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卒業して十数年、久しぶりに母校を訪れました。

学生・教官・一般参加者が現在直面している文化、社会現象について
法則を見出だし、楽しく、かつアカデミックに、議論するというもの。

専攻していた文学からは三つのテーマ。
「過剰になると文学（芸術）になる法則」
「Ｅ.Ａ.ポーのゴシック－地下から音が聞こえる法則」
「フロストの詩では動物が人間で、人間が動物である法則」

ポーについてちらっと書いた日に、何年ぶりかで担当教官から

出逢った本はあなたの軌跡4 「黒猫＆乱歩＆四谷怪談」

十数年、足を踏み入れていなかった演習室は、懐かしいというよりも、
つい昨日もいたような感覚になるほど、変わらぬ雰囲気。
カフェで会話を交わすように、お茶とお菓子をいただきながら
サロン形式で行なわれました。

まずはＡ教授による「過剰になると文学になる法則」。
「法則と言うからには、全てに通じるものでなくてはならない。
ところが、科学の法則などと違って、法則がわかったからといって
文学が書けるわけではない。」
こんな調子で始まります。

「文学は、とにかくおしゃべりだ。ドストエフスキーなどひとりで
最初から最後までしゃべり通しだ。」

「これは絵画にも言える。ゴッホなど自分の過剰さを
耳を切り落とすことによって減らしている。」

過剰なるファン・ゴッホ「自画像」

「持続性もしかり。食べものや着物など、数を並べ立てることで
成立している文学もある。」

削ぎ落とす方向への過剰さも、文学へ通じる。」

「日常のうんざりする『ほどほど』さから逃れるため、人はときに過剰な世界・文学へ向かう。」

「いわゆる大衆文学-呑みやすい酒のような-は『ほどほど』に近い位置にある故に栄え、
芸術たる文学はその呑み難さ故に『高尚な』と揶揄される。」

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芸術か芸術でないか「萬斎ハムレット」

「芸術たる美こそ絶対的に『ほどほど』とは無縁であり、絶対的価値ではなく
趣味的偏りに過ぎないが、だからこそ、人は美とは無縁ではいられない。」

「文学もまた絶対的価値ではなく、趣味的偏り以上のものには
なりえないことが宿命づけられている。」

「キリストの歩んだ道も、ほぼ芸術と同じ。
だから文学（芸術）はその事実を誇りに思い、凡庸な「ほどほど」の世界に
別れを告げよう。
勇気をもって過剰になろう。
美にはそうするだけの価値があるのだから。」

岡本太郎　「今日の芸術」

いかがでしょうか？以上、すべてＡ教授のお話とレジュメより。

理解されないゆえ、呑み干し難い故の芸術ならば、
芸術と呼ばれるようになった作品が、現われたときはなかなか認められず、
後に理解されるようになるのは、人がその度の強さに慣れた故でしょうか。
理解されたとたん、高尚なる芸術は呑み干しやすい酒となり、
大衆の芸術への道を踏み出し始めるのでしょうか？

また、当初は大衆の芸術と言われたものが、高尚なる芸術－歌舞伎など－への道を
歩み始めるのは、その度の強さが増した故でしょうか。
それとも、時代を経たことによって理解がし難く、呑み込み難い酒に
違いないという思い込みがあるからでしょうか。

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「歌舞伎名作撰義経千本桜四の切」

私はここで、大衆文学と芸術たる文学の違いをもう少し詳しく
お聞きしたかったのですが、時間がきてしまったため、質問は次の
「Ｅ.Ａ.ポーのゴシック－地下から音が聞こえる法則」ですることにしたのでした。　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

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