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ジャズ・ピアノの豊かさをわかりやすく伝えてくれる好盤 ドン・ランディ(Don Randi,本名ドン・シュワルツ)は、1937年ニューヨーク生まれのピアノ・キーボード奏者。混同する人はいないと思うけれど、カタカナ表記するとほぼ同じドン・ランディーとなる、ヴァン・ヘイレンのプロデューサー(原綴はDonn Landee)とは別人なのでロック・ファンの方は念のため(笑)。 ジャズ・ファンの間では“隠れ名盤”的な扱いがされる本盤『枯葉(原題:Where Do We Go From Here?)』は、ドン・ランディが1962年にヴァーヴ・レーベルに吹き込んだピアノ・トリオ盤。最新の日本盤では、帯にずばり“これぞピアノ・トリオの隠れ名盤!!”などと記されていて、しかも発売のコレクション名が“Verveお宝コレクション”となっている。さほど有名な盤ではないので、そんなものかと思いつつも、実際に聴けば聴くほど本盤はジャズ・ピアノの入り口にもなり得るほどとっつきやすいものではないかとの考えが筆者としては強い、そんな1枚である。 ジャズ・ピアノと聞いて、ジャズ愛好者以外の一般の人たちのイメージとはどんなものであろうか。BGM的なものをイメージする人も多いだろう(その時点で、正座して聴くようなイメージが多数派とは思えない)。そんな人にはぜひ本盤を勧めたい。ジャズにおけるピアノ・トリオ盤の多彩さがしっかり盛り込まれている。明るくアップテンポで盛り上げる1.「T・Jズ・ブルース」からして、聞き流せない曲であることがありありとわかる“ノリの演奏”である。2.「ワルツリング・マティルダ」はナイト・クラブでの出演中に最もリクエストが多かったという曲で、さらりとした感覚から次第に盛り上がっていくところは、ピアノ演奏の醍醐味がよく味わえる。3.「アイ・ラヴ・パリ」は、どんランディの本領発揮の勢いいっぱいの演奏。以下で述べる7.「枯葉」と並んでこのアルバムの聴きどころと感じる 後半の聴きどころは何と言っても7.「枯葉」。ノリを保ちながらいろんな要素を絶妙に取り込んだ絶妙の5.「テイク・シックス」から、突然落ち着いた荘厳な6.「インタールード」を経て、名曲の7.「枯葉」という流れからして実によい。この「枯葉」は、ある意味、忠実な展開をしながらも、しっかり個性を織り込むことに成功していて、過去に紹介した他の「枯葉」の名演(参考過去記事:マイルス・デイヴィス、チェット・ベイカー、ウィントン・マルサリス、アート・ファーマー)と比べても遜色のない、ピアノでの表現としては実に見事な展開だと思う。 全編を通して、ドン・ランディのピアノはファンキーと言えなくもないが、ファンキーでは済ませられない懐の深さが随所に滲み出ている。その要素はきっと二つあって、一つはただ跳ねているだけではないドライヴ感。もう一つはじっくり聴かせる場面で、本当にじっくり聴かせられるという実力のほどなのだろう。本盤を未体験のジャズ愛好家にも、そして試しにピアノジャズを聞いてみようかという向きの人にもどちらにも感動を呼ぶこと間違いなしの好盤だと思う。[収録曲]1. T.J.'s Blues2. Waltzing Matilda3. I Love Paris4. That's All5. Take Six6. Interlude7. Autumn Leaves8. Gypsy In My Soul[録音・パーソネル]Don Randi (p)Leroy Vinnegar (b)Mel Lewis (ds)1962年1月31日・2月1日録音 【送料無料】枯葉(初回限定) [ ザ・ドン・ランディ・トリオ ] 下記ランキングに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2012年10月31日
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大衆迎合的ジャズはお嫌い? コアなジャズ・ファンに多い否定的評価の決まり文句の一つが“大衆迎合的でダメ”というもの。いやはや、ジャズのと言ったのはよくないかもしれない。音楽ファン全体にこの手の物言いはよくあると思う。ロックやポップスでも“このアルバムであの人は一般受け狙いに走ってしまった…”みたいなマイナス評価の仕方はわりとよく耳にする。 でもこの盤を聴きながら、その“受け狙い”という評価の否定的側面を考え直してみたい気もする。“名盤”というのは、多くの人が聴く(聴いていいと思う)から名盤と呼ばれるわけである。“受け狙い”という場合には、それが発表された時点での流行という要素が加味されるので、厳密に言えばちょっと違うわけだけれども、聴き手の中にそれがいいと思う人がどれだけいるか(たくさんいるかいないか)とういう点では、実はそうかけ離れてはいないと言えるのかもしれない。 つまり、何が言いたいかというと、“流行りの大衆迎合盤”と“多数の支持を得る名盤”は、実際のところ紙一重なのかもしれない、ということだ。前者が長期化すると後者に化ける可能性がある。前者の状態が短期間で終わった場合には、後世に“駄盤”扱いされたり、“一時の流行りものだったね”などと言われるようになるのだろう。 それでもって、デイヴ・パイク(Dave Pike)の『ジャズ・フォー・ザ・ジェット・セット(Jazz For The Jet Set)』である。ファンキー・ジャズ、ジャズ・ロック系の曲を集めた1960年代半ばの録音盤。この頃から60年代後半にかけてのジャズ・シーンはちょうど移ろいゆく時期で、一旦は確立されたジャズ音楽が次のステージとしてどこへ行くのか、各レーベルとも模索していた(といえば聞こえはいいが、要はどうすれば売れるかいろんなスタイルを試していた)時期でもある。 そんな中、世間では航空機での移動が広まり、ジェット機移動を頻繁に行う“ジェット族”が注目されたのもこの頃だった。この盤のジャケットに映っている妙な服装の女性は、ガッチャマンや科学特捜隊のコスプレ(笑)ではない。ジェット移動のビジネスマン獲得を狙った当時の航空会社のコスチュームである。そして、本盤の内容もまた、“航空機で飛び回るビジネスマンも気軽に聴ける軽音楽”というコンセプトの“ジャズ”だった。 腹八分目でさりげなくフェイドアウトというのが繰り返されるのも、そうした“意図的な軽さ”の賜物(?)なのだろう。ノリがよくエイトビートでジャズづらをした曲が多いのも、軽く親しみやすそうなテーマを中心に曲が展開していくのも、今からしてみればなんとも意図的だと思う。デイヴ・パイクのマリンバが全編にわたって主であるが、“隠れた名手”のクラーク・テリー(参考過去記事)が意外と活躍しているのもいい。 そうした制作側の意図を汲んであげるとすれば、本盤は“正座して聴いてはいけないアルバム”ということになるだろう。要するに、“真剣に聴いてはいけない盤”と言ってもいい。60年代当時の飛行機移動のビジネスマンにパソコンは存在しなかったが、今の時代、パソコンで仕事のメールを確認しつつ聞き流すような類の音楽。機上でブランデーか何かを片手に、ビジネスの企画書にいま一度目を通しつつ、ヘッドセットで流れているアルバム…。制作者の意図は、今風に言えばこんなイメージだったのだろう。そんなふうに考えてみると、半世紀近くたった今でもまだまだ実用に耐える盤のような気がする。次回の長時間飛行機移動の際には、太平洋上かどこかで、自分でも一度やってみようと思っている。俗に名盤を“一家に1枚”などと言うが、本盤は“働くビジネスマン1人に1枚”というと度が過ぎるだろうか(笑)。[収録曲]1. Blind Man, Blind Man2. Jet Set3. Sunny4. When I'm Gone5. You've Got Your Troubles6. Sweet Tater Pie7. Just Say Goodbye8. Devilette[パーソネル、録音]1.,5.,7.,8.: Dave Pike (marimba), Clark Terry (tp), Martin Sheller (tp), Billy Butler (g), Herbie Hancock (org), Bob Cranshaw (b), Bruno Carr (ds), 1965年10月26日録音。2.,3.,4.,6.: Dave Pike (marimba), Clark Terry (tp), Melvin Lastie (tp), Billy Butler (g), Herbie Hancock (org), Jimmy Lewis (b), Grady Tate (ds), 1965年11月2日録音。 【送料無料選択可!】ジャズ・フォー・ザ・ジェット・セット [完全限定生産] / デイヴ・パイク 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2012年10月29日
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あまりにモダンなバップ期の名盤 ソニー・スティットがバド・パウエル、J・J・ジョンソンと共演した作品がこの『スティット、パウエル&JJ(Sonny Stitt/ Bud Powell/J.J. Johnson)』。タイトルから誤解するといけないのだけれど、別に3人が同時に共演(演奏)しているというわけではない。あくまで中心となっているのはソニー・スティットであって、その彼が、アルバム前半ではバド・パウエルを迎えたカルテットの吹き込み、対して後半では、J・J・ジョンソンを含むクインテット(バド・パウエルは参加していない)という二種類の編成での吹き込み。この二つの組み合わせがまとめて収録されてこの1枚という形になっている。 世間では圧倒的に前半の注目度が高い。その理由はバド・パウエルにあり、ファンの間では“これこそがバド・パウエル最高のプレイ!”と称える向きもある。実のところ、筆者もこのアルバムを出してきて聴くときには、圧倒的に前半のバド・パウエル参加部分を聴くことが多い。 そのバド・パウエルは、1924年生まれのピアニストで、モダン・ジャズ・ピアノの確立者として知られる。麻薬やアルコール中毒、統語失調症と強引な治療の後遺症などに悩まされ、1966年に亡くなっている。中期~後期のバド・パウエルの演奏には波があるとさ言われ、確かにプレイの精度は不確かな部分が見えてしまうのだけれども、本盤の録音は1949年末~翌50年初頭にかけてのもの。既に電気ショック療法を受けた後ではあるが、いわゆる絶頂期のうちに含まれるものである。 話をリーダーに戻そう。パウエルを迎え入れるのはサックス奏者のソニー・スティット(Sonny Stitt)。本当かどうか知らないけれど、“あなたは最高のピアニスト!”とか何とかおだてて、パウエルのレコーディング参加を実現させたと言う。実はソニー・スティットも、バド・パウエルと同じ1924年の生まれであった。好不調の波があって、若くして亡くなったパウエルに対し、ソニー・スティットの方は、1986年に亡くなる(58歳没なので決して長生きしたわけではないけれど)まで、実に数多くの録音を残した。基本的にはアルト・サックスを演奏するが、とりわけ若い頃は“チャーリー・パーカーにそっくり(パーカーのコピー)”と言われることに抵抗を持ち、テナー・サックスに持ち返ることも多かった。本盤においても、演奏楽器はアルトではなくテナーである。実を言うと、近ごろソニー・スティットの魅力がようやくわかりつつある気がしてきた。昔はピンとこなかったのだが、しばらく前から少しずつ知らないアルバムにも手を出している。そのようなわけで、機会を見て、他のスティット盤も取り上げていきたいと思っている今日この頃だったりする。[収録曲]1. All God's Chillun Got Rhythm2. Sonny Side3. Bud's Blues4. Sunset5. Fine And Dandy (take 1)6. Fine And Dandy (take 2)7. Strike Up The Band8. I Want To Be Happy9. Taking A Chance On Love10. *Afternoon In Paris (take 1)11. Afternoon In Paris (take 2)12. *Elora (take 1)13. Elora (take 2)14. *Teapot (take 1)15. Teapot (take 2)16. Blue Mode (take 1)17. Blue Mode (take 2)[パーソネル・録音]1.~9.:Sonny Stitt (ts)Bud Powell (p)Curley Russell(b)Max Roach(ds)1949年12月11日録音(1.~4.)1950年1月26日録音(5.~9.)10.~17.:Sonny Stitt (ts)J.J.Johnson (tb)John Lewis (p)Nelson Boyd (b)Max Roach(ds)1949年10月17日録音。 【Joshin webはネット通販1位(アフターサービスランキング)/日経ビジネス誌2012】[枚数限定][限定盤]スティット、パウエル&J.J.+3/ソニー・スティット,バド・パウエル,J.J.ジョンソン[CD]【返品種別A】 下記ランキングに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2012年10月27日
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2012年10月26日
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ジャンルの枠に収まらないカサンドラの音楽性 カサンドラ・ウィルソン(Cassandra Wilson)は、ジャンルで言えば一般にはジャズ・ヴォーカルということになるのだろう。でも、彼女を“ジャズ・シンガー”のような括りで語ってしまうにはいつもどこか抵抗感が残る。特に本盤『グラマード(Glamoured)』は、ジャンルで括れない典型盤の一つと言ってもいいかもしれない。 カサンドラ・ウィルソン自身は選曲について尋ねられると“気に入っている曲を歌うだけ”と受け流しているようだが、“歌いたい”という欲求がわくかどうかは、その時点やそれ以前の体験に左右されるわけで、結果的にはそれだけ他ジャンルの音楽に造詣が深いとういことになるのだろう。本盤では、スティングの1.「フラジャイル」(この曲はジャズ方面でもそもそもよく取り上げる)、ボブ・ディランの5.「レイ・レディ・レイ」といったロック/ポップ系の選曲が一方にあり、他方には、シカゴ・ブルースの父マディ・ウォーターズの9.「ハニー・ビー」、さらにはカントリーの大御所ウィリー・ネルソンの6.「クレイジー」といった曲が選ばれている。こうした他人曲(カヴァー)と自作曲を集め、シャッフルし、並んでいるのがここに収録の12曲ということになる。 音の面での本盤の特徴は、ピアノレスという点。他のアルバムでも同じことは言えるけれど、弦楽器であるギターと打楽器(パーカッション)を組み合わせて音楽を作っていくと、“やかましく”作らない限り、音に隙間がいっぱいできてしまいがちである。ところが、カサンドラ・ウィルソンの作品は不思議なことに、その隙間が気にならない。 理由はおそらく二つあるように思う。一つは、パーカッションの使い方がとても効果的で、“打つ、叩く”系の音がやかましくならずに、けれども聴き手の耳にちゃんと印象的に残るよう仕組まれている点。それと、もう一つは何と言ってもカサンドラ自身の歌声であろう。この人は、女性シンガーとしては例外的な“低音の魅力”があって、一度聴いたら忘れられない衝撃度の強い声(こちらの過去記事も参照)の持ち主である。 この“低音の魅力”は、一方で、どれを聞いてもドスが効いているようで怖いとか、暗い曲ばかり、というマイナス・イメージにつながってしまうと感じるリスナーもいるようだが、もしこれが高音域に強い美声系だったら、ヴォーカルが浮いてしまい、音の隙間が気になって仕方ないことだろう。その意味で、このヴォーカルありきの楽器のチョイスと演奏なんだろうと感じる。もちろん、結果として出来上がった音楽は誰にも真似のできない個性的なものになるといった具合。ジャケットはぱっと見た目キラキラした感じの写真だが、そこから余計なものを想像してはいけない。盤の中の音楽に広がっているのは、ブルージーな側面により磨きがかかったカサンドラ・ウィルソンの姿である。これから肌寒くなってくる秋の夜、ブルージーな彼女の声に酔いながら酒にも酔うというのもこれまた乙ではなかろうか。[収録曲]1. Fragile2. Sleight of Time3. I Want More4. If Loving You Is Wrong5. Lay Lady Lay6. Crazy7. What Is It?8. Heaven Knows9. Honey Bee10. Broken Drum11. On This Train12. Throw It Away2003年リリース。 Cassandra Wilson カサンドラウィルソン / Glamoured 【Copy Control CD】 輸入盤 【CD】 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2012年10月23日
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2012年10月22日
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“素材のよさ”が際立つ名盤 ジェシ・ウィンチェスター(Jesse Winchester)は1944年米国出身のシンガーソングライター。既に音楽活動を始めていた1967年、ヴェトナム戦争の召集令状から逃れるため、カナダへ逃げ、モントリオールやケベックで音楽活動を続けるうちに、ザ・バンドのロビー・ロバートソンに見出され、このデビュー盤『ジェシ・ウィンチェスター』の制作へとつながった。ロビー・ロバートソンはプロデュースに加え、ソングライティング(3.「スノウ」)にも参加している。また、ザ・バンドつながりでロビー・ロバートソンがギター、リヴォン・ヘルムがドラムとマンドリンを演奏しているほか、エンジニアはトッド・ラングレンである。 ジャケット写真は、まるで指名手配の写真のような髭面のジェシ本人が映っている。味気ないジャケ写と言えばそれもそうかもしれないのだけれど、憂いのある悲しげな表情が印象的である。この写真の表情と関係あるのかどうかは定かではないけれど、このデビュー当時、ジェシは“逃亡の身”だった。上記のようにヴェトナムで人殺しになるよりも、徴兵回避の犯罪を犯してでも祖国を捨てる決意をした。カナダ市民権を得るのは1973年、大統領特赦で米国再入国が認められるのが1977年のことだから、1971年の本盤発表時はまだ“宙ぶらり”だった。ジャケ写に加えてアルバム全体に染みわたるどこか悲しげなトーンは、こんな彼の状態と重なり合って見える。 本アルバム中でよく知られた曲と言えば、シングルとなった6.「ヤンキー・レイディ」、あとは冒頭の1.「ペイデイ」といったところだろうか。確かにこれらはどちらもよくできているのだけれど、とくに1.の方はジェシ・ウィンチェスターの音というよりは、脚色された音という印象がある(別にそれがだめというわけではなく、見事に功を奏しているのだけれど)。7.や11.なんかもそれと同じ部分があるように思う。けれども、全編通して聴けば聴くほど、ジェシの本領はやはりソングライティングにあったのかという気もする。 そのようなわけで、ジェシらしさがどちらかというとそのまま素朴に出た曲も見逃せない。個人的に絶対外せないと思うのは、2.「ビロクシ」。演奏というのではなく、曲という“素材”そのものとしては、本盤屈指の名作だとすらと思う。他に聴きどころとしては、ロビー・ロバートソンと共作の3.「スノウ」も聴き逃せない。他にも4.や9.から窺えるように、とにかく曲の質が高い。結果、アルバム全体としては、そうした曲のよさがストレートに出ることもあれば、うまく脚色されて出てきたりもするという感じ。本作はよく名盤と言われるけれど、やはりその基礎にあるのはやはり素材(曲)のよさ。ロビー・ロバートソンの参加が大きいのは確かけれど、なによりもジェシ・ウィンチェスターのソングライターとしての素晴らしさが際立った1枚と言えるように思う。[収録曲]1. Payday2. Biloxi3. Snow4. The Brand New Tennessee Waltz5. That’s A Touch I Like6. Yankee Lady7. Quiet About It8. Skip Rope Song9. Rosy Shy10. Black Dog11. The Nudge~以下、2007年再発時のボーナス・トラック~12. Payday (live)13. Yankee Lady (live)14. Black Dog (live)1971年リリース。 【Joshin webはネット通販1位(アフターサービスランキング)/日経ビジネス誌2012】ジェシ・ウィンチェスター+3/ジェシ・ウィンチェスター[CD][紙ジャケット]【返品種別A】 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2012年10月20日
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『ザ・ライジング』:おまけの動画紹介(その3) 『ザ・ライジング』のアルバム絡みで、お読みの方からコメントもいただいたので、調子に乗ってもう1曲。アルバムの最後を飾る「マイ・シティ・オブ・ルーインズ(My City of Ruins)」です。 この曲の“マイ・シティ”というのは、ニュージャージー州のアズベリー・パークという町のこと。歌詞にもあるように、若い頃拠点としていたこの町の荒廃ぶりを取り上げ、サビでは“Come on, Rise up”と呼びかけています。まずはアルバム収録のヴァージョンをどうぞ(絵はジャケット・イメージのみ)。 最初にライブでやったのは2000年とのことですが、9・11後に歌の解釈は変り、“マイ・シティ”はニューヨークと重ねられていきます。どうやらスプリングスティーン自身も歌詞の一部を変えてアコースティックで歌ったりしていますので、聴き手側がそう解釈することを意図していた部分もあるのかもしれません。 下は同じ曲の2002年、ニューヨークでのパフォーマンス(VMAのライヴより)。7分超えのロング・ヴァージョンです。 もともとの歌の趣旨に返って、スプリングスティーンは子供~高校時代の育った故郷の町(ニュージャージー州フリーホールド)を取り上げた名曲も過去に発表しています。アルバム『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』のラストに収められた「マイ・ホームタウン」という曲です。 こちらの曲は80年代当時のツアーの模様が収められたビデオ・クリップをどうぞ。 [収録アルバム]Bruce Springsteen / The Rising (2002年)←「マイ・シティ・オブ・ルーインズ」のオリジナル(スタジオ録音)収録。Bruce Springsteen / Born In The U.S.A. (1984年)←「マイ・ホームタウン」のオリジナル(スタジオ録音)収録。[過去記事関連リンク]おまけの動画紹介(その1・「ロンサム・デイ」&「ザ・ライジング」)おまけの動画紹介(その2・「カウンティン・オン・ア・ミラクル」) Bruce Springsteen ブルーススプリングスティーン / Rising 輸入盤 【CD】 【輸入盤】BRUCE SPRINGSTEEN ブルース・スプリングスティーン/BORN IN THE USA(CD) 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2012年10月18日
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『ザ・ライジング』:おまけの動画紹介(その2) “暗い曲”とか“明るい曲”とかいった分け方(メジャー、マイナーというわけではなく)は、つまるところイメージの問題なので、ある種、主観的なものと言えるでしょう。ですので、その“暗い/明るい”のイメージは、編曲やテンポ、演奏などで大きく変わり得るわけです。 アルバム『ザ・ライジング』からのおまけの動画紹介、第二回は、アルバム内ではさほど暗い印象はなかった曲が、実に悲しげな暗い曲に化けた例を紹介したいと思います。こういうことをさらっとこなしてしまうのも、ブルース・スプリングスティーンのソングライター、パフォーマーとしての奥の深さかなと思うわけです。 曲は「カウンティン・オン・ア・ミラクル」。まずはリリース当時のヴァージョンのライヴ演奏の模様から。映像化されたバルセロナのライヴ(2002年)のものです。 このライヴ映像は、今からちょうど10年前の演奏になりますが、キーボードのダニー・フェデリシ(2008年没)、サックス&パーカッションのクラレンス・クレモンズ(2011年没)も元気に参加している映像で、加えて、ちょうどこの頃からE・ストリート・バンドに定着したスージー・ティレルもヴァイオリンを弾いています。 続いては、アコースティック・ヴァージョンの「カウンティン・オン・ア・ミラクル」。 リリースされたものとしては、2003年のコンピレーション『エッセンシャル・ブルース・スプリングスティーン』の限定版(本来は2枚組の普通のベスト盤だが、限定版は未収録曲を収めたDisc 3を含む)にこの音源が収録されています。[収録アルバム]Bruce Springsteen / The Rising (2002年)←オリジナル・ヴァージョン収録Bruce Springsteen / The Essential Bruce Springsteen –limited edition- (2003年)←アコースティック・ヴァージョン収録[関連過去記事]ブルース・スプリングスティーン『ザ・ライジング』『おまけの動画紹介(その1・「ロンサム・デイ」&「ザ・ライジング」) ■送料無料■完全生産限定盤★ソフトパック仕様3枚組■ブルース・スプリングスティーン 3CD【エッセンシャル・ブルース・スプリングスティーン 3.0】09/12/23発売 下記ランキングに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2012年10月15日
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『ザ・ライジング』:おまけの動画紹介(その1) 前回取り上げたブルース・スプリングスティーンのアルバム『ザ・ライジング』から、おまけの追加記事として動画紹介しておきたいと思います。とりあえず今回は、同アルバムから必聴の2曲です。 まずは「ロンサム・デイ」。セカンド・シングルとして発売された時のプロモーション用ビデオの映像と音声です。今回の2曲のうち、どちらかと言えば、スプリングスティーン個人の魅力で楽しみたい人向けです。*注:2016年1月に動画を差し替えました。 ちなみにこのクリップのヴォーカルトラックはアルバムとは別で、スプリングスティーンの肉声(映像と歌声が同一現場のもの)に差し替えられています。この効果で“語りかけ感”を出すというのは、80年代に「ブリリアント・ディスガイズ」(『トンネル・オブ・ラヴ』からのシングル曲)のPVでも同じようなことをやっていましたが、今回のはいろんなショットがあり16時間かけての撮影だったそうです。 続いては、「ザ・ライジング」。アルバム発売にあわせた第1弾シングルとしてリリースされ、グラミー受賞の対象にもなった曲です。映像は、リリース直後、MTVのVMAのライヴ・テイク。E・ストリート・バンドの一体感を楽しみたい方はどうぞ。*2016年1月、動画を差し替えてオフィシャル・ビデオになりました。 ちなみに、これら2つの音源(前者の「ロンサム・デイ」はビデオクリップそのもの、後者の「ザ・ライジング」はオーディオトラックのみ)は、いずれも当時の4曲入りシングル(下記)に収められています。[収録ディスク]Bruce Springsteen / Lonesome Day (2002年、4曲入りマキシシングル)[関連記事リンク]『おまけの動画紹介(その2・「カウンティン・オン・ア・ミラクル」) 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2012年10月14日
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9・11の記憶とボスのソングライティングの才能 2001年9月11日、アメリカで起きた同時多発テロ。その悲劇を受けてアメリカン・ロック界のボスことブルース・スプリングスティーンが一気に完成させた作品。2002年に入って数ヶ月間で制作され、同年7月にリリースされた。活動を休止していた(単発的には復活していた)E・ストリート・バンドを率いてのフルバンドでのレコーディングとしては、『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』以来、およそ18年ぶり。スプリングスティーン自身のスタジオ作としても、1995年の『ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード』以来7年ぶり(途中、EPやライヴ盤のリリースはあり)だった。つまり、バンドの再結成はしていたものの、フルアルバムの録音にはいたっておらず、ファンにとって待望の作品は、テロという大事件が引き金となって一気に実現した。 以前の作品との大きな違いの一つはプロデュースをブレンダン・オブライエンが担当している点で、この後、00年代のスプリングスティーンの諸作(『デヴィルズ・アンド・ダスト』、『マジック』、『ワーキング・オン・ア・ドリーム』)はこの人物がプロデュースをすることとなった(なお、2012年の新作ではロン・アニエロにプロデューサーが変更されている)。オブライエンは90年代初頭から頭角を現したプロデューサーで、パール・ジャムやレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンなどをプロデュースしたほか、エアロスミスの『ゲット・ア・グリップ』の成功でも知られる。オルタナからパンクロックまで幅広くこなすこの人物のプロデュースがスプリングスティーンの音作りをどう変えるのかとリリース当時は思った。でも、実際のところ、それほど流行りの音という感じでもなく、かといってもはや聴衆の耳に馴染まなくなってきたストレートなアメリカン・ロック・サウンドに固執するわけでもなく、いま思えばいいバランスに落ち着いたようにも感じる。 当時の雰囲気からして“アメリカ万歳”になっても不思議のない社会状況(米国内の雰囲気)だったが、そこはさすがにスプリングスティーン。同時多発テロに触発はされても、それを直接歌うというのではなく、それぞれの曲に人生の断片を切り取って載せていくという、ストーリー・テラーとしての本領を発揮している。9.「ファーザー・オン・アップ・ザ・ロード」のように、以前からでき上がっていた曲もあるが、概ね、ポスト9・11の社会における“人生の喪失感”のようなものがテーマになっている。 筆者の好みでお勧め曲を挙げておきたい。ボスの本領発揮のロック・チューンとしては、1.「ロンサム・デイ」と13.「ザ・ライジング」がベスト。これに次ぐのが9.「ファーザー・オン・アップ・ザ・ロード」。他には、3.「ウェイティン・オン・ア・サニー・デイ」、5.「カウンティン・オン・ア・ミラクル」、11.「メアリーズ・プレイス」といったあたりが、サウンド的には必ずしも暗そうではないのに、実は9・11を受けた暗さがあとから重く響いてくるようなナンバー。最後にもう一つ付け加えておくならば、15.「マイ・シティ・オブ・ルーインズ」。この曲も9・11前に作られていたらしいけれど、結果的に聴き手側からは違う解釈をされてしまった。そこが残念といえば残念なのだが、当時の社会状況抜きに考えて、かつての80年代の「マイ・ホームタウン」と並ぶ超名曲。[収録曲]1. Lonesome Day2. Into The Fire3. Waitin' On A Sunny Day4. Nothing Man5. Countin' On A Miracle6. Empty Sky7. Worlds Apart8. Let's Be Friends (Skin to Skin)9. Further On (Up The Road)10. The Fuse11. Mary's Place12. You're Missing13. The Rising14. Paradise15. My City Of Ruins2002年リリース。 【送料無料】ザ・ライジング [ ブルース・スプリングスティーン ] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2012年10月13日
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2012年10月10日
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“酔いどれ詩人”の転身1枚目 トム・ウェイツ(Tom Waits)は、1949年生まれの米国のシンガーソングライターで俳優。昨年(2011年)にはロックの殿堂入りも果たしている。“酔いどれ詩人”のイメージも強い彼は、70年代にデビューし、アサイラム・レコードで活動した。やがて実験的な音作りを志し、アイランド・レコードに活躍の場を移す。ちょうどその際に、アイランドでの第1弾として発表したアルバムが本盤『ソードフィッシュトロンボーン(Swordfishtrombones)』であった。 セールス面では90年代以降に幅広い人気を得たものの、アーティスト像としては、70年代の都会の場末のバーで弾き語っている“酔いどれ詩人”というイメージがこの人につきまとうのではないだろうか。筆者自身も70年代の諸作(例えば『土曜日の夜』、『娼婦たちの夜』、『ハートアタック・アンド・ヴァイン』など)が大のお気に入りである。その一方で、80年代のアイランド・レーベルでの作品群(スタジオ三部作+ライヴ盤『ビッグ・タイム』)も、これらとは違った意味で異彩を放っていて個人的には手放せない名盤ぞろいである。本作『ソードフィッシュトロンボーン』は、80年代のこれら三部作の最初の一枚である。 収録されているのは全15曲で、当時としては曲数が多いが、2分前後の曲が多いためで(インスト曲3曲を含む)、アルバム全体としては収録時間は決して長いわけではない。初めてのセルフ・プロデュース作で、個性の強さをそれまでの諸作にも増して発揮している。言い換えると、一般受けすることはまったく考えていないアルバムと言えるかもしれない。けれども、その“わが道を行く”という徹底ぶりが本盤の魅力なのだと思う。 70年代の作品との大きな違いは、“スタジオ的”ということ。これまでは、スタジオ作であっても、どこかにライヴのイメージを抱かせる(あるいは抱かせ得る)作品作りがなされることが多かった。けれども、本盤の音は明らかにスタジオでの作品というイメージである。考えてみれば、トム・ウェイツはカリフォルニア州出身。ニューヨークのような都会のどこか片隅で歌ってそうなイメージから、もっと創造的で自在なステージへ飛躍したのが本作(および本作発表に際してのアイランドへの移籍)と言えるのかもしれない。 本盤でのトム・ウェイツの新しい音のイメージは1.「アンダーグラウンド」に典型的に現れていて、ここから始まる三部作(フランキーZの三部作)に見られる新しいトム・ウェイツの世界を代表している。5.「A 30.6(原題:16 Shells From A 30.6)」や11.「地獄に落ちた男の歌」もあらたな音世界の一端をよく表している。その一方で、70年代からの彼らしさというものも維持されている。インスト曲の3.「ブッチャー」や弾き語り調の9.「ワイルドなフランクの歌」に見られるけだるさは従来のトム・ウェイツのよさをちゃんと受け継いでいる。また、4.「イリノイ州ジョーンズバーグの町の歌」や7.「イン・ザ・ネイバーフッド」、あるいは12.「ジンびたりの男」なんかの曲の美しさも70年代からの彼の得意な部分がちゃんと残されている。 どれを勧めるのかと言われれば、正直迷うのだけれども、トム・ウェイツの本盤『ソードフィッシュトロンボーン』、これに続く『レイン・ドッグ』と『フランクス・ワイルド・イヤーズ』は屈指の名盤群なので、ぜひともその一枚は試していただきたい。逆の言い方をすると、これらのうちどれでも1枚を聴いてみてピンと来なければ、3枚とも聴く必要はないかもしれない。でも、1枚でも聴いてみてこれと思ったならば、3枚とも(さらにはライヴ盤『ビッグ・タイム』も)、聴くべき世界は確実に広がるに違いない。[収録曲]1. Underground2. Shore Leave3. Dave the Butcher4. Johnsburg, Illinois5. 16 Shells from a Thirty-Ought-Six6. Town with No Cheer7. In the Neighborhood8. Just Another Sucker on the Vine9. Frank's Wild Years10. Swordfishtrombone11. Down, Down, Down12. Soldier's Things13. Gin Soaked Boy14. Trouble's Braids15. Rainbirds1983年リリース。 【送料無料選択可!】ソードフィッシュトロンボーン / トム・ウェイツ 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2012年10月09日
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“大人による”“大人のための”ライヴ盤 ケニー・ロギンス(Kenny Loggins)は、カリフォルニア(ロサンゼルス郊外)育ちのシンガーソングライター。高校卒業後、60年代にバンド活動をしながらシングルをリリースしたりするが、1972年にコロンビアとの契約でアルバムを発表。デビュー作の制作過程では、当初プロデューサーとして参加だったジム・メッシーナの役割が大きくなり、最終的に“ケニー・ロギンス・ウィズ・ジム・メッシーナ”としてアルバムを発表。以降、しばらくは“ロギンスとメッシーナ”として活動し、「ママはダンスを踊らない」などのヒットを生み出す。 1977年からはソロ活動をするとともに、ソングライターとしての実力も発揮し、78年にはドゥービー・ブラザーズの「ホワット・ア・フール・ビリーブス」をマイケル・マクドナルドと共作し、グラミー賞を受賞した。80年代に入り、映画『フットルース』および『トップガン』の主題歌を歌い、一躍トップ・アーティストとしての名声を得る。この時期、1985年の「ウィー・アー・ザ・ワールド」にも参加し、リード・ヴォーカルの一部を担当している。 そんなロギンスが1993年に発表した、通算2枚目となるライヴ盤がこの『アウトサイド・フロム・ザ・レッドウッズ(Outside From The Redwoods)』。年齢的にも40歳代後半に入り、大人の落ち着きを持ち始めた時期の、“大人による”“大人のための”ライヴ盤と呼べる仕上がりになっている。 冒頭の1.「愛の確信」(元ヴァージョンは直前のスタジオ作『リープ・オブ・フェイス~愛を信じて』に収録)、同アルバム表題曲だった10.「リープ・オブ・フェイス~愛を信じて」といった曲が、そのあたりの円熟具合をそのままに反映した好曲である。その一方で、かつてのヒット曲を大人っぽく決めて見せているのもよい。70年代の3.「ママはダンスを踊らない」、80年代の12.「フットルース~メインテーマ」といったナンバーが、若さや勢いあるいはノリで勝負するのではなく、だからといって淡泊にもなり過ぎず、ちょうどいい具合の“大人の料理”で提示されている。 最後にもう一点、目を引くのが二人のゲスト。本盤はタイトルにあるように、カリフォルニア州サンタ・クルーズのレッドウッドの森の特設ステージで行われたライヴとのことだが、ここに参加したゲストは、一人がマイケル・マクドナルド。共作の2.「ホワット・ア・フール・ビリーブス」をデュエットで披露している。もう一人のゲストは、R&B、ソウル系女性シンガーのシャニースで、当時まだ20歳(といっても彼女は14歳でデビューしたので、この時点ではもう駆け出しと言えるほどの感じではないけれど)。シャニースは、4.「アイ・ウッド・ドゥ・エニシング」と9.「ラヴ・ウィル・フォロー」の2曲でロギンスとデュエットを披露している。ちなみに、オリジナル・アルバムの録音では、前者はシェリル・クロウとデュエットしていたもの。[収録曲]1. Conviction of the Heart2. What a Fool Believes3. Your Mama Don't Dance4. I Would Do Anything5. Now and Then6. Angry Eyes7. If You Believe8. Celebrate Me Home9. Love Will Follow10. Leap of Faith11. This Is It12. Footloose13. I'm Alright1993年リリース。 【中古】洋楽CD ケニー・ロギンス / アウト・サイド・フロム・レッドウッズ(廃盤)【10P14Sep12】【画】 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2012年10月06日
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豪華キャストのトリビュート盤 レナード・コーエン(Leonard Cohen)は、これまで何度か取り上げているように(参考過去記事(1) ・(2) )、1934年、カナダ出身の詩人にして、カリスマ的なシンガーソングライターである。そんなレナード・コーエンの代表曲を超有名どころが多く参加して吹き込まれたトリビュート盤が、1995年に発表さのこの『タワー・オブ・ソング~レナード・コーエンの唄』というオムニバス・アルバムである。 実は、この他にもコーエンのトリビュート盤は存在するが、本盤はとにかくメンバーが豪華である。ドン・ヘンリー(イーグルスの主要メンバー)、エルトン・ジョン、ボノ(U2)、スティング、ピーター・ガブリエル(元ジェネシス)、スザンヌ・ヴェガといった、多くの人に馴染みの豪華キャストが名を連ねている。 ぶっちゃけた話、本盤全体を通した音楽的な統一性はない。ピーター・ガブリエルにスザンヌ・ヴェガ、ビリー・ジョエルにトーリ・エイモス、ドン・ヘンリーにトリーシャ・イヤーウッドみたいにして参加アーティストを並べてみれば、はなから共通しない音楽性みたいなものが見えてこない方が不思議だろう。 では、全編を通した統一性がないから面白くなくて聴く価値のない盤かと言えば、話はまったく別だと思う。それどころか、これだけ個性豊かな豪華キャストが演じ、それでいてことごとく見事な演奏に仕上がっているのは、一聴の価値ありだ。1曲1曲の演奏、歌唱、アレンジ、トータルな出来具合は、世間に多く流通している一般的なオムニバス盤のそれよりもずっと高いと言っていいと思う。 おそらく“優れた寄せ集め盤”になった理由は二つある。一つは、言うまでもなく、個々のアーティストの力量である。けれども、もう一つ忘れてはならないのは“素材の良さ”だろう。レナード・コーエンの曲は、コーエン自身が演じている時の詩人的(作品によっては暗く孤独な雰囲気の弾き語り的)演奏ではあるのだが、このアルバムに収められた各曲を聴くと、それを演じる人の個性に沿って、アダルト・ロック調(例えばドン・ヘンリー)、ロック・ポップ調(例えばエルトン・ジョン)、独特の個性を持った女性ヴォーカル系(例えばトーリ・エイモスやスザンヌ・ヴェガ)、美しい系の女性ヴォーカル(トリーシャ・イヤーウッド)にも…といった具合に多様なアレンジに適応しうるということがわかる。その意味では、まったくジャンル違いと言われるかもしれないが、同じく曲のよさを誇る吟遊詩人トム・ウェイツ(Tom Waits)と、レナード・コーエンの間には、意外な共通性があるかもしれないと思わされたりもする。 最後に、どうでもよいけど気になっている細かい点を二つほど。一つめはライナー(歌詞カード)に載っている各アーティストの写真の一枚について。ボノの写真の背景には「10円 ラッキー」と「元祖 ビデオ ビニ本」という文字の看板が見える。最初はどこなのだろうと思ったけれど、「歌舞伎町・・・(以下、判読不能)」という文字も見えるので、日本の新宿で撮った写真ということだろうか。あともう一つは、ジャケットのデザインそのもの。確かこのアルバムを初めて見た時(リリース当時)は、女性のイラストのジャケットの記憶があるのだが、現在、CDで手持ちの盤(US盤と思しき盤)は、タイトルと参加アーティスト名の文字だけが記されたシンプルで味気ないジャケット。どちらも特段に趣味のいいものではない(と個人的には感じる)ので、どっちでもいいのだけれど、いったいどちらがオリジナルなのだろう。[収録曲]1. Everybody Knows / Don Henley2. Coming Back to You / Trisha Yearwood3. Sisters Of Mercy / Sting & The Chieftains4. Halleluiah / Bono5. Famous Blue Raincoat / Tori Amos6. Ain't No Cure For Love / Aaron Neville7. I'm Your Man / Elton John8. Bird On A Wire / Willie Nelson9. Suzanne / Peter Gabriel10. Light As The Breeze / Billy Joel11. If It Be Your Will / Jann Arden12. Story Of Issac / Suzanne Vega13. Coming Back To You / Martin Gore1995年リリース。 ↓こちらのリンク画像は上記の女性ジャケットのもの↓ 【中古】その他CD Various Artists/タワー・オブ・ソング~レナード・コーエンの唄【10P14Sep12】【画】< 下記ランキングに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2012年10月04日
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台風一過とニール・ヤング 日本列島をみごとに縦断した台風17号。関東でも昨夜は特に風が激しかったが、今朝は台風一過となっている。台風一過で思い出したのが今回のこの曲、ニール・ヤング(Neil Young)の「ライク・ア・ハリケーン(Like A Hurricane)」。1977年発表のアルバム『アメリカン・スターズン・バーズ』に収録されているが、録音自体は1975年に行われたもの(同アルバムは、本来、1975年に制作しようとしていたアルバムを元にして1977年に別作品として完成されたため、1974~77年の長期間の吹き込みが集められることになっている)。「ライク・ア・ハリケーン」は同じ1977年にシングル・リリースされたものの、これといったチャート・アクションはなかった。 とはいえ、この曲はニールのファンの間ではすっかり定番となっていて、ベスト盤(『輝ける10年(デケード)』、『グレーテスト・ヒッツ』)やライヴ盤(『ライヴ・ラスト』、『ウェルド』、『アンプラグド』)にも繰り返し収録されている。なかなか雰囲気のある曲なせいか、ロキシー・ミュージックはじめ何組かのアーティストによってこれまでにカバーされてていて、筆者の中ではニールの名曲選をやったら、上位間違いなしと思っている1曲だったりする。 それでもって、これがどう台風一過なのかというと、いくぶんこじつけだと言われても仕方ない。タイトルは直訳すれば「ハリケーンのごとく」で、サビの詞が“あなたはハリケーンのようだった”というもの。台風の目のように穏やかな彼女の眼と、その虜になって嵐のただ中に夢を見る男…といった内容の詞である。思い起こしてみれば、(別に男性から見た女性に限らず)誰の人生にも、そういう“嵐”のような人が一人や二人はいたりするんじゃないだろうか。突然現れて嵐を起こし去っていくようなタイプの人…。 というわけで、2001年のライヴの様子から、ニールの「ライク・ア・ハリケーン」をどうぞ(最後の方は盛り上がって多少はじけてしまっているけれど、8分を超えるなかなかの熱演)。 こういう名曲というのはなかなかカバーしづらい(オリジナルを超えづらい)と思うのだけれど、そんな中、いい味を出しているのが、ジェフ・ヒーリーによるカバー。 膝の上にギターを寝かせて弾く独特の奏法は盲目だった彼の代名詞で、J・ヒーリー版「ライク・ア・ハリケーン」は、アルバムとしては、2008年の遺作『メス・オブ・ブルース』に収録。[収録アルバム]Neil Young / American Stars 'n Bars (1977年)Neil Young / Unplugged (1993年)←ここに収録のアコースティック系ライヴ・ヴァージョンも結構おすすめ!ほか、各種ベスト盤、ライヴ盤等に収録。[関連過去記事] ニール・ヤング『ハーヴェスト』 ニール・ヤング&クレイジー・ホース 『スリープス・ウィズ・エンジェル』 ニール・ヤング 「孤独の旅路」(曲&動画) クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング(CSN&Y)「ヘルプレス」(曲&動画) ザ・ジェフ・ヒーリー・バンド 『シー・ザ・ライト』 【Joshin webはネット通販1位(アフターサービスランキング)/日経ビジネス誌2012】【マラソンsep12_大阪府】【RCP1209mara】アメリカン・スターズン・バーズ/ニール・ヤング[CD]【返品種別A】 Neil Young ニールヤング / Decade 輸入盤 【CD】 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2012年10月01日
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