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2022年11月刊ジュエル文庫著者:草野來さん汚れ仕事も忠犬の如くこなす冷酷な将校・緑雨。彼の暗殺を謀って近づいたユキは囚われの身に!「いい度胸だ。女中として飼ってやろう」容赦なく身体中を嬲られ、凶暴な楔に貫かれー。こいつは兄の仇!絶対に堕とされない!けれど夜ごと激しく抱かれて、気づく。無慈悲な顔の裏に秘めた優しさ、そして哀しさを。心揺れるなか、軍の反乱事件に巻き込まれるユキ。身体を張って護ってくれたのはなんと緑雨で…。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 三好ユキ=元助産師見習いの少女。 兄を殺害した緑雨に復讐を誓う。 中村緑雨=陸軍将校。「統制派の始末屋」と呼ばれている。 上月 勇=皇道派の将校。 三好太陽=陸軍少尉。皇道派であり、緑雨の暗殺を謀るが返り討ちにされた。こちらもつい最近発売の作品なので、ざっくりと。とは言え、あらすじでもう終盤くらいまでの展開が書いてありますね(^_^;)助産師見習いをしていたユキは、ある日電報にて自慢の兄・太陽の訃報を受け取ります。死亡原因は演習中の事故との説明だったが、後に詳しい事情を聞くに、兄は汚れ仕事を率先して行う将校・中村緑雨によって殺害されたらしい。その日、ユキは大好きだった兄を殺した緑雨に復讐を誓った。住み込みの女中として緑雨に近づいたユキは、太陽から護身用にと譲られた懐剣で緑雨に襲い掛かるもあっさり鋳なされ、純潔を奪われてしまいます。これが、皇道派が仕向けたものではなく、彼女単独の恨みによるものと判り、ユキは解放されますが、緑雨の寝首を掻くために、女中として屋敷に止まることを決意。その気概を緑雨は気に入ったようで、その後もめげずに襲い掛かる彼女を昼は女中として使い、夜はその身体を恣にしていた。ユキは悔しい気持ちに苛まれながらも、緑雨の為人や軍の内情などを知り、複雑な心境を抱くように。兄のしでかしたことで、彼は右肘を壊し軍人として活躍することはもうできないと言う。統制派と皇道派の対立は凄まじく、更に皇道派は大規模なクーデターを目論んでいるようだ。恨みは消えないが、緑雨に絆されてきているのは否めない。そんなある日、ユキは太陽の友人の将校・上月と出会い、緑雨の書斎を調べて情報を流してほしいと頼まれます。切実な願いに緑雨への後ろめたさを感じながらも、彼の手帳を盗み見たユキは皇道派の計画がほぼ統制派側にバレているのを知り、上月達にクーデターの中止を訴えるも逆に緑雨の情婦として人質に取られ・・・。手帳を盗み見たことで緑雨にスパイと疑われ、せっかく築き始めていた二人の信頼関係が壊れかけるんですけど、上月達にユキが殺されかけた際、アジトに踏み込んで彼女を助けたのは緑雨でした。間一髪ユキは助かったものの、代わりに緑雨は重傷を負い、二人は離れ離れに。事件から数年後、彼らは無事に再会を果たし、ユキはまた緑雨の女中に戻ってお終い。曖昧な関係で終わっているとはいえ、理由はどうあれ緑雨がユキの兄を手に掛けたのは変わらないから、色々難しいのは仕方ない。巻末のおまけ短編では、本編よりほのぼのとした雰囲気のユキたちの様子が描かれてて、何だかんだと仲が良くやってるのが判って良かったです。愛憎渦巻くハード系の展開だったものの、ヒロインが妙にしぶとい子だったおかげで、これはきっと乗り越えると妙な安心感はありました。ヒーローもあの状況じゃ鬼になるしかないよなと。組織の中枢に身を置いていると命を狙われるのも日常茶飯事ですしね。親友だと思ってた人がスパイと判明し、何とも言えない気分になってたりと、このヒーローも結構な苦労人だと思う。作中のクーデター計画はあの2.26事件のことだそうで。結局、あの後事件は起きてしまったんだなぁ。評価:★★★★★ハードな内容でしたが、時代背景や当時の情勢等含め、読み応えは充分。
2022.11.12
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2020年12月刊ジュエル文庫著者:すずね凛さんミステリアスな青年と一夜の愛を交わした私。女の子を生み、ひっそりと生きていたらなんと王宮からお迎えが…!そんな!!彼は皇帝陛下だったなんて!でも私は叛逆者の娘ー結ばれては駄目!「この子はあなたの子ではないの」と嘘をついて拒むも強引に求婚されて…!娘には父性たっぷりの優しいパパ。私には濃厚ラブたっぷりの旦那サマに!皇帝の包容力に守られる子育て系王宮ロマンス。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ヨゼフィーヌ=前宰相バルトの一人娘。暗殺者に襲われて重傷を負ったアレック スを保護し、後に恋に落ちる。 アレックス=ロマーニ皇国の皇帝。暗殺されかけた際に記憶を失いヨゼフィー ヌの元に身を寄せ、彼女と恋仲になる。 ローズマリー=アレックスとヨゼフィーヌの娘。 アンナニーナ=アレックスの妹。 クリストフ=アレックスの護衛騎士。 ゴルツ=貴族議会長。アレックス失脚を目論む。 アンナ=ヨゼフィーヌの乳母。昨日感想を上げた「ロイヤル・シンデレラ・ママ」の続編で、アレクサンダーとロザリンデの長男・アレックスがヒーローです。事情が事情なので前作に比べるとヒロインが結婚を渋る気持ちも判る。前皇帝一家を陥れ、殺害を企てたとして逮捕された宰相バルトの一人娘であるヨゼフィーヌは、親戚の辺境伯家にて肩身の狭い思いで育った。母は彼女を産んですぐに産褥熱で亡くなり乳母のアンナと二人、別館で暮らしていた彼女はある日、裏庭で大怪我をした青年を見つけ保護した。重傷ではあったが、命に別状は無い様だ。青年はすぐに意識を取り戻したものの、頭を打ったのか記憶を失くしていた。名前も覚えていないので、連絡先も判らず、彼を拾ったのも何かの縁と傷が癒えるまで面倒を見ることに。名前が無いと不便だろうと仮名としてアルバローズと名付けられた彼は、二人の献身的な看護で見る見る回復。歩くことも支障が無くなりもう大丈夫だろうは思ったが、記憶だけは一向に戻らない。怪我の状況からして、殺されかけたのかも。アルバローズは背も高く見目麗しい青年で、男性をあまり見慣れないヨゼフィーヌは彼に一目惚れだった。そして彼もまた献身的で心優しく美しい彼女に惹かれていた。二人が恋人同士になるのに時間はかからず、数か月ほどの蜜月を過ごした。だが、ある日突然別れはやって来た。初雪が降った翌日、屋敷近くにある森の見回りに出かけた彼はそのまま帰らなかったのだ。ヨゼフィーヌは嘆き悲しみ体調を崩し寝込んでしまったのだが、やがてそれが悪阻だと判り叔父達の反対を押し切って数か月後女の子を産んだ。そして、彼が姿を消してから3年の月日が経っていた。皇帝アレックスは3年前地方の視察に出かけた際に暗殺者に襲われ重傷を負った。数か月もの間彼は行方不明となっており、初雪の翌日辺境伯領近くの岩場に倒れているところを捜索隊に発見された。どうやら足を滑らせて落下し頭を打ったようだ。自分が数か月も行方不明だったことに驚いたが、どうにもその間の事が思い出せず日に日に憔悴して行った。そんなある日、家族の思い出の花園にて花の香りに触発されて全てを思い出したアレックスは急ぎ、辺境伯領へ向かった。その別館にて見たのは小さな女の子と遊ぶヨゼフィーヌの姿。いくら記憶を失くしていたとはいえ、3年もの間彼女に苦労させてしまったと謝罪し、どうか妻になってほしいと求婚。娘共々一緒に暮らそうと告げるアレックスに、姿を消した理由を知って捨てられたわけではなかったとヨゼフィーヌは報われた気持ちになったが、彼の本名を聞いて愕然。咄嗟にこの子はあなたがいない間に別の男性と関係して出来た子なので結婚は出来ないと答えたのだった。どんなに好きでもこの人と結婚できるわけがない。だって自分は過去に先代皇帝一家を命の危機に晒した謀反人の娘なのだから。だが、この嘘はローズマリーの駄々によって不発となり、早々に嘘がバレてしまった。結果渋々ではあるがアンナと共にヨゼフィーヌは城に行くことに。上機嫌のアレックスとは裏腹に、いつ彼が自分の素性を知ってしまうか気が気でなかった。おまけに、アレックスの妹・アンナニーナにはあからさまに敵意を向けられている。普段は叔父の性を名乗っているので彼女もヨゼフィーヌの素性は知らないはずだが、知られたら恐らく反対されるだろう。それに離宮に住む先代皇帝夫婦も。そんな不安を他所に、別館で家族水入らずの生活が始まるとやはり楽しいし幸せだ。ローズマリーはすっかりパパっ子になり、子犬をプレゼントされて毎日ご機嫌で過ごしている。だが、ついにアンナニーナに彼女の素性がバレてしまったようで、庭で遊んでいたローズマリーにあなたの母親は反逆者の娘なのよ、と話したらしい。これはもう彼の耳に入るのも時間の問題だ。ヨゼフィーヌは一人、城を去ることを決意し・・・。ヨゼフィーヌは父・バルトと再会、娘の結婚がダメになりそうなのを知り、バルトは城に行くことを決意。その頃、アレックスを皇位から退けるため貴族議員長ゴルツ率いる反乱が勃発。皇帝の婚約者を遠ざけることで隙を作ろうとする作戦にアンナニーナが意図せず乗ってしまった形に。勿論、反乱はすぐさま鎮圧されるも、そこにはバルトの命懸けの功績のおかげでもありました。彼は死の間際アレックスにあの時の事を詫び、最後に孫の顔を見て息を引き取ります。この辺のやり取りは読んでてちょっと泣けました。前作ではクっソ憎たらしい人だったんだけど、人の親になるとこうも変わるものなんですね。先代皇帝夫妻はバルトの娘と知っても、二人の結婚を祝福。2年間の婚約期間を経て晴れて夫婦になった彼らは、後に長男にも恵まれ、皇太后同様ヨゼフィーヌも後にロイヤルシンデレラと呼ばれるのでした。前作の主役カップルであるアレクサンダーとロザリンデは、当初名前だけしか出ないのかなと思いきや、ラストにしっかり登場。よくよく思えばまだロザリンデは40代(多分45,6歳)なんですよね。アレクサンダーも還暦前だし、退位するの早くない?よっぽど夫婦水入らずでくらしたかったんだな(苦笑)アンナニーナは前作ラストで産まれた子です。この二人の子供の割には拗らせた性格してましたが、ちゃんと責任を取ったのはまぁ良かったかも。前作を読んで気に入ったならこの続編も読む価値アリです。評価:★★★★★個人的に内容はこちらの方が好み。
2022.10.02
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2018年1月刊ジュエル文庫著者:すずね凛さん皇帝陛下にたった一度だけ抱かれた私。人知れず赤ちゃんを生んで育てていたら……。えっ! 私に一途でずっと探してた!?この子を皇太子に迎えるなんて……!冷徹無比で知られる陛下だったのに、カワイイ赤ちゃんにメロメロですかっ!!父性に目覚めて皇帝なのに育児まで!?赤ちゃんもママも愛されまくるしあわせロイヤルファミリー誕生です!皇帝がパパになってがんばる☆子育て王宮ラブ! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ロザリンデ=男爵家の一人娘。両親を亡くし遠縁の紹介で皇宮の園芸係とし ての職を得る。 アレクサンダー=ロマーニ皇国の皇帝。ロザリンデと恋仲になる。 アレックス=アレクサンダーとロザリンデの息子。 バルト=宰相。アレクサンダーを皇位から追い落とすべく暗躍している。 皇太后=アレクサンダーの継母。こちらも積読本。リンクは電子書籍ですが、所持しているのは文庫版。今年コミカライズ化されたそうですね。結構厚い本なのでざっくりと。没落貴族の娘ロザリンデは両親を亡くし、家屋敷を借金の抵当に取られ難儀していた所を、遠縁の口利きで皇城の奥庭の園芸係の職を得てなんとか暮らして来た。毎日せっせと仕事をこなし、気付けば6年も経っていた。ひっそりと18歳の誕生日を迎えた日、庭師の長くらいしか訪れるものがいない奥庭に、一人の青年が現れた。美しく咲いたダマスクローズを気に入ったのか無造作に茎を折って持ち帰ろうとする彼を思わず𠮟りつけてしまったが、後に彼を追って来た宰相が陛下と呼んでいるのを耳にして青くなった。皇帝陛下になんて口の利き方を、平伏するロザリンデにアレクサンダーは気分を害した風も無く、それどころかキツイ庭仕事をしている彼女を気遣ってくれた。よくよく見ればアレクサンダーは何とも見目麗しい青年で思わず見惚れてしまい、お詫びとして彼が気に入っていた薔薇を衛兵に託し陛下に届けて欲しいと頼んだ。もう二度とお会いすることはないだろうと思っていたものの、翌朝閲兵式前に寄ったとアレクサンダーがロザリンデの元を訪れた。どうやら薔薇の礼をしに来たらしい。名を尋ねられ、敢えて下級貴族の娘と前置いて名乗ったのは一線を引くためだったのだが、彼は彼女に優しくキスし、また来ると言い置いて帰って行った。これはどういうつもりの行為なのか。悶々として一睡もできなかったというのに、アレクサンダーは宣言通りにまたやって来た。ロザリンデがこの城にやってきた頃、奥庭は荒れ放題だった。それを長い時間を掛けてここまでの美しい庭に整えたのが彼女だと聞き及び労いの言葉をくれた。そして、アレクサンダーはロザリンデに一目惚れをしたのだと言う。身分違いではあるものの、彼女もまた彼に一目で心奪われていたのだ。同じ想いだと判り、二人の秘密の逢瀬が始まった。アレクサンダーは皇帝と言う地位にありながら驕った所も無く優しい人で、そんな彼に愛されて両親を亡くして以来孤独に生きて来た彼女は、かつてないほど幸せだった。だが、そんな幸せも長くは続かない。初めての夜を過ごし、周りが何と言おうとロザリンデを后に迎えると彼は言ってくれていた。でも、二人の逢瀬は宰相にバレており、アレクサンダーが公務に出ている間に、ロザリンデの元を訪れ、身を引いて城から出て行くよう命じられた。陛下には隣国の王女との結婚が決まっているとまで言われ、ああやっぱりとロザリンデは無理矢理自分を納得されると少ない荷物だけを持ち城から去ったのだった。それから3年。ロザリンデは国境の町で花屋を営みながら2歳になる息子・アレックスを育てていた。城から出て、この田舎町にやって来た彼女は老婆が経営する花屋で働き始めた。だが、ある日、ロザリンデは自分が妊娠していることに気付いた。老婆は深い事情も聴かず何くれと世話をしてくれて、彼女に見守られながらロザリンデは数か月後元気な男の子を産んだ。顔立ちがアレクサンダーそっくりで、見ていると何とも切なくなるけれど、赤子を育てるのは想像よりも大変で干渉に耽る間も無い。昨年老婆が亡くなり、この花屋を託されたわけだが、皇帝の功績についての噂はこの辺境の地には届いていたけれど彼が結婚したという知らせはついぞ無かった。そんな日々が続いた頃、彼女の店にアレクサンダーが現れた。彼はアレックスを見て一目で自分の子だと気付いたようで、何としても二人を城に連れて帰ると言う。自分と結婚しても彼の益にはならない。涙を呑んで行かないと突っぱねたものの、ならばアレックスだけでも連れて行くと言われ、渋々自分も行くと承諾。約3年ぶりに城に戻って来たロザリンデは、一先ず別館に住まわされた。ロザリンデの為に建てたというその屋敷は厨房迄付いていてあの奥庭にも近い。忙しい中、アレクサンダーは毎日彼女達の元を訪れ、家族として過ごした。アレックスは当初アレクサンダーを警戒し全く懐かなかったが、とある騒動を切欠に父親と認識したようでそれから随分距離も近付いた。当然、宰相は良い顔をしなかったものの、政略結婚はしない妃に望むのはロザリンデだけと言い切られては認めざるを得ない。宰相のバックには皇太后がいる。一応の警戒はしておくことにした。それからしばらく経ってアレクサンダーはロザリンデとの婚約を発表。半年後に式を挙げると宣言した。当初はデキ婚で皇后になる女と口さがない事も言われていたが、取材の際のロザリンデの対応や、アレックスのかわいらしさ、ロイヤルファミリーの仲睦まじさにその悪評も下火に。世紀のシンデレラ婚とまで言われるまでになって行った。幸せな彼らを横目に、いよいよ皇太后が最後の手段とばかりにロザリンデとアレックスの命を狙い・・・。これもかなり危険な目に合うも、ロザリンデの機転とアレクサンダーの察しの良さによって危機を脱します。宰相は瀕死の重傷を負い刑務所病院送り、皇太后は離宮に幽閉と決定。アレクサンダーの異母弟は叛意の意思無しと兄に忠誠を誓うことでお家騒動は幕を閉じます。その後二人は式を挙げ、後に第二子である王女・アンナニーナが産まれすっかり子煩悩になったアレクサンダーと賑やかな皇帝一家の様子が描かれてお終い。皇太后と宰相の企みなど事件の顛末などは敢えて記載していません。興味がある方は読んでみてください。丁度コミカライズ版の1巻ももうすぐ発売ですし、電子版だと文庫より400円近くお安く読めます。所謂シークレットベビーものでありますが、実は続編も出ていてアレックスがヒーローです。しかも、父親に続き彼も同じ状況に(オイオイ)続編にも20数年後のアレクサンダーとロザリンデも出ていたり。評価:★★★★☆とにかくエッチシーンが多いため、内容としては割とシンプルなお話です。
2022.10.01
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2018年12月刊角川ジュエル文庫著者:すずね凛さん王弟殿下っ!新婚とはいえ絶倫すぎますっ!舞踏会でシンデレラのように見初められた私。結婚したら回数も濃度も限界突破の激甘H。晴れておめでた、ロイヤルベビー誕生!愛妻家な夫はパパになっても完璧!!子育てに悩む私を優しく受けとめてくれて。そんなしあわせママに信じられない悪夢が!悪い王様が横恋慕!?私達を引き離そうと!?家族のピンチ!パパは「強い父」に豹変!!! ↑楽天ブックスより、内容紹介文引用発売日に購入してます。久しぶりに読み返しました。王弟殿下に見初められて輿入れした男爵令嬢が陰謀に巻き込まれるお話。ここからネタバレと感想。ド・オートゥドイユ男爵家の一人娘であるマジョレーヌは今年十五歳となり、晴れて社交界デビューの日を迎えた。慣例として、デビューする令嬢達は国王陛下に拝謁を賜るのが習わしであるのだが、あろうことか美しいマジョレーヌは王に気に入られ、夜伽を命じられてしまったのだった。国王・フランソワは好色な人物らしく既に何人もの側室がいると言うのに、十五になったばかりの自分にまで伽を命じて来るとは。マジョレーヌは怖くて逃げだしたい気分であったが、国王の命に逆らえるものなどこの国にはいない。絶望感でどうにかなりそうな彼女を救ったのは王弟アンドレアであった。彼は真っ青なマジョレーヌを連れ出し、体調を崩したようだと王に告げると彼女に帰るよう促した。今夜の王は酒を飲み過ぎていることもあり遺恨は残らないだろうとの判断だったようだが、おかげで彼女の貞操は守られたのだ。兄弟でありながら肥満体系の王とは似ても似つかない美男子のアンドレアには元々好印象だったマジョレーヌは、この一件ですっかり彼に心奪われてしまったのだった。翌日、王宮からマジョレーヌに呼び出しがかかり男爵家は大騒ぎだったが、通された一室で待っていたのはアンドレアであった。彼は昨夜の途中退出は王も気にしていないので咎めの心配はいらないと告げ、そればかりか彼女に軽々しく夜伽を命じた兄の非礼を弟として詫びてきた。しかも、今日呼び出された理由はもう一つありアンドレアはマジョレーヌに自分の妃になってほしいと言うのだ。内心では天にも昇る気持ちであったが、自分はしがない下級貴族の娘である。身分違い過ぎて周りも黙っていないのではと遠回しに告げると、オートゥドイユ男爵家は家格は低くとも歴史はある家柄なので問題ないはずとのこと。そんなマジョレーヌもアンドレアに憧れ、恋をしていたのだ、そこまで言われれば断る理由もない。かくして二人の交際はスタートし、そう日も経たないうちに婚約も決まったのだった。二年後、マジョレーヌが十七歳になり二人は式を挙げた。彼女が王宮での生活に慣れ始めた頃に懐妊が発覚し、かなりの難産ではあったが無事に長男のドミニクを産んだ。王弟夫妻は仲睦まじく、親子三人幸せに暮らしていたが、ある日以前から危惧されていたこの国とハーブス帝国との戦争がついに始まってしまったのだ。騎士団長を務めているアンドレアに王から出征の命が出て、師団を率いた彼は戦場に赴いて行ったのだが、三カ月後彼は戦場で行方不明になったと報告がもたらされた。敵に追い詰められて殿を守っていた彼は崖から転落したらしく、くまなく近辺を捜索したが遺体は見つかっていない。そのことから、もしや敵前逃亡したのではと不謹慎な噂まで出る始末。マジョレーヌは清廉な彼は絶対にそんなことはしないと息子と共に夫の帰りを待ち続けた。アンドレアの行方不明の報から二カ月後、膠着状態のため戦争が長引くのは双方得策でないと一旦休戦条約が結ばれ、続々と兵士たちも帰国の途に就いた。生死不明の夫の帰りを待つマジョレーヌの元に、ある日国王が訪れると徐に自分と再婚しないかと持ち掛けてきた。実の弟だと言うのに、もう死んだ体で無神経な提案をする王にマジョレーヌは内心怒り心頭であったが、アンドレアは絶対に生きているからときっぱり断った。そういえば、ドミニクを妊娠していた際にも王は彼女にアンドレアとの結婚に対して思う所があるようなことを言っていた。本来ならばマジョレーヌは自分の側室に迎えるはずだったのにと呟かれて当時はゾッとしたものだ。王は七人もの側室を抱えているが、誰一人子を授かっていない。妃全員に問題があるとは考えにくいのだが、すぐに子を授かった弟夫妻がどうにも羨ましいようだ。マジョレーヌならば自分の子を宿せるのではと思っている風なのが何ともおぞましい。王もまだ三十そこそこなのだから焦る必要もないだろうに、世継ぎについて重臣たちからせっつかれているのかもしれない。その日、傷病兵たちが詰めている教会へ炊き出しのボランティアとして訪れたマジョレーヌは、ボロボロな姿になりながらもなんとか帰還したアンドレアと再会を果たした。崖から落ちた際大けがを負った彼は、たまたま通りかかった遊牧民に助けられ手当てを受けた。どうやらショックで一時期記憶喪失になっていたようで暫く遊牧民たちに世話になっていたのだが、先日ついに休戦条約が結ばれたと聞き及んだ彼らがこの国まで送ってくれたのだと言う。たまたまこの教会に入り、マジョレーヌと一緒に来ていたドミニクの声を聴き全てを思い出したのだそうだ。国民にも絶大な人気のアンドレアの帰国には皆大喜びで、再会によってマジョレーヌの不安も払拭されるはずだった。だが、今度は彼に国際法違反の嫌疑がかけられたのである。戦争の最中にアンドレアの師団が捕虜とした帝国兵を惨殺したと言うもので、ハーブス帝国皇帝から訴えられたものだった。マジョレーヌはそんなこと彼がするはずがないと確信していた。アンドレアは常々騎士や兵士たちに清廉潔白であるよう説き、自分にも課している。戦争中でも略奪の類は一切禁じていたし捕虜の扱いは丁重にと言い含めていたのだ。相手側はどういう意図があってアンドレアを告発しているのかは知れないが、どうにも陰謀の匂いがする。だが、この場では濡れ衣だと騒ぎ立てるのは得策でなく、アンドレアは大人しく捕縛されて行った。すぐに無実は証明されると思われたが、何故か碌な取り調べすらせず略式裁判に持ち込まれ、彼の身柄は帝国に引き渡されることになってしまった。アンドレアは現国王の王弟である、王族に対してあまりにも横暴なやり口であるが帝国に引き渡されてからでは手の打ちようがない。最後の手段として王にアンドレアを助けてくれと頼み込んだ所、彼と離婚して自分の妃になるならば何処かへ逃がしてやろうと取引を持ち掛けて来た。このままではアンドレアは確実に死刑になると脅しをかけられ、ついに彼女はその申し出を受け入れるのだった。王は約束通り、アンドレアが囚われている牢のカギを渡してくれた。マジョレーヌは面会の際にこっそりそれを渡すと、内心で彼に別れを告げ無事逃げおおせてくれるよう願った。アンドレアは戦死したこと、未亡人になったマジョレーヌは王の妃として迎えられる旨合わせて発表されたが、彼女にしてみればこれからは地獄の日々の始まりである。ドミニクは王太子になると言うけれど、王に懐く様子が一切なく結婚の宣誓書のサインの際も泣き通しだった。だが、彼女のサインの番になった時、その結婚に異議を唱えるべくアンドレアが飛び込んできた。彼は逃亡したと見せかけて、味方する多くの者たちの協力によってこの陰謀の真相を突き止めたのだ。ハーブス帝国は長年経済的に困窮しており、先頃の戦争は更にその首を絞める結果となった。泥沼化する前に休戦になってホッとしていた所、ロゼナルド王国の王から経済支援の打診が来て皇帝は一も二もなく飛びついた。ある犯罪をでっち上げてくれさえすればいいとのことで、言われた通りにしたのだが、帰国の際騎士団に包囲されて皇帝は捕まり洗い浚い白状させられてしまったのだった。フランソワは凡庸で長子だと言うだけで国王となった人物だ。だが、影では見栄えよく優秀なアンドレアを王にと推す声も少なくない。しかも弟は自分が目を付けた少女を横から掻っ攫い妻にした挙句、あっという間に子まで成した。王はいつしか弟が妬ましくて堪らなくなったのだ。そこで彼はアンドレアを戦争の最前線に赴かせあわよくば戦死してくれるのを願っていたのだが、怪我を負いつつも弟は無事帰還した。こうなれば罪でもでっちあげるしかないとハーブス帝国皇帝に金をチラつかせて協力させたのが今回のあらましである。いくら国王とは言え王族殺害を図ったことは重罪になる。潔く王位を退くのが得策なのだが、最後までフランソワは抗いドミニクを人質にしようとしたものの結局は取り押さえられることとなった。その後、表向きではフランソワは健康上の都合で退位したと発表され、残りの人生は王室所有の別荘にて隠遁生活を送ることになる。王位はアンドレアが引き継ぎ、ハーブス帝国とは和平協定が結ばれることとなった。王妃となったマジョレーヌは王となった夫を支え、ドミニクを王太子として立派に育てると心に誓うのだった。今回は下級貴族の娘のヒロインが王弟殿下であるヒーローに見初められ王子妃になったお話でした。幸せな暮らしも義兄の横やりによって引っ掻き回され、何か月か離れ離れになって再会叶ったと思えば陰謀に巻き込まれてヒーローは投獄の憂き目にと言う、結構な波乱万丈ぶりです。凡庸な兄が優秀な弟を妬んでという件は、割とありがちな理由ではあるけれど共感もされやすいのかな。兄弟とは言え、必ずしもそりが合うとは限らないですし。まあ、心情は理解できてもそれを行動に移しちゃうのはやっぱりイカンのです。結局ヒロインだけでなく、悪巧みのせいで王位まで弟の物になってしまったのでした。なんか、教訓になりそうなお話だったな。そんな中、ヒーローとヒロインは最後までラブラブだったので、幸せそうで何より。評価:★★★☆正直、可もなく不可もないストーリーです。この作家さんなので安定した面白さはあるんですけど・・・。
2022.03.13
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2016年11月刊角川ジュエル文庫著者:白ヶ音雪さん冷酷で有名な怖~い皇帝陛下が私をご所望!?死をも覚悟で陛下の部屋に入ったら──私をお嫁さんに? 一目惚れだったなんて!!コワモテだったハズが初恋のように一途!私の前でだけ、きゅんきゅんモードに豹変です?キスも、愛撫も、想いが詰まってじっくり濃厚vそんな愛され新妻ライフどっぷりだったのに、予想外のきっかけで、浮気を誤解され!?え……! 動物にまで嫉妬ですか、陛下っ!身分差・年の差(約20歳)・新妻溺愛☆全部入り!! ↑楽天ブックスより、あらすじ引用リンク先は電子書籍になってますが、先日の購入作にて紹介した文庫です。イラスト担当の方のコミカライズ版が長らくピッコマの恋愛、TL部門でトップ10入りしていたので、そちらの方を目にされた方が多いかも。タイトルとあらすじはラブコメちっくなれど、中身は結構シリアスです。孤独な皇帝に娶られた不遇ヒロインのお話。ここからネタバレと感想。エルレバッハ領公の長女であるリリアーネは、継父に疎まれ離宮暮らしを余儀なくされていた。彼女の元にはたまに母から衣服などの差し入れが届けられてはいるものの、リリアーネは普段家族が暮らしている領館への出入りを禁じられている。そのせいか異父妹のクローディアとは幼少時に比べるとめっきり会う機会も減っていたが、先日漸く顔を見せたと思ったら立て続けに嫌がらせをされて、そこまで嫌われているのかとリリアーネは悲しくなった。そんな彼女に優しく接してくれるのは護衛騎士のシルヴィオと彼の祖母でありリリアーネの世話係のばあや、メイドのアンヌ、そして領地の森にいる狼たちだ。その日はリリアーネの17歳の誕生日であるのだが、やはりそんな日ですらも領館に出向くことは許されず、離宮でささやかな誕生日会が開かれた。しかも今日はわざわざ侍従が出向いてきて絶対に領館には近寄るなと念を押しに来るほどで、不思議に思っているとどうやら館に皇帝陛下が視察で訪れているらしい。今頃は盛大な歓待の宴の準備中であろうことは判るし、継父はリリアーネを嫌っているから陛下に彼女を会わせたくないというのが本音なのだろう。継父は招待客から晩餐会を欠席する長女のことを尋ねられるといつも、社交嫌いで陰鬱な性格の為出たがらないのだと説明しているようだ。侍従にくれぐれも言いつけを守るようにと言い含められはしたが、どうせ自分は陛下の前に出られるようなドレスも持っていないのだから。だが、年頃と言うこともあり華やかな席に憧れもあったので、本音を言えば晩餐会にも出てみたかった。夜になり、リリアーネが狼たちを呼び寄せて鼻歌を歌いながら戯れていると、背後から声を掛けられた。振り向くと三十代半ばに見える青年が立っていて、服装からして晩餐会の招待客のようだ。思わず恥ずかしくなって立ち去ろうすると、青年が目元を押さえて呻いた。見ると火傷の痕のようで、瞳は珍しいオッドアイをしている。最近できたものではなく昔のものだと彼は言うけれど、確かに雪深いこの地では古傷の類にはキツイであろう。そこで一旦部屋に駆け戻ったリリアーネはばあやお手製の火傷に効く塗り薬を渡すと、その場を立ち去ったのだった。翌朝、離宮を訪れた母から誕生日のプレゼントだとドレスや装飾品を渡されてリリアーネは大層喜んだ。早速着てみてはしゃぐ彼女にシルヴィオは感慨深そうであり、彼女に前領公の言葉を覚えているかと問いかけた。リリアーネの実父はシルヴィオを重用しており、彼女が年頃になったら彼と結婚させてエルレバッハ家を継がせるつもりであった。シルヴィオのことは勿論好きだけれど結婚となるとやはり少し考えてしまうリリアーネだったが、実父の願いを彼は叶えるつもりのようだ。だが、その夜リリアーネはあの青年に夜這いをかけられたのである。幸い生娘だと知ってすぐやめてくれたものの、彼女はかなりの精神的ショックを受けたのだった。その数日後、突然離宮に継父がやってきてリリアーネを皇帝に捧げると告げられた。あの晩餐会の夜、リリアーネを見初めたので貰い受けたいと言われたとかで継父は大興奮だった。とは言え、先日シルヴィオから求婚され実父の願いであるからと受け入れる決心をしたと言うのに今回の話はあまりにも寝耳に水だった。取り敢えず、自分はシルヴィオと結婚するつもりだからと伝えたものの、当然の如く継父は却下した。皇帝陛下のお召しを断れるわけはないだろう、と。だが、皇帝・バルトロメウスと言えば世俗に疎い彼女でさえも冷酷無比で血も涙もない男と聞き及んでいる。あの夜這いと言い、どんな扱いを受けるか。思わず嫌だと訴えたけれど、継父に手酷く殴られてしまった。しかもリリアーネの決心を促すためにばぁやたちの首を跳ねると脅しをかけたばかりか、皇帝から聞き入れない場合は領民全て皆殺しだと命じられていると畳みかけられれば残された選択肢は一つしか無い。斯くしてリリアーネは皇宮に上がることが決まったのだった。この話が決まった途端、継父によりシルヴィオはリリアーネの護衛騎士の任を解かれクローディア付きとなった。しかもクローディアたっての希望で彼との婚約が決まり、彼女が十五歳になったら式を挙げるのだそうだ。出立の際、こっそりシルヴィオが会いに来て逃げるなら最後のチャンスと言われたが、後の報復を考えれば付いて行けるはずもない。彼女は狼たちとも別れを告げると馬車で王都へと旅立って行った。その頃、バルトロメウスはリリアーネの到着を待ちわびていた。あの日エルレバッハ領公一家の媚び諂いにうんざりして抜け出した際に出会った美しい少女に一目惚れした彼は領公に身元を尋ねると歯切れ悪く義娘だと答えた。希望されるなら一夜の相手をと言われて乗り気になったものの、怖がられただけで大失敗だと判った。どうも義娘ということで蔑ろにされているらしい事がすぐに知れ、晩餐会にも性格云々のせいなどではなく敢えて出席させていないのだと気付いた時には怒りが沸いたものだ。ならば自分の妃として迎えれば良いのではと思い立ち、領公に結婚の打診をしたのだが・・・。到着したリリアーネは顔合わせの際かなり怯えていた。バルトロメウスは努めて優しく接したつもりだったのだが、彼女のこのビク付きようは一体。式は日を改めてということで、一先ず婚姻の証明書にサインをすると二人は夫婦となったのであった。初夜の際、父母に持たされた何とも煽情的な夜着にバルトロメウスが憤慨したことにより、二人の間に今回の婚姻について齟齬があることが判った。当然バルトロメウスは皇妃に迎えるべくリリアーネを召喚したのだが、継父の言い方もあってか彼女は慰み者という認識だったらしい。サインもしたのに?と聞かれると側妃の契約だと思っていたのだそうだ。あれは結婚の宣誓書だと説明すると漸く話が通じたようであったが、今度は自分のようなものが皇妃だなんてと恐縮する始末。とは言え、側妃になるのを承諾しなければ領民共々皆殺しという命も継父の虚偽であることが判りホッとした。人でなし扱いされたバルトロメウスの方はエルレバッハ領公の嘘八百ぶりには怒り心頭のようだったが。初夜はリリアーネの決心がつくまで待つことになってしまったが、彼女のために細々とした心遣いを見せるバルトロメウスは優しい方と言われて舞い上がりつつ、領地から付いてきた彼女の侍女を全員エルレバッハへと返した。どうやら侍女たちがリリアーネの悪口を言っており、たまたま耳にした彼の怒りを買ったようだ。新たに侍女に就いたラーナの話によれば皇帝による皇妃の溺愛ぶりは皇宮内でも有名らしい。思わず気恥ずかしくなるが、確かにバルトロメウスは優しくよく気遣ってくれる。アレルギーの発作を起こした時の慌てぶりはすさまじく、自分の方が驚いてしまったほどで如何な彼女でも愛されているのが判る。そんな日々が続いたある日、城下町の祭りにお忍びで出掛け楽しい時間を過ごした二人はその夜結ばれた。それを機にバルトロメウスの溺愛は増すばかり。リリアーネも彼を愛するようになり、幸せを感じていたのだが、「シルヴィ」と寝言を発した事でバルトロメウスにあらぬ疑いを抱かせてしまったのだった。何となく彼が余所余所しくなったように思いつつも、原因が判らず悶々としていたリリアーネの元にシルヴィオが訪れた。クローディアが十五歳になり、式の日取りが決まったので彼女の様子見がてら自ら招待状を持参したのだと言う。そんな二人の姿を見てバルトロメウスは何とも不機嫌そうであった。すぐにその場を辞していった彼にリリアーネが戸惑っていると、シルヴィオがあの出立の日の様に再び二人で逃げようと進言して来た。皇帝はちっともあなたを大切にしていないようだからと。もうバルトロメウスのことを心から愛しているリリアーネはその誘いには乗らなかったけれど、この語らいはバルトロメウスに疑惑を植え付けるのは充分だったようだ。その夜、手酷く彼女を抱いた彼は翌朝詫びると、エルレバッハに帰れと呟いた。二日後、シルヴィオと故郷に帰ることとなったリリアーネだったが、やはりバルトロメウスを思いきれずに彼の元に止まると決め、皇宮へと戻って行った。シルヴィオが好きなのではと思わず尋ねる彼に、リリアーネは、きっぱり否定するとバルトロメウスの傍に居たいのだと告げたのだった。一週間後、二人はクローディアとシルヴィオの結婚式に出席するためエルレバッハに赴いた。そこで世話をしていた狼たちを紹介され、そのうちの一匹が「シルヴィ」だと知り、あの寝言がこの狼と知って複雑なバルトロメウスであった。その後、家族に挨拶した際、あれほど嫌っていた義娘が自分より身分が上になって父は悔しそうであったが、皇帝の手前何とか不平は飲み込んだようだ。翌日、領館の大広間にて結婚式が執り行われると、リリアーネは四カ月後に予定している自分たちの挙式に思いを馳せていた。まだ蟠りもあるけれど両親は当然招待するし、シルヴィオと異父妹だけでなく、ばあややアンヌも呼んで祝福してもらうのだと妄想するだけで嬉しくなる。だが、そんな妄想を打ち砕くような悲鳴が上がった。声からするにクローディアのようだが、隣にいるシルヴィオが剣を握りエルレバッハ領公夫妻を切り伏せて返り血に染まっていた。周りを見ると彼とリリアーネ以外の招待客達は毒を盛られたようで皆もがき苦しんでいる。当然隣のバルトロメウスも。シルヴィオは、リリアーネの実父である前領公に忠誠を誓っていた。だが、その人は弟である今の領公と密かに通じていた夫人の裏切りによって命を落としたのだった。一時はリリアーネを見守り、前領公の願い通りに彼女と結婚すればその恨みも忘れられると思っていた。なのに現領公は自らの保身のために皇帝に彼女を差し出してしまったのだ。思えば、このクローディアとの結婚式は夫妻の隙を狙うには打って付けであり、リリアーネが皇帝を伴い里帰りするのもまたとないチャンスであった。バルトロメウスはリリアーネを奪った憎い存在という他に、自分の異父兄弟だという理由からだった。バルトロメウスの母は信心深く、オッドアイで産まれた彼を不吉だと疎んじていた。幼い彼の食事に毒を盛り殺害を目論んだことも数知れず、バルトロメウスの顔に焼き鏝を押し付け消えない痕を残したのも皇妃であった。だが、流石にやり過ぎて彼女は前皇帝に離縁された挙句皇宮から追い出された。実家にいた頃から付き従っていた侍女と共にエルレバッハへ流れ着いた元皇妃は、その地でならず者たちに乱暴された結果産まれたのがシルヴィオである。元皇妃は誰とも知れぬ男の子であるシルヴィオのことも嫌い虐待していた。彼女が亡くなる前はおそらく精神を病んでいたのであろうが、年老いた侍女と二人でバルトロメウスへの恨み言を吹き込まれ育った彼がまだ見ぬ異父兄を憎んだのは無理からぬことであろう。この復讐劇の経緯を聞くに、リリアーネは漸く察した。もしかしなくとも元皇妃の侍女と言うのは、ばあやなのは間違いないだろう。彼らは祖母と孫などではなく主従関係だったのだ。ばあやは薬作りが得意でありアンヌもばあやの親戚の娘と耳にしている。恐らく事に至るための準備に彼女達も手を貸しているいるはずだ。以前、自嘲気味に彼が自らの生まれをリリアーネに話して聞かせたことがあったが、まさかそんな背景があったとは。そして、恨みに凝り固まったシルヴィオ少年の心を救ったのが幼いリリアーネとその実父である前領公だったのだ。だが、シルヴィオがが復讐の仕上げとばかりにバルトロメウスに切りかかろうとしたとき、彼を守るために飛び出したリリアーネが握っていた短剣によって腹部を刺されたのだった。シルヴィオは傷付いた体でその場を去り、後に気付いたのだが離宮にいたばあやとアンヌも姿を消していた。バルトロメウスと毒で苦しんでいた招待客達は幸いにも解毒効果のある薬草が豊富に自生している地であったために大事を逃れた。彼らがそんな簡単に解毒薬が手に入る毒を使ったのは、もしかしたらシルヴィオはエルレバッハ領公夫妻以外の殺害は考えていなかったのではと、ふとリリアーネは思う。バルトロメウスへの積年の憎しみもあったのだろうが、彼は愛するリリアーネの手によって終わらせたかったのかもしれない。でなければ騎士である彼が安易に素人の彼女に刺されたりはしないであろう。エルレバッハ領は残されたクローディアが継ぐことになるけれど、まだ異父妹は十五歳であるためバルトロメウスに頼み、人材を派遣してもらうことになり自分も出来るだけ力を貸そうと心に決めるのだった。事件から一年後、バルトロメウスとリリアーネは結婚式を挙げた。当初の予定より延びたのは両親の喪に服していたからである。将来の二人は二男一女の子宝に恵まれ、国民の手本になるほど仲の良い夫婦であった。で、〆タイトルで損してると思う程、ドラマチックでシリアスなお話でした。まあ、ラブコメっぽいシーンも無くはないんですけど(主に妃萌えしてるバルトロメウスのシーンとか)あらすじも結構ラブコメ調なので、これで購入決めた方は読んでビックリしますよね(^_^;)シルヴィオは割と序盤から怪しい雰囲気醸してたものの、ここまでやるとは思わず、あの展開にはビックリ。ばあやとアンヌが一緒に消えたっぽい説明からすると、きっとどこかで生きてるんじゃないかな。結婚祝いのパレードの時、リリアーネが見つけた人物は彼で間違いないはず。それにしても、作中のムカつき具合ナンバー1だった継父はあっさり退場しちゃったなぁ。リリアーネは残された異父妹を助けるために尽力してるようだけど、果たしてあの性格の悪い子が改心するんだろうか。まだ十五なら生まれ変われるってとこなのかもだけど、お姉ちゃん、人が良すぎるよ。評価:★★★★★タイトルで敬遠せずに読んで損無しなお話です。
2022.03.10
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2019年7月刊角川ジュエル文庫著者:仙崎ひとみさん「旅の道中、悪者に襲われ大ピンチの私!助けてくれたのは野性味あふれるオジサマ。優しくて、逞しくて、オトナの余裕たっぷり。22歳も年上の彼だけど好きになってしまって……。だめ! 私には国王陛下と結婚する使命が!ところが王宮にまでオジサマが追ってきて!?えっ!? オジサマは退位した元国王?情熱的な求婚の果て──甘く淫らな夜を。けれど国王陛下も新妻に横恋慕してきて!?ワイルドな年上夫の包容力に甘えちゃう新婚ラブ★」↑楽天ブックスよりあらすじ文引用イラスト担当のDUO BRANDさんに最近ハマって購入。文庫版と迷ったのだけど電子書籍版のみの番外編があると言うので今回はkindleで読了。ここからネタバレと感想。ある日、ラウル王国の王女・アミーリアは、アスティア王国からの結婚の打診により、今年二十歳になる国王・エドヴァルトの花嫁候補として招待されます。飽く迄まだ「候補」と言うことらしいが、うすぼんやり気味なアミーリアに対してやや過保護な両親と兄はこの話を断りたいようだった。だが、ラウル王国はアスティア王国の属国、これはほぼ勅命のようなものでこちら側からの拒否などもっての外。王女として産まれた以上、政略結婚は避けられないのだからと逆にアミーリアの方が家族を慰めると、了承の返信をするよう頼むのでした。数日後、アスティア王宮へ出立する際、同行するはずだった兄王子のルシアンが当日急な胃腸炎を患い療養することになってしまった。アミーリアは一人で向かうことになり不安を覚えるも、気心の知れた女官候補のエイミーが世話係で付くことになりホッとするのでした。馬車で約8時間ほどの道のりの為、護衛騎士と御者が一人ずつと言う一国の王女らしからぬ質素さだったが、国境間近で10名ほどのならず者達に取り囲まれてしまいます。護衛の騎士も一人では手が回らず、エイミーが機転を利かせてアミーリアを逃がしたが、地の利があるならず者達に早々に捕まった彼女は、間一髪のところで、無精ひげの男性によって救われ事なきを得ます。あっという間にならず者たちを倒した男は、囮になったエイミーが襲われていた場面に丁度出くわして連中を片付けると、エイミーに頼まれてすぐにアミーリアの救出に来たのだそうだ。その道すがらで御者と騎士も助けてくれたらしく、感謝してもしきれないと彼女達は男に礼を述べるのでした。男はバーンと名乗り、ぬかるんだ道を逃げ回り泥だらけになったアミーリア達に休息と風呂が必要だろうと近くの村で宿をとるよう薦めた。そして、最近この辺は盗賊や追剥が多いから気をつけろと忠告して去ろうとするとエイミーが引き留め、彼の腕を見込んでアスティア王国までの同行を頼みます。宿代を持つと言うことで交渉に応じたバーンはよく見ると中々の美丈夫で話し上手な彼に、ほんの一晩の交流だったがアミーリアは胸をときめかせていました。何だかんだと王宮近くまで同行してくれたバーンに、また会えるかもな、と含みを持たせた言い方で別れを告げられたアミーリアは何とも寂しい気持ちになるも、親睦会をすっぽかしてしまった詫びをエドヴァルト王にするべく王宮に急ぐのでした。運命の出会いを果たしたアミーリアとバーンですが、あらすじの段階で思い切り先の展開をネタバレしてるのもどうかと(苦笑)まあバーンの正体はそういうことです。エドヴァルト王に謁見したアミーリアは事情を話し許しを請いました。王は事情が事情なので問題にはしないと約束してくれたのでホっとするも、宰相のマーカムは怒り心頭のようで気が重い。しかも、結婚の打診と聞いていたのにアミーリアだけが呼ばれていたのではないと知り衝撃を受けます。大小様々な国の姫君たちがライバルとは弱小国の自分など選ばれる可能性はゼロに等しい。到着早々に敗北の色濃い状況に、何故かバーンを思い浮かべるアミーリアでした。親睦会用のドレスがダメになったのも結構な痛手で、エイミーが手を尽くして城下町で色々調達してくれたが、遅刻してしまったことで姫君たちの反感を買ってしまったらしく、アミーリアは何かと嫌がらせされるように。その上何故かエドヴァルト王に気に入られてしまったようで、それが姫君たちの嫌がらせをエスカレートさせる原因になっていた。そのせいで失態を繰り返す彼女に宰相の態度もぞんざいになり、さっさと失格にして追い出そうとしているのが見え見えで何とも居た堪れない。そんな時思い出すのはバーンと過ごした宿屋での夜とアスティアまでの馬車でのやり取り。また今日もやらかしてしまって王宮内にある森を泣きながら走っていたら、そこで夢にまで見たバーンと再会。彼もまたアミーリアを忘れられずにいたそうで、森の奥にひっそり建てられたガゼボで二人は結ばれます。アスティア王宮はアミーリアにとって忘れられない場所でした。十年前、家族でアスティア王宮に招かれた彼女は前王に出会い、子供ながらに恋をしたのでした。今思えば初恋だったが何故こんな時に思い出したのだろうと不思議に思うが、それ以前に純潔を他の人に捧げてしまった以上、エドヴァルト王の花嫁候補の資格はもう無い。辞退しようと決意する彼女にバーンは何も心配しなくてもいいと告げるのでした。翌日、アスティアまでの旅路で出会った人に恋をしたので、候補を辞退したいと申し出ると宰相に属国の分際でと怒鳴られはしたが、決意は固いと悟ったエドヴァルトは受け入れます。だが怒りの収まらない宰相が更に口撃を加えようとした時、それを止めたのは髭を剃り正装に身を包んだバーンでした。彼の素性を王宮内の誰もが知っているらしく、宰相ですら遜ったのを見てまだ状況の飲み込めないアミーリアは戸惑うばかり。やがて口を開いたエドヴァルトにより、バーンは彼の叔父でありバーンハルトと言うこの国の前国王だと判明します。王位を退いても未だかなりの権力を持っているらしいバーンハルトは、アミーリアを自分の妃にすると宣言し、彼女もまたそれを受け入れるのでした。バーンさん、さては出るタイミングを狙ってたなと言わんばかりの登場ですね。アミーリアにとっては初恋の人で更に今では愛してる人からのプロポーズだから受けないはずもなく、宰相も相手が前王ではということで態度を変えます。まあこれくらい切り替えが早くないと宰相なんて務まらないんでしょうな。でも、バーンハルトと結婚した際アミーリアはどんな地位になるんだろう、一応皇太后?この宣言の一か月後に二人は式を挙げ暫くは王宮住まいとなるのだが、バーンの話ではエドヴァルトの治世になってからアスティア王国内では地方に行くほど治安が悪く盗賊の類も増えているのだそうだ。退位した彼はそんな地を旅しつつ対処してきており、アミーリアと出会ったのもその旅の途中のことだった。いずれ落ち着いたらまた旅に出るつもりだからアミーリアにも付いてきて欲しいと言う彼に勿論と答える彼女でしたが、ここ最近改めて歳の差二十二歳という現実が重くのしかかっていた。自分は何て子供っぽいんだろうと本人としては大まじめな悩みで憂うアミーリアの姿にエドヴァルトが横恋慕してくるのだけど、あっさりバーンによって回避されアミーリアの悩みも解消されるのでした。数か月後、アミーリアの懐妊がわかり、そろそろ旅立とうと準備していたバーンの出立は先延ばしになって、了。しかし、結婚してからもバーンおじさま呼びはさすがに旦那様が可哀そうだよ、アミーリア。40歳と18歳の歳の差夫婦ですが、バーンが結構若々しいので、歳の差の話題が上がる度、そういえばおじさま年齢のヒーローだったっけなと思うことしばしば。特に大きい事件のようなものも無く、歳の差カップルが恋愛成就させるだけのお話でした。それで460ページくらいあるので、キツイ人にはキツイかも。あと、アミーリアの性格が恐らく賛否評価が分かれそう。評価:★★★☆この作家さん、お針子令嬢は面白かったし大筋は悪くないんですが・・・。
2022.02.08
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