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手習の杜　宇治　源氏物語のまちへ６

テーマ：ちいさな旅～お散歩・日帰り・ちょっと１泊(42318)

カテゴリ：源氏物語ゆかりの地めぐり

早めのランチの後、再び三室戸寺の看板に向かって進むと

「手習」は、浮舟が失踪してから一周忌前後までの様子が描かれる帖。
一つ前の宇治第８帖「蜻蛉」では、失踪を薫や匂宮の視点で描き、
浮舟はどうなったのだろうと読者を十二分に引き付けてから、
「手習」で今度は浮舟の視点から、その間の事情が開示されます。

重なりあう同じ時間や出来事を違う立場から描くという手法が
１０００年も前に巧みに使われているわけで
「蜻蛉
「手習」が浮舟失踪の当日から、翌年４月まで。

「蜻蛉」では、薫も匂宮も、失踪当初は悲しむものの、
半年で他の女人に心を移してゆく様子が、
「手習」では、浮舟がいち早く髪を下ろして俗世を逃れた上、
自分自身の一周忌供養のための衣を縫う様子が描かれ、
男女の心理を比較する上でも非常に興味深いくだりになっています。

古跡と共に立っている木は、浮舟が発見されたときに横たわっていた場所とのこと。

「…髪は長く、艶々として、大きなる木の根の、いと、荒々しきに、寄り居て、いみじう泣く」

浮舟を助けたのは、母親を見舞いに宇治にやってきた横川の僧都。
僧都の母親を療養させたのは朱雀院ゆかりの宇治の院で、その裏手の木の根元に

この付近にはかつて「手習観音」と呼ばれる観音像が安置された観音堂もあったようで
朱雀院ゆかりの宇治の院が、その観音堂になぞらえられていたのでしょうか。
府道京都宇治線と三室戸寺へ続く道の交差点でもあり、その後、浮舟が小野の里へ
移されたこととも照らし合わせて、京都へ通じる道沿いの場所が選ばれたのかもしれません。

さて、「手習」の古跡すぐそばの横断歩道を渡り（西）、

三室戸寺は蓮などの花の名所だそうで、先程の「手習」の古跡のある交差点を左折（東）すると
京阪三室戸という駅もあるほど。参拝する方の絶えない場所なのでしょう、
たどり着くまでの道には、どちらに行くか迷いそうな辻々に、新旧案内碑が立っていました。

おかげさまで、交差点から１０分ほどで門前に到着。拝観料５００円を払った際、
「『浮舟」の古跡はどの辺りですか？」と訊ねると、案内図を示されて
「鐘楼のそばです」と即答していただき嬉しく。

花の盛りには少し間のある時期、この山際までやってくるのは
物語愛好の面々が多いのかもしれません。

山門をくぐってさらに数分、参道を進み境内に続く石段をのぼります。

午前中に上った橋寺の倍以上ありそうな段数を踏むと、
心洗われるような境内がふいにひらけて。

労の後の楽、繰り返される人の営みを俯瞰で体験させてくれるのも
山寺へ参拝する意義なのでしょうね。

続きます。

「源氏物語ゆかりの地めぐりの日記」
「源氏物語の日記」

***

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