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「真夏の方程式」 2013年 日本映画監督 西谷弘出演 福山雅治 吉高由里子 杏 風吹ジュン 前田吟 山崎光 昨年公開のガリレオシリーズ最新作「真夏の方程式」を観ました。(真冬ですが。)けっこう以前(多分夏頃)にTV放送していたのを録画していましたが、なかなか観られず、季節外れとは思いつつ、このほどやっと観ることができたのです。 手つかずの美しい海が残る玻璃ヶ浦で進められている海底鉱物資源開発計画の説明会に招かれた物理学者・湯川学(福山雅治)は、川畑夫妻(前田吟・風吹ジュン)が経営する旅館「緑岩荘」に滞在することになり、そこで、親の仕事の都合で、夏休みの間、親戚である川畑家の旅館で過ごすことになった少年・恭平(山崎光)と出会います。 翌朝、堤防下の岩場で、旅館のもう1人の宿泊客・塚原の変死体が発見されます。彼は元捜査一課の刑事で、服役後に消息を断ったある殺人事件の犯人を捜していたらしいのです。 現地入りした捜査一課刑事・岸谷美砂(吉高由里子)は、さっそく湯川に協力を依頼します。 やがて、環境保護活動にのめりこむ旅館の1人娘・成実(杏)や、観光業がふるわず廃業を考えていたという川畑夫妻、そして恭平をも巻き込みながら、事件を巡る複雑な因縁が次第に明らかになっていくのです。 いやあ、なかなかいい人間ドラマでした。はっきり言って、推理ドラマというには、手の込んだトリックはないですし、犯人は初めから丸わかり(過去の事件については意外でしたが)でしたし、ほぼ観るべきところはありませんが、子ども嫌いと自ら明言する湯川と恭平との交流、環境保護活動に妄信的にのめりこむ成実の心境の変化、緑岩荘の人々の家族愛など、湯川と関わることで生まれる人間ドラマには感動しました、(ただ、成実や恭平のトラウマについては、疑問が残ります。結末に関わりますので、詳しくは述べませんが。) で、例によって、僕は話の筋とは違うところで気になったことがありましたので、述べさせていただきます。 ひとつは、恭平君の理科嫌いについてです。 堤防と高さと下駄が死体と一緒に落ちていた件から、地元警察が事故死として処理しようとした事件を、いち早く殺人だと見抜いたほど聡明な恭平が、理科が嫌いだと明言したことに、理科教育に携わる者として、カチンときてしまった湯川は、何とかしなければと思い、ペットボトルロケットを使った堤防から200m沖の海中調査を、恭平を助手にして行います。 最近、理科嫌いな子どもが多くなっているみたいですね。 子どもたちは動物園や水族館は大好きですし、恐竜や宇宙の話をすると必ず目を輝かせてきます。一瞬にして色が変わる色水の実験や段ボール砲の実験などにも、たちまち食いついてきます。 そうです、本来子どもたちは、大自然の不思議を解明する理科という教科は大好きなはずなんです。 なぜそういう状況が生まれてくるのでしょうか。 思うに、昨今の学校の理科教育が問題なのではないでしょうか。 この間、街角で通りすがりにこんな会話を耳にしました。5歳ぐらいの女の子と、そのお母さんの会話です。 娘「ねえ、夕日はどうして赤いの?」 母「………。」(聞こえないふりか?) 娘「ねえっ、夕日はどうして赤いの??」(大きめな声で) 母「どうしてかねえ??……」(言葉を濁す。) 通りすがりだったし、全く知らない人だったので、駆け寄っていって、 「夕方は日光が通る空気が多くなるから、いろいろな色が混ざっている日光が赤い方に偏るからだよ。」と教えてあげることはできませんでした。あのお母さんが後日ネットなどで調べて、娘のカワイイ疑問について答えてあげているであろうことを希望しています。 日光については小学校3年で基本的なこと(まっすぐ進むということ、影を作るということ、など。)を学習し、中学校で、理論的なこと(反射や屈折、波であることなど。)を学習することになっています。しかし、現在は色については詳しくやらないようですね。何年生だったか忘れましたが、僕は理科室で日光をプリズムで受けて虹を作る実験を見て、虹がどうしてできるのか、色とは何なのか、教えてもらった覚えがあります。 「空はどうして青いの?」「夕日はどうして赤いの?」「日食はどうして起こるの?」「雨はどうして降るの?」「コンクリートは何でできているの?」「マグロが食べられなくなるって、どうして?」などなど、子どもたちの素朴な疑問に、正しく、わかりやすく噛み砕いて教えられる親や先生がどれだけいるでしょうか。 あと、この物語の根底に流れる、環境保護運動と地域開発についての兼ね合いについて、思うところがありました。 杏扮する旅館の娘成実は、海底鉱物資源開発計画に、瑠璃が浜の美しい自然環境保護のため、反対運動にのめりこんでいます。その説明会で、湯川は「地下資源を採鉱すれば生物には必ず被害は出ます。人間はそういうことを繰り返して文明を発達させてきました。その恩恵はあなたたちも受けてきたはずだ。」と、熱弁する成実を一蹴します。 僕も常々同じ意見です。人類文明の発達は環境破壊の歴史と同義語です。人類が文明を発達させてきたこの1万年ほどの間の生物の絶滅のスピードは、地球上の多くの生物が絶滅した大量絶滅の時代(45億年の間に数回あります。有名なのは6500万年前の恐竜の絶滅ですが。)の絶滅スピードを遥かに凌ぐそうです。 レアメタル発掘に反対するんだったら、お前ら携帯電話やパソコン使うんじゃあねえぞ。と言いたいです。お前ら、瑠璃が浜じゃなかったら他のところの環境を壊して鉱物発掘するのは反対しないんだろう、と言いたいですね。すべての文明生活を捨てて、自然に帰った人の言葉なら耳を貸しますけどね。 ということで、例によって、話の本筋ではない別のことが気になってしまいましたが、この映画が非常によくできた、いい人間ドラマであるということには変わりありません。 ところで、この映画では、湯川先生が終始出張中ですので、研究室の場面が全くなくて、例のうっとうしい、栗林万年助手(渡辺いっけい)と岸谷刑事(吉高由里子)の掛け合いが全くなかったのはよかったです。(というか、渡辺いっけいさんは全く出演していません。)
2015.01.21
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「クラウド アトラス」 Cloud Atlas 2012年 アメリカ映画監督 ラナ&アンディ・ウォシャウスキー トム・ティクヴァ出演 トム・ハンクス ハル・ベリー ジム・スタージェス ベン・ウィショー ジム・ブロードベント ぺ・ドゥナ ジェームズ・ダーシー ヒュー・グラント ヒューゴ・ウィーヴィング スーザン・サランドン あけましておめでとうございます。いつの間にか2015年ですね。昨年は、なかなか更新できなくて、何カ月も滞っていたりすることもありました。新しい年になり、気分を新たに、もっと頻繁に、毎週とかは難しいかと思いますが、せめて、月に2回ぐらいは更新したいと思っています。よろしくお願いします。 さて、今回は今年最初ということで、最近観て1番気に入っている作品を紹介したいと思います。 公開当時、TVCMで観て、トム・ハンクスやハル・ベリーが何役もやっているようで、どんな話なのか非常に気になっていた作品です。 しかも監督が、あの「マトリックス」三部作のウォシャウスキー姉弟(「マトリックス」当時は兄弟でした。)です。絶対面白いに違いないと期待バリバリでした。 物語は時代も舞台もバラバラな6つの物語が同時進行で描かれています。 1849年、奴隷売買の契約を終えた若き白人弁護士ユーイング(ジム・スタージェス)は、医師グース(トム・ハンクス)と共に、アメリカへの帰路の船旅についていました。病気のため隔離されていた船底の船室でユーイングは、脱走し密航していた黒人奴隷オトゥアと出会い、一度は運命を変えられないと断るも、説得されて助けることにします。 1931年、男娼だったフロビシャー(ベン・ウィショー)は、往年の大作曲家エアズ(ジム・ブロードベンド)の元で採譜係として雇われ、夜に自分の交響曲を作曲していました。 1973年、物理学者シックススミス(ジェームズ・ダーシー)は、原発事故を引き起こし石油企業の利権を守ろうとするフックス(ヒュー・グラント)を告発するため、偶然知り合ったジャーナリストのルイサ・レイ(ハル・ベリー)に原発の報告書を託そうとするが、殺し屋ビル(ヒューゴ・ウィーヴィング)に射殺され、ルイサも命を狙われます。 2012年のロンドン、作家ダーモット(トム・ハンクス)が殺人事件を犯し、カルト的人気を得たため、彼の著書はベストセラーになります。ダーモットの出版元であったカベンディッシュ(ジム・ブロードベント)は大儲けするが、獄中のダーモットの命令でやってきた彼の弟達に「分け前をよこせ!」と脅されてしまいます。 2144年、海に沈みゆく全体主義国家ネオソウルでは、遺伝子操作で作られた合成人間(複製種)達は人間(純血種)に支配され、過酷な労働に従事させられていました。複製種ソンミ451(ペ・ドゥナ)はある日、革命家チャン(ジム・スタージェス)に救出され、生まれて初めて外界に足を踏み入れました。 2321年の文明の崩壊した未来の世界、ある島(かつてはハワイと呼ばれていました。)では凶悪な人食い族に怯えながらも、人々は遥か昔、世界を救ったとされる女神ソンミを崇め、素朴な生活をしていました。島の住民ザックリー(トム・ハンクス)は彼の心の闇の部分であるオールド・ジョージー(ヒューゴ・ウィービング)に悩まされ続けており、人食い種族に襲われた仲間を見殺しにしてしまいます。ある日、島に「昔の人」の科学文明を維持しているプレシエント族からメロニム(ハル・ベリー)という女性がやって来ます。メロニムは、“悪魔の山”と呼ばれ、人々が恐れ近づかない遺跡へのガイドを探していたのです。 6つの時代の6つの物語が、アトランダムに切り替わり、同時進行で展開されていきます。時には、数十秒で切り替わることもあり、はっきり言って、混乱するかもしれません。しかし、意外なことにだんだんと慣れていき、ちゃんと6つの物語の筋をきちんと追っていけるようになるから不思議です。 バラバラに切り替わっていますが、最初にダイジェストで6つの物語を紹介している場面以外は、ちゃんと時間は戻ることなく前に進んで行きますし、それぞれの物語のクライマックスに向けて同じように盛り上がっていくので、映画世界にのめりこんで、夢中になってしまいます。 まあ、主人公も舞台も雰囲気もそれぞれなので、人によっては好き嫌いがあるかもしれません。確かに僕も、2012年のカベンディッシュの話は、主人公がちょっと悪賢いところもあり、いまいち感情移入できませんでしたが、2144年のソンミの話は、後で述べる理由も有り、思わずラストで涙ぐんでしまいました。 また、時代も舞台もテイストもバラバラな物語ですが、互いの関連しあっているところがあります。例えば、1849年の主人公ユーイングの航海記が、1931年の主人公フロビシャーの愛読書だったり、2012年のカベンディッシュの物語が映画化されていたものを2144年のソンミが観ていたりするのです。 そして、この映画の面白いところは、役者陣が物語ごとに違う役をやっているところです。それは、役の大小・年齢はもちろん、性別・人種まで違う役を時には特殊メイクを施して、演じ分けしているのです。 例えば、トム・ハンクスは、1849年では主人公ユーイングとともに航海するグース医師、1931年は主人公フロビシャーが泊まるホテルの支配人、1973年では主人公ルイサに一目ぼれし協力しようとするがすぐに暗殺されてしまうサックスという男、2012年では自分の本を悪評する批評家を高層ビルから突き落としてしまう破天荒な作家ダーモット、2144年には主人公ソンミが観ている「カベンディッシュの大災難」という映画の主演男優、そして最後は主人公ザックリーという具合です。 ハル・ベリーは、1849年では一瞬だけアップになる名もないマオリ族の女、1931年にはフロビシャーと不倫関係になる大作曲家の若き妻ジョカスタ(白人)、1973年は主人公ルイサ・レイで、2012年は出版パーティーのインド人の女性客、2144年は脱出後のソンミの首の爆弾を外す闇医者(男)、そして、2321年では、主人公ザックリーを助けるメロニムです。 特に、エージェント・スミスことヒューゴ・ウィーヴィングは、すべての物語で悪役的な脇役を演じているのですが、2012年で演じている、主人公カベンディッシュが無理矢理入れられる老人ホームの看護婦の怖さは異様でしたし、ペ・ドゥナが、1973年の物語で演じている、結果的にルイサを助けることになる違法工場にいたメキシコ人女性の、本人と全く違うブサイクさ加減は傑作でした。 中には、あまりにもチョイ役すぎて、また特殊メイクすぎて、全く気付かないものもあり、最後のエンドロールで紹介され、びっくりしてしまうものもあります。(思わずそれを確認するため、もう1度見てしまうほどです。2時間半もあるのに。) ただ、人種を変えるための特殊メイクが、ちょっとイケてないのがちょっと気になりました。2144年は韓国(ネオソウルという架空の都市)が舞台なため、ジム・スタージェスとジェームズ・ダーシーが東洋人に扮するため、目のあたりに特殊メイクをしているのですが、非常に違和感ありありですし、1849年の主人公ユーイングの妻ティルダは韓国人のぺ・ドゥナなのですが、まったく白人には見えませんでした。(まあ、それはそれで可愛らしかったけどね。) 白人と黄色人種って、そんなに違うんですかねえ。まあ、かつての007よりはずーっとマシでしたけどね。(「007は二度死ぬ」参照。) ところで、ソンミちゃん、とってもとっても可愛らしいですね。まあ、単純労働のために培養されたクローンの役ということで、その純粋無垢さは半端ないですし、あんな風に助けられれば、チャンに夢中になってしまうのは当然の成り行きですけどね。(結構大胆なベッドシーン有りです。ご注意を。) このぺ・ドゥナという韓国人女優、韓国映画はほとんど観ていない僕でも観ている韓国映画「グエムル」に出ていたそうですが、全く気が付きませんでした。 でもまた、僕のお気に入り女優が増えてしまいました。ウォシャウスキー姉弟の次回作にも出演しているということなので、非常に楽しみです。 ということで、非常に趣向を凝らした楽しい映画と、かわいらしいお気に入り女優を、見つけてしまったというお話でした。
2015.01.01
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