inti-solのブログ

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2022.10.21
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カテゴリ: 戦争と平和
ロシアのミサイル在庫は危機的な低水準に ウクライナ国防情報総局
ウクライナ国防省の情報総局は、ロシアの複数種のミサイルの在庫が危機的な少なさになっているとみている。
ウクライナ国防省のブダノフ情報総局長は「ロシアの防衛産業は新しいミサイルを十分に製造できず、2月24日に戦争に突入した際に有していたミサイルはすでに底をつきつつある」と声明で述べた。
「多くの品目の在庫はすでに危機的なレベル、つまり30%を下回っている」とブダノフ氏は指摘した。例えば巡航ミサイル「イスカンダル」の在庫は通常の13%に落ち込んでいるという。
ロシアのミサイルの在庫は推測だ。ウクライナのゼレンスキー大統領は5月、ロシアは2154発のミサイルを発射し、おそらく精密誘導ミサイルの60%を使い切ったと述べた。しかしこれは希望的観測のようだ。
米国防総省は同月、ロシア保有の兵器のうち「巡航ミサイル、特に空中発射のものが最も少なくなっている」としながらも、ロシアには戦前の在庫の50%超が残っているとの見方を示した。
ブダノフ氏は「ミサイル不足でロシアは何らかの選択肢を探さざるを得なくなった。そしてイラン製の無人機を使い始めるに至った」と述べた。
さらに、ロシアがイランの無人機を「徐々に使い果たしており」、注文し続けていると述べ、イランの製造は「即座に行われるものではない」と語った。(以下略)

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前回の記事で、ロシアに何十年も総力戦の経験がなかった、という趣旨のことを書いたところですが、そもそも現代の戦いで総力戦というものが可能なのか、という面で、示唆に富んだ話です。

総力戦の定義は 百科事典 Wikipedia に譲るとして、兵站や生産の面に限定すると、総力戦とは果てしない消耗戦であり、大量生産を行いながらの戦争であることが基本的な定義となるでしょう。戦前からの兵器や物資のストックだけで戦っている間は、総力戦とは言えません。

総力戦であった第二次大戦では、各国とも戦前に持っていた兵器よりも、戦時中に生産した兵器の方がはるかに多いのです。例えば、ゼロ戦(零式艦戦)は日本海軍の開戦時の主力戦闘機でしたが、総数1万機以上が生産されましたうち開戦前に完成していたのは500機あまりで、大半は戦時中に完成しています。
また、パイロットの養成も同じで、開戦前の日本陸海軍の航空機搭乗員の総数は1万人に達しませんが、戦時中の搭乗員の戦死者は3万4千人にもなります。つまり、戦前の搭乗員の人数の3倍以上が戦死した=それ以上の搭乗員が戦時中に養成された、ということになります。

ところが、現在では新兵器の開発にははるかに長い期間と巨額の費用を要するようになっています。ゼロ戦は1937年に開発が開始されて1940年に制式採用されましたが、1943年には旧式機となっていました。戦争後期の最優秀戦闘機であった米国のP51は、わずか9ヶ月で開発されましたが、ジェット戦闘機が実用化されたことによって数年で旧式機となりました。
しかし現在では、米国製の最新鋭戦闘機であるF35は、原型機の初飛行は2000年ですから22年も前です。ゼロ戦にしてもP51にしても、初飛行の22年後には超音速ジェット戦闘機の時代になっていました。価格的にも、F35は1機170億円ほどもします。物価の差を考慮しても、第二次大戦当時の軍用機と比べて、きわめて高価なものとなっています。
機械としての複雑さ、特に第二次大戦当時は存在しなかったコンピューターが操縦や火気管制をつかさどるようになり、機体よりも制御するコンピュータのソフト開発に膨大な時間を要するようになっています。そして、世界のどの国でも、自国だけで部品のすべてを生産することはできなくなっています。ある国がいくら国家の総力をつぎ込んで新兵器を開発しようとしても、部品を輸出する国が国家の総力を挙げて輸出してくれるわけではありません。

パイロットの養成も同様です。第二次大戦当時の単発レシプロ機と現在のジェット機では操縦の難易度が違い、従って養成に要する飛行時間もまったく違います。
戦争末期の予科練(海軍飛行予科練習生)は訓練期間半年で実用機過程へ、実用機過程3か月で(つまり合計9か月で)実戦配備されたようです。もちろん、それでは飛行技量は最低限度に過ぎず、夜間飛行もできない、航法もあやふやで先導機についていくことしかできない、「離着陸がやっと」の状態だったわけですが、それでもともかく何とか実用機で単独飛行はできた(させられた)わけです。
しかし、現代においてはそのようなパイロットが戦場に出ることなど有り得ません。
結局、戦争が始まってからパイロットの養成を始めても、とうてい間に合わないのです。

引用記事では、ロシア軍がこの侵略戦争で大量のミサイルを使ってしまい、その補充が容易にはできない状態に触れています。しかし、この状況は他国でも全く同じです。軍用機の開発に第二次大戦頃よりはるかに時間がかかることに触れましたが、それは製造に要する期間でも同じことですし、ミサイルでも同じことです。半導体など電子機器の取引制限があろうがなかろうが、現代のミサイルは高価であり、そう易々と増産は出来ないものです。
ミサイルとしてはもっとも軽量小型の部類である、携帯式対空ミサイルのスティンガーミサイル(米国製)ですら、その製造には 約1年半から2年かかる とされています。当然、それより大型の巡航ミサイルや弾道弾の製造には、もっと時間がかかります。戦車や戦闘機ならなおさらです。世界的な半導体不足が、その状況に更に拍車をかけているはずです。スティンガーなら戦争には間に合うかも知れませんが(1年半から2年も戦争が続いてほしくはありませんけれど)、それ以上の兵器は、増産を始めてそれが戦場に届く頃には戦争が終わっています。

そういう意味で、現代において、別にロシアに限らず、大量の兵器の開発、生産を伴う総力戦というものは、もはや成り立たなくなっていると思われます。ただし、それは生産、戦争経済という側面での話です。その面で総力戦が成り立たなくなっている分だけ、むしろしゃかりきになって国論の統一、社会の統制、そのための少数意見の圧迫という側面に力を入れている傾向が、現状のロシアには見られます。これもまた、ロシアに限ったことではないでしょう。





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最終更新日  2022.10.21 19:00:08
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