジョージ・W・ブッシュ政権は作成し、そこにはイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンが載っていたという。 2001年にグルジアへ予備役将校2名と数百名の元兵士が「教官」として送り込むなどイスラエルはグルジアへの影響力を強め、2008年8月には南オセチアを奇襲攻撃した。ロシア軍がすぐに反撃を始めてグルジア軍を撃退したが、ロシア側は計画の立案はイスラエルが中心になったと見ているようだ。 ネオコンはNATOの東方拡大/ロシアへの圧力と中東/北アフリカの軍事的な制圧を同時進行させているわけで、ひとつのプロジェクトに含まれていると考えるべきだろう。 ボリス・エリツィン時代にシオニスト系のグループが一旦はロシアを制圧していたが、ウラジミール・プーチンに追い出されてしまった。シオニストが逃げ込んだ先がイギリスとイスラエル。ネオコンは中東/北アフリカだけでなく、ロシアも手中に収めようとしている可能性が高い。が、思惑通りには進んでいないようだ。
2013.11.03
日本の場合、「改革」を重ねるたびにシステムは悪くなっていく。安倍晋三内閣に提言を行うために設置された私的諮問機関だという「教育再生実行会議」が10月31日に提言「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」(PDF)を安倍首相に提出したようだが、アメリカのように情実入学を公然と認める内容。恣意的に合格者を選べる仕組みを作ろうとしている。このふざけた提言をした会議の座長は早稲田大学の鎌田薫総長だ。 この提言には、例えば、次のような記述がある。「各大学は、学力水準の達成度の判定を行うとともに、面接(意見発表、集団討論等)、論文、高等学校の推薦書、生徒が能動的・主体的に取り組んだ多様な活動(生徒会活動、部活動、インターンシップ、ボランティア、海外留学、文化・芸術活動やスポーツ活動、大学や地域と連携した活動等)、大学入学後の学修計画案を評価するなど、アドミッションポリシーに基づき、多様な方法による入学者選抜を実施し、これらの丁寧な選抜による入学者割合の大幅な増加を図る。その際、企業人など学外の人材による面接を加えることなども検討する。」 こうなると、大学側が主観的に能力とは関係なく合格者を選べる。内申書が導入されたときから一貫している支配層の姿勢だ。教師に批判的だったり、社会問題に関心を持ったりするような生徒を排除し、企業にとって都合の良い人間を選ぼうとしていると言わざるをえない。戦争や原発に反対したなら、「テロリスト」として記録されるだろう。 2003年に報じられたアメリカの国民監視システムMATRIXを開発したシーズント社は膨大な個人データを分析し、「潜在的テロリスト」を見つけ出そうとしていた。どのような傾向の本を買い、借りるのか、どのようなタイプの音楽を聞くのか、どのような絵画を好むのか、どのようなドラマを見るのか、あるいは交友関係はどうなっているのかなどを調べ、分析することで、思想、信条、性格、趣味を推測、体制に刃向かいそうな人間を見つけ出そうというわけである。このシステムに教育制度を丸ごと組み込もうとしている。 ところで、アメリカではジョージ・W・ブッシュのような人間でも「アイビー・リーグ」と呼ばれるエリート校に入れる。支配層の子どもなら無能でも権力へ通じる大学へ入れるということだが、日本もそうしたシステムにしたいのだろう。そうすることによって明確な支配階級を作れるというわけだ。
2013.11.02
山本太郎参議院議員が10月31日、「秋の園遊会」で天皇に手紙を渡したのだという。東電福島第一原発の事故による子どもの健康被害や現場で働く作業員の健康状態を知ってもらいたかったというのだが、原発推進派、あるいは反原発を掲げるライバルたちから批判の声が出ているらしい。 天皇個人に原発事故の実態を知ってもらいたかったのかもしれないが、時代錯誤の感は否めない。ただ、これを「天皇の政治利用」だとして「処分」、あるいは「議員辞職」を叫んでいる連中も天皇を政治利用してきた。今年だけでも、「昭和節」の前日に政府が開催した「主権回復の日」式典への天皇夫妻出席と安倍晋三首相の万歳、IOC総会での高円宮妃久子によるスピーチがある。 天皇は薩摩藩や長州藩が日本を支配する仕掛けの中心に据えた存在。戦後もその仕掛けを支配層は利用してきた。それを自分たちと対立する立場の人間が利用しようとしたことに怒りを感じているのだろうが、滑稽だ。 こうした問題が起こった一因は、現天皇が原発事故や水俣病などで被害者に近い立場から発言しているように感じられることがあるだろう。10月に皇后は「五日市憲法草案」に触れ、「市井の人々の間に既に育っていた民権意識」に言及している。現在の支配勢力にとって今の天皇は扱いにくい存在だ。 日本国憲法第9条に懸念を示し、1949年9月、アメリカによる沖縄の軍事占領が「25年から50年、あるいはそれ以上にわたる長期の貸与(リース)というフィクション」のもとでおこなわれることを求めるという内容のメッセージを出した昭和天皇。現天皇とは考え方が全く違う。(豊下楢彦著『安保条約の成立』岩波書店、1996年) 山本議員の行動を問題にする理由のひとつは、同議員が原発に反対している、つまり安倍晋三政権を支えている人びとの利権に揺さぶりをかける存在だからかもしれないが、天皇にはまだ政治的な利用価値があると認識していることも一因だろう。徳川時代には忘れ去られていた天皇を担ぎ出して「現人神」に祭り上げ、天皇カルトに基づく支配体制を築き上げた明治政府。そのカルトは今でも多くの日本人を支配しているのかもしれない。
2013.11.02
10月30日の夜、シリアのラタキアに近いシリア空軍の基地が攻撃され、31日にはアメリカ政府の高官が攻撃はイスラエルによるものだと語っている。レバノンでの報道によると、イスラエルの航空機6機がレバノン領空を海岸線に沿って飛行、地中海側から回り込んで攻撃したとも言われている。 レバノンにいるヒズボラの手にロシア製の地対空ミサイルが渡ることを防ぐためだとも伝えられているが、真偽は不明。シリアに対する直接的な軍事介入を中止してからアメリカ政府はイランとの交渉を始めているが、この動きを潰すためだという見方もある。 シリアでも和平の動きがある。政府が化学兵器の廃棄作業を進める一方、和平交渉もロシア主導で始まろうとしているのだが、こうした動きにもイスラエルやサウジアラビアは反発、サウジアラビアを後ろ盾とする反政府軍は和平交渉への参加を拒否している。 反政府軍の主力はサウジアラビアやカタールに雇われたイスラム武装勢力/傭兵だが、最近はカフカス(コーカサス)出身者で構成された戦闘部隊がシリアで作られたと伝えている。カフカスとは黒海とカスピ海にはさまれた地域を指し、反ロシアの軍事勢力が活動しているグルジアやチェチェンも含まれる。 カフカスからシリアへ入った戦闘員は1000名とも2000名とも言われ、こうした中から2014年にロシアのソチで開催される冬季オリンピックを攻撃する部隊が編成される可能性はある。が、そうしたことが行われて場合、サウジアラビアは致命的なダメージをうけることになりかねない。ただ、そうしたことを覚悟の上で破壊活動を行う雰囲気があることも事実だ。 軍事力を行使してもロシアや中国は出てこないという前提でネオコン、イスラエル、サウジアラビアは動いてきたように見えるが、現在のロシアや中国は力には力で対抗する姿勢を見せている。それは「西側」がシリア攻撃を開始しようとしたときの対応で明確。その場には中国の艦船もいた。アメリカ艦船との対峙は中国にとって得がたい経験になったことだろう。 中国はアメリカ海軍の東シナ海における動きに神経を尖らせているが、そうした動きに対抗するかのように、最近、ハワイへ情報収集船を派遣している。アメリカは自分たちが特別な存在でないことを実感しているかもしれない。
2013.11.01
日本でもシェール・ガスやシェール・オイルが話題になっているが、その採掘にからんで環境が汚染され、健康被害が出ているとも報告されている。そうした因果関係を裏付ける研究もあるのだが、そうした問題を医師が患者に話せないという現実もアメリカにはあるようだ。 シェールとは堆積岩の一種である頁岩(けつがん)を意味する。そのシェール層から天然ガスやオイルを採取することができるようになり、世界のエネルギー地図を塗り替えるとも言われている。 シェール・ガスを採掘する手法は水圧破砕(フラッキング)とも呼ばれる。まず垂直に掘り下げ、途中からシェール層に沿って横へ掘り進み、そこへ「フラクチャリング液体」を流し込んで圧力をかけて割れ目(フラクチャー)を作って砂粒を滑り込ませ、ガスやオイルを継続的に回収するというものだ。 この手法は地震を誘発すると言われているが、それ以上に問題視されているのはフラッキングに使われる化学薬品による環境汚染。こうした問題を取り上げたドキュメンタリー映画「ガスランド」は2010年に公開され、サンダンス映画祭で審査員特別賞を獲得している。 ペンシルバニア大学のポウン・サベリ博士がペンシルベニア州ブラッドフォード郡で医療機関に受診に訪れた72の成人を調査した結果、「約4分の1の患者が天然ガスの採掘は自分自身の健康に被害を与えていると考えている。」という。また、デューク大学の研究によれば、西ペンシルバニアの川水のラジウム・レベルは、ガス処理工場の通常の下流より200倍高いという。 こうした批判や調査結果が出ているフラッキングだが、ペンシルバニア州では昨年に成立した法律により、フラッキングで使われる化学薬品が健康面に問題を与える可能性があることを医師が患者に知らせられないという。その法律を無効だとアルフォンソ・ロドリゲス博士は訴えたものの、その訴えは棄却されてしまった。アメリカでは「命よりカネ」ということが徹底してきたようだ。日本なら特定秘密?
2013.11.01
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