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長い間闘病されていましたし、演奏活動もしていませんでした。いつこのときが来てもおかしくなかったし、覚悟もしていましたが遂に来てしまいました。 2月6日心不全で小澤征爾さんが亡くなりました。享年88歳。 小澤さんの業績をあげればきりがなく、私のような素人に彼の芸術を語る資格もないのですが、思い出話をひとつ。 クラシック音楽に目覚めたばかりの中学3年生のある日、学校の図書室で「僕の音楽武者修行」という本を見つけ、夢中になって読んだのが小澤征爾という指揮者を知るきっかけでした。以来、50年以上ずっと彼のファンであり、父と同世代であることもあって勝手ながら(音楽の)父と思っていました。私にとって小澤さんとは憧れでありアイドルであり目標でもありました。結局私自身は何も成し遂げることなくサラリーマン生活を終えてしまいましたが、仕事で苦しい時期に小澤さんの活躍ぶりを見ては自分を叱咤してきました。 かつてNHKの「100年インタビュー」という番組に出演した際、100年後の人たちにメッセージをと問われ小澤さんは「差別のない世界になっているだろうか」と答え、私は思わず涙しました。「世界のオザワ」と功なり名遂げた人がいまだに闘い続けているのは東洋人が西洋音楽をいかに表現するかといったこと以上に、西洋社会に根強くはびこる人種差別や偏見との闘いだったのです。その長く苦しい闘いこそが小澤さんの功績だと思います。その後に続く日本人の、いやアジアの演奏家たちが欧米で現在活躍していられるのも小澤さんという偉大なる先達のおかげであることは間違いありません。 音楽的なことはいずれまた書きますが、何よりもまず言いたかったのはこのことです。音楽家である以前に、日本人としてアジア人として人して素晴らしい、偉大なる巨星でした。 どうぞ安らかにお眠りください。長い間お疲れさまでした。そして、ありがとうございました。
2024年02月11日
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時折暑くなったりしますがとても過ごしやすい日々が続いていますね。ひところ肌寒かったり雨が続いたりと不安定な天候でしたが、ここしばらくは快適です。こうなると何だか無性に動きたくなりますよね。 私事ですが誕生日前後には必ずコンサートに行くことにしています。まあ自分へのご褒美ですね、今まで無事に過ごせたことへの感謝、これからも穏やかに生きて行こうという決心、そんな感じでしょうか。 今年はオペラに行きました。藝大でオペラを観るようになってからオペラへの抵抗感がだいぶ薄らいだように思います。若いときの毛嫌い、食わず嫌いも時が経てば平気になるようなものです。今回は昔もっとも嫌いだったイタリアオペラのひとつ、プッチーニの「トゥーランドット」です。 今回のお目当ては最近人気の指揮者アンドレア・バッティストーニ。一度生で聞きたかったのです。けれどオケは東京フィル、トゥーランドットとカラフ以外は日本人キャスト、果たしてこのグランドオペラの華がうまく咲くのでしょうか。 プッチーニ オペラ『トゥーランドット』<演奏会形式>(2015年5月18日(月))指揮:アンドレア・バッティストーニトゥーランドット(ソプラノ):ティツィアーナ・カルーソーカラフ(テノール):カルロ・ヴェントレリュー(ソプラノ):浜田 理恵ティムール(バス):斉木 健詞アルトゥム皇帝(テノール):伊達 英二ピン(バリトン):萩原 潤パン(テノール):大川 信之ポン(テノール):児玉 和弘官使(バリトン):久保 和範合唱:新国立劇場合唱団児童合唱:東京少年少女合唱隊 ほか コンサート形式は音楽をじっくり聞くのに向いています。豪華絢爛たる舞台装置も素敵ですが、オケの音と歌声に聞き惚れるのもまた一興かと。 舞台は照明をうまく使って場面の雰囲気をうまく伝えてましたし、少ない動きながら演技もありで長丁場を全く飽きることなく最後まで聴き、観ることができました。 トゥーランドットを全曲通して聞くのは実は初めてでしたが、冒頭の響きからごつごつした筋肉質の塊が噴出してきて、まるでオルフのカルミナブラーナみたい。続くオケの絶叫、不協和音などこれは完全に「20世紀の音楽」(1920年代の作品なので確かにそうなのですが)です。時折叙情的な甘く切ないメロディー、柔らかな響きなども聞かれますが、私にはオルフ、シェーンベルク(グレの歌)、リヒャルト・シュトラウス、ハリウッド映画音楽が聞こえてきました。プッチーニというとラ・ボエームの印象が強くて泣かせるメロディーを延々と聞かせる、ちょっと感情過多な作曲家だったのですが、こんな現代音楽すれすれなところまで来ていたことに今更ながら驚きました。 さてお目当てバッティストーニはというと、確かに凄い指揮者です。とにかく音がでかい(笑)。サントリーホールはよく響くホールなので音が飽和状態でした。その叩き付けるようなフォルテは豊かで明晰な響きであり、時に驚怖を、時に熱狂を客席から自在に引き出していました。それだけでなく弱音でも決して痩せることがないのには正直驚きました。これが日本のオーケストラとはちょっと信じられませんでした。それでいながらベースラインもきちんと聞こえるし、弦楽からビロードのような響きを引き出す、やはりただ者ではありません。 音楽の運びはダイナミックでストレート、カンタービレにもう少し自在さが欲しいところもありましたが、若干27歳ですよ。この衝撃はラトルが初来日したとき以来です。周囲がうまく育てあげれば将来大物になれるでしょう。 歌手について、カラフのヴェントレさんは不調、声が出てませんでした。それでも有名なアリア「誰も寝てはならない」では見事な歌唱、拍手喝采でした。トゥーランドットはいまいち存在感不足、それに比べてリューの浜田さんは可憐でいながら芯の強さも持つこの役を見事に歌い演じきりました。リューが死ぬ場面では思わず涙がこぼれました。 彼女に限らず、日本人キャストの素晴らしさには感動を覚えました。歌声だけでなく声で演じると言いますか、見ていて聞いていてほんとに楽しかった。あと合唱の威圧的な響きも凄かった。 終幕のエンディングはプッチーニの死により弟子のアルフォンソが書いたものですが、ちょっとせっかちな印象があるものの(特にトゥーランドットの改心が早い)、最後に「誰も寝てはならない」のメロディーで皇帝の栄光を讃える大合唱+オケの熱演にはカラダが震え、脳天に何かが突き刺さるような痺れるような感覚で、息ができないほどでした(大げさではなく、あの場にいた人ならわかってもらえると思います)。その圧倒的な演奏の前では筋書きが不自然だの、弟子の書いた部分が不出来だのといったことはどうでもいいことのように感じました。 最後の音が鳴り終わった途端に大ブラボーの連続、いつまでも鳴り止まない大拍手が今回の公演の成功を何よりも物語っていたのではないでしょうか。 バッティストーニ、楽しみな指揮者です。またオペラ行きたいなあ。[CD] アンドレア・バッティストーニ(cond)/レスピーギ:交響詩≪ローマの祭≫≪ローマの噴水≫≪ローマの松≫(ハイブリッドCD)バッティストーニの名を日本に根付かせた、レスピーギ。日本のオケとは思えませんよ。[CD] アンドレア・バッティストーニ(cond)/マーラー:交響曲第1番≪巨人≫(ハイブリッドCD)東フィルとの第二弾はマーラー。未聴ですがこれも凄そうだなあ。【送料無料】 Verdi ベルディ / 『ファルスタッフ』全曲 メドカルフ演出、バッティストーニ&パルマ・レッジョ劇場、マエストリ、ヴァシレヴァ、他(2011 ステレオ)(日本語字幕付) 【DVD】プッチーニはないですが、ヴェルディのDVDは何点か出ています。(参考)小澤さんがパリで振ったトゥーランドット。画質は悪いですが、これも大変な名演です。DVD出ないかなあ。
2015年05月23日
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桜も散り始めたというのに先週からの寒さに身が縮んでしまいますね。なかなか来ない春の陽気もいつかは必ずやってくることを思えば、この寒の戻りもしばらく我慢ができそうです。 以前よりファンであった高関さんがついにというかやっとというか、この4月より在京オケの常任指揮者となりました。これで群馬まで遠征に行く必要がなくなります(笑)。オケは東京シティフィル、しばらく宮本さんが音楽監督を務めていましたね。この比較的若いオケの常任になるということで4月11日の就任披露演奏会はとても楽しみにしていました。 東京オペラシティコンサートホール(タケミツメモリアル)はシューボックス型ホールですが、高い天井に謎のピラミッドが吊るされているユニークなホールです。音響的にはデッドを予想してましたが実際はかなりよく響くようです。低音のたっぷりした響きに高音はマイルドに響いてなかなか好ましいブレンド具合です。今回は1階席で聞かせていただきました。 演目はスメタナの「我が祖国」全曲。渋い、渋すぎる選曲です。パンフのご本人の弁によれば、重要な演奏会では必ず取り上げてきたとのこと。それだけ自信を持って振れるということでしょう。 新しい指揮者への期待からか、会場もほぼ満席状態でした。比較的お年を召した方々が多かったような、でも若い学生の姿も見受けられましたよ。 舞台には所狭しとメンバーが乗っています。当然ヴァイオリンは両翼配置、ベースは上手側です。 演奏の詳細に私ごときが触れることはできませんが、たいへん明晰で要所を得た的確な指示により、表現意欲の旺盛と後半からの盛り上がりが素晴しく、終曲のラストで高らかに冒頭主題が鳴り渡るところでは思わず胸が締め付けられてしまいました。ほかのお客さんも多いに満足したようで、この新しい指揮者の門出にふさわしい万雷の拍手と熱気でした。 私も思わず定期会員になりましたよ。プログラムも意欲的で、シティフィルなかなかやるなあと思います。ティアラこうとうも行かないとなあ、今年は忙しいぞ 任期は3年らしいですが、是非長く続けてマーラー全交響曲演奏なんてやってほしいな。 まずはご就任、おめでとうございます!>高関さん【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤】連作交響詩 《我が祖国》 全曲 アンチェル / チェコ・フィル [ スメタナ(1824-1884) ]我が祖国と言えばチェコフィルはあまたの名盤を生み出していますが、ここは悲劇の指揮者アンチェルで。昔のチェコフィルの響きが聞かれます。【送料無料】 Smetana スメタナ / 『我が祖国』ほか クーベリック / ボストン交響楽団 ほか 輸入盤 【CD】この曲の定盤。ボヘミア出身の指揮者クーベリックと小澤さんの手兵だったボストン響の機能性に優れた演奏で。
2015年04月13日
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ジャンヌ・ダルク:ニーナ・ラウチオ(S)シャルル7世:オレグ・クリコ(T)アグネサ:マリア・ガヴリーロフ(S)枢機卿:グレブ・ニコリスキー(B)リオネル:ウラジーミル・クルーチコフ(B)デュノア:ミハイル・クルーチコフ(B) ほかアレクサンドル・ラザレフ指揮ボリショイ交響楽団・合唱団(1993年6月ボリショイ劇場) レーザーディスク(LD)をご存知だろうか。DVD以前に映像媒体と言えばビデオテープとこれだった。もっともLDに録画することはできないが。CDが世に出て間もなく「絵の出るレコード」(30cmの円盤でLPと同じサイズだった)として発売された。しばらくVHDと競っていたが、CDと同じく非接触で劣化が無い、解像度が高いということでLDが世の中に広まった。普及したのは80年代後半だったと思う。 画面の美しさ、音も当初はアナログだったが新譜はCD並みの高音質で重宝した。特にオペラやマーラーなどの長時間なライブは楽しんだ。 その後、90年代後半にDVDが普及して、重くて収録時間が短いLDは廃れてしまった。ただ未だにDVD化していないソースもあり、LDプレーヤーを何とか復活させたいとは思っていた。が何十年ぶりに動かしてみるとトレイすら出て来ない。LDプレーヤーはすでに生産終了だし、困った。 最近友人よりLDプレーヤーを譲ってもらった。ありがたい。持っているソースをかけるとデジタル映像に比べれば解像度は低いものの十分な画質だし、デジタル出力からDACにつなげば音質だって何の問題ない。 廃れたLDソフトは中古屋でも格安だ。何しろプレーヤーの生産が終わっているのだから。1枚500円なんて中古CDより安いじゃないか。それで見応えあるオペラやコンサートが見ることが出来る。なんて素晴しい! 今回は新たに購入した1枚。これはDVDでも日本語字幕付きで出ている。 チャイコフスキーのオペラというと「エフゲニー・オネーギン」「スペードの女王」が有名だが、実際オペラ好きでもあんまり聞かないだろう。ロシアオペラならムソルグスキーやボロディン、リムスキー・コルサコフのほうが面白い。チャイコフスキーのオペラはロシア臭さよりはイタリアオペラに近い。だがよく聞くとやはりロシアっぽい(チャイコフスキー節というべきか)という中途半端な味わいなのだ。 この「オルレアンの少女」(ジャンヌダルクのこと)はグランドオペラを目指した作品。非常に劇的かつ迫力がある。今回のLDはチャイコフスキー没後100年を記念してボリショイ劇場が取り組んだ舞台。広い舞台に手の込んだ装置を存分に活かした豪華な演出は見ごたえ抜群。加えてラザレフの重厚かつ叙情性に溢れた音楽作り、歌手たちの奮闘ぶり(タイトルロールがちょっと硬いかな)はさすがお国ぶりを発揮している。 それにしても38歳のチャイコフスキーの自信作かつ初演でも大成功した作品なのに、今ではすっかり廃れてしまったのはあまりに惜しい。難しいことを言わなければとても楽しめるのに。歴史ドラマにジャンヌの恋がからんで、最期の火あぶりに至る筋書きはちょっと面白い。敵将に恋したジャンヌは神の声が聞こえなくなり、救国の少女が一転魔女扱いされてしまうのだ。ここにもチャイコフスキーのテーマである「許されぬ愛の苦悩」が形を変えて現れている。 滅多に演奏されないこういう作品を聴き観ることができるのも盤漁りの醍醐味というもの。同時に購入したプロコフィエフの「炎の天使」もサイケで良かった、と記しておく。【楽天ブックスならいつでも送料無料】チャイコフスキー 歌劇≪オルレアンの少女≫(ジャンヌ・ダルク)全曲 [ ザ・ボリショイ・オペラ ]LDだと2枚組だがDVDは1枚。こういうところはDVDはいいよねぇ。【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤】『炎の天使』全曲 D.フリーマン演出、ゲルギエフ&マリインスキー歌劇場、ゴルチャコーワ、レイフェルクス、他(1993 ステレオ) [ プロコフィエフ(1891-1953) ]これは日本語字幕がないDVD。LDではマリンスキーシリーズで出てたんだけどねえ。
2015年01月10日
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大晦日は日中暖かでしたが、元旦は冷え込んでます。実家の方では吹雪いているそうです。 旧年の音楽関係の大きなニュースと言えば、アバド、マゼールの死去はたいへん残念でありました。またクラシックではありませんが、パコ・デ・ルシアの死は青春の思い出と重なり非常にショックなニュースでした。 個人的にはよいコンサートも多く聞けて充実した1年でした。特に学生オケの奮闘ぶりに将来のクラシック界に希望が持てました。もはや衰退した音楽と言われてますが、伝統というものはそう簡単に滅ぶほど脆弱なものではありません。長く生き延びてきた底力があります。 最近のヨーロッパから発信される若手の活躍は目覚ましく、これまでの巨匠たちと違うフレッシュで活き活きとした演奏に新たな表現の可能性と喜びを感じ取りました。 ドゥダメル、ネゼ=セガン、ペトレンコ、ソヒエフなどの欧州の周辺出身のひとの活躍に加え、バッティストーニやクルレンツィスなど活きのいい指揮者も出てきました。 ピアノではリシッツァやユジャ=ワン、ファヴル=カーン、アリス・オットーなど美人だけどめちゃうまいひとがいっぱい出てきて目と耳を楽しませてくれています。他の分野でも若手の活躍が目覚ましく、もう巨匠たちの盤を漁ってる場合ではありません。 日本のクラシック音楽も昔はメカニカル一辺倒だった時代から心の表現へと変わりつつあるように思います。日本人が西洋音楽を奏でることにどれだけの意味があるのか、小澤さんの根源的な質問は若い世代へ確実に受け継がれ、その回答も見いだされていようとしています。近年の日本人演奏家たちが欧州で普通に活躍しているのもその現れと言えましょう。 サイトウキネンフェスティバルも今年より名称をセイジ・オザワ松本フェスティバル(OMF)と変更するそうです。いろいろ言い分もあると思いますが、サイトウキネンが故斎藤秀雄の遺志を確認する場なら、OMFは若い人へその遺志を受け継ぐとともに斎藤の弟子たちがそれぞれの現場で得た経験や知恵を伝える場であろうと推察します。その代表としてセイジ・オザワの名が冠としてあがったと思います。 もちろん名前が変わったからと言って質まで変わってはフェスティバルの意味がないでしょう。これから新しい名称によりどんな演奏が繰り広げられるのか、楽しみですね。 今年一年、みなさまにとって良い年でありますように。良い音楽が聴けますように。【楽天ブックスならいつでも送料無料】レスピーギ:ローマ三部作 [ アンドレア・バッティストーニ、東京フィルハーモニー交響楽団 ]日本のオケもここまで来たか!熱狂と興奮のレスピーギ。しかもそれだけじゃないところがこの人の凄いところ。【楽天ブックスならいつでも送料無料】モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」(全曲) [ テオドール・クルレンツィス ]今まで聞いたことの無いフィガロ。ぶっ飛んでます!この勢いでダ・ポンテ3部作を録音するそうです。【楽天ブックスならいつでも送料無料】ヴァレンティナ・リシッツァ:ピアノ・リサイタル [ (クラシック) ]今やデッカからデビューしたYouTube出身の(笑)リシッツァ。この盤の「死の舞踏」はピアノ独奏版。冒頭の響きから圧倒されます。タールベルクでは腕が3本あるでしょ。【送料無料】 Tchaikovsky チャイコフスキー / チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番、ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ファヴル=カーン、G.ノヴァーク&ブルターニュ管 輸入盤 【CD】はっきり言います。チャイコのピアコンでアルゲ○ッチのCDはもう要りません!ユジャやアリスはすでにいっぱいCD出てるので割愛します(笑)
2014年12月31日
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曇った日々が続きますね。今年は野菜も米も日照不足や大雨や台風やらで収穫量が少ないらしい。これからそんな影響をじわじわ感じてくるのでしょうか。 さて、今日は久しぶりにマーラーの第9番を聴きました。暑い夏にマーラーは相当鬱陶しいので聴かないんですが、これだけ肌寒い日が続くと聴いてもいいかなと。手元に在る録音物から本日のチョイスはラトル=ウィーンフィル盤です。 この盤はラトルがウィーンの定期演奏会デビューした際(93年12月)のライブ録音です。このときラトルはヴァイオリンを対抗配置(第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが左右に分かれる、昔の配置です)を要求したがオケ側が拒否(大人げない)、一時はラトルが演奏会をキャンセルするとまで言ったとか言わないとか。結局対抗配置で落ち着き、演奏会は大成功。以降、ラトルとはベートーヴェンの全集を作成するなど蜜月関係へと発展して行きます。 この演奏もしばらくぶりで、聴いてみると、しなやかな弦楽に甘ささえ感じる木管群、パワフルながら決してでしゃばらない金管群とウィーンフィル特有な美しい響きの上に、リズムの軽やかさ、テンポの切り替えのシャープさにラトルらしいきびきびした音楽運びがうまく乗っかって、重くなることのない美しいマーラーに仕上がっています。 ラトルはレコーディングデビュー時にマラ10をボーンマス響と録音しています。おそらく彼はマラ10の視点からマラ9を振っていると思います。所々に10番を予見させる響きを作り出しているからです。これは面白い解釈でした。 この後ラトルはベルリンフィルとこれ以上ないくらい精緻なマラ9をベルリンフィルと録音しています(07年10月)。演奏時間だけ見るとベルリンフィル盤のほうが若干長くなっていますが、実際聴いてみますとウィーンフィル盤のほうがゆったりした印象を持ちますから不思議です。 さて今回久しぶりにマラ9を聴いて、この先マーラーが長生きして交響曲を書き続けていったら、どんな曲を書いて行ったのだろうと空想を巡らしました。現在我々は第10交響曲を復元した形ですが耳にすることができます。従って9番と10番から未来の11番、12番を想像できるのではないでしょうか。 9番に時折聴かれる無調的な硬質な響きは10番になると多用されているように感じます。あのまま進めばシェーンベルクのような、あるいはベルクのような絶叫と混乱と狂気が混ざった響きになっていったのでしょうか。 マーラーは1911年に亡くなりましたから1914年に勃発した世界大戦を知りません。ヨーロッパ文明の最期の輝かしさ、栄光と繁栄を信じたまま亡くなった、幸せな知識人だったのです。 そう考えると10番に聴かれる不安定さは安定した根底(ヨーロッパ音楽の伝統)があるからこそできたのではないでしょうか。その根底が崩れ拠り所がなくなってしまう怖れからシェーンベルクは12音技法を新しく体系化したのですが、マーラーが長生きしていたらやはり同じように音楽システムを新しく作ろうとしたのでしょうか。 結局歴史にifはない、というようにマーラーは調性という伝統の音楽システムのなかでどこまで響きを拡大できるか、その限界点を提示したというのが歴史的使命だったのかもしれません。 ラトルはクラシックはもちろん現代音楽やジャズ、ロックなどを知り楽しんでいる現代の演奏家です。対するウィーンフィルも現代のオーケストラながらクラシックの伝統を継承する立場です。同じ現代を生きながら微妙に異なる立場や背景の差異を感じながら、この演奏は我々にある不思議を語っているように思います。 それは「それぞれの時代を生きる」ということです。マーラーの生きた時代、ウィーンフィルが生きてきた時代、ラトルが生きようとしている時代、それぞれがいまここで重なっている不思議。 これがクラシック音楽という昔の音楽を現代で聴く面白さだと思うのです。【楽天ブックスならいつでも送料無料】マーラー:交響曲 第9番 R.シュトラウス:メタモルフォーゼン [ サイモン・ラトル ]本日聴いた演奏です。ライブゆえか音像が小さいのが玉に傷。でもいい演奏です。【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤】交響曲第9番 ラトル&ベルリン・フィル [ マーラー(1860-1911) ]参考までにベルリンフィルとのマラ9。精緻の極限までいった堂々たる演奏です。が、いまのこのコンビなら更なる高みを目指せると思います。
2014年08月31日
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最近はすっかり涼しくなっていつの間にやら秋の気配ですね。しばらくぶりの更新です。 さて、今年のサイトウキネンフェスティバル松本ではついに小澤さんがお元気な姿で渾身の演奏を繰り広げたようです。(以下、朝日新聞デジタルより転載)松本市で開催中の「サイトウ・キネン・フェスティバル(SKF)松本」で、メーンプログラムのオーケストラ・コンサートが29日夜、キッセイ文化ホールで開かれた。ベルリオーズ「幻想交響曲」を指揮する総監督の小澤征爾さんが舞台に姿を現すと、観客から拍手が送られた。 SKFのオーケストラ・コンサートで小澤さんが指揮するのは4年ぶり。幻想交響曲は2010年にも演奏されたが、このとき小澤さんは腰痛で降板し、代役が指揮した。 同コンサートは31日、9月2日にも公演が予定されており、チケットは完売している。http://www.asahi.com/articles/ASG8Y41QJG8YUOOB008.html ファンとしてはこれほど待ち望んだ日はありません。幻想は小澤さんのオハコの曲、特にサイトウキネンオーケストラ(SKO)とは2007年に松本ライブ、2010年にニューヨークライブをそれぞれ録音しています。2007年盤の息詰まるような高揚感と迫真性、2010年盤ではさらにドラマティックな表情が加わり(しかもともに精緻なアンサンブルは相変わらず)、有名なミュンシュ盤をも超えたと確信しています。 今回の幻想では更なる高みを目指した演奏になっていると思われ、録音されていれば是非聞いてみたいものですね。 コンサートはあと2回あるようなので、全公演をお元気に乗り越えることができるよう、心からお祈り申し上げます。とは言うものの無理しないでほしいですね。今の小澤さんならかつてのシューリヒトのように目だけで指揮できるのですから。 来年はベルリオーズの「ベアトリスとベネディクト」という晩年の短いオペラ(といっても約100分ぐらいかかる)を上演するとか。本格的なプログラムへいよいよ取り組むようです。これも今から期待できそうですね。【楽天ブックスならいつでも送料無料】【もう1枚でポイント10倍】ベルリオーズ:幻想交響曲 Op.14 [ 小澤征爾 ]若き小澤さんの記念すべき幻想初録音(1966年12月)。トロント響はがんばってるけど、小澤さんの要求に応えきれていない感じがします。しかし解釈は根本的に変わってないことに驚きです。【楽天ブックスならいつでも送料無料】ベルリオーズ:幻想交響曲 ラヴェル:ボレロ 亡き王女のためのパヴァーヌ [ 小澤征爾 ]ボストン響の音楽監督に就任して最初に取り組んだのがベルリオーズでした。ミュンシュ先生の影響が残る名門オケに、音楽構造を明確に提示する(例えば低弦の動きを「うねり」とせず、はっきり弾かせるなど)小澤さんの指揮が見事な効果をあげています。私にとって長らく小澤さんの代表盤でした。1973年2月録音。【楽天ブックスならいつでも送料無料】ベルリオーズ:幻想交響曲/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ [ 小澤征爾/サイトウ・キネン ]上記のSKOとの2007年9月録音。特に第4楽章のラストで聞かれるティンパニーの裏打ちの正確さに驚き、しかもこれがライブ録音ということにさらに驚きました。ベルリンフィルの名ティンパニスト、ゼーガスが加わってからSKOはより迫力が増したと思います。【送料無料】 Berlioz ベルリオーズ / 幻想交響曲 小澤征爾&サイトウ・キネン・オーケストラ(2010) 【SHM-CD】上記のSKOとの2010年12月録音。小澤さんを育てたアメリカへの恩返し公演とおそらく考えておられたのではないでしょうか。幻想に限らず、このニューヨークライブシリーズは何か特別な感情が支配しています。2007年盤より若干精緻さに欠けるものの熱気と劇性においては比類なく、古今東西最高の幻想と言って良いでしょう。
2014年08月30日
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激暑な日々が続いています。体力消耗の中、風邪なのか咳が止まらず苦しんでいます。 マゼール氏が亡くなってそろそろ1ヶ月が経とうとしています。もっと早くにコメントしたかったのですが、仕事の方が忙しかったのと、未だに信じられない思いもあってなかなか筆が進みませんでした。 私がクラシックを聴き始めた頃はマゼール始めアバド、小澤さん、メータと新世代の指揮者が次々とレコードを出していて、カラヤンやベーム、バーンスタインの御三家に追いつけ追い越せの状態でした。なかでもメータはレコード会社のプッシュが凄くて「次代の帝王」というキャッチコピーでほぼ毎月レコードが出てた気がします。 マゼールはメータのような人なつこい顔つきじゃないし、かっこいい指揮スタイルでもなかったせいか、私の周りでも人気は今ひとつでした。 小澤さんとマゼールの付き合いは古くて、ブザンソンコンクールの頃から。コンクール以前にマゼールがウィーンでラヴェルの「子供と呪文」をやったのを聞きに行き、楽屋へ押し掛けて挨拶したのがきっかけらしい。その後、ブザンソンでは客演指揮で来ていて(審査員として?)、課題曲である「牧神の午後への前奏曲」を我流で振った小澤さんに対し「これはどう勉強したのか?」と聞いたらしい。「どうやってもなく、スコアを自分なりに研究したんだ」と言った所、「お前は妙な指揮者だ」「お前の(指揮)テクニックは変だ、日本ではそういうのが流行ってるのか?」と。それ以来の仲らしい。 ところが春樹本にはアバドのことは書いてあってもマゼールのことは一切触れていない。 お互いライヴァル意識を持っていたのだろうか、二人の録音歴を見ると奇妙に一致しています。マゼールが録音するとそれからしばらくして小澤さんも録音したり、その逆もあり。以前、火の鳥について書いたことがあったが、小澤=パリ管の録音の下敷きは間違いなく、前年録音のマゼール=フランス国立管盤と思います。他にもベルリオーズのロメオとジュリエット、シェラザード、惑星などなど。。。 この二人はヨーロッパで音楽を学んだわけではない、いわば傍流どおしです。特にマゼールはその後、誰かの弟子になったわけでもない「妙な指揮者」だ。記憶力、絶対音感は桁外れの彼は己の力を信じてのし上がって行きました。小澤さんはカラヤン、バーンスタインさらにミュンシュの弟子になり、特にカラヤンからはコンサートプログラムのことまで細かく指導されてたみたいです(意外と面倒見がいい)。ヨーロッパでの足場はカラヤンがお膳立てしてくれたと言っていいようです。 個人的には、昔フランス国立管との来日公演でドビュッシーの「映像」を指揮台の上で跳ね上がりながら指揮していたのを覚えています。またメシアンの「主イエスキリストの変容」の日本初演を手がけてテレビで放映されてました。その頃の私にメシアンのカトリック教的神秘はさっぱりわかりませんでしたが、とてつもない何かを聞いたという実感だけはありました。(途中寝てましたが) マゼールの録音については次回あらためて書きたいですが、ライブと録音がこれほど違う人もなかなかいないんじゃないか。また86年に国連難民支援チャリティコンサートを開いたりと意外にいいひとだったりします。 まだまだその活動全容が見えて来ないけれど(というより多すぎて整理できない)、これからも折に触れて書いて行きたいです。【ポイント10倍】新品未開封【CD】R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」、交響詩「マクベス」マゼール [SHM-CD][UCCG-90450]後年のバイエルンとの再録音よりウィーンフィル盤を取ります。この盤もまったく人気がありませんが、シュトラウスの複雑なスコアを相変わらずの明晰さで腑分け、それが嫌みにならないウィーンフィルの豊かな響きと、実に面白い録音だと思うんですがねえ。
2014年08月07日
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ずっと雨続きでしたがしばらくぶりの梅雨の晴れ間でほっとします。鬱陶しい雨天続きは気持ちも沈めてしまいます。やはり日差しがあると気持ちも明るくなりますね。 昨夜は芸大フィルの定期演奏会でした。指揮は尾高忠明さん。ラフマニノフの第2交響曲やブリテンの戦争レクイエムなど、このコンビでの名演奏に接し今回も期待していました。 プログラムは渋すぎる内容です ヴォーン・ウィリアムズ タリスの主題による幻想曲 ディーリアス 「村のロミオとジュリエット」〜楽園への道 ウォルトン 交響曲第1番 いくらイギリス音楽に造詣が深い尾高さんのコンサートでもこれは渋すぎでは?と思いましたが、案の定、お客の入りがよくありませんでした。6割程度かな? ディーリアスかVWの協奏曲にしていれば、あるいはエルガーの「コケイン」か「南国にて」だったら、などという勝手な想像もしたくなってしまいます。それもまた楽しいのですが。 タリスは凝った弦楽オケの曲で、通常の弦楽オケに各楽器二人ずつの小アンサンブルとカルテットの3つの編成が時に同時に時に別々に時に往還しながら、曲が進んで行きます。これは録音を聴いてるだけではわからなくて、聴きながら見るに限ります。曲自体は主題をそれぞれのアンサンブルで交わしながら紡いでいく感じですが、全体としては美しい響きと寄せては返す波のようなダイナミクスを味わう曲ではないでしょうか。日本の弦楽は美しいけど細身な響きですが、昨夜の芸大フィルは分厚い響きを聴かせてくれました。 ロミオのほうは割と有名な曲ですが、楽園という宿屋に放浪中の二人が向かう場面の音楽で、日本的に言えば「道行き」です。たいへん繊細で美しい音楽ですが、これから二人が向かうのは死(楽園という宿屋名もまた皮肉ですねえ)ですからなんともせつない音楽でもあります。 ウォルトンの交響曲第1番をライブで聴けるとは思ってなかったので楽しみにしてましたが、結果は想像以上の出来映えで、これはちょっと事件ではないでしょうか。 第1楽章のリズム動機のかっこよさ、続く主題も勇ましく、しびれっぱなしです。第3楽章までの何だか晴れない鬱屈した気分はこのメランコリックな楽章で頂点に達し、聞き手を苦悶の底に陥れます。 ところが最終楽章ではそんな気分とは正反対の、エネルギッシュな音楽が延々と続く。それは何かを必死で追い求めるような、勝利を確信した正義のヒーローが敵をばったばったとなぎ倒しているような、ひたすら活力ある音楽です。そろそろ終わるのかと思えばまだ続く、このしつこさ。初めて聴いた人はもう早く終われと思ったかもしれない。 この曲の印象を一言でいうと「やたらうるさいシベリウスの5番」、シベリウスファンなら聴けると思います(たぶん)。 尾高さんも「疲れる曲です」と言ってたように、オケにとっては体育会系な曲です。めったに聴けない曲を最高の演奏で聴かせていただき、昨夜はほんとに幸せでした。芸大フィルの皆様、尾高さん、ありがとうございました。 最後に、もっとイギリス音楽を聴きましょう!【楽天ブックスならいつでも送料無料】【CDポイント3倍対象商品】Andre Previn RCA Years::ウォルトン:交響曲第1番 ヴィオラ協奏曲 [ プレヴィン/ロンドン響 ]若き日のプレヴィンによる録音。代表作ヴィオラ協奏曲もついてお得かも。【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤】交響曲第1番、ベルシャザルの饗宴、ヴァイオリン協奏曲、ヴィオラ協奏曲、他 ウォルトン&フィルハーモニア管、メニューイン、他(2C [ ウォルトン、ウィリアム(1902-1983) ]やはり作曲者自演盤も聴いておきたい。メニューインのソロも見事!
2014年06月14日
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3/11が日本人の忘れてはいけない日になって3年経った。その間、被災地のケア、原発問題、復興の問題と山積された問題がマスコミを賑わせた。私はそれを見るごとに「なるほど、政府は、東電は何をやっているんだ」と憤りを覚えたものだ。 でも3年経ち、少しばかり様子が変わってきたように思う。災害直後にはコンビニから食料が無くなり、その後もパン類が1週間以上現れなかった。すべては被災者のために、と我慢したものだった。今はまったく以前と変わらずコンビニにもスーパーにも物があふれている。それを当然のように受け止めている自分がいる。 最近ブーニンのドビュッシーをよく聞く。ドイツグラモフォンへのデビュー盤だ。これは手放そうと思って聞いてみたところ、意外と良かったので手放せなくなってしまったのだ。 ブーニンが1985年、ショパンコンクールで優勝するや、日本で大ブームになった。NHKがショパンコンクールの模様を放送したせいだと思う。どんな難曲も軽々としかも実に楽しそうにスイングした演奏、クラシックの堅苦しいイメージを払拭させるに足るイケメン、ピアノの貴公子ともてはやされたものだった。 ご本人は至って真面目に自分の音楽が受け入れられていると勘違いしていたかもしれない。そのうち洗足学園の講師になったり、よせばいいのに協奏曲の弾き振りまでやっていた。 心ある評論家はブームに乗らずしっかり勉強すべき、みたいな苦言を呈していたが、ご本人は何事も経験と思っていたのだろうか。果たしてあのブームは芸の肥やしになったのかどうか。 彼のドビュッシーは来日公演(のテレビ番組)でのアンコールにトッカータを弾いたとき、メインのショパンより煌めきとリズムに切れがあり、これはいいと思った。彼のメカニカルな技術とロマンティックな表情付けがドビュッシーに合うのではないか、と。さすがドイツグラモフォンもかれの才能を見事に把握し、ショパンコンクールの優勝者にドビュッシーを弾かせるという、荒技に出て成功している。 ただこの盤から聞こえてくるのは、日本の大ブームでも天狗にならず、ひたすら真面目に自己と向き合おうとしている青年の、孤独な背中だ。なんと清々しく、でもどこか寂しげでもあるこのドビュッシーを今聞いて、ブーニンのその後を思うとき、日本人の熱狂と忘れやすさと、本質をつかみ損ね、やたらとショパンを弾かせていた我々は猛省しなければならない。ブーニンは今も弾き続けているようだが、その活動ぶりはあまり聞こえてこない。 3/11を忘れてはいけないと言いながら、普段の生活ではすでに遠い出来事のように感じてしまう。マスコミは事あるごとに特集を組むが、まだ事故の本質にまでは至って無い気がする。そして復興への力強い鎚音が聞かれないまま、すでに3年も経過してしまった。[CD] スタニスラフ・ブーニン(p)/EMI CLASSICS決定盤 1300 395: J.S.バッハ: 目覚めよと呼ぶ声あり、他楽天にはドビュッシーアルバムがないため、バッハアルバムを。これも彼のロマンティックな歌の才能にあふれた盤です。
2014年03月11日
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また訃報です。 フラメンコギターの世界を世に広めた、偉大なるギタリスト、パコ・デ・ルシアが2月25日に亡くなりました。66歳とは早すぎます。NHK NEWS Webから転載。フラメンコギターの名手として世界的に知られるスペインのパコ・デ・ルシアさんが25日、滞在先のメキシコで死亡しました。66歳でした。パコ・デ・ルシアさんは兄とともにフラメンコギターを始め、10代のころからプロのギタリストとして活躍しました。スペイン南部の伝統的なジプシー音楽にジャズやブルース、ロックの要素を取り入れ、フラメンコ音楽の幅を大きく広げました。またジャズ・フュージョンギタリストのアル・ディ・メオラさんやジャズ・ピアニストのチック・コリアさんなど異なるジャンルの著名なミュージシャンとの共演も行いました。パコ・デ・ルシアさんは25日、滞在先のメキシコで突然体調を崩し、66歳で死亡しました。スペインの生まれ故郷では、町長が「文化の世界とアンダルシア地方にとって埋めようのない損失だ」とその功績をたたえるとともに、3日間、町全体で喪に服すことを決めました。フラメンコ音楽に大きな変革をもたらし、世界にその魅力を広めた名手の訃報にスペインでは悲しみが広がっています。 私がパコを知ったのは大学のギターサークルに入ってからでした。このサークルはラテン音楽が中心で、代々必ずフラメンコを継ぐ人がいました。彼らは「パコ最高〜!」と言っては録音から耳コピーして弾いていたものです。それまでクラシック一辺倒だった私にとってその音楽は衝撃的でした。 からだの中から沸き上がるようなリズム、パッション、野太い音、嘆き、悲しみ、、、そして超絶的なテクニック。クラシックの洗練された歌とは違う、野趣満点でありながら心に深くしみ込むそれは音楽の根源を知らしめているかのようでした。 自分もフラメンコを弾きたいと思ったこともありましたが、サークル内のクラシックの火も絶やしてはならないと(変な)使命感でクラシックギターを続けたのでした(今想えばちょっともったいなかった)。 それでもフラメンコのテクニックはスペイン音楽をやるときには役立ったし、リズムの考え方はファリャやアルベニス、ロドリーゴなんかを理解するのに重要でした。(6拍子を2つと3つに交互にアクセントを置くとか) パコの素晴しいところはフラメンコの世界だけでなく、フュージョンやジャズ、クラシックまでも手を伸ばしてチャレンジしたところです。そうやって伝統の世界に安住しない冒険者の姿をある人は批判し、ある人は賛美します。パコにとって音楽にジャンル分けは意味がなかったのでしょう。 今でも思い出すのは映画「カルメン」のワンシーン。ビゼーのカルメンをフラメンコ舞踏化して舞台に出すまでの映画ですが、ギターセクションにパコが出演していて、ビゼーの原曲を聴いてからおもむろにギターで同じ曲を弾き始める。それは既にフラメンコ化されていて、周囲はパコに合わせて伴奏、パルマ(手拍子)を始める。「天才ってのはこういうものか」と驚きました。 (もっともビゼーの原曲は「セギリージヤ」などフラメンコの種類を使っているから、まあやりやすいとも言える) 来日公演にも行ったし、レコードもすり切れるくらい聞きました。今でも時々取り出しては胸を熱くしています。本物の天才に言葉はいりません。ただ聞くだけ。それだけで、人間の深いところへ我々を連れて行ってくれます。そしてこの世に在ることの素晴らしさと悲しみを教えてくれるのです。生きる鼓動と流す涙、光と陰。彼もまた偉大なスペインの芸術家でした。 フラメンコの世界を知ることができたのは間違いなくパコのおかげです。 パコ・デ・ルシア(ルシアの息子)、ありがとうございました。 謹んでご冥福をお祈りいたします。[CD]PACODE LUCIA パコ・デ・ルシア/ENTRE DOS AGUAS【輸入盤】16歳のときの演奏(トラック2)から、大ヒット作「二筋の川」(トラック1)、スーパーギタートリオの「カストロマリン」(トラック11)など、これを聞けばだいたい網羅できます。[CD]PACODE LUCIA パコ・デ・ルシア/CONCIERTO DE ARANJUEZ【輸入盤】 アランフェスをパコが弾く!これだけでも衝撃なのに、結構大真面目に楽譜通り弾いてます。ちなみにパコは楽譜読めなくて、このとき初めて勉強したのだとか。駿河屋なら各種キャンペーンにエントリーするとポイント5倍以上!【中古】ジャズCD パコ・デ・ルシア アル・ディ・メオラ ジョン・マクラフリン/ザ・ギター・トリオ【05P24Feb14】【画】スーパーギタートリオのライブ。ギター小僧(かつても含む)必聴です!パコ・デ・ルシア/ライヴ 1974 【CD】これ!これ聞いて私は魂抜かれました(笑)。フラメンコがクラシックの殿堂スペイン王立劇場でコンサートやるってのは、たいへんな事件だったのです。このときパコは26歳。きれきれです。
2014年03月01日
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1989年にカラヤンが亡くなって、ベルリンフィルを誰が継ぐのかが大きな話題になった。小澤さんも候補のひとりだったが、マゼールがやる気満々でもう自分に決まったような雰囲気だったとか。順当にいけばアバドかマゼールだろうが、2回の投票でアバドに決まったそうだ。 ベルリンフィルの音を現代的というか軽くて反応の早い音に作り替えたが、オールドファンからの評判は悪いだろうなあ。このオケがもともともっているポテンシャルからすれば、現代音楽に挑戦するなど、アバド時代のレパートリーの拡大政策はもっともと思われる。ドイツを代表するオケから世界ナンバーワンのオケへ。これがアバド時代と私は考える。 ところが2000年に胃がんで倒れ、手術をしたものの復帰は無理と言われていたが、見事に復活。ここからアバド芸術の最も光り輝く時代へと移る。 復帰最初のヴェルディのレクイエムの映像を見て、私は痛々しさとショックを感じた。もう骨と皮だけのやせ衰えた姿だけではない。指揮ぶりには力がなく、あの若々しかったアバドがいっぺんに年寄りになってしまったからだ。だけど出てきた音楽が、なんと言う輝きと悲痛なまでに平和を願う気持ちの入り交じった名演であった。いつまでも終わらぬ戦争の告発。私にはそう聞こえた。 ベルリンフィル辞任後、2003年のルツェルン音楽祭でのマーラー「復活」は、思えばこの曲で国際デビューを果たした因縁ある曲ということもあって、たいへん見事な演奏だった。病気で一度倒れた人だから見える光があるんだな、と聞きながら思った。その後に続く、ベルリンフィルやルツェルンでのマーラー演奏はどれも素晴しく、悲しみだけではない生きる喜びがそこには充満している。希望、光と言ってもいいだろう。生きていることは素晴しい!そんなメッセージが伝わってくる。 晩年のアバドは演奏仲間に恵まれて、ほんとに幸せそうに見えた。ほんとは肉体的に苦しかったに違いないけど、演奏中の生き生きとした表情、あふれる音楽への愛情が堪らない。モーツァルトも素晴しいし、音盤化されてないけど2011年のベルリンフィルとの「大地の歌」は涙なくしては聞けない、現代最高の演奏だ。 最後に、小澤さんとは60年代にニューヨークフィルのアシスタントコンダクターとしてご一緒だったそうで、才能とともにその人柄の良さでみんなから愛されていたと語っていた(ニューヨークフィルのオーボエ奏者の娘とくっつけられそうになったとか)。 相変わらずアバドが嫌いなひともいるみたいだけど、音盤制作だけが指揮者の仕事じゃないから、そのうちいろいろライブ録音が出て、評価も変わってくることでしょうし、そう願いたい。 もう少し長生きして、たくさんいい音楽を聴かせてもらいたかった。 ご冥福をお祈り申し上げます。輸入盤 スペシャルプライスMahler マーラー / 交響曲第2番『復活』 アバド&ルツェルン祝祭管弦楽団 【BLU-RAY DISC】ブルーレイで聞くアバドの「復活」!これは名演です。【送料無料】【輸入盤】交響曲集(第29,33,35,38,41番) アバド&モーツァルト管弦楽団(2CD) [ モーツァルト(1756-1791) ]何の力みもない、とてもしなやかでひたすら美しいモーツァルト。【送料無料】 Mahler マーラー / 交響曲第8番『千人の交響曲』 アバド&ベルリン・フィル、ステューダー、オッター、ターフェル、他(2SHM-CD) 【SHM-CD】まだ病気前の録音だけど、この曲のスタンダードとも言える演奏。オペラチックだけど決して形を崩さない、このバランス感覚がアバドならでは、です。
2014年02月20日
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久しぶりのブログ更新が訃報から始まるのは気が重いけれど、自分にとってアバドという指揮者がどのような位置づけにあったのか、確かめる意味においてもやはり書かずにはいられない。 初めてアバドを聴いたのはおそらくマーラーの交響曲第2番「復活」の録音だったろう。昔のFM放送は偉くて新譜をばんばんかけてくれた。評判の録音だったから聴きたかったけど、LP2枚組は中学生の私には高かった。それで放送されるまで待ったのだった。 深夜、眠い目をこすりつつ聴いたその演奏は、それまで聴いていたバーンスタイン盤の劇的なそれとは異なり、実に美しかった。特に第4楽章でマリリン・ホーンが歌う「原光」に「これは女神の歌声だ」と思ったのを覚えている。続く第5楽章はバーンスタイン盤の阿鼻叫喚の地獄絵図とそこからの救済を音のドラマで表していたのに対し、整然とした語り口による論理と説得力と自信に満ちた輝かしいクライマックスを聴かせてくれた(まあそんな気がした)。少なくともそこには地獄も天国もなく、あるのは圧倒的な音楽の充実感、音楽の美そのものの感動があった。これはとんでもない演奏だと思った。 その後も順調にマーラーの録音を出しつつ、他のレパートリーも着々とこなししかもオペラの録音までどんどん世に問う様に、小澤ファンとしてはいささか羨ましかった。70年代後半、40代の小澤さんでもまだ交響曲全集もオペラの録音もなかったからだ。 プロコフィエフのスキタイ組曲「アラとロリー」の録音も鮮烈な印象だった。ほぼ初めてプロコフィエフを聴いたのだったが、圧倒的な音響のなかで、しかも実に精密に練られた演奏プランにいっぺんに好きになってしまった。たしか中古レコード屋で見つけてからしばらく、毎日聴いていたのではないか。先ほどの「復活」もそうだったが、シカゴ響のうまさには(当時はあまり気づかなかったが)舌を巻く。 さてその後もロンドン響やウィーンフィルから録音を次々出していたが、どうも日本の音楽雑誌ではあまり評判が良くなかった。アバドというと「あの優等生的な演奏」と誰もが書いた。「微温的」「面白みがない」などと書かれることもあった。実際聴くときっちりまとまったスマートで手際のよい演奏だが、確かにどこか教科書的と言えなくもなかった。ただアバド自身お好きなムソルグスキーやプロコフィエフでのキレの良さは抜群で、スタイリッシュかつコントロールされた音響ともども、かなりアバドの意思を感じた。(つづく)[CD] クラウディオ・アバド(cond)/マーラー: 交響曲第2番ハ短調 復活(マーラー没後100年記念/SHM-CD)今聴いても新鮮な「復活」です。輸入盤 スペシャルプライス【送料無料】 Tchaikovsky チャイコフスキー / チャイコフスキー:交響曲第6番『悲愴』、プロコフィエフ:スキタイ組曲、ベルク:『ルル』組曲、他 アバド&シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ 【DVD】楽天にはシカゴ響との旧盤がなかったので、2010年ルツェルン音楽祭のときのライブ録画から。往年のシカゴ響のキレはないが、この若いオケも健闘しています。
2014年02月16日
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続けての訃報で気が重くなってしまいます。 ヴァイオリニストの潮田益子さんが、5月28日、アメリカのマサチューセッツ州ケンブリッジで、白血病のため亡くなられました。71歳でした。1961年桐朋学園卒業後レニングラード音楽院に留学、1963年エリザベート国際コンクールに入賞。 1966年チャイコフスキー・コンクール第2位以来、世界中で演奏活動を続けていらっしゃいました。また、水戸室内管弦楽団、サイトウ・キネン・オーケストラの中心メンバーとしても活躍され、ボストンのニューイングランド音楽院教授として多くの後進を育てるなど教育活動にも力を入れておられました。 この経歴からもお分かりの通り、小澤さんとたいへん近しい方で、初期のサイトウキネンでは度々コンサートミストレスを勤められていました。例えばブラームスの交響曲第1番第2楽章のヴァイオリンソロや、ストラヴィンスキーの「ミューズを率いるアポロ」のソロは潮田さんです。水戸室内管のモーツァルト録音ではヴァイオリン協奏曲第5番のソリストでした。 協奏曲録音と言えば、1971年にまだ30代の小澤さんと20代の潮田さんが日本フィルとシベリウス、ブルッフを録音していました(EMI)。これは未聴ですが。 ともに早くから世界に出て演奏活動を続けてきた後輩であり同志であった潮田さんの訃報に、小澤さんもおそらく落胆されていることと推察されます。 あらためて、ご冥福をお祈りいたします。【送料無料】 Mozart モーツァルト / 交響曲第41番『ジュピター』、ヴァイオリン協奏曲第5番 小澤&水戸室内管、潮田益子(vn) 【SACD】現代風な切れよりは豊かに歌う、オールドスタイルなモーツァルト。潮田さんは常に真剣勝負を挑んでいるように聞こえます。【ポイント10倍】送料無料!!新品未開封【CD】イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲潮田益子 [FOCD-3284]これも未聴ですが、難曲に挑まれている姿勢が素晴しい。そしていつまでもお美しいです。【送料無料】シェーンベルク:浄夜 ストラヴィンスキー:ミューズの神を率いるアポロ [ 小澤征爾 ]サイトウキネン自慢の弦が楽しめる好アルバム。私の「無人島の一枚」と言ってもいいです。すばらしい!
2013年06月01日
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アンリ・デュティユーさん(フランスの作曲家)が、5月22日にパリで亡くなったそうです。97歳、大往生です。私がデュティユーの曲を聞いたのは結構遅くて、チョン・ミュンフン指揮のサンサーンス交響曲第3番のCDに併録されてた「メタボール」という作品でした。メシアン、ブーレーズとフランス現代作曲家には割と抵抗の少ない私ですが、なぜか聞かず嫌いという感じでした。聞いてみると実に美しい音響で、サンサーンスより聞いてしまいました。 さて、小澤さんも昔から付き合いがあり、小澤さんからの委嘱により作られ、ボストン響で初録音した「時の影」(1998年3月録音)や、2007年にサイトウ・キネン・フェスティバルで初演された「時の大時計」など、実際に手がけた作品も多い。メシアンとも違う独特の音響感覚(和声感覚?)がもたらす浮遊感が何とも心地よく、ゲンダイ音楽が嫌いな人でも意外と抵抗無く聞けるのではないでしょうか。 訃報に接し小澤さんからメッセージが出ていました。縁のあった方が亡くなるつらさが伝わって来ます。 心よりご冥福をお祈りするとともに、遅まきながら遺された作品を聞いていきたいと思います。【送料無料】デュティユー.時の影 [ 小澤征爾 ]30分に満たない収録には多いに疑問だけど、ボストン響の響きが美しい。【送料無料】小澤征爾/デュティユー:時の大時計このライブ直前にデュティユーが補筆したそうです。ジャケットはそのときの指示か?ルネ・フレミングも困った顔してる?(笑)これも短い曲で最後のトラックにフレミング、デュティユー、小澤さんのインタビューが録音されてます。
2013年05月26日
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1/5(土)13:00よりBS朝日で「サイトウキネンフェスティバル松本2012」よりダニエル・ハーディング指揮の模様が放送されていました。演目は、シューベルト交響曲第3番、R.シュトラウスのアルプス交響曲です。小澤さんによると、最後のタングルウッドで教えた二人のうちのひとりだそうです。もうひとりはクリスティアン・アメリンク(現在の新日フィルの監督)。ふたりは全く正反対な性格でアメリンクは真面目と言ってましたから、ハーディングは元気いっぱいのやんちゃ坊主だったのでしょう(笑)。シューベルトは古楽的アプローチというかまるでベートーヴェンみたいなアクセントの強い演奏。ところがアルプス交響曲は打って変わって、耽美的な演奏でした。この曲の「闇から始まって闇に帰る」鏡像構造を音量的にもテンポでも十分に表していました。特に気に入ったのは「日の出」と「日没」の美しさ、神々しさで、彼の耽美的なアプローチが最も成功していました。反面、登山途中の景観はもう少しゆとりのあるテンポでもよかったのでは。まあこれも曲の構造を示すためには仕方ないのかなあ。今回、管楽器のトップはほとんど外国人で、サイトウキネンオケをずっと聞いてきたファンとしてはいささかびっくりしました。当初の故斉藤秀雄先生を偲ぶという意図が薄らいできてはいないだろうか。このままでは「まつもとフェスティバルオーケストラ」(ルツェルンみたいな感じで)に発展的解散になっていくのかなあ。それにしてもホルンのバボラークのうまさはただ者ではありませんでしたね。今回のアプローチも彼なくしてはありえなかったでしょう。終わった後、ハーディングがそっと目尻を指で拭ったのが印象的でした。この演奏、CD化されないかな。(笑)Strauss, R. シュトラウス / アルプス交響曲、他 小澤征爾&ウィーン・フィル 【CD】小澤さんがウィーンフィルを振ったアルペン。猛烈な音響と分厚いオケ、けれどとても爽やかな後味。これが小澤=ウィーンフィルの味なんですねえ。これ以降このコンビでR.シュトラウスの録音が出てないのが残念です。
2013年01月09日
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明けましておめでとうございます。だいぶ放置していました。昨年はいろいろありましたが、今年こそは更新し続けていきたいです。よろしくお願いします。m(__)mさて、小澤さんはすっかり活動休止中ですが、サイトウキネンフェスでは監督として後進の指導にあたっていたようですね。「火刑台のジャンヌダルク」ではカラヤンの娘イザベルさんを迎えて師カラヤンとの約束を果たすとともに、山田和樹を指揮者として採用して経験を積ませるなど、次世代の育成にも目配せしていました。ジャンヌはやはり小澤さんもやりたかっただろうなと想像に難くありませんが、決して無理をしないところは前回の「青ひげ公」公演での反省もあるのだろうと思います。さてさて、話は変わって、昨日のウィーンフィルのニューイヤーコンサートですが、ウェルザー=メストの指揮は前回の初登場と比べれば随分緊張がほぐれた、良い指揮ぶりでした。ただ今回の演奏は端正で上品と言えば聞こえはいいですが、どうも精気に薄いというか生彩に欠けるというか薄味というか、生命感が不足した感じがあまり好きじゃありませんでした。ディスクのブルックナー5番などはかなり過激な表現で面白かったのですが、どうしたことでしょう。ラデツキー行進曲もとって付けたような賑やかさで、なんだかなあ。まあこれが映像の限界なのかもしれません。来年のニューイヤーは生命力こてこての(笑)バレンボイムが2回目の登場です。【Joshin webはネット通販1位(アフターサービスランキング)/日経ビジネス誌2012】[枚数限定][限定盤]ブルックナー:交響曲第5番/ウェルザー=メスト(フランツ)[CD]【返品種別A】過激なブルックナー。これはこれで悪くない。この頃のフランツは随分尖ってました。(笑)
2013年01月03日
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関東はもう梅雨明けじゃないかってぐらい、暑い日が続いています。それでもまだじっとりした湿気もあり、余計に体力を消耗させますね。 先月ですがコンサートに行ってますので、備忘の意味で記述しておきます。どちらも素晴しい演奏で、大変満足しました。1.芸大フィル定期・特別演奏会(オール・ラフマニノフ)(上野奏楽堂、6/21) ピアノ:江口玲 指揮:尾高忠明 パガニーニの主題による変奏曲 交響曲第2番 どちらも大好きな曲だけに聞き逃せなかったのですが、仕事先から駆けつけたときにはすでにパガニーニが始まっており、中に入れず。ロビーの大型テレビで鑑賞しました。 輝くようなピアノの音に加え、尾高さんの表情付けも大げさにならず演奏の品格を見せます。第18変奏のとろけるようなメローディも甘さの中に大人のほろ苦さを感じさせ、芸大の学生オケであることを忘れさせた瞬間でした。 さて、演奏が終わってアンコールの前に我々「遅刻隊(笑)」はホールの階段まで誘導され、そこでアンコール(ロンドンデリー)を聞いたけど、素晴しいピアノの音にしばし陶然とする。このホールでステージが遠い階段隅でピアニッシモでもはっきり聞こえるなんて驚異的だし、ブリリアントでしかもゴージャスな響きに圧倒されました。 休憩時間後「遅刻隊」は最前列に行けと言われましたが、たいていの隊員は休憩のどさくさに紛れて後ろの席に移動していきました(笑)。私は芸大の若い女の子を間近で見るのもいいなと、そのままで。 件のピアノを見ると「STEINWAY」とだけ。普通は「STEINWAY&SONS」なのでもしやと思いプログラムを見返すと、なんとホロビッツ愛奏の「CD75」ではないですか!100年前にニューヨークで生まれた伝説のピアノ。ホロビッツが愛用し、来日の折わざわざ運び込んだ伝説のピアノだったのです。これはパガニーニを生で聞きたかったなあ。 後半の交響曲は出だしからただならぬ雰囲気、これは前半の手応えにオケがノリにのっている証拠です。いきなりまとめちゃいますが、これは今まで生で聞いた中で最高のラフマニノフでした。尾高さんの音楽にオケ全員がそれぞれに思いを乗せている、とでも言えばいいでしょうか。第3楽章での甘いだけじゃなくどこかせつない思いに目頭が熱くなったし、フィナーレの堂々たる開放感に胸躍らせる、まるで歴史大河ドラマをぶっ通しで見たような重量感を伴う名演でした。(もしCDが出たら絶対買いたい) 尾高さんもしっかりまとめあげるよりある程度自由を与えたやり方のように見受けられました。この長い曲が短く感じられた集中力もいい。なにより下から見上げた尾高さんが終始笑顔で満足そうに振っておられたのが、何よりもこの演奏の出来を物語っていたと言えましょう。2.ジャパン・グスタフ・マーラーオーケストラ 第9回演奏会(文京シビックホール、6/24) 指揮:井上喜惟 交響曲第9番(マーラー) 井上さんは同年生まれためか、気になる指揮者です。彼の音楽は独特の癖があるのですが、はまったときは至高のひとときを味わえます。彼はマーラーを熱心に演奏していてこのオーケストラもマーラー演奏のためのアマオケですが、結構優秀です。 今回のマラ9も期待に違わぬよい演奏でした。第1楽章冒頭からただならぬ感じで名演の予感をさせます。第1主題が全オケ提示される直前の盛り上がり方、タメの深さに圧倒されました。最近はなかなかこういう風にやってくれないんですよね。 第2、第3楽章は練りこみがイマイチで第1楽章の圧倒的パワーの後で疲れたか、と危惧しましたが、最終楽章冒頭の主題の歌い方の濃さに続き弦楽の分厚さに「やはりマーラーはこうでないとなあ」と妙に納得。 現れては消える主要主題の交代に過去を思い出しては前に進もうとするマーラーの積極的な生への燃焼を聞き、コーダ直前の爆発と徐々に音が薄くなって消え入るようなラストに精一杯生きたこの偉大な指揮者・作曲家の背中を見た思いがしました。これは決して死の音楽などではなく、生を生ききった人だけが持つ、ある感慨の感情だと思います。 「感無量」という言葉がぴったりくるでしょうか。開かれた、明るい明日さえ感じさせました。 素晴しかったのはお客さんもで、ラストの静寂を十分感じ取ってからの拍手の沸き方は滅多にあるものではありません。 アマオケゆえの傷はもちろんありましたが、たいへんな熱意と情熱で演奏しており、じゅうぶん満足いく演奏会でした。【送料無料】ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 パガニーニの主題による狂詩曲大人気ランランのラフマニノフ。何しろめちゃウマ。【送料無料】ベルティーニ/マーラー:交響曲第9番&第10番井上さんの師匠ベルティーニの東京都交響楽団とのマラ9。この透明感、希望へとつながるラストは弟子の井上さんにもちゃんと受け継がれているようです。都響もうまい。
2012年07月16日
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また半年ばかり間が空いてしまいました。 その間に小澤さんは1年間療養に専念すると宣言し、一切のコンサート活動を止めておられます。そうは言っても音楽への情熱は止みがたく、教育活動は続けるとのこと。スイスの音楽アカデミーまで行かれるかどうかはわかりませんが、夏のサイトウキネンフェスティバルには顔を出すそうです。 サイトウキネンフェスではオネゲルの「火刑台のジャンヌダルク」を山田和樹指揮、カラヤンの長女イザベルがジャンヌ役で出演するそうです。この曲は小澤さんが若い頃からのレパートリーだし、師匠のお嬢さんが出るのですから是非小澤さんに振ってもらいたかったけど、まあそれも致し方ないでしょう。若い山田さんが小澤さんの薫陶を受け継いでくれればと想います。 こんなことを言っては不遜ですが、小澤さんは今後レコーディングを通じて音楽活動されてはいかがでしょう。先日NHKで水戸室内管との協演を見ましたが、1楽章ごとに疲労していく様子がわかります。確かにコンサートは演奏家にとって醍醐味ですが、今の小澤さんには体力的にも負担が大きいと思われます。 かつてブルノ・ワルターが晩年、コロンビア交響楽団とレコーディング活動をしたように、サイトウキネンオーケストラを母体とするレコーディングオーケストラを結成、1日1楽章ずつという贅沢なスケジュールなら、無理なくできるのではないでしょうか。 1ファンとしては少しでも今の小澤さんの音楽に触れたいという思いからですが、皆さんいかがでしょうか?
2012年07月03日
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1/25水戸室内管の倉敷公演、やはりキャンセルでした。主治医からのドクターストップです。おそらく22日もストップがかかっていたんじゃないでしょうか。でも天皇皇后両陛下ご臨席とあっては無理をしてでも出なくては、そんな想いがあったのだと思います。勝手な想像ですけど。 さて、これで水戸室内管の公演はすべて終わりました。初日の録音、映像は撮られているのかどうか。これからは1回1回の公演がすべて重要です。映像があれば是非見て聞いてみたいものですね。
2012年01月24日
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さて22日の水戸室内管の東京公演は天皇皇后両陛下をお迎えした、大事な公演でした。 小澤さんは19日の水戸定期のあと、体調を崩し20日の公演をキャンセルしました。それは22日が大事な公演であることがわかっていたためでしょう。しかも明日23日の足利公演は早々とキャンセルが発表されていることを考え合わせると、22日は何が何でも出るぞ、という小澤さんの並々ならぬ決意が感じられます。 本日の公演、私はもちろん行けなかったのですが、どうやらプログラムを変更して、小澤さんは後半のみ出たようです。<前半> ディベルティメント、交響曲第35番「ハフナー」・・・指揮者なし<後半> チェロ協奏曲(ハイドン) ・・・小澤さん 両陛下はもともと後半のみお出ましになる予定だったそうです。そこにハイドンをあえて持ってきたのは、小澤さんが将来有望な若者(宮田大)を聞かせたかったからに違いありません。1961年5月5日、バーンスタインはニューヨークフィルとの来日公演の舞台で、ある日本の若者に日本の現代音楽を振らせました。それが小澤さんだったのです(曲は黛敏郎の「饗宴」)。小澤さんにとってレニーは世の中に紹介してくれた大恩人だったのです。それと同じコトを小澤さんもやりたかったのです。 若者にチャンスを与えること、これは世界的ビッグネームになった小澤さんがやらなければならない最期の仕事のひとつと考えているのではないでしょうか。カラヤンも有能な若者と競演することでチャンスを与えてきました。ムターやキーシンもそうやって世界に羽ばたいていきました。 多くの人が小澤さんを非難するでしょう。せっかくの公演、やはり小澤さんのハフナーを聞きたかった、と。けれど大事な舞台で自分ひとりだけ喝采を浴びるのではなく、将来ある若者と協演し道を開かせる、小澤さんのこの気持ちをわかってあげましょう。 それにしてもこう考えると故・朝比奈隆御大は偉大でしたね。最後までお元気だった。大阪で公演する折、小澤さんは挨拶に伺っていたらしい。今生きておられたら、小澤さんに何と声をかけていたでしょうか。「小澤君、76なんてまだまだじゃよ。」 小澤さんが次に登場するのは、小澤征爾音楽塾のオペラ「蝶々婦人」の公演です。見守りましょう。
2012年01月22日
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やきもきさせますね、小澤さん。 1月19日、水戸芸術館において水戸室内管と久しぶりのコンサート復帰で、ついに再始動!と書きたかったのですが、翌20日は体調不良でキャンセルし公演は指揮者なしで行われたとか。 プログラムは以下のとおり。 モーツァルト ディベルティメント ニ長調K・136 ハイドン チェロ協奏曲第1番ハ長調 モーツァルト 交響曲第35番ニ長調「ハフナー」 はっきり言って、そんなに大変なプログラムとは思えないです。ディベルティメントもハイドンもオケにお任せしてもいいくらいだし、35番も力んで振るほどではないはず。 リハーサルでは大変調子が良かったそうですから、うれしくて調子にのって若い頃のようにからだ使い過ぎたんじゃないでしょうか。 今の小澤さんなら指一本、眼光だけでオケを動かせると思います。まあそうしないところが小澤さんらしいんですけどね。 さて、本日22日はサントリーホールで天皇皇后両陛下をお迎えした「天覧演奏会」のはず。果たしてコンサートは行われるのでしょうか。
2012年01月22日
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昨日感想を書いたばかりのウィーンフィルのニューイヤーコンサート。 来年の指揮者が発表されました。 フランツ・ウェルザー=メストです。 小澤さんではなかったです、残念。 とりあえず、ご報告まで。
2012年01月02日
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私事ですが、先月に祖母が他界しましたので新年のご挨拶は控えさせていただきます。皆様にとって、今年一年が良い年でありますように祈念いたします。 さて、恒例ウィーンフィルのニューイヤーコンサート。今年はマリス・ヤンソンスさんでしたが、珍しい曲が満載な上にチャイコフスキーの「眠りの森の美女」まで出てきて、多彩なプログラムで大いに楽しめました。 カルメンの名旋律を巧みに織り込んだ「カドリーユ」や「コペンハーゲン蒸気機関車のギャロップ」での機関車の走る様の描写などが印象に残る一方、「うわごと」のうっとりとした歌わせ方や「雷鳴と電光」でのたたみかける迫力も十分で、昨年の何となくウィーン情緒な演奏より、余程おもしろかった。 「悪魔的ダンス」(ヨーゼフ・ヘルメスベルガー)は小澤さんがニューイヤーで振ったなかで一番の出来でしたが、ヤンソンスはメリハリで畳み掛ける小澤流とは違った、ウネる感じで演奏していて、なるほどなかなかやるわいと一人ニヤついてました。 さて、来年の指揮者はまだ発表されていませんが、できればもう一度小澤さんにやってほしいですね。 今年もよろしくお願いいたします。
2012年01月01日
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仕事が一段落するもからだを壊してしまい、いまだに体調が優れません。喉に痰がからまって寝てるときに息が詰まったりします。危険ですよね。 さて、最近小澤征爾さんが元気です。ファンとしてはうれしい限りです。まずはコンサート情報から。◎水戸室内管弦楽団 東京公演【日程・会場】2012年1月22日(日)18:30開場・19:00開演サントリーホール 大ホール【曲目】モーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調 K.136(125a)ハイドン:チェロ協奏曲 第1番 ハ長調 Hob.VIIb-1 チェロ独奏:宮田 大モーツァルト:交響曲 第35番 ニ長調 K.385 「ハフナー」 ⇒お~ハフナーですかあ。録音されるのかなあ。まずは腕試しって感じですかねえ。ハイドンのチェロコンは故ロストロポーヴィチとよく演奏していました。昔、夏の音楽キャラバンでもやってましたね。◎小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXI プッチーニ 歌劇「蝶々夫人」■一般発売日:'12/1/15[日]■日程:3/17[土]15:00 神奈川県民ホール 大ホール 3/21[水]18:30 愛知県芸術劇場 大ホール 3/24[土]15:00 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 大ホール3/25[日]15:00 神奈川・鎌倉芸術館 大ホール(かまくらプレミアム・オーケストラ・シリーズVol.18)3/28[水]18:30 東京文化会館 大ホール ⇒演出が浅利慶太となれば、一癖ありそうな感じですが、どうなりますか。乞うご期待。◎ベルリンフィル定期 6月22日Gustav Mahler Lieder eines fahrenden Gesellen Matthias Goerne(Baritone) Piotr Ilyich Tchaikovsky Symphony No. 5 in E minor ⇒ベルリンフィルのHPに上がってます。実現すればヨーロッパ復活公演になりますね。 あと公の場にも出ておられるようで、12月3日の恩師丸谷才一の文化勲章受章を祝う会にも顔を出してスピーチをしたみたいです。ユーモア溢れるスピーチは愛情の証でもあります。 このままの調子で上記1月の公演に元気なお姿を拝見できることを楽しみにしております。【20%OFF】[CD] 小澤征爾&水戸室内管弦楽団/小澤征爾 水戸室内管弦楽団モーツァルトシリーズ1 モーツァルト: 交響曲第40番K.550&協奏交響曲K.297B突然発売された水戸室内管とのモーツァルトシリーズの第1弾。物凄く濃密なアンサンブル、そして意外にも分厚い響きなモーツァルトです。遠くにカラヤンのモーツァルトが聞こえてくるようです。
2011年12月06日
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10月からの激務からようやく解放されたものの、体調をすっかり崩してしまいました。11月初めより咳が止まらず苦しみましたが、今は薬が効いてきて収まってます。あともう少しって感じでしょうか。 先週11日に芸大学生オケの公演に行って来ました。指揮は高関健さんです。昨年以来ずっと追っかけしてます。 プログラムは、ポピュラーなもの。 ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より第1幕への前奏曲 モーツァルト:オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314(285d) ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 Op.68「田園」 田園を楽しみして行きましたが、モーツァルトのソロもなかなか楽しめました。この曲をこれほど楽しめたのは初めてかもしれない。ほとんど冗談のような語り口が面白く、「ああこれはおしゃべり、しかもノリツッコミなんだな」とカデンツァ部分を聞きながら気付いた次第。ソリストの青山聖樹さんに感謝とブラボーを。 田園は流行りの古楽演奏を横目で見ながらもオーソドックスな演奏で、久々にゆったりと聞けました。高関さんは相変わらず自分を出すことなく、作品世界の忠実な再現に心掛けた真摯な演奏で好感が持てました。なるべくテンポを動かさず、曲の古典性を意識した演奏だったと思います。(18日のミサ・ソレムニス行きたかった!) そんな演奏態度が評価され、この度「齋藤秀雄メモリアル基金賞」を受賞されました。これからのますますのご活躍に期待します!【送料無料】Beethoven ベートーヴェン / Sym.2, 5: 高関健 / 大阪centuryso 【CD】もう10年前の録音ですが、高関さんはベートヴェン全集を大阪センチュリー交響楽団と作成しています。最新のベーレンライター版です。【送料無料】Mahler マーラー / 交響曲第7番『夜の歌』 高関健&群馬交響楽団 【CD】高関さんと言えばマーラー。未出版の最新研究を独自に取り入れた「高関版」による演奏。
2011年11月20日
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すっかり秋ですねえ。朝晩のもう寒いくらいな気温に体調を崩さないようお気をつけください。 さて、最近シューマンにはまってます。今までシューマンはどうも苦手でした。気分がころころ変わるし、掴みどころがないし、何がロマンティックなのか、何が言いたいのかはっきりしてなくて、いらいらしっぱないでした。 昨年、高関さん指揮による「楽園とペリ」の演奏がきっかけになるかと思いましたが、まだまだ先は長い感じでした。交響曲は何度聞いても良いと思ったことがありませんでした。シューマンは自分には合わないのかと諦めていました。年始に聞いた若きメータのシューマンは勢いがあってよかったけど、まだシューマンが理解できたとは言い難い。 先月お茶の水の某中古CD屋でブッフビンダーのライブ盤を入手しました。お目当てはラヴェルのピアノ協奏曲。ブッフビンダーはドイツ人ピアニストでベートヴェンやブラームスなどドイツ作曲家の作品には定評がありますが、ラヴェルとは珍しいし面白そう。 2枚組で1枚目は協奏曲、2枚目はソロ。ラヴェルの協奏曲は思ったとおりきっちり真面目に弾いた好感の持てる演奏でした。ソロにはモーツァルトと並んでシューマンの交響的練習曲と幻想曲が収録してあります。 まあこのへんは適当に聞き流そうと本を読んでおりますと、突然、スピーカーから圧倒的な音の奔流が押し寄せてきて、それから10分ほど心を捉えて離しませんでした。何という心地良さでしょう、時に激情が迸り、時に慰めとも悲しみとも言えない複雑な感情が交錯します。憧れと苦しさが同居したような、これぞロマン的な音楽だと感じました。 この曲こそシューマンの幻想曲です。実はいままで何度も耳にしたはずで、所有CDにも収録されていますが、このように心を捉えるまでには至りませんでした。第2、第3楽章と続くうち、はっきりと自分の中の何かとシューマンが初めて共鳴できていることを感じました。 終曲が静かに終わるとあまりの素晴らしさに、しばらく部屋をうろうろしてしまいました。 試しにノヴェレッテン、ピアノソナタも聞き直しました。今まで何を聞いてたんだというくらい面白くどの瞬間も共感をもって聞けました。交響曲、協奏曲、いいじゃないですか!マーラーがシューマンから続く交響作家であることが初めて実感しました。マーラーもきっとシューマンに親近感をもっていたことでしょう。この感覚でまたマーラーを聴くと今までと違って聴こえるかもしれませんね。 クラシック音楽を聴き始めて30年あまり、それは突然、しかも劇的な出会いでした。このCDを手に取らなかったらずっとシューマンを苦手に感じ、ろくに知らないままだったかもしれません。(残念ながらこれは楽天には無いようです) こういう出会いがあるから音楽って堪らないんですよねえ。【送料無料】Schumann シューマン / ダヴィッド同盟舞曲集、幻想曲 内田光子 【SHM-CD】最近聞いた幻想曲のなかではダントツに素晴らしい、内田光子のシューマン。[CD] スヴャトスラフ・リヒテル(p)/ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第17番 テンペスト&シューマン: 幻想曲(HQCD)リヒテルのシューマンは昔から定評があります。未聴ですけど。【送料無料】ブッフビンダー/ザルツブルク音楽祭ライヴ2004 輸入盤 【CD】ブッフビンダー教授のライブ。シューマンの練習曲が収録されてます。
2011年10月02日
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シルバーウィークと言われてますが、ほとんど仕事でした。トラブルはいつ起こるかわかりませんね。 さて本来なら若き小澤さんの名演を書くつもりでしたが、ザンデルリンク死去のニュースが飛び込んできたので、一言書いておきます。 ザンデルリンクと言えばブラームスの交響曲第1番を初めて聞いたときの指揮者でした。FMで聞きそれからすぐLPを買いました。これぞブラームス、という重くて暗くて力強い演奏でした。サービスも色気の微塵もなし。初心者には全く刃が立ちません。 「坊や、ブラームスを聞くにはまだ早いんじゃないか?」そう言われてる気がしました。 それからザンデルリンクの名前は私の中から消えていました。 次に意識したのはラトルがマーラーの10番を録音した盤にザンデルリンクに教えを乞うたと書いてあったことです。そこでザンデルリンクの同曲も聞いて、すっかり感動しました。マーラーの凝ったオーケストレーションを面白く聞かせようといったサービス精神の欠片もなく、ひたすらにマーラー最晩年の孤独と憧憬を響かせていたからです。 「大地の歌」も漢詩の世界を西洋人がどう理解したかを解説してくれてるようで面白かったなあ。 最初に聞いてから10年以上経ってようやくザンデルリンクは受け入れてくれたのです。 彼は意外に録音も多く特にショスタコヴィッチは世評が高いのですが、私はあまり好きではありません。息苦しいほどの生真面目さが音楽の世界を狭くしている気がするのです。 逆にベートーヴェンの交響曲全集(80年)は堅固で隙のない演奏でありながら、どこか余裕を感じさせてくれます。オケがイギリスのフィルハーモニア管弦楽団のせいかもしれませんね。8番など勢いがあって、好きですねえ。 今後、いかにもドイツらしい生真面目で頑固な品格漂う演奏はもう聞けないかもしれません。ドイツ圏期待のティーレマンも意外と色気付いてるし。 ご冥福をお祈りいたします。【送料無料選択可!】【試聴できます!】ブラームス:交響曲第1番 / クルト・ザンデルリンク懐かしいジャケット。渋いオケの響き、これぞブラームス!【送料無料選択可!】マーラー: 交響曲第10番 (クック版) / クルト・ザンデルリンク(指揮)、ベルリン交響楽団クック版に独自の加筆をした、これまた堅牢なマーラー。聴き終えた手応えが違います。
2011年09月19日
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のろのろ台風は各地で被害をもたらしました。被害に遭われた皆様には謹んでお見舞い申し上げます。 関東圏は短時間に豪雨が降り、かと思うとかあっと陽が射したりと変わりやすい天気でした。とにかく蒸し暑くてたまらなかった。 ここは派手に鳴る曲をチョイス。小澤さんが若き才能を世界の舞台でフルに発揮し始めた頃の録音です(1967年7月18日録音)。Mussorgsky ムソルグスキー / ムソルグスキー:展覧会の絵、ブリテン:青少年のための管弦楽入門 小澤征爾&シカゴ交響楽団 輸入盤 【CD】 楽天ではCDですが、私の持っているのはビクターXRCDです。XRCDは初めて聞いたのですが音の鮮明さ、実在感は最新録音かと思われるほど(40年以上前の録音ですよ)。低音はぶりぶり鳴るし、高音はさすがにキレが若干悪いかな思うけど、良質なアナログ盤を聞いているような錯覚に陥ります。 さて肝心の演奏ですが、これはもうオケの機能性、個々人の力量の凄さに圧倒されます。惚れ惚れするような巧さと華やかさに終始ご機嫌になっちゃいました。 小澤さん32歳(正確には9月生まれなので31歳ですが)ながら、シカゴ響の機能を存分に使いブリリアントな響き、爽やかと言っていいぐらいの音色美、しかも音楽は常に前進し続け、実に堂々とした演奏です。この思い切りの良さが小澤さんの魅力ではないでしょうか。この盤がシカゴ響との本格的な初録音でした。 これならラヴィニア音楽祭を任される(64年から69年まで)のは納得です。【22%OFF】[CD] 小澤征爾(cond、ナレーション)/RCA Red Seal THE BEST 21 プロコフィエフ: ピーターと狼 サン=サーンス: 動物の謝肉祭 ブリテン: 青少年のための管弦楽入門 92年に「青少年のための管弦楽入門」を手兵ボストン響と再録音しています。全体にまろやかで豊麗な響きで、難しい部分もすらすらと弾いてしまうため、余裕がありさらりとした印象です。これはこれで大変な名演なのですが、己を信じて未来を切り開いていくぞという気迫と集中力が旧盤の魅力で決して劣るものではありません。 どちらも是非お聞きいただきたいです。
2011年09月05日
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のろのろ台風のおかげでじめじめした日が続いております。ぶ厚い雲が物凄い勢いで駆けていく様は結構迫力ありますね。ヴァルデマール王の進軍を感じます。 さて最近は複雑なオーケストレーションよりシンプルな編成のアンサンブルに惹かれます。昔はハイドンもモーツァルトも同じに聞こえてちっとも面白くありませんでしたが、今は楽しく聞いています。近年の古楽器演奏(あるいは奏法を取り入れた演奏)興隆によりハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンあたりも巨匠風の重厚巨大神格化された演奏からより刺激的で爽快痛快気持ちいい演奏に変わりつつあるようです。 このような演奏上の変化(というかブーム)は時代要請の反映、すなわち聞き手の好みの変化に他ありません。 古楽怪しからんとお嘆きのオールドタイプのファンもいらっしょるでしょう。 ベートーヴェンはかくあらねばならんとお怒りのファンもよくわかります。 しかしながら時代は常に動いています。古楽器を使った演奏は以前からありました。でもここまでブームになるのは何か理由がありそうです。 昨日聞いたハイドンの交響曲集はラトル指揮バーミンガム市響の旧盤です(94年録音)。溌剌としたリズム、推進力、機知というか仕掛けいっぱいのハイドンのいたづら心をいやみにならないぎりぎりで再現する手腕。この頃のラトルらしい、相変わらず楽しさ満載の演奏です。 はっきり言って食わず嫌いなハイドンでしたが、ラトルの演奏で開眼しました。ラトルも古楽奏法を勉強し、エイジ・オブ・エンラインメント管弦楽団ともたびたび演奏していました。この盤からも古楽奏法を巧みに取り入れながら、現代オケから過度に重くならない新鮮な響きを引き出しています。 古楽(器)演奏を「昔の音に忠実な演奏=作曲家の意図に沿った演奏」と勘違いしてる人もいるようですが、私は「新しい表現のパレットが増えた」ぐらいにしか感じてません。何がオーセンティックなのかは、人によって違いますし。 ただ古楽(器)演奏を通じて、クラシック音楽がかつての「重々しくて何やら難しげな音楽」から軽快で生き生きとした「今を生きる音楽」に変わっているとしたら、これこそがブームの理由なのではないかと思います。Haydn ハイドン / 交響曲第60番、第70番、第90番 ラトル&バーミンガム市交響楽団 【Hi Quality CD】楽しさ一杯のハイドン。食わず嫌いの方に是非。【送料無料】Haydn ハイドン / 交響曲第88~92番、他 ラトル&ベルリン・フィル(2CD) 輸入盤 【CD】すっかり現代の巨匠になってしまったラトル。ベルリンフィルも随分若返りました。未聴ですが、楽しさに変わりはないでしょう。
2011年09月03日
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本日は小澤征爾さん76歳の誕生日です。ここ最近はサイトウ・キネン・フェスティバル松本で誕生日を祝いながら、盛大に盛り上がっていました。 しかしながら今年、ご本人は入院中となってしまいました。 昨年のサイトウ・キネン・フェスティバルでは腰痛のせいでチャイコフスキーの弦楽セレナーデ第1楽章しか振れませんでした。ご本人は精一杯の誠意のつもりだったのでしょうが、ファンとしてはそれだけでもう十分、早く休んで欲しかった。その後再び入院、さすがの私ももう無理かと思ったら、12月のニューヨークで行われた催し物に3公演出て、「奇跡の復活」と絶賛されました。このときのブラームス交響曲第1番、幻想交響曲、戦争レクイエムはアルバムとして発売、涙無くしては聞けない演奏となっています。 小澤さんにしてみれば、自分を見出し、ここまで育ててくれたアメリカへの恩返しのつもりだったのでしょうね。でも無理を押して行った結果、また入院。 今年のサイトウ・キネン・フェスティバル松本はさすがに無理かなあと思っていたら、出演のアナウンスがホームページに載り、驚きました。ただオペラ1曲のみ、しかもバルトークの「青ひげ公の城」。1時間かかりません。まあ体調からすればこのぐらいから始めるのがちょうどいいのかな。 毎夏に行っていた「スイス国際音楽アカデミー」も、7月6日のパリでの特別公演(モーツァルトのディヴェルティメント、チャイコフスキーの弦楽セレナーデ)も終え(今から思えばこれも自分を見出してくれたフランスへのお礼だったのだろう)、順調にフェスティバルへの準備にとりかかっていました。 オペラ初日の8月21日ではNHKのニュースに取り上げられるほど注目を集め、まさに復活を印象づけました。私もたまたまテレビを見ていました。ほとんど体は動いてなく、ポイントで腕を振り下ろす指揮ぶりでしたが、オケはものすごい音を出していました。ただカーテンコールでの小澤さんの顔色は真っ白で、「これはもうだめかもしれない」とショックを受けました。 案の定、次の23日、25日は代役の指揮になりました。疲労と軽い肺炎との発表でしたが、相当悪いんじゃないかと気がかりでした。ところが27日の最終公演ではまたもや復活、これも小澤さんらしいケジメのつけ方かなと思いました。 このあと中国公演をするはずでしたが、こんな体調で行けるはずもなく、8月29日にはサイトウ・キネン・フェスティバルのホームページに小澤さんの降板告知とコメントが掲載されていました。 こうした流れで現在入院中の小澤さん、気になる病状は「嚥下障害」と「肺炎」だそうです。ご家族も心配されているでしょうが、長年の1ファンである私も心配しております。 順調な回復をお祈りしております。【新品CD】【5000円以上送料無料】奇跡のニューヨーク・ライヴ/小澤征爾/サイトウ・キネン・オ【UCCD.9802】[新品]不屈の精神とはこのことか。涙無くしては聞けません。
2011年09月01日
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5月GW以来、ずっと更新していませんでしたね。仕事のせいもありますが、気力がありませんでした。 GWに交通事故で亡くなった友人の裁判が、先々週ありました。争点は酒酔いだったかどうか。確かに飲んでいた事実があるけれど、事故の時点で酔っていたのかどうか。遺族は必死に失った悲しみを訴えます。加害者は謝罪しつつも酔っ払っていなかったと主張します。 裁判は初めてでしたが、事故の様子も争点もわかりやすく、余計な感情移入を排して問題点を浮き彫りにしていきます。淡々とした中にも厳しさがあり、加害者の的はずれな発言には容赦ないツッコミがあります。初犯なので緊張もしているのでしょうが、しっかり発言してもらいたい。それに比べれば遺族の発言は堂々としており、逆に悲しみが心に染みました。 友人の死をムダにすることなく、彼が愛したマラソンの火が消えることもなく、遺族の悲しみと再生に向けて裁判官がどう判断するのか、来週判決が出ます。
2011年07月23日
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このGWはいろいろなことが重なり考えさせられました。 GW始めに小澤サイトウキネンの2008年オペラ公演ヤナーチェクのオペラ「利口な女狐の物語」をNHK-BSで観ました。不思議なオペラです。あらすじはこちらをご覧ください。 女狐ビストロウシュカの物語のはずなんですが、第3幕始めであっけなく死んでしまいます。じゃあ森の番人かと言うと、これは狂言回しの役割のようです。つまりこのオペラの主人公は別のところにいるようなのです。 番人に捕まった女狐が鶏たちを煽動しようとアジったり、女狐に言い寄る雄狐が(当時の)現代女性になぞらえたり、女狐が撃たれるときに「狐だから撃たれるのか」と意味ありげな台詞が吐かれたり、あるいは校長が村一番の美女に恋したり、牧師が昔の恋を思い出したりと様々なエピソードが挿入されていますが、これらも本筋とは言えない。 最後の場面で番人が死んだはずの女狐そっくりの子狐を見つけ、蛙が「お前のことはじいさんから聞いている」と言われたときのうれしそうな懐かしそうな番人の表情、続いて森の多くの動物たちが現れオーケストラが力感溢れる音楽を奏でるとき、このオペラの主人公は「生命の繋がり」であることを知り、幕となるのでした。 小澤さんの明るく躍動感のある音楽は生命の輝きを叙情的に聞かせていて、ヤナーチェクとの相性の良さを感じました。特に森の番人が「俺は日没のこの時間が好きだ」というときのきらきらとした美しさと言ったら、例えようがありませんでした。 翌日、実家に帰り祖母を見舞いました。私は外孫なのですがどの内孫よりもかわいがってもらいました。祖母は寝たきりで惚けてしまって、娘の(つまり私の母)顔も覚えていません。私が行っても多分わからないだろうとのことでした。病室で祖母はテレビを観ていましたが、私を見るなりじっと目を離しません。父が耳元でわかるかと尋ねると「わかるよ」と何度も言ってくれました。骨と皮だけですっかり痩せてしまいましたがその瞳は赤ん坊のように無邪気にさえ思えました。細くなった手を取り「また来るからね」と言うとちょっと悲しそうな表情でずっと見ていました。 そのときふいに、自分は祖母から生命を受け継いでいるのだという考えが頭に浮かびました。ともすると独りで自分勝手に生きている気になっていましたが、自分もまた連鎖のなかのひとつなのだと。これはもちろん昨日見た「女狐」のせいです。受け継いだ生命をどうすべきなのか、自分勝手に使いきってしまっていいのか。 この日、会社の同僚が交通事故で亡くなったとの知らせがあり、急遽戻ることにしました。マラソン大会に出場中の事故でした。新人のとき同じ部署に配属され以来、ずっとお互いに気遣ってきました。たまに会社に戻ると声をかけてくれる優しい快男児でありました。 お通夜には多くの人が集まり、故人の交遊の広さ、人徳が偲ばれました。奥さんも一人息子も健気に参列者へ挨拶して回っていました。献花し最後に顔を見せてもらったとき、今にも起き上がって「よお」なんて声をかけてきそうで、思わず涙が出てしまいました。 息子は気丈に元気に振る舞っていました。みんな嘆き悲しんでいるので戸惑っていたのかもしれません。元同僚と話しているのを傍で聞きながら、友人は亡くなってしまいましたが、ここに確かに生命が受け継がれているんだなと思いました。すると少し気持ちが和らいだ気がしました。 それはあの森の番人のうれしいような懐かしいような表情であったかもしれません。 合掌。【送料無料】Janacek ヤナーチェク / 『利口な女狐の物語』全曲 ペリー演出、小澤征爾&サイトウ・キネン・オーケストラ、ベイラクダリアン、ケルシー、他(2008 ステレオ) 【DVD】動物たち、昆虫たちは着ぐるみで登場。でも内容は大人の寓話かも。音楽は素晴しい。
2011年05月04日
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震災から1ヶ月が経とうとしています。直接の被害者ではないけれど、目に見えない形で厳しさを実感しました。お役所相手の仕事をしておりますが、こういうときのお役所の「的外れ」ぶりは福島原発事故後のどたばたを見て皆様もお分かりいただけると思います。おかげで私もこの1ヶ月随分余計な仕事をやらされました。 原発事故でも、いざ事が起こると「想定していなかった」と言い訳する責任者。経験からすればメーカーおよび専門家は当然想定しており、ただ経費を削減して出世したい一部役人が無理やり数字を作らせたのでしょう。そのツケが結果的に住民へのツケに回ったというお粗末さ。現場を知る人たちはみんな怒ってるはずです。今はこれ以上被害を出さないよう全力を尽くすべきですが、いずれ総括するときが来るでしょう。 さて、今朝何気にCSを見ていたら「大河ドラマ 源義経総集編」を放映してました。モノクロ1966年放映、尾上菊之助の義経、緒方拳の弁慶、そして音楽は武満徹。以前から見てみたいと思ってましたが偶然にも見ることができました。 ストーリーは皆さんご存知のとおり。映像は当時としては斬新な試みがあるものの、やはり音楽ファンなら武満さんの音楽にどうしても耳が行ってしまいますね。ここで尺八がうなり、あそこで琵琶がかき鳴らされ、ときに両者のやり取りにオーケストラが呼応する。これってノヴェンバーステップスのあのカデンツと同じ奏法だあなどと発見しきり。 1962年の映画「切腹」で武満さんは初めて琵琶という邦楽器に触れ、この「源義経」では琵琶のほか尺八(しかもソロだけじゃなく複数本も試みる)も使い、縦にバチンと切り込む響きに横に流れる響きを加えて劇的な空間を生み出す方法論を確立。この組み合わせで66年5月に「エクリプス」を初演、その年末にニューヨークフィル創立150年記念で作曲委嘱を受け、67年11月に小澤征爾指揮ニューヨークフィル、鶴田錦史琵琶、横山勝也尺八の組み合わせで「ノヴェンバーステップス」初演へとつながっていく。その後の武満さんの世界的躍進と評価は言うまでもない。 こう俯瞰するとこの「源義経」の音楽は単なるTV用劇伴ではなく、その実験的精神がやがて世界の「タケミツ」を生み出すターニングポイントであったことがわかります。 エンディングで流れる弦楽合奏はどこかで聴いたことのあるような親しみとどこか悲しげな子守唄のようなメロディーは敗れた平家一門へのそして主人公義経への鎮魂歌のようにも聞こえます。そして今回の震災で亡くなった方々への。。。 武満さんには真面目な(?)クラシック作品だけでなく、劇伴にもいい曲がいっぱいあります。それらも総括して録音してほしいですね。【21%OFF】[CD] 小澤征爾(cond)/RCA Red Seal THE BEST 24 武満徹: ノヴェンバー・ステップス 弦楽のためのレクイエム 他最近ブルースペックCDで復刻されたんですが、楽天にはまだ出てないようです。永遠の名盤というより人類の至宝です。《送料無料》武満徹/オリジナル・サウンドトラックによる 武満徹 映画音楽(CD)映画音楽集。新しい録音による選集が欲しいところ。鈴木大介/ブランドン・ロス/ツトム・タケイシ/武満徹:映画音楽集:没後10年記念これはギタリスト鈴木大介による映画音楽のギターアレンジ盤。ギターを愛してくれた数少ない現代作曲家、武満さんならこの企画も許してくれるだろう。
2011年04月10日
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東日本大震災で被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復興を祈願しております。 私はただの音楽バカなのでこんな程度のご挨拶しかできないことをお許しください。 直接の被害はなかったものの、首都圏の停電と交通の運休騒ぎで振り回された1週間でした。11日は帰宅出来ず、13日は電車が最寄り駅まで来ないので(休みたかったけど)電車の来てる駅まで1時間半かけて歩きました。お客は停電になったらシステムはどうするんだっと(停めるしかないだろ!)対応しなくてはならず。遅く帰宅してもコンビニにはパンも弁当もおにぎりも無く、首都圏ながらひもじい思いもしました。 そんな騒ぎからようやく音楽を聴ける状態になったのは幸せな事です。 何を聞くべきか。被害者の霊に捧げるためレクイエムとか、悲愴とか、マーラーとかいろいろ考えた挙げ句、これにしました。 ショスタコーヴィッチの第5番は「革命」なる渾名がついてますが、小澤さんは例によってそんな曲にまとわりつく物語に見向きもせず、ひたすら楽譜に、音楽そのものに集中しています。 音の美しさ、響きの豊麗さ、滑らかに歌い進む演奏に多くのヲタクどもは「中身がない」「奇麗ごと」などとほざいてますが、作品の美しい再現を目指す小澤さんの至芸を理解してない戯言にすぎません。 第1楽章は圧倒的迫力で開始します。それは憤怒のように聞こえます。でもどこかやるせない感じさえ与えます(これは全篇を覆う雰囲気です)。叙情的な部分での(フルートソロをはじめとする)柔らかな美しさはショスタコ演奏としては異例かも知れません。 第2楽章はスケルツォですが、諧謔性よりもどことなくいびつな踊り。ホルンが出てくる前のちょっとした間の取り方は盟友ロストロポーヴィチの同曲演奏をよく研究しています。でもスラヴァ盤よりオケはずっとうまいですが。 第3楽章はロシア民衆の苦しみでも悲しみでもなく、深い深い祈りの音楽です。なぜこの世に争い事が絶えないのか、なぜ不幸が存在するのか、憤りでもなく、葛藤でもなく、ただ祈り続けます。その深さに涙してしまいました。 第4楽章は革命による民衆の勝利ではなく、ひたすら前へ前へと突き進む音楽です。開始はゆっくり始まりますが鞭を打たれるたびにテンポが速くなり、アンサンブルが崩壊寸前になるところでテンポダウン(ここもスラヴァのアイデア)、この部分は何度聞いても鳥肌が立つほどの凄み、狂気さえ感じます。初めてこの演奏を聞いた時は殺されるかと思いました。 ホルンの息の長いソロ、叙情的なふわっとした美しさに浸る間もなく、また進んで行きます。小澤さんにしては珍しいぐらい長くねばってコーダに入ります。遅いテンポながら、何か決意にさえ聞こえます。 このコーダを初めて聞いたとき「小澤さんが初めて音楽で自分を語った」と涙が止まりませんでした。そこには何の保証も無くヨーロッパに音楽武者修行(というよりやけっぱち)に来て以来、常に将来に不安を持ち、無理解と苦労に押し潰されそうになりながらも、懸命に生きて来た一人の男の後ろ姿を見た気がしました。 21世紀には社会主義的リアリズムなどもう必要ないでしょう。ただ今もって先が見えない混沌とした世界情勢、どんなに繁栄していても大自然の猛威に一瞬にして失われてしまう文明の脆さ。そんな中で我々は何を光明にして生きて行けば良いのでしょうか。 この演奏はこう言っています、希望を常に胸に抱きながら前へ進め、と。人の持つエネルギーには限りが無い、「希望を捨てるな」と。 ショスタコ交響曲第5番は21世紀にも残る名曲として新たな命が吹き込まれ、そんな新鮮な感動がここにはあります。Shostakovich ショスタコービチ / 交響曲第5番 小澤征爾&サイトウ・キネン・オーケストラ 【CD】
2011年03月20日
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新年というか年末年始をかけて、シューマンの交響曲全集を聞いてました。 メータ指揮ウィーンフィルの演奏です。(楽天には無いみたいですね。輸入盤で出てます) この頃のメータは飛ぶ鳥を落とす勢いで、カラヤンの次の帝王、などと呼ばれてました。私にとっても小澤さんと並んでアイドルのような存在でした。どの演奏もかっこいいし、爽快でした。 第1番、第4番:1976年6月録音 第2番 :1980年6月録音 第3番 :1981年3月録音 ちょうどアナログからデジタルに移行する時期であり、ロスフィルで黄金時代(62~78年)を築き上げ、ニューヨークフィルに栄転する(78~91年)頃でありました。 まさに絶頂期、乗りに乗ってる頃の勢いのある演奏です。シューマンのころころ変わる曲想にしなやかに反応しつつ、強引に音楽をクライマックスへと運んでいく、その辣腕ぶり。聴いてて心地よい。実際、シューマンをこれほど面白く聞いたことはなかったです。 ウィーンフィルもこの次世代の帝王に全力で応えています。メータはかつてウィーンで学び、ウィーンフィルにもダブルベースのパートに参加していたこともあったそうで、そういう意味では同じ仲間という意識もあるのでしょうね。 録音もアナログ期最後の素晴らしい完成度、デジタルの第3番も拡がり感のあるいい録音です。シューマンはちょっと、という方にお勧めします。
2011年01月02日
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今年のニューイヤーはオーストリア出身の指揮者フランツ・ウェルザー=メストでした。放送ではやたらにオーストリア出身ということにこだわっていて、終いには「貴族的な優雅さが・・・」なんて発言まで。オーストリア出身と言ったってリンツ生まれ、しかも貴族のパトロンが付いてる(どういう意味かわかるよね)だけで、本人は貴族でも何でもないし。 それにしても何とも盛り上がりに欠けるコンサートでしたね。最後のラデツキー行進曲ぐらいでしょうか。何がいけないというわけではないのですが、そもそもこの人の音楽は先鋭的でスマートな感じが特徴なのですが、今日のコンサートはオケに任せて極めてマイルドな音楽になってました。それだけ年を取ったということならいいのですが、どうもこの人ならではの味わいみたいなものがなかったんじゃないか。 まあ根が真面目なのでしょう、小澤さんみたいな「お祭り男」じゃなさそうなので、こういうの苦手なのかな。がんばれ、音楽監督! さて、ウィーンフィルのHPにはさっそく来年のニューイヤーコンサートの指揮者が発表されてました。マリス・ヤンソンスです。熊男です。【21%OFF】[CD] フランツ・ウェルザー=メスト(cond)/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団/EMI CLASSICS決定盤 1300 403 ブルックナー: 交響曲第5番挑戦的で新鮮な感覚のブル5。ダイナミックできびきびしたテンポが特徴です。やはりメストはこうでないと。(笑)
2011年01月01日
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新年あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いします。 昨年を振り返ると、小澤さんは食道がん長期療養により1年間ほとんど演奏活動を行っていませんでした。サイトウキネンフェスでもチャイコフスキーの弦楽セレナーデの第1楽章を振っただけ。これについてはネット上でも論議がありましたが、小澤さんなりに誠意を見せたかったのだろうと思っています。 そして12月になり、ニューヨークのカーネギー・ホールが主催する日本芸術祭“JapanNYC”にサイトウキネンオケとともに出演しました。小澤さんが芸術監督を務めるこの“JapanNYC”ではNYの街全体が舞台となりクラシック音楽はもちろんジャズやポップス、映画、舞踊、美術など、日本のあらゆる分野の文化がとりあげられるすばらしい企画です。以下、サイトウキネンオケのプログラムをあげておきます。----------------------------------------------------------------------- 12月14日 オーケストラ・コンサートA ○権代敦彦/デカセクシス(SKF松本、カーネギーホール共同委嘱作品)演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ指揮:下野竜也○ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37演奏:サイトウ・キネン・オーケストラピアノ:内田光子指揮:下野竜也○ブラームス/交響曲第1番 ハ短調 作品68演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ指揮:小澤征爾 12月15日 オーケストラ・コンサートB ○武満徹/ノーヴェンバー・ステップス演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ尺八:三橋貴風 琵琶:田中之雄指揮:下野竜也○ベルリオーズ/幻想交響曲 作品14演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ指揮:小澤征爾 12月18日 ブリテン/「戦争レクイエム」 ソプラノ:クリスティーン・ゴーキーテノール:アンソニー・ディーン・グリフィーバリトン:マティウス・ゲネル合唱:SKF松本合唱団、栗友会合唱団児童合唱:SKF松本児童合唱団演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ指揮:小澤征爾------------------------------------------------------------------------ まだ全ステージというわけにはいかず前プロは下野さんに任せ、後半メインのブラームス、ベルリオーズそしてブリテンを最後まで振り抜きました。奇跡の復活にカーネギーホールの聴衆はスタンディングオベーション、その模様はYoutubeでも配信されています。(このときのブラームスは来月早速CD化されるそうです。期待しましょう) と、心配やらうれしいやらでどたばたしましたが、来年こそはお元気に活躍されることを祈念いたします。なによりお体大事になさってください。
2011年01月01日
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更新の手がなかなか進まず、いつの間にやら大晦日です。 高関さんのコンサートをはしごしてきましたが、こんなまとめて報告という形になり、ご本人に対して申し訳ない気持ちです。まあここをご覧になることもないでしょうが。1.日本フィル625回定期演奏会(11/13)@サントリーホール 交響曲第8番ハ短調(ハース版)(ブルックナー) 言わずと知れた「ブル8」です。高関さんが指揮者を志すキッカケとなった1曲。例によって版の問題に言及したプログラムは読み応えあり。ハース版によるライブはおそらく初めてでした。 さて、さすがにプロのオーケストラは違います。濃厚で充実した響き、高関さんの意図を忠実に再現しつつアンサンブルをがっちり守りきるプロの技は流石です。演奏は作品への誠実なアプローチ、こけおどしなぞぶりは微塵もない、まっとうで仰ぎ見るようなブルックナーでした。 第1楽章冒頭でクラリネットがふらりと現れるところがファゴットになっていたので、ハース版ってそうなのかなぐらいに思ってましたが、後で高関さんのツィッターを見たら、ブルックナーが校正時に誤ってファゴットに書くべき音型をクラリネットの欄に書いてしまったのではないか、との見解から修正してみたとのこと。かつてチェリビダッケがそうしていたのをラジオで聴いてはたと膝を叩き、楽譜研究の要を感じ入ったらしい。ちなみにそのとき高校生、並みの人ではありません。(笑) 他にも埋もれていた音型や聞き慣れないフレーズが飛び出してきて、ずっと集中して聞いていました。この曲をこんなにも集中して聴いたことはなかったかもしれません。 そのせいか、初めてこの曲がしっかりとした構成でできあがっていることが実感できました。確かに凄い曲です。こんな凄い曲だと感じたのも初めてかもしれません。(チェリビダッケのリスボンライブも素晴らしかったけど) よく演奏は山登りに喩えられますが、これはエベレスト級の峰に挑戦するようなものなんだなあ。高関さん、お疲れ様でした。【送料無料】 CD/オトマール・スウィトナー/ブルックナー:交響曲 第8番 (ハース版) (廉価盤)/KICC-3536なぜかスィートナー(笑)。いやいやなかなかいいんですよ、これが。【送料無料】輸入盤CD スペシャルプライスブルックナー / 交響曲第8番 チェリビダッケ&ミュンヘン・フィル(1990 ステレオ)(2CD) 輸入盤 【CD】泣く子も眠る(?)遅~いテンポのチェリ。未聴ですが冒頭はファゴットでしょうか。2.343回芸大フィル合唱定期演奏会(11/19)@上野奏楽堂 オラトリオ「楽園とペリ」(シューマン) 全く聴いたことのない曲を聴くというのは楽しみなものです。この楽園とペリはめったに演奏される機会がなく、CDもあまり出ていない(アーノンクールとガーディナーぐらいか)、けど世評は高いとなれば期待も高まるというもの。 こぶりな編成のオケに9人の独唱、混声合唱が加わり、楽園から追放された妖精ペリが許されて楽園に戻るまでを美しく描いた「朗らかな人々のための」オラトリオです。 初めて聴くので大雑把な感想しか述べられませんが、メンデルスゾーン(真夏の夜の夢)とベルリオーズ(ロメジュリ)とウェーバーとわずかにベートーヴェン(ミサソレ)が混じったような曲です。特に最後のペリが祝福される音楽の高揚感、圧倒的な合唱の威力、ハデではないけど色彩豊かなオケの響き、聴いてて胸が熱くなりました。じわじわとこみあげて来ました。 これだけの大作(2部の終わりに休憩を挟む)を熱演してくれた学生諸君、コンクール歴のある実力派の若い歌手たちにブラボー!そして清らかで優しい音楽に愛情を持って再現してくれた高関さんにブラボー!!輸入盤CD スペシャルプライスシューマン / 『楽園とペリ』 シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデン(2CD) 輸入盤 【CD】シノーポリの廉価盤。とにかく安いし、録音はいいし、これはお勧め!(笑)
2010年12月31日
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11月7日(日)14時~16時足立区立千寿桜堤中学校体育館高関健=桐朋学園オケ交響詩「英雄の生涯」(R.シュトラウス)すっかり寒くなってしまいましたね。報告が遅くなりました、高関さんの追っかけ第1弾(笑)。桐朋学園は言わずと知れた小澤さんの母校であり、高関さんも出身校です。著名な演奏家を輩出している音楽学校として私立ではおそらく日本一の実力校ではないでしょうか。今回のメンバの中にも将来の巨匠がいるかもしれません。今回の柳原音楽祭、毎日通勤で通っていた北千住駅から徒歩10分ぐらいのところで、初めて行きました。当日券ぐらいすぐ買えるだろうとタカをくくって遅れて行ったら何と最後の1枚!盛況だったんですね。場所は体育館で音響は全く期待できません。入ると向こう壁に大編成のオケがズラリ。編成に全く手抜きがありません。客層はおじいちゃんおばあちゃんお父さんお母さん子供たちと全くばらばら。演奏中何をしでかすかわかったものではありません。遅れて入るも主催者側の挨拶だったので演奏はまだでした。今回は1曲だけなので最初の30分ぐらいを高関さんが楽曲解説しました。高関さんは生まれも育ちも千住だったんですね、「足立の誇り」とまで持ちあげられてましたが。さてこの解説、英雄の主題が5つの部分(性格、イケメン、統率力、優しさ、夢)から成立していること、英雄の彼女や敵の存在、戦闘シーン、功績、引退と死と曲の全体像を実際にオケを使い、知らない人にも何とか理解してもらおうと悪戦苦闘しておられました。最後の方はしどろもどろでしたが(笑)、私には面白い内容でした。でも次回からは司会者を立てたほうがいいでしょう。さて10分ほど休憩のあと、本番です。最初の嬰ホ長調(英雄の調)のハーモニーが充実したずっしりと実の詰まった響きに、今回の演奏の成功を予感させました。後で高関さんツイッターで知ったのだけど、コンミスでありヴァイオリン・ソロ担当は南紫音さん(プロフはこちら)。休憩時間に見に行けばよかった。(笑)確かに美人ちゃんだが腕前もなかなか。ヴァイオリニストになりたかったR.シュトラウスのソロパートは難技巧の連続で最高域から最低域まで幅広く使用、重音で猛スピードで駆け下りたり、2つの旋律を同時に弾いたり。それらを破綻なく弾ききりしかもニュアンスを失わず、音量もたっぷり。もう少し色気や凄みみたいなものが音に込められるといいんだけど、最初から完璧を求めるのも酷というもの。長い目で見守りましょう。戦闘シーンの迫力、引退の苦い味わいを経て彼女(というか妻)に看取られながら静かにあの世に旅立つまで、充実した良い演奏だったと思います。何より学生オケながら実に集中力のある演奏で感動しました。次は日本フィルとのブルックナー交響曲第8番です。がんばります。【送料無料】R.シュトラウス:交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき...価格:1,600円(税込、送料込)小澤さんの「英雄の生涯」。マニアからは全く見向きもされてませんが(笑)、肉厚な音なのに透明な響きなのは小澤さんのソルフェージュ能力の高さの証明。リズム感の良さが躍動感溢れる英雄像を作り上げている。ただラスト近くでトランペットが音を外しているのは編集ミスか?
2010年11月18日
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2010年10月22日(金) 上野 東京藝術大学奏楽堂 高関健 指揮 芸大フィルハーモニア 交響曲第9番(マーラー) 最近、指揮者の高関健さんのツイッターを読んでいます。指揮者という職業の人は普段どんなことをしているのか、どんな勉強をしているのか知ることができて、なかなか面白いです。 高関さんと言えば、カラヤン指揮者コンクールジャパンで優勝、カラヤンの弟子としてベルリンで研鑽、帰国後は群馬交響楽団や札幌交響楽団などの音楽監督を務める傍ら、芸大や桐朋学園などで後進の指導にもあたっている、といった程度の知識しかありませんでした。 彼の指揮を初めて見た(聴いた)のは、何年か前のラフォルジュルネ東京で桐朋大オケと「春の祭典」を演奏したときでした。きびきびした指揮ぶり、響きはスマートでありながら迫力十分、たいへん感銘を受けました。いや、衝撃的で二日同じ演奏を聞きに行きました。 マーラーには事のほか熱心なようで、それは現在国際マーラー協会が進めている新エディションの刊行前に、記譜の誤りやディナーミクの変更など独自版を作成、逆に協会に送りつける、という大胆な行動にも表れています。 彼の録音は少ないのが残念ですが、その成果は第7番や「復活」のCDで聞くことができます。 彼はマラ9とブルックナーの第8番により指揮者を志したそうで、マラ9の演奏前にも独自にスコアの研究成果を協会に送付、「まあいいんじゃない?」との回答を受け(笑)、今回の演奏会に臨んだのでした。 ここまではツィーターで逐一発信されていたので演奏会が大変楽しみでした。しかしながら実際の演奏は期待以上の出来で、これまた衝撃的でした。 まず第1に、これほど真摯で衒いの無い誠実な演奏を芸大の学生諸君が成し遂げたということに感動です。プロでさえこれほどの手ごたえを持った演奏は滅多に聴けるものではありません。 そして高関さんは単なる学究の徒にあらず、しなやかな歌に満ちながらも時に凶暴なまでのフォルティッシモ、繊細なピニッシモと変幻自在なスコアを通してマーラーが伝えたかったことに迫ろうとする気迫、集中力は最後の最後まで途切れることはありませんでした。 譜面の違いははっきりとわかりませんでしたが、所々あれっという響き、特定声部の強調(特にバスの動き)などに現れていたのではないでしょうか。 聴衆にはいつも不安を覚えていました。マラ9は最後静かに終わるので、フライング拍手やブラボーが起きるのではないかと。でも今回は音が無くなってしばらく静寂があり、指揮者がそっと指揮棒を置いてから自然と湧き上がるような拍手でした。おかげで素晴らしい瞬間を味わうことができました。高関さんも大きな事をひとつ成し遂げた満足感が終演後の表情に出ていました。 高関さんは最終楽章のコーダ(弦楽だけでppで奏される)を「死に絶えるように」ではなく何か希望の光が遠くからぼおっと差しているような、あるいは希望の門にゆっくりと近づいているような、決して絶望ではない終わり方をしてくださいました。私はマーラーをもう30年以上聞いてきましたが、自分はこういうマーラーを聞きたかったんだ、と初めて気付かされました。 実は演奏が始まる前に奏楽堂の地下にある自販機で飲み物を買っていたら、横の自販機でやはり飲み物を買っていた高関さんを見かけました。割と普通のおじさんでした。横顔がギターの大師匠に似ていたので一気に親近感が湧きました。 これからしばらくは高関さんの追っかけをするつもりです。【送料無料】マーラー / 交響曲第7番『夜の歌』 高...価格:2,646円(税込、送料込)【送料無料】マーラー / 交響曲第2番『復活』(国際マーラー協会...価格:2,835円(税込、送料込)
2010年10月23日
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今年の夏は猛暑で結構まいりましたが、秋もまた突然やってきましたね。9月半ばまでは暑さが続いて「もういいよ!」と思ってたら、突然涼しくなり(と言っても27度くらい)、カラダが対応できませんでした。それから一気に秋に向かいました。 いつもなら暑さが徐々に引けてヒグラシが鳴き始め、「ああ今年の夏はどうだったかなあ」と振り返り、またつまらぬ事に時間を取られたことに後悔しつつ、ゆく夏を惜しんでいたものです。今年は季節の変わり目がはっきりしていて、名残りを惜しむヒマさえなかったような。 せめて音楽で夏の名残りを惜しもうじゃないかとCD棚を見渡せば、やっぱりディーリアスかな?と。でもちょっと当たり前すぎて面白くない。 サウダージ国のブラジルなら、とヴィラ=ロボスを選択してみました。ギター曲、ブラジル風バッハ第2番、ショーロス第10番もそれなりだ。甘ったるいピアノ協奏曲、考えすぎの交響曲はいまひとつ。ピアノ小品曲はかわいらしい曲でこれはなかなかいい。 買ってきてまだ聴いてない中に宗教合唱曲集がありました。ヴィラ=ロボス研究家(?)の私でさえ知りませんでした。1930年代の曲はまるでグレゴリオ聖歌のような美しいハーモニー。まるで既存の教会音楽のようです。この清澄な響きはブラジル風バッハの作曲家と同一人物とは思われません。逆に言えば彼の独特の濃い~音楽になってないので、つまらない。 気に入ったのは「マニフィカト・アレルヤ」(メゾソプラノ独唱、混声合唱と管弦楽のための)でこれは最晩年の曲(1958年)です。透明なマニファイカトから始まって劇的な盛り上がりのアレルヤ(ひたすらアレルヤと歌ってます)へと至る、そのなかにショーロスに通じる独特の響きやメロディーが入っており、なかなか充実したいい曲です。最後の和音を強烈に長く引っ張る終わり方は、これぞヴィラ=ロボス!といった感じです。ここに至り彼の個性を色濃く反映したヴィラ=ロボスの宗教曲を書くことができたのでした。 私の夏も清冽な響きの合唱曲たちでようやく別れを告げることができたようです。さて実りの秋、おいしい物をたくさん食べるぞお(笑)。【送料無料】ヴィラ=ロボス (1887-1959) / ヴィラ・ロボス:...価格:2,825円(税込、送料込)このCDは知る人ぞ知る秘曲を掘り起こすレーベルhyperionから出ています。
2010年10月11日
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9日に終了したばかりですが、もう来年のサイトウキネンフェスの基本構想が発表されました。 1.期間:8月8日~28日の21日間 2.公式公演:10公演 3.メイン公演: 歌劇「青ひげ公の城」(バルトーク) バレエ「中国の不思議な役人」(同) 指揮:小澤征爾 4.オーケストラコンサート: ピアノ協奏曲第1番(ブラームス)など 指揮:ディエゴ・マディウス 5.海外公演: 9月2日~同11日:上海と北京にて 来年はバルトーク生誕130年にあたるためか、バルトーク作品をメインに据えていますね。「中国~」はボストン響で2回録音している小澤さんの得意曲、「青ひげ公」もボストンで演奏会形式で上演したことがあります(1980/81シーズン)。バルトークは昔から小澤さんが得意とする作曲家です。本格復帰の演目としては良いプログラムだと思います。 コンサートは小澤さんの負荷軽減のためか、ベネズエラ出身のマディウス氏が担当します。ブラームスのピアノ協奏曲しか発表されてませんが、ピアニスト、メインの曲等はこれからなのでしょう。できればメインの曲だけでも小澤さんに振って欲しいですよね。 上海と北京ではバルトークを演奏するのでしょうか。中国への思い入れが深い小澤さんですから無理をしてでも公演すると思いますが、あまり無理をしないほうがいいのでは? ご本人にはそのほうが生活にも張り合いがでるのでしょうけれど。ご家族はじめスタッフの皆さんが支えてあげてください。 来年すっかりお元気になられてのバルトーク。期待してますよ、小澤さん。【送料無料】バルトーク:管弦楽のための協奏曲/弦、打、チェレスタのための音楽/小澤征爾,サイトウ・キネン・オーケストラ[CD]【返品種別A】【smtb-k】【w2】小澤=SKOのバルトーク。オケコンの鉄壁のアンサンブルをご堪能ください。個人的にはボストン響とのオケコンの録音が好きですけどね(笑)。
2010年09月12日
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9月9日をもってサイトウ・キネン・フェスが終わった。今年は小澤さんの食道がん治療で開催自体も危ぶまれたが、ご本人の意思によりどうにか終わったという印象だ。 何よりも、小澤さんの癌治療は成功したものの、激しい腰痛のため指揮ができないという体調の中、出演がチャイコフスキーの弦楽セレナーデの第1楽章のみという、中途半端な事態にファンはがっかりしたことだろう。かく言う私も迷走したフェスに多少疑問に思うことはあった。全ては小澤ご本人の気持ちと体調とのギャップによるところ大だろう。 代役を引き受けたのは下野竜也氏、オペラはオメール・メイア・ヴェルバー氏。世界のオザワの代役はかなりのプレッシャーだったと思うが、重責を見事に全うしたのではないか。 2チャンネルからは絶賛ではないが、それなりの高評価が見受けられる。もちろん小澤さんの演奏には絶賛が集まっている。 1日も早いご回復と本格的な活動再開を願わずにはいられない。【送料無料】チャイコフスキー:弦楽セレナード/モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク/小澤征爾,サイトウ・キネン・オーケストラ[CD]【返品種別A】【smtb-k】【w2】92年の録音。まだ熱かった頃のサイトウキネン・サウンドが堪能できます。凄まじいエネルギーの噴出!
2010年09月11日
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ベルリオーズという人は音楽の革命家です。名作「幻想交響曲」や「ロメオとジュリエット」「レクイエム」「ファウストの劫罰」など、どれも斬新な作品ばかり。この人がいなかったらリストもマーラーも今日知るような作品を書いていたかどうか。 彼はまた破天荒な一生を送ったのですが、基本的に永遠の青年なのでしょう。年を取れば少しは角が取れ人生の重みを感じさせるものですが、晩年まで瑞々しさと情熱を持ち続けています。(晩年の作品が記念碑的大オペラ「トロイの人々」やオペラ・コミーク「ベアトリスとベネディクト」ですからねえ) こういう人を日本ではあまり評価しないようです。日本では「枯れる」ことが芸事の完成形と見るからでしょう。深みの無い作品や人生には「味わいがない」と。 さて、言わずと知れたシェークスピアの「ロメオとジュリエット」を題材にした交響曲です。劇的交響曲となってますが古典的な交響曲とは違います。編成はアルト、テノール、バスの独唱者とソプラノ、テノール、バス各2部の合唱団が必要な上、オケの巨大編成を要求。ベートーヴェンの第9交響曲の拡大版といえなくもないですが、オペラ的な雰囲気はありませんし、オラトリオとも明らかに違います。 そう言う意味では、ベルリオーズ自身が名付けたように、交響曲の世界に新たな地平を切り開いた「劇的交響曲」としか名付けようがなかったのかもしれません。 本日は活動再開を祝して小澤=BSO盤で。LP発売当時は欲しくて溜まりませんでした。ジャケットはロメオとジュリエットの死の場面、ジュリエットがロメオの胸にもたれ手を握っているロマンチックな絵でした。この絵のごとく叙情的で甘美な響きを持ちながら、何てドラマチックな(特に両家が和解するところから最後まで)演奏なんでしょう。第3楽章(愛のシーン)冒頭の繊細な響きと続くメロディの爽やかな歌いだしには天性の叙情家、オザワの面目躍如たるものがありました。 ホセ・ファン・ダムの重厚なロレンス神父は説得力十分で、仲違いするキャプレット家、モンタギュ家もこの迫力には圧倒されてしまうでしょう。最後の「誓います、今や永久に友であることを!」という合唱には祈りよりも、力強さを感じます。 75年録音なので小澤さん40歳、ボストン響の監督としてまさに上り調子の時期でした。また75年と言えばベトナム戦争の終結。このような年に「ロメオとジュリエット」を録音しようとした小澤さんの意図はわかりますね。 確か同時期にマゼールがクリブランド管で同曲を録音してました。当時の評価はマゼールのほうでしたが、いやいや小澤盤の叙情と情熱だって素晴らしいです。 年を取っても瑞々しい感性や若々しい情熱を持ち続ける難しさは大人になればなるほどわかるものです。世間の無理解や批判などが徐々に感性を磨耗し、情熱の炎を弱めてしまうのでしょう。 それでもベルリオーズの音楽を聴くたびに胸の奥から熱い何かがこみ上げてきませんか。 「忘れていないか、思い出してくれ」とその音楽は訴えています。ベルリオーズが好きな人はきっとそれを探し続けている人なのでしょう。ベルリオーズ / 幻想交響曲、劇的交響曲『ロメオとジュリエット』 ミュンシュ&ボストン響(2CD) 輸入盤 【CD】小澤盤はカタログから消えてます。彼の恩師ミュンシュさんの録音で。
2010年08月15日
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8月1日、食道がんで療養中だった小澤さんが復帰会見を開きました。抗がん剤の影響でしょうか、髪も短く薄くなり、全体にしょぼくれた印象でした。胃がんから復帰したアバドはもっとミイラみたいだったことを考えれば、まだまだお元気なほうであり、1ファンとしては嬉しいというか、ほっとしました。 ただ心配なのは腰痛が相当ひどいようで、5、6歩歩くともう痛くて堪らないとのこと。あのダイナミックな指揮を支えていた腰もついに支えきれなくなってしまったのでしょうか。椅子に座って指揮となると音楽が変わってしまうのは、クレンペラーやチェリビダッケの例を見るまでもありません。音楽のテンポが遅くなると同時に、躍動感が失われるといわれています。今後小澤さんの音楽にどう影響が現れるのでしょうか。 12日、サイトウキネンフェスティバルのため松本入りした小澤さんは記者会見を開きました。来年は引越し公演を行うことを発表し、意欲と情熱だけは以前と変わらない小澤さんに拍手を送るとともに、9月の指揮姿を楽しみにしています。 このまま健康を取り戻し、より高みを目指していただきたい。これからのご活躍に期待しております。 【送料無料】 CD/小澤征爾 (指揮)/ブラームス: 交響曲第1番/ハ...価格:1,800円(税込、送料込)今年の小澤さんの演目「ブラ1」(90年録音)。あれから20年、小澤さんの更なる深化を期待しましょう。
2010年08月14日
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猛暑が続きますね。夜も熱帯夜で寝苦しくて堪りません。 先日都内の某音盤屋に入りました。昼間の移動時間に合間でした。日差しが強烈で汗が止まりません。冷房の効いた店内で生き返った気がしました。 店内にはシベリウス交響曲第2番がかかっていました。暑いから北欧の音楽で涼んでもらおうというお店の配慮でしょうか? 交響曲第2番はシベリウスの作品のなかでも超有名曲で、フィンランド人のロシア圧制への抵抗と勝利、解放というイメージで語られています。 と同時に忘れてならないのはシベリウスは20世紀の作曲家なんですね。この曲も1901年に完成されました。マーラーが交響曲第5番に着手、ラヴェルが「水の戯れ」を書いてフランス印象派の幕を開け、シェーンベルクは浄夜を書き上げたばかり、後期ロマン派から新しい音楽への胎動が聞こえ始めた時期でした。 交響曲第2番はシベリウスのイタリア旅行の印象が強いそうです。第2楽章のファゴットの重苦しい歌はドンファン伝説による「死の客の訪れへの幻想」、また金管がわーっと鳴り渡ったりするところなんかはブルックナーみたい。第3楽章は激烈なスケルツォですが、トリオ部分はのんびりとした田舎のイメージ。 シベリウスもまた民族主義から自己の表現への進化(深化?)に苦しんでいたのかもしれません。様々なイメージや要素を取り込みながら、ひとつに纏め上げる作業は産みの苦しみに似ていたかもしれません。 この曲が日本で人気があるのはこの、苦しみもがきつつ何かを掴むという、RPGやスポ根アニメにも似たストーリ性にあるのかもしれませんね。 推薦したいのはやはり若き日のラトル盤です。イギリス指揮者はシベリウスを得意としていますがラトルもしかり。指揮活動のごく初期にシベリウスの全集を作るほど、相性がいい。と同時に彼特有の現代的センスでシベリウスを再構築していて、近代作曲家としての新しさをも感じさせてくれます。このときラトルはまだ29歳です。天才は時に年齢を超えてしまうのです。実に堂々たるシベリウス、素晴らしい!シベリウス / 交響曲第2番、鶴のいる情景 ラトル&バーミンガム市交響...価格:1,500円(税込、送料別) ところで店内ではシベリウスの曲が遅いテンポで高らかにクライマックスを築いていました。その暑苦しい表現にお客さんもひとりまたひとりと帰っていきます。 どうせなら第3番とか第6番とかにしとけばよかったのに。
2010年08月01日
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じめじめした日が続きますなぁ。すっかり体調を崩してしまいました。このじめじめはオーディオにとっても楽器にとっても良くありません。昔ギターの先生に教わったのは「とにかく弾け」ということでした(笑)。弾くことで木の繊維を震わせ水分を追い出すとか。わかったようなわからないような説明でしたが、とにかくこの時期は弾くしかないんだなとばかりに練習してましたっけ。オーディオも同じで湿っぽい全く鳴らないんですが、とにかくスピーカーを鳴らすしかない。今日は風邪で休んだついでに、音楽聴きました。このじめじめ感を吹き飛ばすにはやはり大オーケストラでがつうんと行くしかないなと、マーラー交響曲第5番をチョイス。いつもなら小澤=BSO盤ですが、今日は友人お勧めのバルビローリ=ニューフィルハーモニー管盤で。サー・ジョン・バルビローリ(cond)/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団/価格:1,300円(税込、送料別)第1楽章は葬送行進曲の重い足取りで、第2楽章は何やら疾風怒濤、第3楽章は能天気さと無邪気さ、第4楽章でバルビーの甘い歌わせ方がハマり、第5楽章はもっと速くてもいいなと思っているうちに終わってしまった。第5番ってこんなに重苦しい、まるで心弾まない曲だったけ?何だかすっきりしない。頭の中で「これじゃない」と。そこでベートーヴェンの交響曲第2番。ここも小澤さんではなく、レイボヴィッツ=RPO盤。これは隠れ名盤です。最近チェスキーから全集が出ましたね。【送料無料】ベートーヴェン / 交響曲全集 レイボヴィッツ&ロイヤル価格:7,550円(税込、送料込)出だしのどどーんからいい感じ。重い響きながら爽やか。そして主部に入ってからの疾走感。音楽がどんどん前進していく。まるで「立ち止まっちゃだめだ。前へ進め」と叱咤されているようです。昔ならそれが鬱陶しくてたまらなかったでしょう。今はこのじめじめとどんよりとした気持ちを吹き飛ばし、どこまでもどこまでも空へ、遥かな高みへと僕らを導くベートーヴェンの気概が心地いい。まっすぐにしっかりしようと、気持ちがあらたまりました。ベートーヴェンがいまだに弾かれ聞かれている理由はこれなんだな。
2010年07月01日
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随分放っておいてそろそろ書き込まなくては、と思っていた頃にまたまた大事件です。 4月9日に小澤さんが今年9月のサイトウキネンフェスティバルのオペラ公演を降板すると発表されたのです。 小澤さんは喉頭がんが早期発見され治療に専念するため、今年前半の活動を全てキャンセルしたばかり。本格的復帰はサイトウキネンフェスから、その後10月からのウィーンフィルのヨーロパ・日本公演を指揮する予定でした。 ところが、今回の発表では、サイトウキネンフェスのオペラ「サロメ」(R.シュトラウス)公演は降板、オケプロのみ指揮するとのこと。またウィーンフィルのヨーロッパ・日本公演は全てキャンセル。ウィーンフィルとの共演を楽しみにしていたファンも多かっただけに、残念です。 小澤さんのコメントによれば、長時間のリハーサル、体力を極端に消耗するオペラ、移動が多いツアーに耐えられるだけの体力回復を待て、との医者の支持に従うとのこと。元気な頃ならともかく、もうお年(今年で75歳)ですから「無理しない」という選択は正解かもしれません。 それにしても徐々に活動期間が短くなっているような気がします。体力の衰え、精神的疲労。ウィーンの音楽監督は想像以上の伏魔殿ですから、要らぬ神経を消耗してしまったのでしょうね。 そろそろ音楽だけに専念できる体制を日本で整えてあげる必要があるのではないでしょうか。これだけ世界に実績を残し、影響力もあり、人気、実力もある方ですから、日本の音楽界のためにも、何らかの援助が必要だと思います。 もっとも、もう日本の楽壇に収まらないくらいビッグになりすぎた、ともいえますが。 とにかく一日も早い回復と復帰をお祈り申し上げます。
2010年04月11日
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さてそろそろ小澤さんの公演予定でも、と思っていた矢先、トンでもない記事が。。。 小澤さんに食道がんが見つかり、6月までの全公演キャンセル。。。。6月と言えばウィーン最後の公演とも言うべき6月12日「シェーンブルン宮殿野外コンサート」もキャンセルです。なんてことでしょう。 本日、記者会見がありました。こちらをご参照ください。 ご本人は自覚症状なくお元気な様子。ほっとしました。 またガンのほうも早期なもので、治療と療養で半年と決めたようですね。小澤さんはサイトウキネンフェスには戻るつもりのようです。でも今年はヨーロッパツアーするんじゃなかったけ?大丈夫かぁ。 年齢的なことを言えば、無理せず治療に専念していただきたい。 そしてこれを乗り越えて、また一回り大きな音楽が聴けることをファンのひとりとして楽しみにしております。 ウィーンでは忙しさに加え、東洋人の音楽監督ってことで風当たりも強かったことでしょう。ウィーンに限らず歌劇場てのは伏魔殿らしいので、権謀術数、いろいろあったでしょうね。音楽以外のストレスからきたのかなぁ。などと要らぬ詮索もしたり。 お元気そうな顔を拝見して少し落ち着きました。
2010年01月07日
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