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沖縄と米軍、そして戦争とは何なのかを読者の皆さんに問うた作品でした。
2023年05月31日
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リカの狂気がじわじわ来る感覚が怖かったです。
2023年05月31日
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湖池屋のカラムーチョと違って、パンチが少し欠けていますが、食べやすくて癖になる程美味しかったです。
2023年05月30日
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スープと麺との相性がよく、癖になる味です。
2023年05月30日
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清朝末期の香港を舞台にした作品。当時の政治情勢や文化などが取り入れられ、読み応えがありました。全4巻ということなので、続きを読むのが今から楽しみです。
2023年05月28日
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哀ちゃんがかっこ良かったです。
2023年05月27日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」オメガバースパラレルです。作者様・出版社様とは一切関係ありません。オメガバース・二次創作が苦手な方はご注意ください。「土御門先生、まだ帰らないんですか?」「えぇ、少し調べたい事があるので。」「そうですか。戸締りに気を付けて下さいね。」「はい。」同僚の男性教師が職員室から出て行ったのを確めた後、有匡はある事件について調べ始めた。それは三年前、この学校で起きた凄惨な殺人事件の資料だった。被害者はΩの男子生徒で、密かに想いを寄せていた教師Aに呼び出され、頭や顔、首など数十回タガ―ナイフで刺した後、出口へと向かおうとした男子生徒を背後から切りつけ、失血死させた。現場は血の海で、教室のドアは内側から施錠されていた。犯人の教師Aは、“生徒が自分を拒絶したので殺した。”と全面的に犯行を認めた。弁護側は犯人が精神疾患であり、心神喪失を主張した。しかし検察側は、教師A(被告)が犯行時教室のドアを内側から施錠した上で現場を密室状態にしたのは計画的な犯行であり、被告には責任能力があるとして、死刑を求刑した。被害者がしつこく被告に交際を迫られて拒絶していたという検察側の証言と、“あいつを殺してやる。”という被告の肉声のテープが決定的な証拠となり、被告は昨年暮れに死刑判決が下った。学校という聖域内で起きた教師による凄惨な殺人事件はマスコミに大きく取り上げられ、話題となった。有匡は被害者生徒の個人ファイルを見ると、彼はあの自殺した生徒の親族だとわかった。(三年前と、今回の事件、何かが繋がっているように思えてならない。一体、何が・・)有匡がそう思いながらノートパソコンをシャットダウンしようとすると、廊下の方から物音が聞こえた。「誰だ?」懐中電灯を手に廊下を出た有匡は、数人分の足音が向こうから駆けてゆく音に気づいた。その向こうには、事件の現場となり、今は封鎖された教室があった。「ねぇ、本当に出るの?」「出るに決まってんじゃん!」「そこで何をしている?」「きゃぁぁ~!」有匡が教室の中に入ると、そこには数人の女子高生達の姿があった。「今回は見逃しておいてやるから、早くここから失せろ。」「す、すいませんでした!」女子高生達は、有匡に叱責された後一目散に逃げていった。(ったく、しょうがないな。)あの事件の所為で、夜になるとあの教室へ“肝試し”に来る者は絶えない。「先生、どうかしましたか?」「またあの、肝試しの連中ですよ。困ったものです。」「あぁ、あれねぇ。まったく、困ったもんです。」警備員とそんな事を話しながら有匡が教室から出ようとすると、何かが落ちる音がした。(気の所為か・・)その日の夜、有匡は幸せな夢を見た。あの少女―火月に良く似た女性と、仲良く中庭で遊んでいる我が子達を見ていた。―ねぇ、もし来世というものがあるのなら、僕は・・そこで、有匡は目を覚ました。(一体、あの夢は何だったんだ・・)「土御門先生、理事長がお呼びです。」「わかりました、すぐに行きます。」「失礼致します。」「入り給え。土御門先生、あなたとは一度お話ししてみたかった。」そう言った理事長は笑っていたが、目は笑っていなかった。彼がαだと、有匡は一目合った瞬間にわかった。やり手の経営者のような、クールな顔立ちをしているが、本性は残酷な狼そのもの―αの本能を有匡の前では上手く隠しているものの、オーラでわかった。「わたしに、何がご用ですか?」「わが校は、Ω優遇措置校だという事はご存知で?」「えぇ。」そんなシステムは、ただの、“政府に媚を売る為のパフォーマンス”だと有匡は知っていた。「わたしは、いつか子供達が第二性に縛られない生き方をさせてやりたいんですよ。」「はぁ・・」「ですから先生、わたしに力を貸して頂けないでしょうか?」「は?」「同じα同士、これからお互いに親交を深めていきましょう。」「そうですね・・」(一体、何が目的なんだ、この男?)「理事長。」「すいませんが、用事がありますので、これで失礼を。今度、二人きりで食事でもしませんか?」「えぇ、是非。」理事長室から出た有匡は、深い溜息を吐いた。(あぁいう奴は苦手だ。)廊下を歩きながら有匡がそんな事を思っていると、数人の女子生徒達が向こうからやって来た。「先生、お昼まだでしたら、一緒に食べましょう!」「え~、ずるい!」「先生は、好きな人とか居るんですか?」「居ないな。それよりもお前達、一体わたしに何の用だ?」「わたし達は別に、ねぇ?」「先生と仲良くしたいだけですよ~」「あ、先生あのΩの生徒の事を知っています?」「知っているが、あいつがどうした?」「あいつの事、先生がどう思っているのかなぁって、わたし達それを聞きに来ただけなんです。」「何故、そんな事を聞く?」「それは・・」「わたしは、誰とも番わない。」「そうなんですか・・」女子生徒達は有匡の言葉を聞いた途端、落胆したような表情を浮かべながら彼の元から去っていった。「なぁんだ、狙っていたのにがっかり。」「でもあれ、嘘かもよ?」「え、じゃぁ・・」「わたし達にもチャンスはあるわよね!?」「きっとあるわよ!」火月はそんな彼女達の話を聞きながら、教室で一人自分の机に座って弁当を食べていた。彼女は伊達眼鏡だが少し底が厚い眼鏡をかけ、いつも結ばずにいる金色の髪は、ダサいおさげにしていた。Ωだというだけで目をつけられているのに、これ以上彼女達と関わり合いたくなかったので、火月は敢えて地味な格好をする事にした。「ねぇ、明日転校生来るって!」「へぇ、楽しみ~」「漸く始まりますわね、暁人様。」「あぁ。」都内の一等地にあるタワーマンションの最上階にある部屋で、火月達が通う高校の理事長・権名暁人は、愛人の恵とそんな事を言いながら、美しい夜景を見てワインを楽しんでいた。「“あの子”は、どんな活躍をしてくれるのかしら?」「さぁ・・でも、あのいけすかない土御門を学校から追い出してくれるだろうよ。」「まぁ、彼がそんなにお気に召さないのですか?」「あぁ。同族嫌悪、というやつかな?」同じαでありながらも、名家の御曹司である有匡と、愛人の子である自分とは境遇が全く違う。そう、有匡は、自分にはないものを持っている。それが、憎くて堪らないのだ。「暁人様?」「いや、何でもない。」「そうですか。それよりも、大切な話があるのですが・・」「大切な話?」「わたし、妊娠したのかもしれません。」「それは、確かなんか?」「えぇ。」「恵、こんな事を言うのは何なんだが・・君は、どうしたいんだ?」「決して、暁人様のお手を煩わせるような事は、致しませんわ。」「そうか・・」「では、わたくしはこれで失礼致します。」(さて、どうするか・・)恵には、色々と協力して貰っている。彼女とは利害関係で繋がっているだけの存在で、いくらでも切り捨てることが出来る。恵は、敵に回せば厄介な女だ。今まで自分がして来た悪事の証拠は、全て彼女が握っている。そうすると、自分がなすべき事はひとつ。それは―「わかった、今度そっちに帰るわ。」実家の母親とスマホで会話をしなければ、恵はこの後己の身に降りかかる災難から逃れられたのかもしれない。彼女は有名コーヒーチェーン店で好きなフラペチーノを飲みながら歩き、横断歩道で信号待ちをしていると、突然彼女は誰かに押され、バランスを崩した。体勢を立て直そうとした彼女の目の前に、トラックが迫っていた。「理事長、おはようございます。」「おはよう。」「理事長、相沢が出勤途中、交通事故に遭って亡くなりました。」「そうですか・・」恵の死を悲しむ振りをして、暁人は密かに口端を上げて笑った。「へぇ、ここか・・」「麗様、どうぞこちらへ。」「あぁ。」黒塗りのリムジンから降りて来たのは、白銀の髪をなびかせた、何処か妖しい雰囲気を纏う少年だった。「皆さん、今日からこのクラスに転校してきた、九条麗君です。」「九条麗です、よろしくお願い致します。」教壇の前に立ってクラスメイト達に挨拶をした麗は、一人の少女の存在に気づいた。(へぇ、可愛いじゃん。)「ねぇ、九条君って、前は何処かに住んでいたの?」「イギリス。まぁ、長い間向こうで暮らしていたから、まだ日本の暮らしには慣れなくて・・」「え~、じゃぁわたし達が色々と教えてあげる!」「はは、それは嬉しいなぁ。」麗の周りには、すぐさま女子生徒達が群がって来た。「あれ、あの子は?」「あぁ、あのダサい子?」「あの子はΩよ。」「うちのクラスには、αやβが多いけれど、Ωなのはあの子だけ。いい迷惑よねぇ。」「へぇ・・」麗達が自分の事を話しているとは知らず、火月は読書をしていた。その本は、有匡が数日前に貸してくれたものだ。『もし良かったら、感想を聞かせて欲しい。』そう言って自分に優しく微笑んで本を貸してくれた有匡の笑顔を浮かべると、思わず火月は頬を赤らめてしまった。「なに読んでいるの?」「え?」我に返ると、火月の前には麗が立っていた。「この本は、人から借りた物なんです、失礼します。」「へぇ、そうなんだ。」火月はそれ以上麗と話したくなくて、鞄を持って教室から出て行った。「ふぅ・・」漸く図書室で一人になれた火月は、そのまま次の授業が始まるまでそこで本を読んでいた。「雨、か・・」「うわ~、かなり降って来てますね。」「それにしても理事長、今日はお休みですか?」「あぁ、今朝理事長の秘書の方がお亡くなりになられたそうですよ。」「へぇ・・」放課後、雨は朝よりもかなり激しく降っていた。「うわぁ~、最悪。」「あたし、傘持って来てない~」「じゃぁ、みんな俺の車に乗っていく?みんなともっと仲良くしたいし!」「え~、いいの?」「やったぁ!」「高原さんは?」「僕は・・」「あの子は放っておいていいわよ、早く行きましょう!」「う、うん・・」麗はちらりと火月を見た後、取り巻き達と共に教室から出て行った。(はぁ、どうしよう・・)火月は教室の窓から土砂降りの雨を見ながら、このまま帰ってしまおうかと思い始めていた。「何だ、まだ居たのか?」「先生・・」教室のドアが開き、有匡が教室に残っている火月を見た。「傘を持っていなくて・・」「そうか。じゃぁ家まで送ってやろう。」「え、いいんですか?」「いいに決まっているだろう。」「ありがとうございます。」火月は有匡に車で家まで送って貰う事になった。「先生、貸して頂いた本、今度返しますね。」「そんなに急いで読まなくていい。」「はい、すいません・・」「謝るな。」(何だろう、先生と居ると何だか安心する・・)(こいつと居ると、何故か心が落ち着く・・)二人は徐々に、だが気づかぬ内に互いの心の距離を縮めていった。にほんブログ村
2023年05月22日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」オメガバースパラレルです。作者様・出版社様とは一切関係ありません。オメガバース・二次創作が苦手な方はご注意ください。(全く、義父上にはいい加減にして貰いたいものだ。) パーティー会場から出た有匡は、溜息を吐きながら人気のないバルコニーで冷たい風に当たっていた。 αとして生まれた彼の元には、山の様に名家出身のΩからの縁談が持ち込まれた。 土御門家は名門のαとして戦前からこの国に君臨してきた名家だった。それ故、その血統を絶やさぬために唯一直系の血をひいている有匡の元へ縁談が殺到するのは当然の事なのだが、有匡はその縁談を全て断って来た。 それは、有匡の亡き父・有仁が相思相愛だった番の母親と家の者に引き離された後、そのショックで病死してしまったからだった。 αとΩは番となり、αの優秀な遺伝子を継ぐ子孫を産む―それが世の理であると、家の為であると、有匡は幼少の頃からそんな教えを学校から、社会から叩き込まれて育った。 しかし、有仁は番であった妻との契約を解消した後、後妻を迎えなかった。“お父さん、どうして再婚しないの?” ある日、有匡はいつものように病室の外から窓を眺めている父にそんな質問をぶつけてみた。 すると彼は寂しそうに笑いながら、こう答えた。―何故だろうね、もう二度と会えないと想っている人が、わたしの事を待っていると想っているからかな・・ その時、まだ子供だった有匡は、父の言葉の意味がわからなかったが、大人になった今となってはわかる。 父は、番だった母の事を待っていたのだ。亡くなるその日まで、ずっと。 その事を知った時、有匡は家の為だけに利害が一致する名家のΩと番うことを一切拒否した。(わたしは誰とも番わない・・決して父のようにはならない。) そう自分に誓いを立てながら、有匡は高校教師として普通の生活を送っていた。しかし、αである自分を周囲は放っておくはずがなかった。 翌朝、パーティーでの事で早速有匡は義父から小言を食らった。「有匡、結婚はまだ考えていないのか?お前もそろそろいい年だ。身を固めておいた方が・・」「お言葉ですが義父上、わたしは一生誰とも番いません。貴方はどうやら、わたしの父にした事をもう忘れてしまったようですね?」「あ、あれは仕方がなかったのだ!ああしなければ、お前の父親はあのΩに滅ぼされるところだったのだぞ!」 自分に都合のいい言い訳ばかりを並べ立てる義父の姿に、有匡は嫌悪を感じた。「わたしを、父の二の舞にさせるおつもりですか?」「有匡・・」「この際だからはっきりと言っておきます。わたしは家の為の道具ではありません。」 有匡はそう言って椅子から乱暴に立ち上がると、そのままダイニングルームから出て行った。「まったく、有匡には困ったものだ・・」「旦那様、そんなに気を落とさずに・・」そう言って義父を慰めたのは、彼の愛人であるΩだ。彼女は義父にしなだれかかると、嫣然とした笑みを口元に浮かべた。「そういえば、有匡様が働いておられる高校では、Ωの特殊学級があると聞きましたわ。その特殊学級の生徒達の中から、有匡様の番を選べば宜しいのではなくて?」「名案だな。そうしないと、いつまで経ってもあいつは独身のままだろう。」義父はそう言った後、美味そうにワインを飲んだ。 有匡が高校に出勤すると、校長が彼を校長室に呼んだ。「校長先生、わたしにお話とは何でしょうか?」「・・実は、こんな物が先程保護者の皆さんから渡されてね。うちの高校に在籍しているΩの生徒を、専門機関へと隔離して欲しいという嘆願の署名だ。」「何故、そのような事を?バース性の差別は法律で禁じられている筈・・」「ああ、表面上ではな。だが、人種差別や性差別が未だ根絶できないのと同じく、バース性への差別は、わたし達の生活に深い根を下ろしている。」 校長がそう言って溜息を吐いた時、廊下が急に騒がしくなった。 有匡が校長と共に校長室から廊下へと出ると、一人の女性が髪を振り乱しながら一人の生徒に掴みかかっていた。「あの子を返してよ、この人殺し!」「奥様、落ち着いて下さい!」「あんたが唆した所為で、あの子は自殺したのよ~!」女性に掴みかかられた生徒は、無言で俯いているだけだった。「あれは一体、何なのですか?」「あぁ、あの女性は、先月自殺した生徒の母親だ。」「じゃぁ、あの殴られている生徒は?」「Ω(オメガ)だ。彼は自殺した生徒の番だった。だが、彼は自殺した生徒との番契約を一方的に破棄した。」「それは、何故です?」「さぁ・・」 校長はそう言葉を濁すと、校長室へと戻っていった。(彼は、何かを隠している・・) 職員室に戻った有匡は、教職員専用のサイトにアクセスした。生徒名簿にアクセスし、自殺した生徒の名前をクリックしようとしたら、“パスワードを入力して下さい”というメッセージが画面に表示された。いつの間にか、何者かによってアクセス制限がかけられていた。 何処かが、おかしい。「先生、どうかなさったのですか?」「いえ、何でもありません・・」「これから、色々と忙しくなりますねぇ。」「何か、あるんですか?」「あぁ、土御門先生はご存知ないんでしたっけ?来週、国のバース機関の視察があるんです。」「そうですか・・」「うちは、表向きはΩ優遇措置校ですからね。あ、もうわたし授業に行かないと!」 同僚の女性教師は少し喋り過ぎたと思ったのか、そう言うとそのまま有匡と目を合わさずに職員室から出て行ってしまった。 この学校には、何かがある―有匡は、彼女の話を聞いて確信した。 一方、家庭科室では、火月がクラスメイト達と共にクッキーを作っていた。「あ、ごめん、手が滑っちゃった!」 火月が、教師が居る席に提出用のクッキーを置いた後、一人の女子生徒がそう言った後、わざと火月に向かって足を突き出した。 火月は、転びはしなかったものの、その女子生徒を睨んだ。「何よ、文句でもあるの?出来損ないのΩの癖に。」「そうよ、あんた達Ωが居るだけでも迷惑なのよ。」 悔しいが、火月は何も言い返す事が出来ぬまま、授業が終わるなり片付けを済ませて家庭科室を後にした。 何故Ωに生まれただけで、理不尽な差別を受けなければならないのだろうか。(α(アルファ)に生まれていれば、人生は楽しいものになってたかなぁ?) そんな事を思いながら人気のない空き教室で弁当を食べていると、そこへ有匡がやって来た。「先生、どうしてここに?」「職員室に居ると何かと息が詰まってな。」「αの先生も色々と大変なんですね。」「まぁな。教師は派閥があって、新人のわたしには余り馴染めないんだ。」「そうですか・・」「その弁当、自分で作ったのか?」「はい。シェアハウスでは、“自分の事は自分でする”のがルールなんです。なので、みんな家事全般が出来て、お互いに助け合いながら生活しています。」「そのシェアハウスには、Ωしか居ないのか?」「いいえ、βの人も居ます。シェアハウスのオーナーはとても良い人で助かっています。」「そうか・・」 Ωが差別を受けるのは、就職・進学だけではなく、部屋を借りる際もΩというだけで断られる事があると、有匡は雑誌の記事で知っていた。「親は居ないのか?」「えぇ。僕が生まれてすぐに、両親は交通事故で亡くなったんです。ですから僕は、シェアハウスで暮らすまで施設で暮らしていたんです。先生は、どうなんですか?」「結婚はしていないし、これからするつもりもない。わたしの父は、無理矢理番(つがい)だった母と引き離されて病死した。母は今生きているのか死んでいるのかわからない。」「すいません、変な事を聞いてしまって・・」「いや、いいんだ。包み隠さずに話しておけば楽になる。」 有匡はそう言って笑うと、コンビニで買ったサンドイッチを一口食べた。「あの子は?」「あの子はΩの生徒です。どうかされましたか、理事長?」「いや・・昔の知り合いに彼女が何処か似ているような気がしてね・・」「そうですか・・」「彼は確か・・」「あぁ、土御門有匡先生ですか?今年こちらに赴任されたばかりですが、生徒達から慕われていますよ。」「ほぅ・・」 理事長は、暫く空き教室に居る有匡と火月を見つめた後、秘書を従えて廊下から去っていった。にほんブログ村
2023年05月22日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」オメガバースパラレルです。作者様・出版社様とは一切関係ありません。オメガバース・二次創作が苦手な方はご注意ください。火月と禍蛇が暮らしている家は、同じ児童養護施設出身の者達が暮らしているシェアハウスだった。 バース性に対する差別を法律上では禁止されているものの、未だにバース性の差別は社会に蔓延っており、Ωの子供達は親から虐待を受けたり、捨てられたりして児童養護施設に引き取られた。 二人は共にΩで、彼女達は16歳の誕生日を迎えて施設から出た後、このシェアハウスで暮らし始めた。 このシェアハウスでは男女共にΩが多く、そのほかにβの男女が数人と、合計20人が共同生活を送っている。「他の皆は帰ってないの?」「うん。ねぇ火月、学校で何かあったの?俺にだけは隠さないでちゃんと話してよ。」「実はね・・」火月は親友に、学校で起きたことを話した。「何だよそいつ、腹立つな!Ωには何してもいいっていうのか?」「僕が悪いんだよ、番が居ないから。禍蛇はいいよね、番が居て。」「あぁ、琥龍のこと?あいつ俺の番の癖に、この前俺とデート中なのにもかかわらずあいつ、βの女を見かけたらナンパしてるんだぜ、俺の前で堂々と!まぁ、後でシメてやったけどな。」 禍蛇の番である琥龍とは同じ施設仲間で、彼は事情があって親から捨てられたαだった。主に貴族や政治家、資産家などの特権階級出身のαだが、家督争いや遺産相続などの「お家騒動」に巻き込まれ、施設に預けられたりするαの子供が稀に存在している。琥龍も、そんなαの一人だった。彼の実家は戦前華族であったが、戦後すぐに没落の憂き目に遭い、それから日本では有名な財閥の一つとして国内外でも知られている。「あいつ、俺と番になって結婚する気あるのかな?まぁ、あいつはαだから、色々と縁談が来ているんだろうけど。」「番が居るのと居ないのとでは大違いだよ。禍蛇は羨ましいよ、琥龍から愛されているんだもん。」「火月も番を探せばいいじゃん。そうすれば襲われなくなるかもよ?」「僕はいい。僕みたいなΩを欲しがる人なんて居ないもん。」「そんなに自分を卑下しなくてもいいんじゃない?俺は火月の方が羨ましいよ。俺よりもスタイルいいし、頭もいいしさ。」「そうかなぁ。ねぇ禍蛇、禍蛇が通っている学校にはαの生徒や先生は居るの?」「居るよ。でも殆どβの生徒や先生が多いかな。火月の学校の方はどうなの?」「どっちかというと、βが少数派で、αの方が多いかな。僕と同じΩの生徒は居るけれど、αやβと同じ教室で勉強できないんだ。」「何それ、酷いじゃん。まぁ、火月が通っている学校は進学校だから、そうするのも無理もないけどさぁ、学校側がΩを軽く扱っているんじゃないの?」「まぁ、学校側が決めた事に僕達は逆らえないし、別の学校でαの生徒がΩの生徒のヒートに当てられて集団レイプ事件が起きたっていうから、そういった事件を未然に防ごうとしているから、仕方ないよ。」「でもさぁ、それだと俺達Ωが男女見境なくフェロモン撒き散らしている獣だって見ているようなもんじゃん。何かすっげぇ腹立つ~!」禍蛇がそう叫んだ時、玄関のチャイムが鳴った。「誰かな、こんな時間に?」「今日は俺達を除いてみんな、会社の研修に行ってて明日の朝まで帰って来ないって言ってたし・・一体誰なんだろう?」 禍蛇がそう言いながらインターフォンの画面を見ると、そこには泥酔状態のαと思しき数人の男達が映し出された。『男日照りのΩちゃん、俺達の相手しろよ~』『金なら沢山払うからさ~』「警察に通報するね。」火月がスマホを持って二階の部屋に逃げ込もうとした時、裏口のドアの鍵が誰かに回される音がした。「おい二人とも、無事か!?」「琥龍か、脅かさないでよ!」ドアを開けて姿を現したのは、禍蛇と火月の幼馴染である琥龍だった。「さっきαの野郎どもがこの家に来るのを見たから、警察に通報したぜ。二人とも、大丈夫か?」「うん。それにしてもあいつら、何でここの場所知ってたんだろう?」「さぁな。最近ここらへんでΩの襲撃事件が増えているから、警察に通報したらすぐに来てくれたぜ。ったく、最近変な奴が多くて困るよな。」琥龍はそう言うと夕飯のカレーを一口スプーンで掬ってそれを頬張った。「今後もこんなことがあるようなら、引っ越しを考えた方がいいかもしれないね。」「そうだね・・でもさ、引っ越したら色々と不便だよ?それに、お金ないし・・」 施設から出て、禍蛇と火月はアルバイトをしながら高校に通っているが、バイト代ではスマホ代を含む生活費を稼ぐだけで精一杯だった。「何だったら俺ん家来るか?部屋沢山余ってるし、万が一の事を考えたらそれがベストだと思うんだけどなぁ。」「却下。琥龍ん家は周りにαが沢山居るし、琥龍の家から学校に通う距離が遠いし、色々と不便だよ。」「そうか。なぁ火月、お前学校で虐められたりしてねぇか?」「え、なんでそんな事急に聞くの?」そう言って火月が琥龍の方を見ると、彼は低く唸った後、こう言った。「実はこの前、俺が住んでるマンションの近くで飛び降り自殺があったんだよ。自殺したのは、お前と同じ高校に通ってた男子高校生で、最近Ωだって病院の検査でわかって、人生を悲観して死んだんだってさ。Ωだからって人生終わりっていう事はないのになぁ。でも、お前と同じ高校に通っていたって聞いたから、お前もΩだって事で色々と苛められているんじゃないかと思ってさぁ・・」「僕は大丈夫だよ、琥龍。まぁ、うちの学校はΩの生徒ばかり集めた特殊学級があるから、αやβの生徒とは余り交流がないし・・」火月はそう言いながら、数日前自分の机が何者かによって傷つけられていた事を思い出した。「何かあったら俺を呼べよ、火月。お前を苛める奴は片っ端からぶっ飛ばしてやるから。」「有難う琥龍、そう言ってくれるだけでも嬉しいよ。」「琥龍、俺がお前の番なんだけど?何で火月ばっかり構う訳?」「何だぁ、ヤキモチか?」「違う、俺が隙見せるとてめぇが火月に手ぇ出しそうで油断できねぇんだよ!」禍蛇はそう琥龍に向かって怒鳴ると、彼の頭を拳骨で殴った。「いってぇな、何すんだ暴力女!」「うるせぇスケベ野郎、この間も部屋に女連れ込んでただろう?」 隣で口論を始める禍蛇と琥龍の姿を見ながら、火月は彼らの関係が羨ましいと思った。 いつか自分にも、番が現れるのだろうか。「火月、どうしたの?」「ううん、何でもない。先にお風呂、入ってくるね。」無理に二人に向かって笑顔を浮かべると、火月はリビングから出て浴室へと入ると、深い溜息を吐いた。 その頃、有匡は都内某所にあるホテルで開かれている資産家のパーティーに出席していた。「有匡、来てくれて嬉しいよ。」「お久しぶりです、義父上(ちちうえ)。」有匡がそう言って養父に挨拶すると、彼の隣に美しい振袖姿の若い女性が立っている事に気づいた。 その姿を見た途端、彼はこのパーティーの目的が解った。「有匡、紹介するよ。こちらは三条家の・・」「申し訳ありませんが義父上、少し酒に酔ってしまったようです。外の風に当たってきます。」 義父に反論する隙を与えず有匡は彼にそう言うと、そのままパーティー会場から出て行った。にほんブログ村
2023年05月22日
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素材はNEO HIMEISM 様からお借りしております。「火宵の月」オメガバースパラレルです。作者様・出版社様とは一切関係ありません。オメガバース・二次創作が苦手な方はご注意ください。 この世には、二次性別というものが存在する。男女という性別の他に、α(アルファ)、β(ベータ)、Ω(オメガ)という三種類の性別が存在し、βが世界の全人口の大半を占め、主にエリート階級に属するα、そしてかつて被差別階級であったΩは人口の約3%を占める。 これは、一人のαと、Ωの物語である―「先生、さようなら。」「気を付けて帰れよ~」 茜色に染まりつつある廊下を歩く生徒達に同僚教師・高田が声を掛けている姿を遠くから眺めながら、土御門有匡は彼に気づかれぬように今来た道を戻った。 彼はこの学校に赴任してきたばかりの自分に対して親切にしてくれているのだが、顔を合わせると毎日放課後に飲みに誘われるので、それが苦痛で有匡は彼を避けるようになった。 余り人付き合いが得意ではない有匡は、高田のような熱血教師タイプが苦手だった。高田だけではなく、他の同僚教師達とも何だか反りが合わないような気がするのは、自分が無愛想で事務的な態度を彼らに取っているからだろう。 革靴を履き、有匡が職員用駐車場へと向かおうとした時、人気のない体育用具倉庫からくぐもった声が聞こえた。(気のせいか?) そう思いながら有匡が体育用具倉庫の扉を開けると、そこには一人の少女が今まさに中年男性に組み敷かれているところだった。「そこで何をしている!」有匡が男性を怒鳴りつけると、彼は飢えた獣のような目で有匡を睨みつけた。 それと同時に、男性の全身から威嚇フェロモンが放たれた。(こいつ、αか・・)「Ωの癖に、こいつが俺に逆らうから懲らしめてやろうとしているだけだ、邪魔するな!」「獣め、消え失せろ。」有匡は舌打ちしながらそう言って男を睨みつけると、男が放っているよりも強烈な威嚇フェロモンを男に向かって放った。 男は覚束ない足取りで喉元を掻き毟りながら体育用具倉庫から出て行った。「大丈夫か?」「はい、助けてくださって有難うございます。」金髪紅眼の少女と目が合った瞬間、有匡は彼女から花の蜜の様な甘い匂いが漂って来ている事に気づいた。“運命の番”―αとΩ間であっても極稀にしか存在しないという“魂の番”。「お前、名前は?」「火月・・炎の月という意味の名です。あの、先生?」この少女が、自分の“運命の番”だというのか?「家まで送ろう。」「有難うございます。」 火月を助手席に乗せ、有匡が車に乗り込もうとした時、上着の胸ポケットに入れていたスマートフォンが振動した。 スマートフォンの液晶画面を見た有匡は舌打ちするとスマートフォンの電源を切った。「すいません、ここで降ります。」有匡の運転する車が市街地を抜け、閑静な住宅街に入っていくと、火月はそう言ってシートベルトを外した。「家までまだ距離があるだろう?」「そうですけど、余り男の人と一緒に居るところを家族に見られたくないんです・・」火月は何か複雑な事情を抱えているらしく、それだけ言うと俯いてしまった。「男に襲われた時、何故抵抗しなかった?」「僕はΩで、男を誘うフェロモンを出しているから、男に襲われて当然だと思って・・無駄に抵抗するよりは、嵐が過ぎ去るのを待った方がいいと・・」「馬鹿な事を!」 Ωはエリート階級に属しているαと比べ、αを誘うフェロモンを発するΩは、長年“劣等品種”とされ、謂れのない迫害と差別を受けてきた時代があった。 Ωの発情を抑える抑制剤や、バース性に対する差別撤廃運動、そしてバース性に対しての法整備が進みつつある現代に於いても、未だにΩに対する差別は根強く残っている。 それ故にαの男性によるΩ男性、女性へのレイプなどが頻発し、その結果違法な堕胎手術により命を落とすΩが少なくはない。 Ωは種の繁殖に適するものと思われている為、その社会的地位は低く、妊婦が出生前判断で腹の胎児がΩである事がわかると中絶し、また生まれて来た子供がΩである事を理由に殺害し、遺棄したりする事件も後を絶たず、社会問題となっている。 しかし一番問題なのが、Ωとして生まれた者の自己肯定感が低い事だった。「あの時、もしわたしがお前を助けていなかったら、お前はあの男に犯されていたんだぞ?それなのに、お前はそれを当たり前だと思っているのか?」「先生にはわからないんです、Ωとして生まれてきた僕の苦しみが!僕だって好きでΩに生まれてきた訳じゃないのに・・」「済まん、言い過ぎた。」 有匡は顔を両手で覆って泣く火月の背中を優しく擦った。「すいません、取り乱してしまって・・」「あんな事は、いつもあるのか?」「いいえ。僕がフリーのΩで、油断していたから襲われてしまったんです。」「番は居るのか?番を持てば、発情フェロモンが抑えられると噂に聞いたが?」「番は持っていません。強い抑制剤をいつも服用しているので、今日も大丈夫だと思っていたんですが、襲われるなんて思いもしませんでした。」「あの男は学校関係者じゃないな。今日の事を学校に報告して、警備を強化して貰うようにしよう。」「でも、そんな事をしたら迷惑を掛けます。」「生徒の身の安全を守るのが教師の役目だろう?」「それはαやβの生徒に対してだけでしょう?Ωの生徒を守る学校なんてありません。」「火月、お前・・」「送ってくださって有難うございました、さようなら先生。」有匡が止める間もなく、火月は車の助手席から降りて住宅街の中へと消えていった。(少し言い過ぎたかな・・) 火月はそんな事を思いながら溜息を吐くと、一軒の家の前に立った。 そこは、自分と同じ境遇で育った者達が共同生活を送るシェアハウスだった。 火月が玄関先のインターフォンを鳴らすと、玄関先に黒髪紅眼の少女が現れた。「火月、お帰り。帰りが遅かったから、また襲われたんじゃないかって心配していたんだよ?」「ごめん、禍蛇(かだ)。心配かけちゃって・・」「謝らないで。ご飯もう出来てるから、配膳手伝って。」「うん、わかった。」 火月は黒髪の少女と共に家の中へと入った。にほんブログ村
2023年05月22日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。 興奮する妹を、甲子太郎は必死に宥めようとしたが、彼女の怒りは収まらなかった。(卑しい妓生の分際で、わたくしに逆らおうなんて生意気だわ!) 美妃の中で、総司に対する憎しみがますます募っていった。「お嬢様、歳三様がお呼びです。」「まぁ、歳三様がわたくしに会いに!?」「はい・・」 美妃は鏡の前で髪を梳くと、総司から奪ったテンギを髪に結んだ。「歳三様、いらっしゃるならいらっしゃると、前もって文を寄越して下されば・・」 息を弾ませながら美妃が歳三の待つ部屋へと入ると、彼は冷たい瞳で彼女を睨んでいた。「あの・・」「良くお似合いですね、それ。」 そう言って歳三が指したのは、美妃の美しい髪に結ばれているテンギだった。「あぁ、これは・・」「そのテンギは、あなたには似合わない。」「え・・」 歳三はそう言うなり、美妃の髪からテンギをむしり取った。「これは、元の持ち主に返します。」「いや、待ってください、お願い!」 美妃の叫びを無視し、歳三は彼女に背を向け、伊東家を後にした。 美妃は歳三から冷たく拒絶され、三日間寝込んだ。―ねぇ、聞いた?伊東家の・・―あの方には良い薬になったのではなくて? そんな事を言いながら両班の令嬢達が針を動かしていると、そこへ一人の少女が彼女達の居る部屋に入って来た。 彼女は艶やかな黒髪を真紅のテンギで結び、深緑のチョゴリに美しい刺繍が施された真紅のチマを纏った彼女の美しさに、暫しその場に居た者達は見惚れていた。「まぁ、綺麗な方・・」「何処の方かしら?」「見ない顔ねぇ。」 令嬢達がそんな事を囁き合っていると、部屋に一人の女性―歳三の姉・信が入って来た。「まぁ、あなたね。歳三のお嫁さんとなる方は?」「初めまして、総司と申します。」「素敵な韓服ね。誰かから贈られたのかしら?」「はい・・」「そう。」 信はそう言うと、総司に優しく微笑んだ。 総司は一針一針、心を込めて歳三の為に刺繍した。「何を作っているの?」「好きな方の為に、網巾(マゴン:鉢巻)を・・」「鳳凰の刺繍が見事ね。」(土方様、喜んで下さるといいな・・)「トシ、色々と大変だったな!」「まぁな。」「あれ、あの子は・・」「総司なら、姉貴が経営している刺繍塾に行かせた。」「そうか、なぁトシ、あの子ならお前を支えてくれるような気がするんだ。」「へぇ・・」「それは、どうかな?」 歳三はそう言うと、不敵な笑みを口元に浮かべた。「総司は、土方様のところでお世話になっているそうだよ。」「そうですか・・」「どうしたんだい、浮かない顔をして?」「いいえ。」「さてと、夜の準備でもしようかね。」 総司の養母は、そう言うと奥の部屋へと入っていった。「あら、こんな所に居たのね。ちょっとおつかいを頼まれてくれないかしら?」「・・わかりました。」 はじめが妓楼の下女に頼まれて市場で買い物をしていると、向こうから見知らぬ女と歩いている総司を見かけた。「お嬢様!」「あら、はじめさん。」「こちらの方は?」「こちらの方は、土方さんのお姉様の、信様です。」「はじめまして。」「どうも、はじめまして。わたしにはお嬢様の従者で妓楼の使用人をしている斎藤一と申します。」「はじめさん、ね。総司さんから聞いているわ。頼りになる相棒だと。」「そうですか・・」 はじめは、そう言うと俯いた。「信様、少しはじめとお話したい事があるので・・」「わかったわ。」 信はそう言うと、総司は背を向けて歩き出した。「女将から、行首(ヘンス)様からお嬢様があの男の元で世話になっている事を知りました。あの男とは、どうなさるおつもりなのですか?」「それは、どういう意味なの?」「わたしはいつでも、お嬢様の幸せを誰よりも願っております。ですが、あの男は駄目です。」「どうして?」「わたしは、人の死期が視えるのです。あの男は、近い内に死にます。」「そんな・・」「今ならまだ間に合います、お嬢様。どうか・・」「もし、そうだとしてもわたしは、あの人のお傍に居たいの。」「そうですか・・ならば、わたしはお嬢様の意思を尊重します。」「ありがとう、はじめ。」(お嬢様、わたしはお嬢様の幸せを誰よりも願っております。)「トシ、帰ったわよ。」「お帰りなさいませ、姉上。」「総司さんに、刺繍塾でお会いしたわ。彼女、あなたの事が好きみたいね?」「姉上、それは・・」「トシ、あなたは今まで辛い思いをしてきたけれど、あなたには、幸せになって欲しいのよ。」「姉上・・」「大丈夫、あなたなら幸せになれるわ。」 信はそう言うと、歳三に微笑んだ。「姉上・・俺は、幸せになるのが怖いのかもしれねぇ。」 歳三はそう言うと、静かに目を閉じ、幼かった頃の事を思い出していた。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。「若様、湯の準備が出来ました。」「山崎、わざわざ知らせてくれて済まねぇな。」「いいえ。ではこれでわたしは失礼いたします。」 歳三は自分の胸に顔を埋めて泣いている総司に、風呂に入るように言った。「有難うございます。」一晩中裸同然の姿で木に縛り付けられた総司にとって、温かい湯は何よりの特効薬だった。「湯は熱くねえか?」「はい。土方様、わたしの為にわざわざお湯を焚いてくださって有難うございます。」「礼なんて言うな。それよりもお前ぇと美妃様は初対面だったのか?」「はい。でも美妃様は、わたしの方をご存知のようでした。」「そうか。総司、お前の妓楼にはお前がここに暫く居る事を連絡したから、俺の傍に居ろ。」「え、いいのですか?」歳三の言葉を聞いた総司は、思わず浴室から飛び出した。「惚れた女を傍に置きてぇと思うのは当たり前だろう?それよりも、そんな格好で俺の前に出るんじゃねぇ!」「あ、すいません。」歳三が耳まで顔を赤くしている事に気づいた総司は、そう言うと慌てて浴室の中へと引っ込んでいった。(ったく、あれじゃぁこの先が思いやられるぜ・・)歳三がそんな事を思いながら溜息を吐いていると、下男が何やら慌てた様子で彼の元へと駆け寄って来た。「歳三様、大変です!あの妓生を引き渡せと、伊東様がいらしております。」「美妃様の事は放っておけ。」「いえ、こちらへいらしたのはお嬢様ではなく、兄君の方なのです。」「何だと!?」 歳三が客間へと入ると、そこには少し苛立った様子で扇を開いたり閉じたりしている美妃の兄・伊東甲子太郎の姿があった。抜けるような白い肌に、目鼻立ちが整った美男子の甲子太郎だが、その眉間には深い皺が寄っていた。「長い間お待たせしてしまって申し訳ありません、伊東殿。」「土方殿、貴方が妹に無礼を働いた妓生を匿(かくま)っているという噂は本当なのか?」「滅相もございません。それよりも伊東殿、妹君がわたしの気を惹こうとして何故そのような嘘をお吐きになるのか、わたしにはわかりかねませんが・・」「何、君は妹が嘘吐きだと言うのかね!?」「伊東殿、わたしは事実確認をしているだけです。わたしが貴方の妹君に無礼を働いた妓生の話によると、先に彼女に無礼を働いたのは貴方の妹君だとか・・」「どうやら君と話し合う必要はないようだな、これで失礼する!」伊東はそう叫ぶと、そのまま荒々しく客間から出て行った。「何とか上手く誤魔化せたな・・」歳三は伊東が去った後、そう呟いて溜息を吐くと、彼が用意した総司の部屋へと向かった。「総司、居るか?」「はい。」部屋に入った歳三を、美しい韓服姿の総司が出迎えた。「あの、本当にこちらでお世話になっても宜しいのですか?わたしの事で、ご迷惑をおかけしてしまうかも・・」「そんな事、気にするな。」歳三はそう言うと、総司を抱き締めた。「まぁお兄様、わたしが嘘を吐いているとでもおっしゃるの?」「落ち着け、美妃・・」「嫌です、これが落ち着いてなどいられますか!」にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。「嫌ぁ、誰か助けて!」「大人しくしな。」 伊東家の使用人達は、泣き叫ぶ総司を橋の近くの木に縛り付け、その場から去っていった。 きつく縛られた総司は自分を戒めている荒縄を解く事も出来ず、通行人の好奇の視線を浴びてただ泣く事しか出来なかった。(歳三様、助けて・・) 歳三は宮廷に出仕する為に、馬で橋の近くを通ると、そこには人だかりが出来ていた。「トシさん、大変です!」「どうした、何があったんだ?」「総司さんが・・総司さんが木に縛り付けられているんです!」「何だと!?」 馬から降りた歳三が総司の姿を探していると、突然総司の甲高い悲鳴が聞こえた。「へへ、こんな上玉に抜いて貰うなんてツイてるな。」「おいおい、抜け駆けは狡いぜ。」「心配するな、済んだらちゃんと順番にまわしてやるよ。」 数人の男達が下着姿の総司を取り囲み、下卑た笑みを浮かべながら自分の一物を取り出すと、リーダー格と思しき男が恐怖に震えている総司の下穿きを引き裂いた。「嫌ぁ、見ないで!」「妓生の癖に、綺麗じゃねぇか。こりゃぁ、楽しみ甲斐があるぜ。」男の手が総司の陰部に伸びようとした時、彼は頭を殴られ、その場で昏倒した。「あ、兄貴ぃ!」「誰だ、出て来い!」「・・てめぇら、俺の女に何をしていやがる?」ゆらりと男達の背後から歳三が姿を現し、彼は半裸で木に縛られている総司を見つけた。「命が惜しかったら、さっさとこの場から立ち去れ。」「ひ、ひぃぃ~!」男達は歳三の殺気に当てられ、気絶した男を引き摺りながらその場から立ち去った。「歳三様・・」「総司、大丈夫か?」歳三は総司の身体を戒めている縄を刀で切ると、彼女を横抱きにして帰宅した。「歳三様、その娘は・・」「橋の近くの木に縛られていた。何処かのならず者達に凌辱される前に助けたぜ。山崎、こいつに着替えを持ってこい。こんな姿じゃ彼女を妓楼に返せねぇ。」「承知いたしました。」山崎は歳三の腕に抱かれている半裸の総司を横目で見ると、部屋の襖を閉めた。「総司、誰がお前にあんな酷い事をした?」「わたしは何も知りません。」総司はそう言って誤魔化したが、歳三は彼女が嘘を吐いている事に気づいた。「総司、怒らねぇからちゃんと話せ。俺に嘘を吐くな。」「はい。昨日、伊東家の侍女に話したいことがあると家に連れて行かれたら、その家のお嬢様が使用人達に、わたしを橋の近くの木に縛り付けておけと命じたのです。」(美妃様がお前にそんな事をするとは・・余程俺に気があるらしいな。)歳三はそんな事を思いながら総司の方を見ると、彼女は歳三を怯えた目で見つめていた。「総司、どうした?」「わたし、凄く怖かったです。さっき貴方が助けに来てくれなかったら、わたしはあの男達にどんな目に遭わせられたのかと思うと・・」そう言って唇を震わせた総司は、歳三に抱きついた。「大丈夫だ、俺がお前ぇを守る。」歳三は自分の胸に顔を埋めて泣く総司の髪を、優しく梳いた。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。妓楼を飛び出した総司は、息を切らしながら歳三との待ち合わせ場所へと向かっていた。 そんな彼女の姿を、物陰から美妃の侍女・ミニョクが見つめていた。「歳三様、何処にいらっしゃるの?」待ち合わせ場所に到着した総司は歳三の名を呼びながら彼の姿を探したが、彼は何処にも居なかった。(もしかして、行き違いになったのかしら?)総司がそんな事を思いながら歳三を待っていると、突然背後から彼女は誰かに肩を叩かれた。「貴方は、沖田総司様ですね?」「ええ、そうですけれど・・貴方はどなたですか?」 総司が振り向くと、そこには自分と同年代の少女が立っていた。「わたくしは伊東家の侍女をしております、ミニョクと申します。わたしの主が、総司様にお話ししたいことがあるというので、一緒にわたくしと来て頂けませんか?」「はい。」ミニョクの言葉を何も疑いもせず、総司は彼女と共に伊東家へと向かった。「こちらでお待ちください。」 伊東家に着いた総司は、ミニョクの主である美妃の部屋へと通された。そこは妓楼にある自分の部屋よりも豪華な調度品が飾られていた。 総司が緊張しながら美妃を待っていると、部屋の襖が開いて険しい表情を浮かべた美妃が部屋に入って来た。「お前ね、歳三様を惑わしている妓生というのは?」「一体何をおっしゃっているのですか?」「とぼけないで!わたくし今朝、貴方が歳三様と一緒に歩いているところを見たのよ!」美しい顔を怒りで歪ませながら美妃は総司に向かってそう叫ぶと、彼女の腕を乱暴に掴んで部屋の外から引きずり出した。「何をするのですか、やめてください!」「お黙り!」怒りで興奮している美妃の打擲(ちょうちゃく)が、容赦なく総司を襲った。(どうして、わたしがこんな目に・・)総司はミニョクに救いを求めようと彼女を見たが、彼女は気まずそうに総司から目を逸らした。「この娘の服を脱がしなさい。」「かしこまりました、お嬢様。」伊東家の下男達は、主の命令に従って総司が着ていた韓服を乱暴に脱がした。白い上下の肌着だけとなった総司は、羞恥と恐怖で震えた。「この娘を、橋の近くの木に縛っておきなさい。自分がどんな立場にいるか、身をもってこの娘に教えてやるのよ!」「やめて、離して!わたしに触らないで!」総司は自分を担ぎ上げようとする下男に対して必死に抵抗したが、男の腕力の前ではそれは無駄なものだった。 下男と争った拍子に、総司の髪に結ばれていたテンギが解けて地面に落ちた。総司が慌ててそれを拾おうとした時、彼女の手を美妃が思い切り踏みつけた。「汚らわしい妓生を早くここから連れ出して頂戴!」「はい、お嬢様!」「いや、助けて、誰か~!」総司を連れた下男たちが屋敷から出て行った後、美妃は地面に落ちていたテンギを拾い上げ、それを自分の髪に結んだ。「わたくしの方が、あの娘よりもこのテンギが似合うと思わなくて?」「ええ、お嬢様。」そう言ったミニョクの目は、何処か冷めていた。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。 同じ頃、歳三の見合い相手である伊東美妃は、侍女のミニョクと共に朝市で買い物をしていた。「ねぇミニョク、あの飾り帯歳三様に似合うとは思わなくて?」「そうですね、お嬢様。」「あの方は美男子だから、どんなものでも似合うわね。あぁ、好きな方に贈り物を選ぶのがこんなに楽しいなんて思わなかったわ!」そう言って嬉々とした表情を浮かべながら歳三への贈り物を選んでいる美妃の隣で、ミニョクは内心深い溜息を吐いていた。 美人だが気位が高く、我儘(わがまま)な美妃は縁談があっても結局破談になることが一度や二度ではなかった。そんな美妃の心を捉えたのが、歳三だった。彼の家は歴史ある名家で、宮廷内の地位も高い。これを逃せば、美妃は一生独身だ。そうなれば、自分の負担がますます重くなってしまう。何とかして歳三と美妃を結婚させなければ―そんな事をミニョクが思っていると、美妃の顔が急に強張った。「どうかなさいましたか、お嬢様?」「何なのよ、あれは!」 怒りに震える手で美妃がそう言って指したのは、見知らぬ娘と仲睦まじい様子で朝市の中を歩いている歳三の姿だった。「わたくしの歳三様に馴れ馴れしく触れて・・許さないわ、あの娘!」「お嬢様、落ち着いてくださいませ。」「お黙り!」 美妃はヒステリックにそう叫ぶと、ミニョクの手を乱暴に振り払った。「ミニョク、あの娘の素性を調べて頂戴!」「はい、お嬢様。」怒り狂った美妃は、そのまま朝市にミニョクを置き去りにして帰宅してしまった。(面倒な事になるわね。)ミニョクはそう思いながら、慌てて美妃の後を追った。 一方、美妃に目を付けられた事などつゆ知らず、総司は妓楼の中にある自室で伽耶琴(カヤグム)を奏でていた。「お嬢様、失礼いたします。」「はじめさん、どうしたの?」「お嬢様に、お客様です。」「お客様、わたしに?」総司が自室から出ると、そこには切れ長の目をした一人の青年が中庭に立っていた。「総司様ですか?わたくしは土方家に仕える山崎と申す者です。主から、この文を預かって参りました。」「まぁ、有難う。今お茶をお出しするから、お部屋で待っていてくださいな。」「いいえ、わたしはこれで失礼いたします。」山崎はそう言うと総司に向かって頭を下げ、妓楼を後にした。 自室に戻った総司は、歳三からの文を読むと、それを抱き締めた。そこには、“申の刻、橋の前で待っている”と書いてあった。「はじめさん、わたしちょっと出かけてくるわ。」「お嬢様、どちらへ?」にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。(もしかしてこの人、照れてる?) 総司がそんな事を思いながらじっと歳三の横顔を見ていると、彼は気まずそうに軽く咳払いして総司にそっぽを向いた。「誰かと思ったら、トシさんじゃないですか!」「おう、サンヒョク、元気にしてたか?」 歳三はそう言って自分に話しかけて来た青年を見ると、彼は歳三の隣に立っている総司の方を見ていた。「トシさん、そちらの方は・・」「ああ、こいつは俺の妻になる娘だ。手ぇ出すんじゃねぇぞ?」「へい!」歳三の口から“妻”という言葉を聞いた総司は、思わず頬を赤く染めた。「最近ここら辺はどうだ?儲かっているか?」「へぇ、お蔭様で。前は変な奴が多かったんですが、トシさんがあいつらを追っ払ってくれたお蔭で商売がやりやすくなりました。トシさん、飯がまだならうちの店へ寄ってやってください。お袋が喜びますんで。」「わかった、後で寄らせて貰う。総司、行くぞ。」「は、はい・・」総司はサンヒョクに軽く会釈すると、歳三と共に朝市の中を歩き出した。「何か欲しい物、あるか?」「いいえ・・この韓服(ハンボク)を下さっただけでも嬉しいです。」「あぁ、それは俺がお前ぇの為に誂えたもんだ。こう見えても、俺は針仕事が得意なんでな。」「大切に致します。」総司がそう歳三に礼を言うと、彼は照れ臭そうな表情を浮かべた。「お前の家はこの近くか?」「ええ。あそこに提灯が吊るされている門があるでしょう?あそこが、わたしの家です。」「そうか・・」 朱塗りの門の方を歳三が見ると、丁度中から一人の青年がそこから出て来た。彼は歳三と共に立っている総司の姿を見ると、慌てて総司を歳三から引き離した。「お嬢様、お怪我はありませんか?」「はじめさん、心配をかけてしまってごめんなさい。」「ご無事で良かったです、お嬢様。それよりも、あの男は・・」斎藤の視線が総司から歳三へと移った。「てめぇは、妓楼の番犬か?」「そういう貴様は何者だ?」「はじめさん、この人はわたしを助けてくれたのよ!お願いだから乱暴しないで!」 斎藤と歳三との間に険悪な空気が流れているのを敏感に感じ取った総司は、そう言うと慌てて二人の間に割って入った。「お嬢様・・」「土方さん、申し訳ないけれど帰って頂けるかしら?わたしが無事だと知ったら、みんな安心してくれるから。」「わかった。」歳三は名残惜しそうに総司の髪を一房掴んでそれに口づけると、彼女に背を向けて雑踏の中へと消えた。 彼の背中が次第に自分から遠ざかってゆくのを見た総司は、寂しさで胸がチクリと痛んだ。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。一部性描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。「何だぁ、もうイッちまったのか?」 頭上から歳三が自分を嘲るような言葉を吐きながら、そっと自分の秘所から顔を出すのを総司は感じた。「これだけの刺激だけですぐにイッちまうなんて、生娘は調教し甲斐があるな。」「嫌、ここからわたしを出して・・」 総司は涙に濡れた瞳を歳三に向けて哀願したが、歳三は首を横に振った。「言っただろう、てめぇに女の悦びを教えてやるって。」歳三はそう言うと、穿いていたパジ(ズボン)の紐を緩め、大きく反り返った己の陰茎を総司の秘所に宛がった。「嫌、嫌ぁ!」「暴れるな。」歳三は総司の細い腰を掴み、自分の陰茎で彼女の秘所へと入っていった。「ああ~!」 初めて男を受け入れた総司は、激痛に襲われて悲鳴を上げた。「畜生、きつく締め付けてきやがる・・おい、力を抜け。」「痛い、痛い、あぁ!」「ったく、仕方がねぇな・・」 歳三はそう言って舌打ちしながらも、総司を落ち着かせる為に彼女を自分の胸元へと抱き寄せた。 暫くすると、総司は歳三の心音を聞いて落ち着いたのか、彼女の強張っていた箇所が少し弛緩してきたように歳三は感じた。「動くぞ。」 歳三が総司の細い腰を掴み、彼女の身体を上下に揺らし始めると、彼女の口からは悲鳴とは別のものが聞こえた。 それと同時に、彼女の秘所からは絶え間なく蜜が溢れ出てきている。「気持ちいか?」歳三の問いに、総司は恥ずかしそうに白い頬を赤く染めながらも静かに頷いた。「声、聞かせろよ。」歳三はそう総司の耳元で囁いた後、腰を激しく振った。「あぁ、駄目、そんなに激しくしたら壊れちゃう!」「上等だ、二人でこのまま壊れるってのもいいな。」歳三がそんな冗談を言いながら動きを止めずにいると、それと呼応するかのように総司も腰を動かし始めた。「やれば出来るじゃねぇか?」「あぁ、また身体が変に・・」「俺もそろそろ限界だ。中に出してもいいな?」総司は歳三にしがみつき、彼の問いに静かに頷いた。 どくどくと、自分の中に歳三の欲望が迸るのを感じながら、総司は意識を失った。「トシ、入るぞ?」 近藤が歳三と総司の部屋に入ると、歳三は煙管を咥えながら彼の方を見た。 奥では、総司がすやすやと安らかな寝息を立てながら眠っていた。「勝っちゃん、俺がこんな生娘に夢中になっちまったのは、生まれて初めてだ。俺ぁ、女と寝るときは生娘とは寝ねぇと決めてたのに、このざまだ。」「トシ、この娘の素性が判ったぞ。都一番の妓楼“壬生楼”の養女だ。まだ水揚げは済ませていないが、舞も楽器も出来る将来有望な童妓(トンギ:水揚げ前の妓生の事)だそうだ。」「そいつを傷物にしちまったんだから、その責任はちゃんと取るぜ、勝っちゃん。」「トシがそこまでその娘に入れ込むのは珍しいな?」「自分でもわからねぇよ。だが、俺ぁずっとこの娘を探していたような気がしてならねぇんだ。」 歳三はそう言って立ち上がると、眠っている総司の艶やかな黒髪を一房掴むと、それに優しく口づけた。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。一部性描写が含まれます、苦手な方はご注意ください。「着いたぜ。」 歳三がそう言って総司を馬から降ろすと、彼女はチマの裾を摘んで彼から逃げようとした。だが、歳三は彼女の腕を掴んで自分の方へと引き戻した。「まだ俺から逃げようって言うのか?」「嫌、離して!」歳三に捕えられた総司は激しく抵抗したが、大の男相手に華奢な少女が腕力では敵う筈がなかった。「わたしを殺すつもりなの?」「お前ぇみてぇな良い娘、殺したら損だ。殺すよりももっといい方法を考えた。」歳三の言葉を聞いた総司は、これから彼に何をされるのだろうかと思いながら恐怖に怯えた。「俺と一緒に来い。」 歳三と共に総司が向かったのは、パク氏の邸と変わらぬ造りの建物だった。「ここは何処?」「ここは俺達の家だ。」二人が建物の中に入ると、そこには黒衣を纏った数人の男達が居た。「おおトシ、漸く帰って来たな!余りにも帰りが遅いから、捕盗庁(ポドチョン:警察)に捕まえられたのかと思っていたぞ!」 男達の中から顔が大きい男が歳三達の前に現れると、そう言って笑いながら歳三の肩を叩いた。「俺がそんなへまをするかよ、勝っちゃん。それよりもパクの野郎の邸から、いい娘を攫ってきたぜ。」歳三はそう言うと、男の前に総司を押し出した。「ほぉ、可愛らしい娘じゃないか。娘さん、名は?」「総司と申します・・あの、貴方がたが最近都を騒がしているという“壬生狼”なのですか?」「ああ。だが俺達は金持ちから金銀財宝を奪い取るだけで、殺しはしない。無駄な殺生はしないという掟の下、俺達は義賊として生きているからな。」「そうなのですか・・それを聞いて安心いたしました。」(この人達、根っからの悪人ではないかもしれないわ。) そんな事を総司が思った時、突然歳三が彼女を横抱きにした。「勝っちゃん、俺ぁこいつを部屋に連れて行くぜ。」「嫌ぁ、離して~!」「トシ、余りその娘さんに乱暴な事をするなよ!」 “勝っちゃん”は、そう言って歳三と総司に手を振り、仲間と共に酒を飲み始めた。 歳三は総司を自室へと連れて行くと、用意されていた褥の上に彼女を寝かせた。「わたしを犯して殺すのでしょう、この人でなし!」「俺ぁ星の数ほど女を抱いて来たが、生娘を犯して殺すほどの馬鹿じゃねぇ。お前ぇに女としての悦びを教えてやるよ。」歳三はそう言って総司に微笑むと、彼女が着ているチマの胸紐を解き、彼女の豊満な胸を露わにした。「嫌ぁ、見ないでぇ・・」総司の首筋を強く吸い上げた歳三は、彼女の乳首と乳房を舌で愛撫した。はじめは嫌がっていた総司だったが、歳三に胸を舌で愛撫される内に、身体の奥がジンジンと痺れるような感覚に襲われていった。「胸だけで感じていやがるのか。こんなに濡らしやがって。」歳三は手をそっと総司の秘所へと伸ばすと、そこは熱く濡れていた。彼女のチマを捲りあげ、彼女の両足を割った歳三は、その秘所に顔を埋めた。「あぁぁ~!」 悲鳴とも歓声ともわからぬ総司の声が、部屋の中に響いた。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。「いや、離して!」「暴れるな、痛い思いをするのはお前ぇだぞ。」訳も判らぬまま総司はパク氏の邸から歳三に拉致され、彼と共に馬で何処かへ連れて行かれた。「わたしを何処へ連れて行くつもりなの?」「悪ぃが、それは教えられねぇ。」歳三は馬の尻に鞭をくれてやりながら、暴れる総司を睨んだ。「これ以上暴れるつもりなら、お前をこのまま地面に落としてやろうか?」「やめて・・」「じゃぁ大人しくしていろ。」歳三がそう言って総司を再度睨むと、彼女は俯いてすすり泣いた。(わたし、これからどうなってしまうの?この男に乱暴された上に殺されてしまうのかしら?)総司がそんな事を思っていると、突然背後から馬の蹄の音が聞こえた。「お嬢様を離せ、この獣め!」「ふん、初対面の人間に対して礼儀がなってねぇな!」 馬上で斎藤と歳三は剣を交え始めた。「はじめさん、やめて!」「お嬢様、今助けます!」「おっと、よそ見をする余裕があるのかい、兄さんよ!」歳三はそう言うと、斎藤が乗っている馬の足にパク邸から拝借した銀の箸を突き刺した。馬は悲鳴を上げ、斎藤は地面に転がったまま動かなくなった。「いや、はじめさん、はじめさん~!」総司の悲痛な叫び声は、虚しく闇の中へと消えた。(お嬢様・・)闇の中へと消えてゆく総司に向かって斎藤は手を伸ばしたが、彼はやがて意識を失った。 一方、総司が義賊“壬生狼”に宴席から拉致されたと知り、チュンスクは半狂乱になりながら使用人総出で彼女の捜索を命じた。「女将さん、お客様がお見えです。」「今夜は誰にも会いたくないと言っておくれ!」「それが・・」「やあチュンスク、元気そうで何よりだ。」チュンスクがイライラしながら部屋の中を右往左往していると、そこへ一人の男が現れた。「まぁ、ぺク大監(テガン:大臣)、お久しぶりでございます。今夜はどのようなご用件でいらっしゃられたのですか?」「大した用ではない。お前の娘・・確か総司と言ったか?彼女に会いたいと思ってな。」「申し訳ありませんが大監様、総司は今ここにはおりません。」「そうか、それは残念だな。あの子に似合う簪や韓服を土産に持って来たというのに。」ぺク大監はそう言うと、従者から韓服が入った包みを受け取り、部屋の床に韓服を広げた。 それは、鮮やかなクリーム色のチマ(スカート)と、花の刺繍が施された水色のチョゴリ(上着)だった。「まぁ、綺麗・・」「あの子の白い肌に映えると思ってね。」嬉しそうに優しく韓服を撫でるペク大監は、娘を溺愛する父親のような顔をしていた。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。歳三達が狙う家の主・パク氏は、まさか彼らが自分の家を襲撃しに来るとは夢にも思わずに、呑気に妓生達を邸に呼んでは宴を開いていた。「パク様、このような事をなさって大丈夫なのですか?今夜、壬生狼がこちらを襲うという噂を聞きましてよ?」「あんなもの、出鱈目に決まっているだろう!わしは壬生狼など来ても恐れずに戦うぞ!」そう言って豪快に笑いながら酒を呷ったパク氏は、一人の妓生に目を留めた。 艶やかな黒髪を赤いテンギで結わえているその妓生は、パク氏の視線に気づくと恥ずかしそうな様子で俯いた。「おい、あの子は誰だ?」「あぁ、あの子は総司といって、宴に出るのは今夜が初めてなので緊張しているのですよ。」「そうか。そこの娘、こちらへ来い!」「はい・・」 パク氏に呼ばれ、総司が彼の隣に腰を下ろすと、彼は総司を自分の方へと抱き寄せた。「そんなに緊張せずともよい。お前のような初心な女は調教のし甲斐がある。」「おやめください・・」総司はそう言ってパク氏に抗議したが、彼の手は総司が着ているチョゴリの胸紐へと伸びていった。「おやめくださいまし、パク様。その子はまだ生娘なのですよ。」「そうか、ならばわしがお前の初めての男であっても不満はあるまい?」「いやっ!」総司がパク氏の言葉を聞いて恐怖で美しい顔を強張らせたとき、突然外が騒がしくなった。「何事だ!?」「旦那様、壬生狼が、壬生狼が・・」 部屋に入って来た使用人がそう言って蒼褪めた顔を主に向けると、彼の額から刃が生えてきた。「ひぃぃ!」目の前で使用人が惨殺され、先程の威勢のよさはどこへやら、パク氏は恐怖のあまり失禁しその場にへたり込んでしまった。「随分と俺達を馬鹿にしていたようだが、大したこたぁねぇなぁ。」妓生達が悲鳴を上げながら部屋から逃げてゆく中、一人の男が部屋に入って来た。 顔は黒い薄布で覆われて見えないが、月光を受けて美しく輝く黒髪と、それを飾る真紅のテンギに総司は見覚えがあった。「助けてくれ、命だけは・・」「俺達が欲しいのはてめぇがしこたま貯め込んでいる金銀財宝だ。あと、その汚い手をその娘から退かしやがれ。」「わ、わかった!」パク氏は総司を突き飛ばすと、這うようにして部屋から逃げていった。「怪我はねぇか?」「はい・・」 使用人の返り血を全身に浴びた総司は、自分を見つめる黒衣の男と前に会った事があるような気がした。「お前ぇ・・あの時の・・」 歳三は、目の前に居る妓生―あの時助けた娘がパク氏の邸に居る事に驚いていた。「何故、お前がここに居る?」「それは、わたしが妓生だからです。」「そうか。丁度いい、今から俺はお前ぇを攫ってゆく。お前ぇのようないい女、何処を探したって見つからねぇからな。金銀財宝より価値がありそうだ。」歳三はそう言って口端を歪めて笑うと、総司の腕を掴んで彼女の華奢な身体を横抱きにするとパク邸を後にした。「いや、離してください!」「怪我をしたくねぇのなら、暴れるな。」歳三は自分の耳元で喚く総司を黙らせる為、彼女の唇を塞いだ。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。同じ頃、総司の“命の恩人”である男―土方歳三は、仏頂面を浮かべながら漢陽(ハニャン)市内にある料亭の一室で見合いをしていた。 その相手は、歳三の実家と同じ両班に属する伊東家の令嬢・美妃(ミヒ)であった。 “名は体を表す”という言葉通り、美妃は絶世とはいわないが、類稀な美貌の持ち主であり、詩や書画を嗜む娘で、宮廷から時折世子(セジャ:皇太子)から求婚の文が届くという。 だがそんな噂がありながらも、美妃は婚期を逃してしまい、同年代の娘達が誰かの妻となり子を産んで母となっている中、彼女は自分が独身であるという事に焦りを感じていた。 そんな中、歳三との縁談が舞い込み、美妃は彼に一目会って彼を自分の人生の伴侶にすると決めたのであった。「歳三様は、まだ独身でいらっしゃいますの?」「ええ。俺ぁ当分結婚は考えておりません。」「まぁ、それではわたくしが貴方様の妻となる可能性は高いという訳ですわね?」 美妃はそう言ってチョゴリの袖口で口元を覆って笑うと、歳三を見た。「すいません、急用を思い出したのでこれで失礼いたします。」 歳三は美妃に背を向けて料亭を後にすると、外で待機していた山崎が彼の方に駆け寄って来た。「歳三様、もう宜しいのですか?」「ああ。山崎、輿は帰らせろ。俺は馬で帰る。」「解りました。歳三様、この辺りでは夜盗が出没しているという噂を聞きました。どうかお気をつけてお帰り下さい。」「ああ。」 山崎に見送られ、馬で料亭を後にした歳三は、そのまま人気のない竹林の中へと向かった。 暗闇の中を歳三が馬を走らせていると、突然彼の前に汚らしい身なりをした数人の男達が取り囲んだ。「命が惜しくば、有り金を置いていきな!」「悪ぃが、それは聞けねぇなぁ。」「何だと!?」歳三は馬上で男達に向かって薄笑いを浮かべると、腰に帯びていた刀を抜いた。「てめぇ・・」「闇に紛れて悪さをしている夜盗ってのは、てめぇらか。」月光が竹林の中を照らし、男達は歳三に襲ったことを後悔した。だが、もう遅かった。「トシ、もう始末しちまったのか?」「遅ぇよ、勝っちゃん。」歳三がそう言って親友の方を見ると、彼は溜息を吐いた。「トシは俺達が着く前に仕事を片付けるのが早いなぁ。」「最近稽古をしていないで身体が鈍っちまって仕方がなかったから、いい運動になったぜ。」「暴れるのはほどほどにしておけよ、トシ。」「うるせぇ、解ってらぁ。」 歳三は親友に憎まれ口を叩くと、料亭で着ていた色鮮やかなパジ=チョゴリから、漆黒のそれに着替えた。「さぁ、“仕事”の時間だぜ、勝っちゃん。」「ああ。」 土方歳三は二つの顔を持つ。 昼は宮廷に仕える両班の息子としての顔、そして夜は都を騒がす義賊「壬生狼」としての顔だ。「今夜俺達が狙うのは、蔵に金を貯めこんでいる奴だ。」そう言って笑った歳三の漆黒の長い髪に結ばれた真紅のテンギが、夜風を受けて花のように揺れた。にほんブログ村
2023年05月21日
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「PEACEMAKER鐵」二次創作です。作者様・出版社様とは一切関係ありません。沖田さんが女性設定です、苦手な方はご注意ください。 その日、王宮で珠のような美しい王女が生を享けた。「王妃様、おめでとうございます!」「まぁ、何て可愛らしい子。お前の名前は―ですよ。」 母親はそう言うと、生まれたばかりの娘の頭を撫でた。 王女は、王宮で何不自由ない生活を送り、母から深い愛情を受けて育った。だが、そんな幸せはある日突然壊されてしまった。「この子を連れて逃げて!この子が生き延びる為なら、わたくしは死んでもいいわ!」「なりません、王妃様!」燃え盛る宮殿の中で、王妃は侍女に王女を託し、そのまま息絶えた。王女を託されたが、追っ手に追われて深手を負った侍女は、王妃の形見である簪を王女の産着の中に入れると、妓楼の前に王女を置いて息絶えた。 王女の泣き声を聞いた妓楼の主は、王女を自分の娘として引き取り、彼女に「総司」という名を授けた。 王女―総司は本当の名と出自を忘れ、養父母から深い愛情を注がれながら美しく成長していった。「総司、ちょっとお使いを頼まれてくれないかい?」「はい、母様。」「暗くなる前に帰って来るんだよ、いいね!」 養母からお使いを頼まれ、帰宅を急ぐ総司の前に、いかにも柄が悪そうな数人の男達が立ちはだかった。「こりゃぁいい顔をしているじゃねぇか。」「これなら高く売れそうだ。」「おい嬢ちゃん、こっちに来な。」「嫌だ、離して!」 男達に腕を掴まれ、総司は抵抗したが、男の腕力に幼子が敵う筈がなかった。総司が男達に誘拐されそうになった時、何処からともなく飛んできた矢が、男が被っていた帽子に深々と突き刺さった。「チッ、外したか。今度は外さねぇぜ。」「畜生、逃げろ!」 男達が逃げ去った後、総司の前に一人の男が現れた。上等な絹の服を着て、漆黒の髪を束ねている男は、切れ長の鋭い目で総司を見つめた。「嬢ちゃん、怪我はねぇか?」「は、はい・・」「気を付けて帰んな。」 男はそう言って背負っていた袋の中から赤いテンギ(髪飾り)を取り出すと、それを総司の美しい髪に結んだ。「あの、助けて頂いて、有難うございました!」 総司が男に礼を言った時、そこには誰も居なかった。これが、恋人達の運命の出逢いだった。「総司、お帰り。」「ただいま、母様。」「随分と遅かったね、何かあったのかい?」「何でもないわ。」「そうかい、それは良かった。」総司の養母・チュンスクはそう言うと、彼女の髪に見慣れぬテンギが飾られていることに気づいた。「あんた、そのテンギはどうしたんだい?」「命の恩人に貰ったの。」「そうかい。」 チュンスクは、美しく刺繍されたテンギが一目で高級品である事に気づいた。「風呂が沸いているから、冷めない内に入りな。」「はい。」 妓楼の外れにある浴室に入り、総司が着ていた服を脱ぐと、彼女の染みひとつない、雪のような白い肌が露わになった。 温かい湯に浸かりながら、総司はあの男から貰ったテンギを髪から外してそれを眺めた。細部に渡って美しい刺繍が施されているそれは、自分のような妓生(キーセン)の娘の髪ではなく、両班(リャンバン)の娘のそれを飾るのに相応しい高級品だと総司は気づいた。(あの人とまた会えるかしら?) そんな事を思いながら、総司は髪を櫛で梳き始めた。「おい、押すなよ!」「お前が押したんだろう!」「しっ、大きな声を出すなって、見つかるだろう!」 総司の入浴を塀の上から覗いていた数人の両班の子息達が小声でそんな事を話し合っていると、そこへ妓楼の用心棒・斎藤が通りかかった。「お前達、そこで何をしている?」「げっ、見つかった!」「早く降りろ!」彼らは慌てて塀から降りようとしたが、バランスを崩して地面に倒れてしまった。「どうしたのはじめさん、何かあったの?」「不埒な輩が、またお嬢様のお風呂を覗いていたので声を掛けたら、奴ら一目散に逃げていきました。まったく、腹立たしい限りです。」「そんなに怒らなくてもいいじゃない。」「お嬢様、服を着てください!」斎藤は総司が裸である事に気づき、慌てて彼女の身体を布で覆った。「ごめんなさい、うっかりしてしまったわ。」「まだ先ほどの輩が妓楼の辺りをうろついているかもしれませんよ?とにかく、油断は禁物です。」「本当にごめんなさい。」 そう言って笑った総司の背中には、醜い火傷の痕があった。 それを見た斎藤は、苦痛に満ちた表情を浮かべた。「はじめさん?」「いいえ、何でもありません、お嬢様。」「今夜のはじめさん、何だか変よ?」(わたしを変にさせたのは、貴方です、お嬢様。)にほんブログ村
2023年05月21日
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どの話も怖かったけれど、一番怖かったのは、「冥い追跡」かな。
2023年05月21日
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今回も面白かったです。
2023年05月20日
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久し振りに母が近所のスーパーで買って来てくれたので食べたのですが、カスタードクリームが少なくて、あっさりした味になっていました。卵不足で原料高騰している所為でしょうか?
2023年05月19日
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モナコのレースで颯爽と優勝するクイーンの姿が眩しい。シドとジョーカー、これから何か色々と絡みがありそうですね。それよりも、温泉卓球大会と、はやみねかおる先生の後書きに笑ってしまいました。
2023年05月19日
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ニースとモナコが舞台。このシリーズ、読む順番がごちゃごちゃになっていますけど、それでも読んでいて楽しいのが、カジノでのクイーンと探偵卿との勝負だったり、ジョーカーの秘められた過去だったりと、児童書でありながらミステリータッチなところが好きです。ジョーカーとシド、何か因縁がありそうですね。
2023年05月19日
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まさかのクイーンの偽者登場とか、序盤からぐいぐい引き込まれてしまいますね。某トーク番組のシーンにブラッククイーンが出ている場面を読んで噴き出しそうになりました。
2023年05月19日
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ジョーカー復活したぁ!でも小さくなっているw小さくなったジョーカーが筋トレに励んでいるイラストを見て萌えてしまいました。最後のクイーンの誕生日パーティーの、皇帝からの誕生日プレゼントに笑ってしまいました。怪盗クイーンシリーズは個性的な登場人物が多くていいですね。
2023年05月19日
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ジョーカーが死んだという、衝撃のラストに読んだ後絶句しましたね。
2023年05月19日
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クイーンが世界を救いましたが、ジョーカーとの漫才みたいなシーンは読んでいて楽しいです。
2023年05月18日
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不穏な感じで後編に続くのですね。
2023年05月18日
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今回も、面白かったです。
2023年05月18日
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ジョーカー、苦労人ですね。
2023年05月18日
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舞台が日本ということもあり、外国人のヴォルフからみた日本と、仙太郎とのコンビが良いですね。
2023年05月18日
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長編シリーズが完結した後、寂しくなりますね。はやみねかおるさんの作品は、面白くて時間を忘れてしまうほど夢中になってしまいます。
2023年05月18日
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ハワイの日本人移民に焦点を当てた作品でしたが、夢水清志郎と彼のご先祖様が交互になぞ解きをするシーンは読んでいて面白かったです。
2023年05月18日
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何だか塾の在り方というのを考えさせられる作品でしたね。
2023年05月18日
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初めて食べましたが、余りしつこくなく、美味しかったです。
2023年05月18日
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ドタバタの修学旅行編でしたね。
2023年05月18日
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グレート天野の正体がわかった時、思わず声を出してしまいそうになりました。
2023年05月18日
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失踪した作家の姿が、哀愁が漂っていましたね。
2023年05月17日
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夜光怪人の正体に驚きました。
2023年05月17日
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読みごたえがあるミステリーでした。このシリーズ、年齢関係なく、大人になって読んでも面白いです。
2023年05月17日
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リカの狂気が炎と化して私たちに襲いかかってくるかのようなラストでした。
2023年05月16日
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濃厚で美味しかったです。
2023年05月15日
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あまじょっぱくて、美味しかったです。袋開けたら、キャラメルの臭いがして驚きました。一度食べただけで満足かな。
2023年05月15日
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女性の生きづらさを、母と娘の視点から描いた作品。ラストはあっさりしていますが、後味が悪くなかった。けれど、この先大丈夫なの?と思ってしまう。
2023年05月13日
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新商品。チーズとカレーの相性が抜群で美味しかったです。
2023年05月12日
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ガーナを舞台にしたミステリー。呪術師が権力を持つ世界は、恐ろしいです。
2023年05月11日
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