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2022.10.17
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テーマ: 読書(8290)

本のタイトル・作者



僕は死なない子育てをする 発達障害と家族の物語 [ 遠藤 光太 ]

本の目次・あらすじ


第1話:小さな産院の薄暗い待合室で食べたメロンパン
第2話:「自然」としての娘を迎える
第3話:楽しい仕事と鬱
第4話:「もっと休んでほしかった」と妻は言った
第5話:「死にたい」と言えずに
第6話:「普通」でいなければ、崖から急に落とされる
第7話:発達障害を知ってゾッとする

第9話:家族と発達障害
第10話:強かった妻の心が折れた
第11話:当事者との出会い、父のこと
第12話:平成元年生まれの苦闘
第13話:家族をリノベーション
第14話:コロナ禍と小学一年生の子育て
第15話:母の自立とトランスフォームする家族
第16話:死なない子育て
第17話:「平らな場所」にやってきた存在
第18話:発達障害とパパになる
おわりに

引用



子育てを始めるとき、最初は気負って全速力で走っては息切れして倒れていた。発達の特性にもまだ気づけていなかった。だからこそ、うまくいかない自分に腹を立て、不機嫌に過ごし、視野が狭くなっていた。
しかし、時間をかけて「これはマラソンなんだ」と気づき、長く走れるゆっくりのスピードを意識し始めたいまでは「別に止まっててもいいんだ」と気づき、“ごきげんな状態で子どものそばにいること”を重視し始めている。


感想


2022年267冊目
★★★


小学校時代に不登校になる。優等生だったが大学時代にうつ病になり、社会人2年目に娘が0歳の時点でうつ病を発症し長期休業。現在はライター。
この本は、夫婦関係が壊れていた当時、結婚三年目で発達障害の診断を受けた著者と、子供が生まれる前後の話。

発達障害の有無に関係なく、子育てをする中で直面する問題について共感するところが多いと思った。
子育てにより自分のペースが守れなくなり、「ひとりの時間」が失われたことへの辛さ。
復職後の体力と時間をセーブしながら仕事していくときの「自分は与えられた時間をこなしていくことしかできないのか?」「何を目指していけばいいのか?」という葛藤。

まわりもこれくらい頑張っているだろうと「普通」のハードルをクリアしようともがく。

私の身にあるあるが多すぎて、共感の嵐。
特に自分の場所を必要とするところ(私も自室が欲しい)、自分の時間を必要とするところ。
本を読み、何かを書くことで安定することも同じ。

本って、外にいても自分のまわりに張れるバリアというか、透明な檻みたいだから安心する。
その中に入っていれば、大丈夫。守られてる。
イヤホンで音を遮断するだけで、ストレスもかなり軽減される。

子育ての目標は自分がごきげんでいることだ、というのはよく聞く。
そしてそれが一番難しいことでもある。
子育てって「子どもを育てること」にフォーカスし過ぎて、子どもにばかり目線が行ってる。
でも、そのケア側が安定していなければダメなんだよね。

大人の最低条件は、自分の機嫌を自分で取れることだとも言う。
その時、何をしていれば自分はごきげんでいられるのか(あるいは最低でもニュートラルでいられるのか)、何をすればリカバリできるのかを知っておくことは何よりも大事。
得手不得手を把握し、自分の取扱説明書をよおく読み込んでおく。
そして随時アップデートをかける。

私は自分のスペース(時間・場所)がなくなると爆発する、とこの間キレてしまって再認識した。
私は何より自分だけの「一人でいる時間」が大切で、それがないと「家族」が出来ない。
だからこれは理解してもらうしかないし、爆発する前にそういう過ごし方をする方が良い。
ちょっと1、2時間離れるだけで回復するのだから。

著者の娘さんとのかかわり方、すごく良いなあと思った。
保育園に行きたくないとき、じっくりそれを待つことなんて、私には出来ない。
子育てって「自分がしてほしかったこと」をし、「してほしくなかったこと」をしないよういすることだとも言う。
気づけば親の言動を繰り返しているんだよね…。あんなに嫌だったのに。

著者は、寝る前に娘さんの「嫌だったこと」に耳を傾けるのだそうだ。
これ、良いですね。
私は最近、YouTubeのトレーニングやストレッチを寝る前に子どもとしているのだけど、その動画で「今日がんばったことを3つ言う」のが「メンタルにめっちゃ良いっちゃ」と毎日言うので、動画を見て身体を動かしながら娘息子と言い合っている。
学校へ行った、六時間がんばった、マウスピースつけた。
仕事へ行った、ご飯作った、お皿洗った。
毎日すごい「頑張った!偉かった!」と表彰されるようなことなんて起きないのだけど、日常の些細なことを言葉にして認識するだけで確かに胸の中から何かが溢れる。
この間読んでいた健康雑誌に、「自らを寿ぐ(言祝ぐ)」という言葉があったのを思い出した。

私はずっと、自分の「生きづらさ」に名前がつけばいいのにな、と思っていた。
地球上にひとりいる宇宙人みたいな感覚。
違う言葉で書かれた本の一文を、切り貼りしたような自分。
訂正されることを待つ誤植。
そんな目でずっと、世界を見ていた。

物心がついたころからずっと、死にたいと思いながら生きている。
それは希死念慮というよりも、抽象的に言えば「自分の星へ帰りたい」みたいな気持ちだ。
子供の頃はずいぶんそれで苦しんだ。
幼い私が何より怖かったのは、「自分がこの世界に耐え切れずに、大人になるまでに自死するであろうこと」だった。
その時に、この星でお世話になった人たちを悲しませるのは本望ではない。
恩義がある彼らのために、だから大人になるまで生きていよう、と思った。
相反する気持ちも抱きながら。

今でも時々辛くなるけれど、もはや諦めの境地に至ったというか、「もうこれは、この星に流れついたのだから、この星で天命を全うするしかしゃあないな」と思って日々を送っている。
生きていることが当たり前の、その傲慢に身を置いて。
この星も結構楽しいやん。みんな何考えてるか、全っ然分からんし!笑

死なない子育てをする、というタイトルを見た時、それはどっちの意味なんだろうと思った。
自分が死なない子育てか、あるいは子どもを死なせない子育てか。
きっとそれはどちらも同じで、繋がっているひとつのもの。
著者は、サステナブルな子育てをしようと言う。
持続可能な子育て。

この自分で、この世界で生きていくしかないのだから。
私は私のままで、私の子どもは(幸か不幸か)私のもとへ生まれたのだ。
その縁を、手を繋いで。

私はこの星で生きていく。
前を向いて。その日が来るまで。

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最終更新日  2022.12.03 23:31:18
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