全8件 (8件中 1-8件目)
1
<『コリオレイナス』@彩の国さいたま芸術劇場~生唐沢に惚れる?>『コリオレイナス』(原作:シェークスピア、演出/舞台監督:蜷川幸雄)を観てまいりました。主演の唐沢寿明さんの舞台は初。しかも元々熱烈なファンというわけでもなく、シェークスピアだしセリフが難解で退屈で眠くなったらどうしよう?、それに同じ演出家の今までの作品はどうも?だったので、私はやっぱり無理?相性が悪いのかな、と思ったりいろいろ心配もなかったわけではないのですが、結果は・・・予想がいい方向に大きくはずれ、大きな二重丸!ブラボー!な作品でエンターテイメントとして上出来な作品でした。舞台が紀元前ローマなのですが、この作品の舞台はパンフの蜷川さんいわく、「ローマをアジアに置き換え」「1国に固定せずいろいろなアジアの国を採りいれた架空の国」、つまり新感線の『朧の森に棲む鬼』と同様、非常にオリエンタルな香りの、斬新でありながらなつかしいような感じの作りになっていました。まず画期的なのが、幕の代わりに全体が大きな鏡の「ふすま」風スクリーンになっていて、最初はそこに観客席がもろに全部写ります。そして舞台がはじまると、不思議なことに鏡は全くの透明なガラスの板に変化し(照明でチェンジできる仕掛け?)スクリーンは閉じたままなのに、向こう側で芝居が始まっているのです。そしてその透明スクリーンが開くとまた別の世界が。からくりが素敵!舞台はなんとぜんぶ階段でできている。これはパンフの蜷川さんいわく、ローマの階段の多い風景イメージと階級性の表現でもあり、日本の神社等の階段のイメージでもあるそうです。そして階段はかなりの急傾斜。(わたしは「蒲田行進曲」を思い出した)階段の上にも屏風上のスクリーンが何層もあって、ふすまのように開いては次の絵柄のスクリーンが登場し、次々と紙芝居のように絵柄が変わっていき、完全に開くと、そこから人物がジャーンと登場する、というような不思議な仕掛けに。これは、蜷川さん自身が「歌舞伎の襖絵による場面転換する手法を初めて取り入れてみた」とパンフに書いているように実験的冒険のようです。また衣装も非常にアジアンというか、ジャポネスク。錦絵のような黒字にカラフルな刺繍をほどこした衣装や、日本の武士あるいはアジア、イスラムのような感じにもみえる不思議なガウンなど。よくみると、バルジャンが宿屋で着ているようなベージュのウールコートにカリオストロの黒くて裾を引きずった上着を重ねたような衣装もあり、ドキドキ。そして男たちが腰にさしているのは日本刀!で丸坊主姿です。唐沢さんの丸坊主も、とても自然でお似合いでした。女性が胸に下げたアクセサリーも大粒で布なども使った数連の目立つものが多く、オリエンタルな香りがし、つぎつぎと出てくる衣装をみるだけでも興味深かったです。この作品は4月にはイギリスの記念行事として招待され、公演予定があるそうなので、アジアンな色づけなど実験的な手法を意欲的に取り入れていたのでしょうか。とにかく舞台装置そのものが非常にユニークなものばかりでした。座席が上手端前方のため、閉じた前面のスクリーンの前の狭い舞台の上に、最初の庶民の群れの登場が自分のすぐ右側から大きな男たちが次々と登場して、舞台に目の前でどかんどかんと飛び乗っていくので、仰天しました。(舞台と客席をつなぐ階段などはないので、飛び乗るしかない)舞台上のできごとは、すべてその20段ほどの急勾配の階段上で行われるのですが、衣装は長いし、動きは容赦なく激しいし、殺陣も多いしで、足を滑らせて階段落ちする人が現れないかと何度ドキドキしたことでしょう。それに群集たちが後ろ向きになって舞台ぎりぎりに立つシーンもその足は舞台端から1cmくらいまでせまっていて、舞台からころげ落ちるのではないか、とやはりドキドキ。(注:階段落ちや舞台から飛び降りるシーンもありますけど、もちろんわざとです。)階段の上からだだだーーっと人が駆け下りるシーンは勢いで客席に転げ落ちそうで私も含め周りの人たちもそのたびに「キャー」(ギャーかな?)みたいに声をあげそうになりました。心臓の弱い方はあまり前の方に座らない方がいいかも。さて、キャストですが、主役の唐沢さん。テレビでみると普通ですが、まず顔がとーっても小さ~い!背も普通。それなのに舞台に彼が登場すると、舞台の空気が一気にびしーっと引き締まる!やはりこれを「華」「オーラ」と呼ぶのでしょうね。声は他のベテランの方(良き友人でありアドバイサであるメニーニアス役の吉田鋼太郎さんや宿敵オーフィディアス役の勝村政信さんなど)などがしっかりと地響きのごとく声を出すのに比べると、やはり線が細めというか、大声を出すと枯れ気味になる感じがありますが、それでもよどみなく繰り出される長々しいセリフの数々をテンポ欲めりはりよく響かせていてたいへん心地よかったです。マイクは使わないので、地声の響きが勝負!コリオレイナス(唐沢さん)の母親役の白石加代子さんも独特な和風できびきびと歯切れのよい語り口調が功を奏していて非常に印象的で存在感、凄みのある演技!力を入れるでもないのに、どの言葉もびんびんとホール中に轟いていてまさに怪女!?(エリザベートのストレート版があったら、ぜひゾフィーをお願いしたい!)場面転換もテンポがよく非常にスムーズで、群集の使い方も効果的でひとりひとりがでっかく活動的に見えました。はい!この作品は『朧』に似ている部分が多かったです。異国情緒にあふれてはいるが、同時にオリエンタルな香りもし、しかも殺陣シーンはまさに日本の武士。効果音の使い方(刀の音)も『朧』みたいに、臨場感にあふれていて、ドキドキしながらも惚れ惚れしました。それでいて、男の強さと弱さ、哀しさがよく描かれ、人間の心の機微、心のふれあいなどの描き方が深く、味わいと高貴な香りのする魅力的な作品に仕上がっているのが凄いなと思います。適役の勝村さんが非常に迫力、緊張感のとぎれない演技をしたことで、相対する唐沢さんも光具合を増し、相乗効果で、このふたりの対決のシーンは手に汗にぎる美味しいシーンでした。失礼ながら、勝村さんってこんなにカッコイイ人だったとは!唐沢さんの演じる『コリオレイナス』(もらった称号)は、執政官に上がるためには、市民に対して腰を低くしてその承認を得なければならないのですが、彼はあまりにも自尊心が高すぎて、自分を低くすることができない、そのために無念でいっぱいになり苦しむのですが、友や母親の説得で苦手なことに挑戦しようとする、それでもやはり抵抗感からうまくやりとおすことができず、ローマから追放されるはめになります。この役はなんだか唐沢さんをモデルにした「アテガキ」ではないかと思われるほど、はまり役と思われ、演じてるいるとは思えないほど自然でもあり、ときどき彼自身の言葉?と思わせるようなユーモアがちらっと見え隠れしたりして、悲劇のはずですが、客席から笑いが幾度も生じました。(だじゃれ、とかもありますので)市民の前で無理やり自分を作ってへりくだろうとしても、ついつい口からは高慢な言葉が飛び出してしまったり、貧しい格好をわざとしてみて、「傘地蔵」のミノみたいな衣装をかぶって市民に近づこうとするときにも、そんな卑屈な自分が嫌になって短気を起すのですが、みのをむしりとって、頭にそのかけらがついたままだったり、本人が本気で怒れば怒るほど、滑稽さがあらわれていて、それも悲劇=喜劇になりそうな空気とも感じられ、不思議な面白さがありました。(また、1幕で負傷して肩を出すシーン。血まみれ♪で武具に矢が何本もささったままで胸も見え(←どこみてるんだか)ちょっとドキドキでした)どうしても逆らえないのが、偉大なる母上(白石加代子)で、この人が「おまえはなっとらーん!!あれこれ・・○△★」とまくし立てると、絶妙な間を置いたあと、「ママ、僕が間違ってたよ~」みたいな激しい後悔とともに、母上の膝元に崩れ落ちる、みたいな変化も彼独特の空気が功を奏していて、面白かったです。香寿たつきさんはコリオレイナスの妻役ですが、泣いているか押し黙っているかのどちらかしかパターンがないし、セリフも少ないしで、あまり重要な役のようには思えませんでした。コリオレイナスの息子役の男の子は可愛かったです。子供を使ってお涙頂戴的なシーンなどはないところが気に入りました。とことん自分の我を通そうとする男にはやはり報いがあるわけですが、この作品でも矢が刺さります。たくさん切られます。血しぶきが飛びます。(クビは飛ばない)切られても切られてもなかなか死なないのが、主人公のお約束(笑)で、強く激しく生きた男が壮絶な最期を遂げるというシーン、気が付くとハラハラと頬を涙が伝っています。彼自身も泣いていました。カッコイイ男がついに力尽きるその姿!これほど哀しく魅力的なシーンがあるでしょうか。超上手の席だったので主に男たちの横顔中心に観察したのですが、横顔フェチ?の自分としては嬉しく、また唐沢さんが上手端に立ってにらんだり、下のほうをみて考え込んだりするシーンが多くあるので、唐沢さんファンはけっこう上手はお勧めかも。ということで、「舞台で映えるいい男?」がまた一人増えてしまいました(笑)唾も涙も汗もしっかり観察できるすごい迫力の男の世界の作品という感じですが、唐沢さんは唾があまり飛んでいなかったかな?吉田鋼太郎さんが唾飛ばしの名人なのか、5列目くらいまで飛んでいたような・・・・?横からみるとほんと見えすぎて困ります。弾丸のようなセリフのやり取りも、全部を理解しなくてもメッセージが受け取れれば楽しめるんだと気付きました。歌がなくてもこんなに面白いなんて!言葉遊びを兼ねたようなところもあるのですね。「リチャードを探して」でもアル・パチーノもラップみたいにリズムを愉しむこともできるって言ってましたっけ。それが今日は体でなんとなく理解できたように思いました。ミュージカル万歳というブログだったはずですが、最近ストレートの面白さにもめざめてきました。とくに人間同士の心のやり取りを深く表現するには、やはりセリフって大事だな、と思えるからです。レミゼのように歌で表現しきっている作品ももちろん素晴らしいですが、音程やリズムなどマスターすべきものがたくさんあるので、それプラス心情の表現をとなると、かなり高度なことで浅くなり勝ちなのかも。力強い男たち(+白石加代子さんも)のパワーをたくさんもらって、しっかり充電させてもらった気分です。シェークスピアや蜷川ワールドはちょっと・・と思っていらっしゃる方、ぜひこの作品を観てみてください!目から鱗が何枚も落ち、感動を胸に劇場を後にできること、うけあいです!<追記>★パンフレットは25x25cmで、ほぼ真四角。1500円。★マチネ上演タイム(休憩も含めて全3時間20分) 1幕:13:00-14:45(1時間45分) (休憩:15分) 2幕:15:00-16:20(1時間20分)★トイレは1Fにも地下にもあります。
2007.01.27
コメント(5)
<タイタニック TITANIC the Musical>今日は東京駅で降りて、別の演目をみる予定の友人とTokiaで昼食を一緒に食べ、そのあと東京国際フォーラムCで、『タイタニック the Musical』昼の部を観劇しました。フォーラムCの入り口のもぎりは、既にマリンな姿でお仕事されていて、その気に・・(笑)1階、3階は経験ありでしたが、今日は初めての2階席それもコの字型に張り出した部分の上手側の数列目。サイドになるので、見切れがあるかな、と思いきや、とても舞台に近く、しかも邪魔になるものがなにもないため視界が開けていて、細かい表情のほかはオペラグラスなしでもOKな観やすいお席でした。テレビの特番や友人のレポによってだいたいの雰囲気はわかっていましたが、舞台を使って3層構造の巨大な船をあらわすために、オケピへの階段も利用してあり、立体的で面白いつくりになっていましたし、船はちょっとおどろおどろしいような沈没の気配を最初から暗示するような暗めのセットで表現されていました。全体としては群集のそれぞれにスポットを当てつつ、逆らえぬ運命の酷さとそれに前向きに立ち向かう人間の素晴らしさなどを描いているのですが、やはり登場人物が多いだけに、どうしても満遍なく描こうとするあまり、強烈なインパクトに欠ける印象になった感があり、また沈没シーンをはじめ、大海原に浮かぶ船の孤独感を描くのは若干無理もあり、映画が大成功なだけにそれと比較するのは酷ですが、これが舞台の限界なのかな、という感じも受けました。楽曲はクラシカルな感じと現代アメリカ的な感じがほどよくミックスされた綺麗な曲もあり、とくに1幕の船出のシーンとフィナーレで共通して大合唱にて歌われるGodspeed Titanic は美しい旋律と運命の過酷さがあいまって涙がじわっとあふれましたし、半ばオタクに近いような内気な無線通信士ブライド(鈴木綜馬さん)のもとに本国に残してきた恋人への思いを伝えたいと通信を依頼しにきたボイラー係のバレット(岡幸二郎さん)の歌うThe Proposal/The Night was alive は美しく秀逸な曲でたいへん印象に残りました。先日のガラコンでは、綜馬さんが一人で歌い「メッセージは届いたよ」と最後に言ったのですが、バレットも一緒にいるシーンを実際にみて、やっと合点がいきました。あと歌としてはメイシーズ百貨店経営者ストラウス夫妻(光枝明彦さん、諏訪マリーさん)が2幕で歌うStill(いつまでも)と言う歌が老年夫婦の目に見えぬ深い愛と絆を感じさせる感動的なシーンでした。光枝さんは四季を退団されてから初めて拝見しましたが、これからかなり活躍しそうな味わいのある演技とよく響くお声が印象的でした。皺のひとつひとつにも美しい思い出や歴史がありそうな、そういう顔をされていました。綜馬さんは額や目に力を入れながらちょっとキョドったような無線係を見事に演じていました。岡さんとのデュエットをはじめ彼は上手の袖舞台のところにいることが多く、そういう意味では美味しいお席でした。岡さんは赤いシャツとサスペンダーつきのズボン姿で可愛くて若いボイラー係を演じており、結構ビジュアル的にも演技もキュートなところが気に入りました。顔はちゃんとボイラー係にみえるように汚しが入っていましたが、手は軍手をとったらあまりにもぴかぴかつるつるで綺麗!ここもちょっと汚しを入れたら完璧?冷徹で背中がぴんと伸びたジャベールもいいけれど、こんな役も案外お似合いなんですね!肩や首あたりの骨格がしっかりしていて足長で、遠くからでも一番目だってました。岡田浩暉さんは1等航海士で、青い制服がすらりとした体にとても似合ってなかなか素敵!いいお声もときどき聞くことはできましたが、残念ながらそのいいお声を堪能できるほど歌やセリフは多くなかったですし、お顔も深めにかぶった帽子で隠れ気味で、終始もどかしい思いがありました。マリウス♪はもう観られないし、結構この作品に期待していたのですが・・・((T_T))浦井健治さんは三等船客のジム・ファレル役で、カジュアルな格好と帽子がよく似合い笑顔も多く人形のようにキュートでしたが、どうもお相手のケイト役の紫吹さんとはあまりお似合いに見えなかった。紫吹さんのメイクが濃すぎたので違和感が拭えなかったのでしょうか。お稽古写真の素顔はボーイッシュでかわいいので薄化粧のほうがよかったかも?声も宝塚男役っぽさが残っているので、浦井さんと合わない気がしました。(ヴァンパイアをひきずってますが剱持さんとか大塚さんで観たかったかも。)演技としては、ベテラン勢が素晴らしい味をみせてくれました。とくにキャプテン・スミス(船長)役の宝田明さんは、実物の船長にビジュアルがそっくりで渋い表情に刻まれる悲しみや深い思いに揺さぶられました。また1等船客の客室係の藤木孝さんも、声はちょっと意外な感じでしたが、忠実なお仕事ぶりが演技と思えないほどはまっていて、好感がもてました。またホワイト・スターライン社の社長イズメイを演じた大澄賢也さんは金銭欲、虚栄心♪愚かさ♪あつかましさ・・といったカリオストロが歌った悪徳の数々を見事に兼ね備えたような人物を好演しており、まさにはまり役。もっともっと悪い光線を出す役もみてみたくなりました。軽やかな踊りもちょこっとですが観られました。2等船客のビーン夫妻(青山明さん、森口博子さん)はなんだかあまり夫婦に見えなかったというか、年齢の離れた恋人みたいな感じでしたが、キャラクターをはっきり打ち出していて一生懸命な姿勢が感じられました。でも博子さん、ちょっと大げさな演技で見ていて疲れるものもあったかも。一応主役とされているタイタニック号の設計士アンドリュース役の松岡充くんですが、歌い方はけっこうミュージカル俳優っぽく歌い上げていて、相当お稽古でがんばったと思うのですが、歌やセリフがあまり心にくいこんでこなくて、ちょっと浮いていたというか、主役としての存在感やインパクトに欠けました。そうそう今度レミゼでアンジョをやる予定の原田優一くん。小柄で少年のようでした。アンジョよりガブローショができそう?なくらいキュートですが存在感はあり。あと見張り番やくの松原剛志さん、よく響くいいお声の方でした。レミゼにも出演予定なのですね。チェック、チェック!作品としてはバランスがよく美味しいディナーのようで、でも強烈に舌に残る癖のようなものがもっともっと欲しいな、と物足りなさも残りました。部品としてはかなり秀逸なところが多々あったにも関わらず、なぜか大きくムギュっと心臓をつかまれるようなものがない。あとセリフを無理に歌にしなくてもいいのでは?と思える箇所も多く、そういう場面は歌詞が聞き取りづらく感じました。細かいことですが、氷山のかけらはちょっとリアリティに欠けてましたし、衝突シーンや沈没シーンも限界は理解しているとはいえ、もうちょっと劇的にできないものかな、と。沈没後、カルパチア号のハッピ(マント?)きたムササビ姿の人たちがセリフを代わる代わる言うところも、うーん、効果としてはどうなんでしょうね?どうして歌は綺麗で豪華なキャストなのにいまひとつと感じるのか、とよく考えてみると、やはり自分の嗜好に原因があるようにも思えました。つまり、バランスが良くて全体的に整った綺麗すぎるものより、多少いびつでも癖があっても、強烈な個性と独特な美学にあふれていて、他を圧倒するほどの存在感、きらめきがあり、なおかつ、この世のものでないような悪あるいは人間のモラルをはるかに超えてしまいそうな壮大な存在。そして周りにはわからない孤独感が漂っている。これがどーんと舞台に登場してくれないと、もはや物足りない体になってしまったようです。(←誰を思い浮かべているか、聞かないでね!)憎まれたり、疎んじられる存在であるからこそ、強烈な舞台の引き締め役でもあり、わたしにとっては、そういう存在の感じられる作品が魅力と感じられるのです。そして、先日観に行った『朧』の染五郎さんや、殺人鬼と化しながらも魅力的だった市村さんのスウィーニートッド。悪を重ねていくなかにも独自の美学と哲学にみちあふれ、他人を拒むほどの自尊心に満ちている存在。現実に存在しないだろうと思われるからこそ、インパクトが強く、とことん自分の世界を追求していけるのかもしれないな、と思います。悪を追求するものは中途半端では魅力に欠けます。とことん本人にしかわからぬ美学を追及して果てる姿が一番のカタルシスをもたらすようです。悪と言っても色気がなければ、ただの嫌なおじさんで終ってしまいます。大隅さんのイズメイはもうちょっと悪の芽に水と肥やしを与える必要があるようです。めぜせ!色悪!?そして、めざすものが違っていて相容れぬ存在同士の華麗なる対決シーン!これもやっぱりないよりはあるほうが望ましい!というわけで、また結局は独断と偏見に満ちたレポになってしまいました。「タイタニック」やっぱりあの壮大なスケールの映画の魅力と比較してはいけないですが、映画のDVDをもう一度観たくなりました。あの老女の回想シーンで始まり、最後にちゃんとつなげているところがいいですよね。今思うとあの若いふたりを主軸にどんと据えたことも成功のポイントなのかな、と思えます。あちこちにエピソードを散りばめただけで、主人公がどーんと存在しないとどうしても視点が定まらない作品に落ちてしまうように思えました。全体に曲も綺麗ですが、オリジナルCDを買うほどの気持ちには至りませんでした。パンフレット(2000円)は、写真に味わいがありお稽古写真も豊富で気に入ったので、買ってきました。最後に上演時間は1幕:85分、休憩:20分、2幕:60分ですが、1幕は間延び気味に感じられたので、2幕を長めでもいいかな、と思いました。
2007.01.25
コメント(11)
<『スウィーニー・トッド』(1月16日(火)マチネ@日生劇場)>あまりにも内容が異色ということで四半世紀日本での上演が封じられてきたという話題のミュージカル『スウィーニー・トッド』これを市村正親さんとミュージカル初挑戦の大竹しのぶさんという大物のおふたりが演じるということで、日生劇場で観てまいりました。内容はもはや有名なので省略しますが、(詳細はこちらや、こちらなどでどうぞ)主演のお二人には期待通り、いやそれ以上のものを見せていただき、また音楽性・作品としても完成度が高いものであり、非常に満足して帰ってきました。まずこのソンドハイム作曲の作品は、どの曲をとっても難曲ばかり。初っ端から「オペラ座の怪人」のような不吉な不協和音のオルガンが序曲のように流れ、薄暗いロンドンが舞台となって、殺人理髪店を中心に話が展開していきます。わざと不安定な感じを出すために和音に終結部分などに独特な色づけがなされていて音楽的にはかなり慣れた人でも歌いこなすのはかなり至難のワザなのでは?市村さんは夏の「教授」のイメージが脳裏に焼きついていたせいか、このスウィーニー役をみて、「おお、若返りましたね!」みたいに感じました。とてもあの可愛いアブロンシウス教授と同じ人が演じているとは思えない、ほのぼのおじいちゃん教授からは抜けていた「毒」あるいは「どろどろとしたにごり」それこそカリオストロが声高く歌っている「7つの悪徳」のうちの主に「復讐心」を燃やす、ぎらつきのある男!薄気味悪く印象的な目の隈取風メイクを初め、からだ全体から復習の炎がめらめらとでていて、それでいて時折見せる哀しげな表情、彼ならではのすごい迫力でした。かなりの難曲続きですが、すっかり市村節として消化されていて、見事なもの。歌と芝居が一体化していて素晴らしかったです。特に「鋭利な剃刀など理髪道具1セット」を実は彼を思うあまりその投獄中も密かにそのまま保管していた階下のパイ屋の女将ラヴェット夫人(大竹しのぶ)が、彼の前でその封印を解いた途端、彼の前には彼だけにしか見えない、その切っ先鋭いかみそりに対する、まるで「恋人を愛撫」するがごとく愛おしく狂わしい感情が湧き上がり、その感情を歌に乗せて表現するのですが、その恐ろしいまでの静かな始まり、そして煮えたぎる気持ちにいたるまでが非常に上手で、ぞくぞくしました。市村さんの眼力鋭い表情と陰りは、まさにこの役のために生まれたように思えるほど、マッチしていると感じました。そのとき、勝手に彼を思うラヴェット夫人の気持ちがまったく彼に届いていないあたりの空回りがまた悲しいのですが、このへんはちょっと大竹さんは軽めかも。(この場面はシアターTVの何かの演技指導場面で、たまたまNYの俳優さんがだめだしを受けながら、もっと剃刀への異常なまでの愛情を表現して!!と言われてなんどもやり直すシーンをみたことがあったので、市村さんがどんな風に演じるか興味がありました)大竹しのぶさんは、やっぱり天性の女優さんですね。もともとミュージカル俳優や歌手として活躍してきたわけではないので、かなり難儀したとは思われる難曲の数々、リズムも音程も相当大変だし、「ちょっと西野さんなんとかしてあげて!」とハラハラする場面もありでしたが、それでも凄い底力と魅力をたたえた女優さんですね。役作りのためにほんとに体重を増やしたのか、あるいは全部詰め物なのか定かではないですが、胸もりもり色気むんむん、かなりの重量感で、パイ作りの肉が仕入れられず半ば投げやりになっているパイ屋のおかみさんをときにはどすを効かせながら、そして独特のとぼけた感じをうまく活かしチャーミングに面白く演じていました。リズムが複雑で言葉が多すぎるために聞き取りづらい歌詞が盛りだくさんの場面もあるのですが、それでも普段からストレートをやっている方だからか、言葉が立つというか歯切れがとてもよくて、観ていてすっとする心地よさがありました。もう大台に乗る手前らしいのですが、全然そんな感じがしない可愛さがあり、汚い言葉をしゃべっても雰囲気で許せてしまいそうな、そんな得な方でもあります。スウィーニー・トッドが自分の過去の秘密を握りゆすってくる男を思わず殺めてしまったとき、さてその死体をどうしよう?と悩んでいるとき、「ふふ、いいアイデアを思いついた」といたずらっぽい目で恐ろしいアイデア(人肉を使ってパイを作って売る)を語るその顔もキラキラと輝いていて、ほんとに怖いことなのに、観ているこちらまで「うん、でかした!」と肯いてしまいそうでした。そのへんのストーリーの流れをすんなりと観客に受け入れさせるその自然さは魔力に近いものがありました。コミカルなのに、どんどん鬼気迫る狂気の女と化していく、その辺の変化も見事です。殺人=怖い=悪い、というようなモラルはこれを観ている間は吹っ飛んでしまうほどのユーモアというスパイスがうまく効いていて、引き込まれてしまうのです。これにはやはりスウィーニー・トッドがそれだけの復讐心をたぎらせて行動に及ぶことを肯定させるだけの裏づけがしっかりあるからだと思います。ただ憎む、恨むというのではなくて、観ている側も「そう思うのは当然」とどこかで、倫理的には許されぬことだが彼なりに1本筋が通った考え方にうまく引きずり込まれているのですね。武田真治もかなりの濃いメイクで、初め「あれ?これが武田さん?」と思ったほどですが、ちょっとオツムの弱いおどおどした青年役がなかなかよくはまっていました。彼らしい感受性の強さがうまく生かされている場面もあり、可愛さもよくでていました。歌も普通にリズムにのって歌っていたし、キャラクターの作りこみ方が独特で上手いなと思いました。床屋さんでスウィーニーがお客の喉を掻き切ってその死体をそのままダストシューターみたいに地下のキッチン(パイ作り)に送りこむ仕掛けが凄く面白いですね。人が次々と殺されるのに笑っていいのか?と思うゆとりもないくらい、素早いのです。舞台装置を回転・移動させたりすることによる素早い場面転換もなかなか優れていました。この作品はどんでん返しというかある秘密があるので、細かく書くことはしませんが、既に観た方に「パンフレットはある意味ネタバレがある」と聞いていたので、先に読むことは避けました。後で読んだら、たしかにネタバレになっている箇所があるので読まないで観劇したほうが面白いと思います。パンフレットは四角くて、25x25cmという変形サイズなので、小さいバッグには入らないかも。そして、このパンフが入る大きさのトートバッグまで一緒に売っているという商売上手(?)な劇場です(笑)アンサンブルさんはどちらかというと「歌派」が勢ぞろいしていて、おなじみの方々(秋園さん、さけもとあきらさん、大須賀ひできさんなど)もいましたが、どちらかというと一人ひとりの個性を生かした感じではなく、群集として、「スウィーニー・トッド!さあ、次はどうする?」みたいに煽動的、説明的な感じでかつドラマチックな曲が多かったように思います。それでも、「禿げ薬」の発明のシーンでは、多くの群集の中で、さけもとさん、大須賀さんのお二人が(かつらなしの頭で演じてました)、本気でこの薬に興味津々のような動きに見えたのがなんとなく愉快でした。(←私の気のせい?)スウィーニーが無実の罪で流刑にされている間に妻は自殺、そして娘ジョアンナ(ソニン)は半ばカゴの鳥状態。この人の舞台での歌は初めて聴きましたが、終始不思議な音色の超音波を発しながらのソプラノで、ビブラートのようなものがもれなく付いてきます。でも不安に脅かされて切羽詰って混乱した感じはとてもよくでていて哀れでした。ジョアンナに思いを寄せるアンソニー役は、城田優さん。初めて観たのですが背が高く西洋人っぽい顔立ちとスタイルでとても一生懸命にジョアンナに恋心を訴えているのをみて、「これが浦井さんや泉見さんでも面白いかも」とまだヴァンパイアの組み合わせをどこかで引きずっている私でした。そのジョアンナを養女として育てたのに、今度は色気を感じて妻にしようとたくらむターピン判事(立川三貴さん)はとことん意地汚くとことん嫌なヤツ!この人が25年前はなんとアンソニー役をやったということが面白いですね。市村さんと大竹さんの場面だけでも、ああ観て良かったと思わせ、芝居の面白さを充分に感じさせる作品でした。これだけの難しい曲を完璧とはいえないまでもここまで演技の一部として表現できている大竹さんも市村さんと同種の「怪物」に属するのかもしれません。市村さんのファントムは観たことがないのですが、素顔が分からないくらいの濃いメイクからなんとなくファントムがとても似合っていてよかったことは想像がつきます。怪物顔であればあるほど、怒れば怒るほど悲壮感が増す。そんな感じの役が似合います。足を踏ん張り手を広げるところや、ちょっとした立ち姿に独特の美学があること、このへんのふとした形にちょっと祐一郎さんを思い出すところもありました。同じ「四季」の出身だからかどうか分かりませんが、舞台人として観客に魅せる姿を常に研究していて頑固ともいえる独自の美学があることがよく伝わってきました。先日『朧』を鑑賞したときも思ったのですが、血しぶきがあるから、人がたくさん死ぬから、という理由で後味が変わるのではないのですね。「悪」の世界、つまり悪魔に魂を売ってしまった男がとことん頑固に自分の理想の悪をめざして突き進み果てる。ここにある意味の「潔さ」「美学」が貫かれている場合には、血がでようと人が死のうと、ある種の「カタルシス」が生まれるのだとそんな風に思いました。MAのように観客に「疑問」を投げかけて不協和音のまま終るような作品もひとつの手法なのでしょうけれど、エンターテイメントとしてとことん楽しんだ感を与えて劇場を去ってもらうためには、嫌と言うほど悪や地獄をもつきつめて、変な言葉ですが「やりたいだけやらせてあげる」そんなことも要になるのかもしれません。今回は2階席(A席)だったのですが、1階の前の方で観てみたら、市村さんや大竹さんの気迫の凄さをもっと間近で感じることができるのだろうな、と思います。2階だったのでオペラグラスをどうしても使ったのですが、この作品は床屋とパイ屋が同じ装置の2階、1階になっていて同時進行が多く、それ以外でも上手、下手で同時に演技が進むことが多いので、結構あちこち同時にチェックするのは大変です。目がたくさん欲しい!この作品はジョニー・デップ主演のミュージカル映画としてリメイク予定だそうなので、それもとても楽しみです。もうこの役にぴったりではありませんか!【指揮者の西野さん】かなりの踊る指揮者ぶりを見せてくれ、左手は常に人差し指、中指あるいは小指をたたせているかあるいは、指で丸を作ったりしていました。体をイソギンチャクのように自在に揺らしながらそれでもしゃきっと表現力豊かなキレのよい指揮でした。振り返ったときにヴァンパイアのときは「牙」つきだったので、今回は「クビに剃刀の血筋」でもつけているのでは?とついついオペラグラスで観察してしまった私でした。
2007.01.16
コメント(9)
<市川染五郎x劇団☆新感線『朧の森に棲む鬼』>1月11日(木)12:30開演(新橋演舞場)にて『朧の森に棲む鬼』を観てまいりました。劇団☆新感線は『SHIROH』くらいしか知らなかったですが、前から市川染五郎を新感線のコラボ舞台を観てみたかったのですが、今回あの染五郎さんが徹頭徹尾悪役に徹する役をやるというので、ぜひ行かなくちゃ!と楽しみにしていました。中島かずき作・いのうえひでのり演出ということで、おなじみに「いのうえ歌舞伎」と言われる新しい分野の作品。他のキャストは、古田新太、阿部サダヲ、秋山菜津子、真木ようこ、高田聖子、田山涼成他。感想は、ひとことでいうと「ダイナミックで素晴らしいエンターテインメント」でした。今までに見たことのない凄い作品で、圧倒されました。いつ、どことも知れぬ戦乱の時代が背景で、染五郎ふんする主人公のライが弟分のキンタ(阿部サダヲ)と放浪をするうちに、鬼が棲むという朧(おぼろ)の森に迷い込む。そこで3人の魔物に女性たちと出会ったライは、でかい人物になりたいという野望を見抜かれ、その言葉のままに自分の命と引き替えに、王になれる運命と朧の霊力をもつ魔法の剣を手に入れる。そして、その予言どおり、出会ったエイアン国の四天王のひとりを殺して、なりかわり今度はエイアン国の敵であるオーエ国の長のシュテン(真木)とも通じることになり、とてもきわどい行動をはじめます。エイアン国では殺したヤスマサの妻であるツナ(秋山菜津子)に近づいて信頼を勝ち取り、闇の国の親分であるマダレ(古田)とも手を結び、オオキミ(田山)の愛人であるシキブ(高田聖子)にもせまって情をかけてもらい、とうとう四天王のひとりにまで上り詰める・・・。日本の伝説のひとつである「酒呑童子(しゅてんどうじ)」とシェークスピアの「リチャード3世」に想を得たというこの作品だが、つぎはぎという感じではなく、まったく無国籍な感じの新しい世界観が感じられ、とても新鮮な感想をもちました。一番凄いな、と思ったのがやはり主役の市川染五郎さん。この人、最初阿部サダヲさんとふたりで花道から登場するのですが、ほんとにそこらへんのぼろ服を着た少年たち、といった格好で、オーラも消していて、染五郎さんだということに気付かないくらい、ごくごく普通なんです。それが、魔法の剣を手にして野望をもって、舌先で人を騙して人の心を得ていくうちにその「悪」の部分がどんどん膨れ上がり、それとともに彼のメイク、衣装そして、話し方、声の作り方、立ち入る振る舞い、それらすべてがどんどん魔物の魂を吸い込んでいくかのごとく、でっかくでっかくなっていく。その過程が目を見張るほど素晴らしかった。ありえないような謀略がどんど現実になっていく恐ろしさ。文字通り、上背や存在感までが大きくなっていくように見えるんです。そしてどんどんそのオーラが増し、どこにいてもパッと目立つ人物に膨れ上がるんですね。声も最初は「この声どこからでてるの?」というような、なんだか枯れたようなかすれたようなビミョウな感じだったのが、だんだんお腹からずずーんと出すような迫力が増した声に進化?していくのが凄いです。まあ、染五郎さんはやっぱり歌舞伎の人。ミュージカル役者と比べるとうーむ独特な声だなあ、とは思います。これをみていて、わたしは宮崎アニメの「千と千尋」にでてくる妖怪「カオナシ」を思い出しました。最初はふにゃーっとした小さな存在が、世の中の悪をたべていくうちに自分の姿も巨大になっていく。恐ろしく哀しかったですね。ただ、染五郎さんは人間の業を内部で大きくしていくにつれて、どんどんりりしく、そしてかっこよくなっていくので、それがまた凄く楽しみでもあり、また素朴だった最初のころをふと思い出すと、それがどんどん失われていくのが寂しくもありました。「利家とまつ」で「まつ」や「おね」たちの衣装がその夫たちの立身出世に伴ってどんどん華やかに煌びやかになっていったことも思い出します。歌舞伎は見たことがないのですが、「色悪」というのでしょうか。ワルになればなるほど、その色気もどんどん増していき、ため息がでるほどでした。女たちもその舌先の作り話を陶酔するかのように信じ、唇を体をゆだねていくのですが、高田聖子さん、そんな格好をしていいのでしょうか。というくらい足をあらわに凄かったです。ライのことをとことん信頼してついていく子分役の阿部サダヲさんもとてもよかったです。可愛くてそしてお茶目で、そしてよく動き、飛び跳ねる。アニメのキャラクターのように生き生きとそして個性的印象的でした。そして可哀想だった・・・(涙)そして、ツナ役の秋山菜津子さん。もう男前過ぎます!SHIROHでもいい役でしたが、この朧のなかのツナと言う役は、ほんとに筋が通っていて、凛としていて、正義感を揺るがすことが決してないかっこいい!のひとことです。メイクや衣装、立ち居振る舞い、話し方もかなり男前で惚れ惚れなのですが、ときおり魅せる女の弱さや哀しさ、これもまた素敵でした。高田聖子さんは、個性を生かした面白い役。でもおかしな中にも女の性の悲哀をこめた部分も演じていて、稀有な女優さんだな、と思いました。古田新太さんもテレビでも存在感はすごいですが、声がしっかりとでて、舞台ならではの華が感じられ、憎めないところがあるというか、人間味のある感じがよかったです。舞台装置もなかなか凝っていて、紗幕の使い方、水は流れ、血しぶきが飛ぶ。殺陣シーンははらはらどきどきの連続。染五郎さんが歌舞伎のように見えを切るところなど、もう拍手喝采したいほどのかっこよさ!どこでどう盛り上げればお客さんが喜ぶのか、計算しつくされているようにも見え、また真剣な中にもふっとコミカルなものを挿入するそのタイミングも絶妙。場面転換もスムーズで、細切れにかんじたり、退屈に感じる場面はひとつもないまま、あっというまの3時間半(休憩30分を含む)でした。1幕からひきつけて離さない面白さとダイナミックな展開なのですが、2幕に入ってから次々と変わっていく染五郎さんに圧倒され、最後まで一気に持っていかれ、あっと息をのむような終盤。無国籍なかんじの舞台設定が魅力的で、世界観はおどろおどろしい中にも、妖怪などを使わずに妖艶な世界を描きだす大人向けの作品で、リピートしたくなりました。ところどころ女性たちの歌などもありますが、これはちょっとモー娘風というか、あまり歌唱的には??という感じも。ここも大人っぽく妖艶だとよかったのですが、ちょっと薄っぺらな感じもしました。歌舞伎と現代作品とのコラボレーションの面白さ、花道や水の使い方の妙、新しいものに出会うのって素晴らしいですね。それにしても、やはり幼少時からお稽古を重ねてきた染五郎さんの立ち居振る舞いの美しさと真逆をいく悪の世界への突っ走りの絡め方が絶妙だったなあ。最後なんてもうびっしょびしょ!最前列はブルーシートつき?高いと思って買わないつもりだったパンフレットというか筋書き?(カレンダーつきで3000円)も終演後、つい買ってしまいました。かさばる~!彼と新感線の過去の作品も観たかったなあと思います。新感線関連のDVDも演舞場で多数売っていましたが、とりあえず買わずに帰りました。しかし生首、血しぶきの凄まじさは、MA(マリーアントワネット)の比じゃないです。もうそれこそ「血だらけ~♪」なので、血が苦手は人にはちょっときついかな?今思うとMAは、ギロチンはでてきても結構その点普通だったなあ、と思えるほどです。この作品を観た後、不思議な爽快感があります。MAで王妃が処刑されてもあんまりすっきりしないのは何故か?と考えてみました。それは、悪人の「悪い人っぷり」を徹底的に描ききっているかどうか、という点にあるのかな?と思いました。染五郎さんがここまで酷く酷く、それこそ魂を悪魔に委ねた姿をみていると、これは報いがあって当然だね、ちっとも可哀想じゃない、と思えてむしろ言葉は悪いですが「愉快」なほどなのですが、アントワネットに関しては、そのへんはどうなのでしょう。もしかしたらカタルシスというのは嫌というほど徹底的になにかを追求した結果、生まれでるものなのかもしれません。とにかくお勧めです!1月27日まで新橋演舞場でやっていますが、そのあとは大阪です。こういう作品を2ヶ月くらい東京でやってくれたらいいな、と思います。あ、大晦日はカウントダウンがあっておそばがふるまわれたそうですね。行けた人はきっといい思い出になったのでは、と羨ましいです。
2007.01.12
コメント(20)
<エリザベート来日記念コンサート 1月8日(月)>エリザベート来日記念コンサート(新宿コマ劇場)に行ってきました。心配していたお天気も今日はからりと晴れ、電車もスムーズに動きました。今年3月に梅田芸術劇場でオリジナル形式で、そして5月に新宿コマ劇場でコンサート形式で行うエリザベートの公演の前宣伝のようなコンサートで、第1部はトークショー、そして第2部が作曲家のリーヴァイさん指揮によるコンサートでした。東京公演は1月4日から始まり、今日が最終日ということで、すごく盛り上がりました。【出演者】マテ・カマラス(ウィーン版トート役)マヤ・ハクフォート(ウィーン版エリザベート役)ルカス・ペルマン(ウィーン版ルドルフ役)【特別ゲスト】(宝塚OG)NORU/稔幸さん彩輝 なおさん美々 杏里さんコマ劇場で観るのは初めてだったのですが、3重盆のある舞台を座席がまるく取り囲むような面白い形の劇場でした。氷川きよしとかがここでコンサートをするんだな、とつい想像してみました。【第1部】最初エリザベートの音楽が鳴ったあと、カーテンが開くと、ぽつーんと年配の小さい女性がひとり。小藤田千栄子さんで、この方が進行役ということで、まず大きなスクリーンに映し出されるエリザベート舞台のドキュメント映像(英語で字幕つき)を観ました。そして宝塚OGのゲストの方をひとりずつ呼びながら、その方々の宝塚時代の映像を写しながら自分たちがエリザベートで演じた思い出、作品の魅力などを語りました。わたしは宝塚を観に行ったことがなく、あまり興味がないので、なんとなくこのへんは流して聴いてしまいました。みなさんやはりしゃきっと姿勢がよくて、華のある方々だなと思いました。宝塚独特の声の出し方(男性パート)を修得するまでが大変だった話、楽譜が恐ろしく分厚いけれど、だんだん進化して台本みたいにまとまった譜面になっていくこと、それでも重い最初の楽譜は捨てられない、ウィーンの舞台をこちらにもってくることの大変さなどの話をしてくださいました。古藤田さんは、つい「宝塚があって、それを東宝が真似して・・・あら失礼!」などと言いかけて、会場からちょっと笑いが起きました。それから、作曲のシルヴェスター・リーヴァイさんのご登場!第一声が「オゲンキデスカ?」(会場笑)みたいに愉快な登場でした。皆さんの熱い空気は指揮をしている背中で感じてますよーん。という話をしてくださいました。そしていよいよリーヴァイさんが3人の名を呼んでマテさん、マヤさん、ルカスさんご登場。東京の皆さんにご挨拶ということで、「アケマシテオメデトウゴザイマス」「トテモ・・・ヨロシク」(あれれ?)→「コトシモ ヨロシク!」と言いなおしていて可愛かったです。日本ではあまりプライベートな時間がもてなかったけれど、スタッフの方々の計らいが素晴らしくて(世界No.!ですって)計画的に快適に過ごせた、皆さんの反応が嬉しかったことを感謝しているというような話でした。会場の人にこの5日間で何回見たか挙手させたのですが、4回、5回め(全部見た人)の人も数人いたので、驚きました。舞台の上の方々も嬉しそうにしていました。リーヴァイさんは、誰かがいいことをいうたびに覚えた日本語の「ホントニ!」を時々挿入して楽しそうにしてました。【第2部】わたしは1部=トークショーと予め聞いていたのですが、何も知らない人は2部だけがコンサートということでちょっと前置きが長いように感じたのではないかな、と思います。いよいよ歌が聴けるということでやはり休憩後はどきどき期待が高まりました。舞台の後ろの方にオケ、そしてその後ろにコーラス部隊(日本人でしたが)、指揮はリーヴァイさんでコンサートが始まりました。もちろん全部ではありませんが、主要な部分をストーリーの流れに沿って歌っていくという形で、プロローグが始まったときには、ルキーニの声やキャストの歌はなく、プロローグの音楽とコーラスだけが流れました。フランツとかゾフィーとか子役の声とかが入るといいな、思いました。そしてあの怪しげなトート登場の音楽とともにマテさん袖から登場。しかし東宝版しか知らない私はつい、ゴンドラに乗って下手上から登場する某おおきなトートを思い浮かべ、視線はついつい斜め上へ・・・(笑)「エリザベート、エリザベート♪」のコーラスの合間に入るルキーニの「エリーザベート♪」はウィーンでは、トートが歌うんですね。日本もそうだといいのに!『愛と死の輪舞』マテさん(ハンガリー人)がハンガリー語で一人で歌いました。この曲はトートを主役においた宝塚のために新たに作曲された歌だったけれど、評判がよかったためにハンガリー版にも逆輸入?のような形で取り入れられたそうですね。東宝版を見慣れているので、シシィが隣にいないということがなんとなく変な気がしました。東宝の某大きなトートは甘く優しく誘うように歌いますが、ロック調で元気のよい歌唱で、フレーズのきり方やフェイクの入れ方なども多少東宝版とは異なりました。『あなたが側にいれば』ルカスさんがフランツ役(赤いスカーフを目印に)で、マヤさんとのデュエットです。ルカスさん、声が甘めですらっとしていて貴公子風。ちょっと好みかも。マヤさんとの声のバランスもよく、大人のデュエットでした。『最後のダンス』ちょっと囁き系で始まりますが、息の出し方がなんだか激しいですね。ふわっとした感じでなくて、「はぁーーーーっ!」って感じ。そして、盛り上がるところからは、完全にロック調で、色気たっぷりでした。色気の出し方が東宝某おおきなトートが草食動物系とすれば、マテさんは肉食動物系な感じ。ウーヴェさんもCDによるとこんな感じだったような・・・。やっぱり日本人とはなにか発しているものが違うな、と、なんだか新鮮でした。「アーーーーイヤーーーイアy--!!♪」「オオーーウワウワ♪」みたいにシャウトが入ったりして、ブラボーの声があちこちから聞こえましたが、帝劇と違って、掛け声も自然に聴こえました。『私だけに』マヤさんの歌唱はほんとに素晴らしかったです。音程や声の艶、伸び、そして表情。声をどれだけ大きくしても煩くなることのない美声。ドイツ語なので、きりっとした感じが余計にでるのですね。素晴らしい!のひとこと。高音が特に素晴らしく、どんな高くなってもファラセットへの切り替えやミックスの仕方が自然で素晴らしく、感情移入をしながら、聴いてしまいました。ロック過ぎでもクラシカルよりでもなく、心地よい声です。シシィが立ち上がるベッドはなかったけれど、シシィの悔しさや決意が表情と歌からよく伝わってきて、ブラヴォーの嵐がしばらく続きました。『闇が広がる』東宝の某トートがあるとき急にヘリウム入りの子供妖怪声になったことを思い出して、このマテさんもそれをやったらどうしよう?などと心配を。(杞憂に終わり)また、蛇が「シャー」という音が聞こえてくるような忍び寄り動物系の歌唱で、結構思いっきり歌っていました。最後のほうで独特なロングトーンをしました。『1幕最後のところ?』宝塚のフランツ(稔幸さん)が歌い始め、それにマヤさん、マテさんが加わる形でしたが、やっぱりここは全部ウィーンキャストで聴きたかった。日本の娘役とは相性がいいかもしれないけれど、骨太のウィーンキャストと混じると作った男声はやっぱり不自然で合わないように感じました。マヤさんの最後の1声がやはりかっこいい!『キッチュ』リーヴァイさんの「ワン・ツー・スリー・フォー(なぜか英語)」の声で開始。ルキーニ役はいないので、オケ演奏のみでしたが、「キッチュ!」のところで、リーヴァイさんが後ろをむいて会場に「キッチュ!」と掛け声をかけるように煽り、盛り上がりました。『私が踊る時』もうこの前奏が聴こえると、どうしても某トートさんが馬車に乗っているシーンを思い出してしまいます。(ええい、振り払え)しゃきっとした二人が色っぽく、しかし絶対に引かない強さを誇示しあいながら、歌う引き締まったデュエットでした。日本よりも緊張感が高く、まるで、「コブラ vs マングース」の決死の戦い!みたいな感じでビックリでした。某トートの甘いなかにも力強いのがもちろん自分のなかでは1番なんだけど、マヤさんのシシィはとってもよくて、ピッチが高めで1本通っていて、心地よい対決デュエットでした。最後のトートのパート、マテさんは、5度上げをやりました。東宝の某トートも5度上げにまた挑戦してほしい!(二度とやらなくなったので寂しい)『闇が広がる(リプライズ)』マテさんとルカスさんの緊張感あふれ、野性味あふれるデュエット。東宝版だとルドフルが声が細く、トートが太く下を支える感じですが、ウィーン版はトートが上のパートを歌ってるのかな?(ちょっと分かりません)ふたりの声質の差があまりなくて、対決モードなのですね。手をつないで押したり引いたり・・もちゃんと(?)やっていました。そして途中から、「ヤミガヒローガール♪」から日本語でのデュエットに。「コーテールドルフゥワー、タチアガルゥー♪」で盛り上がって終わり!二人の名前を呼ぶ声が会場から湧きました。『僕はママの鏡だから』ルドルフのルカスさんは寂しそうで小さな少年に戻ったような心細い感じがよくでていました。それに対して突き放すマヤさんも厳格な声をだしながらもつらそうな苦悩の表情を浮かべながら歌っていて、ちょっとうるっときました。『夜のボート』また宝塚のフランツでしたが、やっぱりウィーンのふたりで聴きたかった。だって、フランツは日本語で、そしてシシィはドイツ語で歌っているんですよ。同時に。これじゃあ「ふたりの気持ちがすれ違うのはあたりまえじゃん、だって違う言語でそれぞれ勝手にしゃべっているんだから!」みたいな感じに聴こえてしまうんですもの。『エピローグ』最後はトートの野獣度がぐっと下がり、ちょっと安心。やっぱりここは優しく黄泉の国に迎えなくっちゃ。キスしてがくっと崩れ落ちたシシィをちゃんと抱き上げました。(暗くなった途端におろしていたけど。)カーテンコールが何度も続いて、「今日は一応最後の日だから」とサービスで、もう一度『闇は広がる』を歌ってくれました。で、マテさんはどうしても自分の最新のデジカメで、いろいろ写してお土産にしたいらしくてマヤさんやルカスさんが歌うたびに、カメラを向けて撮影(たぶん動画)していました。自分が歌うときは、なんとカメラを自分のほうに向けて、自分の顔を撮りながら歌う、という器用なことをして、会場は爆笑。カーテンが下がっていくのにつれて、リーヴァイさん自身もバイバイしながら体を落として茶目っ気たっぷり。宝塚OGよりキャストの3人とリーヴァイさんに花束贈呈もあり、リーヴァイさんは、女性のときは、ハグ→キスしたあとで、心臓を押さえたり、卒倒するふりをしたりして感激をあらわにしていましたが、マテさんとハグ→キスのあとは、口を拭いたりして、もう面白すぎ!楽しくコマ劇場を後にしました。チケットを譲ってくださったMさんのいう方とも駅ですこし立ち話をして、ミュージカルや演劇の話をしました。1月は自分と同じ演目を観に行く予定のようで嬉しくなりました。
2007.01.08
コメント(10)
<1月6日(土)Broadway Gala Concert 2007> Broadway Gala Concert 2007 に行ってきました(青山劇場。座席:1階下手サイド)司会はフジテレビの笠井アナウンサー。レミゼなどミュージカル大好きなアナとして有名で、今日もはりきって司会をしていました。【参加メンバー】秋川雅史、石井一孝、今井清隆、浦井健治、鈴木綜馬大浦みずき、鳳蘭、島田歌穂、シルビア・グラブ、マルシア★秋川雅史さんウェストサイド物語の「マリア」や「南太平洋」の「魅惑の宵」をまろやかなテノールで聴かせてくれました。紅白に出場されたときは、「和田あっこさんと天道よしみさんの間にはさまれてすっごいプレッシャーだった!」そうです。会場和みました。それに、いつもお茶の間で見ているときは、白が勝とうが負けようがどうでも・・という気持ちだったのが、いざ自分がでると、「白勝ったぜ、よっしゃー!!」みたいに手に力が入ったそうです。なかなかしゃべらせると面白い方ですね。わたしはこの方がミュージカルにも出ていることは知りませんでしたが、かなり興味があるようですね。ちょっとお顔が若き日の市村正親さんみたいな感じでキュートです。発声はやっぱりクラシカルですけど、伸びやかでいいですね。★石井一孝さんきょうはロックでファンキーでソウルフルな「かずさん」でした。以外に筋肉質というか、がっしりしていらっしゃるのですね。ジーンズがはちきれそう。背も高いし。隣の島田歌穂さんがピーターパンの妖精のようにちっちゃくみえました。マルシアさんとふたりで、「ジキルとハイド」の「デンジャラス・ゲーム」を歌いました。うーん、ちょっとワイルドすぎた闘牛風かな?かずさん、あちこちで「ジキハイ」の歌を歌ってはアピールしまくっているらしく、「鹿賀さんに続け!!」ですね?と笠井さんにも冷やかされていましたが、「ははは。一生個人で歌ってるだけでやらずに終ったりするんだよ、きっと」などと自分で言ってました。鼻息荒くてワイルドなジキルになるんでしょうね。うーん。シアターTVでみた橋本さとしさんのデンジャラス・ゲームのほうが「淫らな~♪」の歌い方はセクシーだったかも。2月に池袋(芸術劇場)でやる「ブルックリン」では、とてもソウルフルな役だそうで、「やっと僕の真価が発揮できるぜい!」とまた鼻息が・・・(笑)このミュージカルでは、廃品(ペットボトルなど)で作った衣装を着たホームレスをやるそうです。(今井さん、シルビア、マルシアも出演すると宣伝)あと、レミゼの「彼を帰して」もかずさん節で思いっきり歌ってました。最後もかなりのロングトーン決まり、おみごと!かなりキーが高く感じたのですが、祐一郎さんと同じなのかなあ?★今井清隆さんかなりスリムになったね、と笠井さんにからかわれていました。ご飯や麺類を抜く炭水化物ダイエットをされたそうです。なんだかいつもシャイな感じで本当に性格がよさそうな可愛い方ですね。でも体はでかいなあ。やっぱりバルジャンやるだけありますね。「美女と野獣」の歌をシルビアさんとデュエットしたり、オペラ座の怪人の「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」(英語)を歌ってくださいました。地面が轟くような凄いいいお声でした。わたしこの人のファントムのCDはまだ聴いていないことを思い出しました。★浦井健治さんライオンキングの「愛を感じて」を英語で。レントのSeasons of Love を英語と日本語のちゃんぽんで。英語の発音に関しては、がんばれ健ちゃん!!!と書いておきます。声の伸びはやっぱりすごくよくなってきましたね。RENTのDVDやっぱり欲しくなってきました。かなり衣装替えがあったけど、先があがった(デザインの名を知らない)白い靴が目立ちました。ベルトとおそろい? おしゃれさんですね。★鈴木綜馬さんこの方の素顔を生でみたのは初めてでした。真面目なフランツからは想像できないお茶目で話好きで、そしてやっぱりイギリス仕込の?紳士な方ですね。マイ・フェア・レディーの「君住む街角」浦井君が歌うのかな?と思っていたら、なんと綜馬さんが歌ってくれたので、びっくり。しかも、私はかなりの壁際(下手)だったのですが、すぐ横の扉からすっと入ってきて、そのまま客席に入っていって、本来の歌詞の隙間に、「今日はあいにく青山は雨~♪」とか「スタバによってアイスカフェモカを飲み・・♪」とか、「国連大学のそばをとおると、自分まで頭がよくなっちゃったような気がする」とか「愛子さまも通われた子供の城だよ~♪」とか、いろいろ勝手に挿入しながら、面白い登場をして客席をなごませてました。いやー面白い方!歌は思いっきり「フランツ流」な「君住む街」でリズムはアメリカーンなのに、発音は思いっきりブリティッシュでした(笑)あと、ミス・サイゴンの「Last Night of the World」を歌穂さんとデュエット。クリスのイメージをしたことはなかったけど、高音も額に響かせ完璧にでていて、ほんとに歌の上手な方だなと思いました。最後は歌穂ちゃんのほっぺたにキスしたり、エスコートしてはけたり、おお、ブリティッシュ・ジェントルマン!という感じ。で、1月に公開される新作ミュージカルタイタニックからのThe Night was aliveという曲を早々と披露してくれました。綜馬さんは無線通信係のような役だそうで、無線通信の機械みたいなのをお稽古場からわざわざ借りてきたといって、テーブルにのっけて歌いました。「毎日ひとりでこんな仕事してる僕」「一日中内気で孤独だった」「話し相手は自分だけ」でも電信というものに出会って、僕の世界は変わったのさ。今世界中の声が僕に届くよ~♪みたいな、まるで石丸さんが「壁抜け男」で地味な公務員としてタイプをかちゃかちゃたたきつづけていたときみたいな、曲でした。結構好みかも、こういう曲。タイタニックというと、「船が沈むぞ、危険だ、いそげ♪」とか、「もう、おしまいだあ!」みたいなせっぱつまったものを想像していましたが(←いつも思い込みが激しい)こういう風にひとりひとりにスポットをあてて、いろんな曲が展開されると思うと、楽しみになってきました。★大浦みずきさんいやースタイルがよくて体の動きが軽くてかっこいいですね。この人とシリビアさんのおふたりを日本にくると言われている「Rebecca」のミセス・ダンヴァースに推薦しますわ。しっかりした声で、ちょっと怖いかんじの人がいいのよね。「蜘蛛女のキス」では、衣装が蜘蛛の巣のもようになっていて、面白かった。あと、ナインから、べらべらべらっとオフランスな歌を。なんか感覚が日本人離れしてますね。★鳳蘭さんこの方も「ジュディーガーランド」役になりきったらしくて、日本人離れしている体型と声。なんだかもう「越路吹雪」の2代目じゃないけど、大御所風ですね。★島田歌穂さんメアリー・ポピンズからの「2ペンスを鳩に」という曲、初めて聴いたのですが、とても気に入りました。しんみりした曲、明るい曲、ちょっとセクシーな曲。この方はもうなんでもござれ、なスーパーウーマンですね。体は小さいのに華があってとても素敵でした。舞台のために生まれたような方ですね。またこのコンサートが終ると、いま取り組んでいる暗めのストレートプレイの主役に戻るそうです。あとキャッツの「メモリー」を。グリザベラになりきって歌っていてとても感情がこもっていてよかったです。安心して歌が聴けるし、もうアニメ声のエポニーヌはやらなくていいな、と思いました。そろそろファンティーヌはどうでしょう?★シルビア・グラブさん「シカゴ」よりAll That Jazzを歌ってくれました。安心して聴けるしっかりした歌唱で、雰囲気も抜群。この曲はほんとにやりたくてたまらない風で、「やってみたいですね。アピールしちゃおうかな」って半分本気で言ってました。「ブルックリンではじまりレミゼで終る1年」になる予定だそうです。メアリーポピンズの長い早口言葉の部分は、他の人はゆっくりしか言えないのですが、シルビアだけは、ぱぱぱーーと言ってのけて、みんなに「いいな」と羨ましがられてました。この方もやっぱり日本人離れ(当然ですけど)してますね。今日はそんな国際派の方ばかりでしたね。そしてシルビアさんにもレベッカの家政婦ダンヴァース役をぜひ!!★マルシアさんおなじ国際派(?)でもなぜかこの人は演歌調というか、独特なマルシア節になってます(笑)あ、でもわたしマルシアさんの歌や演技好きなんですよ。デンジャラス・ゲームは、もちろんジキハイの舞台で歌っているから上手なのは当たり前ですが、ほんとに暗く哀しく情感がこもっていて素敵でした。衣装がまた、セクシー過ぎでした。(ストッキングの下になにも身につけていないように見えた)あとJCSより「わたしはイエスがわからない」をなんとピアノ弾き語りで披露。体中から絞りだすようなソウルがあるかんじでとてもよかったです。情感があふれていました。ピアノは小さいときからやってはいたものの、「よくいえばいろんなことにチャレンジする性格、悪くいえば三日坊主」だそうで、また「ピアノの先生ともぶつかることが多々」あったそうで、きょうは指がぶるぶる震えたそうです。笠井さんは無理やり客席に「よかったですよね?」と拍手を煽ったりしてました。そして、そばの浦井君にも笠井さんは、「浦井君もピアノは?」「すこしだけ」「じゃあ、こんどぜひ」「・・・・・(汗)」みたいな流れになり、まるでヘルベルトに襲われそうなアルフレートのような情けない泣き笑い顔になってしまいました。笠井さん、どうもちょっとセンスが・・・。それに今井さんの紹介のとき、「今泉さん」なんて呼んだり、それをまたマルシアさんにからかわれたり。マルシアさんは「あたしもちょっとしゃべっていい?さっき流されちゃったからさ」とか笠井さんにからんでて、おかしかったです。このコンサートは新しくミュージカルをめざす新人へのチャリティーみたいになっているらしく、2部では、なんとオーディションまで見ることができました。ひとり1分の持ち時間で、自分を好きなやり方でアピール。10人いて、昼の部で5人選び、また夜の部で10人中5人を選ぶ。そして明日最終審査をして、残った人(何人かな?)が本場ブロードウェイで1ヶ月のレッスンを受けられるそうです。いやー、1分の持ち時間でのパフォって、どこかで聴いたことがありますが、審査つきのをみるのって、こちらまで緊張しますね。みんな若くてはじけてて、すごいです。たいていの人は「スイート・チャリティから歌って踊ります」みたいに、曲を流して踊りながら歌もアピールという方が多かった。歌だけの人も2-3人いて、うまいなと思った子は残りました。最後の男性は、タップしながらの歌の披露で、すごくいい声で将来有望な感じで、もちろん残りました。Y一郎さんのあのパフォも、最初はじつはこんな高レベルなのを期待していたのでしょうか?だとしたら、我々のあのお茶の間パロディ劇のような連続は、彼の目にはどう写っていたのかな?(なーんて考えすぎ。本人が楽しそうだからいいのよね。)きょうはブログ友gさんともお会いして楽しい時間を過ごすことができました。お天気は悪かったのですが、とても充実した一日でした。
2007.01.06
コメント(9)
<昨年と今年のミュージカル関係のお出かけ>昨年度の記録を整理してみると、自分はこんな演目を見ていました。1月 ベガーズ・オペラ(日生劇場) グランド・ホテル(国際フォーラム)2月 アンナ・カレーニナ(ル・テアトル銀座)3月 劇団四季キャッツ、オペラ座の怪人4月 レ・ミゼラブル(日生劇場)(美奈子ちゃん追悼プレビューも行きました)5月 エリザベート(日生劇場)6月 Our House (新国立劇場)7-8月 ダンス・オブ・ヴァンパイア(帝劇)9月 ろっくりばーパフォーマンス同好会(これは関係ないか。でも舞台に一瞬だぁ!だけど立ったのでした。)10月 劇団四季 壁抜け男11月 マリー・アントワネット(帝劇) (レ・ミゼラブル20周年記念製作発表(東京プリンスホテル))12月 マリー・アントワネット(帝劇)平均すると10日に1度くらいは何かの演目を観たい心身になっているのかもしれません。そして今年はどうなるかな?と思っていたところ、じゃーん!!読売新聞に出ました!帝劇で11月12月にモーツァルト!の再演です。コロレド大司教は綜馬さんとのダブル?の噂もあったようですが、とりあえず山口祐一郎さんのお名前があります。やった!!またいばりんぼコロちゃんに会えます。そしてヴァルトシュテッテン男爵夫人は、香寿たつきさんと涼風真世さんのダブルキャスト!わーい!なんとなく楽しみです。そしてヴォルフガング役は、井上芳雄くんと中川晃教くんのお二人のまま変わらず!よかった!!市村正親さんのレオポルトや高橋由美子ちゃんのナンネールもそのままのようです。吉野圭吾さんはまたシカネーダーをやってくれるのかしら?もうこの作品には欠かせない存在ですよね。気になります。モーツァルトの千秋楽がまたクリスマスであることも大切なポイントですね(笑)もちろん先月のあの衝撃の「囁きのホワイトクリスマス事件?」があったからですが、なーんとなく、祐一郎さんは一度やったことや予想や期待されることをそのまんま繰り返すことはしないような気がします。うーん、では・・・今年のクリスマスはいったいどんな手でくるか?(って、今から考えるのは早すぎなので、このへんでストップ。というか、その前に楽のチケットを入手できるかどうかが問題なのじゃ。)<おひげのおじさんはやっぱり帝劇の怪人?今年は帝劇で7ヶ月>おひげのおじさん(お兄さん)は今年も帝劇が「第2の我が家」化しそうな勢いですね。♪帝劇の祐一郎さん♪4-5月はMA(マリーアントワネット)凱旋公演6-8月はレミゼそして11-12月はモーツァルト!7ヶ月も帝劇で演じてくださるなんて夢のようです。これで今年はヴァンパイア再演を望んでも無理なことは一目瞭然ですね。(来年Vの再演とレベッカのマキスムが来たら、超嬉しいのですが・・・早いところ何か発表してくれないかしら、と待ってます)でもいくら「怪人」と呼ばれようが、「宇宙人」と呼ばれようが、やっぱり中身は普通の(普通じゃない?)猿と一緒に温泉にも入る生身の人間のはずです。どうぞお体に気をつけて、今年もがんがん歌い、ばっさばっさと華麗なるマントさばきを披露していただきたいですね。モーツァルト!では、幻の名曲(?)と呼ばれているらしい、コロレド大司教とヴォルフの歌(デュエットといえるのかな?)が増えていると嬉しいのですが・・・どうでしょう?とにかくこちらもがんがん仕事をしてがんばらなくっちゃ。どこまでも付いていきます、貴方だけに~♪
2007.01.01
コメント(16)
<新年のご挨拶>明けましておめでとうございます!いよいよ2007年になりました。皆様にとって今年も素晴らしい1年になりますように!!今年もどうぞよろしくお願いいたします。<ネットで賀状>「こんな気球は・・・・イヤッ!(だって、目立っちゃうもの、あたしたち)」っていう涼風マリー・アントワネットの声が聞こえてきそうです。サラがいきなり出てくるあたりは、ちょっと苦しいですね。ハハハ。おやじギャクになってしまいました。(あっ、お酒は入っておりません。)やっぱり脳内はまだMAモード、でも時々TDVがひょっこり頭をもたげるのです・・・。昨年の夏や冬の楽しかったあんな時、こんな瞬間を反芻しています。
2007.01.01
コメント(5)
全8件 (8件中 1-8件目)
1