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2022.07.20
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テーマ: 読書(8559)
本のタイトル・作者


プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争 (文春新書) [ 山田 敏弘 ]

本の目次・あらすじ

第一章 プーチンの戦争とサイバー戦
第二章 中国は技術を盗んで大国になった
第三章 デジタル・シルクロードと米中デジタル覇権
第四章 中国に騙されたトランプ
第五章 アメリカファーストから「同盟強化」へ
第六章 日本はサイバー軍を作れ

引用

サイバー攻撃で相手を混乱させ、電撃作戦で中枢を制圧する―――ロシア軍にとって、この作戦は伝家の宝刀となった。2013年にロシア軍の参謀総長ワレリー・ゲラシモフが、サイバー線などを含んだ新しいロシアの戦争の形を論文で発表した(通称「ゲラシモフ・ドクトリン」)。そこには、これからの戦争は平時、有事の境目が曖昧なままの状態で進む、と記された。サイバー戦はまさにその中核として重要視されている。今回の戦争もそのドクトリンに沿ったものといえるだろう。


感想

2022年182冊目
★★★

先日、何気なくNHKの特集で見たサイバー戦争が興味深く、それに関する本を読んでみた。
世界に飛び火 “サイバー市民戦争” パンドラの箱は開かれた

いやあ、「見えない戦争」が本当に間近にあるんだな…。
情報という名の財を奪い、利用する戦争。

細田守監督の映画「サマーウォーズ」(これも「戦争」というタイトルだ)で、全世界に利用者がいるネットサービス「oz」がハッキングされ、世界中が混乱に陥る。
アメリカ大統領のアカウントを奪えば、核のスイッチだって押せちゃうんだ―――。
映画の中で、人工知能ラブマシーンは、衛星「あらわし」の軌道を狂わせ、地上に、原子力発電施設に落下させようとする。

仮想世界のものだと思っていた物語が、途端に身近に感じられた一冊。
アメリカが、ロシアが、中国が、仮想の世界で現実の世界を伴って戦っている。

そして、情報戦。
はじめ、ロシアがウクライナを侵攻したという時。
ウクライナ東部の親ロシア派地域の独立を認めるかどうか、という安全保障会議の様子をニュースで見ていて、プーチンに「はいか、いいえか、どっちなんだ!」と詰られていた人を覚えている。

議員か何かなのかと思っていた。

ロシアが仕組んだものと、欧米が仕掛けたもの。
結果的に世界は欧米のストーリーで今回の戦争を見ているけれど、ロシアの中にいる人たちはまた違ったあらすじを与えられているのだろう。
人は自分が受け取ったものの中から判断する。
そして信じたいものを信じる。


この本で触れられていたけれど、「ウクライナ軍がロシア軍をやっつけた」は報道される。
「ウクライナ軍がロシア軍にやられた」は報道されない。
ウクライナ軍の被害は報告される。
ロシア軍の被害は報告されない。
正義と善。侵略と悪。民主主義への挑戦。
プロバガンダの下に覆われているものは見えなくなる。

「お前、あほちゃうか!いったい何時の時代やと思うてるねん!!令和やぞ!!」
これが、私が開戦とともにプーチンに言った言葉ではあるけれど。

私は情報にアクセスできる(と、自分では思っている)。
国に特定の言葉を調べることを禁止されていたりしない。
他の国の情報に触れることを咎められたりしない。
でも、いつそうなるのか分からないのだ。
いつだって。

好きに物事を述べることができる。
でもこれが、変わってしまったら?
私は口を噤むだろう。
そして今書いているこういったものが掘り起こされ、過去の罪として断じられたら?
捕らえられてしまったら?

中国で今起きているのは、そういうことだ。
私のスマホは、前にフアーウェイを使っていて、今オッポ。
どちらも中国企業のもの。
この本を読んでいたら恐ろしくてとてもじゃないけど使えない…。

情報を抜き取り、関連付ける。
購入履歴。行動記録。家族情報。交友関係。勤務先。取引先。
防犯カメラの顔認証システムと相まって、それは完全なる監視社会を生み出している。
すべてが糸のようにつながった世界。
そこで刃向かう者を見つけ、消し去るのがいかに容易か。
恐ろしい。

民主主義の根幹をなす選挙。
これも、サイバーテロの攻撃にされてしまえば、思うがままに票数の操作が可能だ。
この本で2016年のアメリカ大統領選挙について触れられていたけれど、結局今のところ一番安全な選挙の正当性確保の方法は「紙で残すこと」だったという。
これ、オードリー・タンも言っていた。
現状、最も安全な方法は「紙」なのだと。

すべてがデジタル化されていく中で。
アナログこそがもっとも強い、という結論に到達することがこの先もあるのかもしれない。

アニメ「ヨルムンガンド」では、すべての空の利用を全世界同時に禁止するという方法で世界平和を強制的に実現する。
それはインターネット以前の世界への逆戻りだ。
人々はもはや陸路か船(それも、GPSのない)を行くしかない。

でもきっと、人間はまた別の残虐な方法を生み出すんだろうな。
これまで、戦争のたびに技術革新が進んできたように。
インターネットがそうやって発展したみたいに。

これまでの関連レビュー

池上彰の世界の見方 東欧・旧ソ連の国々 [ 池上彰 ]
同志少女よ、敵を撃て [ 逢坂冬馬 ]
戦争は女の顔をしていない [ スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ ]




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最終更新日  2022.12.03 23:55:12
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