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2024年9月刊こはく文庫著者:小日向江麻さん陽キャで肉食系な彼に浮気され捨てられてから、恋愛から遠ざかっている保田美澄。そんな彼女には最近、気になる異性がいた。それは同期の高橋颯真。控えめで穏やかな性格をした颯真との交流は、元カレによって傷つけられた美澄の心を癒やしてくれる。しかも普段無口で他人に無関心な颯真は、美澄に対してだけ親し気な様子を見せてくれるのだ。絵に描いたように完璧な草食系男子である颯真となら、また幸せな恋愛をできるかもしれない。そう思った美澄は一念発起して颯真に告白をする。すると颯真はあっさりOKをくれ、二人は晴れて付き合うことに。しかし、いざ恋人になってみると颯真の印象がすこし違う。メッセージは情熱的だし、二人きりになると積極的にスキンシップを取ってくる。今までの草食系っぽさが薄れているのだ。「こんな人だと思わなかった……」 颯真の変化に戸惑う美澄だったが、肉食系っぽい颯真にもなぜかときめき始めてしまい……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 保田美澄=IT会社に勤める会社員。 過去の失恋から肉食系より草食系が好みに。 高橋颯真=美澄の同期。物静かな草食系男子。IT会社に勤める美澄は、同期入社の高橋に片思いしていた。そんな彼とは同期のよしみで社食でたまにランチをする仲ではあるのだが、実際には知り合い以上友達未満な関係だと思っている。何せ無口な彼は話しかけても相槌を打つ程度で一方的に話すのは美澄の方ばかり。これは脈無しかなぁと内心がっかりしかけた所、彼女の趣味でもある映画鑑賞の話題には食いついて来た。その話題のついでに美澄のことを友だちだと思ってくれていたのも判り、嬉しくなったが何とも複雑な心境だ。その話を人事部の同僚で友人の古都花にすると、私の見立てでは高橋君は絶対に美澄に惚れてると思うけどねぇと言い、今は交際してる人もいないみたいだし、アタックするなら今でしょと発破をかけられた。励まされた美澄本人も、言われてみればそうかも一念発起。土曜日に行ってみたい店があると高橋にメールを入れるとOKの答えが。休日に会う彼は髪型も服装もいつもと違って彼女もドキドキ、お洒落なカフェバーでランチを食べ、カクテルを飲んだ美澄は思い切って、今日はどうして来てくれたの?と尋ねた。すると保田さんと話すのは楽しいからという返事に、私、高橋君のことが好きなの!と告白をかました彼女に高橋も驚いていたが、俺も好きだよと言われ、内心でガッツポーズ。古都花の言ったとおりだった。よくよく聞けば、彼も長らく美澄に想いを寄せてくれていたらしい。だが、中々告白するチャンスが無かったと。女の子の方から言わせるなんて、と謝られたが両想いだと判ったのだし、彼に任せてたらいつになるやら。やっぱり草食系なんだなぁとうっとり。それならば、明日も休みな事だし交際記念でとことん飲もうと店を変え23時近くまで飲んだ後、ベンチで酔い覚まししていた二人。帰りたくないなぁと溢すと、高橋からいきなりキスをされ、美澄と呼び捨てにされたのでビックリ。連れて行かれたのは彼の部屋。なんだか豪華なマンションでもしかしてお坊ちゃま?と腰が引けているとベッドに押し倒されあれよあれよという間に一線を越えてしまった。まぁ、初日とはいえ交際しているのだからいいんだけれど、さっきから彼が強引で戸惑ってしまう。言葉遣いと言い、無口の割に歯の浮くようなことベラベラ喋るので、美澄は過去の苦い記憶を呼び起こされていた。その夜、夢に見たのは大学生時代に付き合っていた恋人のこと。イケメンで優しい彼は何かといえば美澄を褒め称えていた。でも、それが嘘っぱちと知ったのは彼の浮気が発覚した日。誘われれば恋人がいようと浮気に走る、とんだ陽キャに良いように遊ばれた挙句、開き直って責める美澄を嘲り棄てた男。初カレでこれはキツイ。おかげで暫く恋とは遠ざかっていたのだが、入社式で彼女は運命の人と出会った。しかし、交際に発展してからの高橋の言葉がどうにも元カレを連想される。陰キャだと思ったら実は陽キャだったせい?翌朝、高橋から社内で物静かにしていた理由を打ち明けられた。何と彼は社長の一人息子でいずれ跡を継ぐらしい。一応、上層部は彼が御曹司だと知っているようだが、数多い社員の中で高橋なんてありふれた名字から、社長の関係者とは思わないだろう。かく言う美澄もその一人だった。だが、気を許して多くの同僚と接すればいずれボロが出て、取り入ろうとする者も出るかもしれない。高橋は無口無関心を装うことを決め、真面目に仕事に打ち込んでいた。だが、美澄だけはどれだけ反応が薄くてもめげずに話しかけて来る。そのうち気になる子から好意に変わって事情含めいつ告白するか迷っていたのだと。要は会社では寡黙に装っていたが、実際の彼は陽キャという程ではないが普通に好きな人が出来れば調子い言葉も吐く人だったというわけね。幻滅するなんてことは無かったものの、やはり戸惑いがあるのは贅沢な悩みなのか。それでも、好きな気持ちは変わりなく、交際は順調。会社では相変わらず物静かで無口、真面目に仕事をこなす彼は周囲には陰キャに見られてるんだろうな。しかし、高橋は顔が良い。中途採用で入って来たアラサー美人・糠谷に執拗なアプローチをされている姿を見て美澄は大ショック。彼も塩対応で接していたが、美人に迫られれば浮気して当然と言う元カレの言葉を思い出してモヤモヤが止まらない。ついデート中のレストランで彼に嫌な事を言ってしまった美澄は店を飛び出し・・・。元カレが浮気を正当化するような物言いをしたせいで、高橋君もとばっちり。だけど、元カレと高橋くんは違うので、すぐに美澄を追いかけ誤解を解きます。糠谷には俺には大事な人が居るので、ときっぱり断ったと聞き、疑ってごめんなさいと美澄も謝罪。そしてどうして浮気を疑ってしまったのか、元カレのことを語るのでした。高橋は元カレの言動に憤慨しつつ、でもその別れがあったから自分達は会えたんだと思えない?と言われ、妙に納得した美澄それから数か月が経ち、古都花に交際の進捗を聞かれ、順調だと答える美澄。じゃあ結婚も間近かねぇと古都花に揶揄われ、だと良いけどね、と希望を持たせる感じで物語は幕。婚約が決まった、とか入籍した、ではなかったですが、これはこれでアリかと。こちらも割と淡々系のお話かな。評価:★★★★☆
2024.09.15
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2023年11月刊こはく文庫著者:田崎くるみさんデザイナーとして働く門沢詩音は、社内コンペで大きな仕事を勝ち取った。それはイベント企画・運営を行っているスタートアップ企業のロゴデザイン。初顔合わせは順調に進んだが、事件は打合せ後に起きた。なんと、イベント企画会社の社長・高石恵から「一目惚れしました。俺と付き合ってくれませんか?」と告白されてしまったのだ。相手は若きイケメン経営者。そんな相手が自分に一目ぼれ? 困惑する詩音に、「まずは食事だけでも付き合ってほしい」と懸命に食い下がる恵。クライアントの誘いを強く断ることもできず、詩音は渋々ながら恵と二人で食事に行くことに。ただ食事をするだけと思いきや、恵のエスコートで向かった先はハイブランドの旗艦店に高級ディナー。出逢ったばかりのハイスペック社長から贈られる過ぎたる愛に、詩音はただただ困惑する。しかしどうやら恵には、詩音に対して「一目惚れ」以上の何かしらの感情があるようで……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 門沢詩音=入社3年目のグラフィックデザイナー。 高石恵=イベント企画会社社長。詩音を見初め交際を申し込む。中土井絹香=詩音の同期で友人。 折谷洋太=詩音の同期でライバル。学生時代から憧れていたデザイナーが社長を務めるwebデザイン会社に入社して3年目の詩音。指名の仕事も徐々に入るようにはなったが、未だにコンペは緊張する。今回提出したのは最近業績を上げていると言うイベント企画会社のロゴ。緊張しきりではあったが、採用されたのは詩音のデザイン案だった。思わずガッツポーズしそうになったのを何とか堪え、先輩や同僚達のお祝いの言葉に素直に礼を言っていた彼女に突っかかる人物が一人。詩音をライバル視している同期の折谷洋太だ。この男、そこそこ優秀なのだが如何せん性格が悪い。同期入社ながら指名も入るようになった詩音を妬み何かと嫌味を言ってくる。今回のコンペもどうせまぐれだからいい気になるなと釘を刺して来るので適当にあしらっておいた。マジになって言い返せば相手を喜ばせるだけ。流石にあの言い様はムカついたので友人の絹香に愚痴ってしまったが、彼女もあいつ本当に負けず嫌いで粘着系だよねーと自分のことのように憤慨していた。実は、折谷は長年絹香に片思いしており、自分が彼女に毛嫌いされているのはあることないこと詩音が吹き込んでいるせいだと思い込んでいる節がある。単に愚痴を言われるような言動をしなければいいだけなのに本当に小さい男だ。数日後、打ち合わせのために件の会社を訪れた詩音。担当は君田と川俣という同年代の男女。この会社自体、まだ設立して5年程だそう。節目の年に合わせて企業ロゴとマークをという話が出て依頼したらしい。詩音はコンペ案以外にも少し手を加えたデザインを3つほど追加。希望も取り入れるのでと言うと二人ともやっぱりどれもいいねと大絶賛。仕事の話も終わり、話好きの川俣から雑談中に恋人はいますか?と聞かれた詩音はタジタジ。今は仕事一辺倒でと無難に答えれば、ならうちの社長がお薦めです!と熱烈なプレゼンが始まった。いや、会った事も無いのに。困り顔の詩音に助け舟を出したのは、川俣激推しの高石社長その人だった。なるほど、川俣が推すのも判る。俳優ばりのイケメン。背も高いし優しそうな雰囲気の青年だった。それにしても黒目勝ちの瞳にどこか見覚えがあるような。思い出そうとガン見していた彼女に脈ありと思ったのか川俣は大興奮。我に返った詩音がしどろもどろになっていると「あなたに一目惚れしました。結婚を前提にお付き合いしてください」と高石からいきなり告白されてビックリ。川俣は目の前の光景に打ち震えているが、どう考えても一目惚れされるような容姿ではないと詩音も自覚している。冗談かもしれないしで判断に困る。すると、先ずは僕を知ってほしいのでお返事はそれからで、と言われるがまま連絡先を交換することに。彼のフルネームは高石恵。若いと思ったが、やはり詩音の2歳上の27歳だと言う。大学卒業後に起業した会社が当たって、その容姿から若き事業家としてビジネス誌でも話題の人物。というのは川俣からの受け売りだ。高石は随分マメな性格らしく、SNSのアカウントでつながると毎日「おはよう」から始まり、昼食や仕事先でこんなことがあったなど報告してくる。そのうち食事にも誘われるようになり、高石おススメの店に感動し、お礼に詩音も家族でお気に入りの和食店にも連れて行ったりもした。一緒にいて楽しいし話も合う。ここまで来ると詩音も彼に心惹かれてると自覚も出て来た。絹香からはもう付き合っちゃいなよと言われているが、彼と自分の好き度合いに温度差がある気がしてどうにも踏み切れないでいた。そんな折、部屋でアルバムを眺めていた詩音は子供の頃一緒に遊んでいた近所のめぐちゃんを思い出していた。黒目勝ちの可愛い子だったなぁ。あんなに仲良かったのにめぐちゃんの父親の海外赴任が決まって引っ越して行った。高石の瞳を懐かしく思ったのはめぐちゃんに似てたからだ。めぐちゃん元気かなぁ。ロゴデザインの方は検討を重ね、今度詩音を交えての会議で決定するらしい。社長に報告すると、高石の方はほぼ終了となるので急で悪いがと仕事を回して来た。見れば初期に担当した会社のwebサイトのリニューアル。先方が詩音を指名して来たと聞いて俄然やる気に。だがその翌日、出社した彼女は同僚達からの冷たい視線に気が付いた。変わらず挨拶し会話してくれる者もいるにはいたものの、どうも居心地が悪い。昼休憩に絹香が誘いに来てランチしていると彼女から思いがけない話を聞いた。門沢の仕事が途切れないのは身体で担当者に取り入ってるからだ、と。当然、絹香はこんなの嘘っぱちだと怒っていた。噂を鵜呑みにしていない者たちも多い。しかし、君のことは信じているが真偽がはっきりするまで現状の仕事の担当を外れて欲しいと社長から打診され・・・。噂を流したのはこの人しかいないでしょう、で当然折谷です。彼は偶然街中で親し気に高石と歩く詩音を見かけ、あの仕事も色仕掛けで取ったに違いないと勝手に妄想。それを社内に広めたのです。でも突然担当から外れた彼女を心配して高石が社長に直談判しに訪れ、大勢の社員がいる中、あのデザイン案はデザイナーの名を伏せて送られて来たもので、一番良いと思ったデザインを選んだだけと告げます。そもそも詩音がコンペに出していたのも知り得なかったという証言にそれもそうかと皆も納得。それでもじゃあなんで個人的に彼女と会ってたんだと折谷が高石を責めたので、詩音もハラハラ。そんな時、彼が語ったのは予想外の話。しーちゃん、俺のこと本当に覚えてない?と。もしかしてめぐちゃん!?高石が一緒に遊んだあの子だと思い出しはしたものの、ずっと女の子だと思っていたことに申し訳なさ一杯。無事彼女に思い出してもらった高石は、幼馴染と再会を機に食事に出掛けたり交際に発展したら咎められることなんですか?と問われ、社長も信じると言いながら詩音を担当から外したことを謝罪。社員達からも謝られ、騒動は幕を閉じるのでした。その後、高石から昔は女の子みたいでよく間違われていた事、詩音もその一人で同性だと思われていたからこそ仲良くしてくれていると思い打ち明けられなかったと語ります。一目惚れ云々は高石=めぐちゃんだと気付いてなさそうだったから。そして、詩音がよく理想の旦那様について熱く語っていた内容を目標に仕事を頑張っていたと告げられ、高収入とか社長とか、3LDKの高級マンションに住むとか、今思えば相当恥ずかしい希望だった気がして恥ずかしい。でもそれを全部叶えた高石には恐れ入る。私は恵君より熱烈じゃないかもしれないけど、と本心を打ち明けた詩音。その後二人は正式に交際に至り、暫くして入籍。エピローグでは3年後、長男を交えた高石家の賑やかな様子が描かれて幕。おまけの番外編は高石目線の家族の話。めぐちゃん関連や噂の出どころなど、割とすぐ展開予想もついた内容でしたが、モヤモヤ度も少な目だし、ほんわかする内容だったと思います。ページ数も少なめなので軽めのストーリーが読みたいと言う方におススメ。評価:★★★★☆
2024.09.12
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2024年8月刊こはく文庫著者:にしのムラサキさん柚奈は祖母から受け継いだ小さなカフェを営んでいたが、疎遠となっていた祖母の弟が土地の半分の権利を主張してきたことにより、土地を手放さなくてはならなくなった。そんな時、柚奈に手を差し伸べてくれたのはお隣さんの4つ年上の幼なじみ、俊。老舗製薬会社の御曹司である俊は、こともなげに「柚奈のためなら、いくらでも出してやる」と言ってくれるが、幼なじみの厚意に甘えていい金額ではないと、柚奈は首を振る。すると俊は提案してきた。「だったら俺たち、結婚しようぜ」 聞けば俊は最近、周囲から結婚をせっつかれて辟易としていたらしい。まだ結婚する気はなかったが、相手が柚奈ならしてもよい。そんなことを言う俊に、柚奈は驚きつつも同意する。幼いころから仲の良い二人は、すでに家族のような間柄だ。兄妹が夫婦になっても変わりはないだろう。そんな軽い気持ちだった。しかし、いざ新婚生活がスタートしてみると、柚奈の俊に向けた感情は変化し始めて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 平松柚奈=洋風喫茶店の店主。俊から契約結婚を打診される。 浜宮俊=製薬会社の御曹司で副社長。柚奈に想いを寄せている。大好きだった祖母の喫茶店を受け継いだ柚奈。小さな店だが、常連客も多くなんとか黒字経営を維持していた。しかし、祖母が亡くなって数年経つと言うのにここに来て祖母の兄が遺産について言及し出したのだ。元々放蕩息子だったという大伯父は、つい最近親戚から妹の死を聞いたのだと言う。大伯父にも祖母の実家の遺産である土地を何割か相続する権利がある。書類も見せられ、両親共々、柚奈は青くなった。高級住宅地に立つこの喫茶店は、調べてもらうと数億円の価値があるらしい。大伯父としては喫茶店など潰して土地を売り、自分の権利分の金を寄越せと言うわけだ。フランス様式のこの喫茶店。潰すのは忍びない。売るにしても後にかかる税金が厄介だし、どうするのが正解なのか。思い悩む柚奈に手を差し伸べたのは、実家のお隣さんの息子・浜宮俊だった。お隣と言えど俊の家は代々製薬会社を営む大金持ちで、暮らし向きは相当違うのだけれど、彼とは大人になった今でも仲良くしている。店の常連客でもある俊は、柚奈の母からでも聞いたのか、店の危機を知って駆け付けてくれたようだ。最初から俺に相談してくれれば、と不満そうな彼に、言えばポンと大伯父さん分の金額出してくれちゃうでしょ?それが申し訳ないから。いくら幼馴染でも返す当てのない額を借りることはできない。俊は毎月5千円ずつの返済でいいよと笑うけど、それじゃ一生かかっても返済しきれないではないか。本気で億超えの金を用意してくれそうな俊を慌てて止めると、申し訳ないと思うなら俺と結婚してくれと言われて唖然。大伯父とやらへの金は俺が払う、返済も不要。結納金代わりと思えばいい。この喫茶店を潰したくないんだろう?そう囁かれ、柚奈の気持ちは揺れた。俊は私と契約婚をしようと言っている。でも、考えてみればまたとない申し出だ。彼は母親からの縁談攻撃に辟易としており、どうせなら自分をよく知る柚奈と結婚したいというのも判る。契約婚とは言え、ちゃんと妻として大事にするし、喫茶店のオーナーも続けてもらって構わないと告げられ、柚奈は思わず彼の手を取ってしまった。今回のことで付け焼刃で色々勉強していた柚奈だったが、今後は俊が対応してくれると聞いて肩の荷が下りたように思う。我ながら現金だなと思いつつ、彼との結婚生活について考え始めていた。婚約の報告をすると、俊の母は泣いて喜んでいた。逆に、これまでの見合いのセッティング等、柚奈には悪いことをしたと彼の母に謝られ罪悪感で一杯だ。あの後、早々に大伯父にコンタクトを取った俊は、土地の分け前分の金額を渡して手を引かせたと聞いている。大伯父も貰うものさえもらえれば今後関わってくることはないだろう。なので、約束通り両家の親に挨拶に行ったわけだけど、騙している感が否めず胸が痛む。それに、これまでとは俊との関係がガラリと変わったと思う。俊は多忙の身ながら、休日になれば柚奈をあちこちに連れ出しデートを楽しみ、部屋に戻れば彼女を抱きしめて眠る。いきなりの半同棲ラブラブカップルみたいな扱いに柚奈は戸惑いながらも、自らの俊への気持ちが変化していくのを感じていた。そんなある日のこと、店に大塩と名乗る女性が訪れた。俊の会社の取引先の専務秘書をしているらしい大塩は、柚奈を値踏みし、たっぷり嫌味を言うと注文したお茶も飲まずに帰って行った。一体何なの?何となく俊に報告するのはためらわれ黙っていたのだが、大塩は定期的に嫌味を言うだけの為に店を訪れる。その言動に常連客も、間女が喧嘩売りに来てるんじゃないの?と俊に対しても憤っていたので慌てて弁明をしておいた。様子のおかしい彼女を気にかけていた俊は、また何か悩み事が出来たのかと心配していた。最近、彼に対してハニトラ紛いのことを仕掛けて来る取引先の秘書に困り果てていた俊は、こんなことに時間を割いていられないと、大塩へ罠をかけ・・・。産業スパイに目を付けられていた俊。その正体は大塩なんですけど、あまりにも彼が靡かないからかその婚約者である柚奈をいびっていました。俊がモテるのは判っていたので嫌味もスルーしていた柚奈は、気持ちの変化により大潮の攻撃に段々ダメージを受けて行きます。大塩のことを探っていた俊は、このことを知って大激怒。取引先にチクるだけで後はお好きに処分してくれと手を打つつもりだったけど、柚奈を虐めたあいつは万死に値する、とばかりにパーティーの席で大潮の悪事を暴露。警察にも通報していたので、彼女は御用となるのでした。柚奈も色々話が分かって、自らの想いを俊に打ち明けます。彼も契約と言いつつ日々好き好き言いまくっておきながら改めて告白。少しでも俊の力になりたい、そう決意した柚奈はマナーと外国語等を学び始め、2年後に結婚。憧れの地での新婚旅行での様子が描かれて物語は幕。割と淡々とした内容でしたが、ヒーローの一途さやその執着ぶりがやっぱりこの作者さんのキャラだなって感じ。最初は実感の湧かないヒロインがどんどん絆されて行く様が判り易く良かったです。評価:★★★★☆
2024.09.03
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2024年6月刊こはく文庫著者:黒田美優さん戦争で負け、敵国の伯爵との政略結婚を命じられた公爵令嬢シディ。相手は、この国を滅ぼした、冷酷で化け物のような人物という噂だ。まるで売られていくも同然ではないかーー周囲の悲嘆をよそに、シディは気高さと誇りを見失うことなく黙ってそれを受け入れた。国境を越え、伯爵家に向かう道中で馬車がぬかるみにはまって立ち往生してしまうシディ。そんなシディの馬車を助け出してくれたのは、偶然にも結婚相手のリオン・マーティン伯爵。シディはリオンが本当は優しい人物であることを知って、喜んで結婚式に臨むのだった。だが、あろうことか、リオンは王に呼ばれたことを理由に式の途中でシディを残して退席してしまう。英雄と讃えられ、王のお気に入りであるリオンを、よく知りたいと考えるシディと、いつも不愛想で不機嫌なリオン。やがて二人はすれ違いながらも少しずつ距離を縮め、互いを求め合うようになる。しかし、そんな二人の関係を疎しく思う者たちがいた……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 シディ=王命で元敵国の英雄・リオンに嫁いだ公爵令嬢。 リオン=ヴォルドノ国の英雄。奴隷だった過去を持つ。 ローディア=ヴォルドノ王家の遠縁でシディの元婚約者。ヴェルナンド=リオンの元婚約者の公爵令嬢。エステリア国のラフラン公爵家の娘・シディは、その日国王から元敵国であるヴォルドノ国のマーティン伯爵に嫁ぐよう命じられた。この国とヴォルドノ国は少し前まで戦争状態にあり、エステリアが敗戦したことで決着がついた形になった。そして和平のために目覚ましい戦果を挙げ英雄と呼ばれるマーティン伯爵への褒賞の一つがこの結婚。有体に言えば人質のようなものであったが、シディは心配する周囲を他所にこの結婚に運命を感じていた。何故ならリオン・マーティンはラフマン家を救ってくれた恩人でもあったから。早々にヴォルドノに向かうよう言われ、気心の知れた双子の侍女・ニーラとノラも一緒に付いて来てくれることになったのは心強い。リオンのことはともかく、元敵国の貴族が嫁いで来るとなれば快く思わない者もいるだろう。強盗などに目を付けられない様、質素な馬車と服装でカムフラージュしてヴォルドノ国入りしたシディはマーティン伯邸への道すがら馬車の車輪がぬかるみに嵌り難儀していた。そこを助けてくれたのはたまたま王城から帰って来たリオンで予期せぬ対面となってしまった。リオンの方は王命で決まったこの婚姻についてはあまり感慨が無いらしく、飽く迄政略結婚だと言い切ると、翌日の結婚式は国王に呼び出されたからと途中退席。ニーナたちは激怒していたが、これが彼の仕事なのだと思えば納得せざるを得ない。教会で彼の昔馴染みだと言う牧師から、リオンの態度を謝罪され、彼は報奨金のほとんどを寄付している事、誰にでも愛想がないのはその生い立ちのせいでもあると告げた。やはり、父を助けてくれた時のように根は優しい人なのだと思ったシディは、彼にどう思われていようと妻としてリオンを支えていくと決めた。最初は世間知らずののほほんとしたお嬢様、と、最初は避けていたリオンだったが、ある日、彼女から感謝を伝えられ面食らった。シディの父・ラフラン公爵は肥沃な土地を治める事業家であった。だが、そんな父は王家に疎まれ、卑怯な手で公爵家の領地と財産を手に入れるべく罠に嵌められてしまったのだ。罪状はスパイ容疑。折り合いの良くなかったヴォルドノ国へエステリアの情報を売ったとして投獄され、財産のすべては凍結。母は心労で倒れ持病が悪化し亡くなった時は流石にシディも一時は父に濡れ衣を着せた王家を恨んだ。それから少ししてヴォルドノ国と戦争が始まり、侵攻して来たリオン率いる軍隊が牢獄を解放、父もその際救出され何とか生き残ることが出来た。シディにしてみれば、ヴォルドノ国が勝利してくれて良かったと思うばかり。そして、父からリオンのことを聞き、いつか礼を言いたいと思っていた所、何の因果かそのリオンとの結婚を命じられ、神に感謝した。リオンも牢獄を解放した時のこと、感謝していた彼女の父のことも覚えていた。いけ好かない貴族のお嬢様かと思えば、こんな自分にも感謝の言葉を述べるシディの印象が彼の中でガラリと変わった。牢獄を解放したのだって権力者の鼻を明かしてやりたかっただけだと言うのに。その夜、シディの希望もあって延び延びになっていた初夜も無事済ませた二人。それでもなぜかシャツを脱がない彼が気になったがきっと脱ぎたくない理由があるのだろう。だがその疑問は思ったより早く知ることが出来た。ふと目覚めた時に横に眠る彼のシャツのボタンがいくつか外れ肌が露わになっていた。直してやろうと胸元を見るといくつもの奴隷印。牧師が言ってた知られたくない過去ってこのことかと、一体どれだけの苦難を味わったのかとシディは彼が話してくれるまで黙っていようと決めた。国王の護衛を務める彼が、暫く留守にすることになり数日経ったある日、福祉や女性の地位向上のための活動を積極的にしているというロゼ侯爵夫人からサロンの招待状が届いた。夫が留守中なのだし断るべきかと思ったが、社交の場に出るのも妻の役目と招待に応じることに。あの英雄の妻ということで参加者たちから興味津々の目で見られたのには参ったが、笑顔で対応していると、リオンの元婚約者だったというナーズ公爵令嬢・ヴェルナンドからは散々嫌味を言われ、しかも、同じく招待されたと言うかつてのシディの婚約者・ローディアと再会して・・・。王城で開かれていたサロンだったため、リオンが割って入ったことでシディのピンチは救われますが、お互いの元婚約者との遭遇に気不味い雰囲気。ヴェルナンドとはシディとの結婚が決まって破談になったと聞いて、それであの憎々し気な態度だったのかと納得する彼女。ローディアはヴォルドノ国の王族の遠縁で近々公爵位を貰うそうで、シディと長らく婚約していました。が、彼女の父が濡れ衣ながら投獄されたことで婚約解消を突きつけ、シディを棄てた男。話を聞いてリオンは激怒しますが、そもそも彼ともローディアは折り合いが不仲なせいで、余計に突っかかって来ているよう。案の定、リオンの妻がシディと知るや、面白がぅて彼女に俺の愛人になれとしつこく迫って来るので彼女もゲンナリ。気持ち悪いお誘いの手紙も暖炉にくべていました。折に触れ、リオンの過去を彼の口から聞かされその壮絶さに驚きますが、彼は孤児から伯爵にまで登り詰めた凄い人だ。何ら恥じることは無いと彼に語るシディは本当に色々と肝が据わってる人だなと思いました。そんな頃、戦争後も数々の手柄を立てたリオンにまた褒賞が贈られることが決まり、王家主催の舞踏会が開かれることに。彼が王に呼ばれて傍に居ない時を狙って、またもやヴェルナンドとローディアに大切なイヤリングを池に捨てられ必死に探し彼女はずぶ濡れに。戻って来たリオンが誰がやったんだと恫喝する中、ロゼ夫人たちの証言によってヴェルナンドとローディアの仕業と判って悶着に。場を収めた国王は妻が見下されない立場が欲しいというリオンの意を汲み、彼には公爵位と宰相の地位が与えられ、色々余罪がありそうなヴェルナンド達は一から調べられることになって蒼白。一層、仲良し夫婦になった二人の様子が描かれて本編は幕。エステリア王家の非道っぷりにドン引きですが、平民上がりのリオンを重用するヴォルドノ国王の親心に近い対応を見ると雲泥の差。そりゃ戦争もどっちが勝つか一目瞭然というもの。ヴェルナンドとローディアは権力と地位に胡坐をかいた、これまでのやらかしがバレて結構キツイお灸が据えられそう。特にローディアは本当に嫌な奴だった。評価:★★★★★
2024.07.12
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2024年7月刊こはく文庫著者:きたみまゆさん有坂文乃には憧れの人がいる。それは先輩の白木。2年前、入社試験の日に怪我をした文乃を助けてくれた白木に、文乃は秘かに想いを寄せていた。しかし文乃以外の女性社員は、御曹司の神尾京弥に夢中だ。京弥の恵まれたルックスと優秀な仕事ぶりは女性社員を虜にしていたが、文乃は京弥が苦手だった。彼はいつも文乃のことを揶揄ってばかりいるのだ。そんなある日、文乃は二人きりの会議室で白木から強引に迫られてしまう。「有坂さんって俺のこと好きなんだろ?」 そんな言葉とともにテーブルに押し倒される文乃。しかもそれを、白木の婚約者だという女性社員に目撃されてしまう。激怒する婚約者の剣幕に、白木は「俺は強引に誘われただけだ」と文乃に罪を着せてくる。それを信じた婚約者に激しく責められる文乃を助けてくれたのは京弥だった。颯爽と現れた京弥は「有坂は俺と付き合ってる」という宣言とともに文乃にキスをしてきて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 有坂文乃=老舗食器メーカーに勤める会社員。 神尾京弥=文乃の上司で御曹司。 富田=秘書課のお局様。文乃をライバル視している。 白木=文乃の憧れの人。文乃は勤め先である老舗食器メーカー・KAMIOの食器の大ファン。ずっと憧れていたこの会社に雇用されて約3年。配属された企画部にも馴染み、120周年記念企画のコンペにも案を発表するつもりでいる。それにしても、最近、先輩の白木から話しかけられるのが増えた気がする。5年前、事情で面接に遅れ意気消沈した文乃を励ましてくれた白木には、恋心にも似た憧れを持っていた。しかし、彼は富田という秘書課の美人と交際している。一度、富田からあんな子に構わないでよと責められていた白木が、文乃の方からアプローチされて困っている的な言い訳をしていて軽く幻滅もしていたので、あまり近付かないよう努めた。そんなある日、上司である神尾の秘書の大石から頼まれ、神尾の弁当作りをすることになった文乃。神尾は白木とは別タイプのモテ男だったが、実際は真面目で気さくな人だった。毎回弁当持参の上、KAMIOの食器コレクターの文乃は、食器に合う料理を作るのを趣味にしていた。弁当箱もKAMIO製なのを大石に目を付けられ、栄養補助食品を食事代わりにしている神尾を見かねた文乃も賛同して決まった事であったが、彼が美味しそうに食べている姿を見ると引き受けて良かったと思う。重役用の休憩室に文乃まで招かれ、弁当を食べながら神尾とは色々な話をした。何故、KAMIOの食器が好きなのか、それに纏わる祖母との思い出なども。だから中途採用でもこの会社に入社できて良かったとしみじみと言う文乃に神尾もいつものように揶揄わずにどこか嬉しそうだった。その日、コンペ案を詰めたいからと白木に頼まれ相談に乗ることになった文乃は、会議室でいきなり彼から迫られた。びっくりして咄嗟に掴んだスマホで思わず神尾にダイヤルしていた彼女は寸でのところで飛び込んで来た神尾によって助けられた。が、騒ぎを聞きつけてやって来た社員達の中に富田もいて、人の恋人に手を出すなんてと大騒ぎ、それに乗じて白木も彼女から迫って来たんだと嘘を吐いたので、文乃が悪者に。責められる彼女を助けるために神尾は俺の恋人がそんなことするわけが無いと文乃にキス。騒然となるギャラリーだったが、白木の嘘がバレた瞬間でもあった。神尾から後日処分すると言われ、すごすご出て行く姿には心底幻滅したが、富田には完全に間女として認識されてしまったようで気が重い。落ち着いた頃に助かったがキスはやり過ぎと抗議すると神尾は悪びれず、暫くは恋人のフリを続けようと言う。白木の動向も気になるし、自分も煩わしい縁談から逃れられると。お互い利害関係が一致していることが判り、渋々だったが文乃はその提案を受け入れた。しかし、いざ恋人のフリを引き受けたは良いが、その日から神尾は文乃を溺愛。その様子に女性陣から恨まれるかと思いきや、あんなに幸せそうにされてちゃね、と皆神尾を諦めたらしい。富田には未だに疑われているけれど、いざ話してみると彼女は噂で聞くほど高飛車でも意地悪な人でもなかった。逆に富田も文乃の人となりを誤解していたようで、美容に時間と金をかける彼女を馬鹿にする白木と違い、自分磨きする人の何が悪いと言ってのける文乃を見直していた。神尾との仲はなし崩しにだが上手く行っていて、本当にフリですか?と毎度尋ねる程。先日は彼の実家に連れて行かれ、神尾の祖母とも対面。何の偶然か、彼の祖母は5年前に文乃が助け、病院まで付き添った人物だった。おかげでKAMIOの面接に間に合わず入社試験に落ちたのだが、後悔はしていない。神尾もその話は祖母から聞いていたようで彼女に感謝し、改めて礼を言われたのだが、再会を喜ぶ祖母に早く結婚しなさいと言われどう返事をして良いのやら。期待を裏切る訳にもいかず頷いては見たものの、良いように乗せられていると思うのは気のせいか。それから暫く経って、いよいよコンペの日。富田からも良い案ねと褒められた文乃の企画を白木が先に発表していて・・・。これは絶対にパクられると思っていたら案の定でした。万事休すな状況ではあったものの、文乃は白木が勝手に付け加えた部分をそぎ落とし、何故この企画を思いついたのかエピソードを交えて発表。サブスクで毎月食器を届けると言うシンプルな案ながら、老舗メーカーの物だからこそ届く楽しみがあるという意見は上層部の同意を得るのでした。白木の案は先日発表の前に文乃から話を聞いていた事から、富田が彼女の企画案が本物だと証言したことで盗用したのがバレます。更に、神尾が白木の素行を知らべ以前から似たようなことをしていたことが明かされ、降格処分の上、左遷が言い渡されるのでした。この勘違い男、本当に気持ち悪かったのでちゃんと処分されてスッキリ。神尾さんも文乃が襲われた時激怒してたから念入りに調べたんだろうな。あと、文乃の5年前の憧れの人は白木ではありません。面接に遅れ、慌ててやって来た彼女は疲労で倒れ医務室に運んでくれたのは白木ですが、話を聞いてくれたのは神尾だったと言うオチ。パーテーションで見えなかったとはいえ、声で判らんものかと思いましたが、それは私が声フェチだからですかね(^_^;)騒動後、富田とはなんとなく友人関係となり、神尾からフリではなく祖母のことの感謝とあの医務室での会話からずっと文乃に惚れていたと聞かされ、いつの間にか彼のことが好きになっていた彼女も告白を受け入れ、婚約して終わっています。ベリーズ文庫でもおなじみの作家さんで、何作か読んだことがありますがやはり面白いです。でもそちらではあまり描かないラブシーンがこちらでは結構ガッツリだったのはレーベルの差でしょうかwヒロインの人となりに好感が持てます。評価:★★★★★
2024.07.08
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2024年3月刊こはく文庫著者:小日向江麻さん幼いころから特徴的な声を揶揄われ続けてきたことで、24歳になった今でも男性が苦手な秋山恵里衣。社会人になって2年。さすがに職場の男性陣には慣れつつあるが、専務の楠孝紀は話が別。とにかく愛想のない彼は陰で「堅氷の御曹司」と呼ばれているのだ。それでも整ったルックスと御曹司という立場から、彼に恋する女性社員は少なくないらしいが、恵里衣にとってはただただ畏怖の対象だった。そんな孝紀から、恵里衣は信じられないお願いをされる。次々と舞い込む見合い話と、しつこく言い寄ってくる女性社員を遠ざけるため、「恋人のふりをしてほしい」というのだ。「人助けと思って協力してほしい」と孝紀に頭を下げられ、恐怖のあまり恵里衣はそのお願いを受け入れてしまう。こうして、目立たない存在だった恵里衣は突然、女性社員の羨望と嫉妬の対象となってしまう。偽の恋人役を引き受けたことを後悔する恵里衣だったが……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 秋山恵里衣=建築会社に勤める会社員。アニメ声を揶揄われ男性が苦手になった 楠孝紀=恵里衣の勤め先の御曹司。 若葉夏純=恵里衣の上司。 新田佳那=恵里衣と同期入社の友人。 越野=恵里衣の同僚。建築会社の総務部で働く恵里衣は男性が大の苦手。上司に電話を回すだけでも無駄に緊張してしまう程で、友人の佳那からは荒療治してでも克服しないと婚期を逃すよと心配されている。小学生の頃、同級生の男子にアニメみたいな声だと馬鹿にされ揶揄われ続けたおかげで、すっかり男子が苦手となり声もコンプレックスに。学校も女子校に進んだので苦手意識を克服できないままここまで来てしまった。そんな彼女にも少々気になる人はいた。この会社の御曹司で専務の楠孝紀である。容姿端麗で優秀、加えて会社の跡取りということで女性社員達から絶大な人気を誇っているのだが、如何せん彼は堅物だった。ニコリともしないので付いた渾名は「堅氷の御曹司」部署が違うので早々出くわさないのだが、今日は休憩室で遭遇。佳那の話では、プライベートのお誘いには一切乗らずバッサリと断っているらしいのに、めげずにアタックする者が後を絶たないらしい。本人にその気が無ければモテるのも迷惑なんだなと思いつつ、係長の若葉に頼まれその日、恵里衣は資料製作の為に残業することになった。1時間ほどで終わるかなとあたりを付けて作業をしていると、背後から男性に声を掛けられてビックリ。振り向くとそこには楠が。彼は少し付き合って欲しいと告げると別室に彼女を連れて行くと徐に、私の恋人のフリをして欲しいんだと頼まれた。彼が言うには親と親戚連中からのお見合い攻撃に加え、会社では女性社員達からの猛アプローチ。正直言えば非常に煩わしいのだそうだ。そこで悩む彼にとある人物がアドバイスをくれた。偽装の恋人を作れと。だが、誰でもいいわけではない。真面目で自分に好意を持ってない人物が好ましい。そこで、アドバイスをくれた知人の勧めで恵里衣に声をかけたのだと言う。まぁ確かに多少は気になる人ではあったけれど、怖い人という印象でだ。飽くまでフリだけでいいというのと、かなり切実な様子だったのでつい引き受けてしまった。しかし、翌日にはOKしたことを激しく後悔。休憩時間には佳那から質問攻めに遭い、彼氏ができたならもっと早く報告してよ、と怒られた。それ以前にどうしてもう佳那が知っているのか。だが、彼女の話に恵里衣は驚愕。なんと、楠がいつもの女性社員達からのお誘いに恋人がいるのでと断り、恵里衣と交際していると言っているそうなのだ。佳那はその会話を耳にした友人から聞いたと言っていたが、そうか女避けのための恋人のフリなんだからその存在をアピールしなければ意味が無いわけで。よく考えずに引き受けたことに青くなっていると、楠狙いだった女性社員達数名がやって来て恵里衣を取り囲むとどうやって取り入ったんだと猛烈に責め立てられた。おまけにコンプレックスの声のことまで言われて落ち込みかけていると楠が現れて助け出してくれた。とはいえ、彼のせいでこんな目に合っているのだが。やはり自分には無理だと言ってみたが、これからはあんな嫌な思いはさせないと一番ターゲットにされそうな退勤時に彼が車で家まで送ってくれることに。実家住まいのため、イケメンが高級車で姉を送って来たと高校生の妹は大騒ぎし、母は漸く苦手を克服してくれたと大喜び。是非、都合が合ったらうちに連れて来いと煩くてしょうがない。飽くまでフリなので、送ってくれる時間でしか会話は無いのだが、ある時、好きな画家の話で意気投合。持っている画集を彼に貸すと大変気に入ったと、以来、話も弾むように。未だ男性が苦手のため、社員旅行は毎年不参加だったのを楠に頼まれて初参加を決めた。こういう時は羽目を外す者も多い。懸念していた通り、恵里衣がいてもアタックしてくる女性達の様子を見るにやはりその場にいると居ないのとでは違うようだった。改めて助かったと彼から感謝され、部屋に戻ると同僚の越野が訪ねて来て恵里衣に告白。酔っているのか専務なんてやめて俺と付き合おうと押し倒されパニくっていたら、間一髪様子を見に来てくれた楠に救われ事なきを得た。越野を追い返し、実は男性恐怖症なのだと恵里衣が告げると彼は驚いていたが、どうしてだかあなただけは怖くないのだとも話すと、なら自分を練習台にしてほしいと楠にキスをされた。やはり、こういう触れ合いをしても彼なら怖くない。もしかしてこれが恋心なんだろうか。社員旅行から帰って普段の日常が戻った頃、楠との関係も変化していた。だが、越野が先日の謝罪と共に、楠には気を付けろと忠告してきたので、内心驚いていると、楠は若葉とも交際しているんだと教えられ・・・。タイトルでは「偽婚約者」とありますが、作中では飽くまで偽の恋人です。上司から突拍子もない頼み事をされ、苦手意識がありながらも恋人のフリを引き受けた恵里衣は、妬まれ陰口を叩かれる羽目に。それでも、楠の申し出で車で送って貰うようになると凸されることも無くなり、嗜好が似ているのが判り話も弾みます。旅行でのトラブルで仲も深まり、楠を男として意識し始めた恵里衣が耳にした良からぬ噂。まさか若葉さんとの仲を隠すために恋人のフリを頼んだの?悩んだ末に、こんな関係はもうやめようと楠に打ち明けると、二股なんてとんでもない自分の本命は君だと言われて彼女は茫然。若葉さんと交際してるんじゃと尋ねれば、実は二人は元々同級生で腐れ縁らしく、若葉からはお見合い回避と女避けをしたいなら良い子を見つけて恋人にしろとアドバイスされていました。その際、若葉がイチオシしてきたのが恵里衣で、楠の方も大人しいながら真面目で丁寧な仕事をする彼女に好感を持っていた。若葉と親密に見えたのも恵里衣とのことを相談していただけだったという。しかし、彼女が男が苦手なこともあって、人の好さに付け込むことにはなるが恋人のフリとして申し込んだと言うのがあらまし。女性声優さんが過去バナでよく声のことで揶揄われた、みたいな話をよく聞きますが、そういう声は目立つし特に男の子からの揶揄は好意の裏返しみたいなもんですからね。それをまともに受け取りコンプレックスになったり男性が苦手になったりあるので、男子よ、もっと大人になれよと。真相が判り、お互い両想いだった自覚した二人は正式に交際することになって物語は〆横取りする気満々だった女性達のガッツぶりが凄かった。評価:★★★★☆
2024.06.29
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2024年3月刊こはく文庫著者:杜来リノさん男爵令嬢のセルセラは母を早くに亡くし、父と二人で生きてきた。そんな父が再婚し、セルセラには義妹ができた。義妹の名はルムア。ルムアには夢見の能力があり、ルムアが言うには「セルセラは王子殿下と結婚する」運命にあるらしい。なんて大迷惑な話! 留学を夢見ているセルセラは、ルムアの予知夢を回避するため、ルムアを王子の婚約者にしようと画策する。努力の甲斐あり、ルムアと第一王子の間に良いムードができつつあることを確信したセルセラは、保険とばかりに自分も「適当な」婚約者を作ることに。セルセラが狙いを定めたのは近衛騎士・ジュアル。この近衛騎士はおそらく貴族ではない。男爵家からの求婚は断りにくいはず、と考えてのことだった。セルセラの思惑通りジュアルは婚約を受け入れてくれた。しかもセルセラの留学も快諾し、留学前に式を挙げてしまおうとまで言ってくれた。しかしそんなジュアルの態度に、セルセラは違和感を覚え……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 セルセラ=製紙会社を営むシュリータ男爵の一人娘。 ジュアル=セルセラに婚約を申し込まれた近衛騎士。 ルムア=セルセラの義妹。夢見の力を持つ。スノーバル=王太子。ルムアを見初める。父の再婚によって突然継母と義妹が出来たセルセラ。幼い頃から父の製紙会社を継ぐことが夢だった彼女は、乗っ取りを目論んでいるのではと当初この二人のことを歓迎していなかった。まぁ、娘に相談もせずに再婚なんてしたんだから、散々渋られていた留学にも行かせてもらうことにする。意見を押し通し、継母たちの前で父と大喧嘩をしたのは拙かったかと思いきや、その夜ルムアが部屋を訪ねて来て、セルセラの留学の夢は叶えることが出来ないと告げられた。何故ならあなたはこの数か月のうちにこの国の王子と結婚するんだからと。男爵家の娘が王子と結婚?そんなの有り得ない。真偽を尋ねるとどうやらルムアには夢で未来を見る夢見の力があるらしい。おまけに予知夢が外れることは無い。そういえば、この国の王太子・スノーバルにはまだ婚約者がいない。痺れを切らした王妃がお妃を決めるための舞踏会を開くと招待状が届いていた。まさか、それで自分が選ばれると言うのか。未来の王妃ともなれば、留学どころか父の会社も継げないではないか。だが的中率100%の予知夢に抗うことは不可能。しかし待てよ、こうして改めてみるとルムアはとても美しい。腹を割って話してみたら母子共々野心とは無縁で性格も良さそうだ。彼女を着飾らせて男爵家の娘としてスノーバルに売り込めばもしかして未来は変わるのでは。自分は地味に装い、豪華なドレスはルムアに回し侍女たちには舞踏会の日まで彼女の美容に力を入れさせた。すると目論見は大成功。スノーバルが義妹を見初め王太子妃に選ばれてセルセラはほくそ笑んだ。男爵家はお祭り騒ぎなので、お祝いにかこつけて父にもう一度留学に行かせてもらえるよう押してみよう。これでもっと会社を盛り立てられる。一応念のためにルムアに未来が変わったか尋ねると、セルセラのお相手は依然と王子様だという。もしかして留学先の国の王子に見初められるとか?だとしたらこれまでの根回し意味ないじゃないか。いや、それでもルムアが玉の輿に乗ったのだから悲観すべきではないのかもしれないけれど。こうなったら自分も留学前に適当な人物と婚約しておくか。そこで目を付けたのはあの日スノーバルの護衛をしていた近衛のジュアル。彼にコンタクトを取り、失礼を承知でセルセラから婚約を申し込むと何故か彼は大層乗り気。一応、式は留学から帰ったらと話し承諾も得た。反対もされなかった上、自分も付いて行きたいと言われた時は焦ったけれど、なんとか思いとどまられることに成功。流石にここまですれば未来も変わったようで、ルムアからももうあの予知夢は見ないと太鼓判を押されて小躍りしたい気持ちだったセルセラだったが、ある日ふとしたきっかけでジュアルの正体を知って愕然とした。何と彼はスノーバルの異母弟・ジウラーン王子で・・・。読んでてまぁそうだろうなとは思ってましたw途中、王子は3人いるみたいな話が出てたんで、王太子に見初められずともまだ二人候補がいる時点で喜ぶのは早すぎる。今回のヒロイン・セルセラは現代で言えば仕事が一番のバリキャリ。王家に嫁いだら仕事続けられないじゃん。それにキャリアアップのために留学にも行きたいのに。そこで考えたのは出来たばかりの義妹を巻き込むこと。あと、どうしてジュアルが近衛のフリをしていたか、彼は優れた魔力の持ち主で、心根の判別が出来た。未来の王妃に相応しい女性を正体を隠しつつ兄の背後から見極めるためでした。ルムアはとても良い子なのでジュアルからも高評価。おかげで義妹は王太子妃に選ばれましたが、隣にいたセルセラもそれに負けず劣らずの素質を持っていた。後に回想で描かれるんですが、そもそもジュアルとセルセラは母同士が友人で幼い頃に出会っていてその時に結婚の約束をしていたという。勿論当時も彼の身分を知りませんでした。そりゃ、彼も大人になった初恋の子から改めて婚約の申し込みをされれば乗り気になるよね。でも、セルセラは正体を隠されていたことでジュアルに不信感を抱き、仮病を装い引き籠ります。さすがに王子妃が病弱では困ると王家に判断させるための策でしたが、ここまでしなくても。ジュアルのことは好きだけど、幼い頃からの夢はどうしても捨てられない。兼ねてから希望していた2年も留学に行ってしまうセルセラ。しかし、ジュアルは彼女との結婚を諦めておらず、みたいな展開です。結局最後はジュアルが王籍を抜けて婿養子になったことで結婚に漕ぎ着けたけど、恋より仕事と割り切れるヒロインの潔さよ。評価:★★★★
2024.03.21
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2023年12月刊こはく文庫著者:ろいずさん年頃の令嬢たちが戦争の英雄である「氷の騎士様」に夢中になるなか、子爵令嬢のメルは読書に勤しんでばかり。ある日、メイダンス公爵夫人の読書会に参加したメルは、書斎でひとりの青年と出会う。読書の途中で居眠りをしてしまったのだろう彼の手には読み止しの本があり、メルは彼を起こさぬようにそっと栞を挟んで、書斎をあとにした。メルにとって、それはとても些細なことだった。しかしメルのこの行動により、メイダンス公爵家では小さな事件が起きていた。書斎で居眠りをしていたのは、国中の令嬢が熱を上げている「氷の騎士様」ことカルディア・メイダンス。彼は数多の女性に言い寄られ続けたことで女性嫌いとなり、誰に対しても冷たい態度を取っていた。そのカルディアが、メルに好意を抱いたのだ。といってもカルディアはメルを知らない。「栞を挟んでくれた、小柄で薄金色の髪をした令嬢」 ただそれだけを手掛かりに、カルディアの令嬢探しが始まるが……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 メル=子爵令嬢。本好きで知識欲の塊。カルディア=公爵家三男。戦争英雄、氷の騎士様などの異名を持つ。アフォガード子爵家の娘であるメルは自他共に認める本の虫。適齢期でもある彼女であったが、婚活の方はやや消極的。それというのも三年にも及ぶ隣国と戦争が昨年終わって、その間贅沢品と言われ発行できなかった本が漸くまた出回り始めたのだ。メルは現在婚活よりも待ちに待った新刊を読むのに忙しい。そうしているうちに優良物件は戦争後の結婚ラッシュ時にほとんど纏まってしまい、残っているのは少々難ありと言われている者たち。だが、メルは家督を継がず読書に理解があるならば、夫となる人にそれ以上のことは求めないと言って憚らない。ならばそう焦らずともお相手は見つかるのでは。彼女は至ってのんきで、心配する兄を他所に招待を受けているメイダンス公爵夫人の読書会へと足を運んだ。メイダンス公爵家には三人の子息がいて、次男は既に妻を迎えて家を出ており、家督を継ぐ長男も先日婚約が決まった。残るは先の戦争で功績を立て国宝の指輪を下賜された三男のカルディアのみ。だが、地位もあって顔も良い彼を令嬢達が放っておくはずもなく、なりふり構わず他を押しのけて自らをアピールする彼女達にほとほと嫌気がさして立派な女嫌いに。今日は母が開催する読書に参加する者達の声を聞きながら図書室で転寝をしていた彼は、ふと目覚めると読みかけの本に栞を挟んでくれた令嬢に驚いていた。既に部屋を出かけていたので後姿と髪色、ドレスくらいしか判らない。正直、カルディアを目の前にして騒ぐ令嬢ばかりだったので、あの令嬢の反応は彼にとって新鮮だった。とにかく彼女が気になってしょうがない。手がかりの栞を母に見せると、その稀少な品からすぐにピンと来たようだ。無類の本好きなので、一先ず本屋や図書館を探せと言われ、あちこち回ってみたのだが、らしくない彼の行動に令嬢達が色めき立ち、カルディアが現れそうな場所で待ち伏せする者まで現れ始めた。一方、メルにとっての癒しの場が随分騒々しくなったと彼女は憤慨していた。そんな彼女の元にメイダンス公爵夫人から手紙が来て、稀少な本を別荘の書庫に持って行って欲しいとの依頼が来た。同じ本好きとしてあなたが最も信頼できるからと。あちらに着いたらお礼も兼ねて別荘で好きなだけ蔵書を読むと良い。なんだかおかしな依頼だけれど、夫人の読書会の常連のメルは彼女の頼みならばと引き受け、指定の別荘に向かったのだが、後から到着したカルディアがいつものように令嬢が勝手に付き纏って来たに違いないと勘違い。使用人やメルの言い分も聞かずに彼女を別荘から追い出してしまい・・・。自らが必死に探していた人物とも知らず、メルを追い出してしまったカルディアは、別荘を預かる執事からの知らせを聞いて夫人は大激怒。すぐに彼女を連れ戻せと手紙が来て慌てて探しに行く羽目に。手紙には母の客人だとも記載されていたので、誤解していたことを謝罪し、別荘に連れ帰ります。メルは全く怒っておらず、夫人との約束通り約一ヶ月別荘で過ごすことになるのだけど、カルディアとも次第に打ち解けていきます。そして彼から相談されたのは、あの令嬢を見つけたいと言うもの。しかし、あの栞を見せられ、詳しく話を聞くにどう考えても彼が探してるのは自分だ。あろうことか、あんな些細な出来事でカルディアは令嬢に恋をしてしまったらしい。よっぽど、彼の周りには強烈な女性が多かったと見える。でも、正体が自分のような地味女ではなんだかガッカリされそうで打ち明けられない。カルディアならきっと良い人が見つかる。考えた彼女は、カルディア主催の読書会を開催しては、と提案。読書好きならきっとその人も参加するはずだと彼を焚き付けます。メルも準備を手伝うも、何だか胸が痛い。共に過ごすうちに彼女もすっかり彼に心奪われていました。でも、終盤はかつての彼の部下も目の色変えて読書会に参加すべく別荘に押しかけて来たり、結構てんやわんやな状況に。カルディアもメルの反応を見てすぐに気付きそうなものだけど、いくらモテても朴念仁なので、夫人からヒントを貰って漸く気づくと言う鈍ちんぶり。結局、探していた令嬢がメルだと判って彼女が好きな謎解きゲーム風なゲームで自らの気持ちを告げたカルディア。メルの希望通り家督も継がず本好きに理解のある旦那様を見つけたのでした。ヒロインの本好き設定は共感が持てます。書かれていることを試したくなる気持ちも。でも、ヒーローがちょっと(^_^;)なんであそこまで気付かない。おかげで別荘の使用人たちも鈍い主人にヤキモキ。自分こそが探し人と乗り込んで来た部下もただのアホだし、ツッコミどころもありましたが、展開的には王道なのでさらっと読む分には良いかも。評価:★★★★☆
2024.02.15
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2023年12月刊こはく文庫著者:ひなた翠さん父と後妻、そして義妹から虐げられ、屋根裏部屋で寝起きしていた伯爵令嬢のセレナにある日、王弟・シェパードとの婚約話が持ちあがる。シェパードには黒魔術の使い手や王宮の暗部を担う暗殺者といったよくない噂が多く、縁談に苦戦した結果、厄介者のセレナに白羽の矢が立ったのだ。シェパードはセレナに興味を示さず、必要最低限の言葉しか交わさなかったが、実家で使用人同然の扱いを受けていたセレナは、彼との暮らしに幸せを感じていた。しかしセレナにはひとつ、気がかりがあった。それはシェパードが夜な夜などこかへ出かけること。夜になるとこっそりと屋敷を抜け出すシェパードの様子に、セレナは仮説を立てる。彼は吸血鬼なのかもしれない、と。そして徐々に、もし彼が吸血鬼だとして、なぜ妻である自分の血を吸わないのか、と嫉妬のような感情も覚えるようになる。そんなある日、セレナは王妃からシェパードの秘密を聞かされて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 セレナ=伯爵家の長女。継母と異母妹に虐げられ使用人以下の扱いを受けてい たが、アルベルトの正妻候補に選ばれた。アルベルト=吸血鬼疑惑のある王弟。 ロドニー=国王。 アリル=王妃。アルとロドニーとは幼馴染だった。 エスナ=セレナの異母妹。伯爵家の令嬢ながら、継母と義妹から虐げられ屋根裏部屋に追いやられていたセレナは、ある日、王弟・アルベルトの正妻候補に選ばれた。母が亡くなってからというもの、先妻の子であるセレナをいない者として扱い、当時愛人であった継母との娘・エスナだけを可愛がり社交界デビューさせた父もこの命令には驚いていた。しかし、飽く迄も候補、どうせ気に入られずに帰されるに違いない。追い返されても再び迎え入れる気はないのでいい厄介払いが出来たと大喜び。そんなガーナード伯爵家の面々の目論見も虚しく、追い返されるどころかセレナはアルベルトに気に入られ、正妻として扱われていた。人嫌いで表舞台に現れず、外出は夜間のみというアルベルトのことは実は吸血鬼なのではと実しやかに噂されていることから、セレナも当初はおっかなびっくり。だが、古参のメイドの話によれば、アルベルトはセレナの到着を心待ちにしていて、何着もドレスを用意し部屋を整えさせたのだと言う。世間ではガーナード家の令嬢と言えばエスナだと思われてるはず、何故彼はいない者扱いの自分を知っていたのだろうか。思い切って訪ねると、アルベルトはこの国の貴族の家族構成は全て把握しているからとの答えが。その記憶力の凄さに驚きつつも、仕事柄必要な知識なのだという話に納得した。アルベルトがセレナを妻に迎えるつもりなのを、国王・ロドニーは大層喜んでいた。兄弟仲が良いので、兄は王妃を連れて週に一度は訪れ交流しているそうで、今回初めて国王夫婦に対面となったセレナは緊張しっぱなし。男同士で話があると兄弟が書斎に引っ込み、王妃・アリルと二人きりになると、徐に身の程知らずだのアルにあなたは似合わない、三流貴族の娘風情が、と悪態が出るわ出るわ。どうやら、王妃はこの結婚がお気に召さないらしい。国王兄弟とは幼馴染とも言っていたから、変な女に引っかからないか心配なのかもしれないが、選んだのは国王陛下なんですけど。心中で思いながら、辞退しなさいと命じられほとほと困ってしまった。既に夫婦として暮らしているし、王妃とのやり取りをアルベルトに言うべきか悩むセレナ。彼はかなりの人間不信なので、心を許している人達は本当に少ない。その一人である王妃と妻が険悪な関係になられてはアルベルトも困るだろう。夫婦二人の語らいで互いの身の上を少しずつ語り、彼のことも徐々に判って来た。アルベルトの額には大きな火傷の痕があり、どうもそれが人嫌いになった原因のようで、兄の国王にはもっと大きな火傷痕があるという。人災による火事とのことだから、思う所があるのも当然だ。それからまた数日経ち、国王夫婦が訪れ相変わらず二人きりになるとまたもやアリルはセレナを糾弾。しかしながら、愛されている自信が付いた彼女は今度ばかりは自らの意志をきっぱりと告げ、その命令は聞かないと突っぱねた。そもそも、アルベルトが妻に望んでいるのに外野がどうこう言うのはおかしい。その旨、若干オブラートに包んで伝えたが、王妃は彼が愛しているのは私なのに、と聞き捨てならない言葉を呟いていて・・・。まぁ、これは王妃の独り相撲で勘違いなんですけど、こんな奴に地位と権力与えるから。とはいえ、ロドニーはこの人のこと好きなんだからしょうがない。アルベルトが人間不信になった火災の件と関係がある話なんですけど、少々話が複雑で記載すると長文になるので割愛します。王妃が火をつけたとかではないですが、兄弟に火傷を負わせた原因でした。なのに報われないロドニーさんが気の毒で。ラストに少しだけ希望があったのが救い。アリルのやらかしのせいで再構築は難しいでしょうが、火傷のせいで短命と言われているロドニーさんには少しでも長生きして欲しい。一方、セレナの境遇に怒りを覚えたアルベルトは彼女の実家に制裁を加え、いい具合に追い詰めてくれました。冷遇してた娘が王子妃になったのに、自分達は借金地獄とは。つまんないことしないで分け隔てなく育ててればいい目見れたのにねぇ。アルベルトの吸血鬼疑惑については諜報の仕事をしていたからというオチ。反国王派にガーナード家も入っていて、セレナのことも調査の時に知り、その際見初めたからでした。候補どころか、一択になるのは当然。さりげなく候補に入れておくロドニーさんの采配が憎いw評価:★★★★☆
2024.01.16
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2023年12月刊こはく文庫著者:夕日さんある舞踏会の夜。ユスティーナは秘かに想いを寄せている相手、エルヴェスタム公爵と遭遇する。酒が過ぎたのか苦し気な彼を介抱するため近づくと、エルヴェスタム公爵は「貴女のことが好きだ」と愛の言葉を囁いてくる。好きな人から求められる喜びを知ったユスティーナは、そのまま彼と一夜を共にしてしまう。しかし翌朝、エルヴェスタム公爵が発した言葉はユスティーナを凍りつかせた。彼はユスティーナのことをマルティナと呼んだのだ。マルティナはユスティーナの双子の妹だった。彼の想い人はマルティナだった。自分はマルティナの代わりに抱かれたのだと知ったユスティーナは絶望する。けれどこの後、エルヴェスタム公爵がとった行動は、ユスティーナをさらに絶望させる。彼は責任を取るため、ユスティーナに結婚を申し込んだのだ。「妹のことを愛している想い人に、義務感から娶られた妻」という残酷な立場に立たされたユスティーナは……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ユスティーナ=アロラ伯爵家の長女。大人しく物静かな性格。 カレヴァ=公爵家の当主でユスティーナの夫。 当初はマルティナに想いを寄せていた。 マルティナ=ユスティーナの双子の妹。 ケイン=ユスティーナの従兄。物静かな伯爵令嬢ユスティーナには正反対な気質の双子の妹・マルティナがいる。瓜二つな容貌で美しく育った姉妹だったが、勝ち気で明るい性格もあってか妹は好かれ、皆がマルティナを選ぶ。初恋の人にきっぱりとマルティナの方が好きと言われ失恋し、数年後、婿入り予定だった婚約者までもがマルティナに懸想して婚約破棄を申し出て来たものだから伯爵家は騒然。本人は内心「ああ、またか」という気持ちで諦めも早く婚約破棄も承諾したのだけど、姉想いのマルティナは烈火のごとく怒り、姉の元婚約者に強烈なビンタをかましていた。恋も婚約も暫くはいいかと考え過ごしてきて2年経ったある日、ユスティーナはとある侯爵の舞踏会で一人の青年に一目惚れ。社交界でも女性に大人気の高級官僚の公爵・エルヴェスタム家の当主カレヴァは女嫌いでも有名で、当然ユスティーナの視線にも気付かない。以降、いくつかの舞踏会でひっそり彼を見つめていたユスティーナだったが、今夜のカレヴァはどうも様子がおかしい。友人らしき人物に随分酒を薦められてたようだから悪酔いしたのかも。ふらふらと会場の外に出た彼を放っておけず、思わず手を貸したユスティーナは使用人が用意してくれた客間でカレヴァを介抱。すると、何を思ったのか目を覚ました彼に押し倒された挙句、熱く迫られ恋慕の感情から拒み切れず彼と関係を持ってしまったのだった。翌朝、目を覚ました二人だったが、カレヴァは明らかに狼狽し、酔っていたとはいえとんでもないことをしたと土下座せんばかりに謝罪して来た。しかし、彼が自分をマルティナと呼んだことで血の気が引いた。結局この人もマルティナに想いを寄せていた口か、と。とはいえ、流された自分も悪い。責任は問わないので忘れて欲しいと言い置いて屋敷に戻ったが、今回の件は殊の外堪えた。家人も心配する中、翌朝アロラ家にカレヴァが訪れ、ユスティーナに結婚を申し込んで来た。接点の無さそうな相手なだけに両親は戸惑うばかりだが、馬鹿正直に一昨日の夜のことを語ったことで一気に微妙な空気になり、当然妹は大激怒。しかしながら責任を取らせてほしいとカレヴァから請われ、困った両親からの後押しもあってユスティーナの結婚が決まった。このスピード婚は社交界でも噂となり、令嬢達からは随分僻まれもしたけれど、努力家で勤勉な性質もあってか公爵夫人としてユスティーナはエルヴェスタム邸の使用人たちからも慕われるように。気遣い屋で優しい性格も相俟ってカレヴァも良い嫁を貰ったと大満足。当初はマルティナの気丈さに目を引かれ好意を寄せていたものの、いざ、一緒に生活して見るとユスティーナの素晴らしさに気付いた。贅沢も好まず、欲しいものはないかと尋ねれば、刺繍糸など消耗品ばかり。空いた時間で手芸品を作り孤児院に寄付するのだと張り切り、慈善事業にも積極的なので彼女が嫁いでからというもの公爵家の評判は鰻登りであった。しかし、目下のところある二人にはある悩みが。それは結婚の経緯からあの日以来、夫婦は関係を持っていないこと。カレヴァは、今となっては妻に惚れているけれど、それを語るタイミングを逃し悶々としており、一方のユスティーナは夫が自分に触れないのはマルティナに未練があるからだと勘違いしていたから。思い悩んだ彼女は身を引く決意をしてカレヴァに離縁を申し出て・・・。ケジメとして改めて想いを伝えてから夫婦の営みをと考えていたカレヴァは、紳士クラブでユスティーナが兄のように慕う彼女の従兄・ケインに相談。従妹の想いを知るケインは、それなら妻に毎日愛を囁けとアドバイス。それから毎日何かにつけ妻を褒め愛を囁く夫に戸惑うユスティーナでしたが、顔面偏差値の高い彼にドキドキしっぱなし。どうしたらいいのかと妹に相談すると、実家でよくやっていた遊びをカレヴァに仕掛けることに。それは姉妹が入れ替わり当てさせると言うもの。しかし、親でも迷うのに彼は一目で見破り、その愛を見せつけるのでした。ケインからのヒントでユスティーナがずっとカレヴァに恋していたのも判り、お互い両想いと知った彼らは以降は周囲も羨む夫婦となって〆地味女の自分より妹の方が彼にお似合いなのではと思い悩むユスティーナがなんかもう気の毒で。カレヴァもさっさと想いを伝えて君を嫁に迎えて本当に良かった的な事さっさと言えばいいのにと読んでてイラっと来ました。まぁ、求婚の言葉があの夜の責任とか口走っちゃってたからなぁ。妹と従兄がアドバイスしなきゃ本当に離婚してたかもと思うと上手くいって何より。結婚した原因からすれ違ってた両片想いの夫婦が再構築するというお話でした。評価:★★★★☆
2024.01.12
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2023年10月刊こはく文庫著者:きたみまゆさん堀口夕菜は同僚でもある彼氏・大樹と同棲をしている。仕事もプライベートも充実している夕菜だったが、そんな日々はある日突然終わりを告げた。大樹が後輩のミサと浮気をしていたのだ。しかもミサは妊娠しており、夕菜はマンションから追い出されてしまう。途方に暮れた夕菜を助けたのは、偶然通りがかった上司・東條恭介だった。恭介は夕菜を自宅マンションへ連れ帰り、当分の間ここで暮らせばよいと提案してくれ、夕菜はありがたくそれに従うことに……。翌朝出社すると、ミサ自身の口から昨夜の修羅場が拡散されており、夕菜は同僚たちの好奇の目に晒されてしまう。しかし、そんな場の空気は恭介の一言により一変する。「夕菜、部屋の鍵は持ってきたか?」 あろうことか、恭介は社員たちの前で夕菜と「同棲」しているかのような振舞いをしたのだ。強制的に「浮気され捨てられた哀れな女」から「御曹司に愛される幸せな女」に立場が変わってしまった夕菜は……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 堀口夕菜=飲料メーカーに勤める会社員。 結婚間近の婚約者に婚約破棄された。 東條恭介=夕菜の上司。 杉野大樹=夕菜の元婚約者。 小谷ミサ=夕菜の後輩社員。タイトル通りのお話です。母子家庭で育ち、母に楽させてあげたいと仕事に打ち込んで来た夕菜。私生活では同期で彼氏の大樹と婚約し、式の準備に入っていたと言うのに、この段階で大樹がまさかの浮気。お相手は社内でも可愛いと評判の後輩社員のミサ。普段から人目も憚らず彼にべたべたしていて、正直良い気はしなかったのだが知らぬ間にここまでの関係だったとは。しかも大樹はミサが妊娠してるので彼女と結婚したいこと、夕菜が新婚生活の為に奮発して借りたマンションから出て行けと言う。え、敷金礼金諸々全部私が払ったんですけど、と訴えても有無を言わせず追い出されてしまった。理不尽な出来事に悔しいやら情けないやら思わず泣けて来た上にこれからどうしよう。途方に暮れていた夕菜に声をかけ、自らのマンションに泊めてくれたのは上司の東條だった。東條は彼女から事情を聴き、内心怒りに燃えていた。実は2年前から夕菜に好意を持っていた彼は、上司と言う立場上迂闊に告白も出来ず、静かに見守っていた。だが、後悔先に立たず。夕菜は大樹と付き合うことに。もうすぐ結婚するとも聞いていたのに、こんな事態に陥っていたとは。遠慮する彼女に新しい住居が見つかるまでと説得し、空き部屋に居候させることに成功した東條は、翌日ミサが大樹と結婚すると部署内で自慢しているのを目にし、意趣返しでこれから自分が気兼ねなく夕菜にアタックすると宣言。ミサの筋違いな自慢話よりも会長の孫である東條の宣言の方がインパクト抜群であっという間に社内に広まったことで、してやったりと彼はほくそ笑んだ。大樹が今更慌てていたようだがもう遅い。同居中に夕菜と親睦を深めていく東條だったが、あれほど優秀なのに彼女は自己肯定感がとんでもなく低くて衝撃を受けていた。どうやら大樹があれこれ夕菜の生活に口出ししていたらしい。そんなことはないと彼女を褒め、少しでも自信に繋がればとイメージチェンジも薦めた。おかげで仲の良い先輩社員からも指摘される程垢ぬけて来た夕菜は最近男性社員からもウケが良いと聞く。一方、自分に自信を持ち始めた夕菜は東條に感謝するとともに段々と惹かれていく気持ちに気付いたが、同居してるのに手を出されないのは女として魅力がないから?と思い込み落ち込んでいた。だが、そんなある日、ちょっとしたトラブルを機に、二人は一線を越えてしまい・・・。この一件から、誤解もあって少し二人の関係がぎくしゃくしてしまうんですけど、結局、両想いと判って最終的に交際に発展します。その間にあの性悪女・ミサが自らが起こした騒動で周囲からの評価をさらに下げ、東條の怒りを買って相応の処分を受けることに。人の彼氏を寝取って勝ち誇るくらいでやめときゃよかったのにねぇ。(そもそもこの時点で結婚間近のカップルを破綻させたと白い目で見られてたけど)何故、騒ぎを大きくするのか。承認欲求が強いのかしら。大樹も馬鹿な奴だったけど、謝罪した上に敷金礼金を返金してきたことは評価しよう(何様?)でも、出来の良い彼女を可愛げがないとか言って貶めるのはモラハラよ。あと自宅で化粧してない女はダメとか何様だ。初カレだったからしょうがないとはいえ、夕菜も男を見る目が無かったんですよね。つくづく、東條が当時勇気を出して告白してれば、と思わないでもない。あと、東條が何故ここまで夕菜に惚れてたのか、彼目線のエピソードで語られてましたが、確かにあれは惚れるわと納得。評価:★★★★☆
2023.11.16
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2023年10月刊こはく文庫著者:木野美森さん両親を亡くしたセレンシアは、類まれなる美貌の持ち主。幼い弟妹を育てるため、王都で成功した商人の大叔父を頼って身を寄せたものの、セレンシアと年齢の近い大叔父の娘からひどい仕打ちを受けてきた。かわいい弟と妹のためにと黙って耐えてきたセレンシアだったが、ある時、道ですれ違った侯爵家の跡継ぎから妻として迎えたいという申し入れを受けることに。礼儀正しくやさしいその青年は、弟妹たちも引き取ることを約束し、これまでセレンシリアたちを冷遇してきた大叔父までもが手のひらを返したようにもてはやして、誰もがうらやむ婚約が成立した。体面を気にする侯爵家の手前、セレンシアは伯爵家の養女となって貴婦人としての教養や立ち居振る舞いを学ぶ。男児ばかりで女児を得なかった夫人はセレンシアを娘のように可愛がり、伯爵家の次期当主・クラレンスは成人してからできた義妹に戸惑いつつ、何かと気遣ってくれていた。これまでになく穏やかな日々を送るセレンシア。そんな彼女のもとに、久しぶりに婚約者が訪ねてきて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 セレンシア=両親を亡くし大伯父の屋敷で肩身の狭い思いをしていたが、侯 爵家の後継に見初められ婚約した。 クラレンス=伯爵家当主でセレンシアの義兄。 ザカリー=セレンシアを見初めた侯爵家の子息。レディ・アンバー=クラレンスの母でセレンシアの義母。立て続けに両親を亡くしたセレンシアは、生活に困窮し父の遺言に従って止む無く大伯父を頼り王都までやって来た。学費を借りているのに駆け落ちして行方をくらませた父のことを大伯父はかなり怒っていて歓迎はされなかったが、歳の離れた弟妹達を路頭に迷わせるわけにはいかない。住まわせてもらえるだけありがたいと思わなければと、不当な扱いにも耐え忍んでいた。だが、そんな生活が3年も続いたある日、彼女は侯爵家の跡取り・ザカリーに見初められ、早々に婚約が決まった。その祭、平民の娘をそのまま侯爵夫人にするのは体裁が悪いと侯爵とは旧知の間柄のアッシャー伯爵家に預けられたセレンシアは養女として迎え入れられた。前当主夫人レディ・アンバーはずっと娘が欲しかったとセレンシアを実の子の様に可愛がり、義理の兄となったクラレンスも何かと彼女を気遣ってくれた。弟妹達まで伯爵家に連れてくることは叶わなかったが、ザカリーが侯爵家で預かってくれるとのことで、多少心残りはあるものの、夫人とクラレンスとの生活に彼女はかつてないほど幸せな日々を送っていた。そんなある日、クラレンスに社交界の勉強と称して舞踏会に誘われた彼女は従姉妹のイェーラと再会。案の定妬みから酷い罵りと暴力をを受けるも、その祭、止めに入ったクラレンスから大伯父がセレンシアの父名義の財産を着服していたことを言及されて従姉妹もたじたじ。思わぬ真実から父の汚名が晴れたことをクラレンスに感謝した彼女は彼に一方ならぬ想いを抱いていることに気付いた。でも自分はいずれザカリーと結婚する身。この想いは隠しておかなければならない。それに侯爵家に嫁げば弟妹達とも暮らせる。しかし失念していたがそういえば長らく弟妹達に会えていない。少し前、ザカリーが会いに来た時は弟たちも連れて来てくれなくて内心がっかりしたものだ。そこで、せめて一目でもと侯爵家を訪れたものの、次期当主の婚約者だと言うのに何故か執事からは門前払い。先触れしなかったせいかと今度は正式に面会を申し入れたが、返事は無くどうしようもない胸騒ぎが。クラレンスも協力してくれて、彼の名で申し入れても音沙汰無し。どうやらマクニール侯爵家では問題が起きているようで・・・。ヒロインの父名義の遺産を使い込んでおいて、その子供たちを蔑ろにする大伯父達には心底ムカつきましたがそれよりもっと厄介だったのは婚約者でした。あいつ、とんでもないサイコ野郎でしたよ。タイトルからしてヒロインは義兄とくっつくと思ったんで、破談になる原因が描かれるんだろうとは思ってたけれど、いやはやまさかの展開&顛末にビックリ。でもおかげで後顧の憂いなくヒロインはヒーローと一緒になれたので、自滅してくれて良かった。あの婚約者、サイコな割にはヒロインの弟妹には危害を加えてなかったし。サスペンス風味もあって面白いお話でしたが、終盤の展開はネタバレし過ぎてもアレなので敢えて割愛しています。評価:★★★★★
2023.10.18
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2023年9月刊こはく文庫著者:猫屋ちゃきさんパウラは胸躍らせながら夜会の準備をしていた。今夜、幼馴染みのヴィリバルトが3年ぶりに帰国するのだ。立派な青年に成長したヴィリバルトが「可愛い」と言ってくれることをパウラは期待していた。というのもバウラは幼い頃、ヴィリバルトから「こんな可愛くないやつ、好きになるものか!」と言われた経験があるのだ。それ以来、バウラは自分磨きに励んできた。すべてはヴィリバルトに「可愛い」と言ってもらうため。しかし再会したヴィリバルトは、バウラになど興味もないと言わんばかりのそっけない態度! なのに夜会の翌日、バウラの元に届けられた手紙には成長したパウラを誉め湛える甘い言葉が書き連ねられていた。昨夜の冷たい態度と、今日の甘く情熱的な手紙。ヴィリバルトにからかわれているのだと思ったパウラは激怒し、令嬢が書いたとは思えない辛辣な言葉を書き連ねた手紙でヴィリバルトに応戦することにするが……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 パウラ=伯爵家の長女。幼馴染のヴィリバルトを嫌っていた。ヴィリバルト=パウラの幼馴染。将来は親同士が結婚させようとしていた二人。ヒーローの方はその可愛さに一目惚れ状態だったのだけど、当のヒロインは王子様の様な外見の兄の方に見惚れている。面白くなくてつい憎まれ口を叩いたら、すっかり怒らせてしまい冷戦状態。彼は心にもないことを言ってしまったとすぐに謝ればよかったのに、機を逃してかれこれ10年。遊学で3年離れている間にあちらの態度も軟化していればいいのだけどと期待していたものの、成長して美しくなった彼女に気の利いた誉め言葉も言えず、火に油をしそぐ始末。せめて手紙で謝罪と誉め言葉を綴ろうと挑んでみれば、何の嫌味?と本人は予想以上にお怒りで手紙の返事の内容にも見て取れた。それでも、何とか仲直りしたいとあの手この手を考えるも、彼は一人の令嬢に気に入られ、付き纏われていたらヒロインに見られて誤解される羽目に。しかも、ヒロインの方にも求婚者が登場。このままでは横から掻っ攫われてしまうぞ、と兄にハッパをかけられたヒーローの決断は・・・。終盤、兄の言葉に吹っ切れたヒーローはヒロインに謝罪の上、プロポーズ。再会してからと言うもの、あんな失礼な奴なんてとヒーローを嫌っていたヒロインも自分の気持ちを再認識していたことから彼のプロポーズを受け入れて結婚。終章では、3人の子宝に恵まれて賑やかに暮らしている伯爵家の様子が描かれて終わっています。色々と拗らせてしまった両想いの幼馴染が、お互いとあるきっかけが元で一歩を踏み出し、幸せになるというお話。ストーリーとしてはかなりのテンプレで、正直展開も予想が付いちゃうんですけど、その分、外してこないな、という安定感はありました。ので、さらっとしたお話が読みたい気分、な時におススメな内容かと。評価:★★★★☆
2023.10.08
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2023年9月刊こはく文庫著者:吉澤紗矢さん結婚を意識していた同僚でもある恋人から、一方的にふられてしまった水江和奏。しかもどうやら二股をかけられていたらしい。部内の飲み会でそれを察した和奏は、ショックのあまりヤケ酒を煽り酔いつぶれてしまう。次に目覚めると、高級ホテルのベッドにいた。しかもそこには上司である課長・月舘春貴の姿も! 聞けば、春貴は和奏を介抱してくれたらしい。整った容姿と仕事に対する厳しさ、そして御曹司という立場を持つ春貴は、和奏にとって憧れと同時に近づきにくい相手でもあった。とんだ醜態をさらしたことで春貴の信頼を失ったと感じた和奏はそれ以降、元彼のことは忘れて仕事に打ち込む決意をする。その後、そんな和奏の意気込みを汲み取ってくれたのか、春貴は和奏に仕事を回してくれるようになる。仕事とはいえ、ふたりきりの時間が増えていく春貴と和奏。近づきにくいと感じていたはずが、和奏は徐々に春貴に惹かれていき……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 水江和奏=大手建設会社に勤める会社員。 3年付き合った恋人にフラれて以来仕事に打ち込んでいた。 月舘春貴=和奏の上司で御曹司。 時田悠馬=和奏の元カレ。 小宮織絵=和奏の後輩で悠馬の恋人。 榊実夕=和奏の友人。もうすぐプロポーズされるのではと期待していた矢先、恋人の悠馬からもう好きじゃなくなったとあっさりフラれてしまった和奏。3年も付き合ってたし、上手くいってると思っていただけに、彼女は体調不良になるほど落ち込んだ。あまりの顔色の悪さに、上司の月舘課長から強制的に早退させられてしまう程。真面目な和奏は、自分に非があったんだろうかと悩んだりもしたが、寝込んでいるうちに馬鹿らしくなって、暫く恋愛は懲り懲りと、仕事に打ち込む決意をしたのだった。だが、せっかく忘れようと努めていたのに、人事異動で配置転換されてきた小宮織絵が、悠馬の新しい恋人と知って胸にモヤモヤが。しかも、自慢げに話す織絵によれば二人は1年近く前から交際していたと言う。呆れた、完全に和奏との交際期間と被っているではないか。要は、長らく二股を掛けられていて結局は若くて可愛らしい子を選んだってことね。ムカムカしてつい歓迎会の席で飲み過ぎた彼女は、月舘に介抱される羽目に。とんでもない迷惑をかけたと恐縮する彼女だったが、その日を境に、月舘は和奏を食事に誘うように。以前から彼に憧れに近い感情を抱いていたこともあり、意識しないと言えば噓になるけれど、段々月舘に心惹かれていく和奏。だが、そんなある日、出先で鍵を紛失してしまった和奏は、居合わせた月舘のマンションに泊めてもらうことになった。その際に告白された彼女は月舘との交際をスタート。夢のような日々を送っていたが、織絵に悠馬の元カノだったことがバレて、和奏の方が彼を横取りしようとしていた悪女という、とんでもない悪評を流され・・・・。これは完全に元カレのせいなんですが、あらぬ噂のせいで社内で和奏は孤立。間違いを訂正してくれと元カレに頼んでも、織絵を止めるどころか和奏に交際してた時期などは絶対に漏らすなと口止めまでしてくる。間の悪いことに月舘は出張中で、騒ぎを諫める人もおらず彼女は針の筵状態だった。当然、友人の実夕はそんな噂は信じておらず、大抵の人も話半分で聞いているはずと言っていた。それというのも、織絵は会長の親戚で、上司も口を出せないらしい。流石に腹に据えかねて、和奏は出張から戻った月舘に相談。愛しい恋人に恥をかかせたあげく、社会人として有り得ない態度の悠馬と織絵に彼が下した罰とは。大分割愛してますが、クライマックスまでの展開はこんな感じ。ちゃんと月舘が和奏に惚れた理由なんかも本人が語ってたりするので、興味のある方は読んでみてください。元カレとその恋人はもっと厳しい処罰でも良い気はしましたが、だからと言ってその曲がった性根が治るわけでも無し。そのクズな人間性が社内にバレただけ相当な痛手だと思う。因みに、冒頭の失恋シーンからラストまで一応、1年くらい時間が経ってるので、ヒロインは失恋してすぐにあっさりヒーローに乗り換えたわけではありません。評価:★★★★☆
2023.09.17
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2023年9月刊こはく文庫著者:日野さつきさんフェリシアは19歳で第二王子と結婚した。しかし、結婚式より以前に第二王子は亡くなっていた。フェリシアと第二王子の結婚は、王子の死を隠すための偽装結婚だったのだ。それから3年。第二王子の死が公表され未亡人となったフェリシアは、今度は第一王子と不義密通を働いた咎により、王都から追放されてしまう。実はこれは明らかな冤罪であり、フェリシアの追放は彼女を陥れた犯人を炙り出すため、王により立てられた計画だった。王都から田舎町へ居住を移したフェリシアは身分を偽り、護衛役の第三王子のレギウスと共に暮らし始める。フェリシアにはわからないことが多かった。王子であるレギウス自らがフェリシアの「護衛」を務める意味。身に覚えのない不義密通の罪を着せられた理由。しかしその時すでに、フェリシアを狙う恐ろしい謀は着実に進行していて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 フェリシア=とある理由で既に故人の第二王子に嫁いだ伯爵令嬢。 レギウス=第三王子。 アートリー=第一王子。 ジュリア=アートリーの妃。 センテッド=第二王子。タイトル通りのお話です。無用な派閥争いを避けるために、生れつき病弱だった第二王子センテッドの死は秘匿されることとなり、万全を期すために王子妃を迎えた。幼い頃に負った怪我が原因で体に大きな傷跡のあるフェリシアは、結婚を諦めており、彼女の事情を知る国王は3年と言う期限を付けてフェリシアに協力を仰いだのだった。3年経てばセンテッドの死を公表し、フェリシアは王族の寡婦として相当な額の年金を支給されるので、以降は一人でも何不自由なく暮らしていける。縁談攻撃も避けられる上に、金も貰えるとなれば引き受けるのも吝かでない。窮屈な生活ではあったが、無事に国王からの依頼を務めあげた。そして、契約終了まであとわずかと迫ったある日、フェリシアは第一王子夫妻の策略によって不義密通の容疑を掛けられてしまった。勿論、国王夫妻は第一王子たちの言い分を信じてはいなかったが、何分、声を挙げたのが王族とあっては無視することも出来ず、フェリシアは辺境の地への追放処分が決まった。悠々自適の生活のはずが、まさかのド田舎への追放とか。それでも、第一王子の第二夫人になるよりはマシ。なぜか義弟に当たる第三王子のレギウスまで付いて来たのには驚いたが、彼にも何か事情があるらしい。フェリシアが与えられたのは国境近くのガーデン男爵領。当主が亡くなり、暫くは領民たちが細々と暮らしている土地であった。だが、男爵はかなりの暴君で領民を苦しめていたらしく、その評判は最悪。新たな領主となったフェリシアはどうせなら暮らし易い土地にしようと、村の立て直しに乗り出して・・・。そもそも、フェリシアのことは無実と判っていながら王たちが彼女を辺境の地に送ったには訳がありました。この辺りは、レギウスが付いて来ていることからして読んでいるうちに割とすぐ予想が付くかと。今作の悪役となる第一王子夫妻は正直、頭が悪いなとしか。誰だよ、こんな杜撰な計画考えたのは。でもなまじ権力を持ってるだけに行動に移されると厄介。そりゃ、下手に刺激できないよなぁ。そんな中、フェリシアはレギウスと恋仲に。寡婦とは言え、夫は式前に亡くなってるから特に遠慮することも無い。彼女の背中に残る傷跡をレギウスが気にしなければ何の障害も無いのでした。しかし、さすがにしびれを切らして第一王子たちが本格的に行動し始め、てのがクライマックスまでのお話。悪役共は相応の報いを受け、最後は当然ハッピーエンドですが、二人の恋愛より、村の立て直し+先代領主の不正を暴くのが、主な展開となってたのでラブシーンが無ければビーズログ文庫を読んでるような感覚でした。ので、ラノベっぽい展開がお好きな方はハマるかも。評価:★★★★☆
2023.09.12
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2023年9月刊こはく文庫著者:にしのムラサキさん任期付き家庭科教員として働いていた松原小夏は無職になった。学校との契約が切れてしまったのだ。日雇いバイトで食いつなぐにも限界が近づいたある日。小夏は偶然、幼なじみの宮坂賢太郎が過労と栄養不足で倒れる場面に遭遇する。ここ数年は連絡すら取っていなかったが、彼は小夏にとって昔から続く切ない片思いの相手でもあった。賢太郎の悲惨な現状を目の当たりにし、純粋なる心配とほんの少しの下心をもって「ごはん、作ってあげようか?」と申し出る小夏に、賢太郎は「住み込み家政婦」として働いてほしいと提案してくる。無職の小夏を思いやっての提案なのかもしれない。しかし、ふたりの関係を「ビジネス」とすることで一線を引かれたように感じ、悲しくなる小夏。だが、これは好機かもしれない。ビジネスの関係とはいえ、賢太郎とひとつ屋根の下の暮らしを手に入れた小夏は、まずは賢太郎の胃袋を掴んでやると奔走するが……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 松原小夏=元家庭科教師。 日雇いのバイト中に再会した賢太郎宅の住み込み家政婦となる。宮坂賢太郎=IT企業の経営者。小夏とは幼馴染。桐谷小太郎=小夏の兄。幼馴染でお互い両片想い同士の恋物語です。昨日発売の新作なのでざっくりと。私立校の家庭科教員をしていた小夏は、契約の更新をして貰えず無職となった。もう少し需要のある教科ならまだしも家庭科となると次の学校も決まり難く、今は日雇いの単発バイトで凌ぐ日々。そんな最中、バイト中に近くで倒れた青年を助けると、なんと20年来片想いをしている宮坂賢太郎ではないか。学生時代からIT関連の会社を起ち上げ、今も業績は右肩上がりと聞いている。なのに何故腹を空かせて倒れているのか?彼の家に招かれ話を聞くに、どうやら金が無くてとかいうことではなく、単に忙しくて食事に気を遣えなかっただけらしい。一先ずホッとしたものの、賢太郎は小夏が現在無職でアパートの更新料をどう捻出するかと悩んでることまで知っていた。母親同士が親友なだけあり筒抜けなようで、見栄を張っても仕方ないと肯定する彼女に賢太郎は、この家で住み込みの家政婦をしてくれないかと言う。こんな大きな一軒家に住んでいるのだから恋人なり婚約者がいるのでは?と勘繰ったものの、提示された給料はとんでもない高額な上に家賃はタダ。恋人がいても構わない、小夏はその提案に飛びついたのだった。一方、賢太郎は母親伝手に小夏の近況を探りつつ、何とか彼女と恋人になりたいと長年模索していた。5年前、一念発起して告白しようとしたのだが、小夏が20代前半の男性と親し気にしているのを見て落ち込んで以来、一度はあきらめようとしつつも結局諦めきれなかった。いくら幼馴染とはいえ、若い男女が一つ屋根の下暮らすとなると拒否されるかと思いきや、余程切羽つまっていたのかあっさりOKされて逆に驚いていた。これを機に距離を縮めて告白を、そう意気込んでいた彼は、小夏もまた賢太郎に一方ならぬ恋心を抱いているとは夢にも思っておらず・・・。お互いどうしようもなく好き過ぎて、同居してそう日が経たずして二人は一線を越えるも、とにかく人格否定をしてくる父のせいで、自己肯定感が著しく低い小夏は今のこの関係がセフレだと思い込んでしまいます。なら、胃袋を掴んでしまえばもう少し恋人みたいになれるかもと斜め上の考えに陥ってしまった彼女の性格を判っているが故に、どうすれば滅茶苦茶自分に愛されてると自覚できるだろうかと考えを巡らせる賢太郎。物語の後半からは、そんな二人の微妙に嚙み合っていない攻防戦が展開。回想だけでなく、小夏の父も登場するんですが、まぁ根っからの亭主関白のモラハラ男で、そりゃ奥さんに三行半突きつけられるわ、と。亭主関白なのはともかく、モラハラはイカンよ。歳とってからは大分丸くなったけど、うちの父も似たようなタイプだったので、このヒロインの気持ちがメッチャ判る。諸悪の根源ってことで、賢太郎が下した決断は読んでて凄くスッキリしました。よくよく思えば、賢太郎くんって普通にスパダリなのでは。セフレ云々のタイトル通り、ページ数の割にエッチシーンは多かったですが、内容は凄く良いお話でした。あと、5年前に賢太郎が勘違いした男性の正体は、ですよねー、って感じ。評価:★★★★★
2023.09.02
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2023年6月刊こはく文庫著者:真波トウカさん人づきあいを避け、アロマオイルを作りながらひっそりと暮らしていた伯爵令嬢のユリアーナはある日、「王弟のディオンが不眠症で悩んでいるからアロマの力を借りたい」と王宮から依頼を受ける。しかしディオンはアロマテラピーに猜疑的で、ユリアーナのことも適当にあしらってばかり……だったが、あることに気がついた瞬間、ディオンの態度は一変する。「やはりお前だ。お前の香りが甘くて、ひどく、落ち着く……」 ユリアーナ自身の香りに心安らぐ、と気づいたディオンはなんと、アロマの代わりにユリアーナへ添い寝を求めてきたのだ。こうしてユリアーナは「ディオンの抱き枕」という大役を担うことに。ユリアーナのおかげでディオンの不眠は改善され、生来の穏やかさを取り戻したディオンにユリアーナは徐々に惹かれ始める。そんなある日、ユリアーナはディオンの妹であるヘンリエッテから、夫婦のセックスレスに効くアロマを依頼され……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ユリアーナ=伯爵令嬢。両親を亡くして以来、叔父から別邸に追いやられていた アロマテラピーを学んでいる。 ディオン=国王の弟。不眠症に悩まされている。ヘンリエッテ=公爵夫人で国王とディオンの妹。不遇ヒロインと王弟殿下との恋物語です。両親が事故で亡くなり、父に代わって跡を継いだ叔父から屋敷を追い出され乳母のミースと古びた別邸に住まわされていたユリアーナ。元々引っ込み思案な上、人見知りなのをいいことに叔父は彼女を社交界デビューさえさせていない。おかげで20歳を超えても縁談話も無く、生活費の足しになればとミースから習ったアロマオイルを作りながら細々と暮らしていた。そんなある日、ユリアーナのに王宮から依頼が。不眠症に悩まされていると言う王弟殿下のためにアロマを調香してもらいたいのだとか。ユリアーナの作るアロマには密かにファンがおり、どうやら先日伯爵夫人のために作った安眠効果のあるアロマの評判が国王陛下の耳に入ったらしい。わざわざ正式に騎士を迎えに寄越したと言うことは、王弟殿下の不眠症は重症なのかもしれない。人見知りではあるが、アロマテラピーで生計を立てて行くのならまたとないチャンス。勇気を出して王宮へ行ったものの、当の王弟・ディオンはアロマなど信じないと、けんもほろろな態度。危うく追い出されそうになったのだが、近付いた際に彼は急に態度を変えた。ディオンが言うには、ユリアーナの体臭は殊の外安心するようで・・・。最初は体臭を気に入られ、報酬を上乗せするからと抱き枕代わりを命じられたユリアーナ。いざ、覚悟して添い寝をしてみれば色っぽいことなど全く起こらず、一ヶ月近く不眠に悩まされていたと言うディオンは以降よく眠れるように。とはいえ、年頃の男女、しかもお互い美男美女とくれば意識し合わないはずもなく。最初に恋心を自覚したのはディオンの方で、鈍いユリアーナにアプローチし始めます。そんな中、ディオンの妹・ヘンリエッテから夫婦の営みがもう3ヶ月も無いので夫をその気にさせるアロマの調香を依頼されたのだが色事の経験の無いユリアーナは四苦八苦。効果を上げるために強い媚薬効果のあるオイルを使ってその香りを思い切り吸ってしまいディオンと一線超えると言う、ある意味お約束の展開があったり、お話自体は短い分王道です。ディオンの不眠症の原因は、ペットを飼ってる人なら共感できるかと。でも、最初彼が飼い犬の病気がどうこう言い出した時、犬にアロマオイル使うのかと思ってぎょっとしたりもしましたが、当然ながら犬猫には良くないものなので、終盤ちゃんとユリアーナが説明してて良かった(^_^;)正直、叔父さんがユリアーナに酷い生活を強いてたので、ザマァ展開があるのかと思いきや、特にお咎めは無し。けどまぁ、使用人代わりにしてたとかじゃなかったからな。不遇ヒロインものとしては、そういう扱いしてなかっただけまだマシな部類なのかも。とはいえ、社交界デビューさえさせてなかった姪が王子妃になるんだから、公の場で顔を合わせ難そうではあります。評価:★★★★☆
2023.08.30
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2023年7月刊こはく文庫著者:雪宮凛さん受付係として働く結城梨穂は追い詰められていた。結婚目前の婚約者を職場の後輩に寝取られ、さらには後輩の企みにより辞職に追い込まれてしまったのだ。「早く新しい職を見つけ、今より安いマンションに引っ越さなければ」と思うもうまくいかず、自暴自棄になった梨穂はひとり、バーでやけ酒をあおる。そこへ見知らぬ男性から声をかけられ、酔っていた梨穂は不幸の連鎖を彼に愚痴り、そのまま意識を失ってしまう。目覚めると、そこは知らない部屋だった。どうやら酔いつぶれた梨穂をバーで出逢った男性が介抱してくれたらしい。すっかり酔いが醒め、昨晩の非礼を詫びる梨穂。今更のように自己紹介をすると、彼・柳瀬凌哉はこんな提案をしてくる。「住む家がないのなら、ここで暮らせばいい。家事をやってくれると助かる」 悩む梨穂だったが、背に腹は代えられない。こうして、梨穂は凌哉のマンションで家政婦として住み込み業務を開始するが……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 結城梨穂=中小企業の受付係。結婚間近の恋人に婚約破棄された。 柳瀬凌哉=大企業の御曹司。大まかな展開はあらすじの通り。後輩に婚約者を取られた上に、身に覚えのない悪評により退職に追い込まれた梨穂。破談になったことを涙ながらに報告したら田舎から両親が心配して様子を見に来てくれたが、その時は心配ないと話してはいたものの、無職になってからは実家に帰って来いと言われる始末。そんな彼女が出会ったのが大企業の御曹司である柳瀬凌哉。無茶な飲み方をして瞑れた梨穂を自宅に泊めてくれた彼は、バーで聞いた彼女の事情を聞き、ここで暮らせばいいと提案。どうせ今のマンションの家賃も払えなくなるだろうし、職を探しているなら住み込みの家政婦をしてくれと。給料も出るし、家賃&生活費もタダ。最初は流石にいくら何でもバーで知り合っただけの人にそこまで甘えるのは、と渋った梨穂も、結局はその提案に従うこととなった。こうして奇妙な同居が始まるも、実は凌哉は以前から梨穂のことを見知っており・・・。何のことは無い、取引先だったのでしょっちゅう梨穂のいた会社に訪れていた凌哉は、受付で働く彼女の働きぶりを好ましく思っていたと言うオチ。彼のおかげで住処と後に凌哉の父にも気に入られて柳瀬の本社で働くことになる梨穂。そこは彼女が希望するようにゆとりある職場で、なんとも居心地がいい。お金も貯まって来たし、そろそろ出て行こうかと物件を探していたら、凌哉に見つかり咎められて、どさくさで彼の気持ちを知った梨穂は、それを受け入れ、晴れて恋人同士に。途中、凌哉の可愛い嫉妬が買い塗れる出来事があったりと、後半は割とラブラブな二人の同棲生活が描かれ、ラストではいきなり2年後に飛んで、夫婦になった梨穂たちが描かれて終わっています。婚約指輪を返せと宣った、最低な元婚約者とか、前の会社の連中には凌哉が色々手を回して釘でも指すのかと思いきや、辞職したらもう関係ないし、ばりに梨穂も気にしてなくて、それでいいの?と。ざまぁっぽい場面は一切無くて少々ガッカリ。あの連中はもうちょっと痛い目に合って欲しかった。でもまぁ、元婚約者の本性が知れただけ良かったのかもしれない。あと、ヒーローの口調がちょっと違和感。評価:★★★★
2023.08.15
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2023年8月刊こはく文庫著者:西雲ササメさんブラック企業からの転職を果たした美湖。しかし「新天地で心機一転頑張ろう!」と勢い込んで初出社した美湖を待っていたのは予期せぬ再会だった。社内でも話題のイケメン課長(しかも御曹司)は、美湖の大学時代の先輩であり、いまだに忘れることのできない片思いの相手・晴臣だったのだ。美湖の家庭は裕福とはいえず、大学時代の美湖は「名門大学に入ったものの、エスカレーター組との格差に悩むボロアパート暮らしの貧乏学生」だった。そしてその頃、貧乏アパートの隣に住んでいたのが晴臣だった。だから彼も自分と同じような境遇なんだと、美湖はずっとそう信じてきた。けれど再会した彼は御曹子で、美湖はようやく、自分がずっと騙され笑われていたのだと知った。深く傷ついた美湖は晴臣に対し、よそよそしい素振りを取る。しかし晴臣はなぜか、執拗に美湖に絡んできて、「今度は手放すつもり、ないんだ」と思わせぶりな態度まで取り始め……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 小池美湖=大手化学メーカーに中途採用されたOL 遠間晴臣=美湖の勤め先の御曹司。沢北真里愛=晴臣の元婚約者。発売したてのお話なのでざっくりと。ブラック企業を退職し、次に就職したのは驚くほどのホワイト企業の大手化学メーカー。そのマーケティング課に配属された美湖は、そこで思いがけない人物と再会した。6年前、アパートのお隣さん同士だった遠間晴臣。家賃もお安めなそこで自分と同じく苦学生と思い込んでいた彼が、実はこの会社の御曹司で、しかも美湖の上司とは。密かに晴臣に想いを寄せていた彼女は何だか裏切られた気持ちになって、懐かしそうに話しかける彼につい素っ気ない態度を取ってしまった。だが、終業後になかば無理矢理に連絡先の交換させられ帰宅すると、部屋に見覚えのない電源タップが、まさか盗聴器!?急に怖くなって、結局晴臣に頼ることになり、暫く部屋に帰らない方が良いだろうと彼のマンションに居候することに。一時的な同居を始めた二人。晴臣から当時の事情を聞き、納得した美湖だったが、以降彼からの猛烈なアプローチに戸惑います。あの頃から好きだったとか言われても、その割には留学するからとあっさり出てった癖に、とモヤモヤ。しかも、職場の先輩から、晴臣は数年前に婚約者に破談されたとかで今でも忘れられず引き摺っているらしいとの話を聞き、彼の気持ちが益々わからない。それでもあの大学2年生の時の想いもあって、つい流されて晴臣と一線を越えてしまった美湖。そんなある日、彼女は晴臣の元婚約者と言う真里愛と出会い・・・。元婚約者との邂逅で、美湖は一気に奈落の底へ。またしても思い込みの誤解で拗れかけるんですが、以前と同じ轍は踏まぬと必死に晴臣が説明して何とか仲直り。まぁ、先輩からの話が酒の席で聞いたものなんで色々混じってたから、ややこしくなってたって言う。マジで余計な事言うなよお前~。悪気が無いだけに怒れない事案でした。晴臣目線のエピソードにて美湖への滾る思いとか諸々語られているので、彼女が一人グルグルしてても妙な安心感がありましたしね。あっさり留学に行ったと云々も、お互いがフラれたと勘違いしてたから。ってか、あなた達思い込み激し過ぎない?(苦笑)ある意味お似合い。盗聴器の件は、真相というか、ですよねーってオチ。(晴臣が仕掛けたとかではない)割とコメディタッチな内容なので、あまりじれじれ系は読みたくないって時におススメな内容かと。やはりこの作者さんはこういう系統の方が好み。評価:★★★★☆
2023.08.09
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2023年6月刊こはく文庫著者:臣桜さん伯爵令嬢であるアリスは侯爵令嬢のユーフィミアのもと、行儀見習いを兼ねて侍女として働いている。ユーフィミアは心優しく見眼麗しい令嬢で、アリスは彼女に心酔していた。ユーフィミアの誕生日が近づいた冬の日、親族が集まり誕生日パーティーが開催された。そこでアリスは、ユーフィミアと彼女の従弟であるクライブの二人が恋仲であることを確信する。「氷の元帥」と呼ばれているクライブは容姿端麗で、ユーフィミアともお似合いだ。そんな二人の恋路を応援しようと決意したアリスは、クライブからの「ユーフィミアの誕生日プレゼント選びを手伝ってほしい」という誘いにも喜んで同行する。プレゼントを選びながら、クライブとたわいのない会話を交わしたアリスは「こんな優しくてかっこいい人なら、ユーフィミア様とお似合いだわ!」とますます二人の仲を応援する気持ちを強めていく。しかしその夜、事態は急変する。なんとアリスは、クライブと一夜の過ちを犯してしまって……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 アリス=貧乏貴族の娘。 行儀見習いを兼ねてユーフィミアの侍女として働いている。 クライヴ=ユーフィミアの従兄で公爵。ユーフィミア=侯爵令嬢。 エリク=皇太子。6月1日発売の作品なのでざっくりと。顔良し、性格良し、家柄良しというパーフェクトなお嬢様・ユーフィミアに惚れこむヒロイン・アリス。お嬢様の方もアリスを気に入り、何かと良くしてくれていた。貧乏であることを馬鹿にされ続け、信じられるのは家族とユーフェミアの侯爵家の人達のみ。軽い人間不信に陥っていたアリスはすっかりユーフェミア至上主義になってしまっていた。そんな彼女の前に現れたのは、ユーフェミアの年の離れた従兄・クライヴだった。アリスの見立てでは、お嬢様の想い人ではないかと踏んでいる彼は、何故かアリスと距離を縮めて来る。これは、もしかしてお嬢様との仲を深めるために側仕えの自分にリサーチしているのでは?勝手に思い込んだアリスは、彼に請われるまま買い物に付き合い、会話した。冷たい容貌で取っつき難い印象もあったけでれど、話て見ると気さくで良い人だと判り、彼女の中でクライヴの株は爆上がり。彼の様な人ならお嬢様に相応しい。私が後押しして差し上げなければ。だが、ユーフェミアの誕生日パーティーの夜、お祝い気分でそう強くもない酒を飲み過ぎたアリスはクライヴと話しているうちに雰囲気に流され、一線を越えてしまった。翌朝目覚めた彼女は正気に戻り蒼白。お嬢様の想い人を寝取ってしまったなんて合わせる顔が無いと、家族が寝込んだと嘘をつき実家へと逃げ込んだ。落ち着きを取り戻し、ふと思い返してみるとクライヴから「愛してる」と言われた気がする。単に一夜の過ちだと思っていたけれど、彼の本心が判らない。悶々と過ごしていると、クライヴから切実な想いを綴った手紙が届き・・・。お話自体は非常にシンプル。ヒロインの勝手な思い込みで、一人で思い悩む羽目に陥るわけですが、当然、ヒーローはヒロインに惚れてたから関係を持ったわけで。従兄の恋路に協力すべく、お嬢様も裏で手を貸していたりと知らぬは本人ばかりなり。お嬢様の方も実は秘密裏に付き合っているお相手がいて、って感じで読んでいると、早々におおよその展開は予想が付きます。ヒーローがヒロインに惚れた理由も後に明かされ、確かにこれは惚れちゃうよな、と。でもまぁ、ちょっと突っ走りすぎたよね、クライヴさん。それはさておき、作中彼らを貶めた心無い悪口、根も葉もない噂や悪評など、あんたらそれ本当に見たのかよ、的なことは現実にも多いですし、それらに対しての心構えなど考えさせられる面もありました。評価:★★★★★
2023.06.03
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2023年5月刊こはく文庫著者:吉田行さん高級娼館の娘として育てられたマルレーネ。美しく育った彼女は、16歳になると同時に水揚げされることが決定する。相手は上流貴族といった雰囲気の高齢紳士だった。初夜を迎え彼の腕に抱かれた瞬間、恐怖に襲われたマルレーネは彼の胸を思いきり突き飛ばしてしまう。すると彼は苦しげな声をあげたかと思うと、そのまま息絶えてしまった。マルレーネはすぐさま捕縛された。高齢の紳士は皇帝だったのだ。皇帝の殺害という重罪の疑いをかけられたマルレーネを助けたのは、皇帝の息子・ランベルトだった。ランベルトに助けられたマルレーネは、彼の用意した郊外の屋敷でまるで貴族の娘のように育てられる。それから2年、18歳になったマルレーネは、自分の存在がランベルトの邪魔になることを恐れ独り立ちを決意する。しかし、そんなマルレーネに対しランベルトは愛を告白してきて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 マルレーネ=娼館で育てられ、水揚げ間近だった少女。 ランベルト=コラド帝国の皇帝。 ドーラ=娼館「フロイデントローネ」の女将。グレートレーネ=「フロイデントローネ」の売れっ子娼妓。発売から1週間経っていないので詳細バレは無しで。娼館で育ち、女将や娼妓たちからも可愛がられて育ったマルレーネ。やがて16歳になり、彼女の水揚げの相手も決まった。だが、その日、マルレーネが嫌悪感から抵抗したところ、客が急死。心臓発作だったと後に判明するものの、客がこともあろうに皇帝であったため大騒動に。「フロイデントローネ」もかつてない危機に陥り、マルレーネが殺人で連行されかかっていた所、それを救ったのは騒ぎを聞いて駆け付けた皇太子のランベルトだった。彼は、皇帝は持病による発作での死だと告げ、マルレーネの身柄を引き取り、別邸に匿った。やがて二人は恋に落ち、2年後、ランベルトはマルレーネに求婚。彼女には断絶した貴族の家名を名乗らせ、自分と結婚できるよう取り計らうも、宮殿に迎え入れて暫く経ったある日、従兄弟のノイマンの策略でマルレーネの素性がバレてしまい・・・。マルレーネは元々、赤ん坊の頃「フロイデントローネ」に売られてきた子なんですけど、読んでるとすぐに、彼女の素性にピンときます。後半いきなりとある貴族の名前やそこで起こった事件の話が出て来るんで、まぁきっとそういうことだよねと思ってたら案の定。ノイマンの策略でマルレーネは娼館育ちなのがバレて皇帝の突然死についても言及されて窮地に陥るも、ページ数的には割と早く救済されます。もうね、ヒーロー・ランベルトが本当にイイ男なんですよ。あのクズな父親に似なくて何より。ページ数の割にベッドシーンは3回、と少し多目ですが、お話自体は綺麗に纏まっていたので、その分他のエピソードを書いて欲しいって所は無かったです。評価:★★★★★
2023.05.06
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2023年3月刊こはく文庫著者:柴田花連さん戸田涼香は家庭料理を作ることが好きな27歳。毎日のお弁当やちょっとしたお菓子づくりを楽しんでいたが最近、体重の増加が気になり始めていた。そんな折、弟の進に誘われたことで涼香はジム通いを決意する。そこで出会ったのが藤間郁也だった。彼は進の大学時代の先輩であり、今は大企業の若きCEOだという。恋愛には奥手で男性にときめいたことさえない涼香だが、彼の紳士的な立ち居振る舞いとしっかりと鍛えられた肉体にドキリとしてしまう。涼香がジム通いを始めて2カ月ほどたったある日、運悪く大雨に見舞われた涼香は、郁也に車で送ってもらうことになる。異性として意識している相手と二人きり……、今まで経験したことのない胸の高鳴りに戸惑う涼香。しかも郁也は涼香に愛を告白してきて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 戸田涼香=ごく普通の会社員だが家庭料理はプロ級の腕前。 藤間郁也=大手キッチン雑貨メーカーのCEO 戸田進=涼香の弟で郁也の大学時代の後輩。 桧山久美=進の大学時代の友人。まだ発売から1ヶ月経っていないのでざっくり目に。料理をするのも食べるのも大好きな涼香。家族からは家庭料理ジャンルではプロ級と褒められるほどの腕前。だが、碌に運動をしない事が祟ってか、太ってしまった。楽な服装に逃げがちなのも拍車を掛けそうで、弟の薦めもあってスポーツジムに通うことに。かなり厳しいメニューに開始早々ギブアップしそうであったが、涼香はそこで藤間郁也と言う青年と出会った。話を聞くに、弟・進とは大学の先輩と後輩と言う間柄らしく、卒業後も度々会っているのだとか。男性というか恋愛に興味が湧かず、恋愛経験ゼロの涼香だったが、郁也のカッコ良さにときめき、一目で心奪われてしまった。おまけに、彼は涼香が愛用するキッチン雑貨メーカーの新しいCEOだと言う。こんなハイスペックな人に彼女がいないわけがない。急激に気分も萎んでしまったけれど、キツくて辞めようと思っていたジムには通い続けた。もしかしたら、また彼に合えるかもしれない、と。とはいえ、CEOともなれば多忙に決まっている。あれから2ヶ月、いい具合に体も締まって減量にも成功したが、彼には会えなかった。そんなある日、突然の雨に降られ進に迎えを頼むと、やって来たのはなんと郁也。思いがけない再会に動揺していると、食事にまで誘われた挙句、止めに交際を申し込まれてビックリ。よくよく話を聞くに、郁也は2年前涼香に一目惚れをして、ずっと進に紹介して欲しいと頼んでいたらしい。その間、父親からCEOを引き継いだりと忙しくこうして会えるまで時間がかかっていた。道理で、その頃やたらと紹介したい人がいると弟からしつこく言われていたわけだ。興味が無いと断っていた当時の自分を殴りたい。思い当たる節はあったものの、こんなに素敵な人が自分のような地味女に一目惚れとか有り得ない。でも、彼は真剣で冗談を言ってるようには見えなかった。涼香も彼に心惹かれていたのと、後日相談した友人からの後押しもあって、彼女は交際を承諾したのだった。それから数か月経って、二人の関係は順調。郁也のマンションで涼香の手作りの料理を振舞ったりと楽しい日々が続いた。そんなある日、桧山と言う後輩の相談に乗るからとせっかくの金曜日の夜に会えずにガッカリ。面倒見の良い彼のこと、この手の相談事は実際多いのだろう。そう思っていたのだが、進からその後輩が桧山久美と言う女性と知って、複雑な心境に。しかも、大学時代から久美は郁也に想いを寄せており、諦めてないらしい。後日、その久美と会った涼香は、理不尽な牽制を受けて気分はモヤモヤ。恋人がいるのに図々しく幾度も郁也の部屋を訪れる久美の態度とそれを諫めない郁也に、ついに涼香の不満は爆発し・・・。この後輩の態度が読んでて本当にイラつきました。涼香が地味な女性なので、横取りできると踏んだんでしょうね。でもその意図は進にバレて釘を刺され、挙句、郁也の耳にも入り久美は彼から一線を引かれる結果に。まぁ、これは至極当然。郁也も良い人なだけに後輩を邪険に出来なかったんだろうけど、涼香の気持ちを考えるとあの対応は良くない。八方美人に取られかねないから。最後は元鞘で、両家の許可も出て結婚間近って感じで終わってます。何故、ハイスぺ男子の郁也が涼香に惚れたのか、その辺の経緯は彼目線のモノローグで語られており、敢えて記載していません。気になる方は是非、読んでみてください。評価:★★★★☆
2023.04.01
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2023年2月刊こはく文庫著者:猫屋ちゃきさん赤い髪に緑の目という容姿のせいで、幼いころから魔女として忌み嫌われ、すっかり人間嫌いになってしまった男爵令嬢のマーヤ。幼いころから培ってきた薬や医学の知識を生かし、戦場で救護班として働いたあと、人里離れた山奥の小屋で人間を避けるようにして暮らしていた。そんなマーヤの元へ、珍客が訪れるようになった。彼の名はオリヴァー。騎士であるオリヴァーは戦場でマーヤに命を救われ、それ以来マーヤに恋をしているのだという。マーヤは取り合わなかったが、それでも彼はめげもせず毎日のようにマーヤの元へ通ってくる。そんな日々を過ごすうち、オリヴァーが橋渡しとなり、マーヤの元には病気や怪我により薬を求める村人が訊ねてくるようになった。オリヴァーとの交流は、閉ざしていたマーヤの心を開いてくれたのだ。しかし、ある日を境にオリヴァーの訪問がぱったりとなくなる。村人から彼がまた戦地へ向かったと聞いたマーヤは……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 マーヤ=古の魔女に似た色身を持って産まれた男爵令嬢。オリヴァー=王国の騎士。戦争中にマーヤに救われた。今月の24日に発行されたお話なので、ネタバレは控えめに。男爵家に産まれたマーヤはその赤い髪と緑の瞳のせいで、差別されて育った。その昔、この国を混乱に陥れた邪悪な魔女が赤髪緑目だったそうで、以来その色身を持った女性は忌み嫌われるようになったのだと言う。おかげで家族からも距離を置かれ、貴族達からは口さがない悪口を言われる日々。すっかり引き籠りになったマーヤは、与えられた植物園で薬学と医療の勉強に没頭した。15歳になった頃、隣国との戦争が始まり、マーヤは培った知識を役立てたいと両親を説き伏せ戦地へ赴き多くの傷病兵の命を救った。そこではマーヤを差別する者は一人もおらず、多くの騎士達からも感謝された。やがて戦争も終わり、マーヤの功績は称えられることになったのだが、うわべではちやほやしても両親や貴族たちの心根は以前とさして変わりなく、心底ガッカリしたものだ。その後、国王から褒賞として山奥の土地と家を貰ったマーヤはそこに引き籠り、王都に戻ることは無かった。それから2年近く経った頃、すっかり世捨て人の様な暮らしが板についたマーヤの元に一人の騎士が訪ねて来た。彼はオリヴァーと名乗り、彼女に会って早々「好きです」と告白して来て面食らったものだ。関わりたくなくて、頻繁に尋ねて来る彼に邪険な態度を取り続けているが、めげずに懐くオリヴァーに次第に絆されていくマーヤ。彼は、麓の村人とも親しくなったようで、ある日、山で木材を拾っている最中怪我をしたと言う老人をマーヤの家に連れて行き手当を頼んだ。老人は大層感謝し、その後あれこれと差し入れを持って来てくれるように。その後も薬を求めて彼女の家に村人たちが訪れれ、家も随分と賑やかになった。彼らは、マーヤの外見を見ても差別することもなく、腕の良い魔女さんという認識らしい。オリヴァーとの仲も徐々に進展していき、彼の訪れを心待ちにしていたマーヤだったが、ある時を境にぱったりとそれが途絶えた。彼にも仕事があるし、暫く来られないかもと言われていたから待っていれば良いのだが、それが3か月近くともなればさすがに心配になって来る。山を下り、村を訪ねたマーヤはすっかり親しくなった老人からオリヴァーが成し遂げようとしていることを知って驚いていた。それは王都で行われる御前試合で優勝し、褒賞として騎士爵を賜わることらしく・・・。オリヴァーは以前、戦地でマーヤに命を救われて以来、ずっと彼女を思い続け、リハビリの後マーヤの元に訪れ通い詰めていたのでした。その一途な想いにマーヤもすっかり絆され、二人は想いを通わせますが、立ち塞がるのは身分の差。貴族たちの間に未だ根強く残る魔女への偏見も経緯を見ると、悪いのは貴族でしかなく、その身勝手さには呆れます。最後はハッピーエンドで終わってますが、マーヤの両親の態度とか色々理不尽な面も垣間見えてモヤっともしたり。でも、内容そのものは概ねいいお話だったと思います。評価:★★★★☆
2023.02.27
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2023年1月刊こはく文庫著者:桜井響香さんブラック気味な会社で仕事に忙殺されている紫陽奈は26歳。お年頃だというのに毎日終電近くまで働き詰めで、肌のコンディションは最悪。恋愛からは遠ざかった日々を送っていた。そんなある日、紫陽奈が行きつけのバーでマスター相手に仕事の愚痴をこぼしていると、整った顔立ちをした男性に声を掛けられる。彼は静かに紫陽奈の愚痴に耳を傾けてくれ、その居心地のよさに紫陽奈はついつい過ぎるほどの酒を呑み、意識を失ってしまう。次に目覚めると、紫陽奈は見知らぬベッドの上にいた。隣にはバーで声をかけてきたあの男性が裸同然の姿で寝ているではないか。まさか酔った勢いで過ちを犯してしまったのでは……と青ざめる紫陽奈に、彼は眠ってしまった君を介抱しただけだ、と説明してくれる。どうやら彼は社長らしく、「今の会社が嫌ならば、転職を考えたらどうだろう。うちの会社でも求人を行っているから、ぜひ検討してみて」と名刺を渡してきて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 田中紫陽奈=元不動産会社の事務員。壱哉の薦めで彼の会社に転職した。 瀧野瀬壱哉=アパレル会社の社長。 美和子=紫陽奈の先輩社員で教育係。 佐川=壱哉の友人で美和子の恋人。不動産会社に勤める紫陽奈(しいな)は、そのブラックな就業体制にほとほと疲れ果てていた。会社も会社だが、彼女と組んでいる営業が曲者で、雑用事は全て押し付けられるので定時に帰れた試しがない。そんな紫陽奈の楽しみは、週末にちょっとお高いバーで飲むこと。マスターがスイーツ好きで、メニューにパフェもあるのも高ポイントだった。ある日、いつものように金曜の夜に一人で飲んでいると、一人の青年に声を掛けられた。どうもマスターと話していた会社の愚痴が耳に入ったらしい。彼は瀧野瀬と名乗り、同じくこの店の常連だと言う。人気のアパレル会社の社長と聞いて驚いたが、それよりも彼は紫陽奈の勤務状況が気になるので、詳しく話して欲しいとのこと。自社の参考にしたいからと。若干戸惑いつつも現状を話して聞かせると、瀧野瀬は眉を顰めていた。退職金制度も無いし、残業代は出ないとか傍から聞いても明らかにブラック企業だ。瀧野瀬は、名刺を差し出し、良ければうちで働かないかと紫陽奈を勧誘。何だか話が弾んで飲み過ぎて、彼に迷惑を掛けてしまったが、ホテルに運び込まれても特に何かされた形跡は無く、別れ際に瀧野瀬からは取り敢えず転職を考えてみてくれと念押しされた。30そこそこで社長でハンサム、それに良い人だった。検索してみたら彼の会社は評判もいいし、転職も良いかもしれない。意を決して会社に辞表を出した紫陽奈は1ヶ月後に退職し、瀧野瀬のアパレル会社の採用試験を受けて、無事入社に漕ぎ着けた。指導係の美和子は話しやすい人ですぐ友人関係となり、瀧野瀬とも再会。転職の動機は心機一転したかったのもあるが、彼に会いたいというのも大きかった。せめてものお礼にと瀧野瀬を食事に誘った紫陽奈は、彼から実は一目惚れだったと告白され、お互い同じ想いだと知って二人は恋人同士に。壱哉の立場を鑑みて、一先ず周りには伏せておくことにしたものの、彼の友人である佐川とその恋人の美和子だけには話してある。交際も順調で、結婚も視野に入れていると彼から聞かされた時は驚いたものの、心底嬉しかった。互いの実家にも遊びに行ったし、毎日が幸せだったのも束の間、二人のデート現場を見たと言う社員の話が瞬く間に社内で広まり・・・。随分と順風満帆に話が進むなと思っていたら、終盤にアクシデント発生。女性人気の高い壱哉を狙っていた秘書達の妬みを買い、コネ入社に違いない等悪評を広められ、挙句の果てには着払いで食品をいくつも送りつけるなどの嫌がらせが続くように。女の嫉妬って怖い(^_^;)ってか、そんな性格だから振り向いてもらえないんですぜ。でも、流石に仕事に影響与えることもやらかし出したので、結局、壱哉に助けを求めることになるのですが、もっと早く頼んなさいよと。最後は、壱哉が出回っている悪評について否定した後、結婚を発表。嫌がらせも止まり、正式に彼が紫陽奈にプロポーズしてお終い。終盤かなり駆け足でしたが、上手く行って何より。正直、揺るがない関係だったので、何か一波乱あるとしたらこの手のトラブルだろうなと思ってたら案の定。ので、じれじれ展開はほぼ無しなので安心して読めます。評価:★★★★
2023.02.12
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2021年7月刊こはく文庫著者:田崎くるみさん大手菓子メーカーに務める佐藤愛華と佐藤樹は、顔を合わせれば喧嘩し合う犬猿の仲。しかし仕事中は互いにないものを補い合い、切磋琢磨し合うベストパートナー。趣味や価値観が同じで、なにより仕事に対して同じくらい情熱を抱いている樹に愛華は惹かれていた。ところが、仲を深めれば深めるほど樹は愛華に対して意地悪になっていく。それは樹が自分に心を開いてくれている証拠だとはわかっていても、異性として意識されていないようで悲しくもある。そんな時、二人の部署に新入社員の心愛が配属される。顔も態度も女性らしくて可愛らしい心愛は、すぐに部署のアイドル的存在に。そして、こともあろうに心愛は樹に一目惚れしたと言って、愛華に協力してほしいと頼んでくる。素直に自分も樹が好きだと言えない愛華は、心愛に協力すると言ってしまい……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 佐藤愛華=大手菓子メーカーの商品企画部勤務の会社員。 佐藤樹=愛華とは同期入社で同僚。部署のムードメーカー。稲葉さゆり=愛華の同期で友人。 水川雄一=商品開発部のエース。 沢田心愛=商品企画部の新入社員。お互い好きなのに素直になれない者同士の恋物語です。今改めてあらすじ読んだら、ちょっと内容と展開違うような。愛華が大手菓子メーカーに入社してもう3年。商品企画部で営業と企画を担当し、彼女が携わった商品も幾つか販売に漕ぎ着けた。仕事は楽しく、気の良い先輩たちに囲まれ乗りに乗っている状態ではあるが、そんな愛華にも悩みがあった。それは同期入社で同僚の佐藤樹についてである。同じ苗字な事もあって先輩たちからは「佐藤夫妻」と呼ばれからかわれているのだが、樹はそんな状況をものともせずに愛華に構い、気安く触れて来るのだ。その度にドキドキしている彼女の気持ちも知らずに。そう、愛華は樹に恋をしていたのだった。なのに、中々素直になれず邪険な態度を取ってしまう。樹にしてみればさぞ可愛気の無い女だと思われている事だろう。仕事も出来て高身長、加えてハンサムな上に性格も明るく部署を盛り上げるムードメーカーな彼はモテる。でも、入社以降はフリーだと言う。周囲には今は仕事に打ち込みたいからと言っているようだが、さゆりの言うようにアタックするなら樹がフリーなうちに仕掛けるべきだ。いい加減妙な意地を張らずに素直になれとアドバイスを受け、愛華は漸く決意を固めたのだった。4月になり、商品企画部にも新入社員が配属されて来た。沢田心愛と自己紹介した新入りは女の目から見ても可愛い。部署内の男性陣が色めきたつほど。樹が好意を持ったらどうしよう。ハラハラしていると、何と樹が心愛の教育係に任命され、不安は増すばかり。心愛は樹にベッタリで、その好意を隠そうともしない。しかも、本人から堂々とライバル宣言をされて愛華も面食らったものだ。でもだからと言って弱腰になってはいけない、自分も樹が好きだから負けないと心愛に告げ、彼を巡ってのバトルが始まった。とはいえ、早々に性格は変えられず、大分心愛に差を付けられている気がする。樹は次の新商品の企画に取り掛かり始めて、最近は挨拶くらいしか交わしていない。どうにか、彼を食事に誘うことに成功し、今夜こそ想いを打ち明けると意気込んでいたものの、まさかの樹と心愛とのキスシーンに遭遇。告白する前に玉砕とは、落ち込む愛華は、ある日部長から商品開発部の水川を紹介され・・・。このキスシーンも心愛による悪戯だったんですけど、上手い事愛華が誤解してしまい、樹は大焦り。そもそも、樹もずっと愛華に片思いしており、小学生が好きな子に構ってしまうがごとく、彼女をからかっていたのでした。おかげでどう告白していいか難しい関係に。愛華と同じ悩みを抱えていたことに気付かず、しかも彼女は水川とデートすると言う。一大決心した樹は二人のデート現場に乗り込み、想いを打ち明けるのでした。全編ネタバレするのもアレなので、終盤はの展開は敢えて割愛しています。サブキャラの後押しがいい具合に効いてるお話でした。さゆりさんがホントいい人。彼らが上手く行ったのは彼女の根回しのおかげですよあと、水川さんも新たな恋がありますように。個人的には、樹より水川さん派です。評価:★★★★☆
2023.02.08
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2023年1月刊こはく文庫著者:秋花いずみさん桃瀬朋美には忘れられない恋がある。中学生の頃に一目惚れした、私立学校に通う名前も知らない少年。ほろ苦い初恋は25歳になった今なお、朋美にとって特別なものだった。ある日、朋美の働く広報部に中途採用で男性社員が配属され、彼を見た途端、朋美は衝撃を受ける。西野正弥と名乗る彼は、朋美の初恋の相手だったのだ。しかし正弥は朋美のことを覚えてはいない様子で、初対面のように接してくる。10年も昔のことを引きずっている自分がおかしいのだと納得した朋美もまた、彼に倣って初対面を装い、ふたりはいい同僚としての関係を築いていく。そんな関係が少しずつ変わり始めたのは、数か月後のことだった。ある企画でバディを組むことになった朋美と正弥。増えていくふたりの時間の中で、朋美の胸には昔のトキメキがよみがえり始めていた。そして正弥の言動にも、思わせぶりなものがちらつくようになり……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 桃瀬朋美=飲料メーカーに勤める会社員。恋より仕事のキャリアウーマン。 西野正弥=朋美の同僚。 相田亘=朋美の元カレ。現在は友人。先月下旬発売の電子書籍なので、ざっくり目に。桃瀬朋美は未だに初恋が忘れられずにいる。今となってはただの苦い思い出だが、10年経っても未練がましく初恋の人がチラつくなんて、そりゃその後恋をしても上手く行かないはずだ。何度か別れを繰り返し、それでも何となく馬が合って1年続いた亘とはお互い就職活動で忙しく自然消滅。嫌いで別れたわけではないので無事採用された後は友人として付き合っている。亘と別れてからは暫く恋愛をしていない、せっかく大手飲料メーカーに就職できたのだし、とにかく仕事が面白い。広報部に配属されてバリバリ働いてあっという間に3年。そんな仕事一辺倒だった朋美の前に、初恋の人にそっくりな西野正弥が配属されて来たのだった。正弥は清潔感のあるハンサムで、あの彼が10年経ったらきっとこんな感じになってるはず。当時熱を上げてはいたものの、学校が違うので名前も知らなかった。でもいきなり、昔あの辺に住んでました?と尋ねるのも、お近づきになりたい口実に取られそうで気が引ける。どちらにせよ、同僚とはいえ担当が違えば話す機会もそうそうないはず。そう思いつつも、未練がましく初恋を引きずっていただけに、内心正弥のことをかなり意識してしまっていた。それに何だか、やたらと正弥からの視線を感じるのは気のせいか。それから二ヶ月の間は特に何もなく、正弥とは挨拶する程度の関係だったが、ふと気づいて視線を上げると彼と目が合うことが多いのは相変わらずだった。単に自意識過剰なのかもしれないが、初恋の人に似てる人からの視線に落ち着かない。幸い、仕事に没頭していれば気にならなくもなるけれど、状況を聞いた亘は「お前に気があるんじゃないか」となぜか不機嫌そう。邪推するのは心配してくれるからだろうけど、そんなこと言われたら意識してしまうじゃないか。それから、また暫く経った頃、新商品の企画を各部署から代表して出すことになり、朋美も何か案を出そうと考えていると西野から開発企画にあたり、自分とバディを組んで欲しいと頼まれた。新商品は、人気の定番商品のリニューアルでジャンルはアルコール。酒が飲めない西野は企画案は出せても肝心のテイスティングが無理とのことで、朋美が酒好きと耳に挟み、協力を仰ぎたいのだと。優秀な彼と組めば、もしかして商品化も夢じゃない。朋美はその申し出を受けたのだった。それからというもの、二人は各々の仕事の合間に商品開発に打ち込み、一緒に行動することが多くなってくると、朋美は正弥を今まで以上に意識するように。長らく留学していたせいか、正弥はやたらと距離が近い。しかも、ふとした会話から正弥はこの会社の御曹司と知り、驚愕。縁故採用と言われたくないからか彼はそのことを隠しているので、朋美も喧伝するつもりもないが、自分とは世界が違う人だと思うと意気消沈。だが、ある日正弥からこのプレゼンが終わったら告白してもいいかと告げられ・・・。結局二人は両想い同士で、正弥視点のモノローグでも語られてますが、朋美の初恋の相手だったことが判明。彼もまた朋美に想いを寄せていたのだけど、ンバレンタインデーのある出来事から誤解が生じ、以降二人は会うことは無く、10年後に再会したってオチでした。まぁそうだろうなぁとは思ってたんだけど、誤解の理由もそりゃしょうがないよねって感じで、もしあの時初恋が実っても、子供だっただけに上手く行かなかったろうって言う朋美の意見も、確かに。きっと回り道も必要だったってことで、無事に商品化を勝ち取り、二人は恋人同士に。亘はよりを戻したかったようですがフラれます。この人も良い人なだけに勿体ないけど、本命には適わず。本編後のおまけで番外編があり、ラストから半年くらい経ってのプロポーズエピソードでした。初恋は実らいないと言うけれど、見事に実らせたっていうお話。評価:★★★★☆
2023.02.05
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2022年10月刊こはく文庫著者:夕日さんアルテアン王国の王は無能な暴君だった。王妃や王子、姫には浪費癖があり、重税を強いられている民の不満は高まり爆発寸前。しかし第三王女であるエステルだけは心優しく無垢な姫で、そんな国の行く末と無力な自分を憂いていた。エステルには、想う相手がいた。バルテルス王国の王太子であるゴットフリド。かつて、エステルの婚約者だった人だ。アルテアン王国の先は長くないと悟ったゴットフリドに「国を捨て今すぐ嫁にこい」と言われたとき、エステルは「私はこの国の王女です。この国と命運をともにします」とそれを拒んだ。そして二人の婚約は解消されたのだった。それから数年後、ゴットフリトのいう通り、アルテアン王国はクーデターにより滅んだ。王族がすべて処刑される中、なぜかエステルだけは王都のはずれにある屋敷に幽閉されてしまう。理由がわからずおびえるエステルの前に現れたのは……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 エステル=アルテアン王国第三王女。ゴッドフリト=バルテルス王国国王。エステルの元婚約者。 エクムント=ゴッドフリトの侍従。 アンサ=ゴッドフリトの婚約者候補の伯爵令嬢。マリネン伯爵=アンサの父親。長らく続いた悪政と貴族たちの腐敗によって、貧しい生活を強いられた国民達の不満は爆発。ついにアルテアン王国では反乱が起こった。国王一家は罪に問われ、投獄されて間もないうちに皆斬首刑となったのだが、その中でただ一人刑を免れた者がいた。第三王女のエステルである。彼女は貴人専用の牢屋で2週間ほど過ごした後、バルテルス国王の侍従・エクムントに連れられ、かの地に赴いた。家族同様、自分も刑の執行を待っていたと言うのに、予想外の展開に内心驚いたものの、連れて来られたのは、とある屋敷。エステルの侍女を務めた伯爵令嬢・アンサには敵意の籠った目で見られた上に、聞こえよがしな悪態をつかれたりもしたものだが、自分の立場を思えば仕方ない。アンサの言うように誰かの愛人か後妻になるとしても、まだ温情ある待遇なのだろう。だが、彼女には忘れられない人がおり、彼以外の人とはそんな関係になりたくはない。ふとそんな独り言を溢した時、部屋に入って来たのはエステルの想い人・ゴッドフリトであった。彼はエステルの元婚約者であり、不穏な王国の情勢を察して早々に輿入れをして来いとまで言ってくれていた。だが。彼の重荷になりたくなくて婚約は解消した。あれから2年。当時よりずっと男らしくなったゴッドフリトは、何故か酷く怒っており、エステルと無理矢理関係を持つと、一切の外出を禁じ屋敷に閉じ込めた。以降、足繁く通うゴッドフリトに囲われるような生活を送ること2週間。婚約者も作らず、愛妾の元に通い詰める国王に貴族達からかなり批難されているとエクムントが溢していたが、その旨エステルがいくら言ってもゴッドフリトは聞く耳を持たず日を置かずに訪れる。一応、エステルの身元は伏せられているもののいつ彼女の素性が知れるか判らない。余計な反感を買う前に正妃を決めた方が良い。もう会えないと思っていた人とこうして過ごせるだけで充分。日陰者に甘んじるエステルをなんとか正妃に据える方法は無いものか、思案するゴッドフリト。お互い初恋の人同士の二人は長らく気持ちがすれ違っていたものの、誤解が解けて相思相愛だったことに気付きます。改めて仲睦まじい暮らしが始まって少し経った頃、エステルに喧嘩を売ったことにより、娘のアンサが婚約者候補から外れたことを恨みに思ったマルネス伯爵が兵を連れて邸を襲撃し・・・。クズな親兄弟のせいで、しなくても良い苦労に見舞われる心優しきヒロインって感じのお話でした。言うなれば、トンビが鷹を産んだばりに家族とは全く違う気性を持ったエステル。質素で慈善事業に力を入れていた彼女を慕う者は多く、エステルのみ処刑されなかったことに安堵したそう。先行きの暗いこんな国には置いておけないとゴッドフリトは早々に結婚しようと提案したものの、断られ別の方法でエステルだけは救おうとします。そして出た答えはクーデターでした。反乱軍に手を貸す代わりにエステルの無事を約束させ、私邸に匿うと言う誤解されかねない方法だったけど、結局お互いの気持ちが後に判って元鞘に。勘違いヤローの伯爵によってエステルは深手を負うも、完治した彼女はゴッドフリトの正妃となります。亡国の王女では難しいとされたこの婚姻。どうやって周りを納得させたかというとなるほどね、なやり口でした。襲撃事件からエピローグまでの最後の20ページくらいがとにかく怒涛の展開なので、飽きさせない内容なのが良いです。評価:★★★★★
2022.12.21
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2022年12月刊こはく文庫著者:佐倉紫さん没落寸前のトゥエルドゥ侯爵令嬢セラフィーナ。すでに両親を亡くし兄弟姉妹もいない彼女は、自分の代で家を途絶させるわけにはいかないと、なけなしの金を叩いて買ったドレスに身を包み、婿探しのため単身舞踏会に出席する。これまで社交界とはまるで縁のない生活を送ってきたセラフィーナだったが、声をかけてきた青年貴族に誘われ、別室で話をすることに。ところが小さな部屋に放り込まれ、そこで待ち受けていた男たちの会話から、自分が仲間うちの賭けの対象にされていたこと、さらにはセラフィーナをここに連れ込んだのが公爵令息であることを知る。ここで騒げば、貴族社会から追放されるのは必至。だが、襲いかかろうとする彼にセラフィーナはーーパァン! と見事な平手打ちを食らわせたのだった。公爵令息と揉めた様子を見ていたらしい男性に、これからどうするつもりかと訊ねられたセラフィーナは、爵位の返上と修道院行きを宣言、晴れやかな場を辞去。だが翌日、男性がセラフィーナを迎えにくる。実は彼は王太子ベルナルドで……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 セラフィーナ=王太子に見初められ王宮で暮らすことになった没落貴族の娘。 ベルナルド=オーベング王国の王太子。 ディティエ=公爵家の跡取りでベルナルドの従兄。 モアナ=セラフィーナの乳母。こはく文庫の今月の新刊で、佐倉紫さんの最新作です。こちらもつい先日発売なので、ざっくりと。セラフィーナはトゥエルドウ侯爵家の一人娘。本来ならば婿を取っていてもおかしくない年齢なのだが、数年前に両親を亡くし何より貧乏なので縁談そのものに縁が無かった。現状、セラフィーナが当主代行をしているものの、この国では女性は爵位を継げない。婿を取りたいのは山々だが、そんなもの好きが果たして現れるのやら。どちらにせよ、もうタイムリミットだ。家の金をかき集めて何とかドレスを購入し、セラフィーナは婿を探しに舞踏会に参加。しかし、ほぼ初めての舞踏会でどう振舞えばいいのか勝手が判らず、当初の意気込みも虚しく壁の花になっていたセラフィーナはガインシュ公爵家の跡取り・ディティエに休憩室に連れ込まれます。持ち前の気の強さで彼を言い負かし平手打ちをかましてやったまでは良かったが、相手は公爵家。ディティエの脅し文句からして、これは非常に拙い。両親には悪いが、結婚はもう無理だろう。潔く爵位返上してモアナと修道院に入るのだ。それが良い。そういえば、休憩室から逃げ出した際、心配してくれて声を掛けてくれた青年は良い人だったなぁ。だが、翌日、修道院に向かおうとしていた二人の前に現れたのは昨夜の親切な青年。彼はセラフィーナを迎えに来たと言う。あれよあれよという間に豪華な馬車に乗せられ、セラフィーナはモアナ共々、王宮へ連れて行かれます。途中仕立て屋にまで寄り、ドレス迄誂えられて戸惑う彼女は王宮に着くなり謁見の間に。爵位返上って書面だけじゃダメな手続きなのかと思いきや、そこで告げられたのはまさかの王太子との結婚話。あの親切な青年は王太子・ベルナルドだったのだ。どうも、ディティエに臆することなく意見した挙句、ひっぱたいたその気概が気に入ったらしい。それに、亡き両親に似てセラフィーナは大層な美人だった。要は王太子に一目惚れされたってこと?突然の話に面食らうも、由緒だけはある侯爵家ということもあって国王夫妻も反対はしなかったが、彼女には寝耳に水の話だろうと、先ずはお互いのことを知りなさいとセラフィーナを王宮で預かると宣言。モアナも彼女付きの侍女として厚遇してくれるようで、荒れ放題だった邸も修復の上、爵位もそのまま留め置いてくれるとのことで、至れり尽くせり。これも王太子のおかげ。まだよくわからない人だけど、それでも受けた恩の為にも誠実に接しようと思っていた。共に過ごすうちに二人はどんどん距離を縮め、セラフィーナもベルナルドに惹かれて行くように。そんな時、ディティエからちょっかい掛けられたり、またまた襲われそうになるも何とか回避していた矢先、公爵家事態に不祥事発覚。常々従兄の素行に胸を痛めていたベルナルドは、これを機に重い罰を下します。お話自体は非常にシンプル。タイトル通りの内容で、没落令嬢が王太子妃になると言うシンデレラストーリーになっています。あのクソ公子が最後までしょうもない奴でしたが、芋づる式に生家の悪事迄明るみに出てしまう羽目に。これはきっと父親である公爵に恨まれることでしょう。主役二人の恋愛は割と早く纏まって、すぐラブラブになったのはページ数の兼ね合いかな。セラフィーナは物凄く頭がいいので後の評価が記載されていたのが良かったです。侯爵家も存続して何より。評価:★★★★☆
2022.12.15
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2022年11月刊こはく文庫著者:日向野ジュンさん社長秘書として働く水瀬悠は、仕事に没頭して生きてきたせいで25歳になったが、いまだに恋愛経験はゼロに等しく、もちろん処女。そんな悠を心配した同僚の万緒は、たびたび悠を合コンに誘ってくれる。気遣いはありがたいが合コンにまったく興味のない悠は、断る口実に勢いあまって「じつは婚約者がいる」ととんでもない嘘をついてしまう。しかも悠の嘘を信じた万緒は妄想を膨らませ、とうとう「悠の婚約者は上司である社長・津城唯史なのだ」というとんでもない勘違いに行きついてしまう。あとに引けなくなった悠が、唯史本人に事情を打ち明けると、彼は「それなら婚約者を演じてやろう」とノリノリだ。こうして、唯史の偽装婚約者になった悠だったが、唯史の悠に対する態度は「偽装」にしては過ぎるほどに甘く優しくて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 水瀬悠=入社3年目の社長秘書。親友からの合コン攻撃を躱す為についた嘘の せいで、唯史と偽装婚約をする。 津城唯史=大手レジャー企業の社長。以前から自分の秘書を務める悠に好意を寄 せており、彼女の嘘の片棒を担いだ。 黒川万緒=悠の親友で同僚。 津城雅姫=唯史の従姉妹。こはく文庫の今月の新刊になります。発売日がつい先日なので、ざっくりと。水瀬悠は入社3年目の社長秘書。社長の津城唯史は優秀だけれど、少々俺様気質な性格で担当になった当初は手を焼いたものだが、付き合いも3年になれば、気心も知れて来る。そんな二人の関係が変わったのは悠の親友で同僚の万緒とのやり取りが切欠だった。エスカレーター式の女子校卒業の悠は男性とは縁遠く、25歳になっても恋愛経験はゼロ。そんな彼女を心配してか、万緒はしょっちゅう合コンをセッティングしては悠を誘ってくる。しかも、どこで見つけて来るのか、合コンに呼ばれる面子は医者だの弁護士だのグレードの高い男性ばかり。正直、自分にはハードルが高い。万緒の気遣いは嬉しいが、そんなこともあって毎度誘われても逃げていた。だが、今回の万緒はいい加減来てもらうぞ、とばかりに中々折れない。断りの理由が思い浮かばず、「自分にはもう婚約者がいるから」と嘘をついてしまった。これは流石に無理があったか、と万緒の反応を伺っていると、何やら様子がおかしい。そして、漸く口を開いたかと思いきや、もしかしてお相手は社長?と尋ねられ、答える間もなく一人で納得して盛り上がっている。どうやら、万緒の中にあったカップリングが合致したらしい。噓がバレたら怖いけれど、一先ずこれで暫くは合コンのお誘いからは逃げられるだろう。だが、後から考えると途方もない嘘をついてしまったと反省しきり。万緒はベラベラ他人の秘密を喋る子ではないものの、これが唯史の耳に入ったらどうしよう。心配でため息をつきまくっていたら、当人に見咎められた挙句、何もかも化も白状させられてしまった。これは下手するとクビか、とびくびくしていると唯史は、その嘘に乗ってやると言う。これからは婚約者として振舞うからお前もそのつもりでとの言葉に、驚いていると彼は本気らしい。あれよあれよという間に深い関係になり、一ヶ月もすると近いうちに式を挙げるからと告げられパニック。そもそも、これってフリじゃなかったっけ?元々、根は優しい人だしハンサムな彼に憧れは持っていたけれど、何がどうしてそうなった。それに、唯史は御曹司。一般家庭の娘との結婚なんて果たして先方の両親はどう思うやら。不安に苛まれていた悠の予感は的中。彼の両親ではないが、従姉妹だと言う雅姫はこの結婚を大反対。悠と唯史の婚約発表の場で、雅姫によって思いもよらない妨害を受けて・・・。お話自体は非常にシンプルな構成になっていて、恋愛面に関してはトントン拍子に上手く行くんですが、終盤間際に従姉妹と言う恋のライバルが出現。そこで何やかやあるも、結局結婚に漕ぎ付けハッピーエンド。この社長は協力をすると申し出た時点で、悠に気があるのはバレバレだったんで、まぁ一線超えるのも早い早い(苦笑)俺様な彼氏に振り回されるヒロインという図が続くんですけど、最後の方では上手く手玉に取ってる風に変わってたのは面白い。評価:★★★★☆
2022.11.29
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2022年11月刊こはく文庫著者:葛城阿高さんラライア地方の領主であるヘザー伯爵家の嫡男ダン。その婚約者サラは、たび重なるダンの浮気に婚約解消を申し出る。無事に婚約解消できたと思ったのも束の間、サラにある問題が降りかかるのだった。町長である父親が横領をしたのだという。サラは父親を救うために、ギリスギヘト王国唯一の魔導伯であるイゴル・サイプレスに近づき弱点を探ることに……。だが夜会の日、イゴルに近づくものの作戦は失敗。サラはすべての事情をイゴルに話す。するとイゴルから真実を聞かされ、偽装結婚に誘われる。こうしてサラはイゴルの家で暮らすこととなるのだった。父親の疑いを晴らすための期間限定の偽装結婚生活だったが、次第に惹かれ合っていくサラとイゴル。しかしある日、ヘザー家に仕える男がやってくると、サラを無理矢理、ダンの屋敷へと連れ去ってしまう……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 サラ=ヘムロック男爵の一人娘。とある事情でイゴルと偽装結婚をする。 イゴル=代々国王の側近を務める「魔導伯」サイプレス家の当主。 利害の一致からサラに偽装結婚を持ち掛けた。 ダン=地方領主ヘザー伯爵家の当主でサラの元婚約者。マルエル=サイプレス家のメイド。エルマー=サラの父。ダンの治める領地にある町で町長を務めている。こはく文庫の今月の新刊です。なんか、あらすじで終盤までの展開が書かれてますね(^_^;)サラは男爵家の一人娘。小さな町の町長を務める父は清廉潔白な人で、少ない予算では賄えない施設や橋の修理に私財を投げうっていた。おかげでわずかばかりだった財産は底をつき、家計は火の車。サラも役場の事務員として働きながら生活を支えていた。そんなある日、父が横領罪で逮捕されてしまった。生活苦に陥るのが判っていても町やその住民達が暮らし易くなるよう心血注いでいた父が横領など有り得ない。冤罪に違いないとあちこちに訴えて回ったが、サラは犯罪者の身内だからと事務の仕事を解雇され、あんなに父を慕っていた人々も跡形も無く消え去った。長年仕えてくれていた古参のメイドすらも、巻き添えを嫌って離れて行った時、サラは絶望したものだ。しかし、嘆いてばかりもいられない。なんとしても父の無実を証明しなければ。焦る彼女の元に、サラの元婚約者でこの地の領主であるダンが訪れた。彼はエルマーが無実だと証言しても良いと言う。但し、手を貸すのは自分が提示する作戦にサラが従ったらとの条件付きであったが。ダンが言うには、魔導伯・イゴルの弱みを見つけ、あわよくば失脚に追い込みたいらしい。イゴルは悪逆非道な人物で何度も煮え湯を飲まされたから仕返ししたい、そこでサラに片棒を担いでもらいたいというのがダンが裁判で父の為に証言する条件だった。意見が合わず対立している相手とかなのだろうけれど、失脚にまで追い込もうとしてるのは穏やかではない。一抹の不安もあったが、サラは話に乗った。潜り込んだ夜会にて、噂のイゴルと遭遇。運良く交流を持てたのはラッキーだったが、彼はダンが言う人物像とは真逆な人柄でサラは混乱してしまった。普段から奇妙な仮面をかぶった風変わりな人ではあるものの、ほんのひと時接しただけでもイゴルが善人なのが判る。よくよく思えば、仕返しなんて目論むダンの言い分を真に受けた自分がバカだった。婚約者時代も、嘘八百を繰り替えし浮気ばかりでダンの父に直談判して婚約解消したくらい最低なおとこだったのに。焦るあまり愚かなことをしかけたと、サラはイゴルに誠心誠意謝罪し、事情を説明。全てダンによる企みだったと白状するのでした。ダンの名前を聞いたイゴルは状況を察したようで、エルマーの横領事件についても自分たちの内偵がバレたのが原因だったと告げます。そもそも横領していたのはダンの方で、それをイゴルが王命で調査していたのだそうだ。ダンは発覚を恐れて、エルマーに罪を擦り付け逮捕させたのだろう。クズだとは思っていたが、女癖だけでなく性根も腐っていたとは。サラは怒り心頭だったけれど、とにかく別の方向で父を助ける手段を考えなければ。内心で一人決意したサラを見ていたイゴルは、ダンを断罪するべく力を貸すと言い、偽装結婚を持ち掛けた。ダンの意向に従ってイゴルを篭絡、結婚に漕ぎ付けたと報告すればいい。彼もダンを追い詰めたいので、利害は一致する。情報を渡すフリをして向こうが安心してるうちにイゴルが決定的な証拠固めをするとのこと。戸惑いながらも、サラはイゴルからの申し出を受け、二人の作戦が始まった。仮面夫婦ではあるものの、実はイゴルは美しいサラに一目惚れで、彼女に着けた専用メイド・マルレンに夜な夜なこの偽装結婚を本物にしたいのだと相談。勿論、ダンを追い詰めるのは仕事でもあるから全力を尽くすつもりだ。しかし、サラは一体自分をどう思っているのか不安で仕方ない。マルレンはサラの方もイゴルに好意を持っているのに女の勘で気付いていたが、第三者が言っては野暮と言うもの。だから敢えて言わなかったのに、二人は勘違いから両片思いの沼に嵌っていく。口さがない事を言う貴族達も多かったが、証拠固めも大方終る頃には二人の距離も大分近付いた。そんな頃、いよいよ追い詰められたダンが自らの側近を使い、サラをイゴルの屋敷から拉致して・・・。勿論、サラは間一髪のところでイゴルに救出されますが、ダンが本当にしょうもない奴でその言動に腹が立って腹が立って。婚約破棄して正解だったわ。浮気だけでなくDVとか結婚してから判っても不幸一直線ですもんね。エルマーも無事に釈放され、ダンは横領だけでなく証拠を消すために抱き込んでいた裁判官を殺害してたり、サラの誘拐&暴行など余罪はたっぷり。相応の報いを受けることに。サラとイゴルは想いを打ち明け合い、結婚を続行すると決めてお終い。サイプレス家の者が何故魔導伯と呼ばれるのか、その辺の事情も作中明かされており、それが仮面を被っている理由とも繋がっています。ファンタジーやコメディ部分も加味されてて、面白いお話でした。評価:★★★★★
2022.11.24
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2022年11月刊こはく文庫著者:仙崎ひとみさんメノリア大公国は前大公亡き後、王座に居座り続ける前大公妃ブリジットと現大公モーガンの専横と浪費で傾いていた。前大公の忘れ形見、公女エリスと弟レイフは義母ブリジットに虐げられ、それに耐える日々を送っていた。大公国は、隣国アルス連合王国からの借款で財政をかろうじてもたせていたが、累積する赤字でそれも限界。何か別の手段で借款を棒引きさせるか支払いを猶予させねばならない。ブリジッドは、今はみすぼらしいが歴とした大公の娘であるエリスを、アルス連合王国の国王ウォルターに愛人として差し出そうと画策した。弟を人質に取られ、隣国への輿入れを承諾させられたエリス。古い馬車に乗せられ、国境の森を越える。襲いかかる黒ずくめの一団。しかもただの山賊ではない……絶体絶命のエリス。そこに大地を揺るがして軍馬の群れが。アルス軍の軍旗に算を乱す一団。黒い瞳、黒髪の騎士がエリスを救い出す。彼こそがアルス連合王国を統べる“猛獣王”の異名を持つ軍人王ウォルターであったーー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 エリス=メノリア大公国公女。弟共々継母に虐げられ冷遇されていた。 継母の企みで借款の肩代わりとしてウォルターに売られる。ウォルター=アルス連合王国の軍人王。エリスの人柄を気に入り、正式に王后とし て迎える。ブリジット=メノリア大公国前大公妃。夫とエリス達の母親が事故死して以降、姉 弟を虐げていた。 モーガン=メノリア大公国大公。エリスとレイフの異母兄。 レイフ=エリスの弟。姉の輿入れ後に継母から一層悲惨な扱いを受ける。 エト=ウォルターの副官。 ジェイン=大公国城のメイド頭。率先してエリス達を虐めていた。こはく文庫の今月の新刊で、不遇ヒロインもの。エリスとレイフは山間に位置するメノリア大公国の公女と公子。だが、彼女達の母親が城で働いていた下女だったことから、愛人の子として蔑まれていた。それでも両親が生きていた頃は陰口はあってもちゃんとした扱いを受けていたのだが、3年前二人は旅行先で事故死。父が姉弟の将来の為に正式な公女と公子という身分を与えてくれていたと言うのに、諫める者がいなくなったせいで、大公妃・ブリジットの暴走が始まった。大公位はブリジットの実子・モーガンが継いだものの、母親の傀儡である彼は禄に政務もせず遊び惚け親子で豪遊する日々。元々豊かではなかった国庫金は早々に食い潰されたのだった。そして、残された姉弟は狭い屋根裏部屋に追いやられ、食事も碌に与えられない。ブリジットの命令で使用人以下の扱いを受ける二人はメイド頭のジェインからも手酷い虐めを受けている。そんなある日、エリスは隣国・アルスの国王ウォルターの元に行くようブリジットに命じられます。愛人としてウォルターにせいぜい媚びを売って来いと言うのだ。素直に行くならレイフの待遇を良くするとの言葉にエリスは不安を抱えながらもその条件を飲むことに。だが、この婚姻には裏があり、本来エリスが受け継ぐはずの彼女名義の領地を手に入れるためでした。そのためにはエリスには死んでもらわなければならない。輿入れの名目でアルスへ向かわせ、国境を越えたら消してしまえばアルス側の不手際になる。元々、借款の肩代わりなのだからもう返済の義務はない。厄介者を消せて万々歳。レイフは今以上に過酷な生活に堕としてやれば、こちらもいずれ死ぬだろう。我ながら良いアイデアとほくそ笑んでいたブリジットは、後にこの愚かな考えを激しく後悔することになるのです。ブリジットの目論見通り、国境を越えた途端暗殺者に襲われたエリスは寸での所で、ウォルターに救われます。男らしく精悍なウォルターにエリスは一目惚れし、城へ向かう旅にて率いていた兵士たちとも気さくに対応する彼に益々惹かれていきますが、ウォルターの方も可憐で純粋、そして心優しい彼女に心奪われていました。ブリジットからの手紙で、公女をやるから借款をチャラにしろと一方的に告げられ激怒したが、おかげでエリスを得れた。彼女は愛人にしてくれと言い募っていたけれど、エリスのことは正式に王后に迎えるつもりだ。始めて飲んだエールで酔っぱらったエリスが溢した「レイフ」なる人物や、今までの処遇も気になる。ウォルターは副官のエトを大公国に送り、調査を命じます。やがて受けた報告にて、ブリジットの企みと真の目的を知ったウォルターは、エリスとの結婚式にて大公親子を呼び出して断罪の場を用意。全てを知っているとばかりにウォルターに煽られたブリジットたちは逆ギレし、その腹いせを王后となったエリスに向け・・・。当然、これはウォルターの計画なのでブリジットたちは上手い具合に嵌められ墓穴を掘る結果に。いくら大公とその母と言えど王后殺害未遂は大罪。レイフの扱いを知って怒りが抑えられなくなったエリスからも一切の情けも受けけられず、その後反省の色なしと判断されてかなりの罰を受けたのでした。この作家さんの作風なのか、悪役は飽く迄反省せず改心もしないってパターンが多く、大抵は結構なザマァで終わるのが常。まあ、このブリジットに関しては改心するならもっと前に思い直せたろうとは思うので、相応しい末路だと思います。ホント、夫を愛人に取られた腹いせもあるんだろうけど、政略結婚だったろうし、この性格じゃぁ前大公も気立ての良いエリス達の母親に入れ込むのも致し方ない。結局、ウォルターのおかげで大公国はギリギリで持ち直し、後にアルスと合邦化する方向に行くようです。エリスの受け継ぐはずの領地の真の価値や、ウォルターとの交流などその辺は敢えて記載していません。あ、弟のレイフもちゃんと救出されていますので。興味のある方は読んでみてください。評価:★★★★★不遇ヒロインものとしてかなりの良作。おススメです。惜しむらくはタイトルかな。シンプルでいいけど。
2022.11.22
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2022年11月刊こはく文庫著者:園内かなさん妹たちと王都に住む、田舎出身の子爵令嬢ミカエラ。母を亡くしてからというもの、父は悲しみのあまり田舎の領地に閉じこもったまま。自分でなんとかすると決意したミカエラは、華やかな王都で質素に暮らしていた。幼馴染の公爵テオバルトは、いつも気にかけてくれ、夕食をともにする仲だ。ある夜、ミカエラはテオバルトに押し倒され、執拗な愛撫に感じて一線を越えてしまう。以来、テオバルトから与えられる快楽に溺れながらも、ミカエラは身分の違いに苛まれていた。そんななか、父の後妻を名乗るマリーアンヌが屋敷に押し入ってきた。ミカエラを屋敷に閉じ込めて働かせ、ついには金貸しに嫁がせるという。絶対絶命のピンチに陥ったミカエラの運命は……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ミカエラ=アーライン子爵家の長女。田舎貴族だが、従姉妹の家庭教師を依 頼されて妹達と王都に移り住んだ。 テオバルト=国王の甥で公爵家当主。ミカエラとは幼馴染で彼女に好意を抱い ている。 マリーアンヌ=ミカエラの父の後妻。グリエット夫人=ミカエラの父方の叔母。こはく文庫の11月の新刊です。4日発売なので、内容はざっくりと。と思っていましたが、あらすじで終盤近くまでの展開が書かれてますね(^_^;)領地がお隣さんということもあって、お互い幼いころから交流があるミカエラとテオバルト。しかし、家格は正反対。片や王族の公爵家、そしてもう片方は小さな領地で細々と暮らす子爵家。子供時代ならいざ知らず、彼が公爵家当主となった今では気安い態度はとれない。そうミカエラは思っていた。だが、テオバルトは今も昔も変わらずにミカエラが好きだった。何かと媚びを売る令嬢達と違い、自分の意思を持ち頭の良い彼女は得難い人物だ。宮中伯夫人である叔母に頼まれて、家庭教師をすることになったミカエラは、まだ幼い双子の妹たちを連れて王都に移り住んでいた。その生活ぶりは質素過ぎて、おおよそ貴族の暮らしとは思えない。見かねたテオバルトは援助を申し出たが、子爵家の家計が火の車というわけではないので、とミカエラは丁重に辞退。彼女達の父は妻を失くして以来、娘たちを顧みなくなってしまった。そう彼女は思っている故に、生活費等必要最低限な事すら失念しているのだ。だが、後日テオバルトが子爵宛へ手紙を出してそれとなく注意してくれたらしく、以来生活費が送られてくるようになった。この一件から、テオバルトは日を空けずにミカエラの元を訪れるようになり、やがて押しの強い彼とミカエラは深い関係となります。この秘密の逢瀬が続くにつれ、ミカエラも段々彼に絆されていくものの、テオバルトとの結婚については考えないようにしていた。やはり身分が違い過ぎる。テオバルトも一切好きだの愛してるの言葉も言わないのだから、単に都合の良い女扱いなのだろう。そんなある日、屋敷にマリーアンヌと名乗る妙齢の女性が訪ねて来て、自分はアーライン子爵の後妻になったと言う。美人ではあるが高慢な物言いに口答えすれば容赦なく殴られ、唖然としているとマリーアンヌは勝手に使用人に暇を出すなどやりたい放題し出した。言うことを聞かなければ妹達を折檻すると脅され、マリーアンヌの言う通りこき使われるミカエラ。それだけならまだしも、継母はミカエラを成金の金貸し・ロドリゲスに売り払おうと画策しており、段々と追い詰められていきます。果たして本当に父はこんな女と再婚したのか。確かめようにも外出も出来ずにいた頃、ミカエラはとうとうロドリゲスに無理矢理嫁がされそうになり・・・。さすがヒーロー。ちゃんとここはテオバルトが助けに入り、彼の屋敷に匿われます。妹達は一足先にテオバルトの手の者に救出されており、一先ず安心となるも、彼は独自にマリーアンヌについて調査していたことを明かします。そりゃ、恋人に突然会えなくなったらおかしいと思うわな。ミカエラはしっかりしてる分、助けを待つより自分で解決するのを選んでしまう子なので、テオバルトに頼ると言う道を考えてなかったというのが、彼目線で見ると気の毒過ぎて(^_^;)いやいや、あんなあばずれに好き勝手されるくらいなら、助けを求めなよ。余計な苦労した挙句、結局彼の助けなしじゃ解決しなかったんだし。事件の顛末としては、子爵が後妻業の女に騙され、殺されかけていたと言うオチ。常習犯だったようであと少しで手遅れになってたそうだから恐ろしい。二人の関係も事件解決に伴い両想いと判って最後は結婚してお終い。かなり端折ってますが、おおよその展開はそんな感じ。子爵が娘たちを遠ざけてていた真意も判明して家族仲も修復。めでたしめでたし。ヒーローもちょっと拗らせ系で言葉にしなくてもこんな関係になってるんだから俺の気持ち位察しろよ、的な態度だったのがヒロインを不安にさせてた原因でした。イヤそこはちゃんと言葉にしよう。ヒロインも序盤は父に生活費送ってくれと頼みもせずアホみたいに節制してたりと、読んでて呆れましたが一周回って最後には不器用同士お似合いなのでは思うように。あと、後妻業被害については、もう少し早い段階で入れた方が良かった気もします。かなり終盤からだったので今から?と。評価:★★★★
2022.11.06
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2022年10月刊こはく文庫著者:宮永レンさん国家防衛担当エラス伯爵家の次女・アマリア。義姉・フリダに婚約者を寝取られ、身代わりにメリディウス辺境伯・オズワルドとの政略結婚を命じられた。隣国に寝返らないよう、目を光らせるのがアマリアの役目だというーー。強面で粗暴な軍人と噂されるオズワルドだが、領地に暮らしはじめた新妻に、指一本触れてこず、そっと贈り物を置いていく。その不器用で優しい人柄に、アマリアは惹かれていった。しかし心を通わせはじめた矢先、フリダに意地悪く「あなたは騙されているのよ」と吹き込まれ……。「私は騙されているの?」 不安に陥るアマリア。「アマリアに笑顔になってほしい」 その一心のオズワルド。想いを口にできないまま、すれ違う二人の行方は……。登場人物 アマリア=エラス宮中伯の次女。義姉の代わりにメリディウス辺境伯に嫁いだ。オズワルド=アマリアの夫。数々の武功を挙げた辺境伯。 フリダ=アマリアの義姉。義妹の婚約者を横取りの末に結婚した。 ローゼ=アマリア付きの侍女。 ノーマン=アマリアの父。娘にオズワルドの動向を探るよう命じた。今月の14日発売の作品なのでざっくりと。アマリアはその日、メリディウス辺境伯・オズワルドに嫁いだ。本来、彼との結婚は義姉であるフリダに打診されたものだったのだが、1カ月前にフリダの妊娠を機にアマリアに変更された。何かと義妹と張り合い、嫌がらせされたことも数知れず。少々性格に難ありのフリダだが、まさか義妹の婚約者を横取りするとは。常々田舎暮らしはしたくない、辺境伯に嫁ぐのは嫌だと文句を言ってはいたのは知っている。でも、この縁談は王命。断れるはずもない。フリダは折り合いの悪いアマリアへの意趣返しも出来て一石二鳥のつもりだったのだろうけれど、エラス家にしてみればかつてない醜聞である。結局、フリーになってしまったアマリアが結婚することになったのだが、その際に父と国王からとある密命を受けた。メリディウス辺境伯ことオズワルドは代々国境を守護する武人の末裔であり、有事にも対応できるよう屈強な騎士団を持っている。隣国のウストルクとも親交があることから、国王は彼の謀反を恐れていた。その話を聞いて、政治には疎いアマリアでさえも代々この国を守って来た辺境伯が今更そんな真似はしないだろうにと内心では呆れていた。だが、とある王国で辺境伯の謀反があったらしく、その噂から王は臆病風に吹かれたのだ。父は王命とあればと、くれぐれも少しでも不審な点があれば早急に報告するよう娘を言い含め、アマリアを送り出したのだった。王都から馬車で10日ほどかかるプルガトワール領に着いた早々、アマリアは馬車酔いで倒れた。オズワルドは妻を心配し、二度とこんなことにはならぬよう街道の整備を行うよう指示。こんなことで彼女から離縁を切り出されたら立ち直れない。不安に駆られるオズワルドは一目見た時から美しいアマリアに心奪われていたのだ。いかつい体躯から想像もできない程、オズワルドはアマリアにぞっこんだったが、何かと多忙で砦に詰めっぱなしの日々。せめてもと贈り物をしたが、アマリアは夫が顔を見せに来ないのはやはり政略結婚でいきなり相手を変えたから不興を買っているのだと悩みます。すれ違いの日々が暫く続いたものの、とある事件を機に二人は急接近。周囲が羨むほど仲睦まじい夫婦へと変わって行くのでした。そんな最中、父から見張りの進捗具合を尋ねる手紙が何通も届き、オズワルドに叛意などないと返事を出したが、それでも納得いかないようで直接話を聞きたいとアマリアの帰郷を促す始末。恐らく、王がせっついているのだろう。仕方なく、一度実家に戻り懇切丁寧にオズワルドのことを説明してみたが、色よい反応は得られなかった。国王の小心ぶりにも参ったものだが、多分オズワルドが隣国のウストルクと懇意にしているせいで恐ろして堪らないのかもしれない。理解してもらえない悔しさに輪をかけて久しぶりに会ったフリダからは嫌味三昧。精神的に疲れてオズワルドの元に戻ったアマリアは漸くホッとできた。その後しばらくは何事もなく過ぎ、街道はすっかり整備され商人の出入りも多くなっていった。そんな折、ついに国王がオズワルドとアマリアを王都へ呼び出し・・・。政略結婚ながらラブラブな二人を取り巻く、それぞれの思惑。フリダの妊娠が嘘だったり、その他諸々やらかしてたのが判ってエラス家は窮地に追い込まれます。それを救ったのがオズワルドで、アマリアの父は彼に感謝しオズワルドに叛意がないことを王に報告してくれることに。全体的に、登場人物たちは臆病すぎる王に振り回されっぱなしだったなって内容でした。フリダについては自業自得な幕引きで、ちゃんとざまぁされて良かった。妬みも過ぎると受ける報いも厳しい。でも、この義姉のおかげでオズワルドに会えたと感謝するアマリアもいい性格してる。オズワルドが純朴な人なだけに夫婦としてはバランスが取れている気がする。評価:★★★★☆序盤は多少の思い違いからのすれ違いはあるものの、以降は夫婦仲が揺るがないので安心して読めます。が、国王のビビりっぷりが少々しつこい気が。
2022.10.19
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2020年10月刊こはく文庫著者:秋花いずみさん一流ホテルのスタッフとして働く雫は、職場の上司であるコンシェルジュ・湊に密かに思いを寄せていた。しかしホテルの跡取り息子である湊に比べ、雫の家は借金まみれの極貧家庭。住む世界が違い過ぎて恋愛なんてありえないと、思いを伝えるつもりはなかった。そんなある日、雫は職場スタッフの飲み会で泥酔してしまう。翌朝目覚めてみると、なぜか湊の腕の中。しかも二人共に裸! 昨夜の記憶がまったくない雫はパニックになるが、そんな彼女に湊はなんと、「責任を取らせてほしい」と交際を迫ってくる。憧れの湊からの求婚は嬉しい! しかし、その動機が「責任を取るため」であることは喜べないし、湊に申しわけなくもある。恋心を必死に隠し、どうにか湊の求婚をかわそうとする雫だが……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 遠坂雫=ホテルの客室スタッフ。 上司でコンシェルジュの桐生に密かに憧れている。 桐生湊=ホテルグループの御曹司。コンシェルジュの傍ら内部管理の責任者も努めている。 日野=客室スタッフの一人で、雫の先輩。 持村=客室スタッフのチーフ。一流ホテルとして有名なフェリースホテルで客室スタッフとして働く雫には密かに想いを寄せている人物がいる。それはこのホテルグループの御曹司でコンシェルジュを務める桐生湊なのだが、この恋が叶わないことも判っていた。何故なら、雫の家は超が付くほどの貧乏だから。それと言うのも、お人よしの父が友人の借金の連帯保証人を引き受けた後に、その友人は蒸発。3千万もの借金を押し付けられてしまったのだった。家や車を売却しても相当な額が残り、父はがむしゃらに働き、当時高校生だった雫はアルバイトで家計を支えた。母は虚弱体質で働けない代わりに出来る限りの節約に努めてはいるが、あれから10年近く経っても遠坂家は今もまだ毎月結構な額を払っていた。そんな自分と大金持ちの彼とは住む世界が違い過ぎる。そう思っていたのだが、ある日二人の関係に劇的な変化が。両親からの後押しもあって初めて職場の飲み会に参加することになった雫は、自分のキャパも判らずに飲んでしまい泥酔。目覚めると、知らない部屋のベッドに寝かされており、なんとそこが桐生のマンションだと知ってパニックに。どうやら、寝てしまった雫を介抱してくれていたらしい。住所も判らないのでやむを得ず彼の自宅に運んでくれたようで、申し訳ないやら。職場とは雰囲気が違うけれど桐生はやっぱりカッコイイ。酔いの勢いからつい、ずっと憧れていたのだと告げたら、彼は随分と嬉しそうで、お互い気分が盛り上がりその夜、二人は一線を越えてしまったのだった。翌朝、出勤する桐生に起こされた雫は、昨夜のことを思い返して反省しきり。彼はこれからの生涯、女性は雫だけと言い、結婚を前提に付き合おうと告げた。昨夜のことならお互い大人なのだし、雰囲気に流されることもあるだろう。責任を取るとか言われてもそんな大事にされても困る。ましてや結婚なんて。一夜の過ちくらいどうか気にしないでくれと言ってはみたものの、桐生は一線を越えたなら自分たちはもう恋人だと言って譲らず、近いうちにご両親に挨拶をとまで言い出す始末。その場は彼の出勤時間が迫っていたので、何とかごまかしはしたものの、休日だった雫は自宅に戻って悩んでいた。母は外泊した娘に彼氏ができたに違いないと喜んでいるが、交際するにしても後々彼が御曹司と知ったら反対されそうな気がする。それにこんなオンボロ木造アパートに桐生が来たらどう思うか。幸いなことに多忙な彼とは同じホテル内で勤務していてもすれ違いが続いた。会えないうちに向こうの頭が冷えてくれればという儚い望みもあったが、翌々日に捕まって連絡先の交換をさせれ、桐生から毎日のようにおやすみメールが来る。狭いアパートなので、内容は判らずともメールのやり取りは知られていてもう完全に彼氏だと思われている。ある時、母の風邪が伝染り、早退した雫を桐生が送ってくれてオンボロアパートをついに見られてしまった時はもう終わったと思ったが、雫の家庭事情の事は当に知られていたらしく改めて借金苦の理由を尋ねられた。雫がどうにでもなれと包み隠さず話すと、借金をしたのは遠坂家ではないのだから世間の目など気にするなと励ましてくれたのだった。そしてもっと周囲を頼れとも。桐生の言葉に貧乏に引け目を感じ、勝手に卑屈になっていたのだと気付いた雫は気持ちに素直になろうと決意。前向きに桐生との交際を考え始める様に。残りの借金は桐生が出すとまで言ってくれたけれど、流石に辞退した。どうも彼は恋人をとことん甘やかすタイプらしい。そんなある日、桐生が政略結婚をすると言う噂を日野から聞かされた雫はショックを受け・・・。雫の貧乏コンプレックスの悩みが思いの外長くて、この政略結婚の噂が出たのもかなりの終盤。ページ数的に、恐らくこれは誤解だろうと思っていたらやっぱりそうでした。桐生の弟が大地主の娘と結婚するので婿養子に入るという内容が、湾曲して桐生の結婚するって話になっていたと言うオチ。そもそも、雫がいるのにと答える桐生に改めて雫は自分の気持ちを伝え、二人は晴れて恋人同士に。そういえば雫がうやむやにしてたせいで、まだ正式に交際してなかったなと思い当たりました(苦笑)結局、桐生が残りの借金を肩代わりし、生活が安定したら少しずつ彼に返すことに話は落ち着き、二人は婚約してお終い。借金苦だった遠坂家が仲が良くていい家族だなぁと思いました。一先ず、返済期限がなくなっただけで肩の荷が下りて相当楽になるでしょう。雫も自分で稼いだお金を少しは自由に使えるようになるし、これからは飲み会にも参加して、日野さんたちと買い物に行ったりして欲しい。苦労した分、ホント、いい人捕まえたなぁ。評価:★★★★★王道のスパダリなヒーローなのでポイント高し。
2022.10.15
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2022年9月刊こはく文庫著者:猫屋ちゃきさんユストゥスは悩んでいた。そろそろ結婚をと周囲にうるさく言われたから仕方なく娶った妻・メルツェーデスが良妻すぎるのだ。愛のない形ばかりの結婚であり、今後子どもを持つつもりもないと結婚を申し込む際に伝えたはずなのに、メルツェーデスは求められた以上の「妻の働き」をしようとする。第三王子であるユストゥスは結婚を機に公爵の位を賜った。つまりメルツェーデスは公爵の妻であり、彼女の善行はユストゥスの仕事にも良い影響をもたらしてくれるのだが、だからこそ、ユストゥスは困惑する。メルツェーデスには何か、裏があるのでは……そんな疑心を抱きつつも、ただ無心に尽くしてくれる彼女に対し徐々に心を開き始めた頃、ユストゥスは兄から信じられない話を聞かされる。それは、メルツェーデスには以前から想い人がいるというものだった。自身の求婚が二人の仲を引き裂く形となった過去を知ったユストゥスは……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 メルツェーデス=侯爵家三女。何事も長女最優先の家で育ち、おまけ扱いに嫌気がさしていた 所、ひょんなことからユストゥスの目に留まり結婚。 ユストゥス=第三王子。野心とは無縁そうなメルツェーデスなら面倒事も少なそうだと求 婚したものの、結婚後も暫くは妻を顧みていなかった。 ヨーリッツ=第二王子。弟夫婦を心配し何かと相談に乗っている。 マリオン=ヨーリッツの妻。 ダミアン=メルツェーデスの慈善事業仲間で、ユストゥスの数少ない友人の一人。良妻過ぎる妻の扱いに困り果てる堅物王子のお話。第三王子・ユストゥスは数か月前に妻に迎えた侯爵令嬢メルツェーデスの言動が気に障って仕方がない。とは言え、金遣いが荒いとか毎日遊び歩いているとかではなく、良妻過ぎて困っているのだ。王太子である兄を支えるべくヨーリッツ共々尽力する心構えだったが、周囲は先ず結婚しろととにかく煩い。継承争いする気など更々ないのに野心剥き出しの女たちの擦り寄りに辟易としていた頃、とある茶会にて、参加者が連れて来た子供たちの面倒を楽しそうにしているメルツェーデスに目が留まった。その素朴さや、子供たちに好かれている人柄も好ましい。何よりギラギラした感じが一切無いのが気に入った。妻にするならこの手のタイプが一番面倒が無さそうだと、すぐさま侯爵家へ求婚書を送り、承諾をもらってすぐ結婚したのだが、ユストゥスは嫁いで来た彼女にこれは契約結婚であり、自分は君を愛するつもりは無いと告げた。跡継ぎも必要ないので子作りするつもりも無いとも。そして、彼女に公爵夫人としての務めもしなくていいから大人しくしていろと言う。公爵位を賜ったものの、王子としての公務もあるためユストゥスは毎日多忙だった。食事も紅茶で流し込むように慌ただしく食べ、メルツェーデスとは夕食を共にしたのは数えるほど。自分がワーカホリック気味なのは承知しているが、碌に顔を合わせない夫には自分から会いに行けばいいとばかりにお茶の準備までしてメルツェーデスが執務室を訪れるように。一人で楽しそうに話す彼女に、内心ではかわいこぶりっこのあざとい女と毒づいてはみるが、彼女に会うとどうにも調子が狂う。ユストゥスが仕事中は彼女は慈善事業に精を出し、合間にお茶会などにせっせと参加しているらしい。元々故郷でも孤児院の慰問や援助などに力を入れていたようだが、実家にいた頃より使える金額が桁違いになったこともあり、それを元手に寄付を募って学校を建てたいのだと言っていた。賛同者も増えたので建築に取り掛かれると随分嬉しそうだけれど、無駄遣いも甚だしい。夫婦生活の進捗具合を尋ねに来たヨーリッツに愚痴ると、慈善事業の費用を無駄遣いと言い切るはと心底呆れられた。ヨーリッツによれば、メルツェーデスは社交界に顔が広い彼の妻・マリオンの力を借りて、慈善事業に力を入れている貴族達と交流しているのだとか。学校建設の動機も学ぶ機会があれば、孤児たちの中からもいずれ優秀な人材も出てくるからというもの。面倒な手続きはメルツェーデスが担い、出資者のおかげとその名を全面的に押し出すという美味しいとこ取りの寄付案は大絶賛で今や彼女はマリオンと並んで大人気らしい。ユストゥスと折り合いの悪かった貴族達が最近妙に態度が軟化しており、仕事が捗っているのはそういうことか。道理で皆一様に奥方に宜しくと言っていたわけだ。絶賛されながらも「もとはと言えばユストゥスさまのお力あってこそ」とメルツェーデスが話しているそうで、本人知らぬ間に株を上げられていたのだった。話を聞き、流石に無駄遣いは失言だったと取り消したユストゥスは、情報通の兄に、メルツェーデスの身辺を探ってほしいと頼みます。大人しくしているどころかこうも大っぴらに動かれては約束と違うではないか。何故だかモヤモヤして堪らない。数日後、兄からの報告によれば予想はしていたもののメルツェーデスには悪評の一つも無かった。貴族だけでなく屋敷の使用人たちも彼女の味方で、寧ろ妻を顧みないユストゥスの評価が下がり続けている始末。まあ使用人からどう思われてようが構わないが、ヨーリッツからいい加減仲良くしろよと、調査中に知った彼女が欲しがっていたというクマのぬいぐるみをプレゼントして歩み寄れとアドバイス。まあ、人脈作りの礼としては安価になるが、たまにはプレゼントも良いだろうと、早速件のクマを購入しメルツェーデスにに渡すと大層喜ばれた。その彼女の反応に、ユストゥスも悪い気がしなかった。メルツェーデスは田舎に領地を構える侯爵家の三女として産まれた。両親は分け隔てなく育てたつもりだったろうけれど、婿養子を取って家を継ぐことになる長女贔屓がそれはもう顕著だった。次姉はそれが不満だったようで早々に嫁に行ってしまったが、おまけ扱いの上に何のうまみも無い田舎貴族の三女ともなると相手を探すのも難儀した。子供好きだし、無理に結婚せずとも教会で働くのも良いかもしれない。諦めかけていた時にユストゥスからの求婚で家族ともども驚いたものだ。でも、自分などに目を止めてくれた彼に自分なりに精一杯尽くそうと決意して嫁いだのだけれど、あの契約結婚の件で内心ガッカリもしていた。しかし、最初の決心は変わらない。慈善事業を通じてユストゥスの役に立てば良いのだ。マリオンに夫婦仲についてこっそり相談して見たが、まだ契りも交わしていないことに大層驚かれユストゥスに憤慨。それでもぬいぐるみをプレゼントしてくれてからは会話も増え、以前より随分仲が良くなった。そんな折、隣国に嫁いでいた王妹とユストゥスの友人であるダミアンと数名の貴族が組んで国家転覆を企む事件が起きた。偶然にもダミアンはメルツェーデスの慈善事業仲間で一時期親しくしていた。だが、それをかつて二人は恋人同士だったのではとユストゥスが勘違いしてしまい・・・。この巻違いが切欠で二人の関係が一気に近付くトラブルが起こるんですけど、漸くユストゥスが自分の気持ちを認め、お互い愛し愛され仲良く暮らしていこうと決めます。あんなに恋愛や結婚に興味が無かった第三王子は妻を溺愛し、押しも押されぬバカップルとなるのでした。終盤のトラブルや、勘違いの結末などは敢えて記載していません。ダミアンは良い人だけど、以前から考え方が極端でいつかやらかすんじゃないかとメルツェーデスに思われてて、この辺は読んでて思わず笑いが。この3人の関係も実はトライアングルだったりするんですが、興味がある方は短いお話ですので実際に読んでみてください。中盤までのユストゥスの言動が結構辛辣なので好き嫌い分かれそう。評価:★★★★☆
2022.10.04
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2022年9月刊こはく文庫著者:橘柚葉さん25歳の坂月真宙は、父の再婚相手である継母の沙希と暮らしている。といっても、女社長として精力的に仕事をこなす沙希は、真宙のことを娘というより家政婦のように扱っていた。沙希が突然、夜に部下を家に招くことはよくあることで、真宙はそのたびに来客対応に追われていた。とはいえ真宙にとって突然の来客は嬉しいことでもあった。真宙は沙希の部下の一人、涼成に秘かに心を寄せていたのだ。しかし若く美しく、そして優秀な涼成は沙希にとっても魅力的な男性だったようで、沙希が彼のことを狙っていると知った真宙は、涼成への思いを断ち切ろうと決意する。そんなある日、涼成が沙希の会社を辞め、実家の大手製薬会社を継ぐことになり、「どうせ最期なら」と真宙は匿名のラブレターを涼成へ送る。これでもう二度と会うことはない。そう思い涙する真宙だったが数日後、涼成が真宙の前に現れる。涼成はなぜか、ラブレターの贈り主が真宙だと理解しているようで、「自分も真宙のことが好きだった」と告白してきて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 坂月真宙=内科クリニック勤務の栄養管理士。 継母の部下である涼成に想いを寄せる。久里藤涼成=大手製薬会社の跡取りで、社会勉強で真宙の継母の会社で専務職に就 いていたが、退職が決まり真宙に猛アプローチを始めた。 坂月沙希=真宙の継母。中堅アパレルメーカーの女社長で何かと押しが強い。 涼成に粉を掛けていたがフラれる。 池田=沙希の会社の元社員。沙希に弱みを握られ長らく利用されていた。継母に都合よく扱われていたヒロインと、彼女にベタ惚れのヒーローが策を巡らせ恋の成就を狙うというお話。今月の16日発売のお話なので、序盤以降のネタバレは控えめで。ヒロイン・真宙は同居している継母に頭が上がらない。彼女の実の両親は既に鬼籍に入っており、継母は父が晩年に後妻にした人物だった。当時の真宙は北海道の大学に通っており、父が余命わずかだと知ったのは亡くなる直前のこと。どうやら父が心配させまいと敢えて連絡しなかったようだなのだが、なぜもっと頻繁に帰らなかったのだろうと3年経った今でも悔いている。継母の沙希はそんな父を支え、ずっと看病してくれていた。それを思うと邪険にも出来ず、父が亡くなって以降も坂月の籍を抜かず家に居座り続けている継母と真宙は微妙な関係だ。沙希は父の遺産でアパレル会社を立ち上げ、女社長として多忙の毎日。真宙は栄養管理士の仕事をしながら彼女に代わり家事一切を引き受けている。そんなある日、沙希が5人の部下を夕食に招いた。当然用意したのは真宙なのだが、沙希はそんな彼女にねぎらいの言葉も無い。わざわざ貶めるかのように料理だけが取り柄の冴えない子だと紹介する沙希を横目に、真宙に気遣いを見せてくれたのは専務だという久里藤だけであった。彼は真宙に手土産迄用意してくれた上に、背が高くカッコイイ青年だった。内気で臆病な性格の真宙は恋愛経験も無く、一目で彼に心奪われてしまった。年末に沙希の会社で大きなイベントがあるらしく、そのミーティングと称して彼らはしょっちゅう坂月家に訪れた。真宙はその度に料理を振舞い、酒が足りなければ買い足しに出かけ娘と言うより、沙希からは家政婦の様にこき使われていた。その度に久里藤がさり気なく手を貸してくれており、どんどん彼に惹かれて行く真宙。でも、彼はイベントが終わったら退社して家業を継ぐのだと聞いた。社名を聞くと大手製薬会社で、そんな大企業の御曹司である久里藤とは、もう接点が無くなってしまう。しかも、沙希も彼を狙っているとか。継母はまだ35歳。父をずっと儚む必要は無いのだし、地味な自分などとは比べ物にならないほどの美人だ。すっぱり諦めようと、内気な彼女にしては珍しく、手作りのクッキーと「好きでした」と一言添えたメッセージカードを彼の手荷物の紙袋に忍ばせ、これも良い思い出だったと想いを封印することに。だが、ある日、勤務先の前に久里藤が待っていて、自分も君が好きだよと告げられます。沙希と付き合うのでは?と思わず尋ねると、大分前に告白されたものの断っていたらしい。おまけに、久里藤は以前から真宙に想いを寄せていたとまで言っている。天にも昇るほど嬉しい告白だけれど、沙希にしてみれば冴えない義娘の方を選んだなんてと気分が悪いに違いない。父の恩義を思うと素直に彼からの告白に答えられない真宙の想いを察した久里藤は、絶対に好きだと言わせてみせると猛アプローチを始めて・・・。中盤までの展開はこんな感じ。両想いだったのは良かったけれど、問題は同居中の沙希のこと。女王様気質の彼女は、とにかく上から目線で、同居してからと言うもの真宙はいつも萎縮していた。恩義を思うと蔑ろにはしたくない相手なので、彼女に悪いという気持ちがどうしても決心を鈍らせる。そんな彼女を遺恨なく自分のものにするため、久里藤は外堀をどんどん埋めていきます。そして、真宙がずっと感じていた負い目と恩義の切欠となった彼女の父親の世話は、実は沙希は一切していない事が判明。あれだけの遺産を貰い、恩を着せて置きながら、義娘をこき使っていた沙希の本性が久里藤の調査の元、真宙に知らされます。若い嫁さんだし、亡くなったお父さんもいい様に騙されてたんだろうなぁ。終盤、沙希の意地悪っぷりが突き抜けててこのヤロウがっと読んでて腹が立ちましたが、久里藤に追い詰められ相応の報いを受け失脚。こんな女と一緒にいたら一生食い物にされてたろうなと思うと、徹底的にやってくれて良かった。今作のヒーローは結構容赦ないです。ぶっちゃけ腹黒キャラ。ヒロインが内気で優しく大人しいだけにバランス取れてるのかもしれない。継母の企みと言うかヒロインへの嫌がらせや、ヒーローの狡猾さは敢えてぼかしてます。興味のある方は読んでみてください。kindle unlimitedの会員なら読み放題で読めます。評価:★★★★☆腹黒ヒーローがお好きな方は是非。
2022.09.19
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2021年12月刊こはく文庫著者:橘柚葉さん大安、吉日。愛海と肇は結婚した。経営不振にあえぐ会社を立て直さんと、躍起になっている愛海の祖父による強引な政略結婚だったが、実は二人共に一目惚れ。互いに強く想い合っているのに「政略結婚」という前提がため、相手に愛されている確信が持てず、不安を抱いたまま新婚生活がスタートする。しかも田舎育ちの愛海は恋愛経験ゼロで、肇に触れることさえできない。そんな愛海に、肇は「一週間ごとにステップアップ計画」を提案する。月曜日がくる度に「名前で呼び合う」「手を繋ぐ」「同じベッドで眠る」……と夫婦になるためのミッションをクリアしていく二人。ようやくキスまで辿り着き幸せを噛みしめる愛海だったが、肇はもう我慢の限界。数日後に迫った愛海の誕生日に「愛海の全部をもらうよ」と大胆な宣言をしてしまい……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 妹尾愛海=茶農家の娘。紙業会社会長の祖父の頼みで御曹司・妹尾肇とお見合い し、彼に一目惚れして結婚を決めた。 妹尾肇=大手化学メーカー企業の御曹司。親戚への義理で嫌々見合いに挑んだ ものの可憐な愛海に一目惚れ。早々に結婚を決めた。 墨田=中堅紙業会社会長で愛海の祖父。斜陽の会社立て直しを図り、妹尾家 に孫を嫁がせた狡猾な人物。再三多額の融資を頼み断られている。 柳田=肇の第二秘書。自他共に認める美人で結婚後も諦めず肇に猛アプロー チをしていた。 愛海の母=墨田会長の娘ながら父を虫の様に嫌い、政略結婚の道具にされる前に 家を飛び出して恋仲だった茶農家の跡取りに嫁いだ。父との確執の為 、当初は娘と肇との結婚を反対していた。kindleの本棚を減らそうシリーズ。お互い一目惚れ同士の見合い結婚カップルが、周りの思惑のせいで離婚の危機にってお話です。愛海と肇は所謂政略結婚だった。お見合い含めてまだ3回しか顔を合わせていなかったがトントン拍子に結婚が決まり、大安吉日に式を挙げた。両家の親はこんなに早々に結婚を決めずともと渋い顔をしていたが、何のことはない愛海も肇もお互い一目惚れ同士で、一生を添い遂げるのはこの人しかいないっ!そう思っていた。だが、二人はあまりのスピード婚故に互いの気持ちを図りかねてもいた。同居して早一ヶ月経つものの、初夜を済ませていないのはそういう理由からで、お互いの気持ちを知られたらその愛の重さにドン引きされるのではと不安だったから。とは言え、遠慮し合っていては埒が明かぬ。一先ず年上の自分がリードを取ろうと、肇が提案したのはこれから1週間ごとに関係をステップアップしていこうと言うもの。最初は呼び捨てで名前を呼び合う、次はハグ。そして今週からはキス。おかげで初心な愛海も漸くスキンシップに慣れて来て、今週末の彼女の誕生日はデートをし、その日に初夜をと決めた。肇は仕事柄多忙の為、新婚旅行にも行けておらず、加えて同居前も二人で出かけたことが無い。初デートに二人は燥ぎ、彼が予約してくれた高級ホテルのスイートルームは素晴らしい。いよいよ結ばれるのだとドキドキし、お互いの気持ちも打ち明け合った。嬉しいことに両想いでこれから一生仲良くやって行こうと決め、気持ちも最高潮。だがあと一歩と言う所で、肇の会社でトラブルが発生し呼び戻されてしまった。どうも、インドネシアの支社にて大規模なストライキが起こったらしい。肇は交渉の為現地まで赴くことになり、一週間ほど二人は離れ離れに。その際、同行することになった第二秘書の柳田が迎えに来たのだが、彼女の愛海を下に見るような視線が鼻に就く。モヤモヤしつつも肇を待ちながら、愛海は彼の実家に通い、妹尾家の嫁として義母に教育を受けていた。素直でスレていない彼女は妹尾家の面々から気に入られ、今では関係も良好だ。それでも、彼らは何かと融資を無心する墨田会長を嫌っており扱いに困っているようで、愛海は居た堪れない。元々この結婚は疎遠だった祖父に泣きつかれ、見合いをした結果決まったもので、祖父にしてみれば妹尾家と繋がりが出来て万々歳と言った心境なのだろう。斜陽の会社を立て直せると思っているのがありありと判るが、肇と知り合えたきっかけを作ってくれたのはありがたいけれど、妹尾家に迷惑をかけるのは止めてもらいたい。そもそも、彼が見合いに応じたのも墨田会長と彼の祖母が同級生だったと言う縁だけ。それもまた愛海の祖父がゴリ押したらしい。狡猾で強引な祖父は母に死ぬほど嫌われていた。おかげで会ったのも見合いを頼んで来た時だけ。母はこんな結婚しなくていいと最後まで反対していたものの、愛海の熱意に打たれ渋々認めてくれたのだった。肇が帰国し、またいつもの生活に戻ったものの、留守の間にたまった仕事を片付けるために多忙を極めた。初夜の続きは当然完遂せず。そんな日々が続いたある日、収穫時期となった実家で母が過労で倒れたと連絡が。今年は貴重な戦力である愛海がいなかったのも痛手だったようで、その分頑張った母は無理が祟ったらしい。肇に実家に帰ることを薦められ、10日程留守をすることに。だがその間、パートナーが必要な企業パーティーがあり、肇は仕方なく柳田を同伴したのだが、同席した墨田会長が何やら勘違したようで、肇に愛海が気に入らないなら違う孫を嫁がせると提案され・・・。何度融資を頼んでも断られているため、焦れた隅田は愛海のせいだと逆恨み。早々に離縁させて違うタイプの孫を宛がおうとしてた所、肇と妹尾家の怒りを買います(当然っすな)。愛海に対してあんな出来損ないなど孫ではないと言い切る祖父にに、ならもう無関係なので融資の話は一切受け付けないし、業務提携も無しだと肇は墨田を切り捨てます。そして柳田は墨田の話を聞いて、付け入るスキがあると思い込み猛アプローチを仕掛けるも妻一筋の彼には効果無しで、彼女もまた怒りを買って地方支社に飛ばされることに。肇と愛海は、騒動後延び延びになっていた初夜も完遂し、一層ラブラブ夫婦になって幕。悪役ポジの秘書と祖父が揃ってざまぁされる場面はスッキリしました。肇さん、本当によくやった。正直、商才の無い人間の会社と業務提携したって良いことないですしね。俺らは一目惚れ同士で、政略結婚ではなく恋愛結婚だから(意訳)と言い切る肇が何ともカッコイイ。惜しむらくはボリュームかなー。130ページ弱なんで、横槍もこの程度で済んだのはじれじれ感控えめで良いのですけど、ちょっと物足りない感が。評価:★★★★☆お話自体は面白いです。夫婦の目線でそれぞれモノローグで語ってるのは良いんですが、墨田のおかげで知り合えたのでそこだけは感謝しているって一体何回言うねん(苦笑)そこだけちょっとくどく思いました。
2022.09.12
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2020年8月刊こはく文庫著者:深森ゆうかさんユリアナにはジンクスがある。舞踏会でも茶会でも、ユリアナと一緒にいる令嬢は必ず恋愛が成就する。ユリアナについたあだ名は「引き立て役令嬢」。噂を聞きつけた令嬢たちからは同伴の依頼が絶えないのだが、当のユリアナ自身は結婚適齢期であるにもかかわらず、なかなか良縁に恵まない。そんなある日、ユリアナは公爵令嬢のラモーナからも仮面舞踏会での「引き立て役」を頼まれる。ラモーナには婚約者がいるというのに、王女キャスリンからも協力してほしいと言われて、ユリアナは承諾。そして当日、隣国の王太子がお忍びで出席しているという。ラモーナが射止めたい相手とは、王太子だったのだ! そして男装したキャスリンが二人の青年をユリアナとラモーナに引き合わせる。首尾よく王太子らしい青年とダンスをはじめたラモーナ。そしていつもはそのままお役御免となるユリアナも、キャスリンに背中を押され、もう一人の青年とワルツを踊りはじめるのだった……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用 ユリアナ=ベール侯爵令嬢。ユリアナと同伴すると必ず結婚相手が見つかると言 うジンクスがあり、地味な性格と容姿も相俟って「引き立て役令嬢」 と呼ばれている。 クラウス=隣国レイアールの王太子。美青年だが華やかさに欠けるため、仮面舞 踏会で出会ったユリアナと意気投合する。キャスリンの提案で、侍従 のロルフと入れ替わっていた。キャスリン=王女。親戚のラモーナの言動を諫めるための作戦を立て、クラウス達 に協力を頼んだ。 ラモーナ=クローク公爵令嬢。許嫁がいながら、クラウスを射止めて王太子妃に なりたいと、ユリアナを引き立て役として誘う。 ロルフ=クラウスの侍従。華やかな容姿で女性人気が高く、ラモーナ達の前で はクラウス役を演じていた。ランドルフ=ラモーナの許嫁。タイトル通りの内容ですが、オチに少々ビックリ。ユリアナは多少地味ではあったものの、決して不細工ではない。なのに何故か引き立て役にされてしまう損な役回りの少女だった。しかも、彼女と一緒に夜会や舞踏会に行くと必ず結婚相手が見つかると言うジンクスまである。今のところ成功率は100%だ。自分にそのような効力があるとは思っていないが、一人でも多く結婚が決まるのはいい事ではないか。建前ではそう思いつつ、本音としてはやはりやるせない。そんなある日、ユリアナの元に届いたのは王家の親戚であるクローク公爵令嬢・ラモーナからのお茶会の招待状。正直、お近づきになりたくない類の令嬢だったので接点がまるで無い。なのに何故招待状を寄越したのか?ふと見ると、メモが挟まれており「相談したきことがあり云々」と書かれている。何だか嫌な予感がしたけれど家格的に欠席もできず、出席の返事を出した。お茶会当日、案内役に名乗るとラモーナのいるガゼボへ案内された。そこには何と王女のキャスリンまでいる。親戚だから仲が良いとは聞いていたが、ラモーナは一体何をユリアナに相談するつもりなのやら。最初は3人共当たり障りのない話題に徹していたが、流石に焦れて来たのかラモーナが本題に入った。相談事は案の定、ユリアナにある舞踏会の同伴を頼みたいとのこと。でも、ラモーナには正式に婚約はまだでも許嫁の公爵子息ランドルフがいるはずだ。自分に同伴を頼まずともお相手がいるのに。不振に思っていると、どうやら数日後に開催される仮面舞踏会に隣国の王太子がお忍びで参加するらしい。ラモーナは王太子妃になりたいのだと悪びれもせず言い切った。唖然としつつも、キャスリンがうっかり王太子の来訪を喋ってしまったようで、すっかりその気になったラモーナに手を焼いてるようだった。一先ず、彼女の言うことを聞いてやってくれと王女直々に頼まれれば断れるはずもない。ユリアナはラモーナの同伴を引き受けたのだった。いくらジンクスがあったとて、相手は王太子。早々ラモーナの希望通りには事は運ぶはずがない。キャスリンもそう思っているから親戚の我儘にも目を瞑ったのだろう。だが、予想外にも紹介されたクラウス王太子とラモーナは良い雰囲気。これが、ランドルフの耳に入ったら不味いのでは。一応、何が起こってもベール家に咎が行かないようキャスリンにも約束を取り付けてはいるが、一目惚れ同士っぽい二人の様子に嫌な予感しかない。しかも、もう用はないとばかりに王太子の侍従・ロルフとその場を離れたユリアナは、お互い地味キャラ扱いされていることを知り意気投合。確かに華やかさはないものの、ロルフはよく見るとかなりの美青年だった。そんな人と二人きり、そして思ったよりも良い雰囲気にドキドキしていると彼も同じ気持ちだったようで、この国に滞在中案内役を引き受けてくれないかと頼まれます。王太子の父である国王はもうかなりの高齢で、近年中に息子に譲位するつもりのようで、おそらくこのお忍びの訪問が最後の自由時間になる。せめて若者同士楽しく過ごしたいとキャスリン達を含めユリアナとも仲良くしたいのだと言う。そういうことならばと快く引き受けた彼女は、5人でかつてないほど楽しく過ごした。でも、あと一カ月もすれば彼らは帰国してしまう。ロルフに好意を抱いていた彼女に、クラウスが提案したのはキャスリン所有の別荘で過ごそうと言うもの。だが、若い男女が一つ屋根の下で過ごすとなると、キャスリンが気にしていたのはラモーナとクラウスの関係。二人が一線を越えてしまったら相当に拙い。ユリアナとロルフ、キャスリンの3人で目を光らせていたが、ある日キャスリンが王宮の用事で至急戻らねばならず、留守の間、二人にくれぐれも頼むと言い置いて帰って行った。当然、一番口煩い王女の目が無くったことでクラウスたちは人目を憚らなくなり・・・。ラモーナは目下のユリアナやロルフの注意もどこ吹く風。ロルフも王太子を諫めているようだが、それよりも帰国が近いこともあり、彼から求婚されたユリアナ。それに伴い、話したいことがあるという彼の様子がどこか切羽詰まっている。すると漏れ聞こえて来たのはどう聞いても男女の情事の声。クラウスとラモーナが宜しくやっているではないか。これは本当に拙い状況だ。ラモーナは女性の上に許嫁がいるからバレたら事だ。しかも、クラウスに関しても納得が行かない。噂では誠実で聡明な人と聞いている。なのに、許嫁のいる女性に手を出すなんて。プリプリと怒っていると、ロルフは何とも言えない神妙な顔で、別荘に戻ると怒られるのを承知で、これがある遊びも兼ねたドッキリのようなものだったとユリアナに白状します。キャスリンはラモーナの奔放さと身の程知らずぶりに少々腹を立て、クラウスの来訪を敢えてバラし、ラモーナをその気にさせた。そして、友人関係だったクラウスたちに入れ替わりを頼み、キリの良い所で彼女が熱を上げてるのは侍従だよ、と種明かしする予定だったらしい。つまり、今クラウスと名乗っているのが侍従のロルフ。ユリアナにの目の前にいるのがクラウス王太子というわけだ。自分は王太子に求婚されたのか、とユリアナはパニック。騙されていたのも腹が立ったが、それよりも未来の王妃なんて自分には荷が重い。そんな彼女を優しく諭すクラウス。結局、決心がつき彼の求婚を受け入れたユリアナでしたが、キャスリンが別荘に戻った日、ラモーナにも種明かしすると、彼女は激怒。しかしロルフにいいように調教(笑)されていたことにより事なきを得ます。一年後、クラウスとユリアナは結婚。ラモーナはロルフと結婚してユリアナ付きの侍女に。キャスリンはラモーナの元許嫁のランドルフと婚約しており、実は一連の顛末はランドルフとラモーナを破談にさせるために、キャスリンが仕組んだものだったと言うオチ。皆が想い人と添い遂げたこともあり、誰も損することなく収まったものの、王女様が一番の黒幕でビックリ。正直、主役CPが一番オーソドックスでありふれた設定だった気が。評価:★★★★★
2022.08.18
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2019年10月刊こはく文庫著者:華藤りえさんアメリカ帰りのイケメン社長・律己の秘書として働いている美桜は、密かに彼に恋をしている。「秘書という立場で彼を支えることができれば、それで幸せ」そうは思うものの、彼の優しさに触れては胸を高鳴らせ、恋人の気配を感じては寂しさに沈む日々を送っていた。そんなある日、美桜の隣の部屋に美しいオネェが引っ越してくる。ひょんな事から言葉を交わしてみると、なんと彼は高校時代の同級生、千樫だった。美桜と共に手芸部に所属していた千樫は、今や世界中で活躍するスタイリスト・ヘアアーティストとして成功していた。今まで秘書という立場(というより、“律己の秘書”という立場に嫉妬する女性社員からのやっかみ)を気にするあまり、必要以上に地味な身なりに徹していた美桜だったが、そんな美桜を見かねた千樫に、魔法のように美しく変身させられていく。しかし、そんな美桜の変化に対し、律己の反応はイマイチで……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 象山美桜=社長秘書を務める地味女。隣室に越して来た高校時代の同級生・チカ の手によって美女に変身する。 秋埜律己=アパレルブランドの敏腕社長。ハンサムで女性人気が高いが、長らく 美桜に片思いしていた。 轟千樫=美桜の友人。引く手あまたのメイクアップアーティストで、色々諦め ていた美桜に発破をかけ、その腕前で彼女を美しく変身させる。 由亜=律己の会社の契約モデル。 律己の妻の座を狙っており、美桜を敵視する。シンプルなシンデレラストーリーです。登場人物たちがそれぞれの役柄を担ってるのが良い。美桜は秘書歴10年の地味女。彼女の上司である律己はアパレルブランドの社長なだけあって、お洒落で雰囲気も華やかな人だ。故に女性にもとても人気がある。外見だけでなく、真面目だけが取り柄の美桜にも何かと気遣ってくれて、海外出張の度にブランド物の高価なお土産を欠かさない。密かに想いを寄せている人からの贈り物。貰って嬉しくないはずがない。一度、ストールだけでもとお土産の中から身に着けて出社したら、女性社員達からは陰口の嵐。終いには面と向かって叱責されてからは、やはり地味な自分には似合わないのだと思い知らされた。以降、せっかくのお土産物は全部箪笥の肥やしとなっている。そもそも、律己の様な人が美桜をそんな目で見ているわけがない。そう思い込んでいた彼女は、律己からの好意に全く気付いていなかった。彼にしてみれば、鈍い彼女への猛アプローチだったのだが・・・。以前、一度冗談めかして結婚しようか?と告げたら全く相手にされず、随分と音込んだものだ。諦めきれずにせっせとプレゼント攻撃をしても、ストール以外一度も身に着けて来てくれない。幸いにも、せっかく美人なのに地味な髪形と服装で固めている美桜は28にもなって男っ気がまるでない。おかげで焦らずいられる。だが最近、契約モデルの由亜の自分への擦り寄りが鬱陶しい。世話になっている広告会社の重役からの頼みで起用したが、由亜は我儘な性格で仕事でのトラブルも多い。しかも年齢もアラサーでモデルとしては崖っぷちだ。20代のうちにセレブ婚に持ち込みたいのが明け透けで流石に萎える。律己も代議士の娘でもある彼女の機嫌を損ねないよう食事程度には付き合っていたが、由亜はよりにもよって美桜を敵視しているのがいただけない。今日も散々嫌味を言った挙句、勝手に彼女を追い返してしまった。この何様な態度もいい加減許しがたくなってきた。契約も更新する気は無いので、ごねられた時用の策を煮詰めておかねば。その頃、美桜は偶然にも隣室に越して来た、高校時代の同級生で手芸部の友人・轟千樫と久しぶりの再会を果たしていた。随分と面変わりして金髪に染めていた彼は、見事な女言葉のオネェになっていてかなり驚いたが、アメリカで修行してメイクアップアーティストを生業にしているとのこと。成程、それでその派手さぶり。元々男性が恋愛対象だったようで、今の恋人も男性だと言う。再会の祝いにと飲みに誘われ、チカのこれまでを聞き、美桜もアレコレと話して盛り上がった。ついつい恋バナというか片思いしてることも話してしまったら、当時から恋愛小説好きの彼に火をつけてしまったようで、恋の成就に力を貸すと鼻息荒く言い切った。どうも、恋をしてる割に地味な装いだし、自己評価の低く卑屈な美桜が気に入らないらしい。自分なんかが着飾ったって、とは言うが彼女から聞いたストールの件も女子社員達の悪口はどう考えたってただのやっかみだ。そんなくだらないことに萎縮しているのは勿体ないではないか。せっかく元が良いのにと、彼女の部屋にあった例の片思い相手からの贈り物を見たらピンときた。これは向こうも美桜に気があると。悔しいけれどこの社長はセンスが良い。新しく服や靴を買う必要はなさそうだと、チカは先ず美桜に派手過ぎず、彼女本来の美しさを際立たせるためのメイク法や肌の改善。重たい髪色をどうすするか思案し・・・。チカと美桜の努力の賜物で、美しく変身した彼女に、男性社員達は色めき立ち、律己も焦りだします。特に律己は最近美桜の口から出る「チカちゃん」なる人物が気になって仕方ない。食事に誘っても先約があると断られ、ヤケ酒をしに入ったダイニングバーで同じく飲みに来ていたらしい美桜に遭遇。噂のチカちゃんが男性と知り、嫉妬に駆られるも、チカの一芝居により、二人はお互い両想いだったことを知り、恋人関係に。おかげで、付き合いも順調。二ヶ月ほど経つと、関係を隠そうともしない律己のせいで今では美人秘書になった美桜と彼は社内でも公認カップル。なのに、未だ律己を諦めていない由亜はSNSにて彼との関係をほのめかした投稿をしたりと、律己を怒らせていました。そこで、彼はメイクの仕事で芸能界にも顔が広いチカと手を組み、由亜との縁切りを企てます。船上での新作発表会にて、由亜が騒動を起こすも、律己の下準備もあって結局自分を追い詰めただけで終了。親も庇いきれないほどのペナルティを課せられることに。この騒動の裏で、サプライズのプロポーズがあったり。チカがなぜ美桜にこれ程肩入れしたのか、この辺の事情は興味がありましたら読んでみてください。このお話を呼んで改めて、他人にも優しくしておくものだなと痛感。ぶっちゃけ、チカと会わなかったら両片思いのまま、お互い独身で終わってそうな雰囲気だったもんね。評価:★★★★★性格の悪いあのモデルが結構なザマァされててスッキリ。億単位になりそうな賠償金をどうやって払うのやら。
2022.08.17
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2019年12月刊こはく文庫著者:上原緒弥さん幼い頃、迷子になったところを助けられてからというもの、第三王女であるトリシアは兄の幼馴染であり騎士であるサイラスに片思いをしていた。そんなある日、忠義への褒美としてサイラスに王女の一人を妻として与えることが決定する。「自分こそがサイラスの妻に」と願いつつも、姉のルーシアとサイラスの仲が良いことを知っているトリシアは、姉とサイラスが結婚するものだと思い込み、失恋を覚悟していた。しかし、父である国王が指名したのは姉ではなくトリシアだった。サイラスの妻になれる。喜びに胸踊らせながらも、トリシアの心にはわだかまりが残る。「サイラス様は、私ではなくお姉さまと結婚したかったのではないかしら?」 サイラスにも姉にも問うことのできない疑いを胸に隠したまま始まった新婚生活だったが、サイラスから向けられる優しい眼差しに、「もしかしたら、このまま幸せな夫婦として過ごしていくことができるのではないかしら」と、トリシアは希望を見出す。しかしそんな幸せも一瞬のことで、初夜以来、サイラスはトリシアを避けるようになる。優しい言葉をかけてはくれるものの、ハグもキスもしてくれないサイラスに、トリシアは深く傷つく。しかも偶然にも、サイラスとルーシアが仲睦まじく頬を寄せ合う姿を目撃してしまい……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 トリシア=王国の第三王女。王家への忠義の褒賞としてラザフォード侯爵家の 跡取り・サイラスに降嫁した。 サイラス=トリシアの夫。 長らくトリシアに想いを寄せていた。 ルーシア=第二王女。サイラスの姉が自分付きの侍女であるため、普段から懇 意にしており、トリシアにあらぬ疑いを掛けられる。 テオドア=王太子。サイラスとは幼馴染で友人。 フェリシア=トリシアの長姉で元第一王女。隣国に嫁いだ。 一時期、サイラスを女遊びが激しそうな人物と思い込んでいた。amazonにて高評価だったので読んでみたのですが、色々とツッコミどころの多いお話でした。特にヒーローが想いを口にしない理由がよく判らなくて(^_^;)知らぬは本人ばかりなりで、お互い初恋同士だったトリシアとサイラス。国王はサイラスの父・ラザフォード侯爵とは旧知の仲で、今も侯爵家は親子二代に渡って忠義を尽くしてくれている。そこで、王は娘の一人を褒美としてラザフォード家に降嫁させると決定。白羽の矢が立ったのは第三王女のトリシアだった。トリシアは身分違いから諦めかけていた彼と結婚できることに喜びつつも、姉・ルーシアとサイラスの関係を疑っていました。本当はお姉さまの方が良いのでは、と彼女は急激に不安になるも、どちらにせよこれはもう決定事項。4カ月後、二人は結婚。結婚生活が始まってふた月ほど経ったが、トリシアはサイラスに避けられていた。とは言え、彼はちゃんと優しいし、あれこれと気遣ってくれる。だけど、毎日のように帰宅が遅く食事すら一緒に採れない。まさか初夜で何か粗相をしてしまったのだろうか。姉達に比べ、トリシアは内気で引っ込み思案な性格だったが、一生懸命努力してサイラスに話しかけていたつもりだ。なのに彼は何とも言えない表情をする。今日も遅くなると聞いて、ため息しか出ない。やはり、サイラスはルーシアお姉さまと結婚したかったのだろうと一人思い悩むように。ある日、隣国に嫁いでいた長姉・フェリシアが久しぶりに里帰りし、せっかくだから会いたいとトリシアを王城へと招いた。姉のいる部屋へ行く道すがら、サイラスとルーシアが侍女・エミリーを交え仲睦まじくしているのを見て、トリシアは大層ショックを受けます。元々、父同士が友人なので家族ぐるみの付き合いなのだが、あんな楽しそうな顔、屋敷では滅多に見せてくれないのに、と思うと落ち込むばかり。フェリシアにも心配されてしまった。長姉は元々サイラスをよく思っていなかったようだし、変に誤解していなければ良いけれど。でも、自分はもう彼の妻なのだ。思い悩むより姉に本心を聞こうと、約束を取り付けて後日城へ向かうとまたしても彼らは楽しそうにやり取りしていた。話している内容までは聞こえなかったが、ルーシアがサイラスに随分と顔を近づけている。まさか、こんな白昼堂々と!もうサイラスの傍にはいられないと考えたトリシアは熱を出して寝込んでしまい・・・。勿論、サイラスは浮気をしていたわけではなく、惚気ていたのをルーシアに呆れられていたやり取りを偶然トリシアに見られていたと言うオチ。サイラスは幼いころからトリシアに恋していて、この結婚が決まった時は天にも昇る気持ちでした。だけど、トリシアは何故か物問いたげでいつも浮かない顔。王の命令に逆らえず、意に染まぬ結婚だったのでは?とグルグル。結局、想いを打ち明けられぬまま、彼女を避けていたのでした。これまた、会話が足りないせいで拗れる二人ってわけですね。この後すぐに誤解が解けて仲直り、番外編にて、ルーシアには別に想い人がいると判るエピソードが描かれています。要はヒーローがヘタレ過ぎてヒロインに要らぬ心配をかけていたんだよって話です。個人的にヒーローの態度がどうにもいただけない。ヒロインも自分に自信が無い系の子なのだけど、ちゃんと歩み寄ろうと努力してたし、話しかけてもいた。それにちゃんと「愛してる」と告げてるのに、男が黙ってるってちょっと意味不明。あと、誤解の原因になったシーンでネクタイを引っ張られて顔を近づけたってのが妙に違和感で。勤務中の騎士がネクタイ????多分、細かい所は突っ込んじゃいけない、の極みなんでしょうね。もしかして、この国ではネクタイしてるのかもだし。けど、表紙イラストを見るとなぁ。それと数か月前から日にちが決まっているのに用事で妹の結婚式を欠席する長姉。どんな用事だったら欠席していいことになるのか。評価:★★★★個人的にちょっと合いませんでした。
2022.08.11
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2020年11月刊こはく文庫著者:榎木ユウさんリリーには婚約者がいた。隣国の伯爵家の子息ビリード。親が決めた婚姻。まだ会ったこともないビリードではあったが、リリーは心の底から彼を愛していた。五年の間に交わした手紙から、互いを思いやり、互いの人柄を慈しみ、互いに結婚を望んでいることを確信していた。そんなリリーに悲劇が襲う。両親と兄が事故で亡くなり、リリーが侯爵家を継がねばならなくなる。祖父は縁談を破棄し、国内から婿を得ることを命じる。決まったのは騎士のブレッド。騎士職を捨ててリリーの夫になる道を選んだという。献身的に尽くしてくれるブレッドに、少しずつ心を開いていくリリー。ある日、王都で行われる舞踏会に出席したリリーは、偶然にも元婚約者のビリードに出会ってしまい…… ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リリー=ドノヴァン侯爵令嬢。事故で両親と兄を亡くし、婚約者との結婚も 破談になってしまった。一年後、祖父の決めた相手である元騎士の ブレッドと結婚した。 ブレッド=リリーの夫。王立騎士団の副団長であったが、ドノヴァン家への婿入 りの為に除隊。侯爵家の当主となった。 ビリード=リリーの元婚約者。隣国の伯爵家の子息で長らくリリーと文通してい た。その一方で隣国では女性との醜聞が多い。 アンナ=リリー付きの侍女。タイトルに「伯爵令嬢」とありますが、ヒロインは侯爵令嬢です。これは手痛いミス(^_^;)貴族TLではごっちゃになりやすいのか、あらすじ文で爵位をミスってるってのは割とあるんですが、堂々とタイトルでやらかすのは新しいパターンかも。ヒーローとヒロインの身分差を出すために途中で設定変えたのかしら。隣国に暮らす伯爵家の子息・ビリードとの文通を交わしながら、結婚を心待ちにしていたリリー。兵役に出ている彼が戻ったらいよいよ結婚できると思っていた矢先、式典に参加するために遠い王都へ出かけていた両親と兄が道中崖崩れに巻き込まれて亡くなった。一度に家族を亡くしたリリーは悲しみに暮れ、家族の死を思い起こさせるのか葬儀で大量に活けられていた百合の花が大嫌いになってしまった。だが、沈んでばかりもいられない、彼女は跡取りとして領地と領民を守っていかなければならない。祖父が領主代行しながらノウハウを叩きこんでくれたけれど、その手の勉強とは無縁だったリリーにはキツイ。そして祖父は彼女に婿を取れと命じた。本来はビリードのボウエン伯爵家へ嫁ぐはずだったのに、侯爵家存続のためにリリーは家に残らねばならず、婚約破棄になってしまった。多額の慰謝料を払い、ビリードにはせめてと詫びの手紙を送った。でも、あれほど優しい手紙をくれてた人が、最後は随分と汚い字でたった数行の返事を寄越した時は随分とショックを受けたものだ。勉強の傍ら数多くの見合いをしたが、名乗りを挙げるのは実家を継げない次男や三男坊と言う爵位目当てのハイエナばかり。どれもこれと言った人物には会えず決めかねていた所、最終的に祖父が決めた。夫になるのはブラッド・キース・バーンと言う騎士団副団長を務めていた青年だった。彼はわざわざ除隊してまで婿養子になってくれるらしい。副団長にまで登り詰めたのに、侯爵家とは言えこんな田舎の領主になるとは随分と変わった人物の様だ。結婚式にて初めて彼と顔を合わせたが、なるほど騎士と言うだけあって体格が良い。やはりビリードに未練があり思い出して切なくはなったものの、ブラッドは一々彼女の気持ちを尋ね優しかった。挙式から一ヶ月。祖父に領主業を習い、当主として毎日頑張っているブラッド。それを横目にリリーはため息ばかり。自分の元乳母で母親代わりの侍女・アンナに見咎められ思わず愚痴ってしまった。彼は優しいし、気遣い屋だ。おかげで夫婦仲は悪くないと思う。だが、ブラッドはかなりの絶倫だった。いくら新婚でも毎晩するのが普通なのだろうか。アンナは愛しているからでしょうと言うけれどイマイチピンと来ないのは、まだビリードを諦めきれないからか。それにしたって、未だに鍛錬を続けている元騎士と箱入り娘のリリーとでは体力に雲泥の差があることにいい加減気付いて欲しい。そんなある日、王家主催の舞踏会が開かれ、リリーとブラッドも参加することに。どうやら、隣国の貴族も多く招待されているらしく、ビリードも来ていると言う。こんな形で元婚約者と初対面を果たすとは。ドキドキしながらも、ビリードに遭ったリリーは思っていたより美形な彼を見て若干違和感を覚えた。女性を同伴していたのはともかく、最近未亡人になったと聞く子爵夫人と親し気にしているのは頂けないし、チャラチャラした態度も気になる。婚約時に風の噂でビリードは王女殿下に色目を使って、貴族なら金でパスできるはずの兵役に追いやられたと聞いた。あの時はあんなに誠実な彼がと笑い飛ばし信じていなかったリリー。そのせいで本来予定していた結婚が延期となった挙句、家族の死で破談になったわけだが。女癖が悪く、あちこち浮名を流していると言うのも強ちただの噂話ではなかったのかもしれない。それに、勝手に理想を抱いていただけかもしれないけれど、どうにも手紙の文面から窺い知れる人物と彼が一致しない。その日からまたひと月ほど経った頃、王弟殿下の婚約披露の夜会が開催されるとのことで、夫妻は再び王都へ。大して日も空けずに招集されると遠い領地に住む貴族達には迷惑極まり無いが、王家主催の催しは貴族は全員出席せねばならない。しかもビリードはまだ王都に滞在しているようだ。つい、あの大切な手紙を読み直してしまったリリーの心境は複雑だった。今ではすっかりブラッドの為人を愛しく思うが、やはり何だかんだとビリードは初恋の人。でも改めて読み直してみると誠実で達筆だった文章と最後の破談了承の字の違いがどうにも気になる。まさか、ずっと別人に代筆させてて最後だけ自分で書いたとか?モヤモヤしていたら、当の本人から帰国する前に改めて元婚約者殿とお話がしたいとビリードから手紙が。何とも汚い字は最後の手紙と同じ。はっきりさせようと、アンナが引き留めるのも聞かず、リリーはビリードへ会いに行き・・・。文通相手に関しては、文面ととある人物の言動によって割とすぐ判ります。正直、誤配送にしたって無理があるとは思うものの、細かいことは突っ込んではいけません。まあそういうこともあるだろうっとこで。でも、あの元婚約者はクズ過ぎて破談になって正解。誠実な人だと思って嫁いだら、実際は女遊びしまくる最低男だったなんて不幸一直線ですもん。反面、ヒーロー・ブラッドが一途でそれこそ誠実な男性でした。侯爵家の不幸がなくとも、ビリードはやらかし過ぎてたこともあって、早晩破談になってたはず。さすがに、侯爵も騎士団副団長でいくつも勲章貰ってる人なら娘と結婚させてくれてたと思う。諦めないことが大事。この辺の詳しい事情は終盤ブラッドが語っているので、興味がある方は読んでみてください。評価:★★★★☆お話は面白い。でもタイトルミスが残念。
2022.08.10
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2020年11月刊こはく文庫著者:ちろりんさん結婚一年目の夫婦であるセドリックとグヴィネス。ある日、セドリックが不慮の事故に遭い三年間の記憶を失ってしまう。三年前、グヴィネスと出会う前のセドリックは女嫌いだった。女という女すべてを忌み嫌い、言葉をかわすことはおろか、顔を見ることさえ満足にできないほどだった。あの頃の状態に戻ってしまったセドリックは、自分に妻がいるという現実を受け入れられず、混乱のままグヴィネスに離縁を言い渡してしまう。セドリックの混乱が収まるまで、とグヴィネスは屋敷の離れへ身を寄せることに。しかし次の日、落ち着きを取り戻したセドリックは現実と向き合うべくグヴィネスのいる離れへ訪れ、「自分たちのことを教えてほしい」とグヴィネスへ歩み寄る姿勢を見せる。グヴィネスは二人が何故結婚するに至ったかを語り始め……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 グヴィネス=結婚一年目の侯爵夫人。結婚前、お互いのの努力によって女性恐怖 症のセドリックが唯一恐怖心を抱かない存在になった。 セドリック=グヴィネスの夫。美丈夫で女性人気の高い人物だが、とある事件が 切欠で女性恐怖症となっていた。クロフォード=王太子。セドリックの幼馴染で何かと相談に乗っていた。 グヴィネスを敵視している。 リラ=グヴィネス付きの侍女。kindle unlimitedがもう一杯なので、電子書籍が続いてます。今回は大好きなちろりんさんの中短編。女性恐怖症の美丈夫と結婚したものの、たゆまぬ努力で何とか妻の自分だけは慣れてくれてホッとしていたら、彼が不慮の事故で記憶喪失に。自分が女と結婚するはずが無いと屋敷から追い出されそうになると言うお話。グヴィネスは結婚1年目の侯爵夫人。ある日、夫・セドリックが階段から転落して負傷し、付き切りで看病していたら、目覚めた彼に「お前は誰だ?」と問われて驚愕。まさか頭でも打って記憶を?と、一先ず問いかけに「あなたの妻です」と答えると、彼は激昂し、自分が女と結婚するわけが無いと怒り狂います。この状況を利用して妻だと謀っているのだろうと怒鳴られ、医師含め屋敷の使用人たちも茫然とする中、一人グヴィネスだけは、そうまで言うなら明日の朝にでも出て行きますとあっさりと告げると、顔も見たくないだろうからと離れの客室で夜を明かした。侍女のリラがあの後のことを他の使用人たちから聞いて来たらしく、やはりセドリックは部分的な記憶障害を起こしているとのことだった。本気で実家に帰るつもりかとリラはグヴィネスに尋ねたが、このまま記憶が戻らなければ関係修復は難しいだろう。実際、婚約期間を含めて2年以上もの間、何とかグウィネスにだけは慣れて平気になってきたのだ。それに、仲睦まじい夫婦などではなかったし。結局、自分だけがセドリックを愛していただけ。翌朝、潔く屋敷を出て行こうとしていた矢先、当のセドリックがグヴィネスに会いに来た。あの後使用人たちからこっぴどく叱られたらしい。随分と尽くしてくれていた奥様と離縁なんてと責められたが、結婚した記憶が無いのだから責められても戸惑うばかり。でも、昨夜はいくら何でも言い過ぎたから謝罪に来たのだと言う。そして、自分と結婚した経緯を聞きたいのだとも。そこで、彼女は自分たちが出会った3年前の顔合わせの場から話し出した。セドリックは11年前、不埒な令嬢たち3人に襲われて以来、重度の女性恐怖症だった。だからこそ、自分が結婚するわけが無いと言い切れるのだろうけれど、グヴィネスにしてみれば紛れもない事実。失敗してしまったものの初夜だって済ませた。女性に傍に立たれるだけで顔面蒼白になる彼からすれば、かなりの進歩だったのだが、偏にグウィネスと二人努力の結果だった。女性恐怖症を知ってか知らずか、令嬢達に絶大な人気を誇る彼が独り身だと、彼に恋い焦がれる令嬢達は縁談を受け付けず一時期騒動になった。親達に泣きつかれて国王は思案の結果、令嬢達が諦めるようセドリックに婚約者を当てがった。それがグヴィネス。彼女はセドリックを気遣い、怖いものを無理に克服する必要はないと彼を励まし、徐々に自分に慣れさせていった。勿論、彼女一人だけ奮闘していたのではなく、セドリックも頑張った。途中グウィネスの恋心を知られて拒絶されかかったが、何とか乗り越えて結婚。今に至る訳だが、綺麗さっぱりあの努力の日々を忘れられてしまったのは悲しい。だが、離縁を告げられたのならそれを受け入れる。そんな主人の潔い態度を見て、リラは何故そこまでグウィネスが離縁に応じようとしているのかが不思議であった。しかも、婚約時の話を聞き終わったセドリックは出て行くなとグヴィネスを引き留め・・・。実は、グヴィネスは長年セドリックに負い目を持っていました。何故なら、彼女は彼にトラウマを植え付けた事件に関わっていたから。当然、自ら進んでのことではなく大きいお姉さんたちに脅されて呼び出す役をやらされただけなのだけど、あの出来事はセドリックに心の傷を植え付けた。このことは秘密のまま墓場にまで持って行くつもりだったのに、セドリックの友人である王太子・クロフォードにバレてしまったらしい。彼は速やかにセドリックと離縁するよう脅して来た。でなければあの事件に一役買っていたことをバラすと。そしてグヴィネスは離縁を切り出し、出て行こうとしていた所、セドリックに引き留められてあの事故が起こったのでした。結局、王太子とも揉めることになるも、記憶を取り戻したセドリックに請われグウィネスは離縁せず、夫婦生活をやり直すことに。あの事件のあらましも、グヴィネス自身は決して悪くないんです。8歳の女の子が18歳くらいのお姉さんたち3人に脅されたら従うしかないですもんね。それをセドリックも理解してたからこそ、彼女を責めなかったわけで。王太子は、セドリックに想いを寄せていたようで余計にグヴィネスに嫉妬してたと言う、複雑な三角関係でちょっと驚きました。報われない想いで気の毒。一時期少しだけだけどBLも読んでたなぁ(遠い目)評価:★★★★☆ヒロインの献身ぶりに思わず泣けましたが、タイトルがちょっと残念。序盤はともかく、どっちかと言うと引き留めてるのは夫の方だったので、実際は逆なんですよね。
2022.08.07
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2022年8月刊こはく文庫著者:黒田美優さん結婚なんてしなければよかった。そう後悔しながら生涯を閉じた若き伯爵夫人マデリン。眉目秀麗な伯爵令息だったディルは、多くの人から感謝され、尊敬されていたが、妻として迎えたはずのマデリンには冷たかった。病に伏せっていることすら知らぬ夫。誰にも看取られることもなく、マデリンは孤独なうちに最期の時を迎えた……が、目覚めると、そこは6年前、まだ独身だったころの自分のベッドの上。すべてが6年前のディルと婚約したあの日と同じように話が進んでいき、彼女は時間が巻き戻っていることに気づいていく。不幸な結婚を避けるために縁談を断ったものの、手違いで婚約書類が国王陛下に届いたことを知ったマデリンは、ディルに直談判しようと伯爵家に出向いていく……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 マデリン=夫に顧みられず、肺病を患い一人寂しく息を引き取った伯爵夫人。 死に際まで結婚したことを後悔し続けたせいか、目覚めると婚約が決 まる当日の朝であった。今度こそ不幸になるまいと婚約破棄を試みる ディル=領地開拓に力を入れ領民を大事にすると評判の次期伯爵。 マデリンから婚約破棄の為の策を持ち掛けられ協力する。クラリッサ=マデリン付きの侍女。 前世では彼女の死の間際まで付き添っていた。 ローガン=ディルの父親。以前マデリンに助けられたことがあり、彼女を息子の 妻にとマデリンの父に縁談の打診をした。転生と言うよりは時間逆行ものかな?潔癖症過ぎて誤解されがちな伯爵令嬢と女性不信の次期伯爵との恋物語です。見たら昨日(5日)発売なんですね。ので、中盤以降は詳しくは書きません。政略結婚ながら、顔合わせの席で夫・ディルに一目惚れして以来一途に想い続けていたマデリンは一度として顧みられることなく、一人寂しく肺病で26歳と言う若さで息を引き取った。彼は自分の病気すら知らなかったろうと思うと悔しい。それでもまだディルを愛している自分に腹が立った。6年も放って置かれて無視され続けた結婚生活。こんな思いをするくらいなら結婚なんてしなければよかった。後悔の念を抱え、そのまま天に召されたはずなのに、目覚めると実家の自分の部屋。そして鏡に映ったのは病で面変わりした26歳の伯爵夫人ではなく、若く美しかった頃のマデリンだった。最後まで付き従ってくれていたクラリッサも随分と若い。まさか自分は婚約前の頃に戻って来たのか?しかも、カレンダーを見るとクレイモア家との縁談が決まった日ではないか。これはもしかして婚約破棄に持ち込める、とマデリンは父にダメもとでこの縁談無しにしてもらえないかと申し出ます。厳しい父に雷を落とされるかと思いきや、あっさり了承されて拍子抜けしたものの、手違いで国王宛に婚約成立の証書が送られてしまったらしい。以前とある令嬢の婚約破棄騒動により、貴族たちは離婚や婚約破棄し難い状況だった。万事休すな事態に策を思いついた彼女はディル本人と話を付けることに。ディルの父・ローガンは長らく肺を患っており、その死が彼を一掃頑なにしていた原因だった。ならば、ローガンが亡くならなければ大きく状況が変わるはず。今はまだ無名ながら、後に呼吸器科の権威となる医師がいると言う情報をディルに教え、ローガンを救えたらクレイモア家側から婚約破棄して欲しいと頼みます。父の為ならと承諾したディルと手を尽くし医師を探す二人。6年後を見て来たからこその情報を逆手に取った作戦は功を奏し、無事件例の医師を発見。その治療を受けたところローガンは見る見る回復。これで破談にできると喜んでいたら、ディルの様子がおかしい。彼は、幼少時のトラウマのせいで長らく女性が怖く苦手でした。でも、マデリンは数多いる令嬢達とは大分違う。そんな彼女に恋をしてしまったのです。まさかそんな状況になっているとは露しらず、婚約破棄などせず君と結婚したいと告げたディルにマデリンは驚き・・・。このディルの女性不信が冷たい結婚生活の理由だったわけですが、そんな理由知らないマデリンにしてみれば随分と理不尽な扱いされてたと思います。マデリンもまた幼少期のトラウマにより、重度の潔癖症でした。日に何度も手袋を変えるさまが贅沢な貴婦人だと思わせてたんでしょうかね。とにかく誤解したまますれ違い、一人寂しく亡くなるとか寂しい人生過ぎる。そりゃ、結婚を後悔するよ。でも、やり直しの人生でお互いの為人を知った二人。ましてや、マデリンは恨みに似た感情を持ちながらも死ぬまでディルを思い続けていたこともあって、君と結婚したいと言われたら決心も鈍ると言うもの。そして、ディルも絶対に彼女を逃がさないと、結婚生活時には決して見せなかった態度を見せ、マデリンを翻弄していきます。マデリンの努力によって周囲の未来も変わり、二人は紆余曲折の末結婚。6年経ってもあの時とは違って幸せなまま、でお終い。中盤色々ハプニングや事件が起こるんですが、その辺は興味がありましたら実際に読んでみてください。評価:★★★★☆やっぱり、会話は重要としみじみ思うお話。
2022.08.06
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2022年1月刊こはく文庫著者:真波トウカさん極貧男爵家の長女、リリア。社交界デビューを済ませたものの持参金も出せない彼女は、20歳になった現在でも結婚どころか親しい異性もおらず、趣味であるレース編みで可愛い小物を作りバザーで売ることが唯一の楽しみだった。しかし、そんなリリアに結婚の話が転がり込んでくる。相手は公爵家の長男で次期当主、王都立の騎士団で団長を任されているイザークだった。なんでもリリアの祖父が、イザークの祖父と取り交わした約束がこの結婚なのだという。「良き妻になれるようしっかり努めよう」「唯一の癒しであるレース編みを否定しない方でありますように……」と願ったリリアだったが、レース編みを否定はしないが編んでいる姿を険しい顔で見つめてくるイザークがいた。先が思いやられるリリアであったが、イザークはとある秘密を抱えていてーー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リリア=貧乏男爵家の長女。得意のレース編み作品を売り、家計を助けてい た。祖父同士の約束事で次期公爵家当主のイザークと結婚。 イザーク=ルベリウス公爵家の次期当主で騎士団長。武骨な外見ながら可愛い 物好きで、リリアの作品を買い集めており、彼女の隠れファン。エヴェリン=イザークの年の離れた妹。重度のブラコンで、兄の妻になったリリ アを敵視する。 セオ=イザークの従卒。ガブリエル=イザークの2歳上の姉。リリアを歓迎し、社交界に疎い彼女に作法 や振る舞いを教えている。初めての作家さんでしたが、面白かったです。他のお話も探して読んでみようかな。可愛いもの好きのヒーローと、レース編みが趣味(半分仕事)のヒロインとの結婚から始まる恋物語。リリアは貧乏貴族の長女。趣味と特技はレース編みで、家計の助けになればとせっせと小物を作ってはそれを売って稼いでいました。父には貧乏くさい仕事と言われるけれど、精神統一には丁度いいし、何より自分の作品を嬉しそうに購入していくお客さんの顔を見るだけで幸せだった。それに、おかげで何とか日々暮らせている。そんな彼女の元に信じられないような縁談が。相手は騎士団長を務めており、公爵家の次期当主だと言う。どうして、うちの様な貧乏男爵家の娘と結婚なんて、とリリアは首を捻った。父の説明によれば今は亡き祖父と先々代公爵家当主との約束事らしい。お互いの孫が産まれたら結婚させると言う。何でも、先々代公爵が戦場で死にかけた際、リリアの祖父が彼を助けたのだそうだ。公爵は甚く感謝し、祖父はその功績により男爵位を貰い、その後友人関係になった彼らは例の約束事を決めた。当人たちにとっては迷惑極まりない取り決めだけれど、男爵家の窮状を知ってか持参金は必要ない事、この結婚に当たり援助もしてくれるそうだ。破格の申し出に父は大層乗り気で、これで使用人も増やせるし、長男に上等教育を受けさせることが出来ると喜ぶ父を見ていると顔も知らない人との結婚なんて嫌だとは言えなかった。レース編みさえ禁止されなければ、この縁談は願ってもない事ではないか。結婚を決意したものの、相手は全く姿を見せない。手紙のやり取り自体はしているが素っ気ない内容と多忙だから式まで会えないとの返事にさすがにリリアも段々腹が立ってきた。本当に結局式当日まで彼とは会えず、漸く姿を見せたと思えば大遅刻。彼もこの結婚が気に食わないのだろうけどさすがにその態度はあんまりではと思っていたが、夫になる人は如何にも騎士な外見のカッコイイ青年ではないか。彼、イザークは彼女お手製のレース編みのベールをしげしげと見ており、思わずレース編み作品に興味がおありで?と尋ねると秒で否定されて、リリアは結構なショックを受けた。こんな人と上手くやっていけるのだろうか。そんな彼女の心情も知らず、イザークは内心戸惑いと感動で打ち震えていた。販売会場で盗み見たことがあるので、大ファンであるリリアの顔は知っていたが、許嫁が彼女とは知らなかった。正直、粗末な服装をしてレース編みを売っている女性が貴族とは夢にも思わず平民だと思い込んでいたから。そして、リリアに対してイザークは大ファンであったが、一目惚れの相手でもあった。今更ながら、彼女でなければ誰でも同じと、許嫁として一度も会いに行かなかったのが悔やまれる。さぞ不誠実な男と思われただろう、しかもさっきはレース編みなど興味がない、と思い切り否定してしまった。どちらにせよ、先は長いのだから徐々に距離を縮めて行けばいい。だが、出だしの失敗がやはり不味かった。一心不乱にレース編みをしている彼女に見惚れていると目つきの鋭さから睨んでいると思われたのか、何か文句でも?と言われる始末。一向に距離は縮まらない。リリアにしてみれば、せっかく結婚したのだから仲良くやっていきたいのが本音だ。さっきも睨まれてしまって、ついあんな態度をしてしまったけれど、父の言うようにレース編みは貧乏くさいのか。それでも止めろとは言われてないから好きなようにやらせてもらっているけれど、この空気感が辛い。イザークが自分を気に入らないならば離縁も視野に入れるべきか。とは言え、公爵家からの援助が無くなるのははっきり言って困る。ならば自分から歩み寄ろうと、リリアは実家の使用人から聞いた初夜を実行しようとイザークの寝室に突撃。彼に初夜をしようと迫るも猛然と拒否されて大ショック。そもそもリリアは性的な知識が乏しかった。イザークも何やら勘違いがあったと理解してくれたようだ。翌日、セオの薦めでオペラに出掛けた二人、演目は素晴らしく面白かったが、彼の妹・エヴェリンの取り巻きに見つかり散々嫌味を言われてしまった。だが、意外にもイザークは彼女達を𠮟りつけリリアを助けてくれた。この結婚に対して文句どころか、リリアは公爵家の嫁に相応しいと言ってくれた彼にリリアはイザークを誤解していたことを知って好感を抱きます。この出来事で、二人の関係は徐々に変わっていき・・・。この後、舞踏会への参加や、イザークのセンスが良い事。実はレース編みに興味がありありなのがバレてからは急速に仲が深まり、イザークも好きな人に秘密は持たないと自分の趣味部屋を披露。リリアの作品が大量にあって、彼が自分の作品の大ファンだったと知ります。お互い想いあっていたことが判り、漸く初夜に漕ぎ着け、セオが驚くほど雰囲気が変わったイザーク。ガブリエルも優しく公爵夫人の心得を指導してくれるし、順風満帆な結婚生活。でも、重度のブラコンであるエヴェリンが未だに二人の結婚を認めておらず、兄たちの暮らすタウンハウスへ押しかけやりたい放題。ついには彼の大事な趣味部屋をリリアの部屋と勘違いした挙句破壊活動に及んでちょっとした騒動に。結局、イザークの激怒とリリアの執り成しに寄りエヴェリンとの仲も良くなるのですが、まあ、大好きなお兄ちゃんんをこんな女に取られて!と思う気持ちもわからないでもない。ラストは二人の結婚披露パーティーの様子が描かれてお終い。ヒロインが苦労してる割にはスレてなくて、しかも初心過ぎるキャラ設定が可愛くて好感持てます。ヒーローはイラストだけ見ると強面かなぁと首を捻るくらいの美丈夫。可愛いもの好きなのを打ち明けられず、乙女部屋なる趣味部屋を作り、そこで英気を養ってた可愛い人。まぁ、ずっと仲良くやってくんじゃないですかね。義妹もヒロインを気に入ったようだし、義両親と義姉は元々好印象。夫の家族との関係も良好なら言うことなし。評価:★★★★★このレーベルさんでは久々に大当たり(個人的に)
2022.08.02
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2020年6月刊くるみ舎・こはく文庫著者:田崎くるみさん高畑凛と伊月尊は幼馴染み。5歳年上の尊は幼い頃から凛のことを妹のように可愛がってくれていたが、凛はそんな尊にずっと、恋心を募らせていた。大学を卒業し、尊が立ち上げたデザイン会社で事務員として働くことになっても、尊にとって凛は可愛い幼馴染みのまま。お酒が入ると「俺の可愛いりんりん」と連呼するし、デスクには凛の写真がいっぱい。大切にされるのは嬉しいけれど、「そろそろ大人の女性として見て欲しい……」、そう願い始める凛だったが、「俺が認めた男と凛が結婚するまで、俺は結婚しない」と、まるで娘を心配する父親のような尊の発言を耳にしてしまい……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 高畑凛=ヒロイン。過保護な幼馴染・尊に長らく片思いしている。 彼の経営する広告会社に勤めることになり、二人の関係を生暖かい目 で見守る先輩社員達からの援護射撃を受け、何とか尊にこの思いを打 ち明けようと決意した。 伊月尊=凛の5歳年上の幼馴染で、広告会社社長。 赤ん坊のころから知っているせいか凛を溺愛し、彼女に男を近づけな い様牽制しまくっていた。凛を愛しいと思うのは恋愛感情ではなく親 の様な気持ちからと思い込んでいる。 船原茉央=凛の親友。何かと凛の相談に乗っており、尊の過保護ぶりに呆れてい る反面、どう考えてもこの二人は両想いではと、凛の方から尊へ告白 するよう薦めた。 常盤亜矢=凛の先輩社員で、教育係。 凛の想いを知って、この恋が上手く行くよう社員全員で後押しした。 荒川壮一=尊の大学の後輩で優秀なデザイナー。常盤の夫。 何かといえば凛の話をする尊に辟易していたが、いざ、噂の「りんり ん」に会えて感動もしていた。幼馴染ものです。お互い両想いなのを知らぬは当人ばかりなり。なお話。家がお隣さんだったこともあって、家族ぐるみの付き合いの二人。5歳年上のハンサムな幼馴染は何かと過保護で、人目も憚らずにアレコレと世話を焼いて来て、長年彼に想いを寄せていた凛は対応に困っていた。傍から見たら恋人同士に見えると何度言われた事か、その度に否定するのも虚しくなって来る。折しも、面接に落ち捲り就職についてもどん詰まり。尊は自分の会社に来いと言ってくれているけれど、そろそろ、どっちつかずの関係にも終止符を打つべきかと考えている時なだけに、好意を受けるべきか考えあぐねていた。そんな彼女に、茉央はどうせなら同じ職場で働いて大人になった自分を見てもらえとアドバイス。それに、いい加減自分の気持ちを伝えろとも。結局、ギリギリまで就職活動を続けたものの、一つも内定は貰えず、尊の会社に勤めることに。いざ、初出勤の日。わざわざ迎えに来た尊は、隣同士なんだし毎日出勤退勤車で送ると言う。電車通勤などさせて痴漢に遭ったら大変と溢す彼は、世の父親よりも度を超えていた。しかも、社に着くと驚くほどの歓迎ムード。何故か皆、凛を「りんりん」と呼んで微笑ましく見ていて困惑していると、教育係の常盤が種明かし。社長室のデスクには所狭しと凛の子供のころから現在の姿までの写真立てが並んでいて、皆尊から耳タコで凛の自慢をされていたらしい。初めて会った気がしないとまで言われていたのはこううことか。常盤からも例に漏れずこれ程溺愛されているなら付き合ってるんでしょ?と聞かれたが、凛の答えを聞いてかなり驚いていた。何となく、彼女には本音を話し、この関係を変えたいのだと打ち明けてしまったが、常盤はそれならば上手く行くよう力を貸すと言う。彼女の夫の荒川始め、社員達全員、社長のアレは恋だと判っていたので。かくして、二人の恋の成就のために周りが動き出し、凛もいよいよ告白をするチャンスを狙っていた。だが、ことこういうことに関しては尊は致命的に鈍く、彼らのお膳立ても悉くスルー。学生時代はその見た目も相俟ってかそれなりに遊んでいたらしいのに、凛に関してのみ変なスイッチが入っているようだ。そんな日々が続いたある日、凛は偶然尊と荒川との会話を耳にした。彼は飽く迄自分を娘や妹の様にしか思えないとはっきり言っていたことにショックを受け・・・。尊はやはり女として自分を見てくれないと凛は失恋したと思い込み、茉央の誘いで街コンに参加して新たな恋を探そうとします。でも、それを尊に気付かれ猛反対された挙句、感極まった彼に襲われます。幸い未遂だったものの、そこから二人はお互いを避け、見守る社員達も何とも言えない雰囲気に。心配した常盤が凛から少しぼかしたと思われる経緯を聞くに、どう考えてもそれは嫉妬であり、尊もそんな自分がショックだからあの様子なのではと見当がついたが、これはどうしたものか。同じ頃、相談した荒川から本心を言い当てられた尊は、いよいよ自覚。ある朝全社員のいる前で凛に公開告白ぶちかまします。その日、皆に歓迎される形で交際はスタート。なのに3か月も付き合ってなにもしない彼に悶々したりしますが、単に特別なシチュを用意したかっただけらしい。2年後、結婚した二人。第一子がお腹にいる中働く彼女を気遣い、更に過保護ぶりが増した尊に周りも聊か呆れている様子が描かれてお終い。120ページくらいの短編でしたが、コメディータッチで面白かったです。尊の親みたいな心境ってのもまあ判るんですよ、赤ちゃんの頃から知ってて親が心配するほど彼女の面倒見てたそうだから。恋心を父性愛と勘違いしてたことで、結構回り道していましたが、結局結婚してからも暑苦しいほどの溺愛は変わらず。社長と言いつつ、御曹司とかではなかった分、庶民っぽさが結構新鮮味があります。評価:★★★★☆TL小説は、大抵初恋が叶うのが良いですね。
2022.06.10
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2022年5月刊くるみ舎・こはく文庫著者:ちろりんさん伯爵令嬢のウルスラは、社交界の人気者。同じく社交界の人気者である侯爵家の嫡男・ジュードとだけは犬猿の仲で、顔を突き合わせるたびにいがみ合っていた。しかし、ウルスラがとある夜会で男に襲われ、部屋の中に連れ込まれそうになったところをジュードに助けられて以来、二人の関係には変化が起こる。ドレスも髪も乱されたウルスラを庇うため、ジュードが咄嗟に大胆な嘘をついたのだ。「実は自分たちは恋人同士だ。酔いに任せてハメを外しすぎてしまった」と。男に乱暴されそうになったという事実はごまかせたものの、ジュードの言葉を信じた社交界は大盛りあがり。両家では結婚の話まで進んでしまう。「ほとぼりが冷めたら離婚しよう」と提案するウルスラだったが、ジュードはそんなつもりはさらさらない様子。しかも「妻になったのだから当然のことだ」とウルスラをベッドに押し倒してきて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ウルスラ=ヒロイン。シーグローブ伯爵令嬢。その容姿と姉御肌な性格で多くの 貴族令嬢達から慕われているが、その反面、同年代の男性からは遠巻 きにされている。加えて幼馴染のジュードのちょっかいによって出会 いのチャンスを逃し、行き遅れそうで焦っていた。 成り行きでジュードと結婚したものの、彼の本心が判らず戸惑う。 ジュード=ヒーロー。フェアファクス侯爵家の跡継ぎで、ウルスラの幼馴染。 幼少期から彼女を妻にすると決めており、社交の場でウルスラに悪い 虫が付かないようガードしていた。とある事件をきっかけにしてウル スラに求婚し、妻に迎える。ザカライア=ウルスラの双子の兄。13歳の時、ウルスラを庇って落馬事故に遭 い、その傷への菌感染により死亡した。この事故が自分のせいと思い 込み、長らくウルスラは気に病んでいた。 エルトン=ディン伯爵家の子息で、父親共々クズ。 以前からウルスラに言い寄り親子共有の愛人にすべくチャンスを伺っ ていた。ロビンを餌に舞踏会の日にウルスラを襲い、ジュードから相 当の報復を受ける。 ロビン=ウルスラの取り巻きの貴族令嬢の一人。彼女を心から慕っているが、 エルトンに傷物にされた挙句に脅されてウルスラをおびき出すよう命 じられた。元々ジュードに恋しており、二人の結婚後はウルスラを妬 むようになる。よくよく見たら結構最近発売した作品だったんですね。(5月20日)これはあんまり詳しく書かない方がいいかな。(一応登場人物の説明の方で若干ネタバレしています)中盤までのストーリーはあらすじ通り。幼馴染の男性と結婚したは良いものの、彼は早逝した親友である自分の兄の遺言を守ってるだけ。せめて、侯爵夫人としての役割だけはきっちりこなそうと思っていたけれど・・・。な、お話です。130ページほどの中短編なせいか、敢えて捻らずにしてる風に受け取れるので、展開自体はシンプル。割と序盤に二人は結婚し、初夜の時にヒーローの本音を知り驚くヒロイン。遺言など関係なく、彼は自分をずっと愛してくれていた。やがて侯爵家を継ぐ彼の為に、自分はそれを支える妻として、フェアファクス家と懇意にしてくれている貴族たちを招待してのホームパーティーを計画。準備も万全で、予定通りなら絶対に上手く行くはずと思いきや、大小様々なトラブルが起きて対応に天手古舞。内心では冷や汗状態のヒロイン。でも、そんな時も助けてくれるのは愛しい夫。彼のおかげで何とかパーティーは成功に終わって一安心だったけれど、ヒーローには今回のパーティーの失敗を目論んでいた存在に見当がついていて・・・。この真犯人も、まあこの人しかいないでしょ感はあったものの、事情を知ると結構気の毒。だからこそあの程度で許されたんでしょうが、何もかも悪いのはあのセクハラ男。諸悪の根源だけに、ヒーローによって没落の憂き目に合うんですが、同じような目に合った令嬢も多いのではと思うと同情の余地無し。評価:★★★★☆ストーリーは文句なしなのだけど、もうちょっとラストに余韻が欲しかった気が。ヒーローのヒロイン以外眼中に無いと言う姿勢が良いです。
2022.06.02
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2021年1月刊くるみ舎・こはく文庫著者:佐倉紫さんリエッタは、幼いころから憧れていたマライヤのように立派な女伯爵になることを目標としてきた。婿入り予定の婚約者ウィルは内向的で頼りにならない。だから余計に自分がしっかりしなければという意識が強く、領地の経営を学ぶために国境を越えて経営学を学ぶためにエルノルン国の大学に留学するほどその情熱を傾けていた。だが、ある日突然実家から呼び出され、ウィルと異母妹シャロンとの結婚と、爵位をウィルに継がせることを宣告される。ーーばかりか、シャロンはウィルとの子を妊娠していた。確かに、領地発展のため、家の隆盛のためと頑張るあまり、リエッタはウィルの気持ちに寄り添っていなかったのかもしれないしれない。だがそれを止められたことは一度もない。ウィルからも、家族からも。それなのに今になって? 混乱するリエッタを悪意ある噂が襲う。リエッタが大学に戻れば、そうした噂はさらに尾ひれがつき、あろうことか、リエッタが傷害罪で訴訟されたことになっているのだった。やけ酒を煽るリエッタの前に現れたのは、エルノルン国の王太子と名乗る同じ大学の学生サリエル。王族とは髪の色が異なるサリエルだったが、リエッタがついこぼしてしまった弱音を真摯に受け止めてくれて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 リエッタ=ヒロイン。小国・ザルフツのトーシャン伯爵家の長女。 憧れの女侯爵マライヤに憧れ、女伯爵として家を継ぐため勉学に励ん でいたが、留学中に異母妹に婚約者を寝取られ、トーシャン家の当主 の座まで奪われた。 サリエル=ヒーロー。エルノルン国の王太子。髪を染め、身分を隠して大学に通 っていた。一年前に図書室で出会ったリエッタに一目惚れしたものの 当時の彼女には婚約者がいたため叶わぬ恋と諦めていた。酔った彼女 から婚約破棄に纏わる真相を聞き、あらぬ噂を立てたと思われるシャ ロンの動向を探る。 シャロン=リエッタの異母妹で、姉の留学中に彼女の婚約者を寝取った。 学が無い事がコンプレックスで、頭の良いリエッタを妬んでいる。 ウィル=リエッタの元婚約者。彼女の留学中にシャロンに言い寄られ関係を持 ち、婿入りと言う形でリーシャン家を継ぐことになった。リーシャン伯爵夫妻 =リエッタとシャロンの両親。先妻の子であるリエッタを蚊帳の外に していただけでなく、ウィルの家から多額の援助を受けていること から、彼女ではなく元々ウィルを当主に据える腹積もりであった。 シャロン可愛さと両家の名誉のため、リエッタに婚約破棄に至った 経緯を口止めした。 佐倉紫さんのお話が続きますが、読み放題で借りてる上限の兼ね合いでどんどん読んでいかないと新作が読めない(^_^;)でもやっぱり面白いです。結構なざまぁ展開なんですけど、もう清々しいほどだった。その分、ヒロインが結構なダメージ食らってて読んでて気の毒になる場面もあったものの、ヒーローの登場により段々と自体は好転していきます。ヒロイン・リエッタが留学先から急に実家に呼び戻されて何事かと思いきや、父から聞かされたのは異母妹のシャロンが自分の婚約者のウィルと結婚するので、伯爵家も彼が継ぐからお前は新しく相手を探せ。と言う、何とも信じられない話。どうやら、シャロンとウィルは自分が留学してる間に深い関係になり、しかも現在妹は妊娠中だそうだ。気が弱く、自分の意志も無さそうなウィルが浮気とはにわかに信じられなかったが、彼らが言うには飽く迄悪いのはリエッタであり、こんなことになっても致し方ないと両親迄同意する始末。確かにリエッタは勉強に明け暮れ、エルノルンにまで留学してウィルを全く構わなかった。責められればまぁそこは自分も悪い。だが、婚約者を差し置いてその妹と関係を持ち妊娠させるウィルに非が無いのかと言えば答えはノーだ。どちらにせよ、子供まで出来たのでは二人は結婚させるしかない。そこはまだ納得が行くけれど、跡継ぎ迄譲れとはあんまりだ。渋々承諾したリエッタに待っていたのは、果ての無い結婚相手探しと、婚約破棄に纏わる口さがない噂だった。やはり妹に婚約者を取られたとなると、ゴシップ好きの貴族たちからすれば格好のネタだ。とは言え、真実については両家の不名誉にも繋がると固く口留めされていたため、真相を聞かれても話すわけにもいかず、結局、リエッタの至らなさによるものと決定づけられて語られていた。ここまで来るとまともな縁談は望めそうもない。そこで大学に戻りほとぼりが冷めるのを待つことにしたが、なぜかエルノルンにまで自分の悪評が広まっており、尾ひれが付いて妹と婚約者を殴って訴えられた女呼ばわり。大学にも居場所の無くなったリエッタは町の食堂でヤケ酒していた所、隣に座った青年に尋ねられるまま酔った勢いで、口外してはいけない婚約破棄の真相を話してしまった。青年はサリエルと名乗り、この国の王太子だと言う。だが、この国の王族は銀髪で有名な家系で、サリエルの髪色はどう見ても黒髪。多分、冗談だろうと聞き流したが、彼はリエッタを慰め、その言い分を肯定してくれた。しかも求婚までされて驚いたけれど、酔っぱらっていたせいか、ついOKしてしまうリエッタ。サリエルが言うには、彼女と同じ大学に通っており、一年前から想いを寄せていたらしい。翌朝、彼は伯爵令嬢とは言え、ザルフツ内ならともかくエルノルンにまで高々婚約破棄の悪評が出回るのはおかしいと、彼女に心当たりはないか尋ねた。実はリエッタも不審には思っていた。口止めされているから彼女は何も話せない、それを見越して触れ回ったのなら、事のあらましを知る当事者であり、常々リエッタを妬んでいたシャロンであろう。折しも、ウィルと二人、このエルノルンへ醜聞のほとぼりが冷めるまで新婚旅行の名目で滞在しているはずだ。サリエルもこの異母妹がクロだろうと、彼女に落とし前を付けるべく、先ず裏を取ろうと二人は婚約者のフリをして舞踏会に顔を出して調査を始めるとし、それ以外の時はリエッタを自分の乳母の屋敷に匿うことに。暫くは尻尾が掴めなくて、リエッタも少し嫌がらせを受けたりするんですが、終盤はサリエルによってシャロンの悪事が衆人環視の元さらけ出され、リエッタの悪評も払拭されます。この辺りのざまぁっぷりが見事でした。読んでてモヤモヤ感がスッキリ晴れましたよ。シャロンは相応の報いを受け、上手いこと乗せられてたウィルも後に処罰が下されることに。フカシじゃなくて本当に王太子だったのね、と驚いたものの、改めてプロポーズされたリエッタはそれを承諾してお終い。この妹も相当な性悪でしたが、婚約者寝取るくらいでやめときゃ良かったのに、他所の国の大学や社交界にまで姉の悪評を捏造して広めるとか。でもまぁ、悪事なんて早々上手く行くはずもなく、まさかの姉の婚約者(この時は偽装だった)が王太子とは思わず、余計な怒りを買って処罰される羽目に。憎い姉が王太子妃とか相当悔しいだろうなぁ。妊娠も結局嘘だったこともあり、ウィルの両親から詐欺罪で訴えられそう。リエッタが才女なだけに若干鼻持ちならない子なんですけど、性格自体は悪くないのと努力家な所がサリエルの目に留まったわけです。未来の王妃にするなら、才媛が良いという言い分は凄くわかる。評価:★★★★☆
2022.06.01
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2021年6月刊くるみ舎・こはく文庫著者:ちろりんさん宗教国家であるクトゥルエイフ国の第三王女・ミュリエルと隣国・アインガイム国のハルトヴィヒ国王の婚姻が決まった。先王から王位を簒奪(さんだつ)した過去を持ち、「死神をも斬り捨てる不死身の男」と噂されるほどに豪胆なハルトヴィヒだったが、馬車から降り立ったミュリエルを見て言葉を失った。ミュリエルは、喪服のような黒いドレスに黒い手袋という出で立ちで嫁いできたのだ。呆気にとられるハルトヴィヒと従者に向け、ミュリエルは穏やかに微笑み言う。「本国では『呪われた姫』と言われておりました」 王家の者にはあり得ない黒髪・黒い瞳を持って生まれたミュリエルは生まれながらに呪われているとされ、日がな一日神へ祈りを捧げながら慎ましやかに生きてきたのだった。夫婦として過ごすことでハルトヴィヒにも災いが及ぶことを危惧するミュリエルは、形だけの妻としてハルトヴィヒに接しようとするが、ミュリエルの呪いを意に介さないハルトヴィヒは、ミュリエルの求めを拒否。それどころか、本当の夫婦としてミュリエルに触れることで「呪いは存在しない」と証明しようと提案してきて……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 ミュリエル=ヒロイン。クトゥルエイフ国第三王女。 その国の王族ではありえない黒髪黒い瞳で産まれたため「呪われた 王女」と呼ばれ疎まれていたが、厄介払いとしてアインガム国王ハ ルトヴィヒに嫁がされた。自己否定の塊であり、飽く迄お飾りの王 妃として扱って欲しいとハルトヴィヒに頼んだ。ハルトヴィヒ=ヒーロー。アインガムの国王。 元は平民であり剣の腕前だけで将軍にまで登り詰めたが、後に暴君 であった国王を討ち新国王となった。だが未だ簒奪者としての悪評 が多く、それを払拭するためにブランドンの提案によりハルトヴィ ヒを支持するクトゥルエイフ国の王家から妃としてミュリエルを迎 える。 ブランドン=アインガム国の宰相でハルトヴィヒの腹心。 前王を討ち、処刑を待っていた彼を説得し新王にした。 エセル=ミュリエル付きの侍女。クトゥルエイフ国の国教・マーナ=レイ教 の敬虔な信者で、主人であるミュリエルにもその戒律を課していた 。ミュリエルが呪われた存在などではないことを知る数少ない人物 であり、一連の厳しい言動も彼女の為であった。今回も不遇ヒロインものです。王族として有り得ない色味で産まれたヒロインが呪われた存在として忌み嫌われて育ち、野蛮な簒奪王とお似合いだろうとばかりに厄介払いで隣国に嫁がされます。でも肝心のヒーローの方は呪いなんて信じちゃいない豪快な人物で、それを証明してやるとヒロインをお飾りなどではなく王妃として扱い、愛される喜びも教えて行くというお話。元々頭の良いミュリエルは自国では成し得なかった勉強に励み貪欲に知識を吸収していくのですが、付き添ってきた侍女はそれは良くない事だと彼女を𠮟ります。ハルトヴィヒは自分のしたい様にしろと言ってくれている。でも、幼いころから植え付けられた欲望を持つのは行けない事、自分は呪われた身であると言う考えがどうしても拭い去れないミュリエル。そんな中、ハルトヴィヒの暗殺を目論む者たちがいると耳にして・・・。自分が傍に居るせいで彼に危険が、と思い悩んだミュリエルは離宮に籠ってしまうんですが、この時には自覚なしに彼を死ぬほど愛していたこともあって、会えない寂しさから体調を崩すと言う何とも可愛い有様に。そこをハルトヴィヒが迎えに来て彼女が不安をぶちまけたことから、一連の呪いは単に周囲の人間によりミュリエルがそうと思い込まされていただけだと気付かされることに。そして、後日、彼女は侍女のエセルにより自分の容姿の謎について知らされるのでした。宗教国家であることから王族も不義不貞は許されていないにも拘らず、ある時王妃は浮気をしてしまい、その末産まれたのがミュリエルでした。王妃は言い訳を思いつけず、咄嗟に産まれたばかりの娘を呪われていると言い募り、彼女に味方した教皇もそれを肯定。かくしてミュリエルは呪われた王女に仕立て上げられたのでした。蓋を開けてみれば、王妃による火遊びが原因であり、その後十八年も疎まれて王家に起きた不幸は全て自分のせいにされていたミュリエルにしてみれば腹立だしいことこの上ない。エセルはせめてマーナ=レイ教の教えで彼女を救えれば、と彼女に厳しく接していたそうだけど、そんなに不憫に思ってたんならミュリエルが思ってたようにさっさと真相を話してあげてた方が、心は軽くなってたと思うよ。エセルはクトゥルエイフ国へ帰されることになり、ミュリエルは両親への近況報告で自身が真実を知っていることを匂わせ細やかながら結構な仕返しをすると言う逞しさを身に着けていました。最後はハルトヴィヒと仲睦まじく暮らしてる様子で了。あれ、暗殺事件の顛末は?とツッコミ入れたいところもありましたが、きっと早々に片が付いたのでしょう。ヒロインの容姿についてはヒーローも多分そうじゃないかみたいな事を言ってたのがビンゴだったというオチ。まあそうだろうねぇと。正直、何の罪もない娘をそんな扱いするから、不幸な事件が続いたんじゃないの?評価:★★★★☆ヒロインが気の毒過ぎてなんだか悔し泣きしかけましたが、良い旦那さんの元に嫁げてよかった。ちゃんと自らの不遇の原因に怒れる子だったのは好印象。
2022.05.20
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2021年7月刊くるみ舎・こはく文庫著者:鞠坂小鞠さん「婚約者を死に至らしめる呪われた令嬢」ーールクール国ヒンデミット公爵家の長女グレーテは、婚約者が次々と不慮の死を遂げたことでそう噂され、周囲の貴族だけでなく両親と妹たちからも敬遠されていた。そんな折、公爵家に国王から縁談の打診が来る。相手は隣国アルテアの指導者の息子だという。王を喪って間もない小国であるアルテアは、ルクール国民から見下されており、妹たちは断固として縁談を拒否。結局、厄介払いも同然の形でグレーテが嫁ぐこととなる。侍女のレネだけを連れてアルテアへ向かうグレーテだったが、道中で馬車が事故に遭ってしまう。あわやというところでアルテアの騎士団に救出され、手当を施されてベッドで目覚めたグレーテは、一人の騎士が自分を膝に抱きかかえ、「もう大丈夫ですよ」と優しく囁いてくれたことを思い出す。そこへ件の騎士が見舞いに訪れ、侍女のレネや御者、馬も大事には至らなかったと教えてくれた。安堵したグレーテが名を尋ねると、彼は「エリク=ヴァレンタ」と名乗る。そう、彼こそがグレーテの婚約者だったのだ。その事実を知ったグレーテは、咄嗟に婚約の解消を申し出てしまい……。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用登場人物 グレーテ=ヒロイン。ヒンデミット公爵家長女。 三人もの婚約者が全て急逝したことから呪われた令嬢と噂され行き遅 れていたが、この度隣国の宰相の長男・エリクとの縁談が決まった。 しかし、道中国境付近で事故に遭い、呪いのせいかもと不安に駆られ 顔合わせの際、彼の身を案じ婚約解消を申し出た。 家族にも敬遠され萎縮していたが、本来は聡明で記憶力に優れ、エリ クの為になればと薬学など専門分野の勉強を始める エリク=ヒーロー。グレーテの政略結婚の相手。 入国早々に事故に遭い、自らの怪我を顧みず侍女の手当を頼むグレー テを気に入るが、顔合わせの際に婚約解消を申し入れられショックを 受ける。アルテアでもグレーテの不名誉な噂が広まっており、その誤 解を解くべく奔走していた。後に正式に彼女と結婚する。ルクール国王=早逝した第二王子の婚約者であったグレーテの噂に胸を痛め、親交 のあったアルテアの宰相・ヴァレンタに縁談の打診をした。 ヴァレンタ=アルテア国宰相でエリクの父。国王が悪政の末、乱心し自決後、後 継者がいない事もあり、以降は最高責任者として采配を振るってい る。ルクール王の打診により、グレーテを息子の妻として迎える。 レネ=グレーテ付きの侍女で、彼女の輿入れにただ一人付き添って来た。 同僚に虐められていた際、グレーテに助けられ以降彼女を心から慕 い、その聡明さを自慢に思っている。 ダリミル=エリクの幼馴染で護衛騎士。 過去に父親がヴァレンタ毒殺を図ったことから上層部に良い印象を 持たれていない。エリクと同じく事故現場に居合わせ、グレーテを 見直した。久々に電子書籍です。約150ページほどの中短編ですが、このくらいのボリュームの作品も合間に挟むのは良いかもしれない。騒動が起きても片が付くのが早いこともあってモヤモヤ度も少ないと言うか。あらすじだけ見ると不遇ヒロインっぽいですが、本文を読んでみるとそこまでではなかった印象。高位貴族の娘なだけに、生まれながらに第二王子の許嫁に決まっていたものの、その相手は病弱であり、十代で亡くなってしまった。公爵はグレーテが長女の為にすぐさま次の相手を見繕ったものの、高名ではあるが今度は戦地に行きっぱなしの騎士。戦況が悪化し、その騎士も戦死し、三度目の正直でヒロインに当てがったのは老齢な伯爵。でも二度あることは三度あるということで伯爵は病気で亡くなります。その頃にはグレーテも二十二歳と言う、貴族の娘にしては行き遅れもいい所。王子が亡くなってから、公爵はヤケになってるのかと思う位相手のチョイスが適当過ぎて、グレーテが気の毒過ぎる。しかも不幸なことにこのルクール国は迷信が信じられてる国だったせいで、彼女は呪われた令嬢と言う不名誉な名で呼ばれるように。そんなグレーテを不憫に思ったのはルクールの国王。本来ならば娘になるはずだったこともあり、思案の末、友好の名目で隣国アルテアに政略結婚の打診をし、白羽の矢が立ったのが宰相の息子であるエリクでした。だが、アルテア国は国王の悪政とその突然の死により荒れていて、グレーテの輿入れは呪われた令嬢にはお似合いの縁談と思われていて・・・。口さがない悪評と、家族からさえも疎外されていたヒロインが、隣国で婚約者に愛され本来の自分を取り戻すと言うストーリーです。途中、エリクが予想外の事故により死にかけるんですけど、薬学を勉強していたグレーテのおかげで一命をとりとめ、この出来事が彼女の良くない噂を払しょくする、成程こうきたか、な展開になっています。評価:★★★★公爵一家と言うか公爵の婚約者チョイスが諸悪の根源だったので、何かしら痛い目には合って欲しかったけれど、ほぼ縁切り状態だし、ヒロインは幸せになったのでそれで良し。
2022.05.19
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2021年12月刊くるみ舎・こはく文庫著者:朝陽ゆりねさんマリーナお嬢さまの縁談相手はアルベルト・サーフェス王太子殿下? ……って、ええーーーーっ! “名誉”であることは重々承知。が、王城とはすなわち、魑魅魍魎が住む伏魔殿。お嬢さまご本人も「行きたくない」どころか「私、実は好きな人がいるの」とまで言いだす始末。「お願い、助けて!」と懇願された世話係であり幼なじみのシリス。マリーナになりすまして、王太子妃候補から正しく落選してくることを思いつく。なりすましなど王家を欺く重罪。周囲の心配をよそに王城へと乗り込んだシリスは、ある朝、“誉れ高き王子”の意外な一面を覗き見てしまうことに……。シリスもシリスだが、王太子は王太子で相当なクセモノ。牽制しているつもりのシリスだったが、とうとう王太子に正体がバレてしまいーー。 ↑楽天ブックスより、あらすじ引用kindle unlimited会員向けの読み放題にて読了。身代わり花嫁ならぬ、ヒロイン自ら申し出て身代わりお妃候補になるお話。ここからネタバレと感想。その日、フロト伯爵家ではある問題に頭を抱えていた。今年15歳の末娘マリーナが、この国の王太子アルベルトのお妃候補に選ばれたからである。どうしてこんな国境近くの伯爵家の娘などが選ばれたのか首を捻るばかりだが、名誉な申し出であることは間違いなく、だからこそ辞退するのは憚られるのだ。マリーナは引っ込み思案で臆病な性格で、とてもではないが王妃など無理。現段階ではまだ候補だし、他に公爵と侯爵のご令嬢がいるとのことで、家格的にも先ず選ばれることはないだろう。だが、王宮にて妃選出のための審査があるらしく、その間マリーナは下手をすると候補の二人に虐められる可能性が高い。ライバルは少ないほど良いのだから。それに、まかり間違って妃に選ばれた日にはマリーナは心労で体を壊してしまうかもしれない。王宮は魑魅魍魎の如き者たちが集う伏魔殿だ。そんな場所に可愛い末娘を向かわせるなど・・・。伯爵は無礼を承知で、辞退する旨連絡を入れるべく上手い理由を考えているようだが、正直それはこの家のためにも良くない選択である。家令のパリスは思いとどまるよう必死で説得している。当のマリーナは当然の如く行きたくないと突っぱねた。アルベルトは見目麗しく文武両道で優秀との噂だが、どうやらマリーナには想い人がいるらしい。更に王宮に行くことすら怖がっているとなれば、不敬と思われてでも辞退する方向で考えようとなった時、パリスの娘のシリスが名乗りを挙げた。自分がマリーナを装って審査を受けてくると。フロト伯爵家は堅実モットーで代々やってきているものの、実際その領地は肥沃な土地と岩塩が豊富に採れることでかなり裕福である。それはもう今回同じく妃候補に挙がっている公爵家を凌ぐ程の。アルベルトは切れ者と聞いている。もしやフロト伯爵家の領地を利用すべく、マリーナを妃候補に入れたのかもしれない。考えすぎかもしれないが、そうなると辞退するのは得策ではない。これ幸いと命令を背いたとして領地没収の憂き目にでもあったら事だ。そこで、王太子の為人を確認しつつ、マリーナの名誉を損なわずに上手く落選するよう立ち回るつもりだと述べるシリス。悪くない作戦ではあるが、バレたらそれこそ関係者全員罪に問われるだろう。シリスは頭がいいし立ち回りも上手い。何より末娘を王宮に行かせたくないと言う親心が買ったのか伯爵はシリスの提案に乗ったのだった。幸い、マリーナはまだデビュタントを迎えていないため彼女の顔を知る者は王宮にはほとんどおらず、なりすましは何とか上手く行ったようだ。とは言え、シリスは19歳になるので15歳と偽るのは少々無理があるかもと心配ではあったが、国王一家に拝謁した時にも特に怪しまれずに済んだらしい。初対面のアルベルトは成程噂通りの美青年だった。人当たりの良い話し方に笑顔、でも目が笑っていない。もしかしてこの王太子は巷で言われているような人物ではないのかもしれない。その日、王太子妃候補のお披露目を兼ねた晩餐会が開かれた。そこで二人の妃候補とも顔合わせを済ませたのだが、ドーソン公爵令嬢バルバラとブケイター侯爵令嬢オデットは完全にマリーナ(シリス)は問題外と判断したようだ。周りの大方の予想もバルバラかオデット、選ばれるのはどちらかだろうと言われている。だが、拝謁の際の国王の話によれば、わざわざフロト伯爵家の娘を候補に入れるようアルベルトが希望したと聞き、それがどうにも引っ掛かる。審査は一か月以上かかると知り、やはりマリーナを無理に来させなくて正解だった。毎日王妃の仕事を傍に付いて学び、ランチやティータイムではバルバラとオデットからは嫌味三昧。図太いと自負していたシリスでさえも音を上げてしまいそうである。その日、自由時間にバラ園でこっそり昼寝していたシリスは聞き覚えのある声を耳にして目を覚ました。アルベルトがお付きの近衛ランベールに会議に出たくないと駄々をこねており思わず耳を疑ったが、どうやらこれが彼の本性のようだ。おまけに、ドーソン公爵を毛嫌いしているらしく、当然の如くその娘のバルバラも妃にする気は更々ない様子。外面はすこぶる良くてもこの王太子、結構捻くれた性格のようでランベールも手を焼いているみたいだ。これは、王太子妃になるであろう女性は相当苦労しそうだ。審査も20日を過ぎ、いよいよアルベルトとの相性を見るためか、順番でそれぞれ彼と過ごす時間が設けられることになった。要は候補たちのアピールタイムと言うわけだが、シリスは当然落選前提でいるため、例えアルベルトの前でも自分をよく見せようとはしなかった。食事やティータイムに出された菓子などは残さず平らげ、最近は少し太ったほどだ。今日も王子とのティータイムで遠慮せずケーキを3つほど食べたのだけど、その際に何故か領地の経営状況や、国境近くであるため隣国に怪しい動きは見られないか?等尋ねられ少々面食らってしまった。まあ隠すほどのことでもないため聞かれた質問には答えたものの、どうも彼の興味を引いてしまったようだ。それから一週間ほど経ち、夜会に参加した時などアルベルトに手の甲にキスされたかと思いきや、以降何かと彼に誘われるようになると、王太子はマリーナ嬢がお気に入りとまことしやかに囁かれるように。おかげでバルバラとオデットの怒りを買ったようで、毎日針の筵である。だが、そんなある日、王宮の一角にある小屋に連れ込まれたシリスは、アルベルトにマリーナを装ってい居ることがバレて言及されていた。観念して事情を話したが、当然これは王族への詐欺罪。伯爵家は取り潰しになって関係者全員打ち首と聞き、シリスは自分の独断だと許しを請うた。そこでアルベルトは罪を償う為に自分の妃になれと告げたのだった。彼の話によればマリーナ・フロトとしてではなく、シリス・リリトアとして娶るつもりなのだと言う。元々、フロト伯爵は裕福でありながら堅実で上手く領地を生かした方法で富を得ている。その手腕に興味を持って結婚の打診をしたのがマリーナが候補になったあらましだった。もしマリーナを妃に据えても後に王妃の父として面倒にな事になりそうでない所も申し分ない。だが、調査の結果、マリーナ嬢とここにいるマリーナと名乗る少女は随分と為人が違い、おそらく身代わりだろうとすぐに勘付いた。でも、聡明でアルベルトに媚びを売らないばかりか気に入られまいとしているところが気に入り妃にするならこの子だと思ったらしい。19歳のくせに15歳に成りすます度胸と図太さも素晴らしく、両親である国王夫妻にも事情を話し了承を取ったそうだ。気付かぬうちに外堀を埋められシリスは困惑したが、断れば全員打ち首と言われれば承諾するしかないではないか。バルバラ達からの嫌がらせは段々エスカレートしていった。アルベルトにどうにかしてくれと訴えると、もう少ししたら正式に発表するからそれまで我慢しろと言われれば黙るしかない。しかも、その夜アルベルトに夜這いされ、二人は一線を越えた。翌日、アルベルトは候補者たちの前でシリスの正体を明かし、改めてシリス・リリトアを妃に迎えると宣言した。案の定、ドーソン公爵達は異議を唱えたが、アルベルトにシリスにしか勃たないんだと打ち明けられ、どうしても娘を王太子妃にしたいなら一生処女のままで世継ぎも産めないぞと下品な物言いには皆驚いていた。平民出のシリスを側妃にしてバルバラを王太子妃にと訴えていた公爵は、アルベルトの調査の結果、娘には秘密裏に交際している恋人がいると判明し、候補を辞退する羽目になった。オデットも指一本触れられない名ばかりの妃などごめん蒙る、と辞退し結局アルベルトが望んだシリスしか残らず、王太子妃は彼女に決まったのだ。元々この国の王家は側妃の慣習は無く、国王は王妃一人と仲良くやって来た。性格に少々難があるアルベルトがこれほど気に入ったのならと、国王夫妻は結婚を了承したわけだが、王妃は息子の性格を知り尽くしてるだけにシリスを気の毒に思う。とは言え、やはり未来の王妃が平民出というのは少々体裁が悪い。そこで、シリスを王妃の生家であるカルバート侯爵家の養女とし、侯爵家から嫁ぐことになると言う。あの後、オデットが一連の嫌がらせを詫びに来たのだが、どうやらバルバラとは家同士仲が悪く、お互い敬遠し合ってたらしい。結託していた様に見せていただけで毎日腹の探り合いをして気疲れも相当だったようだ。バルバラは父の命令で妃候補になり絶対に負けるなとプレッシャーを掛けられていた。その上恋人の存在を隠していたのが苦痛だったようで、漸く堂々と会えると喜んでいるとか。今回の王太子の結婚が身分違いの恋で悩む者たちの良い呼び水になればいいとオデットは言う。暫くは敗戦者としてシリスとは距離を置くが、相談ならいつでもしてくれと告げて帰って行った彼女は単に強かなのかもしれないが、根は悪い人間ではないのだろう。策士なアルベルトには、好き勝手に色々決められてしまったけれど、一線を越えて彼への気持ちに気付かされたシリスは、この先の人生に思いを馳せるのだった。頭のいいヒロインがそれより上手の捻くれ王太子に娶られると言う内容でしたが、どうもこの前に近衛のランベールのお話があったようです。王太子はそっちのサブキャラだったらしい。所謂スピンオフの方を先に読んでしまったようだけど、特に前作を読んでないとダメってほどではなかったです。そういうロマンスがあったと言う匂わせセリフがあるくらいなので。正直、ヒロインは自分が思うほど切れ者ではないので、お嬢様に装っているのがバレた場合の対処法とかノープランだったり結構計画自体は穴だらけだったような。これ王太子がヒロインに惚れたから罪には問われなかっただけで、そうじゃなかったら大変なことになってたのでは(^_^;)評価:★★★☆可もなく不可もないって感じのお話です。
2022.03.27
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