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ワールドカップで戦うことは、エネルギーを消耗する。2カ月程度の休養では回復が難しい。闘莉王や中沢などのベテラン勢は、体調不良のために試合に出れない状態だった。これに監督選びの混乱で、原ジャパンが生まれている。最大の特色は、ワールドカップに出れなかったメンバー中心に構成されていることだろう。レギュラークラスから、サブ中心にメンバーが入れ替わると、大幅に戦力が変化する。普通ならばマイナスに作用するはずの大幅入れ替えが、原ジャパンではプラスに作用した。 岡田監督はメンバーを固定することにこだわった。センターバックは闘莉王と中沢の二人だけで済ませていた。そのために交代メンバーの力が未知数という不安定な状況が生まれた。ベテランの岩政ですら、ほとんど試合に出たことのないという徹底した序列が存在した。それゆえに、遠藤や阿部に匹敵するメンバーがいるかさえも、不鮮明だった。原監督代行は迷うことなく、若手主体のメンバーで構成した。結局、その判断が効果を上げて、攻撃型のサッカーが誕生した。森本、香川、細貝などが通用することを発見した意味は大きい。 ザッケローニ監督は3トップを基調とするサッカーを得意にしている。そうなれば新チームの中心には森本が来ても不思議ではないが、イタリア・カターニアではいまだにレギュラーを取れていない。出場する試合数が少なすぎて、FWとしての経験が不足している。それを補うために原代行はあえて2試合使ってみたというが、試合に慣れてくれば爆発する要素を持っている。森本を生かすも殺すも、カターニアの使い方次第というのが難しい。 香川はドイツでも認知されているという。もっとの才能に恵まれたMFになる。調節攻撃に出るだけでなく、周囲を使う技を心得ている。確かに香川が一枚いるといないでは、攻撃の質が変化する。3トップの3枚目に数えられているのが本田になるが、ワールドカップの疲れが残っている。これだけ動きに切れがない本田というのも珍しい。相手側も用心しているから、本来のサッカーができない。ロシアでレギュラー出ない理由もそこにある。 ボランチが細貝の活躍で守備陣の穴が埋まった。センターバックも恐れるほどの崩壊には至らなかった。それでも、新しい守備陣が機能するようになるには、かなりの時間がかかるだろう。代表選手としての出場経験のないグループでDF陣を構成することはリスクを伴う。橋本のミスから失点したのを見ても、国際試合ではミスが許されない。どうやって守備陣を構築していくかが課題になる。
2010.09.08
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FIAの判断は慎重だった。F1チーム13番目の枠に対しては、いくつかのチームが名乗りを上げている。しかし、どこも参戦費用が足らずに、FIAの認可を得ることは不可能だった。新規参戦を始めた3チームも、資金不足に陥っていて、スポンサーの確保もままならない。資金不足のチームが加わっても、F1レースそのものが面白くなるわけでもなく、トップチームと新参チームの技術格差の大きさを考えると、無理に13番目のチームを参入させることはないと考えても当然だろう。 景気さえ回復し、乗用車の世界販売が上昇すれば、新たなワークスが参入する可能性がある。資金力や技術力を保有した組織の参入を待ったほうが賢い。F1チームの数を増やすことよりも、今あるチームの資金力を向上させ、設計技術を習熟させたほうが好ましい。こういうバランスのとれた発想をするのが、ジャントッド会長の指導力かもしれない。韓国サーキットの建設遅れに対しても、柔軟な対応をとって、開催を可能にしている。 F1新規参入をするには、初期投資が必要になる。200人近い技術者の確保、マシンを開発する工場の建設、マシンのパーツダイヤ従業員の人件費を支払える資金力が最低限必要になる。その額は、初年度で100億円近くもかかる。年間総費用を50億円に節約しようと思えば、戦闘力のあるマシン開発は不可能であり、レースのグリッドに就くことで満足しなくてはならない。そういう不完全な組織を認めようとしなかったFIAの方針は正しいだろう。いずれ、世界景気が回復して、新たなワークスがF1参戦に乗り出すのを待つしかない。
2010.09.07
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スペインの北方に住むバスク民族は独立心が旺盛な人々で構成されている。フランコ時代に徹底したバスク弾圧がおこなわれてことも、独立願望に結びついているかもしれない。独立運動とスペイン政府の弾圧は、バスク人たちを過激にしていった。これまでのテロ事件で800人もの人命が失われている。武力闘争を主張する過激派の行動を止められる組織はなかった。 バスク地方はスペインの中でも裕福な地域であり、これほど長期間にわたって武力紛争が続いてきたかがなかなか理解できない。スペイン政府は徹底した取り締まりでバスクの独立を押さえつけてきた。分離主義や自治権の拡大が独立につながることを恐れている。欧州には小国が多いので、単一のバスク民族で構成されるバスク自治州が、将来独立しても不思議ではない。しかし、スペイン政府は限定された自治を認めても、独立は許さないことで一貫している。 バスクの人々も多くは武力紛争にうんざりしている。過激派への支持が失われたのも自然の成り行きだろう。しかし、バスクの民族主義者や政治家たちは独立の夢を捨てることができない。バスク共和国が誕生しても、政治的経済的な影響はほとんど及ぼすことができない。EU圏内に小国が誕生しても、それがどういう意味を持つかさえはっきりしない。独立によって民族の誇りを取り戻すことができても、新たな価値が生まれないとバスクはむしろ困窮に追い込まれてしまう。どうやって、憎悪と対立の歴史を終わらせることができるかを考えられるスペインの政治家はいないらしい。
2010.09.06
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ヘルマン・ティルケの設計した韓国サーキットの建設が遅れている。FIAの規定に従えば、3か月前に査察を受けねばならない。その段階では、工事ははかどっていなかったので、中止の方向に動かざるを得ない。しかし、この段階になってグランプリを中止することは、莫大な損失を生み出す。それは韓国側だけでなく、レースを主催するFOMにも甚大な負担を与える。そこで、何が何でもグランプリを実行することに覚悟を決めたらしい。 F1サーキットの多くは、ヘルマン・ティルケが設計を行い、工事や建設にはエクレストンが深くかかわっているという。F1参戦しようという国は、サーキット建設の段階で手足を縛られている。これで工事が間に合わなかったら、設計や施工関係者に批判が集まってしまう。あらゆる知恵を絞って、F1開催から利益を得ようとするエクレストンにしてみれば、工事が間に合わないことで中止になることだけは、避けねばならない。 FIAが査察を2カ月も遅らせたことも、この流れの中にある。FIAの規約を文章通りに解釈すれば、開催できない。中止は韓国側とFOMに多大な損害を生み出す。査察を遅らせても、FIAに影響が出るわけではない。韓国GP開催を救済することを優先して、すべての決定が出された。微妙な問題の調整をうまくやるだけで、中止になるべきグランプリ開催が実現すれば、F1世界にとってプラスは大きい。それは最終的にFIAに利益をもたらすことになる。ジャントッドも知恵を絞ったことは間違いないだろう。
2010.09.05
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パキスタン軍の将校を怒らせる事件が起きている。アメリカ軍との定期協議のために、フロリダ州タンバに向かう予定だった。しかし、乗客からの通報を受けた航空会社は、パキスタン軍の将校たちを航空機から降ろし、事情聴取を行っている。この段階で、この集団がテロリストではなく、パキスタン軍の将校であることは判明したはずだが、一度セキュリティが発動すると解除するのは容易ではない。 パキスタン人の集団であり、イスラム教徒であるという事実は、アメリカ人に誤解を抱かせる要素になる。乗客からテロリストの疑いがあるという通報を受けると、事態を放置することは避けられない。アメリカの航空会社の要注意リストに載せられているのは、イスラム教徒であることや、殺気立った様子になる。パキスタン軍の将校ならば、普通の乗客と異なる雰囲気が存在したことはやむを得ないだろう。乗務員が将校たちのことを事前に知らされていなかったことも不幸だった。 一度セキュリティシステムが起動すると、徹底した取り調べが行われる。拘束された軍人たちにしてみると、このような屈辱を許す気にはならないだろう。怒りや反論は、むしろ事態を悪化させる。この処遇に腹を立てた将校たちは、アメリカ軍との協議を注視して、即座に帰国を決めている。テロに悩むアメリカ人にとって、高速や取り調べは当然の処置でも、テロリスト扱いされた軍人たちの怒りを鎮めることはできない。異なる文化の国同士が友好関係を深めるのは本当に難しい。
2010.09.04
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韓国では10月にグランプリが開催される予定になっている。すべての準備が整っているにもかかわらず、サーキットだけが完成しておらず、FIAの認可が下りていない。いまだに工事中であり、多くの建築物やコースの舗装が遅れているという。計画性に長けている韓国人が予定を見誤ったというには、事態が切迫しすぎている。エクレストンは開催に自信満々と言うが、サーキットが完成していないとF1開催は絵にかいたモチになる。 主催者側は突貫工事で舗装などを完成させると主張しているが、FIA関係者もサーキットの完成に疑いを抱き始めている。と言って、この段階で中止すると莫大な損害が発生して、主催者側が破たんに追い込まれてしまう。こうなったら、何が何でも工事を完成させ、グランプリを実現するしかない。サーキットの完成までに残された時間は限られている。短期間のうちに残された建築物を完成させ、コースの舗装をやり遂げるしかない。 主催者側は90%の施設がすでに完成しているというが、公開された写真は、埃だらけの建設現場をとらえている。コースの舗装はこれから始まる予定らしい。道路建設現場と同じで、10月までの短期間に突貫工事でどこまでやり遂げられるかが問われてくる。設計者のティルケは必ず完成すると豪語しているけれど、FIAの審査に間に合うかは語られていない。FIAは事前審査の日程を動かして、サーキットの工事を急がせている。万が一間に合わないと、主催者団体だけでなく、機材などを運搬するFOMやF1チームにも影響を及ぼす。 最終段階においては、政府や自治体なども支援に乗り出す可能性がある。ここまで投資しておいて、中止することは信頼性を揺るがしてしまう。残された建築物をしあげて、コースの舗装をやり遂げるには、大規模な人員の投入が必要になる。主催者団体にそれだけの経済力はないので、なかなか遅れを埋めることができないのだろう。となれば、あらゆる知恵を出し合って、未完成のサーキットを仕上げるしかない。中止はあらゆる部門の莫大な損失を生み出すのだから。
2010.09.02
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節約路線を掲げて、じり貧に追い込まれていたACミランが、突然目覚めて、大補強に乗り出してきたことが衝撃を与えている。バルセロナを追放されたイブラヒモビッチとシティから戦力外通告を受けているロビーニョの二人を獲得したのである。移籍金は二人合わせてかなりの額に達するはずのに、ケチケチ路線のACミランが大枚をはたいたのだから、驚くのも当然だろう。もちろん、イブラヒモビッチとロビーニョ獲得に、本来支払うべき移籍金に比較すれば、ミランは相当安く買えたことになる。 ACミランが移籍戦略を変更したのは、あまりに弱体化した戦力に尽きる。誰も優勝候補にあげない現状にクラブ内からも危機感が持ち上がっていたことは間違いない。イブラヒモビッチとロビーニョは自己主張の強い選手になる。ロナウジーニョやパトと同調できるかには疑問が残る。さらに、FWフンテラールとFWボリエッロを放出しているから、戦力面でのプラスは限られている。それでも、ロビーニョ、ロナウジーニョ、パトのブラジル人トリオとイブラヒモビッチの4トップの破壊力はセリエAで群を抜いている。 ライバルのインテルは、ほとんど戦力を補強をしていない。昨年度のメンバーを温存しての戦いになる。監督がスペイン人のベニテスに代わったことも大きな影響が出るだろう。インテルを欧州無敵のクラブと考える人間は減少している。その隙を突くことができれば、セリエAでの大逆転も不可能ではなくなる。今回の大補強の特色は、冬眠していたミランが突然に目覚めて、強力なFWを二人も獲得したことにある。攻撃力ではイタリア随一になったミランが、インテルを崩すことができるかが課題になる。それでも、優勝が絶望的だった昨シーズンに比較すれば飛躍の年になるだろう。
2010.09.01
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日本のサッカー界には、代表監督に大物を呼びたいという夢があった。Jリーグ関係者に頼るしかなかった狭い監督選びをやめて、候補者を世界に広げようという信念があった。ところが、世界的な監督を勧誘した経験がないので、原委員長が世界中を行脚して交渉するかしかなかった。交渉はうまくいかずに、これを察知したマスコミ陣が就任の遅れを叩き始めて監督騒動が勃発した。 冷静に考えてみれば、監督の就任時期など問題ではない。むしろ、焦って不適当な人物と契約することのほうが危険になる。代表チームの監督は、今後の日本サッカーの方向を大きく左右する。原委員長が「攻撃型サッカー」を標榜する人材にこだわった理由も理解できる。このままの日本風スタイルを続けると、強国に成長することは難しい。 築き上げてきた日本風のスタイルを捨てるには、勇気がいる。岡田ジャパンが獲得した成果を顧みずに、新たなサッカースタイルを取り入れることを執念深く求め続けたことに驚かされる。日本に足らないのは攻撃力と叫んでみても、点を取れるストライカーもいないし、敵陣に斬り込む精神が希薄では、いつまでも進化しない。長年続いてきたスタイルを変化させるには、それなりの大物を呼び、反対論を抑えつけねばならない。 イタリア人のアルベルト・ザッケローニは、ACミランでリーグ優勝している。その他に、インテルやユヴェントスを指揮している。これだけの百戦錬磨の監督が、日本代表監督に心を動かした意味は大きい。日本は南アフリカ大会で敗北したけれど、選手たちはサッカーの世界にインパクトを残したらしい。その強い印象がザッケーロの心をうごかしたことは間違いない。 いずれにしても、日本サッカー界の流れは変化せざるを得ない。それが成功するかどうかは、現時点で予測できない。ザッケローニ監督就任によって、何が始まるかには興味があるけれど、イタリア人の信念は固いことも知られている。日本人に染み付いている日本風のサッカーはどこにいくだろう。
2010.08.30
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山岳地帯に建設されたスパは、天候が激変しやすい。山岳地帯特有の気流がレースの邪魔をする。晴れていても、突然に降雨になるサーキットのレースは、対応が難しい。腕と度胸と運がないと到底勝てない。マクラーレンのハミルトンの運動神経は、こういう激変する環境に向いている。路面の水滴を恐れない心臓がスパには必要になる。ハミルトンはスタートに成功して、序盤からリードを保つことができた。 降雨があるとスパのレースは混乱する。水滴で視界が遮られて、リスクが異常に高まる。1周目にバリチェロとアロンソ、3位のベッテルと2位のバトンが接触して混乱に輪をかけた。セイフティカー出動とレインタイヤの選択と雨を計算して、最適のピットタイミングを狙うことが生き残りの絶対条件になる。冷静なアロンソさえも、コースアウトしてリタイヤに追い込まれるほど過酷な条件が続いた。 トップを走ることで落ち着きを見せていたハミルトンに比較すると、ベッテルは熱すぎる。バトンに仕掛けてリタイヤに追い込んでしまう。この判断は未熟すぎて話にならない。王者になる資格を疑われても仕方がないだろう。危険行為のペナルティまでくらって、周回遅れにされてしまった。ドライブの才能やマシンの性能だけでは、選手権を勝ち抜けないことを立証させてくれた。これだけ速いマシンと腕を持ちながら、ベッテルがなかなか勝てないのは、やはり明白な理由があると考えられる。 勝負に勝ったハミルトンがポイント1位に復活した。2位は執念の走りを続けたウェバーになった。バトンは2位を脱落させられたから、さぞや怒っているだろう。勝者に25ポイントも与える制度は、終盤での大逆転を可能にする。自分がレースに勝ち、ライバルが脱落すると、なんと25ポイント差がひっくり返ってしまう。フェラーリのアロンソも、王座獲得をあきらめてはいないだろう。次回のイタリアGPで、何が起きるかを予測することは難しい。
2010.08.30
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イブラヒモビッチがイタリアに戻る。マネージャーの個人攻撃で爆発寸前にまで迫っていたバルセロナの危機は回避できた。スペインに残れば、どんな事態が起きるかはわからなかった。そういう混乱がバルセロナの崩壊につながるという指摘がされていたので、経営陣も損失覚悟の移籍を認めるしかなかった。得をしたのは、強力なFWを獲得できたACミランだろう。本来ならば多額になる移籍金を減額され、報酬も下げることができた。イブラヒモビッチの腕のほうは間違いないと来れば、喜んで受け入れるしかない。 対立が激化していたバルセロナの内部崩壊を防ぐには、イタリアへの追放しかなかったというのが真相になる。指揮を執るグアルディオラ監督と使ってもらえないイブラヒモビッチの感情的対立は、組織内で相当に深刻化していた。さらにライバルの加入でほとんど出番がないとすれば、出ていくしかない。それを受け入れてくれるクラブを探すことが、バルセロナ首脳の役割になった。交渉するチャンスは一度しかなく、一気に決めないと危険を残す。 イブラヒモビッチと監督が会話を交わしたのが2回だけということに、二人の対立感情が露骨に表れている。独裁者としての地位を獲得したグアルディオラにしてみれば、反乱者であるイブラヒモビッチをベンチに置くことさえも許せなかったことは間違いない。対立の原因がどこから発生したかは、実のところはっきりしないけれど、指揮を執る監督側から解消する意志がないとすれば、追放しかない。 問題は、移籍金と報酬の高さにあった。そんな大金を支払えるのはビッグクラブしかなく、欧州でも数が限られる。ストライカーがほしかったACミランが名乗りを上げたことで、バルセロナは救われた。多少の金銭的な損失は問題にならないだろう。「邪魔者は消せ」というグアルディオラの執念は驚くべきものがある。ロナウジーニョ、エトー、イブラヒモビッチを追放するまで執念を燃やす性格は執念深い。この追放劇で、バルセロナに安定と平和がもたらされる。余計なことを考えずに勝負に専念できる。それが大きい。
2010.08.29
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マクラーレンを傘下に置いていたダイムラー社が、独立したF1チームを設立させたことは、世論を驚かせた。なにゆえに成功してきたプロジェクトを解消させるかの真意が伝わらずに疑問が残されていた。そして、マクラーレンが独自のスポーツカー生産に執念を燃やしていたことが、マクラーレン分離独立の理由だったことは意義深い。マクラーレン・メルセデスでは満足できないことを声高に主張したことが始まりだった。 国際経済の現状からみれば、高性能スポーツカーの生産開始の時期としてふさわしくない。2500万円以上するスポーツカーが本当に必要かを吟味すれば、ダイムラーの主張することが理解できる。危険な投資を現時点で行うことはないだろうというのが経済の論理になる。しかし、マクラーレンは設計を完了させ、生産開始に向かって走り始めていた。夢を実現させようというグループと現実派の対立は、マクラーレン独立という方向で決着した。 スポーツカーを生産するには投資が必要になる。少量生産のスポーツカーといえども、工場の建物や多数の従業員を雇用しなくてはならない。さらに世界的な販売網の設立と修理などのサービス網を作り上げるには資金が湯水のように必要になる。数百億円の資金は中東の金融機関から手に入れたという。マクラーレンのブランドと信用力を担保にして金を貸し、成功報酬を得るのが中東流になる。フェラーリの成功例があっても、計算高い銀行にはできない話だろう。 スポーツカーメーカーは危険を恐れて、自動車会社のグループ企業として運営されている。フェラーリはフィアット、ランボルギーニはVWグループに属することでリスクを軽減している。マクラーレンはダイムラーグループを飛び出して孤独の旅に出る。どこの支援も期待できないのに、多額の投資の引き金を引く。危険を恐れないことがマクラーレン首脳陣の性格なので、どうにもならない。マクラーレンF1は数少ない優良企業だったのに、あえて嵐の中に出る。なにも言葉が出てこない。
2010.08.28
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信じがたい数字ということが起こりうる。スペインは一応先進地域であり、生活も安定していた。ところが、リーマンショック以来、失業率は高止まりしている。その数字が20%を超えるとなると、政府の経済政策に疑惑が浮かび上がる。老若男女5人に一人が失業中というのは、とうてい先進国とは呼べない。ある部分のシステムが機能していないことを物語っている。 スペインはグラナダに象徴される夕景色の美しい国だった。イベリア半島には牧歌的な雰囲気が残されており、不動産業者はドイツなどの先進地域の人々に格安の不動産物件を売り出した。土地や住宅価格はドイツの数分の一以下であり、温暖地のスペインに別荘を持つという夢はたやすく実現できた。 不動産ブームは、スペイン人の不動産業者と建設業者を喜ばせ、ドイツ人たちに夢を与えてきた。ところが、不動産物語は突然に停止されてしまう。金融危機の発生で、すべての海外融資が止まってしまった。スペインには、数万件の売れ残り別荘が並んでいたのに、ローンがつかないと売れない。スペイン国内の不動産部門が急成長していたために、金融危機への即座の対応が不可能になっていた。売れ残った別荘は、今でも格安で並んでいるが、スペイン人には高価すぎて手を出せないという。 先進国と途上国の差は、単なる貧富の差ではない。貧しくても、工場などの投資が続く地域もあれば、まったく投資が機能していない地域もある。その国にどれくらいの生産力があり、先進的な工場群があるかは、判別の材料になる。先進国でも投資の行われない地域は即座に廃れるし、貧しくても工場地帯が建設される地域は、さらに成長できる。そこには政府による経済政策が大きな影響を与える。すべての方策に失敗したスペインは、世界不況の回復を待つしかないところが悲しい。グラナダの別荘は夢にすぎなかったのだろうか。
2010.08.03
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道路爆弾のことをIEDと呼ぶ。要するに手製爆弾のことであり、正規軍の装甲車などを道路端で爆破する兵器になる。イラクで製造が始まった当初は、自家製の火薬や起爆装置を用いた原始的な兵器だった。それでも、道路爆弾は味方の損害が少ないゆえに重用され、中東地域に広がり始めた。黒色火薬などの材料ではなく、地雷や砲弾などを改造して、電子起爆装置を取り付けた本格的なIEDが完成したのは最近のことになる。 IED製造工場は、地雷や砲弾などが自由に手に入るイラクやパキスタンにあり、世界各地に輸出されている。アフガニスタンなどの爆破映像を見ると威力はすさまじい。高原の道路などに仕掛けてあると、誰も探知することはできない。米軍の装甲車などは一発で吹き飛ばされてしまう。IEDは簡単に移動でき、即座に設置できる。無線や携帯などでNATO軍の移動情報が伝わると、通過予測地点に何か所も仕掛けられる。そして、道路を通過するのを辛抱強く待つ。海外の派遣軍が、網のように張り巡らされたIED包囲網を破ることは難しい。 アフガニスタンで米軍と戦っていたのはタリバンだったが、パキスタン政府の弾圧もあり、勢力は減退している。そこで、タリバンはゲリラ戦を挑むことをやめ、IEDに切り替えている。これならば、自軍の損害を出さずにNATO軍を攻撃できる。米軍と戦っているのはタリバンだけではなく、アフガニスタンをキリスト教徒から救うために、世界中からムジャヒディンが集結している。タリバンはアフガニスタン南部、ムジャヒディンは北部に砦を構えて米軍と戦っている。タリバンは原理主義者であり、政治的な思惑の違いからイスラム義勇軍とは協調できないらしい。 アフガニスタンは治安が悪く、山賊なども出没するので、村人は自警団を組織している。本来は、この組織が治安の中核になるべきだろうが、アメリカ軍は反乱を恐れて自警団を認めない。多くの村人たちも、カブールの中央政府を信頼していないから、武装集団は争いの種になる。さらに、米軍やNATO軍は、タリバンとムジャヒディンと自警団の区別がつかない。そこで、武装集団を発見すると即座に空爆を行ってしまう。空爆の被害の出る各地の村人の米軍への反感は強い。村人がIEDの犠牲者になることはほとんどないのを見ても、何らかの情報は伝わっているはずだが、IEDの真相は闇の中にある。
2010.08.01
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この数日間、叩かれ続けたのがフェリッペ・マッサだった。ブラジルでは操り人形扱いされて、F1ドライバーとしての敬意を失ってしまった。本人にしてみれば、納得のいかない指令に従ったに過ぎないのに、人格さえも無視されて、F1ドライバー失格の烙印を押されてしまった。この不名誉を挽回するには、ハンガリーで勝つしかない。人間がこういう状況に落ち込むと、むしろファイトがわき上がってくる。大逆転の狼煙を上げようと覚悟を決めるのが普通だろう。 マッサがF1世界で生き残ろうとするならば、ハンガリーで数字を残すしかない。フェラーリのマシンは調子がよいし、レッドブルにタイム的に劣る部分はない。ハンガリーは低速の抜きにくいコースだから、予選結果がものをいう。現状でレッドブルを上回るタイムを出せるマシンはフェラーリしかない。マッサはその一台を持っているのだから、チャンスはある。 今年のブリヂストンは、特殊なタイヤの組み合わせをしている。耐久性のあるハードタイヤと10周程度しか持たないソフトタイヤの組み合わせになる。あまりに極端な特性を持っているので、ほとんどのチームは最適セットアップができない。どのようにセットするかでドライバー同士も喧嘩腰になってきた。最適解を手に入れていたのは、事実上レッドブルしかなかったのに、フェラーリが割り込んで、互角の戦いが始まっている。 マッサは命をかけたドライブをすべきだろう。予選1位を取れば、ハンガリーでは圧倒的な有利になる。2位以下は行列になるから、ベッテルだけをマークすればよい。ウェバーが出てきたら、ベッテルと喧嘩させればよい。なかなか勝てないレッドブルは、相当焦ってきているので、マッサにチャンスは転がっている。ベッテルやウェバーを弾き飛ばすくらいの覚悟で1コーナーに飛び込めるかで勝負は決まる。マッサに怖いものなんてないのだから。
2010.07.31
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海底油田は、最盛期に大儲けの対象になる。それゆえに、メキシコ湾岸には、大小様々な海底油田が存在して稼働している。しかし、原油が掘り尽くされると油田は放置され、廃墟として存在し続ける。これまでは、環境対応したルールが存在しなかったらしく、まさに海中に放置されていた。そこに、航行中の船舶が衝突して、噴出口から石油と天然ガスが噴き出し、大騒ぎになっている。石油会社の人間は、廃墟に船をぶつける人間などいないと考えていたらしい。 掘り尽くされた油田なので、噴出量は限られる。それでも原油の汚染は広がり、流出を止めるまでは広がり続ける。採掘会社はとっくに操業を停止していたので、衝突事件に驚いているという。噴出孔をふさぐ工事などを行うには、それなりの費用がかかるから頭が痛い。一度廃棄した油田が環境汚染をもたらしたのでは、たしかにたまらないだろう。アメリカは世界有数の石油産出国ではあるが、環境汚染に有効な手立てを持っていないことが理解できる。 海底油田は、利益をもたらしてくれる福の神ではない。制御を誤ると地獄の門を開くことになる。日本は原油資源に無縁の状態が続いていたから、石油を金儲けとしてしか考えていない。メキシコ湾の爆破事故や今回の衝突事故を見ると、そんなに甘い話でないことが理解できる。といって、輸入できる石油がないと日本は破たんさせられる。太平洋のどこかに海底油田が眠っていても、それを掘ることは、危険と隣り合わせになる。 ロシアやサウジ、中国などの大規模油田地帯が枯渇し始めている。その減少分を埋め合わせるために、石油メジャーは世界中の海底を試掘してきた。おかげで30年分くらいの資源を見つけることができたけれど、石油の需要の伸びには届かない。石油に代わるエネルギーは世界中で模索されているけれど、決定的なものは見つかっていない。石油の枯渇が始まるまでに、人類は代替手段を発見できるだろうか。
2010.07.30
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メキシコ湾の海底油田リグが爆発炎上してから、BPは環境対策に莫大な資金を投入させられた。わずか3カ月程度で軽く2兆円を超え、優良企業だったBPを地獄に引きづり込んでいる。いくら資金に余裕のある石油企業でも、2兆円以上の損失を出すと、資金繰りが厳しくなる。使われているのは、石油回収費用や環境対策費や漁業の休業保証金などになる。一つ一つはわずかな額でも、合計すると2兆円を超えるのが石油事故の恐ろしいところだろう。もちろん、これで終わりではなく、さらに数カ月損失は続くから、いったい何兆円の現金が消耗するかさえもわからない。 BPは資金を確保するために、世界中の石油施設を売り急いでいる。保有しておけば、将来にわたって石油が出てくる油田も、二束三文で売り払わないと資金が足らなくなる。といって、BPの基幹油田は売り払うわけにもいかず、アメリカ政府は厳しい対応に出ているから、補償金を支払わないわけにもいかない。世界有数の石油企業BPも、メキシコ湾騒動が終わるころには、世界企業の枠から外れて、小さな勢力に転落させられてしまう。 こうなった原因ははっきりしている。海底1600メートルで石油を採掘する権利だけを強欲に欲しがり、採掘する技術開発をなおざりにしてきたことに原因がある。石油会社は数々の石油利権を保有しているけれど、ほとんどは政治がらみのものになる。無名の企業に海底を採掘する権利を与える政府はない。実績と技術を優先して採掘権を与えると、そこには石油メジャーが並んでしまう。 海底石油の採掘技術を持つ企業は政治力がないから、メジャーの下請けに入るしかない。石油メジャーが海底石油の採掘技術を持つわけではなく、専門メーカーに採掘を委託することになる。専門メーカーは石油リグを設計し、建造してメキシコ湾まで牽引する。最先端の採掘技術が詰まった石油リグは、企業秘密の塊であり、外部の人間が技術を審査することなどできない。 BPは採掘会社に丸投げして、利益だけをむさぼろうとした。1600メートルの深海で何が起きているかなど探ることもできない。採掘現場はロボット操作で行われるから、設計図通りに施工されているかなどは、誰も知らない。石油噴出孔にはふたが付いていて、万が一の時には閉鎖される設計になってても、現実には石油があふれ出てくる。やっと石油の流出を止めた時には、信じがたいほどの原油が海底を汚染させている。これらの汚染物質を除去する費用は天文学的になってくる。海底石油を採掘する企業など地球から消えると叫ばれるのは、至極もっともなことだろうな。
2010.07.29
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サッカー界の実力評価では、戦力的に見て、ブラジル1位とアルゼンチン2位は堅いところだろう。この二つの国に匹敵する戦力を持つ国は存在しない。それでも、あっさりと敗北するのがサッカーという競技の厳しさになる。強い戦力を持っていても、それを生かせる戦術や作戦が機能しないと、まともに戦うことさえできない現実がある。われわれは、その事実を南アで痛感させられている。 ブラジルのドゥンガ監督が解任されたのは、当然だろう。ブラジルらしい華やかな動きが消えていたことは事実であり、それが守備重視の配置と作戦によるものであることははっきりしている。責任を取らせるのは、カカやファビアーノではなく、指揮官そのものになる。 アルゼンチン敗北の責任追及は難しい。守備が弱いといっても、最初から守備重視の配置や戦術を目指していない。インテルでチャンピオンズリーグを制したサネティやカンビアッソなどは、代表チームに呼ばれてすらいない。ほとんど無防御で、ドイツのカウンター攻撃に撃破されてしまった。この原因を分析して、適切な対策を取れる知恵のある指揮官をアルゼンチンは求めている。 それに対して、マラドーナはサッカーを好きなようにやらせてくれと言うばかりなので、話し合いが進展しない。アルゼンチン協会は、一定の枠をはめたうえで、マラドーナの継投を狙っていたけれど、規制できないのであれば辞めさせるしかないと判断したらしい。もともと人材は豊富なのだから。 ドゥンガにもこだわりがあり、マラドーナにもこだわりがある。しかし、サッカーの歴史は、勝者だけが評価され、敗者は一顧だにされない。メッシがどうして機能しなかったのかを論議してもはじまらない。他の国はメッシを抑えるために、万全の対策を準備していた。それを乗り越えるだけの戦術をマラドーナがとれなかったから、メッシは得点できず、アルゼンチンは敗北するしかなかった。ドイツとの戦いは、それほど過酷なものであり、甘い見込みと戦術で乗り切れるものではなかった。それを認識できずに、自分好みのコーチ陣の人選を主張するマラドーナは、アルゼンチンに無用の存在になってしまった。
2010.07.28
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ドイツGPで起きたチームオーダー問題によって、フェラーリは嘲笑の対象になっている。他のチームは怒るというよりも、フェラーリの間抜けさ加減に驚いている。アロンソに抜かせるならば、マッサではなく、アロンソに追い越せと指示すれば済む。マッサもそれを邪魔したりはしないだろう。大騒動になったチームオーダー騒動の陰になって、すっかり忘れ去られているのが、フェラーリの速さの復活だった。 金曜日から、フェラーリの速さにレッドブルは腰を抜かしていた。マクラーレンと異なって、開幕からレッドブルに対抗できる速さを持っていなかったからになる。突然にレッドブルと互角以上のタイムを出すのだから、改良部分に注目が集まったのは当然になる。レッドブルの秘密は、フェラーリによって完全に解き放たれてしまったのに、マクラーレンとメルセデスはまったく探知していない。これからの数戦は、フェラーリとレッドブルの一騎討ちになる。アロンソの腕前は一番であり、ベッテルのようなミスを犯さない。 マシンの改良には様々な規制があり、改良に大金をかけることのないように、FIAによってさまざまな仕掛けがしてある。そのために、大掛かりなアップデートは、一時期にまとめてやるしかない。一つ一つの技術によるタイムアップは限られていて、複数の技術を組み合わせて、一気に合計タイムを上げるしかない。フェラーリの復活の秘密はここにある。 重要なことは、わずか一回限りの改良で、レッドブルを上回るタイムを記録できるようにマシンを進化させたことにある。何をどう組み合わせると、こういう魔術が可能になるかはわからない。それでも、シーズン途中で立場が逆転されるアップデートは少ない。その技術革新をフェラーリは取り入れることができ、メルセデスは全然気が付いていない。マクラーレンは別の方法を探っている。フェラーリの技術の組み合わせは、さほど驚くような進化ではなくとも、組み合わせによって効くという筋のものだろう。 茶番劇によって屈辱を受けたアロンソとマッサは、ハンガリー以降は予選1位と2位を狙いに行くだろう。逆転を狙えるマシンにフェラーリは進化している。決勝も当然ながら速くなる。フェラーリを止めることのできるのは、事実上ベッテルしかないから、これまでの流れは大きく変化する。フェラーリを見ても、外観上の変更点は少ないにもかかわらず、これだけのタイムを向上させている。アロンソが今回の限られたチャンスを生かして、茶番劇の屈辱を晴らす動きに出てくることは間違いない。
2010.07.27
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フェラーリがホッケンハイムで速さを取り戻したことは、大きな出来事だった。今シーズンに関して言えば、レッドブルよりも速いマシンは存在していなかったから、この順位が逆転させた技術力に注目が集まるべきだった。ところが、フェラーリのエンジニアが発した言葉が波紋を投げかけていく。「アロンソのほうが速い。何をすべきかわかっているな」という言葉の意味が問われている。これをチームオーダーを指す言葉だとして、厳しく罰すべきだという意見がある。チームオーダーは出されていないけれど、マッサがこの指示に素直に従ったように、順位を入れ替えることを狙った強い命令だと指摘することはできる。 スチュワードには、この事件を裁く能力も権力も与えられていなかったので、FIAモータースポーツ評議会に持ち込まれることになった。チームオーダーの禁止は、シューマッハとバリチェロの入れ替え事件を出発点にしている。フェラーリには、明確な序列と権限があり、ドライバーは上層部の指示に従わねばならない。無線の指令を無視することはできても、無事では済まない。エンジニアが自分の判断で順位の入れ替えを暗示できるはずはなく、上層部の指示に従っていると考えるべきだろう。これはフェラーリ組織内の方法論であり、FIAが関与するべきものとは違う。 フェラーリは、今シーズンに何回かスチュワードの判断を批判している。適正な判断が適正な時間内に下せない場合が多く、トラブルの要因になっている。しかし、今回の事件は、専門家や弁護士の話し合いが必要な深刻な出来事であり、簡単にはFIAも判断を下せないだろう。FIA会長がフェラーリ出身のジャン・トッドならばなおさらになる。FIAがフェラーリを裁いたり、さらなる罰則を与えることは、F1に危険を招く。地下に隠されている政治的な騒動を揺り動かすからになる。そもそもスポーツ評議会の役員は、そんな政治的判断を下せない。 F1チーム側にとって重大なのは、チームオーダーの禁止条項により、レース中に必要な指示が出しにくくなっている現状にある。同じチームのドライバーを追い越してはいけないという法はない。同僚を追い越すことが不法ではなく、順位を意識的に操作することが禁止されている。そして、マッサは自分の判断で道を譲ったと発言しているので、法律論的には問題にならない。しかし、フェラーリのとった行動はあまりに愚かすぎて批判されている。もちろん、FIAはフェラーリの扱い方を心得ているから、そんなに大ごとにはならないだろう。この愚かな行動に対して、10万ドルの罰金ですめば本当に安い。
2010.07.26
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旧ソ連海軍は、アメリカ空母群の攻撃力を封じるために、さまざまな兵器を用意していた。その中でも単純明快なのが核魚雷になる。これは普通の魚雷の弾頭に水爆を取り付けただけという構成になる。魚雷の射程は数千メートルなので、その位置から発射すると、魚雷は米空母に接近する。空母に命中させることは難しくても、近辺で核爆発を起こせば、相当のダメージを与えられるという発想の兵器だった。うっかりすると、自分にも被害が及んでくるほどの単純明快な兵器であり、ソ連以外が核魚雷を装備したという話は聞かないのも無理はない。 原子力潜水艦には、ポラリス型と攻撃型の2種類がある。ポラリス型はICBMを搭載して、敵の基地や都市を破壊することが最終目的になる。水中にミサイル発射基地があるのと同じであり、発見しにくく、攻撃するのが難しい。ミサイルには複数の核弾頭が搭載されるから、1隻の潜水艦の破壊力は甚大になる。このポラリス型潜水艦を攻撃することを目的としたのが、攻撃型原子力潜水艦になる。しかし、どういう兵器を搭載すれば効果的かは議論があって、アメリカ軍は巡航ミサイル中心に切り替えている。潜水艦の魚雷そのものは射程も短く、あまり役に立たない兵器に分類されている。 魚雷の命中率を高めるために発明されたのが有線魚雷だった。これまでの打ちっぱなしではなく、数千メートルのワイヤーを使って、魚雷を電子制御する。敵の位置を正しく計測できれば、まず100発100中で命中させることができる。海上艦の位置はレーダーなどで正確に探知できても、潜水艦の位置を探知することは難しいから、潜水艦を発見した時には、すでに攻撃されている危険が高い。冷戦が終わってほっとしているのは、やはりロシア海軍首脳だろう。 どんな大型艦艇も、近くで水爆を爆発させられたら無事では済まない。冷戦当時のソ連首脳がどれくらい追いつめられていたかは、核魚雷の配備を見ればわかる。数発の核魚雷を米艦隊に向けて発射すれば、何が起きるかを察知できる。そこからは世界の破壊しか生まれない。それを覚悟して、ソ連艦隊は訓練に励んでいたというから、危険な時代だった。こんな野蛮な兵器を本気で開発して装備していた旧ソ連艦隊は、やはり恐ろしげな存在だったのである。
2010.07.24
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浦和レッズ発展の功績を評価されてサッカー協会の会長に就任したのが犬飼基昭だった。Jリーグを葉転させられるという期待が込められていたのだろう。しかし、就任してからの2年間は、批判の連続であり、肝心のJリーグ側から不適格の烙印を押されて、会長交代が決まった。秋春制を強く主張して、雪国や北海道のクラブから批判を受けたことも痛かった。これほど批判に無頓着な指導者も少なくないだろう。もっと民主的な会長がほしいという声に押されて、会長を辞めさせられることになった。 この2年間のJリーグは厳しい状態が続いている。大分やヴェルディのように経営破たんするクラブが続いている。日本国内に40ものプロクラブが必要か、存在できるかという議論を無視して、各地にサッカークラブを濫造してきた。どこも経営不振であり、特に地方都市のクラブが困窮している。それにもかかわらず、無定見にクラブ数を増やすというのは驚きなのだが、経営の実態もお粗末なものに終始している。40ものサッカークラブが狭い国内に存立できるなどと考えないほうが賢明だろう。 サッカー人気を凋落させた責任も大きい。地上波でサッカー番組を流すことも激減している。ローカル局による地方試合の中継も激減して、ほとんどサッカーの試合を見ることができない。多くのサッカーファンはスペインやイングランドの試合をBSなどで見ているにすぎない。この2年間に失ったエネルギーは大きく、これを取り戻ることは難しい。成功したサッカーくじも報酬がサッカー界に戻されないという憂き目を見ている。これからの数年間はJリーグ淘汰の時代になる。生き残れたクラブは次の世代に移行できるが、経営不振のクラブは滅亡するしかない。数億円を調達できずに消滅させられるというのも残酷すぎる話なのだけれど。
2010.07.23
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FIAは、どうして13番目のチームにこだわり続けるのだろう。これまでの歴史的な経過を見ても、ろくな戦いしかできないF1チームが次々に誕生している。ほとんど戦闘力のないマシンを使っているのに、すでに独裁者や内部対立があり、正しい発展の方向性を示せない。新たに参戦枠を獲得するチームが、ゼロに近い戦闘力と資金不足を解消できないならば、無理をして13番目のチームを認めることはない。 新参チームの中には、まじめに資金調達計画を持っている組織もあるけれど、ほとんどは誇大妄想計画にすぎない。理想と現実のギャップの大きさを認識していれば、大口をたたくこともないのに、誇大妄想ゆえの資金難に伴うトラブルが絶えない。FIAの審査の時には、どのチームも銀行預金が数十億円ある。毎月支出される金額は10億円近いから、新規のスポンサーを見つけないと、いずれ金庫が空になる。1年間は耐えられても、次の年の参戦費用があるかは誰も知らない。 新参チームがまともに勝負できるマシンを開発できるかが鍵になると考えられていた。しかし、過去のトヨタやBMWの結果を見れば、戦闘力のあるマシンを開発することは、ワークスでも難しい。いわんや、新規参入チームには開発予算がないので、壊れたパーツを補修する程度のアップデートでごまかさねばならない。自主開発もだめ、ダラーラのような専門メーカー開発もだめとなると、競争力を得る方法はフェラーリなどのマシンを買うしかないだろう。新参F1チームが予選をまともに戦える方法論はこれしかない。 ウィリアムズなどの開発能力のあるプライベートチームは、新規チームがフェラーリやマクラーレンを購入できると立場を失う。そのために、独自開発のマシンを製造することを義務付けさせている。この規約をやめさせることができるかどうかが、新規参入チームの運命を分ける。フェラーリやマクラーレンもマシン商売ができるから、これで利益を上げられる。5秒も遅いマシンを同じF1規格で走らせることの矛盾をそろそろ解決しないと。
2010.07.21
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FOMを運営するバーニー・エクレストンは、F1をネタにして金儲けに専念している。F1からあがる収益は1000億円以上であり、スポーツイベントとしては最大の利益を上げている。収益の多くはTV放映権とサーキットに課せられるF1開催権料になる。そのほかに広告やイベントをこなしている。このありさまを見て、F1に投資すれば大もうけできると考える人物や組織が出てきても不思議ではない。 ドバイの建設業者がFOMと手を握って、F1テーマパークを建設するという計画を打ち出した時には、誰もが驚かされた。鈴鹿やシルバーストーンならば、世界から観光客が押し寄せる可能性がある。しかし、F1に無縁のドバイにテーマパークを建設しても、入場者が限られる。裕福な海外旅行者というのがターゲットだと大失敗する危険性が高い。 ドバイの人口は120万人と呼ばれる。しかし、80%は出稼ぎ外国人であり、経済力のあるドバイ人の数は限られる。そんな小国のドバイにF1テーマパークを建設しても、開園すれば赤字は免れない。建設予算は500億円だったというが、半分まで進んだところでドバイショックに見舞われ、すべての工事は中断されている。実は、F1以外にも数百のプロジェクトが中断されているというから、再建は絶望的だろう。 ドバイ政府の首脳は、あらゆる投資の口実を祭り上げて、欧米の銀行から多額の資金を借り入れてきた。四兆円のGNPに比較して、七十兆円の建設計画を練っていたというから、やはり経済の実態を顧みない愚か者の集団というしかない。 人口の大部分を占めるインドやバングラの出稼ぎ労働者は貧しく、F1テーマパークの客にさえなれない。豊かなドバイ人だって、F1に関心があるものは限られてしまう。そんな地域で五百億円もの投資をして、F1テーマパークを建設してしまったというのは悲劇になる。 工事途中で放置されているF1テーマパークを再建することは難しく、投資家の目にも入らない雑な計画だと理解できる。ドバイのほとんどの事業が誇大妄想に取りつかれて、規模の拡大と資金を浪費してきた。どうやって、収拾策を取り繕うかさえも見えておらず、砂漠の巨大な廃墟として風化していくのを見るだけになるかもしれない。投資家も、銀行家も、政府首脳も、砂漠の廃墟を予見できなかったことに驚かされる。
2010.07.14
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レッドブルのドライバー同士が微妙な関係にあることは間違いない。新型のフロントウィングをウェバーから外し、ベッテルに装着したという話は、一つの結論を導き出している。レッドブルにとって、NO1はベッテルであり、NO2がウェバーになることは当然の話だった。ただし、さまざまな組織内のルールにより、そのことは鮮明にされてこなかった。それがレッドブル同士のバトルという危険な様相を生み出している。 レッドブルの二人の戦いを見れば、きわめて危険な関係に追い込まれていることが理解できる。圧倒的な速さを持つマシンをドライブする二人が、功を争って接触覚悟のバトルを試みる。前にも事故が一度起きているから、二人の闘争心には限界はない。互いに譲る気持ちが全くないことも、レッドブルの特色になる。ウェバーは遠慮せずにベッテルを攻略する覚悟ができている。二度とやってくるかわからないチャンスを迎えているからになる。 ウェバーがレッドブルとの契約を1年間延長した時、喧嘩腰のウェバーと来年度も契約することは不思議だった、王座を狙う野心家ベッテルと今年が最初で最後のチャンスであるウェバーは互いに相容れない心境にある。友人とはとても言えない冷めた関係にあり、何とかしてライバルを蹴落として勝とうと考えている。もし、レッドブル首脳がベッテルを優遇するつもりならば、ウェバーに向かって宣言する必要がある。 このまま、ベッテル優遇を続けるならば、ウェバーがどんな行動をとるかが見えてこない。ウェバーにベッテルをサポートする気持ちがないとすれば、同一チーム内での激しい戦いになる。シルバーストーン1コーナーのせめぎあいを見れば、二人の内輪もめは広がる。もっともすぐれているマシンを持っているのに、チャンピオンを獲得できない可能性が出てきた。
2010.07.12
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レッドブルの採用した下方排気システムを技術的に熟成させることは容易ではないらしい。すでにメルセデスGPは排気ガスの熱対策に失敗して、見直しを始めている。フェラーリは耐熱部品を組み込んだミッションケースを開発することで乗り越えようとしている。狭い空間の中で、800馬力のエンジンが発する熱を下方に流すのは冷却設計が必要になる。それでも、レッドブルの圧倒的な速さを目の前にしては、開発するしかない。 メルセデスは下方排気システムそのものに疑いを抱き始めている。効果が薄いどころか、操縦性にマイナス面が出ているという。レッドブルにしてみれば、ライバルチームのマシン開発を混乱させたことで、第一の目的は達成されたのかもしれない。ウィリアムズも遅ればせながら、下方排気のシステムを取り入れている。バリチェロの急上昇ぶりを見ると、設計次第によっては効果が出ることも確かめられている。 マクラーレンは英国GPにおいて、最新型アップデートを行い、レッドブル追撃ののろしを上げるつもりだった。計算上では、0・5秒ものタイム向上が可能とされていた。しかし、マクラーレンの排気システムは空力に悪影響を与えて、操縦性を悪化させるという結末をもたらせている。下方排気によるメリットよりも、コースアウトなどによる危険が高いと判断して、元のパッケージに戻すことにしてしまた。これを見ると、ニューイの陰謀は功を奏したのである。 マクラーレンは元のパッケージに戻して、シルバーストーンを戦うことになってしまったが、バトンはうまく対応できずにQ2予選落ちしている。ハミルトンは何とか予選4位に滑り込み、決勝でも2位につけている。レッドブルと互角に戦えるのがマクラーレンだけという現状で、開発に失敗したダメージは大きい。とはいっても、あきらめるつもりはなく、新たなパッケージをドイツGPに持ち込むという。大したことのない技術なのか、本物の技術かの判断はつかない。
2010.07.11
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米国に潜入して、諜報活動を行っていたロシア人組織が逮捕された。その中で目立っていたのは、美人スパイの存在だった。これほど露骨にロシア諜報活動の狙いが鮮明だった事件もない。米国のような自由主義の国では、ほとんどの情報は手に入れられる。しかし、国防省や国務省の機密情報を手に入れることは難しく、何重もの壁に閉ざされている。そこで、ロシア美人スパイの登場になる。肉体の美しさを武器にして、国家機密情報を手に入れるという諜報機関の常とう手段だろう。 ロシアの情報機関は、冷戦が消滅した時代になると、組織の存在価値を証明しなくてはならないなった。自由に入手できる情報を分析しているのでは、研究機関と変わりない。諜報員を米国や欧州に送り込み、普通の方法では手に入らない機密を手に入れることが、ロシア諜報機関の存在価値を高める。プーチン首相などにしても、ロシア外務省から手に入れられない情報を知ることができるのならば、諜報機関の予算を認めるだろう。プーチンはKGBのボスだった時代もあるのだから、諜報活動の意味を熟知している。 米国政府がせっかく捕らえた10人のスパイを追放処分にしたことは、政治的思惑からの行動だろう。冷戦時代に逆戻りする愚かさは避けねばならない。といって、FBIが探知してスパイ組織を放置できない。危険の芽は摘み取らねばならないが、ロシアとの外交関係が悪化することは避けたい。そこで、スパイ交換に踏み切ることになった。機密情報を海外に流して逮捕されている人間は多数存在する。そのなかで、米国政府に有用な者のリストを提出する。スパイ罪や反逆罪は重罪なので、交換によって救出できるならば安い。 諜報活動を行って逮捕されたものの救出を行うことは国家の義務になる。逮捕されたスパイを見殺しにすると、すべてを自白してしまう。そうなる前に、救出しなくてはならない。ロシア人が米国に出張して、どれだけの機密情報を集められるかには疑問が残る。昔風のやり方で現金の受け渡しをしたり、暗号で指示したりするなど時代錯誤的なロシア諜報組織は滅亡した。そういう時代錯誤的な方法論が認められるのも、クレムリンの特色だろう。
2010.07.09
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レッドブルの始めたエンジン排気ガスの下方排気システムは、序盤は黙殺されていた。レッドブルの速さの秘密は、サスペンションシステムにあると思われていたからになる。エンジニアなどが排気ガスの下方排気システムの優位性に気がつくのは遅れてしまった。下方排気システムのデメリットがいくつか見えていたからだろう。 上方に排気ガスを排出するシステムの設計は、エンジニアも慣れている。空力分析や温度に関する問題もほとんどない。ところが、下方排気システムは熱がボディーの下を通過する。そこには、サスペンションアームやディフィーザーなどのパーツが並んでいる。ボディの下はトンネルのような状態になり、熱の逃げ場がない。最初から耐熱パーツを組み込んでいるレッドブルには無縁な話でも、あわてて改造されたマシンは、多くの下部パーツが排熱の影響を受ける。 カーボンは強度と耐熱性に優れた物資だが、プラスチックと多層構造になっているパーツは熱で変形しやすい。それを防ぐには、パーツを外から断熱材で覆うしかない。排気ガスにさらされるパーツをすべて設計し直すことは難しいので、周りを断熱材で覆うのだが、その。重さと空力への影響が災いして、下方排気のメリットを生かすことができないらしい。あえて、マクラーレンやフェラーリが実戦投入を決めたのは、その効果を確認するためだろう。 そろそろ、各チームは来年度のマシンの仕様を決めねばならない。下方排気システムの効果が歴然ならば、来年度のマシン設計に取り入れる必要がある。たいして役に立たなければ、経験を蓄積している従来の設計に戻したほうが賢い。それを判断するには、F1マシンに搭載して、実戦での経過を見ないと話にならない。せっかく搭載してみても、メルセデスのようにむしろマイナスの効果を発揮する場合も出てくる。上方排気のウィリアムズに負けるようでは、下方排気を採用する意味がない。名人ロス・ブランでさえも、下方排気システムの選択に悩まされそうな時期に来ている。
2010.07.05
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米国テキサス州オースティンでアメリカGPが行われるという契約が発表されてから、約1カ月が経過した。ところが、主催者側にまったくの動きがないことに驚かされる。市長はF1歓迎の談話を発表したけれど、公的資金の投入には言及していない。サーキットの建設には、土地買収と建設費の確保が必要になるのに、主催者側は沈黙を続けている。土地の買収よりもF1開催発表が先行したので、買収交渉に難儀していることは予想できる。 サーキットの建設に絶対に必要な土地となれば、土地の所有者は莫大な請求をしてくる。いくら吹っかけても、要求をのんで買わざるを得ない立場にある。サーキットを建設できる土地は限られている。砂漠や交通機関が不便なところに建設するわけにもいかない。土地の買収が決まらないと、サーキットの設計や構想も始めることができない。F1開催が秘密のうちに土地だけは手を打っておくべきだったと後悔しても遅すぎる。 アメリカGPの主催者側にとって最大の難問は、建設資金にある。アラブ諸国のように石油資金援助が期待できないとなると、頼みの綱は公的資金しかない。しかし、プロモーター側は公的資金を頼みにしないと公言している。それゆえに、知事や市長もF1開催を歓迎している。サーキットの建設費用は道路部分だけでも200億円近くかかる。それにピットやスタンドを建設すると莫大な資金が必要になる。その金をどうやって工面するかが鮮明ではない。投資ファンドが金を貸してくれても、利子は20%近いものになる。300億円借りると利子だけで数十億円むしり取られる。 不思議なのは、オースティンから何の情報も入ってこない現実にある。これだけ盛り上げておいて、夜逃げをされてはたまらない。アメリカのマスコミも突撃取材を繰り返しているようだが、何も手に入れていない。2012年開催とすれば、すでにサーキットの建設に入らないと難しくなる。それなのに、どこに建設するかを市長も、議員も知らない。ファンドを設立して、各層から資金集めをするという手もあるが、これから金を集めるのでは、期限に間に合わない。契約を守らないとエクレストンは骨の髄まで絞り取るだろう。先が読めない。
2010.07.02
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バレンシアは市街地コースなので、追い越しがしにくい。予選の順位の通りの行列レースになりやすい。その退屈さを破ったのは、またしてもレッドブルだったことに驚かされる。レッドブルが独走できないのは宿命かもしれない。 予選2位のウェバーはスタートに失敗して、渋滞の中に囲まれてしまった。この囲みを解くには、知恵を絞らねばならない。そこで、早めのタイヤ交換を行って、渋滞から抜け出る作戦をとる。この作戦をとったのは、摩耗の速いソフトタイヤとなかなか摩耗しないハードタイヤの極端な組み合わせが根底にある。タイヤ交換すると一気に順位が下がり、新参グループに出会うことになる。同一周回で青旗は出ないから、実力で追い越さねばならない。 二つ目の深刻な問題が露呈された。レッドブルとロータスでは、あまりに空力性能が違う。高速でコースを抜けられるレッドブルと違い、ロータスはブレーキを使って速度を落とす必要がある。コバライネンに接近したウェバーは、ロータスの早めのブレーキポイントを予測できなかった。ロータスの急激な減速に対応できずに接触してしまう。大きな速度差のレーシングマシンが接触すると、莫大なエネルギーが発生する。ウェバーは弾き飛ばされてクラッシュした。 この事故により、セイフティカーが出動した。2位のハミルトンは前を塞がれてベッテルに逃げられることを恐れた。セイフティーカ―を追い越しすることはご法度なのだが、追撃だけを考えていたハミルトンは、ペナルティ覚悟の追い越しを断行する。これに驚いたのが、フェラーリの常識人アロンソだった。アロンソの選択肢は二つあった。ハミルトンのようにルールを破ってベッテルを追撃する方法と、順法精神を優先してセイフティカーに従う方法だった。優等生のアロンソはじっとこらえてルールに従った。 多くのチームはスタート時にソフトタイヤを選択していた。ピットインしてタイヤ交換を行う機会が与えられる。ところが、ザウバーの小林だけはハードタイヤを装着していたから、交換する必要がなかった。その作戦のおかげで、予選18位から3位への急上昇が可能になった。ザウバーのマシンがトップグループで走るのは珍しい光景だろう。すぐにバトンに追い越されると思っていたのに、なかなか抜かせない。なんと53周までタイヤ交換を引っ張って、9位で復帰することになる。10周しか持たないソフトタイヤと50周も走れてしまうハードタイヤの組み合わせが、予想外の結果を生み出した。 ベッテルの速さは別次元だった。トップを快走する時のベッテルと止めることができるのは、降雨とマシン・トラブルしかない。ハミルトンはペナルティを科せられたが、うまくすり抜けて2位にもぐりこんだ。闘争心を抑えて走ったバトンが3位を獲得する。レース最後の見せ場は、小林のファイトだった。フェラーリとトロ・ロッソをごぼう抜きして、数少ないチャンスをものにした。こういう場面に得意技を発揮しておかないと。この厳しい世界では生き残れない。落ち目だったザウバーを引き立たせただけでも、効果は大きい。小林はF1世界で生き残れるかもしれない。
2010.06.28
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F1マシンの排気システムは上方に排気される方式が使われている。高熱の排気をどう処理するかは、エンジニアを悩ませる種になる。レッドブルがこの常識に挑戦して、下方から排気ガスを排出していることが知られている。空力的に効果があるとされているが、排気ガスの排出口の位置を変化させるのは難しい。高熱のガスが通る部分を耐熱仕様にしなくてはならない。さらに、後方の空力設計が変化するので、システムを変更するのは勇気が必要になる。 フェラーリは研究開発の上でメリットを認め、下方排気システムを採用することにしたらしい。来年度のマシン設計を行う上で、新システムが効果的であるかを確かめねばならない。実戦に投入して効果があれば来年度のマシンに採用する。効果がなければ捨てるという考えだろう。どちらに転ぶかはレースで使ってみないとはっきりしない。 レッドブルの優位を各チームが研究していたことは間違いない。ひとつはサスペンションシステムであり、もう一つが排気システムを考えられている。マクラーレンはすでにレッドブルに追い付いている。メルセデスは開発費用がかかりすぎるのであきらめている。フェラーリは排気システムを変更して、空力効果を確かめることになる。本当に有効な手段であるかは不透明であり、レッドブルの安定性が下方排気システムだけによるものとは考えにくい。 序盤には、レッドブルとの間に1秒近いタイム差が生まれていたのに、マクラーレンはそん色ないタイムを刻めるようになっている。フェラーリはカナダで同等のタイムを出して見せた。細かい改良でタイム差を詰めてきたが、レッドブルを上回るには、大幅にタイムを向上させる技術を導入させる必要がある。資金力のあるフェラーリに可能な方法論であり、予算に制限のあるチームは実験をあきらめざるを得ない。搭載されるスペイン向けモデルでの効果が期待される。
2010.06.16
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序盤に圧倒的な速さを維持していたレッドブルに対抗することは、とうてい不可能と考えられていた。アジア地域での降雨とトラブルが波乱要因になり、レッドブルの獲得したポイントは限られていた。それでも、最終的にはレッドブルが勝つと首脳は余裕を見せていたが、トルコGPで流れが変化し始めた。モントリオールでは、レッドブルを上回るタイムのマシンが走り始めた。 カナダGPの予選段階で、すでにレッドブルは敗れている。最速タイムを記録する役割は、ハミルトンが奪い取った。そのうえ、予選だけでなく、レースになっても、ハミルトンを追撃することができない。このことを予期して、耐久力のあるハードタイヤを装着したのに、ハミルトンを逆転することはできなかった。レッドブルはタイヤの摩耗に苦しんでいて、マクラーレンを追い上げることは不可能だった。 結局、レッドブルは表彰台を獲得できず、ポイントでもマクラーレンに後れを取った。メルセデスチームが失速しているので、王座争いはレッドブルとマクラーレンの一騎打ちになる。読みが難しいのは、ハミルトンとバトンは友人なのに、レッドブルはライバルである点だろう。いざという時に頼りにできない。 ウェバーの契約をレッドブルが1年間延長したことが、どうにも読めない。ウェバーがNO2契約を認めるわけがなく、ベッテルは戦闘意欲満々だから、きちんとした序列と追い越しルールを確認しておかないと、再びクラッシュが発生する確率が高い。チーム首脳がベッテルを優先するつもりならば、ウェバーに代わるNO2ドライバーを探しておく必要がある。 レッドブルの弱点は、予算を分割しなければならない財政事情にある。二百億円の予算は、レッドブルとトロ・ロッソに分割される。トロ・ロッソを放置するわけにもいかず、トロ・ロッソの予算を増やせば、レッドブルの戦闘力が衰退するシステムになっている。勝負の年になって、二つのチームを保有することのマイナス面が浮かび上がってきた。本当に勝つつもりがあったならば、トロ・ロッソを早めに始末しておくべきだったのだが。
2010.06.14
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多くのチームがピレリ・ワンメイクに賛同したことで、タイヤメーカーの選択は、すでに決まったと考えられていた。ところが、不思議なことに、FIAとエクレストンは沈黙している。遅れの原因は、ミシュランの巻き返ししか考えられない。フランスのミシュランは、複数のタイヤメーカーによる競争を訴えている。タイヤの供給価格も年間数億円であり、ピレリの数倍するという。 ミシュランは、同質のタイヤを供給するのではなく、各チームのマシンに適応したタイヤを開発らしい。つまり、マクラーレンとフェラーリでは、異なるスペックのタイヤになる。統一タイヤだと、F1マシンにマッチしなければ、1年間が無駄に終わってしまう。同じタイヤを全チームに供給するという発想は、どうして不適合を生み出す。数種類のパターンを開発することで、ミシュランは性能の異なるマシンに最適のタイヤを供給することを約束したらしい。これが混迷の原因と考えられる。 イタリアのピレリは、同じスペックのタイヤを全チームに安く供給する。そのかわり、タイヤ本数は削減されるらしい。ブリヂストン並みに、13チーム同等供給となると、1レースあたり1000本ものタイヤを空輸しなくてはならない。F1チームが使えるタイヤの数に制限を設ける理由は供給能力にある。1メーカーですべてをやることは限界が出ている。 タイヤ選択を決めるのはFIAでなく、エクレストンの役割というのが鍵になる。性能が低くても、安い統一タイヤを求めるべきか、それとも高くても高性能のタイヤがよいかは議論が分かれる。ブリヂストンは無償供給だったから、低予算チームを救済するには、価格が安いことが第一になる。ピレリの価格は政治的に値引きされるだろう。F1世界に進出することで、世界規模の宣伝になると考えているはずである。すべての条件はピレリ優位にあるのに、最終決定が遅れている理由は、いったい何なのだろう。
2010.06.13
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途上国でF1GPを開催するのは、政治的な思惑が強い。自分たちの国家を世界に宣伝する狙いがある。F1サーキットに世界中のセレブが集うことで、一人前の国家になった満足感に浸るのである。観光客の経済効果や政治的なイベントとしての達成感に比較すると、エクレストンに支払う数十億円は安い。それゆえに、エクレストンの扉を叩く政治家が多い。 イスタンブールサーキット構想がどこから生まれたかは、はっきりしない。F1開催初年度から、莫大な赤字を噴出したイスタンブールサーキットの運営は行き詰まり、エクレストングループが買収した。サーキットが廃墟になる危険があったからだろう。F1開催が消滅すると、イスタンブールサーキットの経済価値はゼロに等しくなる。エクレストンに売り払えば、F1が続けられると考えたのかもしれない。しかし、サーキットが1年に1度しか行われないF1レースのみで利益を上げるのは難しい。 エクレストンはサーキットのレンタル料を25億円に値上げした。「金こそがすべて」と考える人間と交渉することほど難しいものはない。トルコ政府や自治体は、財政的にサーキットのレンタル料25億円を支払うことはできない。支払わないとトルコGPは中止され、政府の面目は潰れる。エクレストンは産油国やインドなどが開催を要求していると主張する。いつまでもトルコの面倒を見られないと宣言したに等しい。 イスタンブール・サーキットの観客数は少ない。数万円の高額チケットを払えるトルコ人は限られている。観客のまばらなスタンドでは、エクレストンに高額な支払いを続けることは難しい。特権階級だけのトルコGPに、政府が公的資金を投入することは不可能だろう。イスタンブールサーキットは、事実上トルコGPにしか使われておらず、レースがまだスポーツとして認知されていないトルコで、F1を開催するのは早すぎたかなあ。
2010.06.05
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欧州サッカー界は、モウリーニョの話題でもちきりになっている。世界最強のクラブはインテルだと証明したのに、それを捨ててスペインに走るという姿は、異様に見える。それが、モウリーニョの発想だと言ってしまえば終わりだが、もちろん胸に秘めた狙いもある。レアル・マドリードは銀河軍団と呼ばれた時期があったのに、勝負にからきし弱く、CLでは早々と敗北してしまう。 その上、せっかく優勝したカペッロを解任してしまう。カペッロのイングランド代表での実績を見れば、解任は誤りであることは鮮明なのに、解任させざるを得ない事情がマドリードには生まれていた。スペインリーグで優勝しても、首脳陣や熱烈なファンやマスコミは、カペッロのサッカーに満足しなかったからになる。マドリードで指揮をとることは、並大抵ではない。普通の人間ならば避けて通る道を挑戦するというのがモウリーニョのスタイルになる。 厳しい環境に向かうのだから、スペインのサッカー風土を知る人ほど、失敗を予想する。マドリードの監督業を失敗した人間は、口をそろえて難しいと訴える。ポルトガルとイングランドとイタリアを制覇したモウリーニョも、スペインでは、ついに泥沼に落ちると語られる。そういう声があればある程やる気になるのだから、手の打ちようがない。 インテルは欧州最強に導いた指導者を失った。イタリアはカルチョの国であり、独自のサッカー文化を持つ。それゆえに、異端児モウリーニョを悪しざまに蹴り続けてきた。イタリアサッカー協会でさえも、モウリーニョの不規則発言に出場停止の処分を行っている。これでは、モウリーニョがミラノを去る決心をしても仕方がない。インテルが45年ぶりに輝いた瞬間に去るというのも宿命だろう。インテルを任せられる後釜は、リヴァプールを解雇されるベニテスくらいしかいないだろう。 モウリーニョの守備的なスタイルを批判する声が強い。しかし、チェルシーやインテルの試合を見ていれば、守備的なサッカーをやるというのは誤りになる。ドログバやランパードやテリーなどの猛者を手なずけてきたモウリーニョは、攻撃の重要性を知っている。サッカーでは、相手より点を多く取らないと勝つことはできない。スペインで確実に勝つには、まず失点しない陣形を形成することが重要になる。そして、熱烈なマドリードのファンを失望させない戦術が成功の鍵になる。バルセロナを倒せる指揮官はモウリーニョだけなのだから。
2010.06.01
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トルコでは、マクラーレンのマシンが、かなり改良されてきた。レッドブルの独走という構図は終わろうとしている。マクラーレンの技術陣が何かをつかんだことは間違いない。レッドブルの秘密を解明できないフェラーリは、予選段階で圏外に去っている。上位の2チームに比較して、メルセデスは技術的な格差を抱えている。レッドブルに追いつくことは難しいとされていたが、F1の世界においては、技術の進化が激しいことを物語っている。 レッドブルの強みは、二人のドライバーの性格が異なっていることだろう。同じタイプのドライバーだと、ハミルトンとアロンソのような喧嘩になってしまう。猪突猛進タイプのベッテルと冷静で緻密なウェバーでは、乱闘にならないと思われてきた。それでも、互いに王座を意識しすぎると、マシンの接触が避けられない運命に陥る。どちらがナンバー1であるかを鮮明にしないと、こういう闘争心による事故が起きる。 レッドブルの誤算は、ベッテルとウェバーのどちらを1番に決められないことにある。ベッテルは野心満々だし、ウェバーの人生において王座のチャンスは限られている。愚かなことが分かっていても、互いに譲る気持ちがないと危険な場面が生まれてしまう。そして心の中に憎悪が高まり、セナプロ段階に高まっていく。あの瞬間に譲る度量がないと、自滅は避けられない。実際に事故が起きてみると、闘争心の愚かさが理解できる。レッドブルは表彰台を独占できたはずなのに、マクラーレンの勝利を祝っているようでは、王座は逃げていく。 圧倒的な強さを発揮しているレッドブルを倒すには、雨乞いとトラブル発生祈願と自滅という筋書きを他のチームは期待してきた。レッドブルが圧倒的な強さを持つのに一番でない理由は、アジア地域で降り続いた雨と序盤に続出したマシントラブルと二人の闘争心にある。そして、隙をついてマクラーレンが勝利を重ねてきた。強気のベッテルが譲ることは考えられないので、チーム首脳はウェバーの友情に期待しているはずだが、そんなにs甘くはないことをとイスタンブール事件が露呈している。レッドブルチーム内で、どのような収拾策が図られるかで、未来のチャンピオンが決まるだろう。
2010.05.31
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F1開催地は、バーニー・エクレストンの判断で決まる。それでも、テキサスGPをオースティンで2012年度から開催するという決定ほど、世界中を驚かした出来事はないだろう。テキサス・スペードウェイで開催されるのかと予想したら、これから候補地を買収することになるという。レースを行うサーキットが存在せず、建設資金をどうやって工面するかもはっきりしない。 F1を開催するには、数十億円の開催権料を誰かが毎年支払わねばならない。普通は政府や自治体が負担する。テキサスでは州も、オースティン市も運営にはタッチしないし、資金面での負担も行わないという。最大の謎は、サーキットの建設費用になる。アメリカでFIA規格のコースを建設すると、三百億円近くかかる。その建設費をだれが負担するかも不透明のままなので、疑惑の声が上がるのも当然だろう。ステハンGP騒動よりも、ずっと透明度が低い。 資金力のあるファンドがかかわっているという噂もあるが、ファンドは利益を第一に行動する。赤字が派生するF1レースを主催することは考えられない。金融危機以来、アメリカの金融機関は貸し渋りをしている。簡単に数百億円の資金を融資することはしない。現実問題として、インディアナポリスは開催を断念し、USF1はスポンサー不足で破たんしている。大金をF1に投資するお人好しが存在するとも思えない。 エクレストンとの個人的なつながりで、テキサスが契約を獲得できたという話になるけれど、富士スピードウェイの悲劇を見れば、公的な資金を持たない民営団体がF1を開催することは博打に等しい行動になる。大金をどぶに捨てても平然としている巨万投資家が旗を振っているということになるのだろうが、それで運営がうまくいったことがない。テキサス知事や上院議員が賛同しているとすれば、政治がらみの陰謀かもしれない。
2010.05.28
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ピット作業で給油がなくなったから、各チームはタイヤ交換時間の短縮に取り組んでいる。普通のタイムでは、ピット作業でライバルを追い抜くことができない。それゆえに0.1秒の時間短縮を狙って、新型のホイールが採用されている。あらゆるアイデアを結集して、装着の短縮化を狙ったモデルになる。しかし、トレーニングを重ねていても、タイヤの交換作業にはミスが出る。緻密で丁寧な作業とタイムの短縮は矛盾するので、どのチームもギリギリのメカニズムを組み込んでいる。 タイヤ交換作業の重点は、取り外しと装着にある。ホイールナットを締めるのは電子的に制御できるから、あとはホイールを正確にはめ込めばよい。しかし、わずかでも角度がついたり、ナットの締め方が緩いと高速回転で揺れが生じて、ホイールは過熱する。その熱がタイヤに伝わって温度が上がる。タイヤの異常をドライバーが感知すれば、ピットインして交換できる。鈍感だとタイヤそのものがブローする。ハミルトンのクラッシュの原因は、ホイールナットの締め付け不良と想定されている。 勝つためのギリギリの装着システムが、結果的に敗因になるのは愚かに思える。確実に装着することを第一にしたシステムのほうが好ましい。しかし、同時にピットインしたときのリスクを考えると、速さを第一にしたメカニズムになってしまう。ベッテルのブレーキパッドが割れた原因も、ホイールトラブルと考えられている。装着時間短縮を優先するか、それとも取り付けの正確さを優先するかの選択肢はない。速くて正確なシステムを考案するしかない。 来年度は、タイヤメーカーが変更され、これまでとはまったく異なる特性を持つようになる。ホイールサイズや幅が変更されると、サスペンションの設計が激変する。しかし、、いまだに来年度のメーカーは未定なので、チームはブリヂストンを基準にして設計を開始している。タイヤの特性が大幅に変更されると、ゼロからやり直す必要がある。開発力と資金のあるチームが圧倒的に有利になる。それゆえに、タイヤメーカーをどこにするかの話し合いが蛇行するのも仕方がない。
2010.05.21
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今年のモナコGPの驚きは3つある。一つ目は、長年黙殺されてきたウェバーの才能に尽きる。これで優勝争いに食い込むことができる。F1ドライバーの能力を測定することは難しい。搭乗するマシンの性能に大きく左右される現実がある。ウェバーは偶然にレッドブルにたどりついているけれど、フェラーリやマクラーレンと契約できる可能性はゼロに近かった。F1世界では、生き残るために贅沢を言えないという現実がある。まさか、レッドブルが独走する時代が来ると本人も予想しなかっただろう。 モナコは予選の順位がものをいう。最前列に並ばないと、追い越しのできないモンテカルロの市街地では、前後を挟まれて終わりになる。ポールポジションだけが前方への道が開けている。1位は後方乱流を気にせずにつき進めるから、追い付くのは容易ではない。ベテランのウェバーは自分の立場を熟知していた。無理をせずにコーナーをクリアし、周回遅れに注意さえすれば、最初にゴールできることを知っていた。コースを緻密に記憶し、ミリ単位でドライブすることができるウェバーを止めることのできるものはいなかった。 ベッテルの度胸には、いつも驚かされる。予選2位のクビサを抜けるのは、第一コーナーまでだと認識していたので、そこに勝負をかけた。一度前に出てしまえば、クビサの腕でもベッテルを抜くことは難しい。ベッテルはマシントラブルに悩まされていたが、ふたを閉めてしまえばモナコ2位を確保できる。スペインの3位とモナコの2位は、選手権において大きな意味を持つ。ハミルトンも、アロンソも下に沈んでしまうのがモナコの特質だろう。 驚きの二つ目は、ロバート・クビサに尽きる。クビサはルノーのマシンを操って、モナコ3位を確保した。性能の優れたフェラーリやマクラーレンの追撃を許さない腕を持つことを証明した。こういう場面で印象を強めておかないと、トップチームからは永遠に声がかからない。ルノーマシンの戦闘力を計算に入れると、クビサが卓越した能力を持つことが理解できる。まさにマスターに値する。 マッサはせっかく4位に入ったのに、首脳陣から小言を言われるだろう。アロンソは最下位から猛烈な追い上げを見せている。どうやって6位にまで突き進んだかを説明できる人間はいないだろう。フェラーリのマシンは改良を重ねて、相当な戦闘力を身につけていることを明らかにした。それをレースの場で発揮させるのがドライバーの役割であり、4位のままでレースを終えたマッサは、来年度の契約で危うい立場に立たされてしまうはずである。 フォースインディアの入賞も評価に値する。13チーム26名の密集した中で、8位と9位に食い込むことは難しい。10位までポイントを与えるシステムが機能し始めたことは幸いだろう。昨年までの計算方法だと、まったく無駄な努力に終わったはずなのに、着実にポイントを確保している。スーティルをトップクラスのマシンに乗せて、どれくらいの能力を持つかを確かめたくなる。上位のチーム構成をみると、スーティルがたどりつくまでには時間がかかりそうな予感がする。
2010.05.17
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今年度の予選は、すべてレッドブルが独占している。それでも、市街地コースのモナコでは、波乱の予選が予感されていた。この低速コースでも、レッドブルが強いという事実には、驚かされる。ドライバーの腕と度胸が左右するモナコの予選に、サブのウェバーが勝ち残ったのでは、他のサーキットでは、とても太刀打ちできないことを意味する。 狭いモナコでは喧嘩が頻発する。邪魔なマシンが走っていると、とてもタイムを出すことができない。バトンがマッサに喧嘩を仕掛けた。アロンソはフリー走行でクラッシュし、フェラーリが完全でないことを暴露している。神様のシューマッハに怒られたロズベルグは平身低頭している。原因は、メルセデスのGPSの故障というから、ロス・ブラウンも苦労している。エンジニアも、ドライバーも、その能力を発揮しているとは言い難い。 モナコの狭いコースはミスが許されない。マシンの挙動も完璧なことを要求される。一瞬のためらいや迷いが即クラッシュにつながる。ガードレールに突き刺さったならば、マシンは破壊されて終わる。ガードレールの餌食にならないためには、慎重なドライブが必要なのに、それでは予選を勝ち抜けない。ウェバーのドライブスタイルがモナコに向いている。 レッドブルを止めるのは、降雨とトラブルだけだろう。たしかに、レッドブルには深刻なトラブルが何度も起きている。スペインでは、フロントブレーキが破損する出来事が起きた。ピットクルーは、ベッテルにリタイヤを指示したのに、チャンピオンシップを意識するベッテルは、指示を無視して走りきった。ベッテルのわざに驚かされる。左フロントブレーキが利かなくなると、ブレーキバランスの前側を全閉にして、後輪のブレーキだけで15周を走りきったという。ライバルにブレーキトラブルを察知させずに、走りきったというのは凄い。 モナコで何が起きるかを予測することは難しいので、ウェバーとベッテルに幸運が転がり込むかはわからない。レッドブルが低速の市街地コースでも速いという事実が、マクラーレンとフェラーリの首脳を失望させるだろう。二人が速いことは、ポイント獲得が難しいことを意味する。燃料を満載した状態だけでなく、軽い予選時にも速いという事実を突きつけられると、レッドブルに白旗を掲げて降伏するしかない。
2010.05.16
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開幕戦からスペインまで、かなりの日数がたっている。かなりの改良がおこなわれているけれど、レッドブルの進化に及んでいない。フェラーリも、マクラーレンも速くはなってきているが、空が晴れるとレッドブルの敵ではなくなる。タイヤ交換に手間取るというベッテルのトラブルだけが、順位の変動を引き起こす要因にしかならなかった。開幕からの数十日間に行われた設計変更は、レッドブルの優位を覆すほどの成果を得られていない。 予選は、ガソリンを必要分だけ搭載して行われる。コンマ1秒のタイムを競っているので、過剰な重量は走行の邪魔になるという考えによっている。土曜日の予選用に仕上げたマシンに、日曜日に150キロものガソリンを搭載するというのは、誤った考えになる。これでは重量バランスが崩れて、操縦性が大幅に悪化してしまう。軽さを追求したF1マシンに過剰な重量を背負わせると、まともに戦うことができなくなる。それは、重量変動に強いというレッドブルマシンの構造にプラスに働く。 FIAは、決勝の前にF1マシンのセットアップ変更を認めるべきだろう。そうすれば、少しは操縦性が向上して、レースを戦いやすくなる。カタローニャの追い越しの難しいコースでは、予選で先行することが大きなメリットになる。どのチームも予選に合わせてギリギリのセットアップする。そこに、150キロものガソリンを注入するのだから、バランスが崩れてしまう。唯一の解決策は、決勝前に細かいセットアップ変更を認めるしかないのに、FIAは方針を曲げない。 波乱要素はもう一つある。ハミルトンにタイヤトラブルが出たことで、タイヤ交換作戦は練り直しを迫られている。トップのウェバーを追撃していたハミルトンのタイヤがバーストしたのでは、敵に塩を送ることになる。タイヤ交換のためにピットに入ると、かなりのタイムをロスする。無理を承知で走り続けるしかない。弱いほうが無理をして自滅するというのは、レースの法則だろう。 耐久レース走りを続けてきたアロンソが2位に届いて、存在感を示した。晴天レースは、マシンの性能とドライバーの腕と作戦の成否が結果を大きく左右する。それでも、空が晴れてしまうと、レッドブルに対抗できるライバルは消えてしまう。エクレストンが雨乞いするのも当然だろう。 まともに戦えるF1マシンを持つのは、レッドブル、マクラーレン、フェラーリ、メルセデスの4チームになる。それ以外は、我慢して完走を狙うしかない。ポイントは上位10台のマシンに与えられるから、腕と度胸さえあれば、スーティルのように稼ぐことができる。トラブル続きだったザウバーの小林が、スペインで完走できた意味は大きい。マシンの信頼性が少し復活してきている。ライバルはルノー、Fインディア、トロ・ロッソレベルなので、すべたが問題を抱えているから、予選をQ3まで進んで決勝に耐えれば、小林にも少し希望が出てくる。
2010.05.10
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来シーズン以降のF1タイヤ供給をめぐる戦いが水面下で始まっている。タイヤメーカーはブリヂストンの過重な負担を知っているので、新たな戦術に出ている。それは有料化になる。ブリヂストンが全チームの使うタイヤをすべて無償で供給してきたことは、考えてみると偉大な功績だった。それが本社の経営を悪化させたので、F1から撤退する要因になってしまった。そのことを他のメーカーも熟知しているので、二の舞にならないように用心している。 ミシュランの条件は、ワンメイク制度の廃止と有料化と規格の変更になる。ひとつのメーカーが13チームすべてのタイヤを負担することは無理という姿勢を取っている。限られたチームに有料化されたタイヤを供給すれば、すべての問題は解決するという論理になる。これならば、毎レースに1000本以上のタイヤを生産して、日本から空輸している苦行からメーカーは解放される。供給するチームを限定すると、ミシュラン得意のスペシャルタイヤが配達できる。F1マシンの特性に合わせて、タイヤそのものを細かくチューニングする。各チームのマシンに最適な設計のタイヤを供給することで、マシンの弱点も補える魔法のタイヤが生まれる。 エイボンの狙いは知名度だろう。F1に参戦することで世界中に名前を知らせる。見返りは格安の価格という。ミシュランの3分の1の価格で供給すると約束している。無償でないところが、エイボンの立場を示している。高価なタイヤの製造コストと世界各地への航空運送費は、小規模メーカーの財政を圧迫する。ブリヂストンのように品質にこだわらなければ、かなりのコストダウンが可能になる。しかし、チーム側はこの姿勢を危惧している。ハミルトンのようにタイヤトラブルに巻き込まれることを上位チームは警戒する。値段よりも品質が重要な要素になってくる。 そこで、ピレリの登場になる。ピレリはワンメイク制度に賛同している。すべてのチームにタイヤを供給する覚悟があるという。ピレリは世界の有力メーカーなので、技術と資金力にそれほど問題はない。不足している経験は、F1に参戦することで蓄積できる。F1参戦の負担は総額百億円以上と考えられるので、経営陣に覚悟があれば独占できる。F1チームの希望に一番近い考えを持っているけれど、ピレリを支持する声が聞こえてこない。多くのチームはブリヂストンの残留を願っている現実がある。 F1チームが恐れているのは、タイヤ戦争の勃発だろう。複数のメーカーがF1に参戦すると、どうしても性能と価格に差が生まれる。ミシュランがフェラーリなどの有力チームと契約してしまい、財政難のチームは低価格のエイボンを使用するのでは、浮かばれない。トップチームと同じタイヤを使い、かつ低価格でというのは、弱小チームの願いだろう。それを実現できるのは、いまのところピレリしかない。ワークスチームはミシュランを使い、プライベーターはエイボンという図式を避けたいのならば、ピレリが食い入る可能性はある。
2010.05.09
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石油会社の言葉は、本当に信用できない。産油国が敵視するのも当然だろう。石油メジャーのお偉方は、口先三寸利権を争う。真実を告げると、政府が採掘の許可を出さないので、美味しい話だけを並べる。メキシコ湾の海底1500メートルで原油流出事故が起きたら、人類には何もできない。秘密兵器は海底ロボットだと叫んでも、遠隔操作で石油の噴出を止めることは難しい。そもそも、海底ロボットにそれだけの能力が備わっているかさえも疑わしい。カメラを搭載して、海底調査をすることはロボットにできても、破壊された海底のパイプラインを修復することを遠隔操作ロボットにできるわけがない。 爆発した石油基地のもろさも、ほとんど語られていない。海上に筏を組んだ形式のリグは、爆発や破壊に弱い。船型の石油リグは空母並みの構造なので、爆発や破壊に強い。万が一の爆発事故が起きた時の用心をしておくのが、石油会社の役割なのに、爆発炎上して沈没してしまうリグを選んでしまった。半潜水式のほうが揺れが少ないという理由というのでは、救いようがない。石油パイプラインの破壊や海底の石油噴出孔の暴発事故に、BPが本気で取り組んでいなかったことは明らかだろう。 メキシコ湾の流出事故はアメリカだけでなく、世界中の海底石油開発に重大な影響を与えてくる。事故が起きた時に、海底が深すぎて対応できないというのでは、最初から開発すべきではない。石油の専門家だって、技術的限界を察知していたはずである。なのに、高騰した原油価格がすべてを変えてしまった。メキシコ湾の開発許可を出さなかったアメリカ政府が、ブッシュ政権の時に許可を出したのは、政治的思惑にあり、複雑な利権がからんでいる。 BPは海底石油採掘の技術を持っていると豪語していたけれど、実際に採掘していたのは下請けメーカーという落ちになっている。下請けマーカーは仕事がほしいから、無理を分かっていても採掘を請け負う。開発の許可を得られるのは、零細業者ではなく、石油メジャーに限られるから、下請けに甘んじるしかない。環境や安全よりも、利益が優先するというのが石油メジャーのやり口であり、政治家や官僚を口説いて、海底石油開発の許可を受ける。そして、不可解な爆発事故が起きた。事故が起きてみると、海底が深すぎて人類には手が出せない。海底から噴き出す石油は、メキシコ湾全体に広がっていく。そして深刻な環境問題を引き起こすだろう。それを人類は陸から見ているしかない。
2010.05.08
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レストラン業界では微々たる存在なのに、「ちゃんこ若」の知名度は高かった。横綱若乃花が設立したちゃんこ屋となれば、それなりに人気も出て、マスコミも好意的になっていた。ちゃんこ若の設立当初は、怒涛の勢いで成長を続けていた。ところが2年前になると、若乃花は株を手放して経営から退いているという。ちゃんこ屋稼業の中核の役割を担うべき若乃花が経営から手を引いたのでは、単なる看板になってしまう。そうなると、味や価格が厳しく問われてくる。 もし、若乃花が手を広げずに、2店舗か3店舗で満足していたら、ちゃんこ屋稼業は成功していただろう。自分でちゃんこ番をするくらいの情熱がないと、はやりすたりの激しいレストラン業界では、たちまち飽きられてしまう。店舗の内装や雰囲気をみると、最初から指南役が存在したことは間違いない。相撲出身の若乃花が経営するレストランとしては、あまりに洗練されすぎている。伝統的な相撲場の雰囲気のないちゃんこ屋は、相撲常連が煙たがるし、相撲に縁のない人々を引きつけられない。 多店舗展開すると、オーナーのほとんどは独立願望組になる。しかし、フランチャイズの加盟料に店舗の改装費などによって、大きな借金ができる。客が不入りで支払いに苦戦している時に不景気がやってくると、料理屋は行き詰まる。多くの人々は不況時になると、牛丼屋やラーメン店に向かう。一人当たりの支払いが3000円を超える料理屋は、よほどの個性と腕がないと経営を続けることが難しい。売り上げが持続することを前提にして資金を調達すると、不況で吹き飛ばされてしまうのが落ちになる。 相撲取りが食べる「ちゃんこ鍋」は、まず若い女性に好まれない。太ることを嫌うからだろう。食道楽を満足させるには、かなりの包丁さばきを要求されるのに、従業員の多くはパートなので、通を満足させることが難しい。そのうえ、賃金の未払いや不当解雇などがあっては、味に影響が出てしまう。若乃花も、経営陣も、オーナーも、料理そのものには直接かかわらない。店の味を決めるのはシェフであり、食材になる。そうなると、横綱若乃花の看板だけでは、レストラン業界の競争に生き残れなかったのは仕方がないかな。
2010.05.07
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インディアナポリスを解任されたトニー・ジョージが上海でエクレストンと密談したと報道されている。最大の目的は、中断されているアメリカGPの復活にあることは間違いない。アメリカ人のイメージするレースは、楕円のコースを劇走するNASCARとINDY500になる。NASCARは毎週末に全米各地で開催され、人気を博している。トニージョージの設立したINDYは肩身が狭く、人気や収益性に差がある。アメリカでは、サーキットに満員の観客を集め、利益を上げることが興業主に課せられた責務になる。F1開催に手を出したトニー・ジョージは、赤字を生み出し、一族から地位を解任されてしまった。 F1チームとスポンサーの多くは、アメリカGP復活を熱望している。アメリカは自動車大国であり、フェラーリやメルセデスの得意先でもある。ところが、過去にF1は開催されてきたけれど、成功したためしはない。米国において、F1そのものがマイナーな存在であり、興味を抱くスポンサーも限られる。アメリカで開催するには、多額の資金を必要とするので、インディアナポリスは開催権を放棄した。経営者一族は、赤字を背負ってまでやるようなレースでないと考えている。 自動車大国を失ったエクレストンは、新たにNYやラスベガスにおいて、F1開催を狙っていると言われる。市街地サーキットならば、新たにコースを建設する必要がなく、コースの整備も自治体の道路行政の範囲内で行える。どの国にも、野心家はいるので、それらの勢力と手を組んで、アメリカGPを復活させようというのがエクレストンの狙いになる。開催できる場所と興業主とスポンサーが揃えば、F1復活は実現する。そこで、風来坊になったトニー・ジョージが上海に呼ばれたということだろう。 マイナーなスポーツを開催して、満員の観客を集めるには、それなりの経験と知恵がいる。アメリカレース界の裏側を熟知するトニー・ジョージは、その意味で頼りになる。インディアナポリスを支配する一族は、F1開催に乗り気でないので、他の地域を選択しなくてはならないだろう。F1を開催することは不可能ではないが、人気を博して利益を上げるには、それなりの知恵者が必要になる。トニー・ジョージに白羽の矢が突き刺さったのも、歴史的な必然だろう。しかし、NASCAR全盛の地で、F1を成功させることほど難しいことはない。
2010.04.24
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FIAやFOMの幹部たちは、上海の天候が気になっただろう。改革の初年度に起きた「退屈さ」に対する批判が、バーレーンだけで済んだは幸運だった。アジア地域の天候の急変が、予選と決勝レースの流れを劇的に変化させ、ルール改正のまずさを打ち消している。就任したばかりのジャン・トッドには、システムを修正する時間の猶予が与えられたことになる。さまざまな事象の分析と解決策を審議する時間を得られた。偶然とはいえ、雨が降るとF1レースは混乱して、ぐっと面白くなる。同じ状況が晴天でも可能になれば、F1の衰退を止められる。 マクラーレンのジェンソン・バトンが上海の1位を確保することは、ほとんど予想されていなかった。雨の中では、同僚のハミルトンのほうがはるかに腕利きだったからだろう。しかし、バトンには、長年の蓄積した経験と知恵がある。冷静に状況を読んで、最適なドライブを行う冷徹さがある。これは暴れん坊のハミルトンにはない特性になる。マクラーレンの二人は、まったく異なるタイプのドライバーであり、友人として協力して戦うことができることが大きい。互いに理解しあえる英国人ドライバー同士というのも、序盤戦成功のカギになっている。 気候の変化を予測し、降っている雨の危険度を瞬時に見極めることは、誰にでもできることではない。上海では、スタートからのすべての条件がバトンに有利に働いた。レインタイヤに交換する選択を選ばなかったことが、最終的に勝利につながったことになる。ピットが迷ったり、疑心暗鬼になると、なかなか適切な作戦を行うことができなくなる。1位と2位を確保したマクラーレンの作戦参謀は、さすがというしかない。 3位に入ったロズベルグも、次第に存在感を示している。苦しんでいるシューマッハとの落差が、ロズベルグを評価する要因になっている。ウィリアムズのマシンで、昨年度に30ポイント以上を稼いだ実力は、半端なものではなかった。ロズベルグが2ストップで済ませているのに、アロンソは5回もタイヤを交換しているから、ピット戦術の差は大きいい。それでも、アロンソが耐え忍んで、4位に食い込んでいるのをみると、やはりただ者ではない。 予選を圧倒したベッテルは、悪天候に悩まされて、6位に終わってしまった。タイヤ交換の時期とタイミングを決めるのはピット側なので、ベッテルは天候を恨むしかないだろう。もし、天候が晴れていれば、レッドブルの圧勝に終わっていたはずだから、痛い星を落としたことになる。とはいっても、悪天候のレースは、1年間に何度も起きないから、ベッテルの優位は変わっていない。 ルノーの新人ペトロフは、上海で名前を挙げた。ロシア人ドライバーは滑りやすい路面に耐えて、7位に残っている。これは驚きというしかない。ドライタイヤで雨の中を突っ走るというのは、熟達した技を要求されるはずなのに、何とかこなしている。この豪華メンバーの中で、7位という順位は評価できる。ルノーの資金不足を補うために採用されたロシア人ドライバーが生き残れるかは、ポイントの数字だけで決まる。二人とも上位に食い込んだルノーのマシンには、相当ポテンシャルがありそうな感じがする。
2010.04.20
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中国側とエクレストンの契約が、1年間の短期契約に切り替わったという。どうやら、上海で巨額の赤字が発生しているらしく、GP開催そのものがあやしくなっている。空席の多いスタンドを見れば、中国政府の思惑も見えてくる。高度経済成長に踊らされる中国も、数万円もするF1チケットが飛ぶように売れる状況ではないらしい。チケット価格や販売システムは、すべてFOMが握っているので、安売りすることができない。ワールドカップにおいては、南アの貧しい人々向けに格安チケットを別口で確保している。中国人の所得は先進国の10%程度なので、同じ価格で販売する発想が誤っている。 鈴鹿GPには、昨年度約10万人が集まっている。チケット価格を平均すれば、5万円前後と思われる。つまり、50億円程度の売り上げがある。これにF1グッズや屋台の食べ物の売り上げが加わる。サーキット内の広告料は、すべてFOMが吸収するので、主催者側には流れない。鈴鹿GPの売り上げは、60億円前後と想定するのが自然だろう。この中から、F1開催権料25億円とマシンと人員の航空運賃と宿泊代を支払う。サーキットの使用料と案内係や警備員の人件費も払わねばならない。F1開催のために1万人を動員すれば、数千万円の出費になる。鈴鹿はボランティアが多いので少しは救われるが、運営を黒字にすることが難しいことが理解できる。 上海では、鈴鹿ほど高額チケットは売れないだろう。平均価格が2万円程度として、観客数を5万人として計算すると、せいぜい10億円程度にしかならない。上海で販売するグッズや屋台の食品は安いので、あまりプラスにはならない。FOMへの支払いは、ほとんど鈴鹿と同額になることが予想される。F1開催権料をエクレストンが割引するわけはなく、航空運賃や宿泊費も同程度を請求される。上海GPの売り上げは少ないのに経費が同じでは、レース運営は苦しくなる。政府が財政的に関与するのも仕方がない。上海開催で穴埋めする金額は、少なくとも数十億円になっているはずである。 高額チケットが大量に売れる鈴鹿GP以外は、各国政府や自治体が財政支援するのも当然に思える。高額チケットを10万枚売る力がないと、F1開催を続けることは困難になる。将来の開催が見込まれているインドにも、ロシアにも、中国の苦悩は当てはまる。所得1年分のF1チケット代というのは、途上国の庶民にとって、夢物語に過ぎない。バーニー・エクレストンの強欲作戦が、どこまで続くかを予想することは、ほとんど不可能になる。
2010.04.17
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FIAはワークス撤退に頭を痛めている。ルノーは全株式を売却して、F1チームの名前だけが残されている。事実上、フェラーリとメルセデスの2強時代が始まった。エンジンを製造するワークスが3社だけでは、あまりに少なすぎる。そこで、FIAは4気筒のターボエンジン構想をメーカー側に持ちかけているという。新規参入候補は、ターボエンジンに経験があるVWやプジョーになる。F1参入を促すには、現在のV8エンジン規格は技術力に差がありすぎて、勝負にならない。 ジャン・トッド会長は、チーム事情を知り尽くしているので、エンジン規格の深追いをするわけがない。もし、4気筒ターボエンジンに規格が変更されるとなれば、ルノーなどは喜んで撤退してしまうだろう。F1撤退の口実を与えたのでは意味がなく、現行ワークスの機嫌を損ねないように工夫しながら、エンジンの新規格を実現することが肝要になる。 現在はターボエンジン不遇時代と言えるだろう。ほとんどのカテゴリーで、レース用エンジンはNA化され、自然吸気エンジンが幅を利かせている。高出力ながら、環境にやさしくないターボエンジンを導入することは、世論の批判を浴びる危険がある。妥協して、環境にやさしいターボエンジンを導入しても、本当に迫力あるF1レースができるかどうかに議論の余地がある。 最高出力が200~300馬力ならば、市販エンジンをベースに開発ができる。F1のように800馬力にもなると、すべてのパーツを設計し直す必要が出てくるから、開発費用は、V8エンジンと同等になってしまう。といって、F1エンジンが300馬力では迫力がない。言葉で環境対策を言うのは簡単だが、真の意味で環境にやさしいレーシング・エンジンを実現することは難しい。何の発展性もないV8エンジンを続けるよりは、ターボエンジン開発のほうが技術的にプラスが大きい。エンジン規格の先行きは、ワークス次第になってくるけれど、えさに食いつくメーカーが新たに出現するかにかかっている。
2010.04.16
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FIAの行ったブリアトーレ裁判は、法的な公正さを失っていたことをフランスの裁判所から指摘され、事実上判決が無効になっていた。FIAは控訴することを狙っていたけれど、ブリアトーレを永久追放にするという根拠を失ったために、和解するしかなかった。フラビオ・ブリアトーレとパット・シモンズの二人は、シンガポールGPにおいて違法行為を行ったことを認めたために、これ以上の責任の追及をFIAが行わないと決めている。 フランスの裁判所は、FIAのモータースポーツ評議会が二人を断罪する資格を有していないことを指摘していた。国際団体であるFIAが違反者を断罪するには、被告がFIAの管理下にある必要がある。二人はFIAの管理下に置かれていないから、断罪することはできないという論理になる。公正な裁判は、本来検察側と弁護側と裁判官がそれぞれ独立して機能していなければならない。モズレー会長が捜査班を指揮し、二人を起訴するという役割を担っていた。さらに、モズレー会長が判決の内容を指示している。これでは、民主的な制度と言えないとフランスの裁判所が指摘したことも重要な観点だろう。 そもそも二人を罰する権限をFIAが持っていないのだから、二人への判決は無効という論理を覆すことは難しい。FIAの裁判システムそのものが独裁者方式であり、そういうシステムによって下された判決は、法律論として無効であることを断定している。しかし、ブリアトーレが罪に問われないのは明らかに不当なので、FIAとブリアトーレは取引を行って、この事件を葬り去ることにした。強権を振るったFIAにしても、悪役にされたブリアトーレにしても、新がポーツ事件は一番忘れたかった出来事なので、和睦が成立することになったらしい。
2010.04.13
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F1チーム側とバーニー・エクレストンとミシュランの会議が行われた。今年度でブリヂストンが撤退することになっているから、後継タイヤメーカーを決めねばならない。ミシュランが最有力候補に祭り上げられたので、会議でさまざまな条件を突きつけたらしい。第一がタイヤの有料化であり、第二がワンメイク制度の廃止、第三がタイヤサイズの大幅変更になる。条件を突きつけられたF1チーム側の意見が分かれ、合意するには至らなかった。 ブリヂストンの負担額は、年間100億円程度と見られている。レースごとに1000本以上のタイヤを日本からサーキットまで空輸しなくてはならない。レース用タイヤは無償供与であり、全額がブリヂストンの負担になっている。ワンメイク化したことで、負担は倍増した。ブリヂストンが限界だと感じても不思議ではない。そこで、ミシュランは同じ轍を踏まないように有償化を狙っている。さらに、2メーカーがタイヤを供給すれば、負担は半減する。ミシュランの要求は合理的なものであり、小さな負担で済ます方法論を突きつけたことになる。 13インチのホイールサイズを18インチにする目的は、よくわからない。F1マシンは空気抵抗を減らすために、小さなサイズのタイヤを装着している。18インチタイヤは、かなり空気抵抗が増えるだろう。それでも、メカニカルグリップは増すから、操縦性は高まる。タイヤサイズがこれだけ変化するとサスペンションの設計などをやり直さねばならず、開発能力が問われてくる。 複数のメーカーがタイヤ戦争に参入すると、タイヤ戦争が起きるので、開発テストは増加する。F1の経験がないメーカーが参入すると、長期間の事前テストは欠かせない。いずれにしても、テストを抑制している現行のルールと矛盾する。テストを行わずに、F1タイヤを開発して供給することは、かなり危険な話になってしまう。ブリヂストンを翻意させようという考えが強い理由だろう。あまりの負担に耐えかねて撤退するブリヂストンと、過度の負担を予見してさまざまな条件を突きつけたミシュランの考えの根底は似ている。タイヤがないF1レースは不可能なので、エクレストンが何とか話をまとめるしかないのだが。
2010.04.06
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トラブルに泣かされていたレッドブルに信頼性が戻ったら、無敵の存在になると予想されていた。マレーシアではこれが現実化した。直線の速さはマクラーレンが上回っていても、コーナーの操縦性になると、別次元の速さを持つのがレッドブルになる。その速さの謎を解明しようと、さまざまな思惑が語られているけれど、真相に到達した技術分析はない。予選は空のタンクで行われる。決勝は150キロものガソリンをタンクに搭載するから、重すぎて身動きできなくなる。アロンソの言うように、ガソリンが軽くなる最終10周まで待たねばならない。それまでは、ひたすら耐久レースを我慢して、コースに残ることに専念するしかない。 レッドブルのマシンに疑惑が投げかけられるのは、軽いタンクの状態とフルタンクで、ほとんど重心位置が変化しない点にある。総重量が500キロ程度のマシンに、150キロものガソリンを搭載すると、普通は重しをつけられた亀になってしまう。過剰なガソリン量は、それを支えるサスペンションやタイヤに悪影響が出る。レース序盤に接近戦や格闘ができないことは、どのドライバーも実感しているだろう。ブレーキを遅らせるとコースアウトしてしまうから、すべての操作に慎重さを求められる。ところが、レッドブルだけは安定した姿勢のままコーナーを旋回できる。 これにはなにか仕掛けがあるのだろうと詮索されて、FIAもマシンのチェックを行っている。しかし、違法性は発見されていない。マクラーレンの主張するような油圧システムは搭載されていない。別の方法で、重量差による操縦性の変化を防いでいるらしい。150キロものガソリンを積み込めば、重心位置は下がって亀のようになるはずなのに、ほとんど変化しない理由は何なのだろう。車重を計測して、自動的に高さを維持する車体レベル安定装置のようなものが組み込まれているかもしれない。 FIAの調査によっても、違法性が発見できなかったとすれば、それは強烈な武器になる。マクラーレンに乗るハミルトンが、全然かなわないと叫んでいるくらいだから、他のマシンに乗るドライバーにはお手上げだろう。このままだと、レッドブル勢の独走が開始される。唯一の対抗策は予選で前に出ることだが、1周目に追い越されてしまっては意味がない。まずシステムの解明が第一になるけれど、機密情報の実現は難しいだろう。
2010.04.05
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