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アフリカの画家、フーゲン・ブーアの絵「黒蝶」が手に入ると言うので、私は期待して画商のところに行ったのだが、実物を見てがっかりした。キャンバスいっぱいに黒色の油絵の具が、何かを封じ込めるかのようにこってりと塗られているだけなのである。私は画商を問い詰めた。「これは本当にブーアの絵なのか?黒いだけじゃないか。」画商が答えて、「闇の中で黒い蝶が飛んでいる。時間をかけて眺めてみることだ。いつか、必ずわかる。注意しなければいけないのは、絵の中の黒い蝶は本当の闇を求めて飛び続けていることだ。」深夜、暑苦しかったので窓をあけた。寝付かれないので、電灯をつけてぼんやりと壁にかかっているその絵を見ていると、何かが突き出てくるように見えるではないか。絵に近づいて見てみると、蝶が、黒い蝶の羽がその絵から出てくる。あっと思う間もなく、その黒い蝶は絵から飛び出て、覗き込んでいた私の額にあたり、それを捕まえようとした私の手をすりぬけ、開いた窓の方に飛んで行く。私は窓を閉めようとしたが間に合わない。外は、月も星もないまさに漆黒の闇。黒い蝶はその中にたちまち吸い込まれていった。その後、その絵を買った画商のところに私は絵を持っていったが、画商は私の話を聞く前にその絵を見て、「その絵はもう価値がない」と言った。#112
Oct 25, 2009
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私は大きな誤りを犯した。今の私の感情がそのまま色になって、自分を失いたいと願った。岩崎ちひろの絵の背景のような、紙に滲んだ薄い色を夢見た。神は私の願いをかなえてくれた。私は弱々しい灰色にでもなるのかと思ったら、強烈な赤だ。それが画用紙いっぱいに広がって行く。私の内面にまだこんな強い感情が残っていたとは以外であったが、不満はないはずだった。しかし、しばらくすると私は驚愕した。私は絵の具になって、画用紙に留まることを許されたわけではなかった。一人の画家が倒れており、イーゼルの上の彼の最後の水彩画に、血が飛び跳ねている。私はその血になっていた。彼は私の一撃で息絶えていた。数年後、その水彩画は犯罪現場の証拠物件としてまだ保管されているが、私は血液のどす黒いしみになった。時々、ぼろぼろと画用紙からはがれていく。確かに、私が望んだように、私の汚れた感情がそのまま色になって自分を失いつつある。#111
Oct 18, 2009
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公園の周囲に沿って周回道路が作られており、そこをレース路とするわけだ。各小学校の希望者が駅伝形式で競う。参加することに意義を見出しているチームもあれば、優勝を意識してメンバーを組んでいるチームもいるようだ。 息子が言うには、自分のチームは絶対にびりだ。なにしろ、足の遅い人ばかりだし、とりわけ、自分の小学校でのマラソン大会でびりの人がいるという。 そんな子供でも大会に出ようという意思を育てた先生の教育はすばらしいと思うし、そんな子供でも出れる大会があることもすばらしい。 6人1チームで、息子は2番目に走る。公園内の周回道路を2周、約1200mを走る。 息子のチームは最初からびりで、息子が一人ぐらいぬいてくれないかと、ずっと見ていたのだが、これといった見せ場も無くたんたんとびりを走っていた。 息子らしくてよいと思った。こういう大会に希望して出場してくれるだけでもありがたい話だ。 少し前に息子と話をしたときのこと。走るのが好きなら、中学で陸上部にはいったらいいじゃないかと勧めてみるとそれも考えているとのこと。資質なんてどうでも良いことで、息子の素直さを私はひどく気に入っている。 さて、息子のチームのことだが、なんと結果はびりから2位で、引率していた先生もびりと信じていたようで、「いったい誰が抜いたんだ。」とチームのメンバーに聞いている。#110
Oct 11, 2009
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最近、食用の美しい肉が少し足りないらしい。そんな噂が流れて、一部の若い女たちは怯えている。薄い赤色で染められたほお肉か、もしくは、うっすらと生えた産毛付きの腿肉。彼女たちの美しい肉は処理されて、流通していく。その様子がテレビで放映される。インタビューに答えて、上流階級の老婆が食事をしながら語る。彼女の肉の色が、柔らかい曲線が囁くのです、彼女は本当に美しかったと。若い時、わたしは自分の体をもてあましていました。美しいことが怖かったのです。今の若い人達の不安がよくわかります。そう言うと、老婆は柔らかそうな肉をくにゃりと噛み切った。(#109)
Oct 4, 2009
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