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グリンゴルツ弦楽四重奏団という団体が演奏したシェーンベルクの弦楽四重奏曲のアルバムを聴く。全く聞いたことのない団体だったが、spotifyで聞いて、その情熱的な演奏がすっかり気に入ってしまった。この団体はロシアのイリヤ・グリンゴルツというヴァイオリニストが主宰する団体だそうだ。イリヤ・グリンゴルツ(1982-)はロシアのレニングラード生まれで、すでに20枚以上のアルバムをリリースしている。ジャンルも協奏曲や器楽、室内楽と多岐にわたる。彼は1998年に開催されたパガニーニ・コンクールで第1位を受賞している。グリンゴルツ弦楽四重奏団は2008年に結成された、チューリッヒに拠点を置く弦楽四重奏団で、全員が違う国籍とのこと。古典と現代のレパートリーで高い評価を得ている。ソロ活動で有名な奏者が主宰する弦楽四重奏団というと、キアロスクーロ弦楽四重奏団を思い浮かべる。曲が古典派と新ウイーン学派と全く異なるので、同一に論じることはできないが、キアロスクーロ弦楽四重奏団に比べるとパート間のバランスはかなりいい。特に第1バイオリンが目立つわけではなく、混然一体となったサウンドが、ともすれば緊張感のあるサウンドになりがちなシェーンベルクが、普通の音楽に聞こえる。また、他の三人が熱くなっているときでも、圧倒的なテクニックで、冷静に全体を引き締めているチェロがいい。昨今の傾向としてパートごとの動きが明瞭な演奏が好まれるだろうが、その中でこのようなカロリーの高い、少し毛色の変わった演奏の評価が高いのも意外だ。新ウイーン学派といえば、クールなサウンドというのが相場だが、こういう熱気を帯びた演奏も悪くない。というか、新ウイーン楽派の音楽とはこういうものだという固定観念に、演奏者も聴き手も縛られていたのかもしれない以前エベーヌ・カルテットの「浄められた夜」の情熱的な演奏を聴いたことがあるが、そういう傾向の音楽が、難解と言われる弦楽四重奏の分野にも広まってきたようで、大変喜ばしい。この熱気は初期の第1番ならわかるが、無調の第3番においても時折聞こえることは、従来の演奏からは聞かれないものだ。細かい表情付けも、これらの曲から聞けるとは思っていなかった。例えば、第1番の11分40秒ほどから始まるヴァイオリンの二重奏では、悩まし気な表情が聴ける。昔はなかなか馴染めなかったシェーンベルクが、このように分かりやすい音楽になったのも時代を感じる。これは、繰り返し聞くことにより味わいが増す演奏だろう。2番と4番は既にリリース済みなので、おいおい聴いていきたい。Gringolts Quartet - Live at Wigmore Hall (2022/5/16 live)シェーンベルクの第1番がプログラムの最後に演奏されている。Gringolts Quartet Schoenberg:String Quartets Nos.1, 3(BIS-2567)24bit96kHz FlacArnold Schoenberg:1.String Quartet No. 1 in D minor, Op. 7 (1905) I. Nicht zu rasch II. Kräftig (nicht zu rasch) III. Mäßig, langsame Viertel IV. Mäßig, heiter5.String Quartet No. 3, Op. 30 (1927) I. Moderato II. Adagio III. Intermezzo. Allegro moderato IV. Rondo. Molto moderatoGringolts Quartet: Ilya Gringolts(vn)Anahit Kurtikyan(vn)Silvia Simionescu(va)Claudius Hermann(vc)24th—27th March 2021 at the SRF Studio, Zürich, Switzerland
2022年06月30日
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イタリア生まれで現在ニューヨークを拠点に活躍しているギタリスト、パスクァーレ・グラッソ(1988-)の新作を聴く。CDとしては3枚目のアルバムだそうだ。バップの有名曲を主体として、グラッソのオリジナルも一曲入っている。注目したのは、どこのサイトか忘れてしまったが、パット・メセニーが「今まで聞いた中で最高のギタリスト(the best guitar player)だ」と語った言葉から。断言するほどであればということで、今までの2枚のアルバムを含めて聞いてみた。一聴ジョー・パスを思い起こさせる。ハードバップ系のギタリストだが、とにかくテクニックが半端ない。活きとしたリズムと流れるようなフレーズが次々と出てくる。ソロ・フレーズも手癖に頼らないため、またかと思わなくても済む。オリジナルの「Lamento Della Campagnia」も現代の曲とは思えないバップ風なバラードで、アルバムのコンセプトに沿ったもの。時折ドラムスとのタイム感覚にずれを感じることがあったが、気のせいだろうか。ベースのアルコ・ソロが随所に聴かれ、これがなかなかご機嫌だった。バッキングをする時もギターがうるさいのは問題。あまりにも弾けるためなのか、バッキングでも弾きすぎて、結局ソロが一番いいということになるのは、なにやらピアノの神様アート・テイタムを思い浮かべてしまう。出来ればアコースティック・ギターでのプレイも聴いてみたいところだ。「I'm in a Mess」ではサマラ・ジョイのスインギーなヴォーカルがフィーチャーされている。グラッソは彼女のデビューアルバムでもトリオで付き合っていたので、グラッソと関係が深いのかもしれない。録音はギター主体で、ベースとドラムスは少し弱めの処理で物足りない。これは、前作の「Plays Duke」でも同じ傾向だった。ギターアンプのせいだろうか、時々ギターの音が歪むのも気になる。柳樂光隆氏によるインタビューPasquale Grasso:Bi-Bop!(Masterworks G010004780792G)24bit 96kHz Flac1.Dizzy Gillespie, Frank Paparelli:A Night in Tunisia 2.Dizzy Gillespie:Be-Bop3.Thelonious Monk:Ruby, My Dear4.Dizzy Gillespie, Charlie Parker:Shaw 'Nuff5.Pearl White, Al White:I'm in a Mess6.Charlie Parker:Cheryl7.Charlie Parker:Ornithology8.Charlie Parker:Quasimodo9.Pasquale Grasso:Lamento Della Campagnia10.Dizzy Gillespie, Charlie Parker:Groovin' HighPasquale Grasso(g)Samara Joy(vo track 5 only)Ari Roland(b)Keith Balla(ds)
2022年06月28日
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小菅優が藤倉大とラヴェルのピアノ協奏曲を演奏したアルバム。以前からpresto musicでリリースされるのを心待ちにしていたが、予想外の激安価格で入手することが出来た。ただし、どういう事情か現時点ではすでにカタログから消えている。藤倉大のピアノ協奏曲第3番「衝動」は、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団、読売日本交響楽団、スイス・ロマンド管弦楽団の共同委嘱作品で、小菅優に献呈されている。メロディックな旋律は皆無だが、他の藤倉作品と同様に難解さはなく、親しみやすい作風。夜更けの青白い月夜に照らされた自然の情景のようなイメージを思い浮かべる。弦が高音域での鈴虫が鳴いているような清冽なサウンドを奏で、時折痛みを伴うような刺激的なフレーズが出てくる。ピアノは高音域の細か音符を多用した、タイトル通り、かなりパーカッシブなフレーズが目立つ。それに対して、なまめかしい高弦と暗いところでうごめく低弦との対比もいい。7分ほどのところでの弦の不協和音の下降音が、メシアンを想起させる。後半になるとピアノのゴリゴリとした低音と、それまで静かだった弦の刻みがうなりを上げ、凶暴な管のフラッター・タンギングを伴って、一挙に様相が変わる。ピアノが低音を強打するうちに、大太鼓の連打が聞こえてくるところは日本風?。大音響のテュッティが鎮まり、ピアノの6分ほどの長いカデンツァ。静かなフレーズと目まぐるしく上下降するフレーズが交互に出てくる。エンディングは弦の鈴のようなサウンドとピアノの高音が共鳴して突如終わる。藤倉大の「WHIM」は、日本初演時の「インパルス」のリハーサルで、小菅優が藤倉大と指揮者の山田和樹に "カデンツを聴いてほしい "と言って演奏したことから、カデンツァの部分のみをピアノ独奏曲として単独で出版することになったもの。まあ、ダイジェストとは言えないが、こういう手段でこの曲が知られていくことはアイディアとしてはありだと思う。この小品が気に入って、協奏曲を聴く方が増えれば、それだけで成功だろう。ラヴェルはラヴェルらしい繊細さよりは、ピアノ、バックとも重量感のあるエネルギッシュな面が目立つ。テンポはやや遅めで、ダイナミックスも、敢えてあまり気を使わないで、野放図ともいえる感じだ。例えばホルンのソロが入る静かな部分でも、周りの音が結構大きいままで、それが意外な面白さを出している。それを意図的にやっているとしたら、指揮者のライアン・ウィグルスワースは、かなりの策士だろう。第2楽章はピアノが主題の途中からテンポを緩めて弱音で迫るところは、なかなか新鮮な解釈。第3楽章も基本、前の楽章と傾向は変わらない。ピアノが極めて明晰でバックに埋もれることがない。バックの楽器の受け渡しもハッキリとわかり、曲の面白さが満喫できる。ブックレットが添付されていないが、セッション録音とのこと。素晴らしく明晰なサウンドでエネルギー感も文句なし。小菅の粒立ちの良いピアノの美しさを堪能できる。ということで、メインの藤倉作品もさることながら、ラヴェルでの明晰でエネルギッシュな演奏は、今まで聞いたことのないような面白さを感じられた。こちらで、藤倉の協奏曲全曲が視聴できる。ただし、日本では見ることが出来ないので、VPNで他国から試聴されたい(米国のみ確認済)。youtube藤倉大:ピアノ協奏曲第3番「インパルス」/WHIM ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調他(Sony Music Labels Inc. SICX10016B00Z)24bit96kHz Flac1.Dai Fujikura (1977-):IMPULSE - Piano Concerto No. 32.Maurice Ravel (1875-1937):Concerto pour Piano et Orchestre5.Dai Fujikura:WHIM for Piano (from Piano Concerto No. 3 IMPULSE)Yu Kosuge(p)BBC Symphony OrchestraRyan Wigglesworth
2022年06月26日
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デビュー当時からフォローしていたインドネシア生まれのジョーイ・アレキサンダー(2003-)。6枚目のアルバムがやっと出たので、prostudiomastersから税込みC$15.24、日本円で\1500ほどで購入。このアルバムはマック・アヴェニュー移籍第1作。他のミュージシャンと同様、パンデミックで活動を制限される中で、自己の内面と向き合ったアルバム。全10曲全てがオリジナルという力のこもったもので、なかなかの佳曲揃い。また奇をてらったところのない、ジャズの王道を行くアルバムで、聴いていてとても気持ちがいい。。前作「Warna」(2020)と同じラリー・グラナディア(b)とケンドリック・スコット (ds)という超強力なバックに加え、ギラッド・ヘクセルマン(e-g)とクリス・ポッターのサックスが4曲で加わる。3曲目からは、季節に因んだタイトルの曲が4曲入る。これらが、なかなかの聞き物。「Dear Autumn」は哀愁を帯びたメロディーに複雑なリズムを刻むドラムスが絡んで、不思議なテイストを感じる。ゲスト2人が加わるアーシーな「Winter Blues」は従来の路線とは違ったテイストで、楽しめる。ゲスト二人のソロも力のこもったもの。アレキサンダーのプレイはピアノはオーソドックスなプレイだが、エレクトリック・ピアノが意外とファンキーで、ソロだけではなくバッキングでも気の利いたフレーズが出てくるのが意外だった。楽器が異なると、性格が変わる?のかもしれない。ポッターのサックスは水準は高いが、おっと思わせるプレイはなく、普通の出来だろう。彼らが加わったトラックの中ではテナー、ギター、ピアノのフレーズの応酬が続く、実験色の強い「Rise Up」が最も聴きごたえがある。「Promise of Spring」は穏やかで、敬虔な祈りが感じられる曲。「Summer Rising」はエレクトリック・ピアノで、エレクトリック・ギターとの相性が抜群にいい。「Midnight Waves」はミディアム・テンポの思索的な作品で、これも宗教的な気分が感じられる。最後は「Hesitation」(ためらい)という穏やかなバラードで締めくくられる。レコーディング当時18歳とは思えない程成熟したナンバーで、途中の思いがけない休止がおしゃれ。イスラエルのギタリスト、ギラッド・ヘクセルマン(1983-)のエレキ・ギターは、都会的なスマートなスタイルで素晴らしくいい。「splitlife」(2006)以来現在までに7枚のリーダーアルバムをリリースしているので、今後フォローしてみたい。ケンドリック・スコットは手数の多いドラミングで、いろいろなことをやっているのだが、決して邪魔にならないところが彼の真骨頂だろう。ベースは重心の低い、ずしんと来るサウンドだが、ほかの楽器とのバランスが悪いのが惜しい。Joey Alexander:Origin(MACK AVENUE RECORDS MAC 1198)24bit 96kHz Flac1. Remembering2. On the Horizon3. Dear Autumn4. Winter Blues5. Promise of Spring6. Summer Rising7. Midnight Waves8. Angel Eyes9. Rise Up10. HesitationJoey Alexander (p,fender rhodes track 4,6)Larry Grenadier (b)Kendrick Scott (ds)Gilad Hekselman (e-g track 4, 6,9)Chris Potter (ss track 2,ts track 4,9)Recorded at Sear Sound — New York, NY • June 23–24, 2021
2022年06月24日
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ドイツのカウンターテナー、アンドレアス・ショル(1967-)の「カンシオネス」を聴く。リリース直後に購入していたのだが、例によってレビューを書くのが遅くなってしまった。ショルのアルバムを購入するのは多分初めて。エディン・カラマーゾフによるリュートとギターというシンプルなバックがいい方向に作用して、曲の良さをしみじみと感じさせるアルバムとなった。このアルバムはショルのアルバムというよりはカラマーゾフのソロが半分くらいあり、両者のジョイント・アルバムという性格が強い。キューバのギタリスト、レオ・ブローウェル(1939-)の作編曲が半分ほどあり、ギターの曲が2曲で歌曲が6曲。他にバッハのチェロ組曲第1番全曲のギター版、同じバッハの歌いりが2曲、そのほかという全17曲。ブローウェルはギター曲専門と思っていたのだが、こんなに優れた歌曲を書いているとは思っていなかった。タイトルチューンの「Canciones Amatorias」(愛の歌集)はブローウェルがフェデリコ・ガルシア・ロルカなどのスペイン語圏の偉大な詩人に影響されて、何年か前に始めた全3曲の歌曲集。グラナドスにも同名の歌曲集があり、そちらは結構有名らしい。ブローウェルの「愛の歌集」は、3曲とも5分を超す長めの曲で、どの曲もドラマがあり楽しめる。テンポが速くラテンの香り豊かな曲(El Cantar de los Cantares)以外は、愛の歌にも関わらず宗教的な雰囲気が濃厚。これらの歌曲は芸術的にも高いレベルだが、個人的にはブローウェルが彼ら二人のために2015年に編曲した5つのイギリス民謡集からの3曲が、しみじみとした味わい深い演奏で大変気に入った。どの曲も有名な民謡らしいが、管理人は初めて聴いた。芸術的な薫り高い素晴らしい編曲で、ブローウェルの手腕が発揮された名品だった。イギリス民謡らしからぬ、しっとりした編曲が心に染み入る。特に深い闇を感じさせるようなギターのフレーズからカウンターテナーのしっとりした歌唱が続く「彷徨える人」は感動的だ。「サリー・ガーデン」はイギリスの田園風景を思い浮かべるような、なつかしさが感じられるアレンジ。「流れは広く」は世界的にカバーされているらしく、日本でも「広い河の岸辺」として多くのミュージシャンが歌っているらしい。彼らの歌はポップスなので、ショルたちのような雄大なスケールを感じさせるものではない。バッハはすべてカラマーゾフが編曲している。リュートの優しい響きに心が癒される。歌入りの2曲のバッハはどちらもやや速めのテンポで、僅かにせっかちに聞こえるのが惜しい。「主よ、人の望みの喜びよ」は崇高な精神を感じさせる演奏だが、ギターの装飾音符が気になった。カラマーゾフのソロでは、「無伴奏チェロ組曲第1番」はテンポが一定ではなく、途中で渋滞するような場面もあり、原曲を知っている向きには結構抵抗のある演奏だった。「アン・アイディア(エリのためのパッサカリア)」はカナダのギター界の重鎮エリ・カスナー氏の75歳の誕生日に贈られた小品。悲しみを帯び、アカラマーゾフの息遣いまでが感じられる熱い演奏だ。最後の「シマノフスキ讃」は愛らしいメロディーを持った小品だが、あまり面白くない。アルバムのエピローグ的な位置づけだろう。録音は、漆黒の空間から歌とギターやリュートが聞こえてくるというもので、無駄な音が一切聞こえない、すぐれた録音だ。スタジオ録音らしからぬ、ふくよかな余韻の残るサウンドが、アルバムの出来に大いに貢献している。ショル & カラマーゾフ:「カンシオネス」~ブローウェル、バッハ(Aparté AP263)24bit 96kHz Flacレオ・ブローウェル(1939-):1.イギリス民謡集(2015) I am a poor wayfaring stranger 彷徨える人 Down by the Salley Gardens サリー・ガーデン O Waly Waly 流れは広く4.アン・アイディア(エリのためのパッサカリア)(1999)5.愛の歌集(2011-12) 5.Yo he de enseñarte el camino Lyrics byJosé Hernández 6.El Cantar de los Cantares Lyrics By Lyrics:K. Salomón 7. Balada de un día de Julio Lyrics BY Federico García Lorca8.J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007(カラマーゾフ編)14.ゴットフリート・ハインリヒ・シュテルツェル:あなたがそばにいれば (1718)J.S.バッハ:15.すべての善きものの源泉 BWV44516.主よ、人の望みの喜びよ BWV14717.ブローウェル:新しい単純な練習曲~IX.シマノフスキ讃(2001)アンドレアス・ショル(カウンターテナー track 1-3,5-7)エディン・カラマーゾフ(ギター track 1-7,17,リュート track 8-16)2018年11月13-16日、スタジオ7フレンドシップ(キードリヒ)
2022年06月22日
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アルメニアのピアニストティグラン・ハマシアンが初めて1920年代から1950年代のアメリカのスタンダードに挑戦した「Standart」というしゃれたタイトルのアルバムを録音した。ハマシアンは以前はレンタルCDで聴いていて、購入したのは今回が初めて。スタンダードが換骨脱胎とでもいえるような変貌ぶりで、ハマシアンのオリジナリティがあふれる創造的な音楽だ。これで、気に入らなければそれまでなのだが、その換骨奪胎ぶりの徹底さ加減がなんとも潔いというか、ここまでやればあっぱれとしか言いようがないと思わせるものだった。ハマシャンはアルバムについて次のように語っている。「このアルバムで私は、これまで温め発展させたきた様々なテクニックやアイディアを、ようやく振り返る機会を得たレパートリーに用いることによって、その音楽に対する心からの感謝を表現した」ピアノ・トリオでの演奏は彼らの強固な結びつきが生む、緊張感のある音楽が楽しめる。ゲストが入る曲では、ピアノ・トリオでは味わえない幅広い音楽が楽しめる。なお曲を知っているほうが、なぞかけを解くような、彼らの音楽の面白さがよく分かる。「I Didn't Know What Time It Was」は、もともと爽やかな曲なのだが、突っかかるような変拍子のリズムが新鮮だ。ハマシアンのゴリゴリとしたピアノも聴き物。「All the Things You Are」は打って変わって、アルペジオとトリルを多用したピアノに乘ってマーク・ターナーの耽美的なテナーが歌う、大変魅力的なナンバー。おそらく、数万回?演奏されてきたこの曲で、このようなアプローチがされたことは稀だろう。パーカーの「Big Foot」は猛烈な速さの演奏。ジョシュア・レッドマンの乾いたテナーが圧倒的な力で驀進する。ハマシアンのピアノ・ソロも負けじと熱演を繰り広げる。ジャズを聴く醍醐味が詰まったナンバー。「Softly, as in a Morning Sunrise」はピアノ・トリオでの演奏。変拍子の猛烈な速さで一気に駆け抜ける。途中ピアノの弦を弾く場面もあり、実に面白い演奏。前衛ジャズ作曲家兼トランぺッターのアンブローズ・アキンムシーレが2曲で参加している。「I Should Care」はピアノとのデュオ。比較的まともな演奏なのだが、トランペットが雑味の多い音で、あまり楽しめなかった。「Invasion During an Operetta」は参加メンバー全員の作曲で、セッションで作られたフリーフォームな曲のようだ。「オペレッタ中の侵略」とは意味深長だが、曲とのつながりは不明。ダークなムードが漂うなかなかいい雰囲気で、「Softly, as in a Morning Sunrise」の断片も出てくる。アキンムシーレの本領はこの曲にあるようだ。最後のフェイドアウトもなかなか意味深だ。最後は「Laura」これもテンポが猛烈に速い。メロディーが出てこないと思って、注意深く聞くと短い断片が所々で出てくる。エンディングに近くなると、メロディーが長めに出て来て帳尻を合わせている。初めて聞くと、基のメロディーを探すのに気を取られて、演奏が楽しめなくなる気がする。トリオの他の二人はベースのマット・ブリューワーとドラマーのジャスティン・ブラウン。ブラウンの曲により多彩なビートを叩き出す演奏は楽しめる。ジャケットはピアニストを模したカリカチュア風のデザインで、演奏内容を表した優れたデザインだ。ところでこの稿を書いているときにハマシャンではなくハマシアンであることを知り、自分の思いこみの強さを感じてしまった。うっかり人前で言ってしまったら、とんだ恥をかくところだった。Tigran Hamashan:Standart(Nonesuch 7559791147)24bit 96kHz Flac1.Elmo Hope:De-Dah2.Lorenz Hart, Richard Rodgers:I Didn't Know What Time It Was3.Jerome Kern, Oscar Hammerstein II:All the Things You Are (feat. Mark Turner)4.Charlie Parker:Big Foot (feat. Joshua Redman)5.Bernard Hanighen, Gordon Jenkins, John Mercer:When a Woman Loves a Man6.Oscar Hammerstein II, Sigmund Romberg:Softly, as in a Morning Sunrise7.Alex Stordahl, Paul Weston, Sammy Cahn:I Should Care (feat. Ambrose Akinmusire)8.Ambrose Akinmusire, Justin Brown, Matt Brewer, Tigran Hamasyan:Invasion During an Operetta (feat. Ambrose Akinmusire)9.David Raksin, John Mercer:LauraTigran Hamasyan(p)Matt Brewer(b except 4,7)Justin Brown(ds except 4,7)Mark Turner(ts track 4)Joshua Redman(ts track4)Ambrose Akinmusire(tp track7,8)
2022年06月19日
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リーゼ・ダヴィッドセン(1987-)とレイフ・オヴェ・アンスネスの共演によるグリーグの歌曲集を聴く。二人ともノルウェイの音楽家なので、同郷のグリーグの歌曲はしっくりくる組み合わせだろう。1月にはこのアルバムを携えてヨーロッパツアーを行っている。グリーグの歌曲といえば、叙情的な歌が多いと思い込んでいた。それはアンネ・ゾフィー・フォン・オッター(1955-)のアルバム(1992 DGG)の印象だと思っていた。ところがダヴィッドセンの歌は結構激しいところのある歌(例えばop.48 5の「ばらの季節に」)が含まれていて、グリーグの歌曲はこんなものだっけと思った。今回改めてオッターの歌を聴いてみたが、結構荒々しい表現がある。グリーグの歌曲と言えばキルステン・フラグスタートの歌が有名なので、これもspotifyでチェックしたところ、やはり荒々しいところがある。結局管理人の思い込みというか記憶違いだったのだろう。グリーグの歌曲だけのアルバムは意外に少ないようで、管理人の知っているのはこの2枚だけ。グリーグは二百曲近い歌曲を作っているが、歌詞がノルウェー語なのでハードルが高いのだろう。ダヴィドセンの声はオッターに比べて少し太いので、管理人のイメージするグリーグとは多少違っている。なので強音では録音のせいもあり少し荒々しく聞こえる。録音時の年齢はオッターが36歳、ダヴィッドセンが34歳とほゞ同じ。「山の娘」では曲の構えはオッターのほうが大きく、表現の成熟度と格調高い歌唱は一日の長がある。ダヴィッドセンは歌いすぎることが耳につく。ただ静かな部分では、細やかなニュアンスが感じられ悪くない。少し憂いを含んだ声であることもグリーグでは効果的だ。オッターはネイティブではないので、洗練され過ぎているように感じられる。ダヴィッドセンの発音が野趣を感じさせ?るのも、なかなか興味深い。作品48の「6つの歌」の第3曲「この世のなりゆき」速めのテンポだが、鈍重な感じがするのは逆効果。総じて、ゆったりした静かな曲がダヴィッドセンの資質にあっているように思う。有名な《心の旋律集》 作品5から 第3曲「きみを愛す」は心持速いテンポだが、曲がワンコーラスしかないこともあり、あっさりしすぎて物足りない。最後は有名な「過ぎた春」で締めくくられる。アンスネスは淡々として、余計なことをしないピアノ。ただ、例えば作品48の第5曲「ばらの季節に」での控えめなルバートを聴くと、思わず「うめーな」とつぶやいてしまう。また作品48の「挨拶」に聴かれるような軽やかなタッチが爽やかだ。グリーグの歌曲は管弦楽伴奏の曲は「ソルベーグの歌」以外はないようだが、管弦楽伴奏付だとさぞかし素晴らしい世界が広がるような気がした。何方かアレンジしてもらえないだろうか。録音はSNは非常に良いが、通常の音量だとフォルテで音が歪みっぽくなるので、音量は控えめ(出来れば小音量)にしたほうが、グリーグのぬくもりのある音楽楽しめると思う。この稿を書いているのが梅雨に入ったばかりの時期なので、このアルバムを聴くのにはふさわしい季節でないだろう。やはり、冬の寒い夜に聴くことがふさわしい気がする。いずれにしても、アルバムの少ないグリーグの歌曲集を、最新の音で聞くことが出来るのは有難い。なおモニカ・グロープ の歌でグリーグの歌曲全集が出ている(BIS)ので、機会があれば聴いてみたい。Lise Davidsen:Grieg(DECCA 485 2254)24bit 96kHz lacEdward Grieg:1.Haugtussa, Op. 679.En svane (No. 2 from Seks Digte af Henrik Ibsen, Op. 25)10.Med en vandlije, Op. 25 No. 411.Til n, No. 3 from 6 Elegiac Songs, Op. 59Op. 59, 12.Til en II, Op. 59 No. 413.Jeg Elsker Deg, Op. 41 No. 314.Og jeg vil ha mig hjertenskjaer (And I would like a sweetheart true), Op. 60 No. 515.Ved Rondane (from 12 Songs Op. 33)16.Five Songs by Otto Benzon, Op. 6921.Poesy (No. 5 from Romances and Songs, Op. 18)22.Seks Sange, Op. 4828.Vren, Op. 33 No. 2Lise Davidsen(s)Leif Ove Andsnes(p)Recorded: 2021-09-08,Stormen Konserthus, Bodø
2022年06月17日
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最近、家の屋根と外壁の塗装を行っている。リフォーム後10年以上たっていて、チョーキング現象が出始めたからだ。チョーキングは外壁を指で触った時に白い粉がつくことで、雨や紫外線によって塗料の中の合成樹脂が分解され、顔料が粉状になって塗装表面に現れることだ。工事もだいぶ進んできたのだが、外観が新しくなったため障子の汚れが目立つのか、妻が障子紙を取替えなければと言い出した。管理人も、妻に言われる前から検討はしていたのだが、どこぞの首相と同じで、検討中で終わっていた。手配した障子紙が今日届いたので、早速貼替えを行うことにした。ところが、障子が外れない。満足に外れたのは3枚だけで、あとは妻が力任せで外したものが1枚。残りの2枚は、うんともすんとも言わない。以前障子の真ん中を引っ張って外したことがある。この原理は、おそらく見かけ上障子の長さが短くなったからだろうと思っていた。今回もその方法でやってみたが、まるでダメ。仕方がないので調べてみたら、いろいろな方法がある。まず、現在の位置と反対側に障子を移動させて外すという方法をやってみたがうまくいかない。そもそも、『建具が外れなくなる原因の90%以上は【鴨居(かもい)】が中央から垂れ下がってきたから』なので、ジャッキで鴨居(建具の上側レール)を上げるという方法が原理にかなっているようだ。実際「鴨居ジャッキ」なるものが売られているようだが、たかだか1回使うためにに買うのはコスパが悪すぎる。なので、車のジャッキに当て木をして持ち上げようとしたがうまくいかない。仕方がないので、業者に依頼してしまったが、鴨居ジャッキをよく見たら当て木は鴨居の溝に入れるようだ。もしかして、業者のほうが高くつくかもしれないが、敷居か鴨居を削ってもらって、しばらくは大丈夫なようにするつもりだ。
2022年06月15日
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bandcampのお知らせで知った米澤めぐみの新作「Resonance」を聴く。例によってspotifyでチェックして良かったので、bandcampから$9で購入。彼女は北海道出身でバークリー音楽院卒でニューヨーク在住のピアニストだそうだ。この新作が3枚目だそうだ。基本オーソドックスなピアノだが、力任せに弾くタイプではなく、独特のタイム感覚を持った脱力系?ピアニストだ。女性ピアニストらしい繊細さも併せ持つが、行き過ぎてカクテル風のピアノに堕していないところがいい。オリジナルが6曲とスタンダードが3曲、それにコルトレーンのオリジナルが1曲というプログラム。オリジナルは強烈なアピールこそないが、ヴァラエティに富んでいて、概ね悪くない。女性ピアニストのオリジナルに時折みられる甘ったるい音楽ではなく、一本芯の通った音楽で、作曲能力がかなりあるとみた。最初の「Before The Wind」から清潔感のあるピアノが楽しめる。「The Radiance」は愛らしテーマを持つミディアムテンポのワルツ。感傷的ではない、何か希望を与えられるようなメロディーだ。歌うようなソロも素晴らしく、このアルバム中で最も魅力的なナンバーだろう。「It's All That Matters」はベースのソロから始まるブルース。クールでスタイリッシュな演奏で、彼女の芸域の広さが感じられる。中間部のベースソロは、ちょっとすっとぼけた味わいで、聴き手をニヤリとさせる。「Valley In The Deep Sea」はフリー系のひんやりとした肌合いの音楽で、それまでのほんわかとしたムードが一変する。「Lone Winds Blow」はフリー系ではないが、タイトルから想像できるような、寒々とした雰囲気が感じられる音楽。タイトルモノローグ的なピアノが次第に饒舌に変わるところがなかなか印象的だ。「Yet Again At Will」は、暖かな陽だまりで、まどろんでいるような気持ちのいい音楽。オリジナルもいいが、驚いたのはコルトレーンの「カウントダウン」コルトレーンの演奏だと、すごいスピードでシーツオブサウンドが炸裂するという印象が強い。イントロはクラシックの無調のような音楽、そこからテーマが出てくる。ところが、テンポが超スローで、テーマ自体も不協和音を含んでいるという特異な演奏。ドラムスが裏で自由な動きをしていて、さながらマイルスの「ネフェルティティ」を思い出させるような構成。このゆっくりしたテーマは何故か癒しを感じさせるところもユニークだ。こういう演奏がオリジナリティあふれる演奏というのだろうと思う。スタンダードも一筋縄ではいかない。ベースがフィーチャーされている「Body and Soul」は、シンプルなソロだが、素朴な味わで悪くない。途中で入るピアノ・ソロは、それまでの雰囲気を一変させる、ハッとさせるような目覚ましいもの。コール・ポーターの「Everything I Love」はドラムスの細かいリズムにのったハード・バップ風ピアノがいい。ガンガン弾くのではなく、あくまでもエレガント。後半ドラムスとのフォーバースが入る。アルバムの最後を締めくくるスタンダードの「All or Nothing At All」もクールでスタイリッシュ。音数の少ないピアノ・ソロが却って説得力がある。ベーシストのマイク・マクガークとドラマーのマーク・ファーバーの気合の入ったプレイが目立つ。かなり自由にプレイできている様子も間見られる。ということで、全く知らなかったピアニストだったが、大変水準の高い演奏で大満足。知らないミュージシャンの、優れた音楽を聴くのは楽しい。Megumi Yonezawa:Resonance(Sunnyside Records)24bit 88.2kHz Flac1.Megumi Yonezawa:Before The Wind2.Megumi Yonezawa:The Radiance3.Megumi Yonezawa:It's All That Matters4.Megumi Yonezawa:Valley In The Deep Sea5.Megumi Yonezawa:Lone Winds Blow6.John Coltrane:Countdown7.Johnny Green:Body and Soul8.Cole Porter:Everything I Love9.Megumi Yonezawa:Yet Again At Will10.Arthur Altman:All or Nothing At AllMegumi Yonezawa(p)Mike McGuirk (b)Mark Ferber (ds)Recorded 8th January, 2020
2022年06月13日
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サイモン・ラトルがロンドン交響楽団の音楽監督に就任して2シーズン目の2018年のライブ録音。曲目はポピュラー系の選曲で、管理人的にはゴリホフの「ナザレノ」に注目した。この組曲はゴリホフの「マルコ受難曲」をもとに、『2008年にラベック姉妹の依頼を受けたベネズエラのゴンザロ・グラウが、2台ピアノとオーケストラの編成に編曲した』とのこと。タイトルの「ナザレノ」はイエスが子供時代を過ごした地、ナザレに由来する言葉。因みに、グラウは原曲の一部を共作してるという。この曲は管理人も何度か聞いたが、今では全く記憶にないので、聞き直した。ラテン・パーカッションと合唱が入り、これが受難曲?と思うほどにぎやかな(うるさいとも言う)曲だった。アルゼンチンを中心としたラテンの土俗的な要素がふんだんに織り込まれ、クラシックというジャンルからは(いい意味で)大きく逸脱している。これが2台のピアノを主役にしたシンフォニック・スタイルのダンス音楽に編曲されている。バーンスタインの「シンフォニック・ダンス」を思い出すが、あの曲ほど成功はしていないのはメロディアスな曲が少ないからだろう。サウンドが洗練されているためか原曲の持つ沸き立つようなリズムとダイナミズムには到底かなわない。また熱気や土俗的な雰囲気も、あまり感じられない。せっかくラテン・パーカッションを使っているのに、編曲がそうなのかプレイの問題なのか、全くあとなしいもので、これでは宝の持ち腐れだろう。中ではトロンボーンを中心に金管のパリッとしたサウンドが目立っていた。弦は曲に全くあっていないので、なくてもいいような気がする。ラベック姉妹のピアノは、打鍵が弱く、リズムに乘りきれていないため、もどかしさを感じる。第3曲はキューバのダンス音楽のワラチャとマンボが使われていて、ノリも良く楽しめるが、少し上品すぎる。4曲目の「Sur」はラテンの悲しみが聞かれ、悪くないが、原曲(Agonia(Aria de Jesus))のソプラノによる濃厚な歌に比べると薄味であることは確か。最後の「Procesión」も懸命の演奏なことは分かるが、カロリーが低く、原曲を知っている者には物足りない。なお、管理人の耳が正しければ、編曲版と基となった曲との関係は下記の通り。 (編曲版) (原曲)1.Berimbau→1.Vision: Bautismo en la Cruz2.Tambor en blanco y negro→2.Danza del Pescador Pescado3.Guaracha y Mambo→8. Por que?4.Sur→19.Agonia(Aria de Jesus)5.Tormenta y Quitiplá→ 23.IIISoy Yo (Confesion)6.Procesión→30. Comparsa、31. Danza de la Sabana Porpura-Manto Sagradoストラヴィンスキーの「エボニー・コンチェルト」は新古典主義の曲だが、もともと曲想が暗い。それでもアンサンブルが優れていて、ハープがくっきりと表に出てくるところなど、アンサンブルの醍醐味が味わえる。バーンスタインの「前奏曲、フーガとリフ」はオーケストラ・バージョンのため、オリジナルのジャズ・バンド版の活きのよさが薄まって、あまり面白くない。「リフ」のソロはLSOの首席クリス・リチャード。そつなくこなしているが、線が細く、もっと表に出て来てほしい。Spotifyをチェックしたら、この曲の録音はあまりなかった。管理人が持っているのはマイヤー兄妹とパッパーノの録音。バーンスタインは録音はコロンビア・ジャズバンドとの一種類のみだったが、これが一番面白かった。こういう曲の場合、クラシック畑のミュージシャンの音楽は押しが弱い。例えば1楽章のトランペットのシェイクは弱弱しく、パンチに欠ける。きれいではあるが、あまりエネルギー感が感じられない録音のため、だいぶ損をしている。細かいことを言うときりがないが、珍しい曲の録音として希少価値があることは確かだろう。Simon Rattle:NAZARENO! Bernstein, Stravinsky, Golijov(LSO Live LSO0836)24bit 96kHz Flac1.Leonard Bernstein: Prelude, Fugue & Riffs for Solo Clarinet and Jazz Ensemble (1949)4.Igor Stravinsky: Ebony Concerto (1945)7.Osvaldo Golijov(arr. Gonzalo Grau):Nazareno (2000, arr. 2009)Katia & Marielle Labèque(p track1-3,7-12)Chris Richards(cl track 1-6)Gonzalo Grau, Raphaël Séguinier(perc.track7-12)London Symphony OrchestraSir Simon Rattle Recorded live in DSD 256fs on 12&13 December 2018 at the Barbican, London
2022年06月10日
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エンリコ・ピエラヌンツィの新作を聴く。今回はStoryvillからのリリース。何度も書いているが、ここは通貨がデンマーク・クローネ(DKK)で、現在のレートだと1クローネが¥19程で50DKKなので千円いかない価格で購入できるのが大変ありがたい。プログラムは「What Once Was」と「This Is New」以外はピエラヌンツィのオリジナル。どの曲も4分ほどで全曲が50分程度にまとまっていて、長からず短からず丁度いい長さ。今回は比較的テンポが速く、軽めの曲が多い。いつもの湿り気のある音楽とは少し違っているが、なかなか楽しめる。3曲目の「Wave of Interest」がワルツから派生した変拍子のなかなか面白い曲。少し哀愁が漂っているのはいつも通りのピエラヌツィ節。「The Heart of a Child」は3拍子のワルツで、フォネスベックのベースソロがある。タイトルチューンの「Something Tomorrow」はピエラヌンツィにしてはスピード感があり、明るくキャッチーなメロディーが珍しい。彼がこういう底抜けに明るい曲を作るとは思っていなかった。私見では松永貴志が作ったと言ってもおかしくない曲で、すこぶる爽やかだ。短いながらもピアノとベースのソロもノリノリの演奏。フォネスベックの「What Once Was」はピエラヌンツィのオリジナルと言っても良いほどリリカルな叙情が感じられる曲。フォネスベックのメロディアスなベース・ソロも郷愁を誘うような演奏。ピアノ・ソロも心に染みわたるようなメロディーラインが美しい。「Three Notes」はスピーディーで印象的なメロディーを持つ、スタイリッシュな曲。タイトなドラムスが小気味いい。アンドレ・チェカレッリ(1946-)はピエラヌンツイとは古くから共演している。今年74歳だが、若々しく引き締まったドラミングで、とても気持ちがいい。「Suspension Points」はゆったりとしたテンポでピアノが歌う心温まる小品。「Je Ne Sais Quoi」は過去にも何回か録音されている、ピエラヌンツイの美点が最高に発揮されたヨーロッパの哀愁が漂う名品だが、ピアノ・ソロはダイナミック。最後はクルト・ワイルのミュージカル「Lady in the Dark」からの「This Is New」で締めくくられる。管理人はこの曲は多分初お目見えだが、spotifyで調べるとカバーの数が数百あり、よく知られている曲らしい。ゆったりとしたピアノのカデンツァから始まり、続く小気味のいいテンポに乘って躍動するスピード感が堪らない。録音は、やや平面的だが、低音が引き締まっていて悪くない。ということで、重厚さはそれほどでもないが、ディストリビューターの「ピエラヌンツィのキャリアにおける重要なマイルストーン」というコピーはあながち嘘ではない。Enrico Pieranunzi:Something Tomorrow(Storyville Records 101 8498)24bit 96kHz Flac1.Pieranunzi: Those Days2.Pieranunzi: Perspectives3.Pieranunzi: Wave of Interest4.Pieranunzi: The Heart of a Child5.Pieranunzi: Something Tomorrow6.Thomas Fonnesbæk: What Once Was7.Pieranunzi: Three Notes8.Pieranunzi: Suspension Points9.Pieranunzi: Je Ne Sais Quoi10.Kurt Weill, Ira Gershwin: This Is NewEnrico Pieranunzi(p)Thomas Fonnesbæk(b)André Ceccarelli(ds)Recorded on September 5 & 6 by Thomas Vang at Village Recording, Copenhagen 2021
2022年06月08日
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キアロスクーロ四重奏団(SQ)のベートーヴェンの第2弾は作品18の後半の4番から6番の3曲。演奏の傾向は前作の1番から3番と同じだ。前作のレビューを見直してみたが、どうも否定的な感想だったようだ。今回は、何故か肯定的にとらえている。最初の第4番の1楽章の情熱的な主題からして、濃厚に演奏していて、おっと思わせる。今回もメリハリが効いていて、アクセントもガシガシと激しくやっている。耳朶を集めるにはもってこいの演奏だが、それは彼らの目的ではないだろう。若干やり過ぎの感じもするのだが、乱暴な演奏になる手前で止める絶妙のバランス感覚。聴き手によっては、エキセントリックすぎると思われる可能性もある。初期の弦楽四重奏では活躍するのは主にファースト・ヴァイオリンなので、イブラギモヴァの艶のあるサウンドと圧倒的な技巧に引き込まれてしまう。文字通り胸のすくような快演。第4番の4楽章などその典型だ。この楽章のエンディングのアチェレランドも激しく、思わず声が出てしまった。第6番の第4楽章のアチェレランドも狂気さえ感じさせる速さだ。第5番のメヌエットの三連符のアクセントも思いっきり強調されていて、びっくりしてしまう。どの曲も素晴らしいが、総じて速い楽章のほうが一段と精彩がある。緩徐楽章でもウイーンの田園風景を思い浮かべるような、ほんわかとした感じではなく、緊張感が漂っている。もともと緩徐楽章では美しく演奏しようとはせず、むしろカサカサしたサウンドを意図的に出しているようにも感じられる。今回も参考までにエベーヌSQの演奏を聴いてみた。アンサンブルの面白みはエベーヌSQのほうがはるかにあるが、インパクトがあるのは断然キアロスクーロのほうだ。キアロスクーロSQの演奏を聴いたせいか、エベーヌSQの演奏からはベートーヴェンの優雅さ?も感じられたのが意外。それだけキアロスクーロSQの演奏の荒々しさが目立っているのかもしれない。Chiaroscuro Quartet Beethoven: String Quartets, Op. 18 Nos. 4-6(BIS BIS-2498)24bit 96kHz FlacLudwig van Beethoven (1770 - 1827): 1.String Quartet No. 4 in C Minor, Op. 18 No. 45.String Quartet No. 5 in A Major, Op. 18 No. 59.String Quartet No. 6 in B-Flat Major, Op. 18 No. 6Chiaroscuro QuartetSeptember 9th-12th September 2019, Sendesaal, Bremen, Germany
2022年06月06日
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そろそろWindws11に移行しようと思って、使っているソフトの対応状況を調べ始めた。頻繁に使っているのはリッピングソフトのDbpoweramp。これがどうなっているかを調べたら、自分の使っているバージョンは多分15.5(r15.5)で現在は17.7(r17.7)まで上がっている。通常のソフトだと、バージョンアップしろと言ってくるのだが、このソフトは自分でチェックしないとそれが分からない。チェックボタンがあることを知ったのも今回が初めてだ。バージョンアップはできたのだが、r15だとr16.6までが無料で、r17にするには有料になってしまう。単独のバージョンアップ版が出ているが、これが¥4000程。念のためDbpoweampのサイトをチェックしたら、$20でバージョンアップできることが分かり、最近の円安が痛いが、即ダウンロード。r17の最大の目玉はDSD変換が出来ることで、管理人もバージョンアップの目的はこのスペック追加のためだ。管理人はDSDに変換することはあまりない。するときはSNを改善したり、混濁を抑えるときで、その時は無料の「TEAC Hi-Res Editor」を使っていた。難点はファイルをまとめて変換はできないことで、ファイル数が多いと大変だ。なので、Dbpoweampの今回のバージョンアップはとても助かる。最初はFLACをDSDに変換したが、すんなり変換できる。次にCD(time 1:19:01 track14)をリッピングしてDSDにするプロセスを確認したが、スピードが9'47"と、とても速い。変換スピードは下記の通りで、wavからflacへの変換は何と16秒しかかからない。CD→ wav:4'40"wav→DSD128:17'51"wav→flac:16"CD→DSD128:9'47"使用したPCはコア数が4でスレッド数が8のIntel(R) Core(TM) i7-8550U CPU @ 1.80GHzを搭載 。リッピングは空いているスレッドが担当し、他のスレッドはエンコードに使われているので、曲数がスレッド数ー1以上のほうが処理的に有利になる。リッピングとwavをDSDに変換する2段階に分けるよりも10分以上短縮されるのは驚き。結局上記の曲をリッピング中に他のwavをエンコードできるという仕組みが短縮の原因だろう。なので、曲数が少ない場合は一気にDSDまでもっていくのと2ステップに分けるのでは、パフォーマンスはそれほど変わらなくなる筈だ。大体リッピング自体がとても速くなっている。実測ではないので正確ではないが、1枚のCDをリッピングするのにr15では20分はかかっていたはずだが、それが4分ほどしかかからなくなっている。これで大分ストレスが軽減された。また、組物の場合でも、タグの関連付けができているので、後で面倒くさい編集を行わなくて済む。管理人が一番望むのはリッピングのときにアップコンバートまでしてくれることなのだが、さすがにそれはできない。肝心の音だが、プロセスの違いによる違いは感じられない。DSDの静けさは、さすがにいい。ということで、リッピング環境が大幅に向上したので、しばらく手持ちのお気に入りのCDで遊んでみたい。
2022年06月04日
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朝リビングや自室の掃除をするようになってから、約2ヶ月が経つ。今までは、ルンバにおまかせだったが、細かいところは取れないので、ダイソンを使って掃除を始めたのだ。最初は1時間ぐらいかかっていたが、手順を決めてからは40分ぐらいで終わるようになった。まず、打ちほうきで、壁や戸口の桟のゴミやテーブルの埃、椅子のすべり止めにくっついた猫の毛を払い、椅子をテーブルの上に載せる。飛び散った猫砂や餌を片付ける。掃除機をかける。椅子を元に戻す。ざっとこんな感じだ。これだけでも結構汗が出る。掃除機が入らない隙間はほうきでゴミを掃き出して掃除機で吸い取るようなこともやっている。掃除機が必ずしも万能ではなく、昔ながらのほうきや打ちほうきが威力を発揮するシーンも多い。特に打ちほうきは掃除機には真似ができない。最近は化学雑巾などの新しい兵器?が出てきているが、管理人は取り敢えずこの方法で続けたい。エアコンの上の埃は打ちほうきでも取りきれない。適しているのはクイックルワイパーハンディなるもの。これがなかなかの優れもので、モップの部分が90度曲がるので、エアコンの上の埃も取れるのだ。エアコンだけでなく、箪笥などの高いところの誇りも取れる。まさに痒い所に手が届くのだ。ただ、毎日掃除をしているのにもかかわらず取れるのは猫の毛が殆どで、掃除をするよりも基を断つほうが先だろうという囁きが聞こえてきそうだ。使う頻度が高くなったためダイソンのフィルター掃除をこまめにやらなければならない。問題はフィルターを水洗いをすると数日使うことが出来なくなることだ。しょうがないので、替えのフィルターを買ったのだが、最初の物は付けると掃除機が動かなくなる始末で、即返品してしまった。次の物は問題なく使えているので、元からついていたものと交互に使っていこうと思う。問題なのは一週間以上たたないと匂いが取れないことで、ハードに使いこなしているためなのか猫の毛のせいかはわからない。おかげで、右腕がいたくて、そのせいか右手の中指がばね指になってしまった。やはり何事もほどほどに、ということなのだろう。まあ、掃除をするようになってからは毎日気分よく過ごせるので、それだけでも効果はあったと思う。
2022年06月02日
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