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「バンド・ワゴン」 The Band Wagon 1953年 アメリカ映画監督 ヴィンセント・ミネリ出演 フレッド・アステア シド・チャリシー ナネット・ファブレー 1950年代、MGMのミュージカル映画が世を席巻していた時代、その2大スターといえば、ジーン・ケリーとフレッド・アステアでした。ジーン・ケリーについては、その代表作「雨に唄えば」を以前紹介しました。 でも、どちらかと言えば、僕はフレッド・アステアの方が好みです。がっちり体型でパワフルなダンスを得意とする、いかにもアメリカという感じなジーン・ケリーに対し、アステアは、パッと見、桂歌丸を上品な紳士にしたような感じの容姿なのですが、スローなダンスでは優雅で美しく、タップは非常にリズミカルで、非常にかっこいいのです。 しかし、実は僕は、彼の映画をしっかり観たことがありませんでした。MGMが50周年を記念して制作した「ザッツ・エンタテイメント」という、MGMのミュージカル映画の名場面を集めて作った総集編的映画で、観ただけだったのです。 だから、彼の映画をちゃんと観てみたいと思っていたのですが、やっぱり需要が少ないのでしょうか、レンタルビデオ屋には並んでいません。もしかして、アステア自身がレンタルされることを嫌がって、家庭用のビデオやDVDが作られていないのか、とも思っていました。 でも、見つけてしまったのです、古本屋で、しかも一気に何本も。しかもしかも、“180円”とか“280円”とかの値札が付いています。これは掘り出し物です。物の価値を知らないというのは恐ろしいものです。もちろん、即購入したのは言うまでもありません。 ということで、まずはフレッド・アステアの1番の代表作と言われる「バンド・ワゴン」を観てみました。 かつてのアメリカのミュージカル映画のスター、トニー・ハンター(フレッド・アステア)は、半ば引退したような日々を送っていました。久々にお忍びで訪ねたニューヨークでは、同じ列車に乗っていたエヴァ・ガードナー(本人がカメオ出演)を待ち構える新聞記者たちを、自分を待っていてくれたのだと勘違いする始末でした。 がっかりして改札を出たトニーを待っていたのは、旧知のレスターとリリーのマートン夫妻でした。脚本家とソングライターを兼ねる2人は、できあがったばかりの脚本をトニー主演で舞台化すべく早速駆けつけたのでした。 演出に予定しているジェフリー・コルドバが演出・主演する舞台がはねた後、マートン夫妻とコルドバはトニーを口説きます。「この舞台で新しいトニー・ハンター像を打ちたてるんだ。」と。 ミュージカル・コメディだったマートン夫妻の脚本を、深刻な心理劇に書き換えさせたコルドバは、持ち前の弁舌と手管で、バレエダンサーのギャビー・ジェラルド(シド・チャリシー)を主演女優に、その恋人で新進の振付師ポール・バードを獲得し、大勢の出資者まで確保し、自信満々で製作を開始します。 多少のいざこざがありながらも、なんとか初日にこぎつけた舞台“バンド・ワゴン”ではすが、その結果は散々たるものでした。コルドバの前衛的な演出と脚本の変更に客は唖然として引きあげ、スポンサーたちは手を引き、初日のパーティ会場はがらがらだったのです。 しかし、コーラスやダンサーとして参加していた若い役者たちの“愚痴パーティ”に顔を出したトニーやギャビー、マートン夫妻は、この舞台、このメンバーをこのまま失敗に終わらせるのは惜しいと痛感します。 もとのミュージカル・コメディ版の脚本に立ち返って、新曲を増やし、地方公演を行いつつ内容を固めればかならずヒットをねらえる、資金は自分の持っている印象派の絵画を売ればいい、と主張するトニーに、コルドバもまた賛成し、ひとりの役者として参加します。一方でギャビーは、手を引くポールに逆らって、次第に心を引かれ始めていたトニーとともに一座に残る道を選びます。そして、………。 以上、長々とあらすじを書きましたが、単純で予想通りの展開なストーリーは、はっきり言ってどうでもいいです。 やっぱり観るべきは歌と踊りです。 冒頭の靴磨きのオヤジ(何で靴磨きが、というツッコミは野暮です。)とトニーとの突然なコミカルなセッションや、マートン夫妻とコルドバがトニーを説得する歌“ザッツ・エンタテイメント”(この歌はこの後、MGMのスタンダードナンバーになり、映画「ザッツ・エンタテイメント」のテーマになります。)は、非常に楽しいですし、夜の公園でのトニーとギャビーのダンスは非常に優雅で美しいです。そして、最後に列車が走る映像と前後して(旅公演をやっているという体で)、挿入される舞台のナンバーの数々、非常に楽しく、観ていて飽きません。 ただ、元々がバレエダンサーだったシド・チャリシーとのペア・ダンスは非常に優雅ですが、フレッド・アステアの代名詞でもある巧みでリズミカルなタップ・ダンスが少ししか見れなかったのは残念でした。まあ、1899年生まれのアステアですので、この時すでに50代です。激しい踊りはさすがに難しかったんですかね。アステアと言えども年には勝てないということですか。(それを考えると残念ながら今日引退会見を行った山本昌の偉大さがわかりますね。ちなみに彼の本名は山本昌広です。登録名が山本昌ですので、それが本名だと思っている人が多くて困ります。) ということで、今回は歌とダンスが非常に楽しい、往年のMGMミュージカルの名作を紹介しました。後、アステアの映画を3本、ジーン・ケリーのものを1本、同時に買いましたので、また紹介しますね。 ところで、リリー・マートン役のナネット・ファブレーという女優さん、脚本家の役だと思っていたら、最後の地方公演の舞台ではしっかりメインの女優として舞台に立っていましたね。しかも非常にパワフルな歌声でびっくりしました。当時は有名だったミュージカル女優さんだったのかもしれませんが、はっきり言って残念ながら容姿にあまり恵まれておらず、女優はまず美しいことが絶対条件だった当時の演劇界ではスターになれなかったんですね。僕は好きですけどね、かわいらしいファニーフェイス。(3枚目の写真の真ん中の赤ちゃんをやっている方です。)
2015.09.30
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「007 スカイフォール」 Skyfall 2012年 アメリカ・イギリス映画監督 サム・メンデス出演 ダニエル・クレイグ ハビエル・バルデム ナオミ・ハリス レイフ・ファインズ ベン・ウィショー ジュディ・デンチ さて、久々、007を全部観ようシリーズの第23弾です。もちろん、現時点での最新作、第23作、完全リニューアルされた6代目クレイグ・ボンドの第3作です。 “007”をコードネームに持つMI6のエージェント、ジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は新人女性エージェントのイヴ(ナオミ・ハリス)とともにトルコでの作戦に参加していました。その最中、MI6の工作員が殺され、各国のテロ組織に潜入している全てのNATOの工作員の情報が収められたハードディスクが奪われます。 ボンドはディスクを取り戻すべく、実行犯であるフランス人傭兵パトリスを追跡します。 MI6部長・M(ジュディ・デンチ)の指令により、ボンドと列車の上で格闘しているパトリスを狙ってイヴが撃った銃弾はボンドに当たり、ボンドは峡谷に落下し行方不明となってしまいます。 数カ月後。ボンドは公式に死亡が認定され、Mは情報漏洩の責任を問われ情報国防委員会の新委員長であるギャレス・マロリー(レイス・ファインズ)から引退を勧められます。Mはその提案を拒絶しますが、その直後、Mのコンピュータが何者かによってハックされ、MI6本部も爆破され、多くの職員が犠牲となります。 このニュースは僻地で隠遁していたボンドも目にするところとなり、ボンドはロンドンに戻ってきます。 ボンドは、00(ダブルオー)要員への復帰テストに臨みます。その成績は惨憺たるものでしたが、復帰に懐疑的なマロリーの意見を一蹴し、Mはボンドの職務復帰を承認します。 ボンドは自身の肩に残っていた弾丸の破片からパトリスを特定し、新任の兵器開発課長・Q(ベン・ウィショー)から装備を受け取ってパトリスの向かう上海へ赴きます。 上海でボンドは格闘の末にパトリスを倒したものの、雇い主が誰なのかを聞き出す事に失敗します。パトリスの所持品にあったカジノのチップを手掛かりに、ボンドはマカオへ向かいます。 その頃、ハードディスクにあった5人のNATO工作員の名前がインターネット上に公表され、毎週さらに名前を公表していくという予告がなされます。 カジノでボンドはパトリスの仲間らしい謎の女性・セヴリンに接触します。何かに脅える様子のセヴリンにボンドは、雇い主を殺すつもりがあるなら手伝うと持ちかけ、セヴリンの船で、雇い主のいる廃墟の島に向かいますが、船上でセヴリンともども囚われの身となってしまいます。 島でボンドは、パトリスとセヴリンの雇い主、ラウル・シルヴァ(ハビエル・バルデス)と対面します。元MI6エージェントであったシルヴァは、香港支局勤務時に中国当局に捕らわれ見捨てられたことで、当時の上司Mを深く恨んでいたのです。 やっぱり、とことんシリアスで、とことんカッコいいジェームズ・ボンドでした。とにかくこの6代目クレイグ・ボンドは完全シリアス路線を徹底していくようですね。 前2作の「007」はもちろん、「ライラの冒険」や「ドラゴン・タトゥーの女」「ディファイアンス」「カウボーイ&エイリアン」など、ダニエル・グレイグの出演作って、結構観てるんですけど、彼がおちゃらけたり、爆笑したりって見たことがないんですよね。本当に常にシリアスな演技を貫いているんですよ、彼は。 6代目を彼に選んだからシリアス路線にしたのか、シリアス路線で行くと決めたから彼を6代目にしたのか、どちらかはわかりませんが、もうひとつの人気スパイ映画シリーズ「ミッション・イン・ポッシブル」のエンターテイメント性との差別化として、この徹底したシリアス路線は正しいと思います。(相変わらずの上から目線でごめんなさい。) しかし、今回の第3作は、アストン・マーチンの登場(劇場で歓声が起こるそうです。僕も「おおっ」と思いました。)やレギュラーメンバー(マネーぺ二-も含めてね。)の勢ぞろいなど、オールド007ファンも喜ぶ要素もちょっとちりばめられていたりするところも興味深いところですけどね。 ところで、今回の見どころは実は別のところにあります。それは、ジュディ・デンチ演ずるMの引退です。 今年で80歳の大女優ジュディ・デンチです。さすがにアクション映画のレギュラーとして出続けるのは、どう考えても無理があるでしょう。遅かれ早かれ引退は余儀なきところですが、さすがの英アカデミー賞を何度も受賞している(米アカデミー賞では助演1回ですが。)大大大女優です。納得できうる引退の花道を用意する必要があるでしょう。まかり間違っても、いつの間にか替わっていたなんて形だけは避けなければなりません。そういった意味で、今回のお話(どうなるかは結末に関わるので、内緒にしておきますね。)は、見事だったなあ、と思いました。 ということで、リニューアルされたシリアス路線を守りながらも、今後お約束な部分も継承されるであろうことをうかがわせていた、クレイグ・ボンドの最新作を紹介しました。次回作、宿敵との対決となる「007 スペクター」が非常に楽しみです。 ところで、ハビエル・バルデムって、異様に顔が大きいですね。その上、目とか鼻とか口とか中のパーツも大きくて、それを強調する金髪で派手なスーツに身を包み、まさしく不気味な悪役ぶりで、徹底したシリアスなお話の中で、1人だけコメディって感じで、非常に悪目立ちしていました。さすがです。
2015.09.17
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