inti-solのブログ

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2024.06.02
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テーマ: ニュース(96532)
「格差是正政権」継続か 女性2候補の争い 2日にメキシコ大統領選
メキシコ大統領選(任期6年)は6月2日、投開票が行われる。
実質的な争いは有力女性2候補に絞られ、現政権が着手した格差是正など改革路線の継続を訴える与党・左派政党「国家再生運動(MORENA)」のクラウディア・シェインバウム前メキシコ市長が優勢。野党連合のソチル・ガルベス上院議員が追い上げている。どちらが勝利しても初の女性大統領が誕生する。
地元紙ウニベルサルによれば、支持率はシェインバウム氏が54%、ガルベス氏が34%。中道系「市民運動(MC)」のホルヘ・アルバレス・マイネス氏も立候補している。再選は禁止されており、ロペスオブラドール大統領は出馬できない。
シェインバウム氏は、最低賃金の引き上げなどを通じて格差の是正に取り組む現政権の路線を継承すると主張。若者向け住宅の建設や年金拡充などを公約に盛り込んだ。
有権者の関心が高い治安問題に関しても、メキシコ市長在任中に殺人といった重大な犯罪が約6割減ったとして「治安面の実績を示すことができるのは私だけだ」と訴えた。現政権が創設した国家警備隊の強化を主張した。
これに対し、ガルベス氏は全国的な犯罪の発生率が高止まりしているとして、現政権の治安対策が「失敗した」と強調。最高警備を備えた刑務所の設置などを提案している。
メキシコでは、他の中南米諸国から違法に入国し、米国との国境に向かう人々が多い。移民問題に対処する手段として、シェインバウム、ガルベス両氏とも米国との連携を訴えている。

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本日2日、というか日本時間では実質明日3日ですが、メキシコで大統領選が行われます。
引用記事では与党が優勢、野党連合が追い上げ、と表記されていますが、他の記事では与党「圧勝」と書かれているものもあり、実際のところ支持率54%対34%では、「圧勝」となるのは確実と思われます。
いずれにしても、支持率1位と2位の有力候補いずれもが女性で、3人目の候補者は差引する12%の支持率しかなく、当選可能性が見込めないため、メキシコ史上初の女性大統領誕生は確実視されています。

メキシコは、1917年メキシコ革命以降、大統領絶対再選禁止規定、つまり一度大統領を務めた人は、二度と大統領になることができない憲法の規定があり、現職のAMLO(アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドールという長い名前を、日本のメディアはロペスオブラドールと表記していますが、メキシコではたいていAMLOと表記されます)は立候補できません。

メキシコは1980年代半ばころまで、前述の1917年メキシコ革命によって政権を握った政治家たちが結党した制度的革命党(PRI)が、圧倒的一党支配を行ってきました。
しかし1980年代後半以降、PRIの腐敗が表面化し、その支配力が落ちます。元々PRIは党内に右派から左派まであらゆる潮流を内包していましたが、党内に右派の新自由主義的な勢力が伸長してくると、党内左派が不満を抱いて党を割って出ます。
このときPRIを離党した政治家の一人に、現大統領であるAMLOもいました。彼らは、党外にあった少数左派政党(メキシコ共産党、人民社会党など)と統一して国民民主戦線→のちの民主革命党(PRD)を結成します。PRDは大統領選で、度々PRIを脅かしました。1988年の大統領選では、党から出馬したクアウテモク・カルデナス候補(彼も元はPRI出身、かつ父親はメキシコ史上最左派かつもっとも尊敬される大統領でした)が本当は勝っていたと言われますが、開票中に不可解な停電事故の後、開票結果が一変するというあからさまな選挙不正の結果、勝利を手にすることができませんでした。2006年にはAMLOが出馬しますが、やはり超接戦の末に敗退します。
ところが、この後、PRDは党内対立の果てに分裂します。AMLOは党を割って出て、現在の国家再生運動(MORENA)を結成、2018年の大統領選でついに当選して現在に至ります。

余談になりますが、「国家再生運動」( Mo vimiento Re generación Na cional)という党名は、左派的な雰囲気ではなさそうに感じますが、これは明らかに、略称を先に考えてから作った党名と思われます。スペイン語圏(に限らずですが)では党名は頭文字の略称で呼ばれることがほとんどです。MORENAは、スペイン語で「褐色の」という意味であり、えてして先住民、メスティソのことをそう呼びます。

後継のシェインバウム候補は、Wikipedia記事によると、元々物理学者であり国立自治大(UNAM)の研究者だったようです。彼女はPRIの在籍歴はなく、PRDからAMLOとともにMORENAに移っています。

ガルベス氏は全国的な犯罪の発生率が高止まりしているとして、現政権の治安対策が「失敗した」と強調しているそうですが、この辺りの経緯はなかなか微妙なところです。確かに現政権下で犯罪発生率は減っていませんが、元々メキシコで犯罪発生率が急増したのは、2000年代初頭にPRIが下野し、右派の国民行動党(PAN)が政権を担当していた時期のことです。

端的に言えば、米国の圧力もあって、ビセンテ・フォックス、続くフェリペ・カルデロンという2代のPAN出身大統領(とりわけカルデロン)が、麻薬カルテルに対する「戦争」(麻薬戦争)を勝算もなく始めてしまったことが、治安悪化の決定的原因でした。
ラテンアメリカでは、一般的に軍隊や警察は、権力と強力な武装は持ってはいますが、給料はよくありません。また、「猟官制」が生きている国なので、公務員は政権が変われば総とっかえです(さすがに軍人はその例外ですが)。
PRI一党支配の時代、同じPRI出身の大統領同士であってもそうでした。ましてや、大統領の属す党派が変われば言わずもがなです。だから汚職がはびこる。特に政権末期になると、その先の生活を考えて、みんな蓄財に励みます。
麻薬カルテルが付け入るスキは、いくらでもあるのです。

麻薬戦争が始まると、右派から左派まであらゆる政治家が麻薬カルテルから脅迫を受け、相当の人数が暗殺されました。カルテルに協力する者には飴玉を、協力しないものには凄惨な死を、というわけです。
そのため、軍や警察からは、武器ごと麻薬カルテルに寝返る連中が続出します。例えば、ロス・セタスというメキシコ麻薬カルテルの中でももっとも狂暴な犯罪組織がありますが、これはメキシコ陸軍最精鋭の特殊作戦群の指揮官が、部下数十人を率いて麻薬カルテルに寝返ったものです。

で、ガルベス氏は野党統一候補ですが、出身政党は右派のPANなのです。自党の政策の失敗が治安崩壊を招いた過去とどう向き合うのかが問われます。
治安部隊をいくら増強しても、そこからどんどん麻薬カルテルに寝返ったら何の意味もないことです。ではなぜ寝返るのか、寝返らないためにはどうすべきか、まずはそこからなんじゃないでしょうかね。

追記です。メキシコの ニュースサイト によりますと
、同時に行われた議会選挙(下院)の結果は、MORENA233議席、労働党(PT)46議席、緑エコロジスト党67議席(以上が与党連合)、PRI(元メキシコの支配政党、PAN と共闘)30議席、市民運動(大統領3人目の候補者を立てた党)23議席、PAN(右派野党)64議席となっています。PRD(元はAMLO現大統領やシェインバウム新大統領も属していたが、内部対立の果てにPANと共闘)の名がありませんが、議席を取れなかったということでしょうか。





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最終更新日  2024.06.05 08:30:55
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Re:メキシコ大統領選(06/02)  
Bill McCreary さん
シェインバウムという名前からしてユダヤ人じゃないかなと思ったら、やっぱりそうだったみたいですね。米国でもユダヤ系の大統領というのはいないですから、他のラテンアメリカの実情は知りませんが、南北アメリカでも画期的かもですね。メスティーソの多いメキシコでも、やはり彼女のような白人が身分が高いんでしょうね。Wikipediaによると白人9%だそうですから、白人は白人と結婚するのでしょうね。個人的な経験ですが、かつてニューヨークとサンフランシスコを旅して、異人種間のカップルなどは、驚くほど見かけませんでした。ニューヨークとサンフランシスコでそうなのだからほかはもっとでしょう。南アフリカもそうなのかもですね。現在は違うのかも。

何度も同じことを書きますが、メキシコにはいかないと思いますが、2025年度にアルゼンチンとウルグアイに行くつもりです。たぶんブエノスアイレスとモンテビデオしか行けないと思いますが、白人のラテンアメリカを楽しんできます。その時は超長期連載の旅行記となりますので、ぜひinti-solさんも遊びに来てください。ステーキをごってり食べてきます。 (2024.06.03 22:48:39)

Re[1]:メキシコ大統領選(06/02)  
Bill McCrearyさん

うろ覚えでアルゼンチンに過去ユダヤ系大統領がいなかったかなと思ったのですが、調べた限り見つかりませんでした。記憶違いだったようです。
Wikipedia(日本語版)によれば彼女の父方の祖父は1920年代にリトアニアから、母方の祖父は1940年代初めにホロコーストを逃れてブルガリアからの移民とあります。また父方祖父はPCMメキシコ共産党の党員でもあったようです。
(2024.06.04 07:12:06)

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